軽くすると振動・騒音が増える

薄い板金のカバーの中で、防振ゴムの上に載ったモーターが動き、ビードを付けた側板と天板の裏の制振シートのそばから振動と音が出ているイメージ

製品を軽くしようと、板厚を減らした。鉄を樹脂やアルミに替えた。すると、カバーがビリビリ鳴る、ある回転数でだけ大きく揺れる、中の音が外に漏れる。軽くすることと、静かにすることは両立しにくいことが知られています。

原因は、軽くしたことで剛性・質量・減衰の釣り合いが変わったことにあります。どの症状かによって、形を変えるのか、制振材を貼るのか、支え方を変えるのか、吸音・遮音を足すのかが変わります。次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)制振(制振材・制振鋼板)防振(防振ゴム・ばねで支える)吸音・遮音振動・騒音の解析と計測
A薄くした板・カバー・パネルが鳴る、ビビる◎◎△○○
Bある回転数・速さのときだけ、大きく揺れる(共振)◎○△◎
Cモーター・ファン・ポンプの揺れが、周りに伝わる○△◎○
D壁・カバーを薄く軽くしたら、音が漏れる△○◎○
E作ってみるまで、どこが揺れる・鳴るのか分からない○◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に効く方法は、揺れや音の周波数、部品の形と材料、支え方、使う温度、置ける場所と重さの制限によって異なります。「防振」の「△」(症状A・B)は、揺れている板そのものではなく、振動源の支え方を変える場合に効くことを示します。「制振」の「△」(症状C)は、支えを伝わる振動より、伝わった先の板の鳴きに効くことを示します。「形で剛性を上げる」の「△」(症状D)は、面密度が増えないかぎり質量則による遮音は上がらないことを示します。空欄は、その技術だけでは直接の対策になりにくいことを示します。

記号の理由と出典(19件)

マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。

症状技術記号理由出典
A形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)◎鳴る原因は薄くして曲げ剛性が大きく下がったことのため、形で剛性を戻すのが第一候補日本製鉄技報
A制振(制振材・制振鋼板)◎制振材が板の振動を熱に変えて早く止めるため、板が鳴る・長く響く症状に直接効く日本特殊塗料
A防振(防振ゴム・ばねで支える)△板そのものではなく振動源の支え方を変える場合にだけ効くため条件つき編集部の解説
A吸音・遮音○反響を減らして音を小さくできるが、板の鳴きそのものを止める技術ではないため補助的編集部の解説
A振動・騒音の解析と計測○どの周波数で板のどこが揺れているかが分かれば、効く対策を選べるため編集部の解説
B形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)◎形を変えて固有振動数を運転の範囲から離せば、共振そのものを避けられるため編集部の解説
B制振(制振材・制振鋼板)○ずらせないときに減衰を増やせば、共振の山を低くできるため編集部の解説
B防振(防振ゴム・ばねで支える)△支えの固有振動数を加振から十分離せば効くが、近いとかえって大きく伝わるため条件つき日本建設機械施工協会
B振動・騒音の解析と計測◎共振は作る前の固有値解析や作ったあとの打撃試験で探せるため、原因の特定に有効編集部の解説
C形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)○架台やブラケットの剛性を上げれば、振動の伝わり方が小さくなるため編集部の解説
C制振(制振材・制振鋼板)△伝わった先の板の鳴きに効くだけで、支えを伝わる振動を減らす技術ではないため条件つき編集部の解説
C防振(防振ゴム・ばねで支える)◎支えの固有振動数より十分高い加振なら振動伝達率が1以下になり、伝わる力を減らせるため日本建設機械施工協会
C振動・騒音の解析と計測○振動が伝わる経路と共振している場所が分かれば、対策の場所を決められるため編集部の解説
D形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)△面密度が増えないかぎり質量則の遮音は上がらないため、形で剛性を上げても条件つき編集部の解説
D制振(制振材・制振鋼板)○板の振動で透過損失が下がる場合に、制振鋼板で質量則相当の遮音が見込めるため日本製鉄のカタログ
D吸音・遮音◎音を止める力は面密度で決まり、軽くすると下がるため、遮音・吸音を足すのが直接の対策MONOist
D振動・騒音の解析と計測○漏れている音の周波数が分かれば、吸音材の厚さや遮音層を選べるため編集部の解説
E形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)○計算と実測の結果からリブの位置や板厚を決められるが、まず予測が要るため有効止まり編集部の解説
E振動・騒音の解析と計測◎固有値解析と打撃試験で、作る前に共振や揺れ方を知れるため編集部の解説

課題の診断と解決策

揺れ方・音の出方と、軽くするために何を変えたかから、疑う原因と、まず試す対策の見当をつけられます。症状ごとの詳しい見方は、下のカードで確かめてください。

困り方から、疑う原因と、まず試す対策を選ぶ早見図
困り方から、まず試す対策を絞る早見図
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
A

薄くした板・カバー・パネルが鳴る、ビビる

板厚を減らしたカバーやパネルが、運転中にビリビリ鳴る。たたくと、前より長く響く。

モーターを収めた筐体の薄い天板が曲がるように揺れ、表面から音が出ているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
板の曲げ剛性は板厚の3乗に比例するので、板厚を減らすと、重さの減り方よりも剛性の下がり方のほうが大きくなります。揺れやすくなった板が、モーターなどの振動を受けて大きく揺れ、音を出します。
解決に使える技術
  • リブ・ビード・曲げ板の一部を高さ方向に立てて、重さを増やさず剛性を上げる
  • 制振材揺れている板に貼る・塗る。振動を熱に変えて早く止める
  • 解析と計測どの周波数で、板のどこが揺れているかを確かめる
選ぶときの注意

制振材は、使う温度で減衰の大きさが変わります。使う温度で効く製品を選びます。制振材を貼ると、その分だけ重くなります。

B

ある回転数・速さのときだけ、大きく揺れる

モーターの回転数を上げていくと、ある回転数のときだけ大きく揺れる。前の重い設計では出なかった。

細い脚の軽い架台に載せたモーターが回り、架台全体が横に大きく揺れているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
固有振動数は剛性と質量で決まります。軽くして質量が減っても、剛性がそれ以上に下がれば、固有振動数は下がります。下がった固有振動数が、回転数や加振の周波数と重なると共振し、揺れが大きくなります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

固有振動数を運転の範囲より上へずらすのか、下へずらすのかで、対策が変わります。先に、運転の範囲と加振の周波数を整理します。

C

モーター・ファン・ポンプの揺れが、周りに伝わる

装置を軽くしたら、ファンやポンプの振動が架台や床に伝わり、離れた所まで揺れる・鳴る。

架台に直接固定した送風機の振動が、脚から床を伝わり、離れた柱から音として出ているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
振動源とそれを支える構造がつながっていると、振動が伝わり、伝わった先の板や床からも音が出ます(固体音)。軽い構造は同じ力でも大きく揺れやすくなります。
解決に使える技術
  • 防振防振ゴム・ばねで振動源を支え、伝わる力を減らす
  • 解析と計測振動が伝わる経路と、共振している場所を調べる
  • 剛性を上げる支える架台やブラケットの剛性を上げる
選ぶときの注意

防振は、支えの固有振動数を加振の周波数より十分低くしたときに効きます。支えの固有振動数と加振の周波数が近いと、共振してかえって大きく伝わります。

D

壁・カバーを薄く軽くしたら、音が漏れる

カバーを樹脂にした、板厚を下げた。すると中のモーターやギアの音が、前より外に漏れるようになった。

減速機とモーターを囲む薄いカバーを、中の音が通り抜けて外へ漏れているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
壁が音を止める力(透過損失)は、材質ではなく、壁の1m²あたりの重さ(面密度)でおおむね決まります(質量則)。面密度を半分にすると、透過損失は約5dB 下がります。ある周波数で透過損失が落ちるコインシデンス効果にも注意が要ります。
解決に使える技術
  • 吸音・遮音内側に吸音材を貼り、遮音層と組み合わせる
  • 制振カバーの板の振動を抑える
  • 解析と計測どの周波数の音が漏れているかを測る
選ぶときの注意

吸音材の効きは、厚さと音の周波数で大きく変わります。低い音ほど厚い吸音材が要ります。すき間があると、そこから音が漏れます。

E

作ってみるまで、どこが揺れる・鳴るのか分からない

試作品を動かして初めて、共振やビビり音が見つかる。対策のたびに試作をやり直している。

モーターとポンプの試作品の台をハンマーでたたき、加速度センサーとパソコンで揺れの山を調べているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
振動・騒音は、部品の形・支え方・つなぎ方の組み合わせで決まるので、図面を見ただけでは予想しにくい問題です。固有振動数と揺れ方(モード)は、形が決まれば計算でき、試作品があれば測れます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

打撃試験では、すべての共振点の揺れ方が得られる一方で、実際の運転で問題になっている揺れ方がどれかは分かりません。機械を動かした状態での測定と組み合わせます。

なぜ、軽くすると振動・騒音が増えるのか

薄くすると、重さより剛性が大きく下がる

同じ長さの厚い板と薄い板の片側を固定し、薄い板のほうが大きくたわんで揺れているイメージ
薄い板:重さより曲げの剛性が大きく下がり、たわみやすいイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

日本製鉄の技報では、平らな板の伸び(圧縮)・せん断に対する剛性は板厚に比例し、曲げに対する剛性は板厚の3乗に比例するとしています。重さは板厚に比例するので、板が曲がる変形が多い部分ほど、板厚を減らしたときに重さの減り方より剛性の下がり方が大きくなります。同じ技報は、構造を変えずに板厚を減らすと、重量の低下率より剛性の低下率のほうが大きくなる可能性があるとしています。

板厚を1から0.7まで減らしたときの重さと曲げ剛性。板厚0.8で重さ80に対し曲げ剛性は51
板厚と重さ・曲げ剛性の関係
出典:日本製鉄技報 第412号の「曲げ剛性は板厚の3乗に比例」をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

固有振動数が下がり、共振しやすくなる

偏心したおもりの付いたモーターで揺すられ、ばねの上のおもりが大きく上下に揺れているイメージ
共振:加振の周波数が固有振動数と重なると大きく揺れるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

ばねと質量のモデルでは、固有振動数は f=(1/2π)√(k/m) で表されます(k:剛性、m:質量。日本建設機械施工協会の資料など)。軽くすると m が減るので固有振動数は上がる方向ですが、薄くして k が m 以上に減ると、固有振動数は下がります。固有振動数を含む力を加え続けると大きく振動し(共振)、これが回転数や加振の周波数と重なると、揺れや音が大きくなります(日本建設業連合会の用語解説)。

剛性が下がって固有振動数が下がり、共振の山が運転の範囲に入る様子
剛性が下がって固有振動数が下がり、運転の範囲で共振する様子
出典:1自由度のばね・質量のモデルによる概念図。日本建設業連合会の用語解説の共振の説明をもとに AI(Claude)で作成(曲線は模式)

壁が軽いと、音を止める力が下がる

厚く重い壁では音がほとんど通らず、薄く軽い壁では音が向こう側へ通り抜けるイメージ
質量則:軽い壁ほど音が通り抜けやすいイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

壁が音を止める力(透過損失)は、壁の材質で決まるのではなく、壁の1m²あたりの質量(面密度)で決まります(MONOist の連載)。日本建設業連合会の用語解説では、概略、面密度を2倍にすると透過損失は約5dB 大きくなり、同じ面密度なら周波数が2倍で約5dB 大きくなるとしています(質量則)。逆に、カバーを薄く軽くすると、音を止める力は下がります。

質量則。面密度を2倍にすると透過損失は約5dB上がり、半分にすると約5dB下がる
質量則による透過損失の変わり方
出典:日本建設業連合会「質量則」の概略値をもとに AI(Claude)で作成(目盛りは省略)

さらに、コインシデンス周波数より高い音では、板が曲げ振動をして、質量則で見込める遮音の効果が下がる「コインシデンス効果」があります。MONOist の連載では、板厚3mm のガラスは質量則では37dB 程度の透過損失があるものの、3,400Hz 以上ではそれほどの遮音効果は期待できない(0dB まで下がるわけではない)という例を挙げています。本田技術研究所の論文の要旨も、軽量化と静粛性の向上を両立させることは技術的に難しいとしています。

原因の切り分け方

原因を切り分けるには、まず揺れや音の周波数と、それが出る条件を見ます。次は編集部の目安です。特定の回転数・速さのときだけ大きくなるなら共振を疑い、固有振動数と加振の周波数を比べます。板をたたいて長く響くなら、減衰が足りません。振動源から離れた所が鳴るなら、支えを伝わる振動を疑います。カバーの外で音だけが大きくなったなら、遮音が足りない可能性があります。

出典:剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立|日本製鉄技報 第412号、共振周波数、共振・固有周波数、固有振動数|日本建設業連合会、都市土木現場における防振対策|建設機械施工(日本建設機械施工協会)、質量則|日本建設業連合会、騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜遮音について〜|MONOist、同(コインシデンス効果)|MONOist、低比重材を活用した軽量化と静粛性向上の取組み事例紹介|自動車技術会

解決技術の詳細

対策は、揺れにくい形にする(剛性)、揺れを早く止める(制振)、揺れを伝えない(防振)、音を通さない・響かせない(吸音・遮音)に分けて考えます。どれが効くかは周波数と場所で変わるので、解析と計測で確かめながら選びます。

形で剛性を上げる(リブ・ビード・構造最適化)

重さを増やさずに剛性を上げるには、形を変えます。板の一部を高さ方向に立てるリブ、プレスで凸凹の筋を付けるビード、縁を折り曲げるフランジは、どれも断面の形で曲げに強くする方法です。日本製鉄の技報では、部位ごとの板曲げの変形の度合いを調べ、板厚を増やす所と減らす所を決めて、軽量化と剛性の向上を両立させた事例を示しています。

ビード、リブ、縁の曲げで、重さをほとんど増やさずに板の剛性を上げる方法
ビード・リブ・縁の曲げで剛性を上げる方法
概念図。形と数は模式。AI(Claude)で作成

どこに材料を残すかを計算で決める方法が、トポロジー最適化・形状最適化です。剛性や固有振動数を制約条件にして、重さを減らす形を探します。くいんとの事例では、剛性と固有振動数の要求を満たしながら、ブラケットを約61%軽くしています(くいんと)。

制振(制振材・制振鋼板)

制振は、揺れている板の振動を熱に変えて、早く止める方法です。日本特殊塗料の解説では、制振材は粘弾性樹脂のシートで、鋼板に直接貼り付け、振動で伸縮変形する鋼板をダンピングして、振動を熱エネルギーに変えるとしています。粘弾性の層を拘束板で挟む「拘束型」もあり、シーシーアイ住設建材はアルミ箔とブチルゴムを重ねた拘束型の制振材をつくっています。

非拘束型・拘束型の制振材と制振鋼板の構造、制振の有無による揺れの減り方
非拘束型・拘束型の制振材と制振鋼板
出典:日本特殊塗料「制振とは」、シーシーアイ住設建材、日本製鉄のカタログの記載をもとに AI(Claude)で作成(層の厚さと波形は模式)

鋼板そのものを制振材にした制振鋼板もあります。日本製鉄のカタログでは、2枚の鋼板の間に約40μm 厚の粘弾性樹脂を挟み、曲げ振動にともなう樹脂のずり変形で振動エネルギーを熱エネルギーに変えるとしています。制振の性能は損失係数で表し、大きいほど制振性が大きく、温度によって変わるため、使う温度に合わせて常温用・中温用・高温用を選ぶとしています。

防振(防振ゴム・ばねで支える)

防振は、振動源を防振ゴムやばねで支え、周りに伝わる力を減らす方法です。日本建設機械施工協会の資料では、振動数比(加振の周波数÷支えの固有振動数)が√2 より大きい範囲で、振動伝達率が1以下になり防振の効果が出るとしています。振動数比が1の近くでは共振して、かえって大きく伝わります。

振動伝達率と振動数比。√2を超えると伝わる力が加わる力より小さくなる
振動伝達率と振動数比
建設機械施工「都市土木現場における防振対策」に示された1自由度の振動伝達率の式から計算した概念図。AI(Claude)で作成

同じ資料では、伝達率を小さくするには、ばねを柔らかくして支えの固有振動数を下げる、質量を大きくする、としています。ただし、ばねを柔らかくするとたわみが大きくなるため、許容できるたわみとの兼ね合いが要ります。ダンパー(減衰)は、共振の範囲を通り過ぎるときの揺れを抑えるのに効きますが、定常の運転では防振の効果をかえって下げるとしています。

吸音・遮音

遮音は、壁で音の通り抜けを止めることです。質量則のとおり面密度が大きいほど効くため、軽くしたカバーでは遮音が下がります。吸音は、音のエネルギーを失わせて反響を減らすことで、グラスウールや連続気泡のスポンジなどを使います。MONOist の連載では、吸音率は素材の種類ではなく、多孔質の形と全体の厚さで決まるようだとし、厚さ25mm の吸音材の吸音率は300Hz で0.3くらいで、300Hz の音には厚さ100mm が必要だとしています。

吸音材は反響を減らし、遮音層は音の通り抜けを減らす
吸音材と遮音層の働き
出典:MONOist の連載、日本建設業連合会「質量則」、静科の記載をもとに AI(Claude)で作成(厚さと矢印は模式)

吸音層と遮音層を1枚にしたパネルもあります。静科のパネルは、吸音層の発泡樹脂と遮音面の石膏ボードなどを組み合わせ、低周波音から高周波音まで吸音・遮音できるとしています。日本製鉄のカタログは、遮音材の板が振動して透過損失が下がる場合に、制振鋼板を使えば質量則に相当する透過損失が見込めるとしています。

振動・騒音の解析と計測

共振は、作る前は固有値解析で、作ったあとは打撃試験(実験モード解析)で探します。MONOist の連載では、インパルスハンマーでたたいて各点の加速度を測り、周波数応答から共振点と揺れ方を求める実験モード解析を紹介しています。同じ回の筆者は、ハンマーの加振ではすべての共振点の揺れ方が得られるものの、実際に問題になっている揺れ方がどれかは分からないため、機械を動かした実稼働状態でのモーダル解析を勧めています。

固有値解析、打撃試験、両者の突き合わせで共振を探す流れ
固有値解析と打撃試験で共振を探す流れ
出典:MONOist の連載などをもとに AI(Claude)で作成(モードの形と波形は模式)

出典:剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立|日本製鉄技報 第412号、事例7 固有振動数と製造性を考慮したブラケットの形状最適化|くいんと、制振とは|日本特殊塗料、ダイポルギー FDC|シーシーアイ住設建材、制振鋼板 バイブレス(カタログ)|日本製鉄、都市土木現場における防振対策|建設機械施工(日本建設機械施工協会)、騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜吸音について〜|MONOist、質量則|日本建設業連合会、一人静 タイプL|静科、Excel で実験モーダル解析をやってみる|MONOist、同(ハンマリング加振によるモーダル解析)|MONOist

軽量化の振動・騒音対策の技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。形を変えたいのか、制振材を貼りたいのか、振動源の支え方を変えたいのか、音を囲いたいのか、まず原因を測りたいのかによって、相談先が変わります。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
くいんと解析ソフト・受託解析構造最適化のソフトと受託解析で、剛性と固有振動数を保ったまま軽くする形を探す。A 薄くした板・カバー・パネルが鳴る、ビビる
B ある回転数・速さのときだけ、大きく揺れる
E 作ってみるまで、どこが揺れる・鳴るのか分からない
シーシーアイ住設建材制振材メーカー高減衰の材料「ダイポルギー」の制振材で、薄板の振動を熱に変えて鳴きやビビりを抑える。A 薄くした板・カバー・パネルが鳴る、ビビる
B ある回転数・速さのときだけ、大きく揺れる
日本特殊塗料制振・防音材メーカー貼る・塗る制振材と吸音・遮音材で、鋼板のパネルの鳴きや車体・筐体の音を抑える。A 薄くした板・カバー・パネルが鳴る、ビビる
D 壁・カバーを薄く軽くしたら、音が漏れる
特許機器防振装置メーカー防振装置で、機械の振動が床や周りに伝わるのを抑える。C モーター・ファン・ポンプの揺れが、周りに伝わる
静科吸遮音材メーカー吸音と遮音を1枚にしたパネルで、機械のカバー・囲いから漏れる低い音まで抑える。D 壁・カバーを薄く軽くしたら、音が漏れる
小野測器計測機器・受託測定実験モード解析・騒音の測定を受託し、どこがどの周波数で共振しているかを特定し、効果を確かめる。A 薄くした板・カバー・パネルが鳴る、ビビる
B ある回転数・速さのときだけ、大きく揺れる
C モーター・ファン・ポンプの揺れが、周りに伝わる
D 壁・カバーを薄く軽くしたら、音が漏れる
E 作ってみるまで、どこが揺れる・鳴るのか分からない
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

株式会社くいんと|構造最適化のソフトと受託解析で、剛性と固有振動数を保ったまま軽くする

くいんととは

くいんとは、東京都府中市に本社を置く、1985年設立の会社です(資本金1,520万円)。事業内容は、計算力学関連ソフトウェアの開発・販売と技術コンサルティングです。1989年に位相最適化プログラム OPTISHAPE を発売しています。

くいんとの得意技術

技術内容
構造最適化のソフトウェアトポロジー最適化の OPTISHAPE-TS や、SOLIDWORKS のアドインとして使う構造最適設計ソフト HiramekiWorks を開発・販売している
剛性と固有振動数を制約にした軽量化HiramekiWorks の事例では、ブラケットを、剛性と固有振動数を制約条件にして最適化(軽量化)し、途中で製造性を考えてリモデリングしたうえで、さらに最適化した。剛性と固有振動数の要求性能を満たしながら、約61%の軽量化を達成したとしている
受託解析自社製品を使った設計支援などの受託解析を行い、モデルとデータの作成から解析・報告書の作成まで、全体でも一部でも引き受けるとしている

くいんとが解決できる課題

  • 軽くしたいが、固有振動数や剛性を下げたくない
  • どこに材料を残せば揺れにくくなるか、形の案がほしい
  • 最適化の結果を、作れる形に落とし込みたい
くいんと HiramekiWorks の事例。ブラケットの初期形状から最適化1、最適化2の結果形状
ブラケットの形状最適化の過程(出典:事例7 固有振動数と製造性を考慮したブラケットの形状最適化|くいんと)
くいんとの事例。最適化の結果からリモデリングした形状と変形図。体積61.3%減、1次固有振動数1,402Hz
最適化の結果からリモデリングした形状と変形図。体積61.3%減、1次固有振動数1,402Hz(出典:くいんと 事例7)

出典:事例7 固有振動数と製造性を考慮したブラケットの形状最適化|くいんと、受託解析|くいんと、会社概要|くいんと

シーシーアイ住設建材株式会社|高減衰の材料「ダイポルギー」の制振材で、薄板の振動を熱に変える

シーシーアイ住設建材とは

シーシーアイ住設建材は、岐阜県関市に本社を置く、2025年4月設立の会社です(資本金1億円)。シーシーアイホールディングスのグループ会社で、住設・建材事業の開発、製造・販売を行っています。制振・吸音材のブランド「ダイポルギー」を扱っています。

シーシーアイ住設建材の得意技術

技術内容
ダイポルギーの技術高分子材料に特殊な添加剤を混練・分散して、高減衰性の材料をつくる技術。音・振動・衝撃のエネルギーを大幅に吸収し、熱エネルギーに変換できるとしている
拘束型の制振材 FDC拘束板のアルミニウム(アルミ箔0.1mm)と、制振材のブチルゴム(1.7mm)を重ねたシート。面密度は2.9kg/m²。広い温度域で制振性能を発揮するとし、柔らかく曲面にも貼れ、粘着力があるので接着剤なしで施工できるとしている
製品の種類拘束型の FDC のほか、非拘束型の制振材、制振塗料、吸音フォーム、遮音シート、防振材をそろえている

シーシーアイ住設建材が解決できる課題

  • 薄くした鋼板・パネルの鳴きやビビりを抑えたい
  • 曲面の部品に、後から制振材を貼りたい
  • 使う温度で、どのくらい減衰が出るかを確かめたい
シーシーアイ住設建材の拘束型制振材 ダイポルギー FDC のシート
拘束型の制振材 ダイポルギー FDC(出典:ダイポルギー FDC|シーシーアイ住設建材)
ダイポルギー FDC の損失係数の温度依存性。鋼板厚さ1mm、測定周波数160Hz
ダイポルギー FDC の損失係数の温度依存性。鋼板厚さ1mm、測定周波数160Hz(出典:ダイポルギー FDC|シーシーアイ住設建材)

出典:ダイポルギー FDC|シーシーアイ住設建材、ダイポルギーとは|シーシーアイ住設建材、製品情報|ダイポルギー、会社概要|CCI

日本特殊塗料株式会社|自動車の車体で使う、貼る・塗る制振材と吸音・遮音材

日本特殊塗料とは

日本特殊塗料は、東京都北区に本社を置く、1929年創業の会社です(資本金47億53百万円、連結従業員1,079人)。自動車用の防音材などをつくる自動車製品事業と、塗料事業を行っています。

日本特殊塗料の得意技術

技術内容
シート状の制振材アスファルトを主原料としたシート状の粘弾性樹脂で、車体の鋼板に直接貼り付け、ボディパネルの振動を低下させる。振動で伸縮変形する鋼板をダンピング(粘性減衰)し、振動を熱エネルギーに変えるとしている。ドアパネルの裏でドア閉じ音を、ルーフの裏でびびり振動を抑える用途も挙げている
塗る制振材塗布型の制振材 NTダンピングコートは、複雑な形状の部分や垂直面・背面を効率よく制振処理できるとしている
吸音材・遮音材エンジンルームの遮音材(ダッシュアウターインシュレーター)や、ボンネット・天井・フェンダーなどの吸音材をつくっている

日本特殊塗料が解決できる課題

  • 鋼板のパネルが鳴る・びびる
  • 形が複雑で、シートを貼りにくい所も制振したい
  • 車体・筐体の吸音・遮音をまとめて相談したい
日本特殊塗料の制振材 メルシートを車体のフロアに貼った様子
車体のフロアに使われる制振材 メルシート(出典:制振とは|日本特殊塗料)

出典:制振とは|日本特殊塗料、吸音とは|日本特殊塗料、会社概要|日本特殊塗料

特許機器株式会社|防振装置で、機械の振動が床や周りに伝わるのを抑える

特許機器とは

特許機器は、兵庫県尼崎市に本社を置く、1969年設立の会社です(資本金4,840万円、従業員372名)。防振装置・防振システム、精密機器の除振システム、構造物の制振システム、振動監視システムの設計・製造・販売を行っています。

特許機器の得意技術

技術内容
防振技術加振源となる機器などを弾性で支持し、周囲へ伝わる加振力を減らして、振動と固体音を抑える技術と説明している。防振装置の伝達率 τ が1より小さくなる周波数帯で防振の効果が得られるとしている
コイルばねのサージング対策コイルばねは、衝撃や繰り返し荷重でばね自身の固有振動が大きく励起される「サージング」を起こし、防振性能が劣化することがある(概ね100Hz 以上)。ばねに減衰を付加する「サージレス対策」で、空気ばねと同等の高性能な防振を実現しているとしている
調査測定とシミュレーション現場の調査測定と、予測・解析・シミュレーションで理論的に検証してから対策を立てるとしている

特許機器が解決できる課題

  • 機械の振動が、床や周りの設備に伝わって困っている
  • 防振ゴム・ばねを入れたら、ある回転数でかえって揺れる
  • 対策の前に、振動を測って原因を知りたい
機械を防振装置で弾性支持し、床へ伝わる力を減らす防振の構成
防振装置で機械を支える構成
出典:特許機器「防振技術」の記載をもとに AI(Claude)で作成(ばねの形は模式)

出典:防振技術|特許機器、技術情報|特許機器、会社概要|特許機器

株式会社静科|吸音と遮音を1枚にしたパネルで、機械の低い音まで抑える

静科は、神奈川県厚木市に本社を置く、2006年創立の会社です(資本金1,430万円、従業員10名)。吸遮音材・パネル材や低周波音対策材の製造販売、防音工事、音響測定を行っています。

静科の得意技術

技術内容
吸遮音パネル「一人静 タイプL」吸音面にアルミ繊維、吸音層に発泡樹脂、芯材にアルミハニカム、遮音面に石膏ボードや塗装アルミ板を使ったパネル。グラスウールやウレタンでは吸音できなかった低周波音から高周波音まで、1枚で吸音・遮音できるとしている
公開している性能(財)小林理学研究所での測定で、残響室法吸音率は125Hz 付近で40%、250Hz 以上で80%以上としている。大きさ1,000×1,000×66mm で重さは15kg/枚
機械の騒音対策の事例歯車試験機のモーターなどの複合騒音の対策、工場のブロアや大型送風機の防音カバーなどの事例を公開している

静科が解決できる課題

  • 機械のカバー・囲いから漏れる音を減らしたい
  • 低い音(低周波音)まで抑えたい
  • 防音カバーの設計・施工まで相談したい
静科の吸遮音パネル 一人静 タイプL
吸遮音パネル 一人静 タイプL(出典:一人静 タイプL|静科)

出典:一人静 タイプL|静科、会社概要・沿革|静科

株式会社小野測器|実験モード解析・騒音の測定を受託し、原因の特定から効果の確認まで支援する

小野測器とは

小野測器は、横浜市西区に本社を置く、1954年設立の計測機器メーカーです。音響・振動の計測機器(騒音計、加速度センサー、インパルスハンマーなど)をつくり、音響・振動の受託測定やコンサルティングも行っています。

小野測器の得意技術

技術内容
受託試験・コンサルティング音響・振動の課題に対し、現象把握、部位特定とメカニズム解明、低減方法の案出、効果確認までの、どの段階からでも支援できるとしている
公開している事例(題名)「実験モード解析を活用した FEM 構造最適化」「ホワイトボディの実験モード解析」「トラッキング解析を活用した固有振動数と振動形状の把握」などを挙げている
材料の測定(JIS/ISO)音響実験室を使い、「中央加振法による制振材料の損失係数測定」「残響室法による遮音材の音響透過損失測定」「残響室法による吸音材の吸音率測定」などの受託測定を行っている

小野測器が解決できる課題

  • どこが、どの周波数で共振しているかを知りたい
  • 解析のモデルが合っているか、実験で確かめたい
  • 制振材・遮音材・吸音材の性能を規格どおりに測りたい
小野測器の受託試験・コンサルティングの流れと公開している事例の題名
受託試験・コンサルティングの流れと、公開している事例の題名
出典:小野測器「受託試験・コンサルティングサービス」の記載をもとに AI(Claude)で作成

出典:受託試験・コンサルティングサービス|小野測器、会社概要|小野測器

選ぶ前に確かめる条件

メーカーや解析・測定の会社に相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 軽くするために変えたこと(板厚、材料、形、部品の数)と、変える前との違い
  • 揺れ・音が出る条件(回転数、速さ、負荷、温度)と、困っている周波数(わかれば)
  • 振動源(モーター・ファン・ポンプ・ギアなど)の位置と、支え方・取り付け方
  • 増やしてよい重さと厚さ、貼る・塗る・挟むことができる場所
  • 使う温度の範囲(制振材の効きは温度で変わる)、油・水・熱などの環境
  • 解析モデル(3D データ)と試作品の有無、打撃試験や運転中の測定ができるか

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年9月30日

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