熱エネルギーとは、物の中の粒子の動きに関係するエネルギーで、温度の差があると高い方から低い方へ移ります。お湯を沸かす、金属を溶かす、電子部品が熱くなるといった現象は、どれも熱エネルギーで説明できます。このページでは、熱と温度の違い、計算のしかた、単位、伝わり方、ほかのエネルギーとの変換、ものづくりでの例を順に説明します。
熱エネルギーとは:ひとことで言うと
熱エネルギー
物をつくる粒子(原子や分子)の動きに関係するエネルギーです。温度が高いほど粒子の動きは激しくなります。物の間で移動するエネルギーを「熱」、移動した量を「熱量」と呼びます。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
正確に言うと、熱力学で「熱」と呼ぶのは、温度の差によって移動するエネルギーです。物の中にたまっているエネルギーは「内部エネルギー」と呼び、移動する「熱」と区別します。北海道大学の講義資料には、吸収した「熱エネルギー」という言い方があります。このページでも、物の中のエネルギーと移動する熱の両方をまとめて「熱エネルギー」と呼びます(編集部の補足)。
出典:熱|ウィキペディア日本語版、第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学、「熱ってどういうもの?」の基本を押さえよう:熱設計の本質(1)|MONOist
熱と温度の違い
温度は「どれだけ熱いか」を表します。熱量は「どれだけのエネルギーが移ったか」を表します。同じ温度でも、量が多い物を温めるには、たくさんの熱が要ります。

出典:ウィキペディア日本語版「比熱容量の比較」をもとに AI(Claude)で作成
| 温度 | 熱量 | |
|---|---|---|
| 表すもの | 熱さの度合い | 移ったエネルギーの量 |
| 単位 | ℃、K(ケルビン) | J(ジュール) |
| 物の量を2倍にすると | 変わらない | 同じ温度差なら2倍要る |
温度の差については、1℃ と 1K は同じ大きさです。ケルビンは絶対温度の単位で、摂氏温度は絶対温度から 273.15 を引いたものです。
出典:「熱ってどういうもの?」の基本を押さえよう:熱設計の本質(1)|MONOist、第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学
熱量の計算:Q = m × c × ΔT

出典:北海道大学の講義資料、ウィキペディア日本語版「比熱容量の比較」をもとに AI(Claude)で作成
物を温めるのに要る熱量は、質量 × 比熱 × 温度の変化で求められます。比熱は、1 kg の物を 1 K 上げるのに要る熱量で、物の種類で決まります。くわしくは基礎知識:比熱(熱容量)で説明しています。
物によって温まりやすさが違う

出典:ウィキペディア日本語版「比熱容量の比較」をもとに AI(Claude)で作成
| 物 | 比熱 kJ/(kg·K)(25℃) | 1 kg を 10℃ 上げる熱量 |
|---|---|---|
| 水 | 4.18 | 約 41.8 kJ |
| アルミニウム | 0.90 | 約 9.0 kJ |
| 鉄 | 0.45 | 約 4.5 kJ |
| 銅 | 0.38 | 約 3.8 kJ |
出典:第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学、比熱容量の比較|ウィキペディア日本語版
溶ける・蒸発するときの熱(潜熱)

出典:ウィキペディア日本語版「融解熱」、ウィキペディア日本語版「蒸発熱」、ウィキペディア日本語版「比熱容量の比較」をもとに AI(Claude)で作成
物が固体・液体・気体の間で変わるときは、温度が変わらなくても熱の出入りがあります。この熱を潜熱と呼びます。氷の融解熱は 333.6 kJ/kg(0℃)、水の蒸発熱は 2,257 kJ/kg(100℃、1気圧)です。同じ 1 kg の水を 0℃ から 100℃ にする熱量(約 418 kJ)の 5 倍以上を、蒸発に使うことがわかります。
冷却塔が水の蒸発で水を冷やせるのは、この大きな蒸発熱を使うからです(技術:冷却塔)。
出典:第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学、融解熱|ウィキペディア日本語版、蒸発熱|ウィキペディア日本語版
熱量の単位:J・cal・kWh・Btu

出典:NISTをもとに AI(Claude)で作成
| 単位 | 読み方 | ジュールで表すと |
|---|---|---|
| J | ジュール | 1 J |
| cal | カロリー(熱化学カロリー) | 4.184 J |
| kWh | キロワット時 | 3,600,000 J(3.6 MJ) |
| Btu | 英国熱量単位(国際蒸気表の値) | 1,055.056 J |
熱量の単位の基本はジュール(J)です。電気代の計算には kWh、海外の空調機のカタログには Btu が出てきます。カロリーはもともと水 1 g を 1℃ 上げる熱量からきた単位で、日本の計量法では 1 cal を 4.184 J と定めています(ウィキペディア日本語版「カロリー」による)。古い資料には別の値(4.18605 J など)で書かれていることがあるので、桁の細かい計算では何の値かを確かめます。
出典:Guide for the Use of the SI, Appendix B.8(換算係数)|NIST、カロリー|ウィキペディア日本語版、第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学
熱の伝わり方:伝導・対流・放射

出典:EE Times Japan、MONOistをもとに AI(Claude)で作成
| 伝わり方 | しくみ | ものづくりでの例 | くわしいページ |
|---|---|---|---|
| 伝導 | 原子や分子の振動などが隣へ伝わる | 放熱シート、ヒートシンクの根元 | 熱伝導率 |
| 対流 | 気体や液体が動いて熱を運ぶ | ファンの風(強制対流)、冷却水 | 熱伝達率 |
| 放射 | 温度に応じた電磁波で伝わる。真空でも起こる | 炉の中の加熱、太陽光による加熱 | 放射率 |
熱は、ふつう高い温度から低い温度へ移ります。低い温度から高い温度へ自然に移ることはありません。エアコンやヒートポンプが低い温度の側から熱を運べるのは、電気などを使って運んでいるからです(基礎知識:ヒートポンプ)。
出典:熱に関する基礎知識:福田昭のデバイス通信(468) AIサーバの放熱技術(1)|EE Times Japan、「熱ってどういうもの?」の基本を押さえよう:熱設計の本質(1)|MONOist、熱|ウィキペディア日本語版
ほかのエネルギーとの変換

出典:コトバンク、ウィキペディア日本語版「熱」、ウィキペディア日本語版「カルノーサイクル」をもとに AI(Claude)で作成
| もとのエネルギー | 熱になる例 |
|---|---|
| 電気 | 電気抵抗で出るジュール熱。電熱器や大型の電気炉も同じ |
| 運動(仕事) | 摩擦、切削。力が熱に変わる |
| 化学 | 燃料の燃焼 |
エネルギーの形が変わっても、全体の量は変わりません。これが熱力学の第一法則(エネルギー保存の法則)です。ただし、熱機関が熱を連続して全部、動力に変えることはできません。
熱を動力に変えられる量には上限がある

出典:ウィキペディア日本語版「カルノーサイクル」をもとに AI(Claude)で作成
理論上の効率(カルノー効率)は、1 − 低温側の温度 ÷ 高温側の温度(温度はケルビン)で表されます。2つの温度だけで決まり、高温側が高いほど上がります。100℃ の熱なら約 20%、1,500℃ でも約 83% です。実際の機械は摩擦などの損失があるので、これより低くなります。
実際の例として、JERA は姉崎発電所の新しい設備で熱効率が約 63% に向上すると紹介しています。
出典:第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学、ジュール熱|コトバンク、カルノーサイクル|ウィキペディア日本語版、姉崎発電所リプレース|JERA
ものづくりでの熱エネルギー
切削:力が熱に変わる

出典:ニュースイッチ(澤武一)をもとに AI(Claude)で作成
芝浦工業大学の澤武一教授の解説によると、切削では切削力が熱に変わり、切削点の温度は約 600〜1,000℃ に達します。熱は工作物・切りくず・工具の3つに流れます。工作物は熱膨張で削りすぎることがあり、工具は軟らかくなって寿命が短くなります。熱は切りくずに多く逃げるほど都合がよいとされています。
出典:澤武一「機械加工の基礎!「切削熱」を制御せよ」|ニュースイッチ
電子部品:使った電力が熱になる
電流が電気抵抗を流れると、毎秒 RI² ジュール(RI² ワット。R は抵抗、I は電流)の熱が出ます。電子部品の中でも同じことが起きていて、部品の温度が上がります。ロームのアプリケーションノートは、物には熱容量があるので、消費電力が増えてもすぐには温度が上がらないと説明しています。出た熱をどう逃がすかは、課題:小型化で部品の温度が上がるで扱っています。
出典:ジュール熱|コトバンク、熱モデルとは(アプリケーションノート)|ローム
工場の加熱と排熱

出典:NEDOをもとに AI(Claude)で作成
NEDO によると、産業分野のエネルギー利用の約5割は工業炉やボイラーなどの加熱用途です。NEDO と未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合の調査(2019年発表)では、15業種の排ガスの熱量は年 743 PJ で、そのうち 565 PJ(76%)が 200℃ 未満でした。上のカルノー効率のとおり、温度が低い熱は動力に変えられる割合が小さくなります。
熱をためる:顕熱と潜熱

出典:新潟大学、北海道大学の講義資料をもとに AI(Claude)で作成
熱をためる方法には2つあります。顕熱蓄熱は比熱と温度差を使い、潜熱蓄熱は主に固体と液体の間の変化を使います。新潟大学の資料は、蓄熱量は顕熱より潜熱のほうが多いとしています。
よくある質問
熱エネルギーと熱量はどう違いますか
熱量は、移動した熱の量を指す言葉です。熱エネルギーは、このページでは物の中のエネルギーと移動する熱をまとめた呼び方です(編集部の補足)。単位はどちらもジュール(J)です。
熱エネルギーの単位は何ですか
ジュール(J)です。kJ・MJ のほか、kWh(1 kWh=3.6 MJ)や cal(1 cal=4.184 J)も使われます。
熱エネルギーの求め方を教えてください
温度が変わるときは、質量 × 比熱 × 温度の変化で求めます。水 1 kg を 80℃ 上げるなら、1 × 4.18 × 80 ≒ 334 kJ です。溶ける・蒸発するときは、質量 × 融解熱(または蒸発熱)で求めます。
熱エネルギーの話が出てくるページ
出典
- 熱|ウィキペディア日本語版
- 第7章 気体分子の運動と熱エネルギー(講義資料)|北海道大学
- 「熱ってどういうもの?」の基本を押さえよう:熱設計の本質(1)|MONOist
- 比熱容量の比較|ウィキペディア日本語版
- 融解熱|ウィキペディア日本語版
- 蒸発熱|ウィキペディア日本語版
- Guide for the Use of the SI, Appendix B.8(換算係数)|NIST
- カロリー|ウィキペディア日本語版
- 熱に関する基礎知識:福田昭のデバイス通信(468) AIサーバの放熱技術(1)|EE Times Japan
- ジュール熱|コトバンク
- カルノーサイクル|ウィキペディア日本語版
- 姉崎発電所リプレース|JERA
- 澤武一「機械加工の基礎!「切削熱」を制御せよ」|ニュースイッチ
- 熱モデルとは(アプリケーションノート)|ローム
- 産業分野の排熱実態調査結果を公表|NEDO
- 新技術説明会 資料(蓄熱)|新潟大学(JST)
※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・装置ではありません。
情報の確認日:2026年11月6日
