「硬さ」と「固さ」は、どちらも「かたさ」と読みます。どう違うのか、材料の話ではどちらを書けばよいのか、迷う人は多いはずです。結論から言うと、材料のへこみにくさ・傷つきにくさは「硬さ」と書きます。このページでは、文化庁の資料をもとに「堅い・固い・硬い」の使い分けを整理し、ものづくりで「かたい」を硬さ・剛性・強度の3つに分ける理由を説明します。後半では、金属の硬さ一覧(ランキング)を、モース硬度とビッカース硬さの数値で紹介します。
硬さと固さの違い:ひとことで言うと
硬さと固さの違い
「硬い」は外からの力に強いこと(⇔軟らかい)。硬い石、硬い殻のように、物の性質に使います。「固い」は結び付きが強く、揺るがないこと。団結が固い、固い決意のように使います。
材料の試験の名前も「硬さ」です(ビッカース硬さ試験、デュロメータ硬さ など)。材料の「かたさ」を書くときは「硬さ」を選べば、まず間違いません(この一文は編集部のまとめ)。
出典:「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)(平成26年2月21日、文化審議会国語分科会)|文化庁、堅い・硬い・固い(デジタル大辞泉)|コトバンク
「かたい」の漢字は3つ:堅い・固い・硬い

出典:文化庁「「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)(平成26年2月21日、文化審議会国語分科会)」をもとに AI(Claude)で作成
文化審議会国語分科会の「「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)」(平成26年)は、「かたい」の3つの漢字を次のように説明しています。
| 漢字 | 意味(文化庁の報告) | 使い方の例(同) |
|---|---|---|
| 堅い | 中身が詰まっていて強い。確かである | 堅い材木、堅い守り、手堅い商売、合格は堅い、口が堅い |
| 固い | 結び付きが強い。揺るがない | 団結が固い、固い友情、固い決意、固く信じる、頭が固い |
| 硬い | (⇔軟らかい)。外力に強い。こわばっている | 硬い石、硬い殻を割る、硬い表現、表情が硬い |
デジタル大辞泉は、使い分けについて「固い」が広く用いられ、「硬い」は物の性質、「堅い」は状態・ようすに用いられることが多いと補足しています(コトバンク「堅い」)。
つまり、「硬さ」と「固さ」のどちらも日本語として正しい言葉ですが、表すものが違います。石や金属のように、押しても形が変わりにくい「物の性質」を言うときは「硬い・硬さ」です。結び目や決意のように「結び付きが強い・揺るがない」ことを言うときは「固い・固さ」です(この段落は上の2つの資料をもとにした編集部のまとめ)。
出典:「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)(平成26年2月21日、文化審議会国語分科会)|文化庁、堅い・硬い・固い(デジタル大辞泉)|コトバンク
ものづくりでは「かたい」を3つに分けて考える:硬さ・剛性・強度

出典:Wikipedia「硬さ」、Wikipedia「剛性」をもとに AI(Claude)で作成
ふだんの会話では、へこみにくいことも、たわみにくいことも、壊れにくいことも「かたい」と言います。ものづくりでは、この3つを別の性質として分けて考えます(この一文は編集部の解説)。
硬さ(へこみにくさ・傷つきにくさ)
Wikipedia「硬さ」は、硬さを「材料が異物によって変形や傷を与えられようとする時の、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさ」で、材料の特に表面または表面近くの機械的性質の一つとしています。測り方には、押し込んでくぼみを見る方法(ビッカース・ロックウェル・ブリネルなど)、はね返りを見る方法(ショア)、引っかいて傷がつくかを見る方法(モース)があります(同)。測り方どうしの対応(換算)はありますが、限られた材料で相関をとった大まかな目安だとしています(同)。
JIS の試験規格の名前も「硬さ」です。金属では JIS Z 2244「ビッカース硬さ試験」、ゴムでは JIS K 6253-3「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」のように書きます。測り方と数値の読み方は「硬さ(ビッカース・ロックウェル)」で解説しています。
剛性(たわみにくさ)
剛性は、曲げやねじりの力に対する変形のしにくさで、荷重÷変形量で表します(Wikipedia「剛性」)。ヤング率などの弾性率の大きい材料を使うか、H形や管のような断面にすると剛性が高くなります(同)。ふだん「このフレームは固い(たわまない)」と言うときの「かたさ」は、技術の言葉では剛性です(この一文は編集部の補足)。くわしくは「剛性」「ヤング率」で解説しています。
強度(壊れにくさ)
強度は、壊れずに耐えられる力の大きさです。材料の強さは、引張強さや降伏点・耐力(単位は MPa)で表します。くわしくは「降伏点・耐力と引張強さ」で解説しています。
硬くても、たわみにくいとは限らない
3つは別の性質なので、硬さを上げても剛性はほとんど変わらないことがあります。鋼は焼入れで硬さが大きく上がりますが、たわみにくさを決めるヤング率は、プロテリアル特殊鋼によると工具鋼で一般的に 210 GPa 近傍です(同社「物理的特性」)。同じ材質でも熱処理の条件や試験の温度で変化はしますが、硬さほど大きくは変わりません(この部分は編集部の解説)。部品のたわみを減らしたいときは、硬い鋼に替えるより、形(断面)を変えるか、ヤング率の大きい材料を選びます。
また、硬いことと、割れにくいことも別です。Wikipedia「モース硬度」は、モース硬度がいちばん高いダイヤモンドでも衝撃には弱く、ハンマーなどで一定の方向からたたくと簡単に砕けると説明しています。割れにくさ(ねばり強さ)は「靭性」で解説しています。
出典:硬さ|Wikipedia、剛性|Wikipedia、JIS Z 2244:2009 ビッカース硬さ試験−試験方法|日本産業規格の簡易閲覧(kikakurui.com)、JIS K 6253-3:2012 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ|日本産業規格の簡易閲覧(kikakurui.com)、物理的特性|プロテリアル特殊鋼、モース硬度|Wikipedia
金属の硬さ一覧(ランキング):モース硬度で比べる

出典:Wikipedia(英語版)「Hardnesses of the elements (data page)」をもとに AI(Claude)で作成
英語版 Wikipedia の「Hardnesses of the elements (data page)」には、元素ごとのモース硬度・ビッカース硬さ・ブリネル硬さがまとまっています(値の多くは G.V. Samsonov 編『Handbook of the Physicochemical Properties of the Elements』(1968年)から)。ものづくりでよく出てくる純金属をモース硬度の高い順に並べると、クロム 8.5、タングステン 7.5、オスミウム 7.0が上位で、すず・鉛は 1.5といちばん軟らかい部類です。
| 順位 | 金属(純金属) | モース硬度 | ビッカース硬さ(MPa) |
|---|---|---|---|
| 1 | クロム | 8.5 | 1,060 |
| 2 | タングステン | 7.5 | 3,430〜4,600 |
| 3 | オスミウム | 7.0 | (なし) |
| 4 | イリジウム | 6.5 | 1,760〜2,200 |
| 5 | チタン | 6.0 | 830〜3,420 |
| 6 | モリブデン | 5.5 | 1,400〜2,740 |
| 同 | ベリリウム | 5.5 | 1,670 |
| 8 | コバルト | 5.0 | 1,043 |
| 9 | 鉄 | 4.0 | 608 |
| 同 | ニッケル | 4.0 | 638 |
| 11 | 白金 | 3.5 | 400〜549 |
| 12 | 銅 | 3.0 | 343〜369 |
| 13 | アルミニウム | 2.75 | 160〜350 |
| 14 | 銀 | 2.5 | 250 |
| 同 | 金 | 2.5 | 188〜216 |
| 同 | 亜鉛 | 2.5 | (なし) |
| 同 | マグネシウム | 2.5 | (なし) |
| 18 | すず | 1.5 | (なし) |
| 同 | 鉛 | 1.5 | (なし) |
表の「(なし)」は、出典の表にビッカース硬さの値がないものです。値に幅があるのは、資料によって値が違うためです。出典の表は、硬さは前処理(加工や熱処理の状態)によって数百パーセントも変わることがあると注意しています(英語版 Wikipedia「Hardnesses of the elements (data page)」)。同じ金属でも、測ったときの状態で数字が大きく変わると考えてください。
出典:Hardnesses of the elements (data page)|Wikipedia(英語版)
ビッカース硬さで比べると、順番が変わる

出典:Wikipedia(英語版)「Hardnesses of the elements (data page)」をもとに AI(Claude)で作成
同じ表のビッカース硬さで並べ直すと、いちばん硬いのはタングステン(3,430〜4,600 MPa)になり、モース硬度で1位だったクロム(1,060 MPa)は中ほどに下がります。値がのっている14の金属の中でいちばん軟らかいのは金(188〜216 MPa)です(英語版 Wikipedia「Hardnesses of the elements (data page)」)。オスミウム・亜鉛・マグネシウム・すず・鉛は、この表にビッカース硬さの値がないので図に入れていません(オスミウムはブリネル硬さが 3,920〜4,000 MPa で、タングステンと同じくらい硬い金属です。同)。
順番が変わるのは、モース硬度とビッカース硬さは測り方がちがうからです。モース硬度は、10種類の標準の鉱物で引っかいて、どれで傷がつくかで決める目盛りで、数字の間隔も等しくありません(Wikipedia「モース硬度」)。ビッカース硬さは、ダイヤモンドを押し込んだくぼみの大きさから計算する値です。測り方どうしの換算は、限られた材料での大まかな目安にとどまります(Wikipedia「硬さ」)。
なお、資料の値は MPa(メガパスカル)で書かれています。ふだん目にする「HV」の数字は、MPa の値を 9.807 で割るとほぼ同じになります(1 kgf = 9.807 N から。換算は編集部)。たとえば鉄の 608 MPa は約 62 HV、タングステンの 3,430〜4,600 MPa は約 350〜470 HV です。
出典:Hardnesses of the elements (data page)|Wikipedia(英語版)、モース硬度|Wikipedia、硬さ|Wikipedia
同じ金属でも、合金・熱処理・表面処理で硬さは大きく変わる

出典:Wikipedia(英語版)「Hardnesses of the elements (data page)」、鍋屋バイテック会社(NBK)「硬さ換算表(SAE J417)」、三和メッキ工業「硬質クロムめっき」、京セラ「ファインセラミックス材料特性表」、フェローテック「ファインセラミックス特性表」をもとに AI(Claude)で作成
上のランキングは「純金属」の値です。実際の部品に使う鋼やアルミ合金は、合金にしたり熱処理したりして、ずっと硬くしてあります。たとえば鋼の硬さ換算表では、60 HRC の焼入れした鋼は約 697 HVです(鍋屋バイテック会社「硬さ換算表(SAE J417)」)。純鉄の約 62 HV(上の換算)と比べると、10倍以上です(比べたのは編集部)。
| 材料・表面処理 | ビッカース硬さ(目安) | 出典 |
|---|---|---|
| 純鉄 | 約 62 HV(608 MPa からの換算) | 英語版 Wikipedia |
| 鋼(HRC20 相当) | 238 HV | NBK の換算表 |
| 鋼(HRC40 相当) | 392 HV | 同上 |
| 鋼(HRC60 相当) | 697 HV | 同上 |
| 硬質クロムめっき | 750 HV 以上(JIS H 8615。20μm の膜の場合)/膜厚 25μm 以上で 800〜1,000 | 三和メッキ工業 |
| 窒化ケイ素 | 14〜16 GPa(約 1,430〜1,630 HV) | 京セラ/フェローテック |
| アルミナ | 14〜18 GPa(約 1,430〜1,840 HV) | フェローテック |
表面にめっきや皮膜を付けると、中身はそのままで表面だけを硬くできます。すり減りや傷を防ぎたい部品では、材料全体を硬いものに替えるより、表面処理を考えるほうが近道のことがあります(この一文は編集部の解説)。熱処理のしかたは技術ページ「熱処理(焼入れ・焼戻し・焼なまし・焼ならし)」、硬い皮膜は「PVD・CVD(硬質皮膜・薄膜コーティング)」で解説しています。
出典:Hardnesses of the elements (data page)|Wikipedia(英語版)、硬さ換算表(SAE J417)|鍋屋バイテック会社(NBK)、硬質クロムめっき|三和メッキ工業、ファインセラミックス材料特性表|京セラ、ファインセラミックス特性表|フェローテック
モース硬度の目盛りと、身近なものの硬さ

出典:Wikipedia「モース硬度」、Wikipedia(英語版)「Hardnesses of the elements (data page)」をもとに AI(Claude)で作成
モース硬度の標準の鉱物は、1 滑石、2 石膏、3 方解石、4 蛍石、5 燐灰石、6 正長石、7 石英、8 トパーズ、9 コランダム、10 ダイヤモンドです(Wikipedia「モース硬度」)。身近なものの目安は、人間の爪 2.5、銅の硬貨 3.5、ガラス 5、ナイフの刃 5.5、鋼のやすり 7.5 とされています(同)。
この目盛りに金属を置くと、金・銀(2.5)は爪と同じくらい、鉄(4.0)は銅の硬貨より少し上、チタン(6.0)はナイフの刃より少し上になります(金属の値は英語版 Wikipedia「Hardnesses of the elements (data page)」。並べたのは編集部)。ただし、ここでも純金属の値です。ナイフの刃や鋼のやすりが純鉄より硬いのは、合金にして熱処理してあるためです(この一文は編集部の解説)。
出典:モース硬度|Wikipedia、Hardnesses of the elements (data page)|Wikipedia(英語版)
硬さの話が出てくるページ
出典
- 「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)(平成26年2月21日、文化審議会国語分科会)|文化庁
- 堅い・硬い・固い(デジタル大辞泉)|コトバンク
- 硬さ|Wikipedia
- 剛性|Wikipedia
- JIS Z 2244:2009 ビッカース硬さ試験−試験方法|日本産業規格の簡易閲覧(kikakurui.com)
- JIS K 6253-3:2012 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ|日本産業規格の簡易閲覧(kikakurui.com)
- 物理的特性|プロテリアル特殊鋼
- モース硬度|Wikipedia
- Hardnesses of the elements (data page)|Wikipedia(英語版)
- 硬さ換算表(SAE J417)|鍋屋バイテック会社(NBK)
- 硬質クロムめっき|三和メッキ工業
- ファインセラミックス材料特性表|京セラ
- ファインセラミックス特性表|フェローテック
※図は、出典の説明と数値をもとに編集部がまとめた図・グラフです。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年11月7日
