架台・部材の強さを許容応力度で確かめたい(許容応力度計算のやり方・SS400の値・梁の計算例)

角パイプを溶接した鋼製の架台の上に重い機械が載り、前の梁が少したわんでいるイメージ

設備を載せる架台を角パイプで作りたいが、このサイズで足りるのかわからない。構造計算書に「許容応力度」とあるが、機械設計の「許容応力」と何が違うのか。お客様から強度計算の根拠を求められた――。部材の強さは、部材に生じる応力を計算し、材料ごとに決まった許容応力度(許容応力)以下かを比べることで確かめられます。

この記事では、建築基準法施行令の許容応力度の決め方(基準強度 F と長期・短期)と、両端で支えた角パイプの梁の計算例を示します。機械設計の「許容応力=基準強さ÷安全率」との違い、許容応力度だけでは足りない座屈・たわみ・溶接部・疲労の注意、強度の確認を手伝う企業も紹介します。安全率そのものの考え方は「基礎知識:安全率」、鋼材の寸法と重さは技術ページ「形鋼・鋼材」で扱っています。

目次

許容応力度計算とは:応力が許容応力度以下かを確かめる

許容応力度計算は、荷重によって部材に生じる応力度(単位面積あたりの力)が、材料ごとに決まる許容応力度を超えないことを確かめる計算です。建築基準法施行令の第82条は、長く続く荷重(長期)と、地震・暴風などの短い荷重(短期)について応力度を計算し、それぞれ長期・短期の許容応力度を超えないことを確かめるとしています。

許容応力度計算の流れ:荷重を決める、応力を計算する、許容応力度を求める、比べるの4段階
図1 許容応力度計算の流れ
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令(第82条・第90条)」と編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

応力度は、引張・圧縮なら軸力 N を断面積 A で割り(σ=N÷A)、曲げなら曲げモーメント M を断面係数 Z で割り(σ=M÷Z)、せん断ならせん断力 Q を断面積で割って(τ=Q÷A)求めます。断面係数 Z と断面積 A は、鋼材のメーカーの寸法表や JIS の表に載っています。

長期と短期:荷重の組み合わせ

施行令第82条は、長期は常時の固定荷重 G と積載荷重 P(G+P)、短期は地震時の G+P+K、暴風時の G+P+W などと、荷重の組み合わせを決めています(多雪区域では積雪荷重も足します)。建物に置く設備の架台なら、ふだんの重さ(G+P)で長期の許容応力度と比べ、それに地震力 K を足した組み合わせ(G+P+K)で短期の許容応力度と比べます。工場の機械の架台を建築の基準で確かめるかどうかは、用途や発注の条件で決めます。

出典:建築基準法施行令(第82条・第90条)|e-Gov 法令検索

許容応力度の求め方:基準強度 F と長期・短期

施行令第90条は、鋼材の許容応力度を、基準強度 F をもとに決めています。炭素鋼の構造用鋼材では、長期の引張・圧縮・曲げは F÷1.5、せん断は F÷(1.5√3)、短期はそれぞれ長期の1.5倍です。F は、鋼材の種類と品質に応じて国土交通大臣が定める値です。

SS400(F=235)の許容応力度の棒グラフ。引張・曲げは長期156.7・短期235、せん断は長期90.5・短期135.7 N/mm²
図2 SS400(F=235)の許容応力度:長期と短期
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令(第82条・第90条)」・国土交通省「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件(平成12年建設省告示第2464号)」をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

平成12年建設省告示第2464号は、基準強度 F を次のように決めています。SS400 と STKR400(一般構造用角形鋼管)は同じ欄で、厚さによって値が変わります。

鋼材基準強度 F(N/mm²)長期の引張・曲げ F÷1.5長期のせん断 F÷(1.5√3)
SS400・STKR400(厚さ40mm以下)235約 156.7約 90.5
SS400・STKR400(厚さ40mm超100mm以下)215約 143.3約 82.8
SUS304A(ステンレスの構造用鋼材)235約 156.7約 90.5

長期・せん断の値は、F を式に入れた編集部の計算です。短期は、この1.5倍(引張・曲げなら F と同じ)になります。JFEスチールの建築構造用鋼材便覧も、この告示の基準強度の表と、ヤング係数 E=205,000 N/mm²、せん断弾性係数 G=79,000 N/mm² を載せています。

SS400 の「400」は引張強さ

日建連の鉄骨工事Q&Aは、JIS 規格の鋼材の呼称の数字(SS400 の 400 など)は引張強さの下限値を表すとしています。同じ資料の表では、SS400 は降伏点が 235 N/mm² 以上、引張強さが 400〜510 N/mm² です。厚さ40mm以下の基準強度 F=235 は、この降伏点の値と同じです。圧縮材は、細長いほど座屈しやすいので、許容圧縮応力度が下がることがあります(下の「足りないこと」)。

出典:建築基準法施行令(第82条・第90条)|e-Gov 法令検索、鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件(平成12年建設省告示第2464号)|国土交通省、建築構造用鋼材便覧 4. 材料の許容応力度|JFEスチール、鉄骨工事Q&A A-1-1 鋼材規格|日建連(日本建設業連合会)

計算例:架台の梁(角パイプ)を確かめる

両端で支えたスパン 1,000 mm の梁の真ん中に、5 kN(約 510 kgf)の設備が載る場合を考えます。材料は STKR400 相当(F=235)の角パイプ、荷重は長く載り続ける長期の荷重とします。梁の自重は省きます。

両端で支えたスパン1,000mmの梁の真ん中に5kNを載せた図と、真ん中で最大1.25kN·mになる曲げモーメント図
図3 両端で支えた梁の真ん中に 5 kN を載せる
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令(第82条・第90条)」と編集部の設定をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

1. 曲げモーメントを求める

真ん中に集中荷重 P が載る単純支持の梁では、最大の曲げモーメントは M=P×L÷4で、真ん中に生じます。M=5,000 N × 1,000 mm ÷ 4=1,250,000 N·mm(1.25 kN·m)です(編集部の計算)。

2. 曲げ応力度を求めて比べる

断面係数 Z は、角の丸みを省いて直角の四角として概算すると、□50×50×2.3 で約 6,670 mm³、□60×60×2.3 で約 9,830 mm³ です(編集部の計算。実際の設計では JIS やメーカーの寸法表の値を使う)。

角パイプ断面係数 Z(概算)曲げ応力度 σ=M÷Z長期の許容応力度 156.7 と比べる
□50×50×2.3約 6,670 mm³約 187 N/mm²超える(NG)
□60×60×2.3約 9,830 mm³約 127 N/mm²以下(OK)
角パイプ□50×50×2.3の曲げ応力度約187は長期の許容応力度156.7を超え、□60×60×2.3の約127は以下であることを示す棒グラフ。参考に短期の235も示す
図4 長く載り続ける 5 kN で、曲げ応力度を長期の許容応力度と比べる
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令(第82条・第90条)」・国土交通省「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件(平成12年建設省告示第2464号)」をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

設備の重さは長く載り続けるので、長期の許容応力度と比べます。□50×50×2.3 は長期の許容応力度を超え、□60×60×2.3 なら足ります(編集部の計算)。短期の許容応力度(235)は長期の1.5倍ですが、使うのは地震力などを足した荷重で確かめるときです。5 kN だけの荷重を短期の値と比べて「足りる」としてはいけません。

3. せん断とたわみも確かめる

せん断力は支点で最大で、Q=P÷2=2,500 N です。□60×60×2.3 の左右の板(2.3 mm×60 mm×2枚)で受けるとすると、τ≒2,500÷276≒9 N/mm² で、長期の許容せん断応力度 約 90.5 を大きく下回ります(編集部の概算)。

真ん中のたわみは δ=P×L³÷(48×E×I) で、E=205,000 N/mm²、□60×60×2.3 の断面二次モーメント I を約 295,000 mm⁴(概算)とすると、約 1.7 mm です(編集部の計算)。強度が足りても、たわみが装置の精度や振動に効くことがあるので、用途に合わせて許せるたわみを決めておきます。

出典:建築構造用鋼材便覧 4. 材料の許容応力度|JFEスチール

機械設計の「許容応力」との違い

機械設計の教科書では、許容応力=基準強さ÷安全率とします。ウィキブックスの「高等学校工業 機械設計」は、基準強さは慣習的に引張強さで、用途によって降伏点・耐力・疲労限度を選ぶとしています。安全率は、経験値として、アンウィンの安全率(鋼では静荷重で3など)が知られているとしています。

建築の許容応力度(F÷1.5で長期156.7)と機械設計の許容応力(引張強さ400÷安全率3で約133)の比べ方
図5 建築の許容応力度と機械設計の許容応力
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令(第82条・第90条)」・国土交通省「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件(平成12年建設省告示第2464号)」・ウィキブックス「高等学校工業 機械設計/材料の強さ」をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

SS400 の引張強さ 400 N/mm² を安全率 3 で割ると、許容応力は約 133 N/mm² です(編集部の計算)。建築の長期の許容応力度 約 156.7 とは、基準(降伏点に近い F か、引張強さか)も割る数も違います。どちらの考え方で確かめるかは、図面や発注の条件、社内の基準で決めておきます。安全率の決め方は「基礎知識:安全率」で説明しています。

出典:高等学校工業 機械設計/材料の強さ|ウィキブックス、鉄骨工事Q&A A-1-1 鋼材規格|日建連(日本建設業連合会)

許容応力度だけでは足りないこと

許容応力度の確認だけでは足りない4つのこと:座屈、たわみ、溶接部・ボルト、繰返し荷重
図6 許容応力度の確認だけでは足りないこと
出典:編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

座屈:細長い圧縮材

脚や柱のように圧縮を受ける細長い部材は、材料が降伏する前に横へ曲がって壊れることがあります(座屈)。建築の鋼材では、細長さに応じて許容圧縮応力度を下げて確かめます。H形鋼のように開いた断面の梁では、横に倒れるように曲がる横座屈で、曲げの許容応力度も下がることがあります(計算例の角パイプのような箱形の断面では、曲げは F÷1.5 のまま)。考え方は「基礎知識:座屈」で説明しています。

たわみ・振動

上の計算例のように、強度が足りてもたわみが大きいことがあります。たわみは断面二次モーメント I に反比例するので、背の高い断面ほど効きます(「基礎知識:断面二次モーメント」)。

溶接部・ボルト

告示第2464号は、溶接部の基準強度も別の表で決めています。JFEスチールの便覧も、溶接継目の形ごとの許容応力度と、高力ボルトの許容応力度の表を載せています。つなぎ目は母材とは別に確かめます(「課題:溶接継手の形を決めたい」)。

繰返し荷重:疲労

振動するモーターの架台や往復する機構では、静かに載る荷重より小さい応力でも、繰り返されると疲労で壊れることがあります。ウィキブックスは、基準強さに疲労限度を選ぶことがあり、アンウィンの安全率も繰返し荷重では静荷重より大きな値としています。疲労の確かめ方は「基礎知識:疲労限度(S-N曲線)」で説明しています。

出典:鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件(平成12年建設省告示第2464号)|国土交通省、建築構造用鋼材便覧 4. 材料の許容応力度|JFEスチール、高等学校工業 機械設計/材料の強さ|ウィキブックス

強度の確認を手伝う企業

手計算で確かめにくい形の部材や、材料の実際の強さを知りたいときに使えるサービスを公開している企業を紹介します。いずれも公開されている内容で、各社のサービスを比べたものではありません。

サイバネットシステムの構造解析とJFEテクノリサーチの材料試験・載荷試験をまとめた図
図7 強度の確かめに使える、企業の公開サービス
出典:サイバネットシステム「構造解析(用語解説)」・JFEテクノリサーチ「材料の特性評価(材料試験)」と編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

サイバネットシステム株式会社|構造解析(有限要素法)で応力と強度を評価

サイバネットシステムとは

サイバネットシステムは、東京都千代田区に本社を置く会社です。構造解析ソフトウェア Ansys を扱い、構造解析の解説を公開しています。

サイバネットシステムの得意技術

技術内容
構造解析荷重をかけたときの変形や応力を数値で求め、応力の大きさと分布から強度を評価する。手法は有限要素法(FEM)
座屈・固有振動数座屈の解析と、固有振動数による共振の危険の評価
熱による応力伝熱解析と組み合わせて、熱膨張・収縮による応力を求める

サイバネットシステムが解決できる課題

  • 手計算で応力を求めにくい形の架台・部材の強度を確かめたい
  • 共振や座屈の危険を、解析で評価したい

出典:会社概要|サイバネットシステム、構造解析(用語解説)|サイバネットシステム

JFEテクノリサーチ株式会社|材料試験・部材の載荷試験

JFEテクノリサーチとは

JFEテクノリサーチは、東京都千代田区に本社を置く会社です。材料の試験・分析・調査を受託しています。

JFEテクノリサーチの得意技術

技術内容
材料試験試験片を採って、材料の機械的性質・物理的性質などを調べる
部品・部材の試験部品の引張・圧縮・疲労試験、大型構造物・部材の静的・動的強度や疲労の載荷試験
CAE 用の材料データ降伏応力・引張強さ、応力-ひずみ曲線、S-N 曲線などの試験

JFEテクノリサーチが解決できる課題

  • 使う材料の実際の降伏点・引張強さを確かめたい
  • 部材そのものに荷重をかけて強度を確かめたい

出典:会社概要|JFEテクノリサーチ、材料の特性評価(材料試験)|JFEテクノリサーチ

選ぶ前に確かめる条件

部材の強さを確かめる前・解析や試験を相談する前に、次のことを整理しておくと計算が早く進みます。

  • 確かめる基準:建築基準法の許容応力度か、機械設計の許容応力(基準強さ÷安全率)か。図面・発注・社内基準の決まり
  • 荷重:載せる物の重さ(長期)と、地震・衝撃・振動など短い荷重や繰り返す荷重があるか
  • 支え方とスパン:両端で支えるか、片持ちか。支点の間の長さ
  • 材料と厚さ:SS400・STKR400・SUS304A など。SS400・STKR400 は厚さ40mmを超えると F が 215 に下がる
  • 断面:角パイプ・H形鋼などの寸法と、寸法表の断面積・断面係数・断面二次モーメント
  • 強度のほかに見ること:許せるたわみ、座屈(細長い脚・柱)、溶接部・ボルト

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・設備ではありません。

情報の確認日:2026年11月7日

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