屋外で使う樹脂のカバーが黄ばむ、表面が粉をふく、ひび割れて割れる。洗浄液や油に触れる部品が膨らむ。アルコールで拭いたら、ねじ穴の周りから割れた。ゴムのパッキンがひび割れて漏れる。こうした劣化は、紫外線と酸素による分子の切断(光酸化)と、薬品のしみ込み・反応・応力との組み合わせで起きています。
対策は、劣化しにくい材料を選ぶ、添加剤で守る、表面をコーティングで覆う、の3つが中心です。そして、どれだけ効いたかは促進試験で、なぜ劣化したかは分析で確かめます。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。
課題と解決技術のマトリクス
| 課題(症状) | 耐候・耐薬品の材料を選ぶ | 添加剤(紫外線吸収剤・HALS) | 保護コーティング・塗装 | 促進耐候・耐薬品の試験 | 劣化の原因分析(FT-IR など) |
|---|---|---|---|---|---|
| A屋外で色があせる・黄ばむ・表面が粉をふく | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
| B屋外で表面がひび割れ、もろくなる | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ |
| C薬品・油に触れた部分が膨らむ・軟らかくなる | ◎ | △ | ○ | ○ | |
| Dねじ止め・圧入の部分が、薬品に触れると割れる(ソルベントクラック) | ◎ | △ | ◎ | ○ | |
| Eゴムのシール・パッキンが硬くなる・ひび割れる・膨らむ | ◎ | ○ | ○ | ○ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に効く方法は、樹脂・ゴムの種類、触れる薬品の種類と濃度、温度、日射の強さ、部品にかかる応力、求める寿命とコストによって異なります。「保護コーティング・塗装」の「△」(症状C・D)は、被膜にピンホールや傷があると薬品が下地に届くため、膜の厚さや連続性を確かめられる場合に限って有効なことを示します。「添加剤」の「○」(症状E)は、ゴムに配合するオゾン劣化防止剤を指します。空欄は、その技術だけでは直接の対策になりにくいことを示します。
記号の理由と出典(22件)
マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。
| 症状 | 技術 | 記号 | 理由 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| A | 耐候・耐薬品の材料を選ぶ | ○ | C-F 結合が強いフッ素樹脂など、紫外線に強い材料への交換で耐候性が上がるため | 大日本塗料 |
| A | 添加剤(紫外線吸収剤・HALS) | ◎ | UVA が紫外線を吸収して熱に変え、黄ばみや粉ふきの元の光酸化を抑えられるため | 大塚化学 |
| A | 保護コーティング・塗装 | ◎ | 耐候性の高い塗料で表面を覆えば、色あせ・チョーキングを抑えられるため | 大日本塗料 |
| A | 促進耐候・耐薬品の試験 | ○ | 対策した材料を促進試験で比べて効果を確かめるため(対策そのものではない) | 編集部の解説 |
| A | 劣化の原因分析(FT-IR など) | ○ | 酸化劣化が熱だけでなく紫外線でも起こるため、FT-IR で原因を確かめられる | JAPAN TESTING LABORATORIES |
| B | 耐候・耐薬品の材料を選ぶ | ◎ | 紫外線・酸素による分解を受けにくいフッ素樹脂に替えれば、ひび割れ・もろさを防げるため | 陽和 |
| B | 添加剤(紫外線吸収剤・HALS) | ◎ | UVA と HALS を併用すると働き方の違いから相乗効果が得られ、今の樹脂のまま劣化を抑えられるため | 日本ゴム協会誌 91(12) |
| B | 保護コーティング・塗装 | ○ | 塗膜が下地を守れる間は表面の劣化を防げるが、寿命は塗膜の劣化の進み方で決まるため | 日本ペイント「期待耐用年数」 |
| B | 促進耐候・耐薬品の試験 | ○ | 対策材と元の材料を比べる試験に使えるが、屋外との換算は限られた材料でしか成り立たないため | 日本ウエザリングテストセンター |
| B | 劣化の原因分析(FT-IR など) | ○ | FT-IR で酸化の痕跡を見られ、ひび割れの原因が酸化かを確かめられるため | 群馬県立産業技術センター |
| C | 耐候・耐薬品の材料を選ぶ | ◎ | ほぼすべての酸・アルカリ・有機溶剤に侵されにくいフッ素樹脂へ替えると膨潤を防げるため | 陽和 |
| C | 保護コーティング・塗装 | △ | 被膜が薄いとピンホールから薬品が下地に届くため、膜厚を確保できる場合に限り有効 | サーフコート |
| C | 促進耐候・耐薬品の試験 | ○ | 実際の液に浸して質量・寸法・強さの変化を見て、膨らみ具合を確かめられるため | JIS K 7114 |
| C | 劣化の原因分析(FT-IR など) | ○ | 劣化した部品の分析で何が起きたかが分かり、原因の切り分けに使えるため | 編集部の解説 |
| D | 耐候・耐薬品の材料を選ぶ | ◎ | 応力と薬品が同時に働く割れは、非晶性樹脂で起きやすく、割れにくい樹脂へ替えると防げるため | 編集部の解説 |
| D | 保護コーティング・塗装 | △ | 被膜は薬品を遮るが、傷やピンホールがあると薬品が届くため、状態を確かめられる場合に限る | 編集部の解説 |
| D | 促進耐候・耐薬品の試験 | ◎ | ひずみや荷重をかけて薬品を付け、割れの出方を直接確かめられるため | 三井化学分析センター |
| D | 劣化の原因分析(FT-IR など) | ○ | 割れの起点に付いた薬品や応力の大きさを調べ、原因を絞れるため | 編集部の解説 |
| E | 耐候・耐薬品の材料を選ぶ | ◎ | ゴムは種類ごとに油・オゾンへの強弱が違い、条件に合う種類へ替えるのが有効なため | ゴム助 |
| E | 添加剤(紫外線吸収剤・HALS) | ○ | オゾンに弱いゴムはオゾン劣化防止剤で耐オゾン性を上げられるが、ゴムの種類を選ぶ必要があるため | 川崎重工 Techno Now |
| E | 促進耐候・耐薬品の試験 | ○ | JIS K 6259 のオゾン試験で、ひび割れへの強さを確かめられるため | 川崎重工 Techno Now |
| E | 劣化の原因分析(FT-IR など) | ○ | ゴムの劣化分析やブリードの確認に FT-IR を使えるため | JAPAN TESTING LABORATORIES |
課題の診断と解決策
屋外で色があせる・黄ばむ・表面が粉をふく
屋外で使う樹脂のカバーや筐体、塗装した部品が、1〜2年で黄ばんだり色があせたりする。表面を触ると白い粉が付く。

- 起きている現象
- 太陽光の紫外線が樹脂の分子の結合を切り、酸素と反応して劣化が連鎖的に進みます(光酸化)。色が変わる構造ができると黄ばみ、表面の樹脂が分解すると、塗膜では表面が粉状になります(チョーキング)。劣化は光の当たる表面から進みます。
- 解決に使える技術
- 添加剤紫外線吸収剤と光安定剤(HALS)を組み合わせて入れる
- 保護コーティング・塗装耐候性の高い塗料(フッ素樹脂塗料など)で表面を覆う
- 促進耐候の試験対策した材料・塗装を、屋外に近い条件の試験で比べる
添加剤の量は、厚さや樹脂・顔料との組み合わせで変わります。薄い塗膜ほど多く入れる必要があるとされます。材料メーカーの推奨量を出発点に、試験で確かめます。
屋外で表面がひび割れ、もろくなる
屋外に置いた樹脂部品が、表面に細かいひびが入り、少しの力で割れるようになった。はじめは問題なかった。

- 起きている現象
- 紫外線と酸素で分子の鎖が切れて短くなると、樹脂は伸びにくく、もろくなります。表面の劣化した層にひびが入り、そこに力が集まって割れます。劣化を起こしやすい光の波長は、樹脂ごとに違います。
- 解決に使える技術
- 耐候・耐薬品の材料を選ぶ紫外線に強い樹脂(フッ素樹脂など)や、耐候グレードに替える
- 添加剤今の樹脂に紫外線吸収剤・HALS を入れる
- 劣化の原因分析割れた部品を分析し、酸化が原因かを確かめる
材料を替えると、強さ・成形性・コストも変わります。紫外線だけでなく、熱や薬品、かかる力も含めて、元の材料と比べて選びます。
薬品・油に触れた部分が膨らむ・軟らかくなる
洗浄液や溶剤、油が付く部品が、膨らんで寸法が合わなくなった。触ると軟らかい。ひどいときは表面が溶けたようになる。

- 起きている現象
- 薬品が樹脂やゴムの中にしみ込むと、膨らんで軟らかくなります(膨潤)。樹脂と液の性質(溶解度パラメータ、SP 値)が近いほど、しみ込みやすく、溶けやすくなります。酸・アルカリ・熱水などで、分子が化学的に切れて劣化することもあります。
- 解決に使える技術
- 耐候・耐薬品の材料を選ぶその液に侵されにくい樹脂・ゴムに替える(フッ素樹脂、FKM・FFKM など)
- 耐薬品の試験実際の液に浸し、質量・寸法・強さの変化を調べる(JIS K 7114 など)
- 保護コーティング金属の部品やタンクは、耐薬品の被膜で液から守る
耐薬品性の一覧表は目安です。同じ名前の薬品でも、濃度・温度・混ざっている成分で結果が変わります。実際の液と温度で確かめます。
ねじ止め・圧入の部分が、薬品に触れると割れる(ソルベントクラック)
透明な樹脂のカバーが、アルコールで拭いたあとに、ねじ穴の周りから割れた。薬品だけ、力だけでは割れない。

- 起きている現象
- 応力と薬品が同時に働くと、それぞれ単独では問題にならない条件でも、ひびが入って割れることがあります(環境応力割れ、ソルベントクラック)。ふつう降伏が始まるのはひずみ2%前後ですが、ソルベントクラックは0.1%程度のひずみで起きることがあります。結晶性の樹脂より、非晶性の樹脂(PC・PS・アクリルなど)で起きやすいとされます。
- 解決に使える技術
- 耐候・耐薬品の材料を選ぶその薬品で割れにくい樹脂に替える
- ソルベントクラックの試験ひずみや荷重をかけた状態で薬品を付け、割れの出方を調べる
- 劣化の原因分析割れた部品を分析し、付いた薬品や割れ方を調べる
ねじの締め過ぎ、圧入のしろ、成形のときに残った応力(残留応力)も原因になります。材料を替えるだけでなく、形や締め付けを見直して応力を下げることも考えます。
ゴムのシール・パッキンが硬くなる・ひび割れる・膨らむ
屋外の装置の O リングやパッキンが、ひび割れて漏れた。油に触れる部分のシールが膨らんだ、または硬くなった。

- 起きている現象
- ゴムは、空気中のわずかなオゾンで、引っ張られた部分に、伸びの方向と直角にひびが入ります(オゾンクラック)。二重結合の多いゴム(NBR など)で起きやすいとされます。熱で劣化したり、油や溶剤で膨らんだり、成分が溶け出したりもします。どれが起きるかは、ゴムの種類と相手の液・温度で決まります。
- 解決に使える技術
- 耐候・耐薬品の材料を選ぶ相手の液・温度・屋外かどうかで、ゴムの種類を選び直す
- 添加剤オゾンに弱いゴムには、オゾン劣化防止剤を配合する
- 試験オゾン劣化試験(JIS K 6259)や浸せき試験で確かめる
油に強い NBR はオゾンに弱く、屋外に強い EPDM は鉱物油に弱い、というように、ゴムには得意・不得意があります。1つの条件だけで選ばないようにします。
なぜ、紫外線や薬品で劣化するのか
紫外線:分子の鎖を切り、酸素との反応を連鎖させる
プラスチックは、太陽光などの光にさらされると、光によって分子の中にラジカル(反応しやすい状態の分子)ができます。これが空気中の酸素と反応してペルオキシラジカルになり、ほかの分子から水素を奪って次のラジカルを作ります。この反応が連鎖して、分子の鎖が切れていき、物性の低下や変色が起きます(日本ゴム協会誌 91(12))。

出典:日本ゴム協会誌 91(12)の解説をもとに AI(Claude)で作成(分子の形は模式)
劣化を起こしやすい光の波長は、樹脂ごとに違います。日本ウエザリングテストセンターの資料では、劣化を起こす波長(有効波長)として、PE は300nm・310〜340nm、PP は310nm・370nm・320〜380nm、ABS は340〜380nm などの値を挙げています。同じ太陽光でも、樹脂によって効く光が違うため、耐候性は樹脂ごとに確かめる必要があります。
薬品:しみ込む、反応する、応力と一緒に割る
薬品による劣化は、大きく3つに分けて考えます。樹脂の中に液が入り込んで膨らむ・溶ける(溶解・膨潤)、薬品と樹脂が化学的に反応する、そして、応力と薬品が同時に働いて割れる(環境応力割れ、ESC)、です(大阪府立産業技術総合研究所の技術シート)。溶解・膨潤は、樹脂と液の溶解度パラメータ(SP 値)が近いほど起きやすくなります。

出典:大阪府立産業技術総合研究所の技術シートの分類をもとに AI(Claude)で作成
同じ技術シートでは、ソルベントクラックの溶剤クレイズ(割れの前ぶれの細いすじ)が出るひずみの例として、ポリスチレンと n-ヘプタンで0.12%、ポリカーボネートと n-ヘプタンで0.84% を挙げています。また、1998年のこの技術シートでは、プラスチックの割れのクレームの相談のうち、環境応力割れが原因のものが8割以上だったとしています。割れの相談では、まず薬品と応力の両方を疑います。
ゴム:オゾン・熱・油で、それぞれ違う劣化が起きる
ゴムは、空気中のわずかなオゾンに攻撃されると、化学結合が切れて、伸びている方向と直角にひび(オゾンクラック)が入ります。分子の中に二重結合を多く持つゴム(NBR・SBR など)は、もともとオゾンに弱いため、オゾン劣化防止剤を配合して耐オゾン性を上げるのが一般的です(川崎重工 Techno Now)。

出典:川崎重工 Techno Now、桜シールの技術資料をもとに AI(Claude)で作成
熱にさらされ続けると劣化が進み(熱老化)、つぶれたまま戻らなくなる(圧縮永久ひずみ)と、締め付けの力が弱まります。熱老化や圧縮永久ひずみへの強さも、ゴムの種類で違います(ゴム助の一覧)。油や溶剤では、しみ込んで膨らみます。O リングでは、流体との接触で膨潤・溶出・分解が起き、シールの機能が損なわれるとされます(桜シールの技術資料)。
出典:光安定剤による高分子劣化制御(PDF)|日本ゴム協会誌 91(12)、促進暴露試験ハンドブック(PDF)|日本ウエザリングテストセンター、プラスチックの耐薬品性と環境応力亀裂(PDF)|大阪府立産業技術総合研究所 技術シート、耐オゾン性評価技術のご紹介|川崎重工 Techno Now、ゴムの特性・耐油性・耐溶剤性・耐薬品性の一覧表|ゴム助、O リングの耐薬品性|桜シール
解決技術の詳細
紫外線・薬品による劣化の対策は、材料を替える、添加剤で守る、表面を覆う、の3つに分かれます。どれを選ぶにも、今の材料で何が起きているかを分析で確かめ、対策の効果を試験で確かめることが欠かせません。まず、困りごとから候補を絞ります。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
耐候・耐薬品の材料を選ぶ

確実な方法の一つは、紫外線や薬品に侵されにくい材料に替えることです。フッ素樹脂は、炭素とフッ素の結合(C-F)がとても強く、これが優れた耐候性を生むとされます(大日本塗料)。陽和の解説では、フッ素樹脂は、ほぼすべての酸・アルカリ・有機溶剤に侵されにくく、太陽光や酸素による分解・酸化も受けにくいとしています。
ゴムは、種類ごとに得意・不得意がはっきりしています。メーカーのカタログをもとにした一覧では、NBR は鉱物油に強い一方でオゾンに弱く、EPDM は屋外・オゾンに強い一方で鉱物油に弱いとされます。FKM(フッ素ゴム)は、耐候・耐オゾン・耐油のいずれにも強く、耐熱の目安も200℃と高い材料です。

ゴム助「ゴムの特性・耐油性・耐溶剤性・耐薬品性の一覧表」の一部をもとに作表。配合によって変わる参考値。AI(Claude)で作成
材料を替えると、強さ、成形のしやすさ、コストも変わります。耐薬品性の一覧表は目安で、配合によって変わるため、実際の液・温度での試験で確かめてから決めます。
添加剤(紫外線吸収剤・HALS)
今の樹脂を使い続けたいときは、光安定剤を入れます。代表的なのは、紫外線吸収剤(UVA)とヒンダードアミン系光安定剤(HALS)です。UVA は高いエネルギーの紫外線を吸収し、熱などの無害なエネルギーに変えます(大塚化学)。HALS は、できたラジカルを捕まえて、連鎖を止めます。2つは働き方が違うため、併用すると相乗効果が得られるとされます(日本ゴム協会誌 91(12))。

出典:日本ゴム協会誌 91(12)、BASFの解説をもとに AI(Claude)で作成
光の吸収は厚さに左右されます。BASF は塗料について、紫外線吸収剤を樹脂固形分に対して2%(厚さ40μm の場合)、20μm の場合は4%、HALS を1% を推奨の目安とし、実際の塗料で最適な量を検討する必要があるとしています。ゴムでは、オゾンに弱い種類に、オゾン劣化防止剤を配合します。
保護コーティング・塗装
部品の表面を、劣化しにくい膜で覆う方法です。屋外では、耐候性の高い塗料で覆います。フッ素樹脂塗料は、耐候性がよいとされるアクリル樹脂塗料やシリコーン樹脂塗料と比べても、耐候性に優れるとされます(大日本塗料)。塗膜の寿命は、汚れ・チョーキング(白亜化)・変退色・ひび割れが進み、下地を守れなくなる時期で考えます(日本ペイント「期待耐用年数」)。

金属のタンクや治具を薬液から守るには、フッ素樹脂などの耐薬品の被膜を使います。ただし、被膜が薄いとピンホールができやすく、そこから薬品が下地に届きます。耐食の用途では、厚い被膜が必要とされます(サーフコート)。焼成の温度が高い被膜は、熱に弱い樹脂やゴムの部品には使えません。
促進耐候・耐薬品の試験
屋外で何年もかかる劣化を、強い光や熱・水で速めて調べるのが促進耐候試験です。光源には、キセノンアーク(JIS K 7350-2 など)、サンシャインカーボンアーク、紫外線蛍光ランプ、メタルハライドランプなどがあります。キセノンアークの300〜400nm の照度は、赤道地帯の太陽光を規準にしており、全放射照度 約1,090W/m² の6% にあたる60W/m² が規定されています(日本ウエザリングテストセンター)。

出典:日本ウエザリングテストセンター、岩崎電気、関西ペイントの資料をもとに AI(Claude)で作成
注意したいのは、「屋外の何年分」という換算は、材料と条件で変わることです。関西ペイントの資料では、塗膜のサンシャインカーボンアーク試験の促進倍率は、屋外の数倍〜10数倍としています。日本ウエザリングテストセンターは、プラスチックの耐候性は材料側の因子でも大きく異なり、屋外との相関は限られた材料での関係にすぎないとしています。使う材料で、屋外暴露との比較を持っておくことが大切です。
薬品は、応力をかけずに液に浸す試験(JIS K 7114。質量・寸法・外観・強さの変化を見る)と、ソルベントクラックを調べる試験に分かれます。後者には、一定の引張荷重をかける方法(JIS K 7108)、一定のひずみを与える方法(ベント法)、場所でひずみが変わる治具を使う1/4楕円法などがあります(三井化学分析センター)。ゴムの耐オゾン性は、JIS K 6259 で、40℃、オゾン濃度500ppb などの条件で調べます(川崎重工 Techno Now)。

出典:JIS K 7114、JIS K 7108、三井化学分析センター、大阪府立産業技術総合研究所の資料をもとに AI(Claude)で作成
劣化の原因分析(FT-IR など)
劣化した部品を分析すると、何が起きたかがわかります。よく使うのが赤外分光(FT-IR)です。群馬県立産業技術センターの報告では、ポリプロピレンを加熱すると1715cm⁻¹前後に新しい吸収のピークが出て、これはカルボニル基(C=O)で、樹脂の一部が酸化したことを示すとしています。熱だけでなく紫外線でも樹脂の酸化劣化が起こるとされ(JAPAN TESTING LABORATORIES)、同じように調べられます。

出典:群馬県立産業技術センターの報告をもとに AI(Claude)で作成(線の形は模式で実測値ではない)
割れた部品では、割れの起点に何が付いていたか、どの程度の応力がかかっていたかも調べます。分析の結果と、使う条件(光・薬品・温度・応力)を合わせて見ると、材料を替えるべきか、添加剤や設計の見直しで足りるかを判断できます。
出典:フッ素樹脂塗料はなぜ耐候性に優れるのか|大日本塗料、フッ素樹脂とは|陽和、ゴムの特性・耐油性・耐溶剤性・耐薬品性の一覧表|ゴム助、紫外線吸収剤(UV吸収剤)とは|大塚化学、UVA と HALS とは|BASF、期待耐用年数|日本ペイント、フッ素樹脂塗料|サーフコート、JIS K 7350-2 について|岩崎電気、促進暴露試験ハンドブック(PDF)|日本ウエザリングテストセンター、促進耐候性試験法(PDF)|関西ペイント「塗料の研究」No.145、JIS K 7114 プラスチック-液体薬品への浸せき効果を求める試験方法、JIS K 7108 プラスチック-化学薬品環境応力き裂の評価-一定引張応力法、耐ストレスクラッキング性試験|三井化学分析センター、樹脂の熱劣化の評価(PDF)|群馬県立産業技術センター
紫外線・薬品による劣化を防ぐ技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。材料を替えたいのか、添加剤で守りたいのか、表面を覆いたいのか、試験や分析で確かめたいのかによって、相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| 陽和 | 樹脂の加工 | フッ素樹脂の成形・精密切削・溶着。薬品や紫外線に侵されにくい材料で部品を作り直す。 | B 屋外で表面がひび割れ、もろくなる C 薬品・油に触れた部分が膨らむ・軟らかくなる D ねじ止め・圧入の部分が、薬品に触れると割れる(ソルベントクラック) | |
| 桜シール | シールメーカー | O リング。流体とゴム材質の適合性から、膨らむ・溶け出す・硬くなるのを防ぐ材質を選ぶ。 | C 薬品・油に触れた部分が膨らむ・軟らかくなる E ゴムのシール・パッキンが硬くなる・ひび割れる・膨らむ | |
| シプロ化成 | 添加剤メーカー | 紫外線吸収剤と酸化防止剤。樹脂や塗料の黄ばみ・色あせを添加剤で防ぐ。 | A 屋外で色があせる・黄ばむ・表面が粉をふく B 屋外で表面がひび割れ、もろくなる | |
| サーフコート | 表面処理 | フッ素樹脂などのコーティング。金属のタンクや治具を薬液から守る。 | C 薬品・油に触れた部分が膨らむ・軟らかくなる | |
| スガ試験機 | 試験機メーカー | 促進耐候性試験機などの環境試験機。対策した材料・塗装の耐候性を早く確かめる。 | A 屋外で色があせる・黄ばむ・表面が粉をふく B 屋外で表面がひび割れ、もろくなる | |
| JAPAN TESTING LABORATORIES | 分析・試験 | FT-IR などで樹脂・ゴムの劣化を分析する。酸化したか、表面に出た物が何かを調べる。 | A 屋外で色があせる・黄ばむ・表面が粉をふく B 屋外で表面がひび割れ、もろくなる D ねじ止め・圧入の部分が、薬品に触れると割れる(ソルベントクラック) E ゴムのシール・パッキンが硬くなる・ひび割れる・膨らむ |
株式会社陽和|フッ素樹脂を原料の成形から加工まで
陽和とは
陽和は、福岡県北九州市小倉南区に本社を置く、1954年創業(1958年設立)の会社です(資本金2,000万円、従業員117名)。エンジニアリングプラスチックの精密切削加工などで工業用の機能部品を作っており、フッ素樹脂については、素材の成形、精密切削、溶着などの加工技術に特化しているとしています。
陽和の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| フッ素樹脂(PTFE・PFA)の成形と加工 | PTFE・PFA を素材の成形から切削・溶着まで一貫して扱う。PFA は射出成形にも対応する |
| フッ素樹脂の耐薬品性・耐候性 | 同社の解説では、フッ素樹脂は、ほぼすべての酸・アルカリ・有機溶剤に侵されにくく、太陽光や酸素による分解・酸化を受けにくいとしている。PVDF は紫外線やガンマ線への耐性に優れるとしている |
| 高機能樹脂の加工 | フッ素樹脂のほか、ポリイミド、PEEK、PBI などの高機能樹脂も加工する |
連続使用温度は、PTFE・PFA が260℃、FEP が200℃、ETFE・PVDF が150℃としています。
陽和が解決できる課題
- 薬品や溶剤に触れる部品を、侵されにくい材料で作り直したい
- 屋外で使う樹脂部品を、紫外線に強い材料に替えたい
- フッ素樹脂の部品を、試作から量産まで相談したい

出典:フッ素樹脂とは|陽和、PFA 射出成形|陽和、会社概要|陽和
桜シール株式会社|流体に合わせた O リングの材質
桜シールとは
桜シールは、東京都墨田区に本社を置く、O リングの製造・販売の会社です。技術資料で、O リングの耐薬品性(流体とゴム材質の適合性)を解説し、流体ごとの適合を一覧にしています。
桜シールの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 耐薬品性の技術資料 | O リングの耐薬品性を、接触する流体からの影響でゴム材質に膨潤・溶出(抽出)・分解が起き、シールの機能が損なわれることへの耐性と説明し、流体ごとの適合を示している |
| フロロパワー FFP(FFKM) | パーフロ(FFKM)の O リング材質。アセトン・MEK・トルエンなどへの金属イオンの溶出量が、製品重量あたり0.5ppb 未満となるよう設計したとしている(半導体のウェット工程の薬品シール向け) |
| フロロパワー FO(FFKO) | FFKM に迫る耐薬品性と、-55℃クラスの耐寒性を持つとしている。信越化学工業との協同研究で開発した |
桜シールが解決できる課題
- O リングが液で膨らむ・溶け出す・硬くなるので、材質を見直したい
- 強い溶剤や薬液をシールできる O リングがほしい
- 寒い場所でも耐薬品性を保つシールがほしい

出典:桜シール「O リングの耐薬品性」、フロロパワー FFP、フロロパワー FOの記載をもとに AI(Claude)で作成
出典:O リングの耐薬品性|桜シール、フロロパワー FFP|桜シール、フロロパワー FO|桜シール、会社情報|桜シール
シプロ化成株式会社|紫外線吸収剤と酸化防止剤
シプロ化成とは
シプロ化成は、福井県坂井市に本社・福井工場を置く、1966年創業(1989年設立)の化学メーカーです(資本金9,660万円、従業員105名。2025年7月20日現在)。同社は、日本で初めて紫外線吸収剤の開発に成功したとしています。紫外線吸収剤を中心に、酸化防止剤などの添加剤を製造しています。
シプロ化成の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 紫外線吸収剤 SEESORB | ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系などの紫外線吸収剤をそろえる |
| 長波長紫外線吸収剤 | 従来の紫外線吸収剤は380nm 以下の紫外領域だけを吸収するものがほとんどだったとし、380〜420nm の光まで吸収できる吸収剤を開発した。添加や反応など、いろいろな使い方に対応するとしている |
| 酸化防止剤 SEENOX | プラスチック製品向けの酸化防止剤をそろえる |
シプロ化成が解決できる課題
- 屋外で樹脂が黄ばむ・色あせるのを、添加剤で防ぎたい
- 可視光に近い長い波長の光による劣化も抑えたい
- 樹脂や塗料に合う紫外線吸収剤・酸化防止剤を選びたい

出典:シプロ化成「長波長紫外線吸収剤」、製品情報の記載をもとに AI(Claude)で作成(帯の長さは模式)
出典:製品情報|シプロ化成、長波長紫外線吸収剤|シプロ化成、企業情報|シプロ化成
株式会社サーフコート|フッ素樹脂のコーティングで基材を薬液から守る
サーフコートとは
サーフコートは、東京都葛飾区に本社・工場を置く、1987年設立の会社です(資本金2,000万円)。フッ素樹脂、エポキシ、セラミックなどの機能性コーティングと、金属の表面処理を行っています。
サーフコートの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| フッ素樹脂コーティング(PTFE・PFA・FEP) | 耐薬品性・非粘着性・離型性などを生かし、薬液などからの基材の保護に使う。耐食の用途には、FEP 系・PFA 系の厚い被膜が適しているとし、PTFE 系は耐食用には適当でないとしている |
| 膜厚の考え方 | フッ素はほとんどの薬品に侵されないが、被膜が薄いとピンホールができやすいため、膜厚を厚くする必要があるとしている。浸透性の強い薬品では、その浸透力も考えるとしている |
| 完成品の例 | 寸胴鍋、圧力タンク(粉体塗装)、金型治具、木工用ドリルなど |
約360℃で焼成するため、母材が変色する可能性があると注意しています(編集部注:焼成の温度が高いため、熱に弱い樹脂やゴムの部品そのものを覆う用途には向かないと考えられます)。
サーフコートが解決できる課題
- 金属のタンクや治具を、薬液から守りたい
- 薬液が付いても固着しにくい表面にしたい
- 耐薬品のコーティングの膜厚や材料を相談したい

出典:フッ素樹脂塗料|サーフコート、コーティング|サーフコート、企業情報|サーフコート
スガ試験機株式会社|促進耐候性試験機などの環境試験機
スガ試験機とは
スガ試験機は、東京都新宿区に本社を置く、1920年創業の試験機メーカーです(資本金9,257万5,000円)。耐候性や腐食などの環境試験機と、色彩の測定機器を生産・販売しています。
スガ試験機の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| サンシャインウェザーメーター | サンシャインカーボンアークを光源にした促進耐候性試験機。S300 は、ロボットアームでカーボンを自動で交換し、最大12日間(300時間)の連続運転ができる(通常は78時間ごとに交換が必要) |
| 結露を再現するモデル | S80D は、照射のあと、暗黒の間に試験片の裏から冷水(約7℃)をスプレーし、表面に結露を起こす |
| キセノン・メタリングの光源 | キセノン、メタリング、サンシャインなどの光源を、用途に合わせて組み合わせた試験機も製作している |
スガ試験機が解決できる課題
- 屋外で何年もつかを、試験で早く確かめたい
- 対策した材料・塗装の耐候性を、元の材料と比べたい
- 雨や結露を含む条件で、耐候性を評価したい

出典:サンシャインウェザーメーター|スガ試験機、製品一覧|スガ試験機、会社概要|スガ試験機
JAPAN TESTING LABORATORIES株式会社|FT-IR による樹脂・ゴムの劣化分析
JTLとは
JAPAN TESTING LABORATORIES(JTL)は、岐阜県大垣市に本社を置く、2017年設立の会社です(資本金5,000万円、従業員189名)。開発品の信頼性を評価する計測・試験・分析のサービスを行っています。
JTLの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| FT-IR の受託分析 | 主な用途に、樹脂やゴムの劣化分析、ゴムのブリードアウトの確認、製品に付いた異物の特定などを挙げている |
| 樹脂の劣化分析 | 樹脂でもっともよく観察される構造の変化は酸化で、熱や紫外線などが原因で酸化劣化が起こるとしている。イメージング機能で、構造が変わった部位を可視化できる |
| 小さな試料の測定 | 顕微 IR で、50μm×50μm 程度、厚さ10μm 程度までの試料を分析できるとしている |
同社は、添加剤のような含有量が%以下の微量成分の検出・定性分析はできないとしています。
JTLが解決できる課題
- 変色・割れた樹脂部品が、酸化で劣化したのかを確かめたい
- ゴムの表面に出てきた物(ブリード)が何かを知りたい
- 劣化した場所を、部品の中で特定したい

出典:JAPAN TESTING LABORATORIES「FT-IR」の記載をもとに AI(Claude)で作成
出典:FT-IR|JAPAN TESTING LABORATORIES、会社概要|JAPAN TESTING LABORATORIES
選ぶ前に確かめる条件
メーカーや試験・分析の会社に相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。
- 今の材料(樹脂・ゴムの種類とグレード、色、厚さ、塗装やコーティングの有無)
- 劣化の症状(黄ばみ・色あせ・粉ふき・ひび割れ・膨らみ・割れ)と、出た場所・出るまでの期間
- 使う環境(屋外か屋内か、日の当たり方、温度の範囲、雨や結露、地域)
- 触れる薬品の名前・濃度・温度・触れる時間(洗浄液・消毒用アルコール・油・溶剤など)
- 部品にかかる応力(ねじの締め付け、圧入、曲げ)と、成形で残った応力の有無
- 求める寿命と、見た目の変化をどこまで許すか
- 劣化した部品と、劣化していない部品が手元にあるか(分析に使う)
- 数量、納期、予算
関連する課題
この課題に関係する分野・技術・製品のページ
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年9月30日





