ヒートポンプとは(しくみ・COP・冷媒・産業用)

外の空気を取り込む室外機と、銅の配管でつながった室内機から部屋へ暖かい風が出るようすのイメージ(AI で生成)

エアコンの暖房、冷蔵庫、エコキュート(給湯機)、洗濯乾燥機。どれも中にヒートポンプが入っています。ヒートポンプは、外の空気などにある熱を集めて、温めたい所へ運ぶしくみです。燃料を燃やさずに、使った電気より多くの熱を届けられるので、省エネの技術として工場でも使われ始めています。このページでは、ヒートポンプとは何か、4つの部品でできたしくみ、効率をあらわす COP と APF、計算例、身近な製品、冷媒、工場での使い道を、図で順に解説します。

目次

ヒートポンプとは:ひとことで言うと

ヒートポンプとは

ヒートポンプは、空気や水などにある熱を集めて、温めたい所や冷やしたい所へ運ぶ技術です。「ヒート」は熱、「ポンプ」はくみ上げる、という意味です(ダイキン「空気の学校」)。

英語では heat pump です。

ヒートポンプとは の図:水のポンプが低い所の水を高い所へ上げるように、ヒートポンプは電気を使って、低い温度の外の空気などから熱を集め、高い温度の部屋やお湯へ運ぶ
図1 ヒートポンプとは:熱を低い温度から高い温度へくみ上げる
出典:ダイキン工業、Wikipediaをもとに AI(Claude)で作成

熱は、ふつう温度の高い所から低い所へ流れます。水が高い所から低い所へ流れるのと同じです。ポンプを使えば水を低い所から高い所へ上げられるように、ヒートポンプは熱を低い温度の所から高い温度の所へ移します(Wikipedia「ヒートポンプ」。ポンプのたとえはダイキン「ダイキンの空気の技術」)。

ダイキン「ダイキンの空気の技術」の解説は、ヒートポンプは熱を「つくる」のではなく「集めて運ぶ」ので省エネ性が高いとしています。また、−15℃の空気にも熱はあると説明しています。冬の冷たい外の空気からでも、熱を集めて部屋を暖められるわけです。

ヒートポンプ・蓄熱センターは、ヒートポンプを、空気や水、地面の中にある熱を集めて冷暖房や給湯に使う技術で、化石燃料を燃やさずに使えるものとしています。

出典:エアコンの技術でお湯がわく?(空気の学校)|ダイキン工業、ヒートポンプ|Wikipedia、ヒートポンプ|ダイキンの空気の技術|ダイキン工業、ヒートポンプについて|一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター

ヒートポンプのしくみ:冷媒が4つの部品をまわる

ヒートポンプのしくみの図:冷媒が膨張弁・蒸発器・圧縮機・凝縮器の順にまわる。蒸発器で外の空気から熱を吸い、圧縮機で温度を上げ、凝縮器で部屋へ熱を出す
図2 ヒートポンプのしくみ:冷媒が4つの部品をまわる(暖房のとき)
出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)をもとに AI(Claude)で作成

ヒートポンプの中では、冷媒(れいばい)と呼ぶ液体やガスが、管の中をぐるぐるまわって熱を運んでいます。部品は、圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器の4つです。J-Net21(中小企業基盤整備機構)の解説をもとに、暖房のときの流れを順に見てみます。

部品冷媒に起きること熱の出入り
① 膨張弁液体の冷媒が通ると、圧力が下がって温度も下がる—
② 蒸発器外の空気より冷たくなった冷媒が、空気の熱を奪って蒸発し、気体になる熱を吸う(外の空気から)
③ 圧縮機気体の冷媒を押し縮めると、温度が上がる電気(動力)を使う
④ 凝縮器高い温度の冷媒が熱を出して、液体にもどる熱を出す(部屋の空気やお湯へ)

液体が蒸発するときにまわりから熱を奪い、気体が液体にもどるときに熱を出す、という性質を使っています。Wikipedia「ヒートポンプ」も、圧力を下げると周りから熱を吸い、圧力を上げると周りへ熱を出すと説明しています。J-Net21 は、ルームエアコンや電気冷蔵庫も原理は同じとしています。

冷房と暖房は、熱を運ぶ向きが逆なだけ

エアコンの冷房は、部屋の中の熱を集めて外へ出します。暖房はその逆で、外の空気の熱を集めて部屋へ出します。ダイキンは、冷媒が室外機とエアコン(室内機)の間を行き来して熱を運ぶと説明しています。同じ部品のまま、冷媒の流れる向きを変えて、冷房と暖房を切り替えているのです(切り替えの説明は編集部の補足)。

出典:ヒートポンプによる加熱とは(1)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)、ヒートポンプ|Wikipedia、ヒートポンプ|ダイキンの空気の技術|ダイキン工業

COP(成績係数):使った電気の何倍の熱を出せたか

COPの図:電気ストーブは電気1から熱1しか出せないが、ヒートポンプは電気1と空気の熱5を合わせて熱6を出せる。この例ではCOPは6
図3 COP:電気1と空気の熱5で、熱6を出す例
出典:ダイキン工業、J-Net21(中小企業基盤整備機構)をもとに AI(Claude)で作成

ヒートポンプの効率は、COP(シーオーピー、成績係数)であらわします。J-Net21 の定義は、入れたエネルギーに対する、得られた温熱(または冷熱)の比です。式にすると次のとおりです。

COP の式

COP = 得られた熱 ÷ 使ったエネルギー(電気など)

集めた空気の熱は、使ったエネルギーに数えません(J-Net21)。

ダイキンの講座は、ヒートポンプ・蓄熱センターの資料をもとに、電気ストーブは電力1で暖房の効果が1、ヒートポンプは電力1に空気の熱5が加わって、暖房の効果が6になると説明しています。この例の COP は 6 ÷ 1 = 6 です。電気を熱に変えるだけのストーブやヒーターでは、電気1から熱1より多くは出せません。ヒートポンプ・蓄熱センターは、電気1に対して3〜7倍の熱エネルギーを生み、最新のエアコンでは約7の熱が得られるとしています。

暖房の COP は、冷房の COP より1大きい

同じヒートポンプでも、冷やすのに使うときと温めるのに使うときで COP の値が変わります。Wikipedia「成績係数」は、理想の場合、温めるときの COP は冷やすときの COP +1になるとしています。圧縮機で使った電気も、最後は熱になって温める側へ出ていくためです。Wikipedia は、熱を出す側と熱を集める側の温度差が小さいほど COP は上がるとも書いています。

APF(通年エネルギー消費効率)

COP は、決まった1つの条件で測った値です。家庭用エアコンのカタログには、かわりにAPF(エーピーエフ、通年エネルギー消費効率)が書かれています。日立の解説では、APF は一定の条件で運転したときのエネルギー消費効率を数値にしたもので、数値が大きいほど省エネです。省エネ法と JIS C 9612 にもとづきます。

たとえば日立のルームエアコン XJシリーズ(冷媒はすべて R32)の APF は、機種によって 7.6 から 5.1 まであり、おおむね型番の数字が大きい(能力の大きい)機種ほど小さくなっています。日立は、実際の消費電力は気候や住宅、使い方で変わると注記しています。

出典:ヒートポンプによる加熱とは(1)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)、講座1 エアコンの消費電力と地球温暖化「ヒートポンプ」で温暖化防止|ダイキン工業、ヒートポンプについて|一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター、成績係数|Wikipedia、エアコンが省エネ基準を満たしているか確認する方法を知りたいです。|日立の家電品、住宅設備用エアコン ルームエアコン XJシリーズ|日立の家電品

COP の上限:温度差が大きいほど下がる(計算例)

COPの上限のグラフ:熱を出す側を45℃としたとき、外の空気の温度が低い(温度差が大きい)ほど、理論上のCOPの上限は小さくなる
図4 計算例:外の気温と COP の上限(熱を出す側 45℃)
出典:サードペディア百科事典をもとに AI(Claude)で作成

ヒートポンプの COP には、熱力学で決まる上限があります(逆カルノーサイクル)。温める側の上限は、COP = 熱を出す側の絶対温度 ÷(熱を出す側と熱を集める側の温度差)です(サードペディア百科事典「逆カルノーサイクル」)。絶対温度は、℃の値に273.15を足した温度です(編集部の補足)。

45℃のお湯(318.15K)をつくる場合で計算してみます(編集部の計算)。

  • 外の空気が 7℃ のとき:温度差 38℃ → 318.15 ÷ 38 ≒ 約8.4
  • 外の空気が −10℃ のとき:温度差 55℃ → 318.15 ÷ 55 ≒ 約5.8

外が寒くなって温度差が大きくなるほど、上限が下がることがわかります。寒い日ほど暖房の効率が落ちるのはこのためです。また、40℃ のお湯でよいのに 60℃ のお湯をつくると、それだけ温度差が大きくなり、効率が下がります(この読み取りは編集部の補足)。

実際の機械では、圧縮機や熱交換器などで損失があるので、COP はこの上限よりずっと小さくなります。Wikipedia「ヒートポンプ」は、2006年の時点で家庭用ルームエアコンの COP は約6.5、業務用パッケージエアコンは5.0弱で、それ以前(トップランナー方式の導入前)のルームエアコンは COP が約3の機種が多かったとしています。

出典:逆カルノーサイクルとは?|サードペディア百科事典、ヒートポンプ|Wikipedia

ヒートポンプが使われている身近な製品

ヒートポンプが使われている所の図:エアコン・冷蔵庫・給湯機・洗濯乾燥機などの身近な製品と、工場の加温・乾燥・排熱の回収
図5 ヒートポンプが使われている所
出典:一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター、Wikipedia、産業用ヒートポンプドットコム(一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター)をもとに AI(Claude)で作成

ヒートポンプ・蓄熱センターは、家庭向けの例として、エアコン・エコキュート・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機の乾燥機能を挙げています。社会・産業向けでは、オフィスの空調、病院やホテルの給湯、工場、農業でも使われています。

  • エアコン:冷房も暖房も1台でできる
  • 冷蔵庫・冷凍庫:庫内の熱を集めて外へ出す(冷やす側として使う)
  • エコキュート:空気の熱で湯をわかす給湯機
  • 洗濯乾燥機:ヒートポンプ式の乾燥機能

エコキュート:CO2 を冷媒にした給湯機

Wikipedia「エコキュート」によると、エコキュートは、ヒートポンプで空気から熱をくみ上げる電気給湯機のうち、冷媒にフロンではなく二酸化炭素(CO2、冷媒番号 R744)を使う機種の愛称です。関西電力が2002年に登録した登録商標です。CO2 の冷媒は約10MPa の高い圧力で使い(フロンは約3MPa、R32 は約4MPa)、圧縮すると約90℃になります。

ダイキン「空気の学校」は、エコキュートは、空気の熱を冷媒に移し、圧縮して高い温度にし、その熱を水に移して湯をつくると説明しています。

出典:ヒートポンプについて|一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター、ヒートポンプ|Wikipedia、エコキュート|Wikipedia、エアコンの技術でお湯がわく?(空気の学校)|ダイキン工業

冷媒:R32・R410A・CO2 と地球温暖化

冷媒の地球温暖化係数の棒グラフ:R410Aは2090、R32は675、CO2(R744)は1。R32はR410Aの約3分の1
図6 冷媒の地球温暖化係数(GWP、100年値。CO2 の1は定義の値)
出典:ダイキン工業をもとに AI(Claude)で作成

冷媒には、むかしはフロンが使われていましたが、オゾン層をこわす原因の一つになりました。かわりに使われた代替フロンも温室効果ガスで、多くの先進国で回収と処分が義務になっています(Wikipedia「ヒートポンプ」)。冷媒が地球を温める強さは、地球温暖化係数(GWP)であらわします。CO2 を1としたときの何倍かを示す数値です。

冷媒おもな使い道GWP(100年値)
R410Aエアコン2,090
R32エアコン(日立 XJシリーズなど)675
CO2(R744)エコキュート1(CO2 が基準)

R410A と R32 の GWP は、ダイキンの「新冷媒 R32」のページの値(IPCC 第4次評価報告書による)です。CO2 の GWP は定義から1です。R32 は燃えにくい(微燃性の)冷媒で、漏れへの対策や検知警報が必要です(Wikipedia「冷媒」)。

代替フロン(HFC)を減らす国際的な決まりとして、2016年にルワンダのキガリでモントリオール議定書のキガリ改正が採択されました。日本は2019年から削減を始め、2036年までに HFC の生産量を基準値から85%減らします(トレイン・ジャパン)。

出典:ヒートポンプ|Wikipedia、新冷媒 R32|ダイキン工業、冷媒|Wikipedia、キガリ改正とは|トレイン・ジャパン、エコキュート|Wikipedia

工場でのヒートポンプ(産業用ヒートポンプ)

産業用ヒートポンプの図:工場の排温水・排気・冷却水などの捨てていた熱を、電気で動くヒートポンプで高い温度にして、温水・熱風・蒸気として洗浄・乾燥・加温に使う
図7 産業用ヒートポンプ:捨てていた熱を集めて、高い温度にして使う
出典:産業用ヒートポンプドットコム(一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター)、イプロスものづくりをもとに AI(Claude)で作成

日本エレクトロヒートセンターの「産業用ヒートポンプドットコム」は、産業用ヒートポンプを、ヒートポンプの加熱する働きを使うものとしています。工場の排温水や排気、コンプレッサーやチラーの冷却水など、捨てていた低い温度の熱を回収し、高い温度にして加熱に使えるのが特長です。冷水と温熱を1台で同時に出すこともできます。

使える温度は、マイナス数十℃から100℃以上までで、高温の水、熱風、蒸気の形で熱を出せます。ボイラーの蒸気のかわりにも使われ始めています。同サイトの導入事例は、洗浄・殺菌・給湯、加湿・保温、乾燥、蒸留・濃縮の用途に分けて紹介されています。

事例(産業用ヒートポンプドットコム「原理と特徴」)効果
コンプレッサーの排熱(約60℃)を回収して、洗浄工程を加温ボイラーで加温したときより、コストを約4割削減
空気の熱を使うヒートポンプで、薬液槽を 50〜55℃ に加温蒸気で加温したときより、コストを約3割削減
水を熱源にするエコキュートで、冷やす側と温める側を同時に使うこれまでより一次エネルギーを7割以上削減

蒸気をつくるヒートポンプもあります。富士電機の提案事例では、60〜80℃の排温水から熱を回収して、100〜120℃の飽和蒸気を出します(イプロス)。Wikipedia「ヒートポンプ」は、最高200℃の高温ヒートポンプが開発されており、日本の産業用の熱供給の約2割をボイラーから置き換えられると期待されているとしています。

工場の省エネの全体像は課題「工場の電力を減らしたい」、乾燥工程は課題「乾燥工程の時間とエネルギーを減らしたい」で解説しています。

出典:原理と特徴|産業用ヒートポンプドットコム(一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター)、産業用ヒートポンプ導入事例|産業用ヒートポンプドットコム(一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター)、提案事例:排温水の熱回収による省エネ対策(富士電機)|イプロスものづくり、ヒートポンプ|Wikipedia

ヒートポンプの歴史

ヒートポンプの歴史の年表:1852年トムソンの構想、1958年水冷ヒートポンプ式パッケージエアコン、1969年外気0℃でもヒーターなしで暖房できるエアコン、1970年代後半から熱回収、2002年エコキュート
図8 ヒートポンプの歴史(おもなできごと)
出典:国際冷凍機関(IIR)、ダイキン工業、Wikipediaをもとに AI(Claude)で作成

国際冷凍機関(IIR)の文献によると、1852年にグラスゴー大学のウィリアム・トムソン(のちのケルビン卿)が、空気の流れで建物を暖房・冷房する構想を示しました。学術論文でヒートポンプの利用が論じられた最初とされています。Wikipedia「ヒートポンプ」によると、はじめは冷やす技術として使われ、1970年代の後半から、熱を回収して省エネで温める使い方も広がりました。

ダイキンの年表では、1958年に水冷のヒートポンプ式パッケージエアコンを、1969年に外の気温0℃でも電熱ヒーターなしで暖房できるエアコンを出し、2002年にエコキュートを発売しています。

出典:Lessons learned from a reappraisal of the original heatpump|国際冷凍機関(IIR)、ヒートポンプ|Wikipedia、ヒートポンプ|ダイキンの空気の技術|ダイキン工業

出典

  1. エアコンの技術でお湯がわく?(空気の学校)|ダイキン工業
  2. ヒートポンプ|Wikipedia
  3. ヒートポンプ|ダイキンの空気の技術|ダイキン工業
  4. ヒートポンプについて|一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター
  5. ヒートポンプによる加熱とは(1)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)
  6. 講座1 エアコンの消費電力と地球温暖化「ヒートポンプ」で温暖化防止|ダイキン工業
  7. 成績係数|Wikipedia
  8. エアコンが省エネ基準を満たしているか確認する方法を知りたいです。|日立の家電品
  9. 住宅設備用エアコン ルームエアコン XJシリーズ|日立の家電品
  10. 逆カルノーサイクルとは?|サードペディア百科事典
  11. エコキュート|Wikipedia
  12. 新冷媒 R32|ダイキン工業
  13. 冷媒|Wikipedia
  14. キガリ改正とは|トレイン・ジャパン
  15. 原理と特徴|産業用ヒートポンプドットコム(一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター)
  16. 産業用ヒートポンプ導入事例|産業用ヒートポンプドットコム(一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター)
  17. 提案事例:排温水の熱回収による省エネ対策(富士電機)|イプロスものづくり
  18. Lessons learned from a reappraisal of the original heatpump|国際冷凍機関(IIR)

※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月30日

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