熱伝導率(ねつでんどうりつ)は、材料の中を熱がどれだけ通り抜けやすいかを表す数値です。フライパンの取っ手、パソコンの放熱、家の断熱材など、熱を「逃がしたい」ときにも「逃がしたくない」ときにも、材料を選ぶ基本的な物差しのひとつです。このページでは、熱伝導率の意味、計算のしかた、身の回りの材料の値、ものづくりでの使われ方を、できるだけやさしく説明します。
ひとことで言うと
熱伝導率とは
同じ形の板の両側に同じ温度差をつけたとき、どれだけ熱が通り抜けるかを材料ごとに比べた数値です。
大きいほど熱を通しやすく(銅・アルミニウムなどの金属)、小さいほど熱を通しにくい(樹脂・木・発泡スチロール・空気)。単位は W/(m·K)(ワット毎メートル毎ケルビン)です。

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熱の伝わり方には、物の中を伝わる「熱伝導」、流れる液体や気体が運ぶ「対流(熱伝達)」、光のように飛んでいく「熱放射(ふく射)」の3つがあります。熱伝導率は、このうち熱伝導の伝わりやすさを表す値で、材料そのものの性質(物性値)です。
出典:伝熱工学 第1章|筑波大学 阿部豊、伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)
身近な例:同じ温度でも、金属は冷たく感じる
冬の朝、同じ部屋に置いてあった鉄の手すりと木の机を触ると、鉄のほうがずっと冷たく感じます。温度計で測れば、どちらも部屋と同じ温度です。

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違いは、手から熱を奪う速さです。金属は熱をどんどん奥へ伝えるので、手が触れた所がなかなか温まらず、手の温度が下がり続けます。木は熱を奥へ伝えにくいので、触れた所がすぐ手の温度に近づき、冷たく感じにくくなります。
もう少し正確に言うと、触れたときの冷たさは、熱伝導率だけでなく密度と比熱もかけ合わせた「熱浸透率」(√(熱伝導率×密度×比熱))で決まります。衣服の生地の「ひんやり感」を調べた研究でも、冷たさを決める値は熱浸透率だと考えられています。ただ、金属と木のように熱伝導率が何百倍も違うものどうしでは、熱伝導率の違いが大きく効きます(編集部の解説)。
出典:仲三郎「被服材料の冷感に関する研究」東京家政大学研究紀要 第18集
式と単位:熱の量は「熱伝導率×面積×温度差÷厚さ」
厚さ L の板の片側が温度 T₁、反対側が T₂(T₁ のほうが高い)のとき、温度が時間で変わらない状態では、板を通り抜ける熱の量 Q は次の式で表せます。これをフーリエの法則といいます。

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| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 1秒あたりに通る熱の量 | W(ワット) |
| λ(または k) | 熱伝導率 | W/(m·K) |
| A | 熱が通り抜ける面の面積 | m² |
| T₁ − T₂ | 両側の温度差 | K(℃の差と同じ) |
| L | 板の厚さ | m |
式から分かるとおり、熱伝導率が2倍なら通る熱も2倍、厚さが2倍なら通る熱は半分です。熱伝導率の単位 W/(m·K) は、「厚さ1m・面積1m² の板の両側に1K(1℃)の温度差をつけたとき、何W の熱が通るか」と読むことができます。
また、L÷(λ×A)を「熱抵抗」と呼びます。電気の抵抗と同じように、熱抵抗が大きいほど熱が通りにくく、同じ熱を流すのに大きな温度差が要ります。
出典:伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)、伝熱工学 第1章|筑波大学 阿部豊
計算してみよう:材料で温度差がこんなに変わる
厚さ 5mm(0.005m)、40mm 角(面積 0.0016m²)の板に、毎秒 10W の熱を通すとします。電子部品の熱をヒートシンクへ逃がす土台の板を思い浮かべてください。式を温度差について直すと、温度差 = Q × L ÷(λ × A)= 10 × 0.005 ÷(λ × 0.0016)です。

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| 材料 | 熱伝導率 W/(m·K) | 板の両面の温度差 |
|---|---|---|
| 銅 | 398 | 約 0.08℃ |
| アルミニウム | 237 | 約 0.13℃ |
| 鉄 | 80.3 | 約 0.39℃ |
| ステンレス鋼 | 16 | 約 2.0℃ |
| アクリル樹脂 | 0.21 | 約 149℃ |
金属の板ならほとんど温度差は出ませんが、同じ形を樹脂で作ると、両面で100℃以上の温度差がつく計算になります。実際の製品では熱が横にも広がるのでこの通りにはなりませんが、樹脂の部品が熱の通り道に入ると温度が大きく上がる理由が分かります(熱伝導率の値は東北大学の資料の表、計算は編集部)。
出典:伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)
身の回りの材料の熱伝導率
材料によって熱伝導率は 数万倍も違います(下の表のダイヤモンドと空気で約4万倍)。この表の中でいちばん熱を通しにくいのは空気です。発泡スチロールや断熱材が熱を通しにくいのは、中に空気を細かく閉じ込めているからです(編集部の解説)。

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| 材料 | 熱伝導率 W/(m·K) | メモ |
|---|---|---|
| ダイヤモンド | 1000 | 非金属だが、とても大きい |
| 銅 | 398 | 放熱部品・電線 |
| アルミニウム | 237 | ヒートシンク・筐体 |
| 鉄 | 80.3 | |
| 炭素鋼 | 43 | |
| アルミナセラミックス | 36.0 | 絶縁と放熱を両立する基板など |
| チタン | 21.9 | |
| ステンレス鋼 | 16 | 金属の中では小さい |
| ガラス | 1.03 | |
| 水 | 0.61 | |
| アクリル樹脂 | 0.21 | 樹脂は一般に 0.2 前後 |
| 木材 | 0.14 | |
| 発泡スチロール | 0.038 | 空気を閉じ込めた材料 |
| ウレタンフォーム | 0.030 | 同上 |
| 空気 | 0.0261 | この表でいちばん小さい |
値は東北大学の講義資料の表(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋。「常温近傍」の値)。同じ「アルミニウム」「ステンレス鋼」でも、合金の種類や作り方で値は変わるので、設計にはメーカーの資料の値を使います。
出典:伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)
金属はなぜ熱を通しやすいのか

金属の中には自由に動き回る電子があり、この電子が熱も運びます。そのため、電気を通しやすい金属ほど熱も通しやすいという関係があり、ウィーデマン=フランツ則と呼ばれています(1853年に報告)。電子が自由に動けない材料では、原子の振動(格子振動。フォノンとも呼ぶ)が熱を運びます。樹脂やガラスの熱伝導率が小さいのはこのためです(編集部の解説)。一方、絶縁体のセラミックスでも、軽い元素が強く結び付いた対称性の高い結晶では、格子振動が熱をよく伝えます(窒化ケイ素の解説より)。
出典:井野明洋「固体物理学 I 講義ノート」|広島大学、高い熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックス|産業技術総合研究所 AIST Today vol.12-02
工業材料の値の例:セラミックスと断熱材
| 材料 | 熱伝導率 W/(m·K) | 出典 |
|---|---|---|
| 炭化ケイ素(SiC) | 170 | フェローテックの製品の例 |
| 窒化アルミニウム(AlN) | 80〜150 | 同上(品番で違う) |
| アルミナ | 24〜34 | 同上(純度などで違う) |
| 窒化ケイ素 | 23 | 同上 |
| ジルコニア | 3 | 同上 |
| 押出法ポリスチレンフォーム(2・3種)など | 0.029〜0.034 | 国土交通省の断熱材の区分 D |
| 住宅用グラスウール 16K・20K 相当など | 0.046〜0.050 | 国土交通省の断熱材の区分 A-2 |
セラミックスは、同じ「窒化アルミニウム」でも製品によって値が倍ほど違います。断熱材は、熱伝導率の範囲で A-1・A-2・B〜F の区分が決められていて、F に近い区分ほど熱伝導率が小さく、熱を通しにくい材料です。
出典:ファインセラミックス 特性表|フェローテックマテリアルテクノロジーズ、断熱材の熱伝導率による区分(別添2)|国土交通省
向きで値が違う材料もある

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多くの金属などは向きによる差が小さいのですが(編集部の解説)、向きによって値が大きく違う材料もあります。熱を広げるのに使われる人工グラファイトシートは、面の方向が約 1,500 W/(m·K) なのに、厚みの方向は 5 W/(m·K) 程度しかありません。樹脂に混ぜて熱を通しやすくする窒化ホウ素(h-BN)の粒も、向きで約 200 と 2〜3 W/(m·K) と違います。カタログの値を見るときは、どの向きの値かを確かめます。
出典:日夏・藤原「半導体パッケージ周辺用の放熱材料の開発」エレクトロニクス実装学会誌 17巻3号、樹脂の熱伝導率向上に資する複合フィラーの開発|長野県工業技術総合センター(JST 新技術説明会)
よく似た言葉「熱伝達率」との違い

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| 熱伝導率 | 熱伝達率 | |
|---|---|---|
| どこの熱の移り方か | 固体(や静止した液体・気体)の中 | 固体の表面と、流れる液体・気体の間 |
| 単位 | W/(m·K) | W/(m²·K) |
| 何で決まるか | 材料の性質(物性値) | 流れの速さ・液体か気体か・沸騰しているかなど |
| 値の例 | アルミニウム 237、空気 0.0261 | 空気の流れの例 25、水の自然対流 10〜800、沸騰の例 5,000 |
名前が似ていますが、熱伝導率は材料の性質、熱伝達率は流れ方で変わる値で、別のものです。同じアルミニウムのヒートシンクでも、ファンで風を当てると熱伝達率が上がってよく冷えます。放熱を考えるときは、材料の熱伝導率と、表面から空気や水へ逃がす熱伝達率の両方を見ます。
出典:伝熱工学 第1章|筑波大学 阿部豊、伝熱工学 第1章 演習問題の解答|広島大学 熱工学研究室
ものづくりでどう効くか
放熱:熱の通り道に「通しにくい所」を作らない

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電子部品やモーターの熱は、部品 → すき間 → ヒートシンクや筐体 → 空気、と順に通って逃げていきます。通り道のどこか1か所でも熱を通しにくい所があると、そこで温度が大きく上がります。特に問題になるのが、部品とヒートシンクの間にできる薄い空気の層です。東北大学の資料では、厚さ 100μm(髪の毛1本ほど)の空気の層の熱抵抗は、厚さ1m のアルミニウムと同じと紹介されています。このすき間を埋めるのが、放熱シートや放熱グリース(TIM)です。
詳しくは技術ページ「放熱シート・グリス」、分野ページ「熱」で扱っています。
出典:伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)
樹脂やセラミックスに熱を通しやすくする

樹脂は軽くて形を作りやすく、電気を通さないので部品によく使われますが、熱伝導率は一般に 0.2 W/(m·K) 程度と小さく、放熱の弱点になりがちです。そこで、熱を通しやすいセラミックスの粒(フィラー)をたくさん混ぜたり、樹脂の分子をそろえて並べたりして、熱を通しやすくした樹脂が開発されています。電気を通さず熱は通したい回路の基板には、窒化アルミニウムや窒化ケイ素などのセラミックスも使われます。
出典:低融点・放熱性エポキシ樹脂の開発|関西大学 シーズ集、樹脂の熱伝導率向上に資する複合フィラーの開発|長野県工業技術総合センター(JST 新技術説明会)、高い熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックス|産業技術総合研究所 AIST Today vol.12-02、ファインセラミックス 特性表|フェローテックマテリアルテクノロジーズ
断熱:熱を通したくない所には、空気を閉じ込めた材料

熱を逃がしたくない炉の外側、冷蔵庫や配管の保温、家の壁などには、熱伝導率の小さい断熱材を使います。グラスウールや発泡スチロール、ウレタンフォームは、熱を通しにくい空気を細かい泡や繊維のすき間に閉じ込めて(編集部の解説)、0.02〜0.05 W/(m·K) ほどの小さな熱伝導率にしています。同じ断熱材なら、厚くするほど熱抵抗が大きくなり、熱が通りにくくなります。
出典:断熱材の熱伝導率による区分(別添2)|国土交通省、伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)
熱伝導率の測り方

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- 定常法:試料に一定の熱を流し続け、温度が落ち着いてから、温度の下がり方(温度勾配)から熱伝導率を求めます。熱伝導率の分かった基準の棒で試料をはさむ「温度傾斜法」は、樹脂とセラミックスを混ぜた複合材料や TIM のように、中身が均一でない材料にも使えます。
- フラッシュ法:薄い円板の試料の片面にパルス光を当てて一瞬温め、反対の面の温度の上がり方から「熱拡散率」(熱が広がる速さ)を測り、比熱と密度をかけて熱伝導率を出します(しくみは編集部の解説)。均質で緻密な材料に向いていて、JIS R 1611(ファインセラミックスの熱拡散率・比熱容量・熱伝導率)や JIS H 7801(金属の熱拡散率)で方法が決められています。
- 断熱材は、JIS A 1412(保護熱板法・熱流計法)などの方法で測ります。
測り方や温度によって値は少し変わるので、カタログの値を比べるときは、測定方法と温度もそろえて見ます。
出典:日鉄テクノロジーつうしん 2021年初春号(定常法熱伝導率測定装置のご紹介)|日鉄テクノロジー、熱物性標準 規格一覧(固体の熱拡散率・熱伝導率)|産業技術総合研究所、JIS A 9521:2022 建築用断熱材(見本)|日本規格協会
熱伝導率が出てくるページ
出典
- 伝熱工学 第1章|筑波大学 阿部豊
- 伝熱工学の基礎と応用 2-1 定常熱伝導と物質の熱伝導率|東北大学 圓山重直(日本機械学会『伝熱工学資料 改訂第5版』より抜粋の表を含む)
- 仲三郎「被服材料の冷感に関する研究」東京家政大学研究紀要 第18集
- 井野明洋「固体物理学 I 講義ノート」|広島大学
- 高い熱伝導率をもつ窒化ケイ素セラミックス|産業技術総合研究所 AIST Today vol.12-02
- ファインセラミックス 特性表|フェローテックマテリアルテクノロジーズ
- 断熱材の熱伝導率による区分(別添2)|国土交通省
- 日夏・藤原「半導体パッケージ周辺用の放熱材料の開発」エレクトロニクス実装学会誌 17巻3号
- 樹脂の熱伝導率向上に資する複合フィラーの開発|長野県工業技術総合センター(JST 新技術説明会)
- 伝熱工学 第1章 演習問題の解答|広島大学 熱工学研究室
- 低融点・放熱性エポキシ樹脂の開発|関西大学 シーズ集
- 日鉄テクノロジーつうしん 2021年初春号(定常法熱伝導率測定装置のご紹介)|日鉄テクノロジー
- 熱物性標準 規格一覧(固体の熱拡散率・熱伝導率)|産業技術総合研究所
- JIS A 9521:2022 建築用断熱材(見本)|日本規格協会
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月1日
