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熱

伝熱・放熱・断熱・耐熱・熱膨張

熱に関係する課題と、使える技術・製品をまとめた入口です。

発熱するチップから放熱シート、ヒートシンクのフィンへ熱が伝わり、フィンの間を流れる空気が熱を運び去る様子の断面イラスト
AI(ChatGPT)で生成したイメージ画像

熱の課題から探す

困りごと課題
部品の温度を下げたい小型化で部品の温度が上がるLEDを長寿命にしたい電池の熱暴走・発火を防ぎたい電源の変換効率を上げたいインバーター・電源の損失と発熱を減らしたい(SiC・GaN への置き換え)小型のまま出力を上げたい大電流の配線・バスバーの発熱を抑えたい(許容電流)
冷却を効率よくしたい熱交換器を小さくしたい配管・熱交換器のスケール(水あか)を防ぎたい流体抵抗・圧力損失を減らしたいラボの条件を量産に移せない工場の電力を減らしたい(コンプレッサー・ポンプ・空調の省エネ)装置の排熱や振動で発電したい(熱電素子・圧電素子)乾燥工程の時間とエネルギーを減らしたい配管・装置の保温・保冷を効率よくしたい(断熱)
温度むら・熱による変形を抑えたい加熱・冷却の温度むらで品質がばらつく加熱中の部品の温度を非接触で正しく測りたい(放射温度計・サーモグラフィ)溶接・成形で歪む・反る射出成形の外観不良(ウェルドライン・ひけ・ショートショット)を減らしたい寸法・位置の精度を上げたい量産で寸法がばらつくセンサーを小さく組み込みたいボールねじの寿命・剛性を見極めたい圧入・焼きばめの部品が抜ける・割れる(はめあいを決めたい)レンズ・ミラーを温度変化でずれないように固定したい熱処理で歪む・割れる(焼入れの歪み・焼割れ・脱炭)を減らしたい金型・工具の寿命を延ばしたい
熱で壊れない・燃えないようにしたい高温でも使える材料にしたい全固体電池など次世代電池を製品に採り入れたい磁石の減磁を防ぎたい(熱減磁・逆磁界・錆)医療機器の部品を滅菌・消毒に耐えるようにしたい繰り返し荷重・熱サイクルで割れる燃えにくくしたい・発火を防ぎたいはんだ付け不良(ボイド・クラック・ブリッジ)を減らしたい
熱による寿命を見極めたい加速試験で寿命を見積もりたい電池の劣化を抑えたい再現しない不具合の原因を突き止めたいゴム部品がへたる・硬くなる(圧縮永久ひずみ)を防ぎたい
作る前に温度を予測したい作る前に性能を予測したい
温度差による結露を防ぎたい制御盤・筐体の中の結露を防ぎたい配管・装置の保温・保冷を効率よくしたい(断熱)

課題ごとの解決技術は、下の「熱の課題と、解決する技術」にまとめています。

製品を小さく、高出力にするほど、熱は最初にぶつかる壁になります。部品の温度が上がると、寿命が縮む、性能が落ちる、変形や割れが起きる、といった問題につながります。

このページは、熱の問題に向き合う技術者のための入口です。熱の伝わり方と「発熱量×熱抵抗」の考え方を押さえたうえで、放熱・断熱・耐熱・熱膨張・温度むらの5つのテーマごとに、しくみ・対策・よくある失敗をまとめました。最後に、熱に関係する課題・技術・製品のページへつないでいます。

この分野で扱うテーマ

イラストはAI(Claude)で作成したイメージです。

基本の考え方

熱は、温度の高いところから低いところへ流れます。伝わり方は伝導・対流・放射の3つで、実際の製品ではこの3つが組み合わさって熱が外へ逃げていきます。

熱の伝わり方3つの図。伝導は固体の中を高温側から低温側へ、対流は流れる空気が熱い面から熱を運び、放射は電磁波で離れた物へ熱が伝わる
図1 熱の伝わり方は、伝導・対流・放射の3つ
AI(Claude)で作成
伝わり方しくみよく効く場面・対策の例
伝導物の中を、温度の高い側から低い側へ熱が伝わる。熱の流れは熱伝導率と温度の傾きに比例する部品から基板・ヒートシンクへ熱を移す。熱伝導率の高い材料を使い、通り道を太く短くする
対流空気や水などの流れが、固体の表面から熱を運び去るヒートシンクのフィン、ファン、水冷。多くの場合、ファンなどで流れを起こす強制対流の方が、自然対流より多くの熱を運べる
放射物体の表面から出る電磁波で熱が伝わる。空気がなく、真空の中でも伝わる伝わる熱は絶対温度の4乗の差に比例するので、高温の部品ほど効く。放射率の高い表面にすると多く出せる

出典:伝熱工学 第2回 熱の伝わり方|明治大学 理工学部 機械工学科(講義資料)

温度上昇は「発熱量 × 熱抵抗」で見積もる

熱の流れにくさを熱抵抗(単位は ℃/W)と呼びます。部品が1W発熱するごとに何℃上がるかを表す値です。部品から周囲の空気までの熱抵抗は、通り道の各部分(材料の中を伝わる部分、表面から空気へ逃げる部分)の熱抵抗を合わせたもので、電気回路で抵抗を直列につないだときと同じように考えます。材料の中の熱抵抗は、熱伝導率・流れる距離・断面積から計算できます。

発熱部品から接触面、ヒートシンク、周囲の空気へ熱が流れ、それぞれの熱抵抗を合わせたものが全体の熱抵抗になることを示す図
図2 熱の通り道と熱抵抗。どこか1か所でも熱抵抗が大きいと、部品の温度が上がる
AI(Claude)で作成
チップの熱がヒートシンクの底からフィンを通って空気へ逃げていくイメージ
熱抵抗:部品の熱は、通り道を順に通って空気へ逃げるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

たとえば、発熱量5Wの部品で、部品から周囲の空気までの熱抵抗の合計が10℃/Wなら、温度上昇はおよそ5×10=50℃です。周囲が40℃なら部品は約90℃になります。温度を下げるには、発熱量を減らすか、通り道のどこかの熱抵抗を下げます。

出典:基板と熱設計 15. 熱抵抗について|図研 Club-Z(株式会社ジィーサス)

熱伝達率は「流れ方」で何十倍も変わる

表面から空気や水へ熱が移る移りやすさを熱伝達率といいます。熱伝導率と違って材料だけで決まる値ではなく、流れの速さや、空気か水か、沸騰しているかで大きく変わります。冷却方式を選ぶときの目安になります。

表面に接するもの熱伝達率の代表的な値[W/(m²·K)]
静止した空気(自然対流)1〜20
流れている空気(ファンなど)10〜250
流れている油50〜1,500
流れている水250〜5,000
熱伝達率の代表的な値の範囲を、静止した空気・流れている空気・油・水・沸騰している水の順に、対数目盛りの横棒で比べた図
図3 熱伝達率の代表的な値の範囲。流れ方と流体で桁が変わる
AI(Claude)で作成
水の中の熱い板の表面で泡ができ、沸騰しながら熱を水へ渡すイメージ
熱伝達率:沸騰すると、熱が水へ移りやすくなるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

水の場合、沸騰しているときの熱伝達率は、自然対流のときの数十倍になります。大気圧の水の例では、自然対流が230〜580、沸騰が12,000〜23,000 W/(m²·K)です。

出典:対流熱伝達(熱設計入門)|CEND、熱交換器ワークブック|日阪製作所

熱設計の進め方

熱設計は、温度の上限から逆算して「熱抵抗の予算」を決め、それを通り道に配分する考え方で進めると、筋道立てて検討できます。

熱設計の進め方5段階の図。発熱量を知る、許容温度を決める、熱抵抗の予算を割る、冷却方式を選ぶ、解析と実測で確かめる
図4 熱設計の進め方。足りなければ前の段階に戻る
AI(Claude)で作成
  1. 発熱量を知る:部品ごとに、熱になる電力[W]を出します。
  2. 許容温度を決める:半導体なら、動作できる最大の温度(最大ジャンクション温度)がデータシートにあります。使う場所の最高の周囲温度も決めます。
  3. 熱抵抗の予算を割る:(許容温度 − 最高周囲温度)÷ 発熱量 が、使ってよい熱抵抗の合計です。
  4. 冷却方式を選ぶ:予算に収まる冷却方式と、ヒートシンクなどの形・大きさを決めます(次の「伝熱」を参照)。
  5. 解析と実測で確かめる:計算値を、熱解析や試作品の温度測定で確かめます。

計算例:許容温度100℃の部品が10W発熱し、最高周囲温度が50℃なら、予算は(100−50)÷10=5℃/Wです。部品の内部で1℃/W、接触面で0.5℃/Wを使うなら、ヒートシンクから空気までに使えるのは残り3.5℃/Wです。これより熱抵抗の小さいヒートシンクや冷却方式を選びます。(数値は説明のための例です)

半導体のジャンクション温度は「周囲温度 + 熱抵抗 × 消費電力」で見積もれます。周囲温度が高いときは、使ってよい電力を下げる(ディレーティング)必要があり、データシートにはその曲線が載っています。

出典:熱設計の基本の進め方(技術コラム)|ZEPエンジニアリング、高温での動作についての注意事項(アプリケーションノート)|ルネサス エレクトロニクス

伝熱(放熱・冷却)

部品の熱を外へ逃がす方法は、簡単な方式から順に、足りるかを確かめていくのが基本です。冷やす力が大きい方式ほど、部品・費用・保守の手間が増えます。

自然空冷・強制空冷・ヒートパイプとベーパーチャンバー・液冷の4つの冷却方式を、冷やす力と手間の順に並べた図
図5 冷却方式の段階。右へ行くほど冷やす力は大きいが、手間も増える
AI(Claude)で作成
方式しくみ選ぶときの注意
自然空冷ヒートシンクや筐体の表面から、温まった空気が上がる自然な流れで熱を逃がすフィンを増やしすぎて間隔が狭いと、フィンの間を空気が流れにくくなり、熱がこもる
強制空冷ファンで風を当てて、空気へ逃がす熱を増やす空気は流れやすいところへ流れる。発熱部に風が届いているか、吸気口と排気口の位置を確かめる
ヒートパイプ・ベーパーチャンバー中の作動液が高温部で蒸発し、低温部で凝縮して液に戻り、毛細管現象で高温部へ戻る。これをくり返して熱を運ぶ高温部が上になる姿勢(トップヒート)では運べる熱が減る。姿勢と、運べる熱量の上限を確かめる
液冷(水冷)冷却板に液体を流して熱を受け取り、ラジエーターなどで捨てる水は空気よりはるかに熱伝達率が大きいが、ポンプ・配管・漏れへの対策が要る

出典:ヒートパイプの原理|下西技研工業、空冷ヒートシンク|下西技研工業、自然空冷の手引き|三桜工業(MICFORG)、電子機器の熱設計【熱設計vol.8】|構造計画研究所、対流熱伝達(熱設計入門)|CEND

ヒートパイプは「向き」で性能が変わる

下を加熱したヒートパイプの中で、蒸気が上がり、液が内壁のウィックを伝って下へ戻るイメージ
ヒートパイプ:作動液が蒸気で上がり、液で戻るイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

ヒートパイプは、作動液が毛細管現象で高温部へ戻ることで働きます。そのため高温部が下(ボトムヒート)なら運べる熱が多く、高温部が上(トップヒート)だと少なくなります。あるアルミ製ヒートパイプを20Wで加熱した測定では、熱抵抗がボトムヒートで0.34℃/W、水平で1.28℃/W、トップヒートで1.7℃/Wでした。製品の置き方が変わる機器では、いちばん不利な向きで確かめます。

ヒートパイプを、加熱部が下・水平・加熱部が上の3つの向きで置いた図と、そのときの熱抵抗0.34、1.28、1.70℃/Wを比べた棒グラフ
図6 ヒートパイプの向きと熱抵抗
AI(Claude)で作成

出典:ヒートパイプの熱輸送特性|下西技研工業

すき間の空気を埋める:放熱シート・グリス(TIM)

部品とヒートシンクの接触面は、平らに見えても細かなすき間があり、熱を伝えにくい空気が残ります。このすき間を埋めて接触熱抵抗を下げる材料がTIM(サーマル・インターフェース・マテリアル)で、液状のサーマルグリース、固体の熱伝導シート、温まると柔らかくなる相変化材料などがあります。

部品とヒートシンクの接触面を拡大した図。TIMがないとすき間に空気が残り熱はわずかな接触点しか通れないが、TIMですき間を埋めると面全体を通れる
図7 接触面のすき間とTIMの役割(拡大したイメージ)
AI(Claude)で作成

種類・選び方・カタログ値の見方・TIM を得意とする企業は、技術ページ「放熱シート・グリス」で解説しています。

出典:電子機器の熱設計 TIMについて【熱設計vol.7】|構造計画研究所、伝熱工学 第2回 熱の伝わり方|明治大学 理工学部 機械工学科(講義資料)

密閉筐体は「筐体に熱を渡す」

密閉した筐体の中で、発熱部品を内壁に押し当て、熱を筐体の壁から外へ出すイメージ
密閉筐体:部品の熱を筐体の壁へ渡して外へ出すイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

防水・防塵のために密閉した筐体は、中の空気を外と入れ替えられないため、熱は筐体を通して外へ出すしかありません。発熱部品を筐体の内壁に直接当てる(必要ならTIMを挟む)ことで、熱の大部分を筐体へ逃がす設計がとられます。15Wのうち13W程度を筐体へ逃がす例も紹介されています。

密閉した筐体の断面図。発熱部品をTIMを挟んで筐体の内壁に当て、熱が壁を伝わって広がり、筐体の外面から外の空気へ出る
図8 密閉筐体の放熱。中の空気は外と入れ替わらないので、筐体を通して熱を出す
AI(Claude)で作成

出典:小型密閉筐体の放熱(技術コラム)|ZEPエンジニアリング

断熱

断熱は、熱の出入りを抑えることです。目的は、省エネルギー、決めた温度の維持(保温・保冷)、結露の防止、やけどの防止などで、目的に応じて断熱材の種類と厚みを選びます。

断熱材が細かな泡に空気を閉じ込めて熱の流れを小さくするしくみと、断熱した内側に発熱部品があると熱がこもるので逃げ道を設ける必要があることを示す図
図9 断熱材のしくみと、内側に発熱があるときの注意
AI(Claude)で作成
目的例
省エネルギー・温度の維持配管・タンク・炉の保温、冷凍・冷蔵の保冷
周りの部品や人を守る高温部品のそばの樹脂部品や配線を守る、表面温度を下げてやけどを防ぐ
結露を防ぐ冷たい配管の表面を断熱して、空気中の水分が結露しないようにする
燃え広がりを防ぐ電池パックのセルとセルの間に、熱や炎を遮る材料を入れる
断熱材の細かな泡が気体を閉じ込め、熱い壁からの熱がわずかしか入らないイメージ
断熱材:細かな泡に閉じ込めた気体が熱を通しにくくするイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

断熱材は、熱を伝えにくい空気(や気体)を細かな泡や繊維のすき間に閉じ込めて、熱伝導率を下げています。たとえば、吹付け硬質ウレタンフォームの規格(JIS A 9526)では、熱伝導率が0.026 W/(m·K)以下と定められた種類があります。

注意したいのは、断熱した内側に発熱する部品がある場合です。外への熱の逃げ道も同時に考えないと、内側の温度が上がります。

出典:保温・保冷工事|明星工業、硬質ポリウレタンフォームの主な特性|日本ウレタン工業協会、伝熱工学 第2回 熱の伝わり方|明治大学 理工学部 機械工学科(講義資料)

耐熱

「何℃まで使えるか」は、材料や部品によって決め方が違います。どの指標の温度なのかを確かめずに比べると、判断を誤ります。

樹脂の耐熱は3つの指標で見る

樹脂の耐熱の3つの指標の図。荷重たわみ温度は力をかけたまま温めてたわむ温度、ガラス転移温度は硬い状態から柔らかい状態へ変わる温度、相対温度指数は長く温めて強さが約半分に下がる温度
図10 樹脂の耐熱の3つの指標
AI(Claude)で作成
指標何を表すか例(出典の値)
荷重たわみ温度(HDT、JIS K 7191)決まった曲げの力をかけたまま温めたとき、決まった量だけたわむ温度。短時間の、力がかかった状態での目安ポリカーボネート 125〜140℃
ガラス転移温度(Tg)力をかけない状態で、樹脂が硬いガラス状から柔らかいゴム状へ変わる温度ポリカーボネート 約145〜150℃
相対温度指数(RTI、UL 746B)長い時間温め続けたとき、強さなどが初めの約半分に下がる温度を見積もった値。長期間使う温度の目安PMMA 70〜90℃、PEEK 240〜260℃

同じ樹脂でも、短時間の指標(荷重たわみ温度)より、長期間の指標(RTI)の方が低いことが多くあります。長く使う製品では、長期間の指標で確かめます。RTIは、実績のある基準材料と比べて決める値です。

出典:耐熱プラスチックとは(コラム)|三菱ガス化学 ユピゼータ、UL746B(IEC60216)長期熱劣化試験|ケミトックス

温度が10℃上がると、寿命が約半分になる部品がある

ヒートシンクのすぐそばのアルミ電解コンデンサが熱であぶられるイメージ
寿命:温度が上がるほど、部品の寿命は短くなるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

アルミ電解コンデンサの寿命は、温度が上がるほど短くなります。60〜95℃の範囲では、温度が10℃上がると寿命がおよそ半分になる「10℃2倍則」が目安として使われています。ただし、この近似が当てはまらない温度範囲があり、計算した寿命は保証値ではありません。部品のメーカーが示す式と条件で見積もります。

温度が10℃上がるごとに寿命が約半分になる目安を示した棒グラフ
図11 温度と寿命の関係(10℃2倍則のイメージ)
AI(Claude)で作成

半導体にも、動作できる最大の温度(最大ジャンクション温度)があり、周囲温度が高いほど使える電力を下げる必要があります(前の「熱設計の進め方」を参照)。温度を上げて劣化を早め、短い期間で寿命を見積もる方法は、課題ページ「加速試験で寿命を見積もりたい」で解説しています。

出典:アルミ電解コンデンサの寿命(FAQ)|日本ケミコン、高温での動作についての注意事項(アプリケーションノート)|ルネサス エレクトロニクス

熱膨張・熱応力

物は温めると伸び、冷やすと縮みます。温度が1K変わったときの長さの変化の割合が線膨張係数です。伸び縮みが妨げられると、材料の中に力(熱応力)が生じます。両端を固定した棒では、熱応力は「ヤング率 × 線膨張係数 × 温度変化」で表されます。

線膨張係数の小さい材料と大きい材料を貼り合わせて温めると、大きく伸びる側が外側になって反り、貼り合わせた面に熱応力がかかることを示す図
図12 線膨張係数の違う材料を貼り合わせると、温度が変わるたびに反りと熱応力が生じる
AI(Claude)で作成
基板と部品の伸び縮みの差で、部品の端のはんだに割れが入るイメージ
熱応力:伸び縮みの差で、つないだ部分が割れるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

とくに問題になるのは、線膨張係数の違う材料をつないだ部分です。半導体やセラミックスの部品を樹脂の基板にはんだ付けした部分や、金属と樹脂を接着した部分では、温度が上下するたびにずれようとする力がかかり、くり返すうちに割れやはがれにつながります。

材料線膨張係数[×10⁻⁶/K]熱伝導率[W/(m·K)]出典
銅(無酸素銅 C1020)17.0393(25℃)特殊金属エクセル
アルミニウム(純度99.5%)23.5(20〜100℃)225(25℃)アルミテック
炭素鋼(S50C)11.9(20〜200℃の平均)41.5(20℃)プロテリアル特殊鋼
ステンレス鋼(SUS304)16.8(20〜200℃の平均)14.5(20℃)プロテリアル特殊鋼
アルミナ(99%)7.2(40〜400℃)29(20℃)京セラ
ガラスエポキシ基板(FR-4の一例)面内 14〜15、厚さ方向 40〜45(Tg以下)0.44〜0.45三菱ガス化学

値は各社・各規格の代表値で、材料の等級や温度によって変わります。設計では、使う材料のデータシートの値を使います。

出典:やさしい材料力学 第3回 熱応力・熱ひずみ|日本機械学会誌、C1020(無酸素銅)|特殊金属エクセル、アルミ合金の物理的・化学的性質|アルミテック、物理的特性|プロテリアル特殊鋼、熱伝導率|京セラ ファインセラミックス、熱膨張(平均線膨張率)|京セラ ファインセラミックス、FR-4 製品ページ|三菱ガス化学

温度むら

熱処理・乾燥・硬化・はんだ付けなど、温めて作る工程では、場所による温度の差(温度むら)が、そのまま品質のばらつきになります。

炉の中でヒーターに近い側が熱く扉に近い側が冷えやすいことと、温度むらの原因と対策を示す図
図13 炉の中の温度むらの原因と対策
AI(Claude)で作成
原因対策の例
ヒーターの配置がかたよっているゾーンごとに温度を制御する
風が一部にしか当たらない送風の向き・量、ファンの配置を見直す
ワークを中央に詰め込む(熱がこもる)、端に置く(温度が下がる)置き方と一度に入れる量を決めておく
ワークの材質・厚みが違い、温まる速さが違う昇温・冷却を段階的にする
扉や端部から熱が逃げる遮熱板を保つ、測る点を増やして分布を確かめる
熱処理炉の中の部品の何か所にも熱電対を付けて、温度の差を確かめるイメージ
温度むら:炉の中の何か所もの温度を確かめるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

航空宇宙分野の熱処理規格 AMS2750 では、炉の中の複数の場所に熱電対を置いて温度の差が決められた範囲に入っているかを確かめる試験(TUS:温度均一性試験)が定められています。許される温度差は炉の等級で決まり、たとえばクラス1では±3.0℃以内です。

基板のはんだ付け(リフロー)でも、熱容量の大きい部品と小さい部品、銅箔の面積や基板の厚みによって温まり方が違います。実際の基板の部品ごとに熱電対を付けて、温度の変化(温度プロファイル)を測って確かめます。

出典:熱処理炉の温度分布(コラム)|ウエストヒル、SATとTUSの違い(コラム)|プロテグ、はんだ付けの温度プロファイル(コラム)|太伽

温度を測る・予測する

基板のチップの上に熱電対の先をテープで貼り付けて温度を測るイメージ
温度を測る:部品に熱電対を付けて確かめるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

熱の対策は、最悪の条件で、正しく測って確かめるまでが一組です。温度計の選び方と使い方で、結果は大きく変わります。

熱電対・測温抵抗体とサーミスタ・放射温度計の3つについて、貼り付けのすき間や線からの熱の逃げ、自己加熱、放射率と映り込みといった誤差の出やすい点を示す図
図14 温度計ごとの、誤差が出やすいところ
AI(Claude)で作成
方法特長誤差が出やすい点
熱電対細く、狭い場所や多点の測定に向く貼り付けたすき間に接着剤が入ると正しく測れない。線が太いと、測る物の熱が線を通って逃げる
測温抵抗体・サーミスタ精度よく測れる電流を流して測るため、素子そのものが発熱する(自己加熱)
放射温度計・サーモグラフィ触れずに測れ、温度の分布を面で見られる放射率の設定で値が変わる。光沢のある金属は放射率が低く、正しく測りにくい

作る前の予測には、熱の通り道を熱抵抗と熱容量でつないで計算する熱回路網法と、空気の流れまで含めて計算する熱流体解析(CFD)があります。熱回路網法は簡単で速く、設計の早い段階の検討に向きます。

出典:熱電対の正しい使い方(コラム)|オリックス・レンテック、温度センサーの技術情報|オメガエンジニアリング、放射温度計の測定(技術情報)|ジャパンセンサー、熱回路網法(熱設計入門)|CEND

よく使う用語

基板上の部品からTIM、ヒートシンク、空気へ熱が流れる図に、ジャンクション温度・接触熱抵抗・熱伝導率・熱伝達率・放射率・熱抵抗がどこに当たるかを示した図
図15 熱の用語が、熱の通り道のどこに当たるか
AI(Claude)で作成
用語意味単位
熱伝導率材料の中での熱の伝わりやすさ。値が大きいほど伝わりやすいW/(m·K)
熱抵抗熱の流れにくさ。1W発熱するごとに何℃上がるか℃/W
接触熱抵抗2つの面が接する部分での熱の流れにくさ。すき間に残る空気で大きくなる℃/W
熱伝達率固体の表面と、流れる空気や水の間での熱の移りやすさ。流れ方で大きく変わるW/(m²·K)
放射率実際の物体の表面から放射される熱を、理想的な物体(黒体)と比べた割合0〜1
線膨張係数温度が1K変わったときの、長さの変化の割合1/K
ジャンクション温度半導体チップそのものの温度。最大値がデータシートに決められている℃
ディレーティング周囲温度が高いときなどに、使う電力や負荷を定格より下げて使うこと—
TIM部品と放熱部品の間のすき間を埋める材料。放熱シート・グリスなど—
荷重たわみ温度(HDT)決まった力をかけて温めたとき、決まった量たわむ温度。樹脂の短時間の耐熱の目安℃
ガラス転移温度(Tg)樹脂が硬い状態から柔らかい状態へ変わる温度℃
熱回路網法熱の通り道を熱抵抗と熱容量の回路に置き換えて、温度を計算する方法—

出典:熱伝導率測定|日鉄テクノロジー、伝熱工学 第2回 熱の伝わり方|明治大学 理工学部 機械工学科(講義資料)、基板と熱設計 15. 熱抵抗について|図研 Club-Z(株式会社ジィーサス)、高温での動作についての注意事項(アプリケーションノート)|ルネサス エレクトロニクス、耐熱プラスチックとは(コラム)|三菱ガス化学 ユピゼータ、熱回路網法(熱設計入門)|CEND

熱の課題と、解決する技術

このサイトは、課題から、それを解決する技術と企業を探せるようにしています。困りごとに近い課題を選ぶと、課題ページで原因・解決技術・その技術を持つ企業がわかります。緑のボタンは、課題ページの中でその技術を解説している節へ直接移ります。

冷却を効率よくしたい

温度むら・熱による変形を抑えたい

熱に関係する技術

反対に、技術から探すときの一覧です。その技術で解決できる課題を並べています。技術ごとの詳しいページは順に公開します。

技術何をするか解決できる課題
放熱設計・冷却発熱部品から外気までの熱の通り道を見直し、熱抵抗を下げるLEDを長寿命にしたい電池の熱暴走・発火を防ぎたい小型のまま出力を上げたい電池の劣化を抑えたい
放熱シート・グリス(TIM)部品とヒートシンクの間のすき間を埋め、接触熱抵抗を下げる。種類・選び方・企業は技術ページで解説LEDを長寿命にしたい電池の熱暴走・発火を防ぎたい
断熱材・耐火材熱や炎を遮り、周りへ広げない電池の熱暴走・発火を防ぎたい燃えにくくしたい・発火を防ぎたい配管・装置の保温・保冷を効率よくしたい(断熱)
低入熱の接合レーザー溶接や摩擦攪拌接合などで、入る熱を減らして歪みを抑える溶接・成形で歪む・反る
金型の冷却・成形条件金型の冷却水管の配置や成形条件を見直し、冷え方の差による反りを抑える溶接・成形で歪む・反る
熱解析(CAE)温度分布や熱による変形を、作る前に計算で予測する溶接・成形で歪む・反る電池の熱暴走・発火を防ぎたい作る前に性能を予測したい
低損失のパワー半導体・回路電源の損失(=発熱)そのものを減らす電源の変換効率を上げたい電源の変換効率を上げたいインバーター・電源の損失と発熱を減らしたい(SiC・GaN への置き換え)
熱変位の対策・補正機械や金型の温度を管理し、熱による伸びを抑える・補正する寸法・位置の精度を上げたい量産で寸法がばらつく
高耐久はんだ・接合材料温度変化の繰り返しによる、はんだ接合部の割れを防ぐ繰り返し荷重・熱サイクルで割れる
温度加速試験温度を上げて劣化を早め、短い期間で寿命を見積もる加速試験で寿命を見積もりたいLEDを長寿命にしたい

熱に関係する製品

出典・参考

情報の確認日:2026年9月29日 本ページの内容は一般的な説明で、実際の値は材料・形状・使用条件により異なります。図とテーマのイラストはAI(Claude)で作成した概念図、冒頭の画像はAI(ChatGPT)で生成したイメージ画像です。

熱に関係する課題

熱に関係する技術

熱の技術の基礎知識

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