電源が熱くて放熱器が小さくできない。待機のときの消費電力が減らない。小さくしようと周波数を上げたら、かえって効率が落ちた。電源の変換効率は、装置の大きさ・電気代・発熱に直接かかわる数字です。
効率が上がらない原因は、どこで損失が出ているかによって変わります。スイッチ素子を替えるのか、回路方式を変えるのか、トランスやコイルを見直すのか、軽い負荷での制御を変えるのか。次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。
課題と解決技術のマトリクス
| 課題(症状) | SiC・GaN などのパワー半導体 | 回路方式(ソフトスイッチング・同期整流・PFC) | 低損失の磁性部品(トランス・コイル) | 軽負荷の制御(周波数を下げる) | 損失の見積もり・シミュレーション・測定 |
|---|---|---|---|---|---|
| A電源が熱い、放熱器やファンが大きい | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ |
| B軽い負荷・待機のときの効率が低い | △ | ○ | △ | ◎ | ○ |
| C周波数を上げて小さくしたら、効率が落ちた | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | |
| D低い電圧・大きな電流の出力で、損失が大きい | ○ | ◎ | ○ | ○ | |
| Eどこで損失が出ているのか分からない | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に効く方法は、入力と出力の電圧・電流、スイッチング周波数、負荷の変わり方、ノイズの規格、大きさとコストの制限によって異なります。「パワー半導体」の「△」(症状B)は、軽負荷では素子の導通損失より、ゲート電荷の損失や制御回路の損失の比重が大きくなるため、素子を替えるだけでは効きにくいことを示します。「磁性部品」の「△」(症状B)は、磁心の鉄損が負荷の大きさによらず出る場合に効くことを示します。「軽負荷の制御」の「△」(症状A)は、発熱が軽負荷・待機のときの損失から来ている場合に限って効くことを示します。空欄は、その技術だけでは直接の対策になりにくいことを示します。
記号の理由と出典(19件)
マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。
| 症状 | 技術 | 記号 | 理由 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| A | SiC・GaN などのパワー半導体 | ◎ | オン抵抗が低くスイッチング損失も少ない素子に替えれば、発熱のもとの損失を減らせるため | ローム |
| A | 回路方式(ソフトスイッチング・同期整流・PFC) | ◎ | 電圧か電流がゼロのときに切り替える方式でスイッチング損失をごく小さくできるため | 東芝デバイス&ストレージ |
| A | 低損失の磁性部品(トランス・コイル) | ○ | コイルやトランスの銅損・鉄損を減らせば発熱が減るが、損失の一部のため有効止まり | パナソニック技報 |
| A | 軽負荷の制御(周波数を下げる) | △ | 定格付近の熱は軽負荷の損失が原因ではないため、軽負荷や待機のときの損失が熱の原因である場合に限って効く | 編集部の解説 |
| A | 損失の見積もり・シミュレーション・測定 | ○ | どの部品が熱を出しているかを先に確かめれば、直す場所を絞れるため | 編集部の解説 |
| B | SiC・GaN などのパワー半導体 | △ | 軽負荷では素子の導通損失より別の損失の比重が大きく、素子を替えるだけでは効きにくいため条件つき | 編集部の解説 |
| B | 回路方式(ソフトスイッチング・同期整流・PFC) | ○ | 回路方式で損失は減らせるが、同期整流は軽負荷ではダイオード整流が有利なこともあり負荷範囲で比べる必要があるため | 村田製作所 |
| B | 低損失の磁性部品(トランス・コイル) | △ | 磁心の鉄損が負荷によらず出る場合に限り、低損失の磁性部品が効くため条件つき | 編集部の解説 |
| B | 軽負荷の制御(周波数を下げる) | ◎ | 軽負荷では周波数に比例する損失を下げるため、周波数を下げる制御が一般的な対策になるため | ローム |
| B | 損失の見積もり・シミュレーション・測定 | ○ | 軽負荷でどの損失が大きいかを調べれば、効く対策を選べるため | 編集部の解説 |
| C | SiC・GaN などのパワー半導体 | ◎ | 速く切り替わる素子ならスイッチング損失が小さく、周波数を上げても効率が落ちにくいため | 東芝デバイス&ストレージ |
| C | 回路方式(ソフトスイッチング・同期整流・PFC) | ◎ | 電圧か電流がゼロのときに切り替えれば、周波数に比例して増えるスイッチング損失を抑えられるため | 東芝デバイス&ストレージ |
| C | 低損失の磁性部品(トランス・コイル) | ◎ | 周波数が上がると鉄損や巻線の損失が増えるため、使う周波数に合った磁心材料を選ぶことが対策になるため | TDK |
| C | 損失の見積もり・シミュレーション・測定 | ○ | 損失を計算やシミュレーションで見積もれば、周波数を上げて悪化した原因の部品を特定できるため | ローム |
| D | SiC・GaN などのパワー半導体 | ○ | オン抵抗の低い素子で導通損失を減らせるが、低電圧大電流では整流方式の見直しが主役のため補助的 | 編集部の解説 |
| D | 回路方式(ソフトスイッチング・同期整流・PFC) | ◎ | ダイオードを FET に替える同期整流で、順方向電圧の損失を大きく減らせるため | 村田製作所 |
| D | 低損失の磁性部品(トランス・コイル) | ○ | 大電流ではコイルの導通損失も大きな比重を占めるため、抵抗の小さいコイルが役に立つ | ローム |
| D | 損失の見積もり・シミュレーション・測定 | ○ | 導通損失とスイッチング損失の釣り合いを計算すれば、効く部品を選べるため | 編集部の解説 |
| E | 損失の見積もり・シミュレーション・測定 | ◎ | 素子ごとの損失の計算・シミュレーション・測定で、損失の出ている部品を特定できるため | 編集部の解説 |
課題の診断と解決策
困り方と、損失が大きくなる条件(負荷・周波数・出力電圧)から、疑う原因と、まず試す対策の見当をつけられます。症状ごとの詳しい見方は、下のカードで確かめてください。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
電源が熱い、放熱器やファンが大きい
定格に近い負荷で動かすと電源が熱くなり、放熱器やファンを小さくできない。

- 起きている現象
- 損失はすべて熱になります。出力100W の電源なら、効率90%で約11W、95%で約5W が熱になる計算です。電流が大きいときは、スイッチ素子とコイルの導通損失(電流の2乗×抵抗)が大きな比重を占めます。
- 解決に使える技術
- SiC・GaN などのパワー半導体オン抵抗とスイッチング損失の小さい素子に替える
- 回路方式ソフトスイッチング・同期整流・PFC の方式を見直す
- 損失の見積もりどの部品がいちばん熱を出しているかを先に確かめる
オン抵抗の低い素子やコイルは、一般に大きくなります。素子を大きくすると寄生容量も増え、スイッチング損失が増えることがあります。
軽い負荷・待機のときの効率が低い
定格では効率が高いのに、軽い負荷や待機のときに効率が大きく下がる。

- 起きている現象
- 負荷が軽いと、MOSFET のスイッチング損失・出力容量の損失・ゲート電荷の損失、制御 IC の動作損失の比重が大きくなります。このうち出力容量・ゲート電荷・制御 IC の損失は、負荷が軽くてもあまり減らないため、出力に対する損失の割合が増えます。
- 解決に使える技術
- 軽負荷で周波数を下げるスイッチングの回数を減らして、周波数に比例する損失を減らす
- 制御回路の電流を小さくするIC の動作損失を減らす
- 損失の見積もり軽負荷のときに何の損失が大きいかを調べる
同期整流は、ダイオード整流より損失は小さい一方、軽負荷の効率ではダイオード整流のほうがよいとされることがあります。使う負荷の範囲で比べます。
周波数を上げて小さくしたら、効率が落ちた
トランスやコイルを小さくするためにスイッチング周波数を上げたら、効率が下がり、素子や磁心が熱くなった。

- 起きている現象
- スイッチング損失・逆回復損失・出力容量の損失・デッドタイム損失は、スイッチング周波数に比例して増えます。磁心の鉄損や、巻線の表皮効果・近接効果による損失も、周波数が高くなると増えます。
- 解決に使える技術
- SiC・GaN などのパワー半導体速く切り替わり、スイッチング損失の小さい素子を使う
- ソフトスイッチング電圧か電流が0のときに切り替えて、スイッチング損失を減らす
- 低損失の磁性部品使う周波数に合った磁心材料と巻線にする
スイッチング周波数が高いほど、スイッチングノイズは出やすくなります。周波数を決めるときは、ノイズの規格の範囲に入る周波数かも確かめます。
低い電圧・大きな電流の出力で、損失が大きい
5V 以下などの低い電圧で大きな電流を出す電源で、整流のダイオードが熱くなる。
どこで損失が出ているのか分からない
効率の目標に届かないが、どの部品の損失を減らせばよいのか分からない。
なぜ、電源の効率が上がらないのか
損失はすべて熱になる
効率は、出力の電力を入力の電力で割った値です。ロームのアプリケーションノートでは、効率を「出力電力÷(出力電力+全電力損失)」で計算しています。入力と出力の差が損失で、電源の中で熱になります。効率が高いほど電源の中での発熱が少ない、とアイガ電子工業も説明しています。
出力100W の電源で計算すると、損失は効率90%で約11.1W、95%で約5.3W です。効率を5ポイント上げると、熱になる損失は半分以下になります。アイガ電子工業も、1kW の電源で効率を90%から95%に上げると損失がおよそ半分になるという例(同社の例では損失100W から50W)を挙げ、損失が減るとヒートシンクやファンを小さくできるとしています。

ローム「降圧コンバータの効率」の効率の式で、出力100W として編集部が計算。AI(Claude)で作成
損失は、電源の中のあちこちで出る
ロームのアプリケーションノートは、降圧コンバーターの電力損失の要因として、MOSFET のオン抵抗による導通損失、スイッチング損失、ボディーダイオードの逆回復損失、出力容量の損失、デッドタイム損失、ゲート電荷の損失、制御 IC の動作損失、インダクターの導通損失、コンデンサーの損失の9つを挙げています。アイガ電子工業は、スイッチング電源の損失として、スイッチング素子・ダイオード・コイルとトランス・コンデンサー・制御回路の損失を挙げ、一つ一つは小さくても、積み重なると大きな損失になるとしています。

出典:ローム、アイガ電子工業の解説をもとに AI(Claude)で作成
損失の内訳は、負荷・周波数・出力電圧で変わる
同じノートでは、損失の比重が条件によって変わる様子を示しています。電流が大きいときは、MOSFET とインダクターの導通損失が大きな比重を占めます(損失が電流の2乗に比例するため)。電流が小さいときは、MOSFET のスイッチング損失・出力容量の損失・ゲート電荷の損失と IC の動作損失の比重が大きくなります。スイッチング周波数を上げると、スイッチング損失・逆回復損失・出力容量の損失・デッドタイム損失が増えます。
また、オン抵抗の低い MOSFET や DCR(直流抵抗)の小さいインダクターは一般にサイズが大きくなり、MOSFET が大きくなると寄生容量も大きくなる傾向があるため、損失とサイズはトレードオフになるとしています。

出典:ローム「降圧コンバータの効率」の説明をもとに AI(Claude)で作成(曲線は模式)
原因の切り分け方
原因を切り分けるには、まずどの条件で効率が下がるかを見ます。次は編集部の目安です。定格に近い負荷で熱いなら、導通損失(素子のオン抵抗、コイルの抵抗)を疑います。軽い負荷で効率が落ちるなら、周波数に比例する損失や制御回路の損失を疑います。周波数を上げてから悪くなったなら、スイッチング損失と磁心の鉄損を疑います。出力電圧が低く電流が大きい電源なら、整流の損失を疑います。見当がついたら、部品ごとの損失を計算や測定で確かめます。
出典:降圧コンバータの効率(アプリケーションノート)|ローム、スイッチング電源における効率の最適化|アイガ電子工業、大容量電源における効率の考え方|アイガ電子工業
解決技術の詳細
対策は、素子を替える、回路方式を変える、磁性部品を見直す、軽い負荷での動かし方を変えるの4つに分けて考えます。どれが効くかは損失の内訳で決まるので、見積もり・シミュレーション・測定で確かめながら選びます。
SiC・GaN などのパワー半導体
SiC(炭化ケイ素)や GaN(窒化ガリウム)は、Si よりバンドギャップの大きい半導体です。ロームは、SiC は Si の10倍以上の絶縁破壊電界強度をもち、Si-MOSFET が1,000V までの動作であるのに対し、SiC MOSFET は3,000V の高電圧でも動作できるとしています。高電圧下でもオン抵抗を低くでき、ターンオン・ターンオフの損失が少ないことが特長としています。GaN については、Si デバイスと比べてスイッチング性能と高周波性能に優れ、オン抵抗も低いとしています。

出典:ローム SiC カタログ、ローム GaN、東芝の公開情報をもとに AI(Claude)で作成
東芝は、第2世代の SiC MOSFET を1200V 耐圧の Si IGBT(GT40QR21)と比べ、ターンオフのスイッチング損失を約80%、スイッチング時間(下降時間)を約70%減らしたとしています(周囲温度25℃)。理由として、入力容量とゲート入力電荷量が低いことを挙げています。
回路方式(ソフトスイッチング・同期整流・PFC)
ソフトスイッチング
スイッチング損失は、素子が切り替わる間に電圧と電流が重なることで出ます。東芝のアプリケーションノートでは、共振を使って電圧か電流がゼロの状態で切り替える方法(ZVS・ZCS)を紹介し、スイッチング損失はごく小さくなるとしています。di/dt・dv/dt を抑えるので、スイッチングノイズを減らす効果もあるとしています。一方で、部品点数の増加と制御の複雑化を短所に挙げています。絶縁形の DC/DC コンバーターでは、トランスの漏れインダクタンスを共振に使う LLC 共振コンバーターなどに多く使われるとしています。

出典:東芝「共振回路およびソフトスイッチング」の説明をもとに AI(Claude)で作成(波形は模式)
同期整流
村田製作所の解説では、降圧形の DC-DC コンバーターで、転流側の素子をダイオードから FET に替える同期整流は、ダイオード整流より電力損失が小さくなるとしています。同じ解説の条件(負荷電流10A、オンデューティ0.5、ダイオードの VF=0.5V、FET のオン抵抗10mΩ)で計算すると、転流側の損失はダイオードで2.5W、FET で0.5W です。ロームのノートでは、出力電圧が低いほどダイオードがオンしている時間が長くなり、非同期整流(ダイオード整流)は出力電圧が低いと効率が悪くなる傾向があるとしています。

村田製作所の解説の条件で編集部が計算。AI(Claude)で作成
PFC(力率改善)回路
AC 入力の電源では、力率改善(PFC)回路の損失も効率に効きます。onsemi は、ブリッジ整流器を外し、昇圧ダイオードを高速スイッチングの MOSFET に置き換えるトーテムポール PFC を紹介しています。同社が SiC を使って設計した単相3kW の PFC 電源は、全負荷効率98.4%、電力密度40W/in³ 超としています。

出典:onsemiの解説をもとに AI(Claude)で作成(回路図ではない)
低損失の磁性部品(トランス・コイル)

トランスやコイルの損失は、巻線の銅損と、磁心の鉄損に分けられます。パナソニック技報の論文では、高周波での損失を、直流抵抗損・表皮効果損・近接効果損(巻線)と、渦電流損・ヒステリシス損(磁心)に分けて扱っています。表皮効果損は、周波数が高くなると電流が銅線の表面に集中して起きる損失です。

出典:パナソニック技報、TDKの公開情報をもとに AI(Claude)で作成(巻線の形は模式)
磁心は、使う周波数に合った材料を選びます。TDK は、電力用トランスのフェライト材料を、100kHz 未満、500kHz 未満、1MHz 以上などの周波数帯ごとに用意しています。コイルでは、金属の粉を固めた圧粉磁心(ダストコア)もあり、東邦亜鉛は、アモルファス材を使った圧粉磁心を金属系ダストで最も低損失としています。
軽負荷の制御(周波数を下げる)
負荷が軽いときは、周波数に比例する損失とゲート電荷の損失、制御 IC の動作損失の比重が大きくなります。ロームのノートでは、これらはスイッチング周波数に比例するため、低電流時はスイッチング周波数を低くして損失を小さくする方法が一般的だとしています。IC の動作損失は、制御回路の回路電流を最適化して小さくするとしています。

出典:ローム「降圧コンバータの効率」の説明をもとに AI(Claude)で作成(曲線は簡単なモデルによる模式)
村田製作所は、ダイオード整流には軽負荷時の効率がよいというメリットがあるとしています。同期整流か、ダイオード整流か、軽負荷で動作を切り替えるかは、使う負荷の範囲で比べて決めます。
損失の見積もり・シミュレーション・測定

どこから直すかは、損失の内訳で決まります。ロームのノートのように、素子ごとの損失を式で計算して足し合わせる方法と、回路シミュレーターで素子ごとの損失を求める方法があります。試作したら、入力と出力の電力を測って効率を確かめます。

出典:ローム、スマートエナジー研究所、日置電機の資料をもとに AI(Claude)で作成
日置電機の技術資料では、インバーターの出力は、基本波の成分と、スイッチング(キャリア)周波数の成分に分かれ、キャリア周波数の成分は低力率の電力になるとしています。低力率の電力は、電圧と電流の測定の位相誤差の影響が大きいため、高い周波数までフラットな振幅・位相特性と、電流センサーの位相補正が要るとしています。
出典:SiC パワーデバイス・モジュール(カタログ)|ローム、GaN パワーデバイス|ローム、第2世代SiC MOSFET/IGBT スイッチング損失比較|東芝デバイス&ストレージ、共振回路およびソフトスイッチング(アプリケーションノート)|東芝デバイス&ストレージ、降圧型DC-DCコンバータのダイオード整流と同期整流の違い|村田製作所、降圧コンバータの効率(アプリケーションノート)|ローム、Totem-pole PFC and SiC Combine to Improve Power Supply Density and Efficiency|onsemi、パナソニック技報 Vol.59 No.1(高周波の損失の解析)、フェライト材料|TDK、電子部品事業|東邦亜鉛、インバータ出力を正確に測定する電力計 PW3390|日置電機(計測自動制御学会 中部支部シンポジウム 2017)
電源の効率を上げる技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。素子を替えたいのか、電源ごと設計を頼みたいのか、コイルを見直したいのか、まず損失の内訳を知りたいのかによって、相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| FLOSFIA | パワー半導体メーカー | 酸化ガリウム(Ga₂O₃)のパワー半導体で、整流ダイオードなどの変換の損失を減らす。 | A 電源が熱い、放熱器やファンが大きい C 周波数を上げて小さくしたら、効率が落ちた D 低い電圧・大きな電流の出力で、損失が大きい | |
| アイガ電子工業 | 電源メーカー | 損失を積み上げて設計する高効率のカスタム電源を開発・製造する。1台から相談できる。 | A 電源が熱い、放熱器やファンが大きい B 軽い負荷・待機のときの効率が低い C 周波数を上げて小さくしたら、効率が落ちた D 低い電圧・大きな電流の出力で、損失が大きい E どこで損失が出ているのか分からない | |
| サンリッツエレクトロニクス | 電源メーカー | ノイズを考えた高力率・高効率電源を、回路の設計から基板・放熱・評価、試作から量産まで手がける。 | A 電源が熱い、放熱器やファンが大きい B 軽い負荷・待機のときの効率が低い E どこで損失が出ているのか分からない | |
| 東邦亜鉛 | 磁性部品 | 自社の磁性材料を使った低損失の圧粉磁心コイル(チョークコイル・PFC コイル)をつくる。 | C 周波数を上げて小さくしたら、効率が落ちた | |
| スマートエナジー研究所 | 解析ソフト | 国産の回路シミュレーター「Scideam」で、素子ごとの損失を自動で解析する。SiC・GaN に替えたときの損失も見積もれる。 | A 電源が熱い、放熱器やファンが大きい B 軽い負荷・待機のときの効率が低い C 周波数を上げて小さくしたら、効率が落ちた D 低い電圧・大きな電流の出力で、損失が大きい E どこで損失が出ているのか分からない |
株式会社FLOSFIA|酸化ガリウム(Ga₂O₃)のパワー半導体で、変換の損失を減らす
FLOSFIAとは
FLOSFIA(フロスフィア)は、京都市西京区に本社・製造・研究開発拠点を置く、2011年設立の京都大学発のベンチャーです(資本金等42億850万円、資本準備金等を含む。2025年4月1日現在)。パワーデバイス事業と、ミストドライ®法による成膜ソリューション事業を行っています。
FLOSFIAの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| GaO® パワーデバイス | SiC や GaN と同じく、Si よりバンドギャップの大きい材料である酸化ガリウム(コランダム構造の α 型)を使ったパワー半導体。同社は、Si や SiC と比べてそれぞれ1/3400、1/10の低損失化が期待できる材料としている |
| オン抵抗の低いショットキーバリアダイオード(SBD) | オン抵抗0.1mΩcm² の SBD の試作に成功したとしている(同社調べで世界最小)。販売されている最新の SiC 製 SBD の0.7mΩcm² と比べて86%の低減で、500V 以上の耐圧を持つとしている |
| 用途 | 電力変換モジュールの効率化・小型化、パソコン用 AC アダプターの超小型化などへの応用を挙げ、まず小型電源用途から事業を立ち上げるとしている |
酸化ガリウムは SiC・GaN とは別の材料です。記事のマトリクスでは「SiC・GaN などのワイドバンドギャップ半導体」の列に含めています。
FLOSFIAが解決できる課題
- 整流ダイオードの損失で、電源の効率が上がらない
- 電源を小さくしたいが、ダイオードの発熱が大きい
- SiC の次の材料も含めて、素子の選択肢を知りたい


出典:パワーデバイス事業|FLOSFIA、FLOSFIA トップページ、会社概要|FLOSFIA
アイガ電子工業株式会社|損失を積み上げて設計する、高効率のカスタム電源
アイガ電子工業とは
アイガ電子工業は、茨城県日立市に本社を置く、1946年創業の会社です(資本金6,000万円、従業員135名、グループ従業員163名)。カスタム電源の開発・製造、アナログ・電源回路設計、基板設計・実装、モーター製造などを行っています。
アイガ電子工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 特注の高効率 AC/DC コンバーター | 創業から50年以上、高効率の AC/DC コンバーターの設計・開発を行ってきたとし、効率90%以上・力率99%以上の高信頼性を兼ね備えたカスタム仕様の開発を行っているとしている。インフラ設備用や産業機器向けの電源装置を挙げている |
| 損失を減らす設計 | 技術解説で、損失を減らす方法として、スイッチング素子に MOSFET を使う、力率改善(アクティブフィルタ)回路を入れる、ゼロスイッチング方式を使う、スイッチング周波数を最適化する、を挙げている |
| 損失の見積もりの公開例 | 出力24V・5A の電源(1次側にアクティブフィルター回路、スイッチング部にアクティブクランプ方式、DC/DC 部に同期整流、スイッチング周波数130kHz)で、部品ごとの損失を足し合わせて総損失13.35W、AC/DC の変換効率0.900 とした計算例を公開している |
アイガ電子工業が解決できる課題
- 効率90%以上の専用電源をつくりたいが、社内にノウハウがない
- 大容量の電源で効率が上がらず、装置が大きくなる
- 汎用品では仕様が合わず、1台から相談したい

出典:スイッチング電源における効率の最適化|アイガ電子工業、大容量電源における効率の考え方|アイガ電子工業、特注高効率AC/DCコンバータ 設計開発サービス|アイガ電子工業、会社案内|アイガ電子工業
株式会社サンリッツエレクトロニクス|ノイズを考えた高力率・高効率電源を、設計から量産まで
サンリッツエレクトロニクスとは
サンリッツエレクトロニクスは、埼玉県川越市に本社・工場を置く、2009年設立の会社です(株式会社サンリッツより新設分割。資本金5,000万円、従業員75名)。電子機器類、各種電源・電子制御装置・通信制御装置、ノイズフィルタの設計製造販売と研究開発を行っています。
サンリッツエレクトロニクスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 高力率・高効率電源の回路設計 | アナログ回路・電源回路・デジタル回路の設計ができ、ノイズを考慮した高力率・高効率電源の設計、SPICE を使ったシミュレーション検証が行えるとしている |
| 放熱まで含めた設計 | 電子部品の発熱量を計算した放熱システムの設計、恒温槽を使った環境試験・信頼性試験などの評価が行えるとしている |
| 電源装置 | AC-DC、DC-DC などの電源装置を扱い、試作と量産を同じ生産ラインでつくるとしている |
サンリッツエレクトロニクスが解決できる課題
- 力率とノイズを満たしながら、効率も上げた電源がほしい
- 回路の設計から、基板・放熱・評価までまとめて頼みたい
- 試作から量産まで、同じ会社に任せたい

出典:サンリッツエレクトロニクス「技術開発」の記載をもとに AI(Claude)で作成
出典:技術開発|サンリッツエレクトロニクス、電源装置|サンリッツエレクトロニクス、会社概要|サンリッツエレクトロニクス
東邦亜鉛株式会社|自社の磁性材料を使った、低損失の圧粉磁心コイル
東邦亜鉛とは
東邦亜鉛は、東京都港区に本社を置く、1937年設立の会社です(資本金11億円)。製錬事業、環境・リサイクル事業、電子部材・機能材料事業などを行い、電子部品事業でインダクタ・トランスの製造販売を行っています。
東邦亜鉛の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 圧粉磁心(ダストコア)のコイル | 磁性材料の開発から品質管理、技術営業までの一貫体制を構築しているとし、鉄系・合金系・アモルファスの圧粉磁心を使ったチョークコイルをつくっている。合金系の HK は、周波数特性が良好で100kHz 以上のスイッチング電源に対応するとしている |
| アモルファスダストの HM シリーズ | 金属系ダストで最も低損失なアモルファス材を使い、1ランク上の効率を実現するとしている。カタログでは、直流重畳特性に優れ、低コアロスを実現したコイルで、スイッチング電源の平滑用・力率改善用、DC-DC コンバーターのチョーク用としている |
| 小型化・高効率化 | HKF はスイング特性の大きいチョークコイルで、スイッチング電源の小型化・高効率化に最適としている |
コアロスの数値は、同社のページには書かれていません。選ぶときは、使う周波数・電流で損失を確かめます。
東邦亜鉛が解決できる課題
- チョークコイル・PFC コイルの損失を減らしたい
- 周波数を上げたら、コイルの損失が増えた
- 大電流でもインダクタンスが下がりにくいコイルがほしい

出典:東邦亜鉛「電子部品事業」の製品一覧をもとに AI(Claude)で作成
出典:電子部品事業|東邦亜鉛、HM コイル(カタログ)|東邦亜鉛、会社概要|東邦亜鉛
株式会社スマートエナジー研究所|国産の回路シミュレーターで、素子ごとの損失を自動で解析する
スマートエナジー研究所とは
スマートエナジー研究所は、横浜市港北区に本社を置く、2009年設立の会社です(資本金950万円)。電源開発・パワーエレクトロニクス開発に特化した国産の高速回路シミュレーター「Scideam(サイディーム)」を開発・提供しています。
スマートエナジー研究所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 損失解析 | ターンオン、ターンオフの動作をシミュレーションし、高速に演算、全自動で損失解析を行うとしている。全ての素子の全ての損失要素を一覧表示・グラフ化でき、損失解析の時間短縮、回路のボトルネック分析に役立つとしている |
| SiC・GaN のモデル | 損失解析のオプション「Power Palette」に、GaN/SiC のモデルを加えている |
| スイッチング電源向けのソルバー | スイッチング電源のような急峻な応答を繰り返すシミュレーションでも、モデルに合わせてソルバーを自動設定し、収束性が高く高速なシミュレーション環境を提供するとしている |
スマートエナジー研究所が解決できる課題
- 試作の前に、どの素子で損失が出るかを知りたい
- SiC・GaN に替えたときの損失を見積もりたい
- 回路の定数を変えたときの効率の変化を、早く比べたい

出典:スマートエナジー研究所「Scideam」の記載をもとに AI(Claude)で作成(棒の長さは模式)
出典:About Scideam|スマートエナジー研究所、電源の損失解析が大幅進化!GaN/SiCに対応した最新バージョン|スマートエナジー研究所、会社概要|スマートエナジー研究所
選ぶ前に確かめる条件
メーカーや設計会社に相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。
- 入力(AC か DC か、電圧の範囲)と、出力の電圧・電流・電力
- いまの効率と目標の効率。どの負荷(定格・半分・軽負荷・待機)で測った値か
- いまの回路方式、スイッチング周波数、使っている素子とトランス・コイル
- 許される大きさ・重さ・温度(放熱器やファンを付けられるか)
- 満たすべきノイズ(EMC)の規格と、力率・高調波の条件
- 負荷の変わり方(ずっと定格に近いのか、軽負荷や待機の時間が長いのか)と、台数・コストの目標
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年9月30日







