ニュートンの冷却の法則は、熱い物が冷める速さは、その物とまわりとの温度の差に比例するという法則です。温度の差が大きいうちは速く冷め、まわりの温度に近づくほどゆっくりになります。このページでは、法則の式、冷え方の目安になる「時定数」、何分で何度まで冷えるかの計算、法則が使える条件と使えない場面、温度センサーの応答時間などものづくりで出てくる場面を順に説明します。
ニュートンの冷却の法則とは:ひとことで言うと
ニュートンの冷却の法則(ニュートンのれいきゃくのほうそく)
物から熱が逃げる速さは、物とまわりの温度の差に比例する、という経験から見つかった法則です。その結果、物とまわりの温度の差は、時間とともに指数関数的に小さくなっていきます。

出典:ウィキペディア日本語版「ニュートンの冷却の法則」、Wikipedia 英語版「Newton’s law of cooling」をもとに AI(Claude)で作成
たとえば 20℃ の部屋に、同じ形・同じ材料で温度だけが違う物を置くと、80℃ の物(差 60℃)は 50℃ の物(差 30℃)の2倍の速さで熱を失います。ウィキペディア日本語版は、固体から媒質(まわりの空気や水)へ熱が伝わる速さは、固体の表面積と両者の温度差に比例するとしています。
ニュートンが見つけた法則
Wikipedia 英語版によると、アイザック・ニュートンは 1701 年に、この法則を英国王立協会の学術誌 Philosophical Transactions に名前を出さずに発表しました。当時は「熱」と「温度」の区別がはっきりしていなかったため、熱が逃げる量ではなく、温度が変わる速さの形で述べています。ウィキペディア日本語版は、運動の法則や粘性の法則とは別物で、冷却の法則も「ニュートンの法則」と略されることがある、と注意しています。
出典:ニュートンの冷却の法則|ウィキペディア日本語版、Newton’s law of cooling|Wikipedia 英語版
ニュートンの冷却の法則の式と時定数

出典:ウィキペディア日本語版「ニュートンの冷却の法則」、Wikipedia 英語版「Newton’s law of cooling」をもとに AI(Claude)で作成
ウィキペディア日本語版は、熱量を Q、時間を t、表面積を S、固体の温度を T、まわりの温度を Tm として、−dQ/dt = αS(T − Tm) と書いています。α は熱伝達率で、物の形や、まわりの空気・水の性質、流れ方で決まる値です(このページの図では h と書いています)。
物の熱容量(温度を 1℃ 上げるのに必要な熱)を C とすると、−C dT/dt = αS(T − Tm) となり、これを解くと T = (T0 − Tm) exp(−αSt/C) + Tm になります(T0 ははじめの温度)。
時定数:冷え方の速さを1つの数で表す
上の式の C/(αS) は時間の単位を持つ値で、時定数(τ、タウ)と呼びます。Wikipedia 英語版は、質量 m、比熱 c を使って τ = mc/(hA) と書いています。時定数がたつごとに、物とまわりの温度の差は約 37%(1/e)に縮みます。
| 経過時間 | 残っている温度の差 | 冷めた割合 |
|---|---|---|
| 時定数の 1 倍 | 約 36.8% | 約 63.2% |
| 2 倍 | 約 13.5% | 約 86.5% |
| 3 倍 | 約 5.0% | 約 95.0% |
| 5 倍 | 約 0.7% | 約 99.3% |
表の値は e−1、e−2 などを編集部が計算したものです。時定数は、重い物・比熱の大きい物ほど長く(冷めにくく)、表面積が大きい物・熱伝達率が大きい(風や水で冷やす)ほど短く(冷めやすく)なります。
出典:ニュートンの冷却の法則|ウィキペディア日本語版、Newton’s law of cooling|Wikipedia 英語版

出典:Wikipedia 英語版「Newton’s law of cooling」をもとに AI(Claude)で作成
グラフは、90℃ の物が 20℃ の部屋で、時定数 10 分で冷える例です。10 分で約 46℃、20 分で約 29℃、30 分で約 23℃ になります。はじめは速く冷め、まわりの温度に近づくほど冷え方がゆるやかになるのが、この法則の冷え方の特徴です。オレンジの点線は、はじめの冷え方のまま続いたとすると、ちょうど時定数でまわりの温度に届くことを示しています。
計算例:何分で何度まで冷えるか

出典:Wikipedia 英語版「Newton’s law of cooling」をもとに AI(Claude)で作成
解の式を時間 t について解くと、t = τ × ln{(T0 − T∞) ÷ (T − T∞)} になります(ln は自然対数)。200℃ の部品を 20℃ の空気中で 40℃ まで冷やすとき、時定数が 10 分なら、温度の差が 180℃ から 20℃ へ 9 分の 1 になるので、t = 10 × ln 9 ≒ 約 22 分です。
時定数は、2回測れば求められる
時定数は、物の質量・比熱・表面積・熱伝達率から計算できますが、熱伝達率は置き方や風で大きく変わるので、実物で測るほうが確かなことが多くあります。冷えている途中の温度を2回測れば、τ = 経過時間 ÷ ln{(1回目の温度 − まわり) ÷ (2回目の温度 − まわり)} で求められます。たとえば 90℃ の物が 10 分後に 46℃(まわり 20℃)になったなら、τ = 10 ÷ ln(70 ÷ 26) ≒ 10 分です(この計算は編集部によるものです)。
熱伝達率で冷え方は大きく変わる
時定数に入る熱伝達率 h は、冷やし方で何桁も変わります。The Engineering ToolBox の表では、単位 W/(m²·K) で、強制対流(ファンなどで流す)の空気・気体が 10〜1,000、強制対流の水・液体が 50〜10,000、沸騰する水が 3,000〜100,000 です。範囲は広いものの、空気より水、水より沸騰のほうが熱をよく運ぶので、同じ物でも水に入れると時定数がずっと短くなります。熱伝達率の意味は基礎知識:熱伝達率で説明しています。
出典:Convective Heat Transfer|The Engineering ToolBox(英語)
法則が使える条件と、ずれる場面

出典:Wikipedia 英語版「Lumped-element model」、Wikipedia 英語版「Newton’s law of cooling」をもとに AI(Claude)で作成
この式は、物全体を1つの温度で表せる(物の中の温度がほぼ一様な)ことを前提にしています。この考え方を集中熱容量法(ランプドキャパシタンス法)といいます。Wikipedia 英語版は、目安としてビオ数 Bi が 0.1 より小さいことを挙げています。ビオ数は h × L ÷ λ(L は体積 ÷ 表面積、λ は物の熱伝導率)で、物の中を熱が伝わりにくい度合いと、表面から熱が逃げやすい度合いの比です。コロラド大学ボルダー校の教材 LearnChemE も、使う前に Bi < 0.1 を必ず確かめるよう書いています。
小さくて熱を通しやすい金属の部品は条件に合いやすく、大きな部品や樹脂・セラミックスのように熱を通しにくい物は、中が熱く表面だけ冷えた状態になり、熱伝導の計算が必要になります。熱の通しやすさは基礎知識:熱伝導率で説明しています。
出典:Lumped-element model|Wikipedia 英語版、Lumped capacitance method for analyzing transient conduction problems(Summary)|LearnChemE(コロラド大学ボルダー校、英語)、Newton’s law of cooling|Wikipedia 英語版
温度の差が大きいときは、ずれてくる
ウィキペディア日本語版は、経験から導かれた法則なので、温度の差が極端に大きいときは成り立たないこともあり、日常的な範囲では近似的に成り立つとしています。Wikipedia 英語版は、冷やし方ごとの合い方を次のように説明しています。ずれるのは自然対流と放射の2つで、強制対流はよく合う例です。
| 場面 | ずれる理由 | 法則の合い方 |
|---|---|---|
| ファンの風・ポンプで流す液体で冷やす(強制対流) | 熱伝達率が温度の差でほとんど変わらない | よく合う |
| 何もしない空気の中に置く(自然対流) | 温まった空気が浮く強さが温度の差で変わり、熱伝達率も変わる | 温度の差が小さいときだけ近似的に合う |
| 高温の物が光(赤外線)で熱を出す(放射) | 絶対温度の4乗の差で熱が出る(ステファン・ボルツマンの法則) | 温度の差がとても小さいときを除き、従わない |
このため、赤熱するような高温の物の冷え方を、この法則だけで計算すると外れます。放射の出しやすさは基礎知識:放射率で説明しています。
出典:ニュートンの冷却の法則|ウィキペディア日本語版、Newton’s law of cooling|Wikipedia 英語版
ものづくりで出てくる場面
温度センサーの応答時間(時定数)

出典:林電工、オメガをもとに AI(Claude)で作成
熱電対や測温抵抗体などの温度センサーも、自分自身が温まったり冷えたりするのに時間がかかります。センサーメーカーの林電工は、温度の変化を 100% としたとき、センサーの表示が 63.2% に達するまでの時間を時定数と呼ぶとしています。オメガは、ほぼ 100% に達するには時定数の約 5 倍の時間が必要としています。63.2% という数は、ニュートンの冷却の法則と同じ指数関数の形(1 − 1/e)から出てくるものです。
林電工は、室温から十分に温度の差のある、かき混ぜた水の中や静止した空気の中へセンサーを瞬時に移して測り、温める向きと冷やす向きの平均をとる、という試験のしかたも示しています。同社が公開しているタイプ K のシース熱電対の値は次のとおりです。
| シースの外径 | かき混ぜた水の中:時定数 | 静止した空気の中:時定数 |
|---|---|---|
| 1.0 mm | 0.1 秒未満 | 12 秒 |
| 1.6 mm | 0.9 秒 | 28 秒 |
| 3.2 mm | 2.8 秒 | 69 秒 |
| 8.0 mm | 7.9 秒 | 412 秒 |
同じ外径 3.2 mm でも、かき混ぜた水の中では 2.8 秒、静止した空気の中では 69 秒と、まわりが水か空気かで20倍以上違います。熱伝達率の違いがそのまま時定数に出ている例です(この読み方は編集部によるものです)。オメガは、シースの径が小さいほど応答は速くなるが、使える最高温度は低くなる場合があるとしています。
このため、温度が速く変わる物を測るときは、細いセンサーを選ぶ、測る物によく触れさせる、表示が落ち着くまで時定数の数倍は待つ、といったことが必要です。触れずに測る方法は課題:加熱中の部品の温度を非接触で正しく測りたいで扱っています。
出典:測温抵抗体・熱電対の応答速度について|林電工、熱電対|オメガ(日本語サイト)
部品・装置が冷めるまでの時間を見積もる
加工や熱処理のあとの部品が、手で持てる温度になるまでの時間や、止めた装置が冷めるまでの時間を見積もるときも、時定数の考え方が使えます。実物で途中の温度を2回測って時定数を出せば、上の計算例の式で、何度になるまで何分かかるかの見当がつきます(物の中の温度が一様に近く、置き方が変わらない場合の目安です)。電子機器の部品の温度を下げる設計は課題:ヒートシンクの大きさを熱抵抗から計算して選びたいと課題:小型化で部品の温度が上がるで扱っています。
ニュートンの冷却の法則の話が出てくるページ
出典
- ニュートンの冷却の法則|ウィキペディア日本語版
- Newton’s law of cooling|Wikipedia 英語版
- Convective Heat Transfer|The Engineering ToolBox(英語)
- Lumped-element model|Wikipedia 英語版
- Lumped capacitance method for analyzing transient conduction problems(Summary)|LearnChemE(コロラド大学ボルダー校、英語)
- 測温抵抗体・熱電対の応答速度について|林電工
- 熱電対|オメガ(日本語サイト)
※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。グラフと計算の値は、物の中の温度が一様で、まわりの温度と熱伝達率が変わらないとして編集部が計算したものです。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・装置ではありません。
情報の確認日:2026年11月7日
