手元の部品が何の材料かわからない。樹脂の色や強さがロットで変わった。部品の表面に、見覚えのない変色や付着物が出た。取引先から、規制物質が入っていない根拠を求められた。分析を頼もうとしても、どの方法を選べばよいか、いくらかかるのかがわからない。こうした迷いの多くは、「何を知りたいか」によって、使う分析の方法がまったく違うことが原因です。
元素なのか、化合物なのか、表面なのか、強さや熱の性質なのか。知りたいことを決めれば、使う技術と相談先が絞れます。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。
課題と解決技術のマトリクス
| 課題(症状) | 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光) | 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS) | 表面・微小部の分析(SEM-EDX・XPS) | 熱分析・熱物性 | 機械試験(引張・硬さ) |
|---|---|---|---|---|---|
| A金属の材質・成分がわからない、規格どおりか確かめたい | ◎ | ○ | ○ | ||
| B樹脂・ゴムの種類や添加剤がわからない | △ | ◎ | ○ | ||
| C表面の変色・汚れ・付着物・異物が何かわからない | ○ | ◎ | ◎ | ||
| D強度・硬さ・耐熱性・熱伝導率などの物性値を知りたい | ◎ | ◎ | |||
| ERoHSなどの規制物質が入っていないか確かめたい | ◎ | ○ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に使える方法は、試料の材質・大きさ・量、壊してよいかどうか、知りたいのが種類か量か、どの程度の少量まで調べたいかによって異なります。多くの場合、いくつかの方法を組み合わせて調べます。
記号の理由と出典(13件)
マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。
| 症状 | 技術 | 記号 | 理由 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| A | 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光) | ◎ | スパーク発光分光で約20元素を定量でき、鋼種や規格との照合に直接使えるため第一候補 | JFEテクノリサーチ |
| A | 表面・微小部の分析(SEM-EDX・XPS) | ○ | 成分そのものでなく、小さな析出物や異物を場所を絞って調べたいときに使える | 日鉄テクノロジー |
| A | 機械試験(引張・硬さ) | ○ | 成分が合っていても熱処理で変わる硬さを、部品の一部でも確かめられるため有効 | JFEテクノリサーチ |
| B | 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光) | △ | 元素では有機物の種類まで区別できず、難燃剤などの元素を調べる補助にとどまる | 編集部の解説 |
| B | 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS) | ◎ | 熱分解GC/MSは前処理なしで高分子材料を分析でき、樹脂の種類や添加剤を調べる第一候補 | 材料科学技術振興財団(MST) |
| B | 熱分析・熱物性 | ○ | 融点やガラス転移温度を正常品と比べ、樹脂の種類の見当や熱履歴の違いをつかめるため有効 | JAIMA |
| C | 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光) | ○ | 金属片などの異物なら、蛍光X線で材質を判定して社内の材料と比べられるため有効 | 編集部の解説 |
| C | 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS) | ◎ | 異物のスペクトルを既知のデータと比べて成分を特定でき、有機物の付着物の第一候補 | JTL(JAPAN TESTING LABORATORIES) |
| C | 表面・微小部の分析(SEM-EDX・XPS) | ◎ | 数nmの薄い変色や付着物の元素と化学結合の状態を直接調べられるため第一候補 | JAIMA |
| D | 熱分析・熱物性 | ◎ | 成形条件などで熱伝導性が変わるため、熱拡散率などを方向別・場所別に測る方法が第一候補 | ベテル |
| D | 機械試験(引張・硬さ) | ◎ | 規格の方法で引張の応力-ひずみ曲線を記録でき、強さと伸びを実際の部品で確かめられる | 神戸工業試験場 |
| E | 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光) | ◎ | 蛍光X線で規制対象の元素を1分程度でスクリーニングでき、規制物質の確認の第一候補 | 島津製作所 |
| E | 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS) | ○ | フタル酸エステルなど元素では区別できない有機物の規制物質を調べるため有効 | 編集部の解説 |
課題の診断と解決策
金属の材質・成分がわからない、規格どおりか確かめたい
手元の部品が何の鋼種かわからない。購入した材料が、ミルシートや図面の指定どおりの成分か確かめたい。混入した金属片の種類を知りたい。

- 起きている現象
- 金属の材質は、主成分のほかに、炭素・ケイ素・マンガン・クロムなど、少量の元素の量で決まります。見た目や磁石では区別できない材料も多く、同じ鋼種の中でも含有量で性質が変わります。
- 解決に使える技術
- 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光)スパーク放電発光分光分析で約20元素を定量する。炭素・硫黄は燃焼-赤外吸収法、微量元素はICP発光分光分析で測る
- 機械試験(引張・硬さ)成分が合っていても、熱処理の状態で強度や硬さは変わるため、引張試験や硬さ試験で確かめる
- 表面・微小部の分析(SEM-EDX・XPS)めっきや表面処理、小さな析出物や介在物は、SEM-EDXなどで場所を絞って調べる
蛍光X線は壊さずに測れるため、材質のふるい分けに向きます。一方、炭素などの軽い元素は測りにくいため、鋼種を正確に決めたいときは、発光分光分析や燃焼-赤外吸収法を使います。規格(JIS)の方法で成分を出したいときは、その方法に対応した分析機関に依頼します。
樹脂・ゴムの種類や添加剤がわからない
他社品や昔の部品の樹脂が何かわからない。ロットで色や強さが変わったので、添加剤や配合が変わっていないか確かめたい。硬化した接着剤の原料を知りたい。

- 起きている現象
- 樹脂やゴムの製品には、主成分のポリマーのほかに、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤が配合されています。主成分は同じでも、添加剤や充填剤の種類・量で性質が変わります。元素分析では、有機物の種類までは区別できません。
- 解決に使える技術
- 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS)FT-IRで主成分の種類を調べ、GC-MSや熱分解GC-MSで添加剤や揮発成分を調べる
- 熱分析・熱物性DSCで融点やガラス転移温度、TGAで重量の変化(充填剤の量など)を調べる
- 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光)臭素・リン・塩素など、難燃剤や充填剤に含まれる元素を調べる
添加剤は含有量が少ないものも多く、そのまま測るとポリマーの信号に埋もれます。溶剤で抽出するなどの前処理が必要になることがあり、試料の量と費用が変わります。どこまで知りたいか(主成分だけか、添加剤の量までか)を先に決めます。
表面の変色・汚れ・付着物・異物が何かわからない
部品の表面が変色した。めっきや塗装の上に、薄い曇りやしみが出た。製品の中に小さな異物が入っていた。どこから来たのかを知りたい。

- 起きている現象
- 表面の変色や付着物は、厚さが数nm〜数μmしかないことが多く、試料全体を溶かして測ると、ほかの成分に薄まって見えなくなります。異物も、周りの材料と分けて測る必要があります。
- 解決に使える技術
- 表面・微小部の分析(SEM-EDX・XPS)SEM-EDXで形と元素を、XPSで表面数nmの元素と化学結合の状態を調べる。ごく薄い有機物の汚れにはTOF-SIMSを使う
- 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS)顕微FT-IRで、有機物の異物や付着物の種類をスペクトルのデータベースと照らし合わせて調べる
- 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光)金属片などの異物は、蛍光X線などで材質を判定し、社内で使っている材料と比べる
表面の分析では、触ったり拭いたりすると状態が変わります。異物や変色した部分は、そのままの状態で清浄な容器に入れて送ります。比べるために、正常な部品も一緒に用意します。
強度・硬さ・耐熱性・熱伝導率などの物性値を知りたい
設計に使う材料のデータシートの値が、実際の部品でも出ているか確かめたい。成形品の場所によって強さや放熱がばらつく。耐熱温度を知りたい。

- 起きている現象
- 物性は、成分だけでは決まりません。金属は熱処理や加工で、樹脂は成形の条件や繊維・フィラーの向きで、強度や熱伝導率が変わります。データシートの値は標準の試験片で測った値のため、実際の部品では違うことがあります。
- 解決に使える技術
- 機械試験(引張・硬さ)引張試験で強さと伸びを、硬さ試験で局所の硬さを、規格の方法で測る
- 熱分析・熱物性DSC・TGA・TMAで、ガラス転移・融解・分解・熱膨張の温度を測る。熱伝導率・熱拡散率は、方向や場所ごとに測る
試験片の取り方で結果が変わります。部品から切り出すときは、どの場所・どの向きから取るかを記録し、比べたい相手と同じ条件にそろえます。
RoHSなどの規制物質が入っていないか確かめたい
欧州に出す製品で、RoHS指令の規制物質が入っていないことを確かめたい。取引先から、含有していない根拠を求められた。

- 起きている現象
- RoHS指令は、電気・電子機器に含まれる特定の有害物質の量を制限しています。部品や材料の数が多いため、全部を詳しく分析するのは現実的ではなく、まず非破壊の方法でふるい分け(スクリーニング)を行い、疑わしいものだけを詳しく調べる進め方が一般的です。
- 解決に使える技術
- 元素分析(蛍光X線・ICP・発光分光)蛍光X線で規制対象の元素をスクリーニングし、疑わしいものは溶かしてICPなどで量を測る
- 分子構造の分析(FT-IR・GC-MS)フタル酸エステルのように、元素だけでは区別できない有機物の規制物質は、GC-MSなどで調べる
蛍光X線でわかるのは元素の量で、その元素がどんな化合物として入っているかまではわかりません。スクリーニングで基準に近い値が出たら、規制の対象となる形態かどうかを、別の方法で確かめます。
なぜ、分析の方法選びで迷うのか
元素・化合物・表面・物性は、別々の方法で調べる
材料について知りたいことは、大きく分けて「どの元素がどれだけ入っているか」「どんな化合物か」「表面や小さな点に何があるか」「熱や力に対してどう振る舞うか」の4つです。これらは、それぞれ別の原理の方法で調べます。三菱電機グループのメルコセミコンダクタエンジニアリングは、表面分析について、試料の状態(対象箇所・大きさ、材質)や、知りたい情報(元素、化学状態、成分・量的)によって最適な手法を選ぶと説明しています。
たとえば、元素分析では同じ元素でできた化合物を区別できません。日鉄テクノロジーの解説によると、X線回折(XRD)は結晶相の同定によく使われ、構成元素が同じ化合物でも形態の違いを見分けることができます。同社は、酸化チタンのルチル型とアナターゼ型を混ぜた試料でも、それぞれの構造を判別できた例を示しています。

AI(Claude)で作成
調べられる深さと広さが、方法ごとに違う
同じ「成分を調べる」でも、試料のどこを見ているかが方法ごとに違います。蛍光X線やICP発光分光分析は、主に試料全体の組成を調べます。ICP発光分光分析では、固体の試料を酸やアルカリで分解して溶液にしてから測ります。
表面の分析は、ごく浅い層だけを見ます。日鉄テクノロジーの解説によると、SEM-EDXの検出深さは数100nm〜数μm(加速電圧や元素により異なる)です。日本分析機器工業会(JAIMA)の解説では、XPSは表面数nmに存在する元素を分析し、化学結合状態も調べられます。三井化学分析・相談センターの解説では、得られる深さの情報は、XPSが5〜6nm、TOF-SIMSが1〜2nmです。表面の薄い汚れを全体の分析で探しても見つからないのは、このためです。

出典:日鉄テクノロジー、JAIMA、三井化学分析・相談センターの解説をもとに AI(Claude)で作成
分析の進め方と費用の目安
分析は、試料を壊さない方法から先に進めるのが基本です。蛍光X線は、試料を構成する元素を非破壊かつ前処理なしで分析できます。先に観察と非破壊の分析で見当をつけ、そのあとで、試料を溶かしたり壊したりする分析で量や物性を出します。正常品や規格値と比べられるように、比べる相手も一緒に用意します。

AI(Claude)で作成
費用は、方法と前処理で大きく変わります。日東分析センターは業務案内で費用の目安を公開しています。添加剤分析の案内では、蛍光X線による構成元素分析が3〜4.5万円/検体、GC/MSによる揮発性有機物の構造解析が10〜20万円/検体です。微小異物分析の案内では、顕微FT-IRが6万円/検体、XPSが8〜12万円/検体、熱分解GC/MSが20万円/検体です。1つの問題に複数の方法を使うことも多いため、目的を伝えて、どの方法をどの順で使うかを相談してから依頼すると、むだが減ります。
出典:表面分析の種類と特徴|メルコセミコンダクタエンジニアリング、X線回折法(XRD)|日鉄テクノロジー、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)|日鉄テクノロジー、SEM-EDX|日鉄テクノロジー、X線光電子分光法(XPS)の原理と応用|JAIMA、コーティング処理面の状態解析-XPSおよびTOF-SIMS-|三井化学分析・相談センター、蛍光X線分析(XRF)|日鉄テクノロジー、高分子材料中の添加剤分析|日東分析センター、微小異物分析の紹介|日東分析センター
解決技術の詳細
材料を調べる技術は、大きく分けて、①元素分析、②分子構造の分析、③表面・微小部の分析、④熱分析・熱物性、⑤機械試験、の5つです。①〜③は「何でできているか(成分)」を、④と⑤は「熱や力に対してどう振る舞うか(物性)」を調べます。成分が同じでも、熱処理や成形の条件で物性は変わるため、両方を見ると原因の切り分けがしやすくなります。

AI(Claude)で作成
元素分析:どの元素が、どれだけ入っているか

蛍光X線分析(XRF)は、試料にX線を当て、元素ごとに固有のエネルギーを持つ蛍光X線を測る方法です。日鉄テクノロジーの解説によると、エネルギーの値で元素の種類を、X線の強度で量を調べ、試料を構成する元素を非破壊かつ前処理なしで分析できます。エネルギー分散型で分析できる最も軽い元素はNa(ナトリウム)までとされ、炭素などの軽い元素は測れません。RoHS指令の規制対象元素のスクリーニング用の装置もあり、島津製作所は、測定の開始から結果判定まで試料によっては1分程度としています。
ICP発光分光分析(ICP-OES)は、試料を溶液にしてプラズマに導き、元素が出す光を測る方法です。日鉄テクノロジーの解説によると、固体の試料も酸やアルカリで分解して溶液にすれば分析でき、材料中の濃度で数十ppm〜数十%程度まで、多元素を同時に測れます。
金属材料の成分を正確に出すには、スパーク放電発光分光分析と、炭素・硫黄の分析を組み合わせます。JFEテクノリサーチは、スパーク発光分光分析で低合金鋼の約20元素を定量した例を示しています。炭素と硫黄は燃焼-赤外線吸収法で測り、同社の鉄鋼分析の例では、定量下限は炭素5wt ppm、硫黄10wt ppmです。
分子構造の分析:どんな化合物・樹脂か

FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)は、主に有機化合物の構造を推定する装置です。島津製作所の解説によると、赤外線を分子に当てると、分子を構成する原子間の振動エネルギーに相当する赤外線が吸収され、この吸収の度合いから化合物の構造を推定します。受託分析のJTL(JAPAN TESTING LABORATORIES)は、測ったスペクトルをデータベース(既知のスペクトル)と比べて異物の成分を特定すること、試料の形や目的に合わせて透過法・反射法・ATR法を使い分けること、50μm×50μm程度・厚さ10μm程度までの微小な試料も分析できることを挙げています。
添加剤や揮発成分には、GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)を使います。材料科学技術振興財団(MST)の資料によると、熱分解GC/MSは、試料導入部に熱分解装置を付けたGC/MSで、複雑な前処理が必要だった高分子材料も、加熱分解して前処理なしで分析できます。加熱の条件を変えて2段階で測る(ダブルショット法)と、同じ試料から、添加剤などの揮発性の成分と、高分子材料の情報を別々に得られます。硬化した樹脂のように溶剤に溶けない試料でも、日東分析センターは、試薬と反応させながら熱分解する方法(反応熱分解GC/MS)で構成モノマーを同定した事例を公開しています。
表面・微小部の分析:表面や小さな点に何があるか
SEM-EDXは、走査電子顕微鏡で拡大して見ながら、狙った場所の元素を調べる方法です。日鉄テクノロジーの解説によると、SEMで観察した領域内の特定の箇所の元素・組成を分析でき、測れる元素はB(ホウ素)〜U(ウラン)、検出下限は金属の場合で0.5%程度です。異物や析出物、破面の付着物など、場所を絞って調べたいときに使います。


XPS(X線光電子分光)は、表面のごく浅い層の元素と、その化学結合の状態を調べる方法です。JAIMAの解説によると、表面数nmに存在する元素(Li〜U)について、定性・定量分析のほか、化学結合状態の分析ができます。元素が他の元素と結合すると、ピークの位置が変わる(化学シフト)ため、同じ金属でも、金属のままか酸化物になっているかを見分けられます。さらに浅い層の、分子の構造の情報が欲しいときは、TOF-SIMSを使います。
熱分析・熱物性:熱を加えると何が起きるか

熱分析は、物質の温度を一定のプログラムで変えながら、その物理的な性質を温度の関数として測る技法の総称です。島津製作所の解説によると、DSC(示差走査熱量計)は融解・ガラス転移・結晶化などの転移や、硬化などの反応、比熱容量を、TG(熱重量測定)は昇華・蒸発・脱水・熱分解など重量の変化を伴う現象を、TMA(熱機械分析)はガラス転移・熱膨張・軟化など寸法の変化を伴う現象を測ります。
JAIMAの解説では、PET(ポリエチレンテレフタレート)をDSCで測ると、73℃付近にガラス転移、133℃付近に冷結晶化による発熱ピーク、258℃付近に融解ピークが見られた例を示しています。こうした温度を正常品と比べると、樹脂の種類の見当や、成形・熱履歴の違いの手がかりになります。
熱伝導率や熱拡散率などの熱物性は、専用の装置で測ります。ベテルは、熱拡散率測定装置の解説で、フィラーと樹脂の複合材料は配合比率で熱伝導性が大きく変わること、同じ樹脂でも成形条件や金型の形状で熱伝導性が変わることを挙げ、方向別や分布の測定をすすめています。
機械試験:どれだけの力に耐えるか

金属材料の強さと伸びは、引張試験で測ります。神戸工業試験場の解説によると、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)は、ISO 6892-1を基にした日本産業規格で、室温(10〜35℃)で金属試験片を特定の速度で引っ張り、破断するまでの応力-ひずみ曲線を記録します。

硬さ試験は、圧子を押し込んだくぼみから硬さを求めます。JFEテクノリサーチの解説によると、ビッカース硬さ試験は頂角136°のダイヤモンドの正四角すいを押し込み(試験荷重は0.9807N〜98.07N)、ロックウェル硬さ試験は頂角120°のダイヤモンドの円すいなどを、ブリネル硬さ試験は超硬合金球などを押し込みます。硬さは小さな試料や部品の一部でも測れるため、熱処理の状態の確認や、場所による違いの比較に使われます。
出典:蛍光X線分析(XRF)|日鉄テクノロジー、EDX-LE Plus|島津製作所、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)|日鉄テクノロジー、スパーク発光分光分析装置を用いた低合金鋼の主成分分析例|JFEテクノリサーチ、金属材料などの成分分析|JFEテクノリサーチ、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)|島津製作所、FT-IR-受託分析|JTL、熱分解GC/MSを用いた発生ガス分析及び高分子材料の同定|MST、UV硬化型樹脂硬化物の組成分析|日東分析センター、SEM-EDX|日鉄テクノロジー、X線光電子分光法(XPS)の原理と応用|JAIMA、熱分析とは?|島津製作所、示差走査熱量計(DSC)の原理と応用|JAIMA、サーモウェーブアナライザ TA|ベテル ハドソン研究所、JIS Z 2241|神戸工業試験場、硬さ試験|JFEテクノリサーチ
成分分析・物性測定の技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。分析装置を買って社内で測るか、分析機関に依頼するかによって、相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| 島津製作所 | 分析装置メーカー | 蛍光X線分析装置、FT-IR、熱分析装置、材料試験機などを自社で開発し、RoHSのふるい分けや樹脂・異物の分析、熱的性質や強度の測定を社内でできるようにする。 | A 金属の材質・成分がわからない、規格どおりか確かめたい B 樹脂・ゴムの種類や添加剤がわからない D 強度・硬さ・耐熱性・熱伝導率などの物性値を知りたい E RoHSなどの規制物質が入っていないか確かめたい | |
| 神戸工業試験場 | 受託試験・分析 | 金属材料の成分分析、引張・硬さ試験、異物や付着物の成分分析を、第三者機関として一貫して受託する。 | A 金属の材質・成分がわからない、規格どおりか確かめたい B 樹脂・ゴムの種類や添加剤がわからない C 表面の変色・汚れ・付着物・異物が何かわからない D 強度・硬さ・耐熱性・熱伝導率などの物性値を知りたい | |
| コベルコ科研 | 受託分析(表面・微小部) | XPS・電子顕微鏡などで、表面の変色や薄い膜、μmサイズの付着物・析出物の元素と化合物を調べる。 | A 金属の材質・成分がわからない、規格どおりか確かめたい C 表面の変色・汚れ・付着物・異物が何かわからない | |
| 日東分析センター | 受託分析(高分子) | 樹脂・ゴム・粘着剤の主成分や添加剤、硬化した樹脂の原料、小さな異物が何かを調べる。 | B 樹脂・ゴムの種類や添加剤がわからない C 表面の変色・汚れ・付着物・異物が何かわからない E RoHSなどの規制物質が入っていないか確かめたい | |
| ベテル | 熱物性測定 | 放熱シートや高熱伝導樹脂、薄膜・小さな部品の熱伝導率・熱拡散率を、方向別や分布まで測る。 | D 強度・硬さ・耐熱性・熱伝導率などの物性値を知りたい |
株式会社島津製作所|元素・分子・熱・強度を測る装置をそろえる分析装置メーカー
島津製作所とは
島津製作所は、京都市に本社を置く、1875年創業(1917年設立)の分析計測機器・医用機器などのメーカーです。蛍光X線分析装置、FT-IR、熱分析装置、材料試験機など、この記事で紹介する分析・試験の装置を自社で開発しています。

出典:島津製作所の製品情報をもとに AI(Claude)で作成
島津製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| エネルギー分散型蛍光X線分析装置 EDX-LE Plus | RoHS/ELV指令の規制対象元素のスクリーニングに適した装置。測定の開始から結果判定までの時間は、試料によっては1分程度。塩素(オプション)のスクリーニングにも対応し、大型の試料室で大きな試料もそのまま測れる |
| フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR) | 主に有機化合物の構造推定(定性)を行う装置。赤外顕微鏡ユニットなどの付属装置もあり、電子部品の微小な不具合箇所の定性などに使われている |
| 熱分析装置・材料試験機 | 示差走査熱量計 DSC-60 Plusシリーズは、-140〜600℃の全温度範囲で安定したベースライン、熱量測定範囲±150mW。精密万能試験機 オートグラフ AGX-V2シリーズで、材料の強度などの機械的な特性を評価できる |
同社は熱分析について、材料特性を評価するには、DSC、TG、TMAなどの技法を目的に応じて使い分けるか、複数の技法の結果を合わせて評価することが必要だと解説しています。
島津製作所が解決できる課題
- 出荷前に、RoHS指令の規制物質が入っていないかを社内でふるい分けたい
- 樹脂や異物の種類を、社内のFT-IRで調べたい
- 熱的性質や強度を、自社で繰り返し測れるようにしたい
出典:EDX-LE Plus|島津製作所、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)|島津製作所、示差走査熱量計 DSC-60 Plusシリーズ|島津製作所、オートグラフ AGX-V2シリーズ|島津製作所、熱分析とは?|島津製作所、会社概要|島津製作所
株式会社神戸工業試験場|金属の成分分析から、引張・硬さ試験、異物分析まで一貫して受託
神戸工業試験場とは
神戸工業試験場は、兵庫県加古郡播磨町に本社を置く、1950年設立の受託試験・分析会社です。試験片の加工から始まり、材料試験、化学分析へと事業を広げ、2015年に3社を統合して総合的な受託試験・分析会社になりました。「独立資本による第三者機関」を経営の柱の一つにしています。

神戸工業試験場の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 金属成分分析・鉄鋼分析 | ICP発光分光分析計、スパーク放電発光分光分析装置、酸素・窒素分析計、炭素・硫黄分析計を持つ。鉄及び鋼の炭素・ケイ素・リン・硫黄の定量(JIS G 1211・1212・1214・1215)、ICP発光分光分析方法(JIS G 1258)、スパーク放電発光分光分析方法(JIS G 1253)に対応 |
| 化学分析・状態分析 | 金属・非金属・セラミックスなどの成分分析、高分子材料・油脂などの有機物の定性・定量、製品中の極微小混入物(付着物)などの異物分析。SEM-EDX、X線回折、赤外分光、ガスクロマトグラフ質量分析などを使う |
| 機械試験 | 引張試験、ロックウェル硬さ試験、静的強度・破壊靭性試験、疲労試験、クリープ試験など。引張試験では、試験片に引張方向の力を加え、破断したときの力や伸びた量を調べる |
神戸工業試験場が解決できる課題
- 購入した金属材料の成分が、規格どおりかを確かめたい
- 製品に付いた異物や付着物の成分を調べたい
- 材料の強度・伸び・硬さを、規格の方法で測りたい
出典:金属成分分析・鉄鋼分析|神戸工業試験場、化学分析・状態分析|神戸工業試験場、受託試験サービス|神戸工業試験場、企業概要|神戸工業試験場
株式会社コベルコ科研|XPS・電子顕微鏡など、表面と微小部を調べる装置で受託分析
コベルコ科研とは
コベルコ科研は、神戸市に本社を置く、1979年設立の神戸製鋼グループの会社です。物理解析、化学・環境分野、機械・構造評価、材料試験などの受託試験研究を行っています。

出典:コベルコ科研の装置一覧をもとに AI(Claude)で作成
コベルコ科研の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 表面の分析 | X線光電子分光装置(μ-XPS、X線ビーム径9〜200μm)、オージェ電子分光装置(FE-AES、分析時の最小プローブ径8nm)、二次イオン質量分析装置(SIMS)などを持つ |
| 微小部の観察と元素・構造の分析 | 電界放出型走査電子顕微鏡(EDXによる元素分析B〜U)、EPMA、微小部X線回折装置(ビーム径 最小10μmφ)、顕微FT-IR(微小域100μmφのATR分析)、レーザーラマン分光(分析領域 最小1μm)など |
| 熱物性と微量元素 | レーザーフラッシュ熱定数測定装置、熱物性顕微鏡(熱浸透率・熱伝導率、検出光径約1μm)。ICP-MS、フレームレス原子吸光、全反射蛍光X線分析装置による微量元素の分析 |
コベルコ科研が解決できる課題
- 部品の表面が変色した・薄い膜が付いた原因を調べたい
- μmサイズの付着物や析出物の、元素と化合物を調べたい
- 薄い膜や小さな部分の熱の伝わりやすさを測りたい
出典:物理解析 分析装置一覧|コベルコ科研、会社概要・組織図|コベルコ科研
株式会社日東分析センター|硬化した樹脂や添加剤まで、高分子材料の中身を調べる受託分析
日東分析センターとは
日東分析センターは、大阪府茨木市に本社を置く、1974年設立の日東電工グループの分析会社です。日東電工の技術研究所から分析部門などが独立し、1984年に分析専門会社になりました。

出典:日東分析センターの業務案内をもとに AI(Claude)で作成
日東分析センターの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 高分子材料の組成解明 | 主ポリマーの構造や分子量、充填剤の種類や量、有機系添加剤(酸化防止剤・可塑剤・紫外線吸収剤・難燃剤など)の種類や量、揮発成分(残存溶剤・残存モノマー・臭気成分など)を、目的に応じた方法で調べる |
| 硬化物の組成分析 | そのままではGC/MSで分析しにくいUV硬化型樹脂の硬化物も、反応熱分解GC/MSで構成モノマー成分を同定した事例を公開。必要な試料量は数十μg〜としている |
| 微小異物分析 | 光学顕微鏡での観察、サンプリング、有機物は顕微FT-IR・TOF-SIMS・顕微ラマン・XPS・熱分解GC/MS、無機物はSEM-XMA などで分析する |
同社は業務案内で、分析ごとの費用の目安を公開しています(例:添加剤分析の予備分析の蛍光X線 3〜4.5万円/検体、微小異物分析の顕微FT-IR 6万円/検体、XPS 8〜12万円/検体)。
日東分析センターが解決できる課題
- 樹脂・ゴム・粘着剤の主成分や添加剤を知りたい
- 硬化した樹脂の原料を知りたい
- 製品の表面や内部の小さな異物が何かを知りたい
出典:高分子材料の組成解明は研究開発の第一歩です|日東分析センター、高分子材料中の添加剤分析|日東分析センター、微小異物分析の紹介|日東分析センター、UV硬化型樹脂硬化物の組成分析|日東分析センター、会社概要・沿革|日東分析センター
株式会社ベテル|熱伝導率・熱拡散率を、フィルムから微小部まで測る
ベテルとは
ベテルは、茨城県石岡市に本社を置く、1973年創業の会社です。医療機器、プラスチック精密金型、ギヤードモータなどの事業とともに、熱物性測定の装置の開発・製造・販売を行っています。熱物性測定は、茨城県土浦市のハドソン研究所が担当しています。

出典:ベテルの公開情報をもとに AI(Claude)で作成
ベテルの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 熱物性の受託測定 | 熱伝導率・熱拡散率・熱浸透率の受託測定。CFRPなどの繊維配向、数100nmオーダーの薄膜、微小サイズの粒子、熱浸透率の分布、高熱伝導の薄板、樹脂系のシートなどに対応 |
| サーモウェーブアナライザ TA | レーザーを使った非接触の熱拡散率測定装置。測定範囲は0.1〜1000×10⁻⁶m²/s で、有機フィルムからダイヤモンドまで測れる。同じ試料で水平方向と垂直方向を測り、異方性を確かめられる |
| そのほかの装置 | 熱物性顕微鏡「サーマルマイクロスコープ」、定常熱伝導率測定装置、繊維配向評価システム、熱伝播検査装置。装置レンタルやオープンラボ、熱物性測定のセミナーも行う |
同社は、フィラーと樹脂の複合材料は配合比率で熱伝導性が大きく変化すること、同じ樹脂でも成形条件や金型の形状で熱伝導性が変化することを挙げ、熱拡散率の測定や分布の評価をすすめています。
ベテルが解決できる課題
- 放熱シートや高熱伝導樹脂の熱伝導率を、正しく測りたい
- 成形品の場所によって、熱の伝わりやすさがばらついていないか確かめたい
- 薄膜や小さな部品の熱物性を知りたい
出典:熱物性計測事業|ベテル、受託測定|ベテル ハドソン研究所、サーモウェーブアナライザ TA|ベテル ハドソン研究所、会社概要|ベテル
選ぶ前に確かめる条件
分析機関に依頼したり、装置を選んだりする前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。
- 何を知りたいか:元素の種類と量か、化合物の種類か、表面の状態か、強さや熱の性質か。種類だけでよいか、量まで必要か
- 何のために知りたいか:材質の確認、不具合の原因調査、他社品の調査、規制への対応、設計データの取得など
- 試料の材質(金属・樹脂・ゴム・セラミックスなど)の見当、大きさ、量、個数
- 試料を壊してよいか。切断・溶解してよいか。返却が必要か
- 比べる相手:正常品、変更前のロット、規格値、ミルシートやデータシート
- わかっている情報:使っている材料、工程、使用環境、不具合が出た時期と頻度
- 表面や異物の分析では、試料に触れずに保管できているか(手の脂や包装材の付着)
- 規格(JIS・ISO・ASTMなど)の方法で測る必要があるか。報告書の形式
- 納期と予算。1回の分析で終わるか、複数の方法を組み合わせるか
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年9月29日





