熱交換器が大きくて、装置に収まらない。設備を増やしたいのに、熱交換器を置く場所がない。空気を冷やす熱交換器だけが、ほかの機器に比べて極端に大きい。こうした悩みの多くは、熱の伝わりにくい所(空気側、汚れ、流れの遅い所)を、伝熱面積を増やして補っていることが原因です。
熱交換器を小さくするには、熱を伝えやすくして必要な伝熱面積を減らすか、同じ体積に多くの伝熱面を詰め込むか、余裕の取りすぎを見直します。どの方法が効くかは、流体の組み合わせと、圧力・温度・汚れやすさで変わります。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。
課題と解決技術のマトリクス
| 課題(症状) | プレート式熱交換器 | フィン・プレートフィン(空気・ガス側の面積を増やす) | 拡散接合・マイクロチャンネル | 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル) | 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す |
|---|---|---|---|---|---|
| A液体どうしの熱交換器(多管式)が大きく、置き場所がない | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
| B空気・ガスを冷やす(温める)熱交換器が大きい | ◎ | ○ | ○ | ||
| C高圧・高温の流体なので、小さい形式が選べない | △ | ◎ | ○ | ||
| D汚れる流体なので、伝熱面積の余裕を大きく取っている | ○ | △ | ○ | ◎ | |
| E更新のたびに、前と同じ大きさで作り直している | ○ | ○ | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に使える方法は、流体の種類と組み合わせ、温度、圧力、汚れやすさ、許される圧力損失、保守の方法、コストによって異なります。プレート式の「△」は、ガスケットの耐熱・耐圧に限りがあり、高圧・高温では溶接タイプなどに限られることを示します。マイクロチャンネルの「△」は、流路が細く、汚れや固形物を含む流体では詰まりに注意が必要なことを示します。「熱設計・伝熱計算」は、それ自体は熱交換器の形式ではありませんが、どの形式を選ぶときにも、余裕の取りすぎを見直すために使います。
記号の理由と出典(17件)
マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。
| 症状 | 技術 | 記号 | 理由 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| A | プレート式熱交換器 | ◎ | プレート式は総括伝熱係数が高く、多管式より小さくできるため第一候補 | 日阪製作所 |
| A | 拡散接合・マイクロチャンネル | ○ | 細い流路を積層した拡散接合型で熱交換器を小さくできるため有効 | WELCON |
| A | 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル) | ○ | 形式を替えず、多管式のまま同じスペースで性能を上げられるため有効 | 神威産業 |
| A | 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す | ○ | 条件に合わせて伝熱計算をやり直せば、同じ大きさで作り直さずに小さくできるため有効 | シーテック |
| B | フィン・プレートフィン(空気・ガス側の面積を増やす) | ◎ | フィンで伝熱面を広げられ、特に気体どうしの熱交換で小型化の効果が大きいため第一候補 | 住友精密工業 |
| B | 拡散接合・マイクロチャンネル | ○ | 流路を細くすると熱伝達率が上がり、小型化や送風機動力の削減につながるため有効 | 日本冷凍空調学会 |
| B | 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す | ○ | 通過風速や圧力損失との釣り合いを計算で決めれば、無駄な大きさを避けられるため有効 | 編集部の解説 |
| C | プレート式熱交換器 | △ | ガスケットの耐熱・耐圧に限りがあり、高圧・高温では溶接タイプなどに限られる。条件つき | 編集部の解説 |
| C | 拡散接合・マイクロチャンネル | ◎ | 拡散接合で一体にでき、水素など高圧のガスを小さな熱交換器で冷やせるため第一候補 | 住友精密工業 |
| C | 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル) | ○ | 高温・高圧に強い多管式のまま、プレート式にできない流体にも対応できるため有効 | 神威産業 |
| D | プレート式熱交換器 | ○ | 多管式より汚れの見込みを小さくでき、伝熱面積の余裕を減らせるため有効 | 日阪製作所 |
| D | 拡散接合・マイクロチャンネル | △ | 流路が細く、汚れや固形物を含む流体では詰まりに注意が必要。条件つき | 編集部の解説 |
| D | 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル) | ○ | 管内流速を上げた自浄作用で汚れを付きにくくでき、余裕を減らす助けになるため有効 | シーテック |
| D | 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す | ◎ | 汚れの見込みの大きさがそのまま熱交換器の大きさになるため、適正な汚れ係数に見直すのが第一候補 | 編集部の解説 |
| E | プレート式熱交換器 | ○ | 条件が合えば、形式そのものを小さい方式に替えられるため有効 | 編集部の解説 |
| E | 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル) | ○ | 同じ形式のまま、細い管やフィンチューブで小さくできるため有効 | 編集部の解説 |
| E | 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す | ◎ | 既設の熱交換器はオーバースペックや型式の不一致が非常に多く、今の条件での伝熱計算の見直しが第一候補 | シーテック |
課題の診断と解決策
液体どうしの熱交換器(多管式)が大きく、置き場所がない
水と水、油と水などの熱交換器が、多管式で長く大きい。設備を増やしたいが、熱交換器を置く場所がない。保守のために抜き出すスペースも要る。

- 起きている現象
- 多管式は、管の中と外(胴の中)に流体を流します。胴の中では流れが遅くなる場所があり、熱の伝わりやすさ(総括伝熱係数)が上がりにくいため、必要な伝熱面積が大きくなりがちです。さらに、管束を抜き出すための保守スペースも必要です。
- 解決に使える技術
- プレート式熱交換器波形の薄い板を重ねて、流れを乱し、総括伝熱係数を上げる
- 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル)多管式のまま、細い管やフィンチューブ、バッフルの工夫で性能を上げる
- 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す条件を整理して、伝熱面積の余裕を適正にする
プレート式は、同じ熱交換能力の多管式に比べて、メンテナンススペースを含めて1/3〜1/5の大きさにできるという例があります。ただし、ガスケットで使える温度・圧力には限りがあり、流路が狭いので、繊維や大きな固形物を含む流体には向かない場合があります。流体の性状と、温度・圧力の条件を先に確かめます。
空気・ガスを冷やす(温める)熱交換器が大きい
空気や排ガスを冷やす(温める)熱交換器が、液体どうしの熱交換器に比べてずっと大きい。ファンの動力も大きい。

- 起きている現象
- 空気やガスは、液体に比べて熱を受け取りにくく、熱伝達率が小さい流体です。空調機の熱交換器では、空気側の熱伝達率は冷媒側の1/100程度で、フィンで面積を広げても、空気側の熱抵抗は冷媒側の5倍前後になると報告されています。熱の通り道のいちばん大きい抵抗が空気側にあるので、そこを改善しないと小さくなりません。
- 解決に使える技術
- フィン・プレートフィン(空気・ガス側の面積を増やす)空気・ガス側にフィンを付けて、伝熱面積を大きく増やす
- 拡散接合・マイクロチャンネル細い流路で熱伝達率を上げ、同じ体積に多くの伝熱面を入れる
- 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す通過風速や圧力損失との釣り合いを計算で決める
フィンを細かくするほど面積は増えますが、空気側の圧力損失が増え、ファンの動力が大きくなります。ほこりや油のミストを含む空気では、フィンのすき間が詰まることもあります。フィンは液体と気体のように熱伝達率の差が大きい組み合わせに向き、液体どうしの熱交換にはあまり向きません。
高圧・高温の流体なので、小さい形式が選べない
水素や冷媒、高圧ガスなど、圧力の高い流体を冷やしたい。プレート式ではガスケットがもたず、厚い多管式や二重管式しか選べない。

- 起きている現象
- 圧力に耐えるには、流路の壁を厚くするか、流路を細くする必要があります。ガスケットでシールするプレート式は、ガスケットの材料で使える温度と圧力が決まります。多管式は高圧・高温に対応できますが、胴や管板が厚く、大きく重くなります。
- 解決に使える技術
- 拡散接合・マイクロチャンネル細い溝を加工した金属板を積層し、拡散接合で一体にして、高圧に耐えさせる
- 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル)高圧・高温に強い多管式のまま、伝熱性能を上げる
- プレート式熱交換器ろう付けや溶接で一体にしたタイプで、ガスケットタイプより耐熱・耐圧を上げる
拡散接合のマイクロチャンネル熱交換器は、流体によっては洗浄の方法が限られます。クリーンな流体なら保守は要らないとする製品もありますが、汚れる流体では、高圧水や薬品での洗浄ができるかを確かめます。高圧ガス保安法などの規格への対応も、早めにメーカーと確認します。
汚れる流体なので、伝熱面積の余裕を大きく取っている
冷却水や工程の液体が汚れるので、汚れ係数を見込んで、伝熱面積を多めにしている。それでも性能が落ちて、洗浄の回数が多い。

- 起きている現象
- 伝熱面に汚れがつくと、汚れの層が熱の通り道の抵抗になり、熱が伝わりにくくなります。設計では、この汚れの抵抗(汚れ係数)を見込んで伝熱面積を増やします。汚れの見込みを大きくすると、熱交換器はその分だけ大きくなります。
- 解決に使える技術
- 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す流体と流速に合った汚れ係数を使い、余裕の取りすぎを避ける
- プレート式熱交換器流れが乱れてデッドスペースがないので、多管式より汚れ係数を小さくとれる
- 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル)管内の流速を上げて、汚れを付きにくくする
流速を上げると汚れにくくなり、熱伝達率も上がりますが、圧力損失と管の摩耗が増えます。汚れの見込みを小さくするなら、洗浄しやすい構造(分解できる、管束を抜き出せる)と、洗浄の周期もあわせて決めます。
更新のたびに、前と同じ大きさで作り直している
古い熱交換器を更新するとき、図面や設計資料がなく、前と同じ大きさで作り直している。今の運転条件に合っているのかわからない。

- 起きている現象
- 熱交換器は、設計したときの流量・温度と、余裕の見込みで大きさが決まります。運転条件が変わったり、余裕を重ねて見込んだりすると、必要以上に大きな熱交換器になっていることがあります。熱交換器メーカーからも、既設の熱交換器を検証すると、明らかにオーバースペックだったり、型式が合っていなかったりする例が多いという声があります。
- 解決に使える技術
- 熱設計・伝熱計算で余裕を見直す今の運転条件で熱収支と伝熱計算をやり直し、適正な伝熱面積にする
- 多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル)同じ形式のまま、細い管やフィンチューブで小さくする
- プレート式熱交換器条件が合えば、形式そのものを小さい方式に替える
伝熱面積を適正にしすぎると、流量が増えたときや汚れたときに能力が足りなくなります。どこまで余裕を削るかは、運転条件の幅、汚れの速さ、洗浄の周期を整理してから決めます。
なぜ、熱交換器は大きくなるのか
必要な伝熱面積は「熱量 ÷(総括伝熱係数 × 平均温度差)」
熱交換器で運べる熱量 Q は、総括伝熱係数 U、伝熱面積 A、2つの流体の平均温度差 ΔTm の積で表されます(Q = U × A × ΔTm)。運びたい熱量が決まっていれば、必要な伝熱面積は、U か ΔTm を大きくするほど小さくなります。熱交換器を小さくする方法は、どれもこの式のどこかに効いています。
総括伝熱係数 U は、流体の組み合わせで大きく変わります。化学工学会の入門資料に載っている多管式熱交換器の概略値(一般的な汚れ係数を含む)では、水と水で900〜2,500 W/(m²・K)、気体と水では10〜280 W/(m²・K)です。同じ熱量を運ぶにも、気体が相手だと桁違いに大きな伝熱面積が要ることがわかります。
熱の通り道は、抵抗の直列つなぎ

高温の流体から低温の流体へ熱が移るとき、熱は「高温側の流体から壁への熱伝達」「汚れの層」「壁の中の熱伝導」「汚れの層」「壁から低温側の流体への熱伝達」を順に通ります。これは電気の抵抗の直列つなぎと同じで、U は、いちばん大きい抵抗でほぼ決まります。

出典:空調機用熱交換器の高性能化における研究開発、化学工学会「熱工学入門」をもとに AI(Claude)で作成
空調機の熱交換器では、空気側の熱伝達率は冷媒側の1/100程度で、フィンで伝熱面積を広げても、空気側の熱抵抗は冷媒側の5倍前後になると報告されています。空気側が支配的なので、空気側のフィンの改良が性能を大きく左右します。逆に、大きい抵抗が残ったまま、壁を薄くしたり小さい抵抗を減らしたりしても、U はあまり上がりません。
流す向きで、平均温度差が変わる
2つの流体を同じ向きに流す「並流」と、反対の向きに流す「向流(対向流)」では、同じ入口・出口の温度でも平均温度差(対数平均温度差)が変わります。例えば、高温側を90℃から50℃に、低温側を20℃から45℃にする場合、並流では約24.6℃、向流では約37.0℃です。並流では向流の約1.5倍の伝熱面積が要ることになります(U が同じとした計算例)。

出典:日阪製作所「対数平均温度差」などをもとに AI(Claude)で作成
向流では、低温側の出口温度を高温側の出口温度より高くすることもできます。プレート式熱交換器は完全に近い向流にでき、高温側入口温度と低温側出口温度を1℃差まで近づけられるとするメーカーもあります。
汚れの見込みが、伝熱面積を増やす
伝熱面につく汚れの熱抵抗を汚れ係数と呼び、設計では前もってこれを見込んで、余分な伝熱面積を加えます。例えば、汚れのないときの U が2,000 W/(m²・K)の熱交換器に、汚れ係数0.0002 m²・K/W を見込むと、U は約1,430 W/(m²・K)に下がり、必要な伝熱面積は約1.4倍になります(計算例)。汚れ係数は、熱交換器の種類だけでなく、流体の種類や温度、流速によっても変わります。
出典:初心者のための化学工学入門 3.熱工学入門|化学工学会、空調機用熱交換器の高性能化における研究開発|日本機械学会 熱工学コンファレンス2007、対数平均温度差(LMTD)|日阪製作所 熱交ドリル、プレート式熱交換器|日阪製作所 熱交ドリル、汚れ係数|日阪製作所 熱交ドリル、汚れ係数|日本機械学会 機械工学辞典
解決技術の詳細
熱交換器を小さくする方法は、大きく3つに分けられます。熱の伝わりやすさ(U)を上げる方法(プレート式、伝熱促進)、同じ体積に多くの伝熱面を入れる方法(フィン、マイクロチャンネル)、そして余裕の取りすぎを見直す方法(熱設計・伝熱計算)です。流体の組み合わせと、圧力・温度・汚れやすさから選びます。

この記事の内容をまとめた模式図。AI(Claude)で作成

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
プレート式熱交換器

プレート式熱交換器は、プレスで波形に成形した薄い金属板(伝熱プレート)を重ね、板のすき間に高温と低温の流体を1枚おきに流します。波形の板で流れが乱れるので、総括伝熱係数が多管式に比べて大きく、同じ熱量を小さな伝熱面積で運べます。波形の板の表面積は、平板のおよそ1.2倍です。
同じ熱交換能力の多管式と比べて、メンテナンススペースを含めて1/3〜1/5の軽量・コンパクトにできるとするメーカーもあります。シールの方法で、分解して洗えるガスケットタイプ、ろう材で一体にした小型のブレージングタイプ、耐熱・耐圧を上げたセミ溶接・全溶接タイプに分かれます。ガスケットタイプは、ガスケットの材料で使える温度と圧力が決まるので、条件を確かめて選びます。
フィン・プレートフィン(空気・ガス側の面積を増やす)

空気やガスが相手の熱交換器では、熱伝達率の小さい空気・ガス側にフィンを付けて、伝熱面積を大きく増やします。代表的なのは、伝熱管に薄い板のフィンを付けるフィンチューブ式と、仕切り板と波形のフィン(コルゲートフィン)を交互に積み重ねてろう付けするプレートフィン式です。

伝熱面積と容積の比が大きいものを、コンパクト形熱交換器と呼びます。日本機械学会の機械工学辞典では、この比が200以上のものとしています。フィンは、先端に行くほど温度が根元と違ってくるので、面積を増やした分がそのまま効くわけではありません(フィン効率)。フィンを細かくするほど面積は増えますが、圧力損失が増え、ほこりで詰まりやすくなるので、通過する風速と圧力損失との釣り合いで決めます。
拡散接合・マイクロチャンネル
流路を細くすると、熱伝達率が上がり、同じ体積に多くの伝熱面を入れられます。日本冷凍空調学会の用語解説では、管内の熱伝達率は流路の断面の寸法の逆数に比例するとし、マイクロチャンネル化の利点に小型化、送風機動力の削減、高耐圧化、冷媒量の削減を挙げています。空調機の室外機では、流路1mm以下の扁平多穴管を使ったマイクロチャンネル熱交換器が実用化されています。
流路を細くすると、同じ断面に多くの流路が入り、伝熱面積が約6倍になる例(出典:技術開発への取り組み|WELCON)

高圧の流体には、エッチングなどで細い溝を加工した金属板を積層し、拡散接合で一体にした熱交換器が使われます。ろう付けより強い接合で、板の接合部が母材と一体になるため、高い圧力に耐えられます。神戸製鋼所の拡散接合型は、単位体積当たりの伝熱面積が1,000 m²/m³ 以上で、-260〜500℃、1,000 barG まで適用できるとしています(ステンレスを腐食しない流体で、連続運転の場合)。ただし、流路を細くすると流動抵抗が増えるので、熱伝達と圧力損失はトレードオフの関係になります。汚れる流体では洗浄の方法も確かめます。
多管式の改良(細い管・伝熱促進・バッフル)
多管式は、高温・高圧に強く、管束を抜き出して洗えるなど、今も広く使われています。多管式のまま小さくするには、管を細くして同じ胴に多くの伝熱面を入れる、管の外側にフィンを付けたフィンチューブを使う、管の内面に溝を付けた伝熱促進管を使う、胴の中の流れを整えるバッフル(じゃま板)を工夫する、といった方法があります。

空調機の伝熱管では、平滑管から、管の内面に細かい溝をらせん状に付けた内面溝付管に替わり、溝の形の改良を重ねて、熱伝達率が約2.5〜3倍になる一方、圧力損失の上昇は50%程度にとどまったと報告されています。細い管で管内の流速を上げると、熱伝達率が上がり、汚れも付きにくくなります。ただし、流速を上げすぎると、圧力損失と管の摩耗が増えます。
熱設計・伝熱計算で余裕を見直す
熱交換器は、流量や温度、汚れ係数、圧力損失の見込みを重ねて設計するので、余裕を取りすぎると大きくなります。今の運転条件で熱収支を確かめ、流体と流速に合った汚れ係数を使い、向流にできるか、許される圧力損失はどこまでかを整理すると、形式を替えなくても伝熱面積を小さくできることがあります。
圧力損失を大きく許すほど、流速を上げて熱伝達率を高められるので、熱交換器は小さくできます。その代わり、ポンプやファンの動力が増えます。熱交換器だけでなく、ポンプ・配管・ファンを含めた全体で、大きさと動力の釣り合いを決めます。流路の形を詰めるときは、熱流体解析(CFD)で流れの偏りや温度分布を確かめる方法もあります。
出典:プレート式熱交換器 製品紹介|アルファ・ラバル(ミスミ掲載ページ)、製品の特長|日阪製作所、コンパクト形熱交換器|日本機械学会 機械工学辞典、マイクロチャンネル|日本冷凍空調学会 用語解説、スカイエア室外機に搭載しているマイクロチャネル熱交換器|日本冷凍空調学会 技術賞、拡散接合型コンパクト熱交換器 DCHE|神戸製鋼所、空調機用熱交換器の高性能化における研究開発|日本機械学会 熱工学コンファレンス2007、初心者のための化学工学入門 3.熱工学入門|化学工学会、圧力損失(せん断応力)|日阪製作所 熱交ドリル
熱交換器を小さくする技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。形式を替えたいのか、今の形式のまま性能を上げたいのか、設計の余裕を見直したいのかによって、相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| 日阪製作所 | 熱交換器メーカー | ガスケット・ブレージング・溶接のプレート式熱交換器を手がける。分解して洗えるガスケットタイプもある。 | A 液体どうしの熱交換器(多管式)が大きく、置き場所がない D 汚れる流体なので、伝熱面積の余裕を大きく取っている E 更新のたびに、前と同じ大きさで作り直している | |
| 住友精密工業 | 熱交換器メーカー | プレートフィン型と拡散接合型マイクロチャンネル熱交換器を手がける。複数の流体の熱交換や、水素など高圧のガスの冷却に対応。 | B 空気・ガスを冷やす(温める)熱交換器が大きい C 高圧・高温の流体なので、小さい形式が選べない | |
| WELCON | 拡散接合メーカー | 拡散接合のマイクロチャンネル熱交換器を作る。高圧の流体や、ろう材を使わないステンレスだけの熱交換器に対応。 | A 液体どうしの熱交換器(多管式)が大きく、置き場所がない C 高圧・高温の流体なので、小さい形式が選べない | |
| 神威産業 | 熱交換器メーカー | 細いフィンチューブとヘリカルバッフルの多管式熱交換器を手がける。多管式のまま同じスペースで性能を上げたいときの相談先。 | A 液体どうしの熱交換器(多管式)が大きく、置き場所がない C 高圧・高温の流体なので、小さい形式が選べない D 汚れる流体なので、伝熱面積の余裕を大きく取っている E 更新のたびに、前と同じ大きさで作り直している | |
| シーテック | 熱交換器メーカー | 伝熱計算で条件を見直し、熱交換器の更新時のダウンサイジングを行う。現地での確認や排熱回収の熱交換器も手がける。 | A 液体どうしの熱交換器(多管式)が大きく、置き場所がない B 空気・ガスを冷やす(温める)熱交換器が大きい D 汚れる流体なので、伝熱面積の余裕を大きく取っている E 更新のたびに、前と同じ大きさで作り直している |
株式会社日阪製作所|プレート式熱交換器(ガスケット・ブレージング・溶接)
日阪製作所とは
日阪製作所は、大阪市北区に本社を置く、1942年創業の産業機械メーカーです(従業員 単体725名・連結1,063名、2026年3月末)。熱交換器事業ではプレート式熱交換器を手がけ、基礎から学べる技術解説「熱交ドリル」を公開しています。

出典:日阪製作所「プレート式熱交換器」の説明をもとに AI(Claude)で作成
日阪製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| プレート式熱交換器 | プレス成形した薄い伝熱プレートを積層し、高温流体と低温流体を1枚おきに流す。総括伝熱係数が多管式などに比べて非常に大きく、フレーム自体にメンテナンススペースを持つため設置面積が小さいとしている |
| 4つのタイプ | ガスケットタイプのほか、銅またはニッケルのろう材で一体化したブレージングタイプ、2枚のプレートをレーザー溶接したセミ溶接タイプ、全溶接タイプがある。セミ溶接・全溶接はガスケットタイプより耐熱・耐圧が高い |
| 伝熱面積の増減 | 伝熱プレートを積層する構造のため、プレートの増減で伝熱面積を変えられる(フレームの寸法の範囲内)。波形のプレートの表面積は平板のおよそ1.2倍 |
同社は、完全対向流での熱交換ができるため、高温側入口温度と低温側出口温度を1℃差まで近づけられるとしています。また、プレート式熱交換器では、多管式より汚れ係数を小さくとれる理由(流れの乱れ、デッドスペースがない、壁面温度が低い、洗浄しやすい)を解説しています。
日阪製作所が解決できる課題
- 液体どうしの熱交換で、多管式が大きく、置き場所が足りない
- 汚れを見込んだ余裕を、多管式より小さくしたい
- 分解して洗える熱交換器にしたい。あとで伝熱面積を増やせるようにしたい
出典:プレート式熱交換器|日阪製作所 熱交ドリル、製品の特長|日阪製作所、汚れ係数|日阪製作所 熱交ドリル、会社概要|日阪製作所
住友精密工業株式会社|プレートフィン型と拡散接合型の熱交換器
住友精密工業とは
住友精密工業は、兵庫県尼崎市に本社を置く、1961年設立のメーカーです(従業員 単独1,375名・連結1,783名、2026年3月31日現在)。航空・宇宙、油圧制御などと並んで熱交換器の事業を持ち、プレートフィン型と拡散接合型マイクロチャンネル熱交換器を手がけています。

出典:プレートフィン型熱交換器 スマレックス|住友精密工業に掲載の数値をもとに AI(Claude)で作成
住友精密工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| プレートフィン型「スマレックス」 | ブレージングシート(仕切り板)とコルゲートフィン(波板)を交互に積み重ねてろう付けした構造。フィンで伝熱面を広げるため体積当たりの伝熱面積が大きく、特に気体どうしの熱交換で小型・軽量化の効果が大きいとしている |
| 多管式との比較事例 | 同じ役目の熱交換器で、本体体積が多管式の0.30m³からプレートフィン型の0.14m³になり、ガス出口温度も40℃から34℃に下がる例を示している(冷却水32℃) |
| 拡散接合型「DuraBlex」 | エッチングで溝を加工したステンレス鋼の平板を積層し、拡散接合した構造。最大100MPa程度までの高圧に対応し、水素ステーション用水素圧縮機の熱交換器で従来比1/50の小型化の事例を示している |
同社によると、拡散接合型はプレートフィン型より肉厚を大きく取れるため強度が高く、プレートフィン型では対応できない高圧・熱サイクルの厳しい条件に使われます。
住友精密工業が解決できる課題
- ガスや空気を冷やす熱交換器が大きく、設置スペースや支持構造を小さくしたい
- 複数の流体の熱交換を、1台にまとめたい
- 水素など高圧のガスを、小さな熱交換器で冷やしたい
公開されている実績
- プレートフィン型の適用例として、空気分離装置用、産業機械用・新幹線用のオイルクーラー(アルミニウム合金製)、燃料電池用、プラント用9流体熱交換器(ステンレス鋼製)などを挙げている
- 拡散接合型は、水素ステーションのほか、LNG燃料船、LNG運搬船、FSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)などに適用範囲を広げているとしている
出典:プレートフィン型熱交換器 スマレックス|住友精密工業、拡散接合型マイクロチャンネル熱交換器 DuraBlex|住友精密工業、会社概要|住友精密工業
株式会社WELCON|拡散接合のマイクロチャンネル熱交換器
WELCONとは
WELCONは、新潟市秋葉区に本社を置く、2006年設立の拡散接合のメーカーです(資本金2億1,936万円)。マイクロチャンネル熱交換器、マイクロチャンネル水冷ヒートシンク、水素ステーション向け熱交換器などを手がけ、2023年に中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれています。

WELCONの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| マイクロチャンネル熱交換器 | 1mm以下の細い流路を持つ熱交換器を、ろう材を使わない拡散接合でオールステンレスに一体化する。100MPaの高耐圧設計ができるとしている。流路は細いが、流路の本数や長さを変えて、狙いの圧力損失にできるとしている |
| 標準品 | CF0.5(直交流、耐圧4.2MPa、56×56×30mm)、PF0.5(対向流、耐圧3.7MPa、59×94×29mm)。高圧側82MPa・94MPaの超高圧品もある |
| 水素ステーション向け熱交換器 | WEL-Cool H2C で、認証取得で求められる「100MPa下で100万回の繰り返し耐圧試験」や「4倍耐圧試験(400MPa)」をクリアしたとしている |
同社は、マイクロチャンネルを使って、同じ性能を維持したまま体積を100分の1にしたとしています(比較の相手は、同社のページに示された同程度の性能の熱交換器の一例です)。課題の整理から、流体解析、試作、性能評価、量産まで一貫して取り組めるとしています。
WELCONが解決できる課題
- 高圧の流体を扱うので、小さい形式の熱交換器が選べない
- 熱交換器を小さくして、使う場所のすぐ手前に置きたい
- ろう材を使わない、ステンレスだけの熱交換器にしたい
出典:熱交換器の小型化への取り組み(技術開発への取り組み)|WELCON、マイクロチャンネル熱交換器|WELCON、会社概要|WELCON
神威産業株式会社|細いフィンチューブとヘリカルバッフルの多管式
神威産業とは
神威産業は、東京都中央区に本社を置く、1960年設立の熱交換器メーカーです(資本金1億円、従業員82名)。シェル&チューブタイプ(多管式)、ラジエータタイプ、プレートタイプの熱交換器と自動油温調整機を手がけています。

神威産業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| φ8mmフィンチューブ | シェル&チューブタイプ熱交換器に、チューブメーカーと共同開発した φ8mm のフィンチューブを採用している(ほかのサイズやベアチューブもある) |
| ヘリカルバッフル | 固定管板式で、渦巻き型のヘリカルバッフルを採用。特許を取得(日本・アメリカ・台湾)し、プレスによる量産でコストを下げるとしている |
| HTRI のソフトによる設計 | 熱交換器の研究・開発で知られる HTRI のソフトを使って設計する。製造範囲は伝熱面積0.1〜500m²、設計圧力19.6MPaG、チューブ長さ7m以下など |
同社は、シェル&チューブタイプを「小さな空間の中で大きな伝熱面積を得られ、流体の圧力損失を小さく設計できる」形式と説明しています。管束を抜き出して清掃できる遊動管板式を標準品にしています。
神威産業が解決できる課題
- 多管式のまま、同じ設置スペースで性能を上げたい
- 圧延機、工作機械、建設機械、船舶などに組み込む熱交換器を、多管式で選びたい
- 高温・高圧の流体があり、プレート式にできない
出典:シェル&チューブタイプ熱交換器|神威産業、企業情報|神威産業
株式会社シーテック|伝熱計算による熱交換器のダウンサイジング
シーテックとは
シーテックは、大阪市天王寺区に本社を置く、2018年に創業した熱交換器メーカーです(資本金500万円)。各種熱交換器の設計・製造・販売のほか、プラントエンジニアリング、機器の設置工事や配管工事も行っています。

シーテックの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 機種選定と伝熱計算 | プロセスに合う機種選定と伝熱計算を行い、熱交換器をダウンサイジングして、「丁度いい」機種・型式・伝熱面積で供給するとしている |
| コンパクト型多管式熱交換器 | ステンレス製またはチタン製の細管を使い、小流量でも管内流速を上げて境膜伝熱係数を高め、コンパクトに設計する。速めの管内流速による自浄作用でスケールの付着を防ぐとしている(設計温度450℃以下、設計圧力0.7MPa(G)以下) |
| プレートフィンチューブ式 | 伝熱管に0.2〜0.3mmの薄いフィンを2〜3mm程度のピッチで圧入し、小さなスペースに多くの伝熱面積をとる。液体と気体のように、境膜伝熱係数の差が大きい組み合わせに向く |
代表者は、既設の熱交換器を検証すると、熱収支が合わない、明らかにオーバースペック、型式がミスマッチといった例が非常に多いと述べています。最適化のメリットとして、熱交換器がコンパクトになり、シェル径が小さく、チューブ本数も少なくなることを挙げています。
シーテックが解決できる課題
- 古い熱交換器を更新するとき、同じ大きさで作り直すのではなく、条件に合わせて小さくしたい
- 図面が不明瞭な古い熱交換器も、現地で確かめてから更新したい
- 排ガスや乾燥工程の排熱を、空気や温水に回収したい
公開されている実績
- 焼却炉の燃焼排ガスを熱源とした空気予熱器と温水発生器(ゴミ処理施設)、化学プラントの過熱蒸気コンデンサー、製油メーカーの乾燥工程の排熱回収用熱交換器の導入事例を公開している
出典:熱交換器の最適化|シーテック、コンパクト型多管式熱交換器|シーテック、プレートフィンチューブ式|シーテック、会社概要|シーテック
選ぶ前に確かめる条件
メーカーに相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。
- 交換する熱量(または流量と入口・出口の温度)。運転条件の幅(最大・最小)
- 流体の種類と組み合わせ(液体どうし、液体と気体、気体どうし、凝縮・蒸発を伴うか)。粘度、腐食性、固形物や繊維を含むか
- 設計温度と設計圧力。高圧ガス保安法、圧力容器などの適用法規
- 許される圧力損失(ポンプ・ファンの余力)。流す向き(向流にできるか)
- 汚れやすさと、洗浄の方法・周期(分解洗浄、管束の抜き出し、薬品洗浄)
- 置ける場所の寸法と重さ、配管の取り合い、保守のためのスペース
- 今の熱交換器の図面・データシートの有無と、今の運転データ(温度・流量の実測値)
- 材料(ステンレス、チタン、銅、アルミなど)と、数量・納期・予算
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年9月29日







