乾燥工程の時間とエネルギーを減らしたい

赤外線ヒーターのあるコンベア式の乾燥炉と、真空乾燥の容器、ヒートポンプのユニットを並べた工場の様子(AI で生成したイメージ)

乾燥の工程は、生産ラインの中で時間とエネルギーを大きく使う工程です。塗装の乾燥炉、洗浄のあとの部品の乾燥、食品・汚泥・セラミックスの乾燥など、多くの工場で熱風を当てて乾かしています。乾燥に何時間もかかってラインが詰まる、燃料や蒸気の費用が高い、温度を上げると製品が傷む、表面だけ乾いて中が残る、といった悩みはよく聞かれます。

この記事では、今の熱風乾燥の課題を確かめ、置き換え先の6つの候補(赤外線、マイクロ波・高周波、真空(減圧)、ヒートポンプ、過熱水蒸気、熱風のままの排熱回収・排気の循環)を、公開されている数値で比べます。時間・エネルギー・温度・均一さ・安全の目的ごとの選び方と、蒸発に要る熱の計算例、置き換えるときの注意を紹介します。

目次

今の方法(熱風乾燥)の課題

熱の多くが排気で逃げる

熱風乾燥は、外の空気を温めて製品に当て、水分を含んだ高温の空気を排気として外に出します。リネンの乾燥機の例では、従来の乾燥機でエネルギーの約4割が乾燥の排気として大気に出ているとされます(SII の公開用概要書、アイナックス稲本)。環境省の試算では、廃熱回収をしていない温風乾燥の炉の効率を20%と想定しています。

外の空気を加熱して乾燥室で製品に当て、湿った高温の空気を排気として捨てる熱風乾燥の流れの図
図1 熱風乾燥の熱の流れ
出典:SII「排風循環型乾燥機 公開用概要書」・環境省「高熱減圧脱水乾燥機の導入」をもとに AI(Claude)で作成

表面から乾いて、中が残る

熱風乾燥では表面から乾燥が進み、表面がしだいに硬くなって乾燥が遅れます(西光エンジニアリング)。NGK は、厚い塗布物では表面の膜張りや発泡が起きて均一に乾かすのが難しく、製品の内部の水分を取るには真空装置を使うため、生産性とコストに難があるとしています。

熱風では表面だけ乾いて硬い層ができ中が濡れたまま残り、マイクロ波や特定波長の赤外線では中の水が水蒸気として外へ出ることを比べた図
図2 表面から乾く熱風と、中から温める方式
出典:西光エンジニアリング「マイクロ波加熱を併用する乾燥」・NGK「波長制御システム」をもとに AI(Claude)で作成

熱に弱いものは温度を上げられない

温風乾燥は原理が簡単で費用も低い一方、耐熱性の低い材料には使えないとされます(環境省の資料)。NGK は、熱風乾燥ではフィルムや塗布物への熱のダメージが大きく、熱に弱い材料を使えないことを課題に挙げています。温度を上げられないと、乾燥の時間はさらに長くなります。

出典:排風循環型乾燥機 公開用概要書(令和6年度補正)|環境共創イニシアチブ(SII)、高熱減圧脱水乾燥機の導入|環境省、省エネルギー型乾燥装置の導入|環境省、マイクロ波加熱を併用する乾燥|西光エンジニアリング、波長制御システム|NGK

置き換え先の候補

置き換え先は、熱の届け方(光・電波・水蒸気)、水の飛ばし方(気圧を下げる)、熱の使い回し方(ヒートポンプ・排熱回収)で分けられます。熱風乾燥をやめずに排気の熱を使い直す方法も、置き換えより手軽な選択肢です(編集部の整理)。

赤外線・マイクロ波と高周波・真空・ヒートポンプ・過熱水蒸気・排熱回収と排気の循環の6つの候補を並べた図
図3 置き換え先の6つの候補
出典:環境省「省エネルギー型乾燥装置の導入」・同「高効率乾燥装置の導入」をもとに AI(Claude)で作成

赤外線:表面や塗膜を光で直接温める

赤外線ヒーターには、広い面積を均一に温める遠赤外線、エネルギーの強い近赤外線、特定の赤外線を当てて低温で乾かす波長制御ヒーターがあるとされます(環境省の資料)。NGK の波長制御乾燥システムは、3.5µm 未満の水の吸収率が高い赤外線などを選んで当て、熱風やヒーターに比べて乾燥時間を約1/2、使用電力を30〜50%減らせるとしています。環境省の資料では、ガスの熱風炉を赤外線ヒーターとガスの熱風炉のハイブリッドに替えた事例で、電力消費は増えたもののガスの消費が半分になり、エネルギーコストが約30%下がったとしています。

マイクロ波・高周波:水を中から温める

マイクロ波・高周波は、製品の中の水そのものを電波で温める(誘電加熱)方式で、内部から加熱するので短い時間で乾かせる一方、製品の中で加熱が不均一になる場合があるとされます(環境省の資料)。熱風と組み合わせることが多く、西光エンジニアリングは、熱風で表面が乾いて乾燥が遅れた時点でマイクロ波を当て、中の水分を外へ押し出して熱風で運び去るとしています。山本ビニターは、バッチ式・連続式・減圧式の乾燥機をそろえ、熱風乾燥・減圧乾燥との組み合わせも設計するとしています。

真空(減圧):沸点を下げて低い温度で乾かす

気圧を下げると、水はより低い温度で蒸発します(0.2気圧では約60℃)。環境省の資料では、大気圧から0.2気圧まで下げると、常温から蒸発させるまでに要るエネルギーが2.5%減るとしています。熱風乾燥より低い温度で乾かせて品質の劣化が少なく、乾燥速度が上がる、均一に乾かせるといった利点があるとされます。同じ資料の試算では、乾燥食品の工程で灯油の温風乾燥を減圧乾燥に置き換えると、エネルギー消費量が22%、CO2 排出量が43%、エネルギーコストが33%減るとしています(温風乾燥の炉の効率20%、減圧乾燥60%の想定)。

圧力を下げると水の沸点が下がることを示すグラフ(101.4kPaで100℃、19.9kPaで60℃など)
図4 圧力と水の沸点
出典:環境省「高熱減圧脱水乾燥機の導入」・テイエルブイ「蒸気表」をもとに AI(Claude)で作成

ヒートポンプ:排気の熱をくみ上げて使い直す

ヒートポンプ式の乾燥は、乾燥に使う空気や熱源を、ヒートポンプで温めて省エネする方式です(環境省の資料)。大川原製作所のヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機は、乾燥機の排熱を熱交換器で回収し、ヒートポンプで熱源として使い直すことで、外からの蒸気の供給量を大幅に減らせるとしています。同社の従来機に比べ、一次エネルギーを43%、ランニングコストを57%削減するとしています。

過熱水蒸気:100℃を超える水蒸気で包む

過熱水蒸気は、水を沸騰させてできた蒸気を、さらに加熱した高温の蒸気です。トクデンは、過熱蒸気は空気より単位体積当たりの熱容量が大きく、熱風より強い乾燥能力を持ち、水の分子だけの低酸素の気体なので酸化しにくく、火災や爆発の危険も低いとしています。同社は、熱風による乾燥・脱脂に比べて1/10まで時間を短縮した実績があるとしています。

排熱回収・排気の循環:今の熱風乾燥のまま省エネする

乾燥炉の排気から熱を回収して、熱風を作るための空気を予熱すると、燃料の消費量を約7%減らせるとの報告があるとされます(環境省の資料)。ヒートエナジーテックの低温廃熱回収熱交換器は、200℃以下の廃熱で給気を温めて廃熱回収率50〜60%とし、新しい乾燥炉では炉全体のエネルギーを7%減らせるとしています。リネンの乾燥機では、高温の排気の一部を入口に戻して循環させ、消費熱量を30〜50%減らせるとしています(SII の公開用概要書)。

出典:省エネルギー型乾燥装置の導入|環境省、遠赤外線塗装乾燥装置・高性能遠赤外線乾燥装置等の高効率乾燥装置の導入|環境省、高熱減圧脱水乾燥機の導入|環境省、波長制御システム|NGK、マイクロ波加熱を併用する乾燥|西光エンジニアリング、乾燥機|山本ビニター、ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機|大川原製作所、過熱蒸気について|トクデン、過熱蒸気で乾燥・脱脂時間を大幅短縮|トクデン(イプロス)、PWT-SK-Zシリーズ|ヒートエナジーテック、排風循環型乾燥機 公開用概要書(令和6年度補正)|環境共創イニシアチブ(SII)

公開されている数値で比べる

候補ごとに、各社と公的な資料が公開している乾燥時間の短縮とエネルギーの削減の例を並べました。対象・条件・比べる相手がそれぞれ違うので、数字の大小で方式の優劣は決められません(編集部の解説)。

乾燥時間

マイクロ波を組み合わせた事例では、時間が数分の1から数十分の1になった例があります。ただし、モズクの例は熱風3時間のあとにマイクロ波を10分程度当てるもので、熱風をやめたわけではありません。

マイクロ波・過熱水蒸気・波長制御の赤外線で公開されている乾燥時間の短縮の例の表
図5 公開されている乾燥時間の短縮の例
出典:西光エンジニアリング・同 sugokan・トクデン(イプロス)・NGKをもとに AI(Claude)で作成

エネルギー

エネルギーの削減率は、何と比べたか(同じ会社の従来機、熱風乾燥炉、灯油の温風乾燥など)と、実績か試算かで意味が変わります。環境省の資料は試算で、減圧乾燥の例では、廃熱回収をしている温風乾燥を使っている場合は削減の効果が小さくなるとしています。

ヒートポンプ・排風循環・赤外線・減圧乾燥・排熱回収で公開されているエネルギーの削減率の横棒グラフ
図6 公開されている省エネの例
出典:大川原製作所・SII・NGK・環境省・環境省・環境省・ヒートエナジーテックをもとに AI(Claude)で作成

出典:マイクロ波加熱を併用する乾燥|西光エンジニアリング、マイクロ波減圧乾燥機 sugokan|西光エンジニアリング、過熱蒸気で乾燥・脱脂時間を大幅短縮|トクデン(イプロス)、波長制御システム|NGK、ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機|大川原製作所、排風循環型乾燥機 公開用概要書(令和6年度補正)|環境共創イニシアチブ(SII)、遠赤外線塗装乾燥装置・高性能遠赤外線乾燥装置等の高効率乾燥装置の導入|環境省、高熱減圧脱水乾燥機の導入|環境省、省エネルギー型乾燥装置の導入|環境省、PWT-SK-Zシリーズ|ヒートエナジーテック

計算例:蒸発に要る熱と炉の効率

乾燥に要るエネルギーは、飛ばす水の量×水を蒸発させる熱÷炉の効率でおおよそ見積もれます。たとえば、水分90%の製品100kg を水分10%まで乾かすと、乾いた分(固形分)は10kg、乾燥後の重さは10÷0.9≒11.1kg なので、飛ばす水は約88.9kg です。水1kg を常温から大気圧で蒸発させる熱を約2,588kJ(環境省の資料の値)とすると、蒸発に要る熱は 88.9×2,588≒230MJ(約64kWh)です(編集部の計算)。

水分90%の製品100kgを10%まで乾かすときの飛ばす水の量と、炉の効率ごとの投入エネルギーの計算例
図7 蒸発に要る熱と炉の効率の計算例
出典:編集部が計算し、環境省「高熱減圧脱水乾燥機の導入」の値をもとに AI(Claude)で作成

炉の効率(投入した熱のうち蒸発に使われる割合)が20%なら投入する熱は約1,150MJ、60%なら約383MJ で、効率の違いで投入エネルギーが3倍変わります。効率の20%と60%は、環境省の試算が温風乾燥と減圧乾燥に置いた想定の値です(同じ試算は、減圧の下での蒸発の熱を2,524kJ/kg としていますが、ここでは比べやすいよう同じ2,588kJ/kg で計算しました)。ほかに、製品や台車を温める熱、炉の壁から逃げる熱、真空ポンプやファンの電力もかかります。蒸発に要る熱(潜熱)の考え方は、技術の基礎知識「比熱(熱容量)」で解説しています(編集部の解説)。

出典:高熱減圧脱水乾燥機の導入|環境省

目的と置き換え先の比較表

行が置き換えの目的、列が置き換え先の候補です。◎は第一候補、○は有効、△は条件によって有効を表します。目的の行をクリックすると、理由と出典を書いたカードに移ります。

課題(症状)赤外線マイクロ波・
高周波
真空
(減圧)
ヒート
ポンプ
過熱
水蒸気
排熱回収・
排気の循環
A乾燥の時間を短くしたい◎◎○◎
B燃料・電気を減らしたい○○○◎△○
C熱に弱いものを低い温度で乾かしたい○○◎
D中まで均一に乾かしたい(膜張り・変形を防ぐ)○◎○
E酸化・におい・燃える心配を減らしたい○○◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

◎・○・△の理由と出典は、下の「目的ごとの選び方」の各カードに書いています。空欄は、その目的の根拠が今回の調べで見つからなかった候補です。記号は、各社の公開している情報と公的な資料をもとにした編集部の評価で、同じ目的の中での比較です。対象と条件が違うため、数値はそのまま比べられません。

目的ごとの選び方

目的(A〜E)ごとに、比べた結果、候補、置き換えるときの注意をまとめました。

A

乾燥の時間を短くしたい

乾燥工程がボトルネックで、生産のペースが上がらない。乾燥炉が長く、場所も取っている。

比べた結果
西光エンジニアリングは、熱風乾燥で12時間程度かかっていた紙管を、熱風とマイクロ波の組み合わせで20〜30分の連続乾燥にした事例を公開しています。トクデンは、過熱蒸気で熱風による乾燥・脱脂の時間を1/10まで短縮した実績があるとし、NGK は特定の波長の赤外線で、熱風やヒーターに比べ乾燥時間を約1/2にできるとしています。真空(減圧)乾燥にも、乾燥速度が上がる利点があるとされます(環境省の資料)。
候補
置き換えるときの注意

短縮の値は、対象の材料・厚み・水分で大きく変わります。自社の製品でテスト乾燥をしてから決めます(編集部の解説)。西光エンジニアリング・山本ビニター・永石エンジニアリングは、テスト乾燥や試験を受け付けています。

B

燃料・電気を減らしたい

乾燥に使う燃料・蒸気・電気の費用を下げたい。CO2 の排出も減らしたい。

比べた結果
大川原製作所のヒートポンプ式の乾燥機は、乾燥機の排熱を回収して熱源に使い直し、同社の従来機に比べて一次エネルギーを43%削減するとしています。今の熱風乾燥のままでも、排気の熱で給気を温める(ヒートエナジーテック:炉全体で7%削減)、排気の一部を循環させる(リネンの乾燥機の例:消費熱量30〜50%削減)方法があります。環境省の試算では、遠赤外線への更新で30%、減圧乾燥への置き換えで22%のエネルギーの削減を想定しています。過熱水蒸気は、発生装置の熱効率は95%とされますが、乾燥全体の省エネの数値は今回の調べでは見つかりませんでした。
候補
置き換えるときの注意

燃料から電気に替えると、エネルギーの種類が変わります。環境省の赤外線の事例では、電力は増えたがガスは半分になり、エネルギーコストが約30%下がりました。エネルギー量・費用・CO2 の3つで比べます(編集部の解説)。

C

熱に弱いものを低い温度で乾かしたい

食品・医薬・樹脂フィルムなど、温度を上げると傷む・変わるものを乾かしたい。

比べた結果
減圧すると水は低い温度で蒸発し(0.2気圧では約60℃)、熱風乾燥より低温で乾かせるので、食品などの品質の劣化が少ないとされます(環境省の資料)。永石エンジニアリングの真空乾燥機は、汚泥や食品残渣を低い温度で乾かします。西光エンジニアリングのマイクロ波減圧乾燥機は40℃で乾かし、NGK の波長制御の赤外線も40℃で水分を乾かせるとしています。
候補
置き換えるときの注意

減圧乾燥では、蒸発で熱を奪われて製品が冷え、凍ることがあります。製品や装置を温める、減圧と大気開放を繰り返すなどの対処が要るとされます(環境省の資料)。

D

中まで均一に乾かしたい(膜張り・変形を防ぐ)

表面だけ乾いて中が残る、厚い塗膜に膜が張る・泡が出る、乾かすと曲がる・割れる。

比べた結果
熱風乾燥では表面から乾燥が進み、表面が硬くなって乾燥が遅れます(西光エンジニアリング)。マイクロ波は内部の水分を外へ押し出すので、同社の紙管の事例では乾燥変形が出なくなりました。山本ビニターも、物質の内部から乾燥を進めるとしています。NGK の波長制御の赤外線は、表面の膜張りを防ぎ、熱風では乾かせない厚膜(乾いたときの厚み300µm。熱風の限界は100µm)を乾かせるとしています。減圧乾燥には、温風乾燥より均一に乾かせる利点があるとされます(環境省の資料)。
候補
置き換えるときの注意

マイクロ波は、製品の中で加熱が不均一になることがあるとされます(環境省の資料)。形・大きさ・水分の分布で温まり方が変わるので、テストで温度のむらを確かめます(編集部の解説)。

E

酸化・におい・燃える心配を減らしたい

乾かすときに製品が酸化して変色する、においが外に漏れる、溶剤や粉じんが燃えないか心配。

比べた結果
過熱水蒸気は水の分子だけの低酸素の気体なので、製品が酸化しにくく、火災や爆発の危険も低いとされます(トクデン)。永石エンジニアリングの真空乾燥機は、密閉した真空で運転するので臭気が外に漏れないとし、大川原製作所のヒートポンプ式の乾燥機は、排気量が極めて少なくなり脱臭設備の負荷が小さくなるとしています。
候補
置き換えるときの注意

溶剤を含むものの乾燥は、どの方式でも防爆の決まりに合っているかをメーカーに確かめます(編集部の解説)。防爆の考え方は、課題「防爆エリアで電気機器を安全に使いたい」で解説しています。

置き換えるときの注意

乾燥の方式を替えるときは、今の乾燥を測り、目的を決め、比較表で候補を絞り、メーカーの試験機で自社の製品を乾かし、入れ方を決める、という順に進めます。次の図は、公開情報をもとに編集部が整理した進め方です。

乾燥の方式を置き換えるときの5つの手順
図8 乾燥の方式を置き換えるときの進め方
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成

まず自社の製品でテスト乾燥をする

乾燥の速さは、材料・形・厚み・水分で大きく変わるので、カタログの数値だけでは決められません。西光エンジニアリングは少量での委託乾燥を常時受け付け、山本ビニターは同社の工場の試験場で無料試験を、永石エンジニアリングは真空乾燥機のテスト機を用意しています。テストでは時間・エネルギー・品質(色・形・中の水分)を一緒に記録します(編集部の解説)。

組み合わせる方式も考える

置き換えは「全部を新しい方式に」とは限りません。西光エンジニアリングのモズクの事例は熱風3時間のあとにマイクロ波で仕上げ、環境省の赤外線の事例は赤外線ヒーターとガスの熱風炉のハイブリッドです。乾燥の後半の時間がかかる部分だけを新しい方式にする方法もあります(編集部の解説)。

エネルギーの種類が変わる

赤外線・マイクロ波・ヒートポンプ・過熱水蒸気の多くは電気を使うので、燃料から電気に替わると、比べる物差しが変わります。環境省の減圧乾燥の試算では、エネルギー消費量の削減は22%でも、CO2 は43%、エネルギーコストは33%の削減でした。エネルギー量・費用・CO2の3つで、今の設備と同じ条件で比べます(編集部の解説)。

減圧は凍結に、マイクロ波はむらに気をつける

減圧乾燥は、蒸発で熱を奪われて製品が冷え、凍ることがあるので、製品や装置を温める、減圧と大気開放を繰り返すなどの対処が要るとされます。マイクロ波は、製品の中で加熱が不均一になる場合があるとされます(環境省の資料)。高周波・マイクロ波の装置は、電波法の決まりで設置の許可が要る場合があるので、メーカーに確かめます(編集部の解説。トクデンは、同社の過熱蒸気の装置は誘導加熱方式で、電波法に規定される高周波利用設備の設置許可が不要としています)。

出典:高熱減圧脱水乾燥機の導入|環境省、省エネルギー型乾燥装置の導入|環境省、遠赤外線塗装乾燥装置・高性能遠赤外線乾燥装置等の高効率乾燥装置の導入|環境省、製品情報|西光エンジニアリング、マイクロ波加熱を併用する乾燥|西光エンジニアリング、乾燥機|山本ビニター、真空乾燥機|永石エンジニアリング、UPSSの特長|トクデン

乾燥の時間とエネルギーを相談できる企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。新しい方式の乾燥機のメーカーと、今の熱風乾燥炉の省エネの設備のメーカーを挙げました。

西光エンジニアリング株式会社|熱風とマイクロ波を組み合わせた乾燥機と、マイクロ波減圧乾燥機

西光エンジニアリングとは

西光エンジニアリングは、静岡県藤枝市に本社がある、乾燥装置と焙煎装置の会社です(1987年創業、従業員12人)。お客様のニーズに合わせて装置を設計・製作しており、マイクロ波を使った乾燥機は九州工業大学との共同研究から実用機にしています。

西光エンジニアリングの得意技術

技術内容
熱風とマイクロ波の組み合わせ熱風乾燥では表面から乾燥が進んで表面が硬くなり、乾燥が遅れる。その時点でマイクロ波を当てて内部の水分を外側に押し出し、水蒸気を熱風で取り去る
公開されている事例紙管:熱風乾燥では12時間程度で乾燥変形が出ていたものを、20〜30分の連続乾燥で変形なく乾かす(最高80℃程度)。モズク:熱風・冷風で12時間以上かかっていたものを、熱風3時間のあとマイクロ波で10分程度で完全に乾かす。帆立の貝柱:40〜60日程度を20日程度に
マイクロ波減圧乾燥機 sugokan減圧とマイクロ波で40℃の低い温度で乾かす。乾燥時間と消費エネルギーの比率を、マイクロ波減圧乾燥を1として、真空凍結乾燥27・熱風乾燥(低温)25と示している

西光エンジニアリングが解決できる課題

  • 熱風乾燥で、表面だけ乾いて中が乾くのに時間がかかる
  • 乾かすと製品が曲がる・縮む
  • 食品の色・香り・成分を残したまま、低い温度で乾かしたい
マイクロ波を併用すると従来方式より含水率が早く下がることを示す西光エンジニアリングのグラフ
図9 マイクロ波を併用したときの含水率の下がり方(実例)
出典:西光エンジニアリング「マイクロ波加熱を併用する乾燥」

出典:会社紹介|西光エンジニアリング、マイクロ波加熱を併用する乾燥|西光エンジニアリング、マイクロ波減圧乾燥機 sugokan|西光エンジニアリング

山本ビニター株式会社|高周波・マイクロ波で中から温める乾燥機

山本ビニターとは

山本ビニターは、大阪市天王寺区に本社がある、高周波・マイクロ波の加熱(電波加熱)の会社です。医療機器・プラスチック加工機・食品加工機・木材加工機・加熱機・乾燥機と、高周波・マイクロ波の発振器を扱っています。

山本ビニターの得意技術

技術内容
内部加熱の乾燥機乾燥工程は生産ラインの中で時間とスペース、エネルギーを大きく占め、ボトルネックになりがちだとし、高周波・マイクロ波による内部加熱乾燥で処理時間を短くするとしている
3つの構成物質の内部から乾燥を進めるバッチ式、コンベアで運びながら誘電乾燥する大量処理用の連続式、減圧の下で誘電加熱して低い温度で乾かす減圧式。熱風乾燥や減圧乾燥と組み合わせた工程の設計もできるとしている
技術情報と無料試験セラミック成形体・耐火物・砂型・プラスチック容器の塗料膜・中空糸などの乾燥を技術情報で紹介。同社の工場の試験場で、技術者と無料試験ができる

画像は、技術がわかる大きさの装置の写真を確かめられなかったため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。

山本ビニターが解決できる課題

  • 乾燥工程がボトルネックで、生産のペースが上がらない
  • セラミックス・塗料膜・繊維など、厚みのあるものの中まで乾かしたい
  • 自社の製品で高周波・マイクロ波が効くか、試してから決めたい
山本ビニターの高周波・マイクロ波乾燥機のバッチ式・連続式・減圧式と乾燥の用途の例
図10 山本ビニターの乾燥機の構成
出典:山本ビニター「乾燥機」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要・拠点一覧|山本ビニター、乾燥機|山本ビニター

NGK株式会社|特定の波長の赤外線で塗工膜を乾かす、波長制御乾燥システム

NGK(旧 日本ガイシ)は、名古屋市瑞穂区に本社がある、セラミックスの会社です。がいしや排ガス浄化用のセラミックスのほか、焼成炉・乾燥炉などの加熱装置を扱い、独自に開発した赤外線の乾燥装置「波長制御乾燥システム」を提供しています。

NGKの得意技術

技術内容
特定の波長の赤外線で乾かす特定の赤外線を当てて、従来の乾燥では難しかった低温乾燥を実現したとしている(例:40℃で水分を乾燥)。3.5µm 未満の赤外線は水の吸収率が高く、水系溶媒の乾燥に向くとしている
時間と電力熱風やヒーターに比べて乾燥時間を約1/2に短縮できる(例:wet 500µm・dry 100µm の水系塗料を200秒で乾燥)。使用電力は30〜50%減、バインダーの偏りを30〜40%抑えられるとしている
厚膜と内部の脱水表面の膜張りを防ぎ、熱風では乾かせない厚膜(dry 300µm。熱風の限界は100µm)の内部の乾燥を進める。大気圧の下で ppm オーダーまで絶乾でき、真空装置が要らなくなるとしている

画像は、同社のサイトのご利用条件で、私的使用などの範囲を超える複製などを許可なくできないため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。

NGKが解決できる課題

  • 塗工膜を、フィルムや基材を傷めない低い温度で乾かしたい
  • 有機溶媒から、乾きにくい水系溶媒に切り替えたい
  • 厚い塗工膜が、表面だけ乾いて膜が張る・泡が出る
NGKの波長制御乾燥システムの公開されている効果の表
図11 NGK 波長制御乾燥システムの公開されている効果
出典:NGK「波長制御システム」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|NGK、波長制御システム|NGK

株式会社永石エンジニアリング|汚泥や食品残渣を低い温度で乾かす、真空乾燥機

永石エンジニアリングとは

永石エンジニアリングは、長崎県佐世保市に本社がある、環境装置の会社です(1994年設立)。流動床式焼却炉・真空乾燥機・バイオマスボイラーなどを扱っています。

永石エンジニアリングの得意技術

技術内容
真空乾燥のしくみ真空では水の沸点が下がるため、低い温度で水分を蒸発させる。投入した汚泥や残渣をインペラーでかき混ぜながら、加熱した装置の内面に触れさせて乾かす。熱源は蒸気・温水(コージェネレーションの廃熱など)
減量と省エネ水分85%の汚泥は、乾燥して重量・体積ともに20%以下になるとしている。真空で乾かすため効率がよく、使う燃料がわずかで済むとしている
においと運転密閉した真空で運転するので、臭気が外に漏れない。バッチ式で、投入と排出のとき以外は無人で運転できる。処理量は1バッチ1m³から

永石エンジニアリングが解決できる課題

  • 工場の排水汚泥や食品残渣を、乾かして減らしたい
  • 乾燥のにおいが外に漏れるのを防ぎたい
  • 工場の廃熱(蒸気・温水)を乾燥に使いたい
永石エンジニアリングの真空乾燥機の設置写真
図12 真空乾燥機(実例)
出典:永石エンジニアリング「真空乾燥機」

出典:企業情報|永石エンジニアリング、真空乾燥機|永石エンジニアリング

株式会社大川原製作所|排熱をくみ上げて使い直す、ヒートポンプ式の乾燥機

大川原製作所とは

大川原製作所は、静岡県榛原郡吉田町に本社がある、乾燥装置の会社です(1927年創業、従業員292名)。乾燥・造粒・混合・濃縮・殺菌の装置や、汚泥・廃棄物の処理装置を製造・販売しています。

大川原製作所の得意技術

技術内容
ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機連続伝導伝熱乾燥機「インナーチューブロータリー」にヒートポンプのサイクルを組み込み、乾燥機の排熱を熱交換器で回収して熱源として使い直す。外からの蒸気の供給量を大幅に減らせ、既設の設備にも対応できるとしている
公開されている効果同社の従来機(ITR)を100としたとき、一次エネルギーの消費量が57(43%削減)、ランニングコストが43(57%削減)。年5,000時間の稼働などの条件での比較としている
排気と用途排気量が極めて少なくなり、脱臭設備の負荷も小さくなる。用途は工場の排水処理汚泥、下水汚泥・し尿汚泥、コーンフィード、卵殻、焼却灰

大川原製作所が解決できる課題

  • 汚泥や副産物の乾燥に使う蒸気・燃料を減らしたい
  • 乾燥の排気が多く、脱臭設備の負担が大きい
  • 今ある乾燥機を生かして省エネしたい
大川原製作所のヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機のフローシート
図13 ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機のフローシート(実例)
出典:大川原製作所「ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機」
大川原製作所のヒートポンプ式乾燥機の一次エネルギー消費量とランニングコストを従来機と比べたグラフ
図14 従来機(ITR)とヒートポンプ式(H-ITR)の比較(実例)
出典:大川原製作所「ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機」

出典:会社概要|大川原製作所、ヒートポンプ式連続伝導伝熱乾燥機|大川原製作所

トクデン株式会社|電気と水で1,200℃までつくる、過熱水蒸気の発生装置

トクデンとは

トクデンは、京都市山科区に本社がある、電磁誘導の技術の会社です(1939年創業)。誘導発熱ジャケットロールや産業用変圧器のほか、過熱蒸気発生装置「UPSS」を開発・製造しています。

トクデンの得意技術

技術内容
過熱蒸気発生装置 UPSS電気と水だけで、±1℃の温度の精度で200〜最高1,200℃の過熱蒸気をつくる(同社のイプロスの製品ページ)。コイルや鉄芯の熱損失を水の予熱に使い、熱効率95%(蒸気量20kg/h 以上の W・S シリーズ)としている
過熱蒸気で乾かす利点過熱蒸気は空気より単位体積当たりの熱容量が大きく、熱風より強い乾燥能力を持つ。水の分子だけの低酸素の気体なので、酸化しにくく、火災や爆発の危険も低いとしている
時間の短縮熱風による乾燥・脱脂に比べ、1/10まで短縮した実績があるとしている(同社のイプロスの製品ページ)。用途の例は、セラミックス部品の脱バインダー、砂型の硬化、塗工後の硬化処理など

画像は、同社のサイトの写真が小さい(横250px)ため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。

トクデンが解決できる課題

  • 乾燥・脱脂の時間を短くしたい
  • 乾かすときに製品が酸化する・燃えるのを避けたい
  • 燃料を使わず、電気で高温の乾燥・熱処理をしたい
トクデンの過熱蒸気発生装置UPSSのしくみと公開されている特長の表
図15 トクデン UPSS の公開されている特長
出典:トクデン「UPSSの特長」・同「過熱蒸気について」・同(イプロス)をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|トクデン、UPSSの特長|トクデン、過熱蒸気について|トクデン、過熱蒸気で乾燥・脱脂時間を大幅短縮|トクデン(イプロス)、使用用途|トクデン

株式会社ヒートエナジーテック|乾燥炉の排気の熱で給気を温める、低温廃熱回収熱交換器

ヒートエナジーテックとは

ヒートエナジーテックは、神奈川県横浜市港北区に本社がある、工業炉の会社です。加熱・乾燥炉、アルミ熱処理炉、塗装設備、工業用バーナ、水素関連機器、省 CO2 の環境関連装置を扱っています。

ヒートエナジーテックの得意技術

技術内容
低温廃熱回収熱交換器 PWT-SK-Z200℃以下の廃熱で給気を温め、廃熱回収率50〜60%の省エネを実現するとしている(西部技研との技術提携品)。排気の入口が100℃のとき給気を27℃から65℃に、200℃のとき29℃から127℃に温める
炉全体の効果新しい乾燥炉の場合、炉全体のエネルギーを7%削減できるとしている。軽い設計で、既設の乾燥炉にも設置工事がしやすい
使える乾燥炉塗装乾燥炉、ジェット熱風乾燥炉、バッチ式の間接・直接熱風乾燥炉、遠赤外線乾燥炉など。仕様の表には風量25N㎥/min の型(PWT-25SK-Z)が載っている

ヒートエナジーテックが解決できる課題

  • 今の熱風の乾燥炉のまま、燃料を減らしたい
  • 塗装の乾燥炉の排気の熱を捨てている
  • 乾燥炉を新しくするときに、省エネの設備も入れたい
従来の乾燥炉と低温廃熱回収熱交換器を付けた省エネ乾燥炉の空気の流れの比較図
図16 従来の乾燥炉と、低温廃熱回収熱交換器を付けた乾燥炉(実例)
出典:ヒートエナジーテック「PWT-SK-Zシリーズ」
ヒートエナジーテックの低温廃熱回収熱交換器を載せた乾燥炉の写真
図17 低温廃熱回収熱交換器を載せた乾燥炉(実例)
出典:ヒートエナジーテック「PWT-SK-Zシリーズ」

出典:会社情報|ヒートエナジーテック、PWT-SK-Zシリーズ|ヒートエナジーテック

選ぶ前に確かめる条件

相談する前に、次のことを整理しておくと、方式の絞り込みとテスト乾燥が進めやすくなります。

  • 乾かすもの(材料・形・大きさ・厚み)と、乾燥の前後の水分
  • 1時間あたり・1日あたりの処理量と、連続かバッチか
  • 今の乾燥の時間・温度と、使っている燃料・蒸気・電力の量
  • 製品が耐えられる温度と、酸化・変色・変形の許せる範囲
  • 溶剤や粉じんの有無(防爆が要るか)と、においの対策
  • 排気の温度と量(排熱を回収できるか)
  • 置ける場所と、使えるエネルギー(電気の容量・蒸気・ガス)

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月8日

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