分野から探す

振動・音

共振・防振・制振・騒音(遮音と吸音)・異音の診断

振動・音に関係する課題と、使える技術・製品をまとめた入口です。

横から見た作業場のイラスト。左に、薄い台板に載り4つの防振ゴムで床に支えられたモーター。中央に、波のように曲がって揺れる薄い鋼板と、片面に制振材を貼ってまっすぐなままの鋼板。右に、軸を支える軸受の箱の上に付けた振動センサーと、棒グラフを表示する測定器
AI(ChatGPT)で生成したイメージ画像

振動・音の課題から探す

困りごと課題
軽く・薄くしたら、揺れる・鳴る軽くすると振動・騒音が増える作る前に性能を予測したい
ある回転数・条件のときだけ大きく揺れる切削のびびり振動を抑えたいステッピングモーターが脱調する
歯車・軸受・モーター・ファンから音が出る歯車の騒音を下げたい機械の異音の原因を突き止めたい(軸受・歯車・モーター・ファン)軸受の寿命を延ばしたい
揺れ・衝撃が伝わる、ゆるむ・へたるウォーターハンマー(水撃)を防ぎたいねじ・ボルトがゆるむのを防ぎたいゴム部品がへたる・硬くなる(圧縮永久ひずみ)を防ぎたい
揺れの原因を突き止めたい・見張りたい状態を検知したい再現しない不具合の原因を突き止めたい加速試験で寿命を見積もりたい

課題ごとの解決技術は、下の「振動・音の課題と、解決する技術」にまとめています。

軽くしようと板を薄くしたら、カバーがビリビリ鳴るようになった。モーターの回転数を上げていくと、ある回転数のときだけ機械が大きく揺れる。ファンやポンプの揺れが床を伝わって、離れた所まで響く。歯車の音が気になる、聞き慣れない異音がする。こうした困りごとは、揺らす力の周波数と、物の揺れやすさ(固有振動数と減衰)の関係のどこかで起きています(編集部の解説)。

このページは、振動と音に向き合う技術者のための入口です。揺らす力の周波数と、固有振動数が重なると共振すること、対策には「ずらす・止める・元を減らす・伝えない」の4つの方向があることを押さえたうえで、共振、防振、制振、騒音(遮音・吸音)、測って原因を見つける方法の5つのテーマごとに、しくみと注意点をまとめました。最後に、関係する課題・技術・製品のページへつないでいます。

この分野で扱うテーマ

イラストはAI(Claude)で作成したイメージです。

基本の考え方

固有振動数:物には、揺れやすい速さがある

日本建設業連合会の建築音響用語集は、すべての物体や空間は、固有振動数とよばれる揺れやすい周波数を持っているとし、止まっている物に固有振動数の外力を加え続けると、やがて大きく振動するようになる現象を共振と呼ぶとしています。固有振動数は、1秒間に何回揺れるかで表し、単位は Hz です(MONOist)。いちばん簡単なばねとおもりのモデルでは、固有振動数は f=(1÷2π)×√(k÷m)で、かたい(k が大きい)ほど・軽い(m が小さい)ほど高くなります(東京電機大学出版局『はじめての振動工学』の演習の解答)。

ばねにおもりを下げたモデルと、固有振動数の式。質量10kg・ばね定数100N/mm で約15.9Hz、ばねを4倍に硬くすると約31.8Hz、質量を2倍にすると約11.3Hz、半分にすると約22.5Hz
図1 固有振動数は、かたさ(ばね)と重さ(質量)で決まる(編集部の計算)
出典:東京電機大学出版局『はじめての振動工学』の式をもとに AI(Claude)で作成

質量10kg の機械を、ばね定数100N/mm のばねで支えると、固有振動数は約15.9Hz です。1分間に直すと約955回なので、この台に載せたモーターが毎分 約955回転で回ると、回転の速さが固有振動数と重なって共振します(編集部の計算)。実際の部品や機械には、揺れ方の形(振動モード)ごとに、いくつもの固有振動数があります(MONOist)。

出典:建築音響用語集「共振周波数、共振/固有周波数、固有振動数」|日本建設業連合会、固有振動数解析の流れを“ステップ・バイ・ステップ”で理解する:構造解析、はじめの一歩(6)|MONOist、『はじめての振動工学』付録 第3章 演習問題解答|東京電機大学出版局

減衰:揺れの山の高さを決める

揺らす速さを少しずつ変えながら揺れの大きさを調べると、固有振動数のところで山になります(共振曲線)。山の高さを決めるのが、揺れを止めようとするはたらき(減衰)で、減衰比 ζ で表します。減衰が小さいとき、共振したときの揺れは、ゆっくり押したときの揺れのおよそ 1÷(2ζ)倍になり、減衰比0.05 なら約10倍です(『はじめての振動工学』の解答の式から編集部が近似)。MONOist の解説も、減衰比を大きくすると共振点の振幅は大きく下がるとしています。

揺らす速さと揺れの大きさのグラフ。減衰比0.05 で山の高さ約10倍、0.1 で約5倍、0.3 で約1.7倍
図2 共振曲線:揺れの山の高さは減衰で決まる(編集部の計算)
出典:東京電機大学出版局『はじめての振動工学』の式・MONOist の解説をもとに AI(Claude)で作成

出典:『はじめての振動工学』付録 第6章 演習問題解答|東京電機大学出版局、同(5/5ページ)|MONOist

対策は4つの方向:ずらす・止める・元を減らす・伝えない

MONOist の解説は、振動を減らす戦略として、振動源の振幅を下げる(振動源対策)と、振動を伝わりにくくする(振動絶縁)の2つを挙げ、共振を避けるには、揺らす力の周波数と機械の固有振動数を比べて、どちらかを変えるとしています。揺らす力に多くの周波数がふくまれて共振を避けきれないときは、振動している板に制振材を貼り付ける対策がとられることが多いとしています。日本建設業連合会の用語集は、機器をゴムなどの上に載せて共振周波数を十分低くすると、機器から出る振動が伝わりにくくなるとしています。

4つのカード。ずらす(固有振動数を揺らす力の周波数から離す)、止める(揺れを熱に変えて共振の山を低くする)、元を減らす(揺らす力そのものを小さくする)、伝えない(ばねで支えて周りへ伝わる力を減らす)
図3 振動・騒音の対策の4つの方向(編集部の整理)
出典:MONOist の解説と日本建設業連合会の用語集をもとに AI(Claude)で作成

出典:振動低減の戦略 〜ばね−マス系の振動【1】〜:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(8)|MONOist、同(4/5ページ)|MONOist、同(5/5ページ)|MONOist、建築音響用語集「共振周波数、共振/固有周波数、固有振動数」|日本建設業連合会

振動・騒音の対策の進め方

振動・騒音の対策は、揺らす元とその周波数を先に知り、固有振動数と比べてから、対策の方向を選ぶと、むだな試行錯誤が減ります(編集部の整理)。周波数がわからないまま制振材や防振ゴムを足すと、効かないことや、かえって揺れが大きくなることがあります。

振動・騒音の対策の5段階の図。揺らす元を知る、周波数で比べる、ずらす・減らす、止める・伝えない、測って確かめる。効かなければ周波数と場所を測り直す
図4 振動・騒音の対策の進め方(編集部の整理)
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
  1. 揺らす元を知る:モーターや軸の回転、歯車のかみ合い、電源、ファンの羽根、切削など、何が揺らしているかを挙げます(「騒音・音」の節の周波数の求め方)。
  2. 周波数で比べる:揺らす力の周波数と、部品・架台の固有振動数が近いかを比べます。固有振動数は計算・解析か、たたいて測ります(「測って原因を見つける」の節)。
  3. ずらす・減らす:形や支え方を変えて固有振動数を運転の範囲から離し、つり合いや精度で揺らす力そのものを小さくします。
  4. 止める・伝えない:ずらせないときは制振で減衰を足し、周りへ伝えたくないときは防振で支え、音は遮音・吸音で抑えます。
  5. 測って確かめる:対策の前後で振動・音を測ります。止めた状態と運転中で結果が変わることもあるので、運転中にも確かめます。

計算例:板を薄くすると、固有振動数が下がって共振する

日本製鉄の技報は、平らな板の曲げに対する剛性は板厚の3乗に比例するとしています。重さは板厚に比例するので、ほかの条件が同じなら、板の固有振動数は板厚にほぼ比例します(編集部の計算)。たとえば1次の固有振動数が100Hz のカバーの板を1.0mm から0.8mm にすると、固有振動数は約80Hz に下がります。毎分4,800回転のモーターが揺らす力は1秒間に80回(80Hz)なので、薄くする前は離れていた周波数が、薄くしたあとに重なって共振します(編集部の計算。100Hz は仮の値で、説明のための例です)。

板の曲げのかたさは板厚の3乗、重さは板厚に比例し、固有振動数は板厚に比例する。1.0mm の板の固有振動数100Hz、0.8mm の板は80Hz で、毎分4,800回転のモーターの80Hz と重なる
図5 カバーの板を0.8倍に薄くしたときの固有振動数(編集部の計算)
出典:日本製鉄技報 第412号(曲げの剛性は板厚の3乗に比例)をもとに AI(Claude)で作成

出典:剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立|日本製鉄技報 第412号

重さをあまり増やさずに固有振動数を保つには、リブ・ビードなど形で剛性を上げる方法や、剛性と固有振動数を制約にして形を最適化する方法があります。くいんとの事例では、剛性と固有振動数の要求性能を満たしながら、ブラケットを約61%軽くしたとしています。詳しくは課題ページ「軽くすると振動・騒音が増える」で解説しています。

出典:事例7 固有振動数と製造性を考慮したブラケットの形状最適化|くいんと

共振:ある回転数・条件のときだけ大きく揺れる

回る物は、少しの重さのかたより(アンバランス)が、回転の速さで揺らす力になります。回転の速さが固有振動数と重なる回転数を危険速度といいます。日立評論の全自動洗たく機の論文(1967年)は、脱水のときの振れまわり運動は、特に起動と停止のときに、危険速度を通過するとき(共振時)に大きくなるとしています。起動・停止のたびに、途中で共振の回転数を通ることがあります(編集部の解説)。

出典:全自動洗たく機の脱水時の振動|日立評論 1967年4月号

事例:止めて測った固有振動数が、回すと下がって共振していた

日本機械学会の講習会資料の振動事例では、大型の恒温槽で、定格回転数1,800rpm のモーターにつないだシロッコファン(10台)を回すと、全部のモーターが目で見てわかるほど大きく振れ回りました。揺れの主な成分は29.5Hz でした。止めた状態でモーターの端をハンマーでたたくと固有振動数は35Hz と47.5Hz でしたが、回した状態で同じ試験をすると、35Hz の固有振動数が16%下がって、定格の回転の周波数29.5Hz と一致していました。モーターを留めている外殻の内側をリブで補強して剛性を上げた結果、共振が避けられ、定格回転数での振幅は8分の1未満になったとしています。

周波数の軸の上に、定格回転の周波数29.5Hz、止めて測った固有振動数35Hz と47.5Hz、回して測った固有振動数(16%下がって29.5Hz と一致)を示した図。右に、リブで補強して振幅が8分の1未満になった結果
図6 事例:止めて測った固有振動数が、回すと下がって共振していた
出典:日本機械学会の講習会資料(2010年)の値をもとに AI(Claude)で作成

出典:振動事例「シロッコファンモータの振れ回り振動」(講習会資料、2010年2月10日)|日本機械学会

揺れが自分で大きくなる:切削のびびり

外から揺すられる共振のほかに、揺れが自分で大きくなるものもあります。社本英二の解説(大同特殊鋼「電気製鋼」2011年)は、切削のびびり振動を強制びびりと自励びびりに大別し、自励びびりは、振動が切削力を通じて自分を大きくする閉じたループがあるときに起きるとしています。再生型では、前の切削で残った面の起伏が、今の切取り厚さの変動として再生されます。びびらない切込みは回転数で変わり、安定限界は共振周波数の整数分の1ごとに高くなるとしています。

出典:社本英二「切削加工におけるびびり振動の発生機構と抑制」電気製鋼 第82巻2号(2011年)|大同特殊鋼

共振のしくみは 技術の基礎知識「共振」、かたさは 技術の基礎知識「剛性」、切削のびびりは課題ページ「切削のびびり振動を抑えたい」、モーターの脱調は「ステッピングモーターが脱調する」で解説しています。

防振:ばねで支えて、揺れを伝えない

防振は、振動源を防振ゴムやばねで支え、周りに伝わる力を減らす方法です。床へ伝わる力と機械に加わる力の比を振動伝達率といいます。日本建設機械施工協会の資料は、振動数比(揺らす周波数÷支えの固有振動数)が1のとき共振し、振動数比が √2 を超えると伝達率が常に1以下になり、防振の効果が出るとしています。支えの固有振動数を低くするほど、伝達率は小さくなります。東京消防庁の研究報告は、一般には振動数比を2〜3にすれば防振の目的を達成できるとしています。

振動伝達率と振動数比のグラフ。振動数比1の近くで共振して大きく伝わり、√2 より右で1以下になる。三菱電機の計算例(振動数比約2.25、伝達率24.4%)の点
図7 振動伝達率と振動数比(編集部の計算)
出典:建設機械施工 66巻10号の振動伝達率の式・三菱電機の計算例をもとに AI(Claude)で作成

三菱電機の防振計算書では、質量78kg の機器を4本の防振吊金具で吊る例で、固有振動数10.3Hz、回転数1,390min⁻¹(23.2Hz)に対して振動伝達率24.4%、防振効果75.6%としています。日本建設機械施工協会の資料は、ダンパー(減衰)は、起動・停止のときに共振の範囲を通り過ぎる間の揺れを抑える役割で、定常の運転ではかえって防振の効果を悪くするとしています。

出典:都市土木現場における防振対策|建設機械施工 66巻10号(日本建設機械施工協会、2014年)、救急車の振動等に関する研究(第2報)|消防科学研究所報 32号(東京消防庁)、防振吊金具防振計算書|三菱電機

支える材料で、つくれる固有振動数が違う

日本建設機械施工協会の資料は、固有振動数の目安を、防振ゴムで4〜15Hz、空気ばねで0.7〜3Hz、金属ばねはその中間としています。低い周波数の揺れには、空気ばねやばねが候補になり、空気ばねによる対策では20〜30dB の防振効果が期待できるとしています。東京消防庁の報告では、防振ゴムの許容荷重の制約から、ゴムだけでは低い固有振動数(2Hz)を得られない例を示しています。

固有振動数の範囲を対数の軸に並べた図。空気ばね0.7〜3Hz、金属ばねは中間、防振ゴム4〜15Hz
図8 支える材料と、つくりやすい固有振動数の範囲
出典:建設機械施工 66巻10号(日本建設機械施工協会)をもとに AI(Claude)で作成

出典:都市土木現場における防振対策|建設機械施工 66巻10号(日本建設機械施工協会、2014年)、救急車の振動等に関する研究(第2報)|消防科学研究所報 32号(東京消防庁)

防振ゴム・ばねの注意:使い方・動倍率・サージング

日立評論(1973年)の防振ゴムの資料は、防振ゴムは引張の変形では使わないのが原則だとしています。JIS K 6386 は、動倍率を、防振ゴムの動的状態におけるばね定数と静的状態におけるばね定数との比と定義していて、防振の計算には動的なばね定数を使います(三菱電機の計算書では静的の1.4倍と置いています)。コイルばねでは、ばね自身の固有振動が大きく励起されるサージングが概ね100Hz 以上の周波数帯に現れ、防振性能が劣化するとしています(特許機器)。

出典:電気機関車用防振ゴムの特性|日立評論(1973年2月号)、JIS K 6386:2019 防振ゴム-ゴム材料の区分(日本規格協会のプレビュー)、防振吊金具防振計算書|三菱電機、防振技術|特許機器

防振ゴム・ばね・空気ばねの選び方は技術ページ「防振ゴム・制振材」、ゴムのへたりは課題ページ「ゴム部品がへたる・硬くなる」で解説しています。

制振:揺れを熱に変えて、早く止める

制振材は、粘弾性(ゴムや樹脂のように、伸び縮みのときにエネルギーを失う性質)の層を板に付けたものです。計測と制御誌の解説(1998年)は、板に貼るだけの「非拘束型」は層の伸び縮みで、2枚の板で挟む「拘束型」は層のずれ(せん断)で減衰するとしています。日本特殊塗料は、制振材を鋼板に直接貼ると、伸縮変形する鋼板をダンピングし、振動を熱エネルギーに変えると説明しています。日本製鉄の制振鋼板は、2枚の鋼板の間に約40μm 厚の粘弾性樹脂を挟んだもので、同社のカタログでは、室温で冷延鋼板の損失係数が約0.0005なのに対し、制振鋼板は0.2程度の値を示しています。

非拘束型(粘弾性の層を鋼板に貼る)、拘束型(拘束板と粘弾性の層を重ねる)、制振鋼板(2枚の鋼板の間に約40μmの樹脂)の断面と、損失係数の比較(冷延鋼板 約0.0005、制振鋼板 0.2程度)
図9 制振材の種類と、損失係数の比較
出典:計測と制御 37巻8号・日本特殊塗料・日本製鉄のカタログをもとに AI(Claude)で作成

出典:ダンピングと制振の技術―制振材料と新しいダンパ|計測と制御 37巻8号(1998年)、制振とは|日本特殊塗料、制振鋼板 バイブレス(カタログ)|日本製鉄

制振材は、使う温度で選ぶ

粘弾性の材料は、温度と周波数で性質が大きく変わります。日本製鉄の制振鋼板は、常温用(20〜40℃)・中温用(40〜80℃)・高温用(70〜100℃)の品種に分けています。シーシーアイ住設建材の拘束型の制振材 FDC でも、損失係数は温度で変わり、同社のグラフから編集部が読み取ると、25〜30℃付近で大きくなっています。制振材を貼ると、その分だけ重くなることにも注意が要ります(編集部の解説)。

制振鋼板の品種と適用温度の帯グラフ。常温用20〜40℃、中温用40〜80℃、高温用70〜100℃
図10 制振鋼板の品種と適用温度
出典:日本製鉄「制振鋼板 バイブレス」カタログをもとに AI(Claude)で作成

出典:制振鋼板 バイブレス(カタログ)|日本製鉄、ダイポルギー FDC|シーシーアイ住設建材

揺れを吸い取る:ダンパーを内蔵した工具・支持具

切削でも、剛性を上げきれないときは揺れを吸い取る方法があります。社本の解説は、工具や被削材の形状や把持方法を改善して揺れやすさを下げることを対策に挙げています。中ぐりでは、バーの中におもりとばね・減衰の要素を入れた防振(ダンパー内蔵)のボーリングバーが使われます(課題ページ「切削のびびり振動を抑えたい」)。

出典:社本英二「切削加工におけるびびり振動の発生機構と抑制」電気製鋼 第82巻2号(2011年)|大同特殊鋼

騒音・音:音の元を知り、遮音と吸音で抑える

回る機械の音の多くは、回転にともなって部品がくり返し当たったり、力が変わったりすることで出ます。そのため音の周波数は、回転数と部品の数から計算できます(編集部の解説)。回転周波数は回転数(min⁻¹)÷60 で、3,000min⁻¹ のモーターなら50Hz です(明西エンジニアリング)。歯車のかみ合い周波数は歯数×1秒あたりの回転数で、歯数20 の歯車が毎分1,500回転なら500Hz です(IMV の教材の式から編集部が計算)。モーターでは電源周波数の2倍の吸引力は必ず発生するとされ(日本機械学会の資料、2017年)、ファンでは羽根が通り過ぎるたびに音が出ます(長崎大学の研究では、1,200rpm のプロペラファンの翼通過周波数が280Hz)。

表。回転(回転数÷60、3,000min⁻¹で50Hz)、歯車のかみ合い(歯数×1秒あたりの回転数、歯数20・1,500min⁻¹で500Hz)、モーターの電磁力(電源周波数の2倍、50Hzの電源で100Hz)、ファンの羽根(羽根の枚数×1秒あたりの回転数、長崎大学の例で280Hz)、軸受の傷(傷の場所ごとに決まる周期)
図11 回る機械の音・振動の周波数は、回転数と部品の数から計算できる
出典:明西エンジニアリング・IMV・日本機械学会・長崎大学の資料をもとに AI(Claude)で作成

出典:軸受診断|明西エンジニアリング、設備に関する振動の知識【CAT-Ⅲ】7.9.3 歯車の振動スペクトル|IMV、設備に関する振動の知識【CAT-Ⅲ】7.6 軸受の異常|IMV、振動相談①[電磁振動について](第9回ミーティング、2017年)|日本機械学会 状態監視振動診断技術者コミュニティ、プロペラファンの非一様な環状後流と離散周波数騒音(長崎大学工学部研究報告 第41巻第76号、2011年)|長崎大学

歯車の音:うなり音と歯打ち音

ジェイテクトグラインディングツールの解説は、歯車の騒音を、歯面の形の誤差や歯車の剛性に問題があるときに出る高い周波数の「うなり音」と、負荷の変動や不適切なバックラッシで出る低い周波数の「歯打ち音」に分けています。小原歯車工業(KHK)は、一般に同時にかみ合う歯が多いほど歯車は低騒音だとし、平歯車よりはすば歯車のほうが静かだとしています。日本製鉄の技報では、歯面の修整量と形を最適化して、騒音のオーバーオール値が従来形状と比べて最大で約15dB 下がったとしています(鉄道車両用の駆動装置)。

出典:ギヤノイズとは?原因と対策|ジェイテクトグラインディングツール、歯車の騒音と対策|小原歯車工業、無響室負荷試験機による低騒音歯車の開発(新日鉄住金技報 第395号)|日本製鉄

遮音と吸音は、別のはたらき

壁が音を止める力(透過損失)は、壁の材質ではなく、壁の1m²あたりの質量(面密度)で決まります(MONOist の連載)。日本建設業連合会の用語解説では、概略、面密度を2倍にすると透過損失は約5dB 大きくなるとしています(質量則)。カバーを薄く軽くすると、音を止める力は下がります。さらに、ある周波数より高い音では板が曲げ振動をして遮音の効果が下がる「コインシデンス効果」があります。吸音は、音のエネルギーを失わせて反響を減らすことで、MONOist の連載は、厚さ25mm の吸音材の吸音率は300Hz で0.3くらいで、300Hz の音には厚さ100mm が必要だとしています。静科のパネルのように、吸音層と遮音層を1枚にした製品もあります。

左に、面密度を半分にすると約5dB下がり、2倍にすると約5dB上がる透過損失の棒グラフ。右に、厚さ25mmの吸音材(300Hzで吸音率0.3くらい)と厚さ100mmの吸音材(300Hzの音に必要な厚さ)
図12 遮音(壁の重さ)と吸音(材料の厚さ)は別のはたらき
出典:日本建設業連合会「質量則」・MONOist の連載をもとに AI(Claude)で作成

出典:建築音響用語集「質量則」|日本建設業連合会、騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜遮音について〜|MONOist、同(コインシデンス効果)|MONOist、騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜吸音について〜|MONOist、一人静 タイプL|静科

配管の衝撃音:ウォーターハンマー

配管の中で流れを急に止めると、流れていた水の運動エネルギーが圧力エネルギーに変わり、高い圧力の領域が管を往復します(水道技術研究センター)。弁を急に閉めたときやポンプが止まったときに出る衝撃音は、この現象を疑います。閉め方や水撃防止器などの対策は課題ページ「ウォーターハンマー(水撃)を防ぎたい」で解説しています。

出典:ウォーターハンマ(水撃)の発生要因と対策について(水道技術ジャーナル2008年7月)|水道技術研究センター

歯車の音は課題ページ「歯車の騒音を下げたい」、軽くしたカバーの音漏れは「軽くすると振動・騒音が増える」、ファン・ポンプは製品ページ「ポンプ・ファン」で解説しています。

測って原因を見つける

異音・振動の原因は、止めずに測れる方法から順に調べ、最後に分解して確かめます(編集部の整理)。点検員が聴音棒で稼働中の回転機器の音を聞き分ける方法は長年行われてきたとされ、日鉄テックスエンジは、電子聴診器で音のデータを採って可視化しています。振動計で測った振動を FFT で周波数ごとに分け、卓越した周波数が回転周波数や損傷周波数(とその整数倍)と合うかを確かめると、アンバランスやミスアライメント、軸受の損傷の有無と部位を確かめられるとしています(鉄原実業)。

異音・振動の原因の調べ方の6段階。聞き取り・聴診、振動を測る(FFT)、エンベロープ処理、条件を変える、たたいて測る、分解して見る。下に、2か所の軸受を3方向ずつ測ると故障発見率100%、2方向だけでは46%
図13 異音・振動の原因の調べ方:止めずに測ってから、最後に分解する
出典:課題ページ「機械の異音の原因を突き止めたい」の出典をもとに AI(Claude)で作成

出典:設備安定化に向けた音響診断技術高度化への取り組み(TEXENG REPORT)|日鉄テックスエンジ、振動計の FFT 解析による軸受診断|鉄原実業、事例に基づいた状態監視 信号処理技術のノウハウ(第4回ミーティング、2012年)|日本機械学会 状態監視振動診断技術者コミュニティ

測る場所と向きも大切です。日本機械学会の資料(2012年)は、1988年の米国の文献から、2か所の軸受を3方向ずつ測ると故障発見率は100%、垂直だけ・水平だけの2方向では46%だった例を紹介しています。

軸受の小さな傷は、エンベロープ処理で見つける

エンベロープ処理は、高い周波数の振動が周期的に変動する場合に、変動する周期だけを求める方法で、軸受の診断には重要な処理だと野村工電社は説明しています。日本機械学会の振動診断の Q&A(2023年)は、センサーの共振やマグネットでの取り付けの接触共振(7kHz 程度)が測定データに影響することがあるとし、測り方そのものが結果を変えることがあるため、取り付け方の見直しを勧めています。旭化成エンジニアリングの講座は、変位は軸振れ、速度は回転機械の振動、加速度は軸受や歯車の損傷のような衝撃的な異常に使うと整理しています。

出典:精密振動解析(軸受診断)|野村工電社、振動診断 Q&A「竪型ポンプモータ軸受の管理方法」(第13回ミーティング、2023年)|日本機械学会 状態監視振動診断技術者コミュニティ、振動診断基礎講座 第2回|旭化成エンジニアリング

固有振動数は、たたいて測る・計算で予測する

福島県の設備の紹介は、ハンマリング試験を、加速度センサーを貼り付けた測定サンプルをハンマーでたたき、生じた振動を解析することで固有振動数を導き出す試験としています。MONOist の連載は、インパルスハンマーでたたいて共振点と揺れ方を求める実験モード解析を紹介するとともに、機械が実際に動いている状態でのモード解析が必要になるとしています。設計の段階では、CAE の固有値解析で、作る前に固有振動数と揺れ方を予測できます(MONOist)。ゆっくり回る機械の軸受では、振動より AE のほうが損傷の進展を検出できる場合があるとされます(ジュンツウネット21)。

出典:ハンマリング振動測定システム(郡山、令和5年4月)|福島県、Excel で実験モーダル解析をやってみる|MONOist、固有振動数解析の流れを“ステップ・バイ・ステップ”で理解する:構造解析、はじめの一歩(6)|MONOist、AE診断法とその特徴,今後の展望|ジュンツウネット21

原因の調べ方は課題ページ「機械の異音の原因を突き止めたい」、常時の監視は「状態を検知したい」、解析は技術ページ「CAE(構造解析・熱流体解析)」、測る技術全般は分野「計測・制御」で解説しています。

よく使う用語

振動・音の用語を、揺れやすさ(固有振動数、共振・危険速度、減衰・減衰比、振動モード、剛性・質量)、対策(防振・振動伝達率、制振・損失係数、動倍率、遮音・質量則、吸音・吸音率)、測り方(FFT、エンベロープ処理、ハンマリング試験、固有値解析、デシベル)の3つに分けた図
図14 振動・音の用語は「揺れやすさ・対策・測り方」で分けると覚えやすい(編集部の整理)
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
用語意味単位
固有振動数物が自然に揺れやすい速さ。1秒間に揺れる回数Hz
共振・危険速度揺らす力の周波数が固有振動数と重なり、揺れが大きくなること。回る物では、その回転数を危険速度という―
減衰・減衰比揺れを止めようとするはたらきと、その大きさ―
振動モード固有振動数ごとの揺れ方の形。低いほうから1次、2次…―
振動伝達率床へ伝わる力と、機械に加わる力の比―(%)
損失係数制振材などの減衰の大きさ。大きいほど揺れが早く止まる―
動倍率防振ゴムの動的なばね定数と静的なばね定数の比―
透過損失・質量則壁が音を止める力。面密度が大きいほど大きいdB
吸音率材料に当たった音のうち、反射しないで吸われる割合―
かみ合い周波数歯車の歯数×1秒あたりの回転数Hz
FFT揺れや音の波形を、周波数ごとの大きさに分ける計算―
エンベロープ処理高い周波数の揺れの、変動する周期だけを取り出す処理。軸受の診断に使う―
ハンマリング試験ハンマーでたたいて揺れを測り、固有振動数を求める試験―

用語の意味は、このページで引用した各資料をもとにした編集部の要約です。吸音率の意味は編集部の解説です。

振動・音の課題と、解決する技術

このサイトは、課題から、それを解決する技術と企業を探せるようにしています。困りごとに近い課題を選ぶと、課題ページで原因・解決技術・その技術を持つ企業がわかります。緑のボタンは、課題ページの中でその技術を解説している節へ直接移ります。

振動・音に関係する技術

反対に、技術から探すときの一覧です。その技術で解決できる課題を並べています。

技術何をするか解決できる課題
形の見直し(リブ・ビード・構造最適化)重さをあまり増やさずに剛性を上げ、固有振動数をずらす軽くすると振動・騒音が増える切削のびびり振動を抑えたい
防振ゴム・制振材ばねで支えて伝えない・揺れを熱に変えて止める軽くすると振動・騒音が増える軽くすると振動・騒音が増える
ダンパー・防振工具揺れを吸い取り、共振の山を低くする切削のびびり振動を抑えたいステッピングモーターが脱調する
歯面修整・精度の向上歯車のかみ合いの揺れ(伝達誤差)を小さくする歯車の騒音を下げたい歯車の騒音を下げたい
吸音材・遮音材音を通さない・響かせない軽くすると振動・騒音が増える
CAE(固有値解析)作る前に固有振動数と揺れ方を予測する作る前に性能を予測したい軽くすると振動・騒音が増える
振動計測・診断(FFT・エンベロープ・状態監視)揺れと音の元を周波数でたどる・異常を早く見つける機械の異音の原因を突き止めたい(軸受・歯車・モーター・ファン)状態を検知したい

振動・音に関係する製品

ほかの分野:機構・運動(歯車・駆動)、破壊・強度(疲労・剛性)、計測・制御(センサー・状態監視)、材料(物性・劣化)(ゴムの劣化)。用語は 技術の基礎知識「共振」「剛性」「ヤング率」

出典・参考

情報の確認日:2026年10月6日 本ページの内容は一般的な説明で、実際の振動・騒音は部品の形・材料・支え方・運転の条件・使う環境により異なります。数値の計算例は説明のための例です。図とテーマのイラストはAI(Claude)で作成した概念図、冒頭の画像はAI(ChatGPT)で生成したイメージ画像です。

振動・音に関係する課題

振動・音に関係する技術

振動・音の技術の基礎知識

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