装置の排熱や振動で発電したい(熱電素子・圧電素子)

工場の温水配管に巻いた熱電の帯とヒートシンク、モーターに取り付けた片持ちばりの振動発電素子が、それぞれ小さな無線センサーにつながっているイメージ

工場の温水や蒸気の配管、モーターやポンプの表面は、いつも熱を持ち、細かく揺れている。そこに無線のセンサーを付けて設備の状態を見たいが、電源の配線は引けず、電池は交換の手間がかかる。高温の場所では電池の持ちも悪い――。こうした場所で、捨てている熱や振動から、センサーを動かす電気をつくるのが環境発電(エナジーハーベスティング)です。

ただし、得られる電力は µW〜mW の小ささです。この記事では、熱電素子・圧電素子などで無線センサー1台を動かせるかを、センサーの消費電力と発電量を比べる小さな計算例(編集部の試算)で示します。あわせて、熱電材料(Bi-Te 系・シリサイド)と圧電材料(PZT・非鉛)の違い、振動発電で大事な共振周波数の合わせ方、相談できる企業・機関を紹介します。

目次

環境発電でできること・できないこと

環境発電は、身の回りにある熱・振動・光・電波などの小さなエネルギーを電気に変える技術です。三菱電機は、環境発電は一般に発電量が非常に微弱で不安定なため、発電できる場面が限られることが課題だ、と説明しています。モーターを回すような電力ではなく、間欠的に測って送る無線センサーなど、ごく小さな電力で動く機器が対象です。

環境発電で得られる電力の公表例を、1µW から1kW までの10倍ごとの目盛りに並べ、無線センサーの平均の消費電力の目安の帯を重ねた図
図1 環境発電で得られる電力の公表例(条件はそれぞれ違う)
出典:Eサーモジェンテック「プレスリリース 2024年9月9日」・ヤマハ「YGPX024 のサンプル提供を開始」・大阪産業技術研究所「圧電MEMS振動発電デバイス」・金沢大学 V-GENERATOR「電池レスリアルタイム無線加速度センシング」・三菱電機「電磁誘導発電モジュールを開発」と編集部の試算をもとに AI(Claude)で作成

上の図は、この記事で取り上げる公表値を、10倍ごとの目盛りに並べたものです。同じ「熱電」でも、配管に巻く小さな電源は mW、自動車の排気のような数百℃の排熱を使う大きなモジュールは100W を超えます。どの方式が良いかより、取り付ける場所の温度差や振動の大きさで、得られる電力が桁で変わることを押さえておきます。

熱・振動のほかに、光と電波

室内の照明で発電する太陽電池も使われます。日清紡マイクロデバイスの降圧 DC/DC コンバータ R1800 は、0.72µW で起動できます。同社のブログでは20〜30ルクスでも動くと紹介しており、暗い屋内の光の発電量に合わせた電源 IC が作られています。電波は、離れた所から送る給電(空間伝送型のワイヤレス給電)として使われます。電波で送るしくみは技術ページ「ワイヤレス給電」で解説しています。

似た課題・技術との違い

この記事は、センサーを動かす電気を、その場の排熱や振動から「つくる」側に絞ります。離れた所から電気を「送る」方法は「配線をなくしたい」、何をどう測るかは「状態を検知したい」で扱っています。同じ熱電素子に電気を流して冷やす使い方は、技術ページ「ペルチェ素子」で解説しています。

この記事と、配線をなくしたい・状態を検知したい・ペルチェ素子・IoT と予知保全のページの扱う範囲を比べた表
図2 似た課題・技術との違い
出典:編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

出典:わずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュールを開発|三菱電機、超低消費電流の降圧 DC/DC コンバータ R1800 の紹介|日清紡マイクロデバイス、プレスリリース 2024年9月9日|Eサーモジェンテック、ヤマハ車載用熱電発電モジュール『YGPX024』のサンプル提供を開始|ヤマハ、圧電MEMS振動発電デバイス|大阪産業技術研究所、電池レスリアルタイム無線加速度センシング|V-GENERATOR(金沢大学)

計算の考え方:センサーの消費電力と発電量を比べる

環境発電で足りるかは、センサーが平均して使う電力と、その場所で得られる発電量を、同じ単位(µW)で比べると分かります。間に入る電源回路の効率と、発電が止まる時間も考えに入れます。

① センサーの平均の消費電力

無線センサーは、ほとんどの時間を待機(スリープ)で過ごし、決まった間隔で短く起きて、測って送ります。そのため、平均の消費電力は1回の計測・送信のエネルギー ÷ 送る間隔 + 待機の電力で見積もれます。送る間隔を延ばすほど、平均の消費電力は小さくなります。

無線センサーが短い計測・送信と長い待機をくり返す消費電力の時間の変化と、平均の消費電力の式
図3 無線センサーの消費電力の使い方
出典:編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

② 熱電:温度差のほぼ2乗で効く

熱電素子は、p 型と n 型の半導体を交互につなぎ、上下に温度差を与えると、温度差に比例した電圧が出ます(ゼーベック効果)。動く部分がなく、音も出ません。取り出せる電力は電圧の2乗に比例するので、温度差が半分になると、電力はおよそ4分の1になります。

p型とn型の熱電素子を熱い側と冷たい側の板ではさんだ構造と、熱源から外気までの熱の通り道で温度差が分かれることを示した図
図4 熱電素子のしくみと、温度差の分かれ方
出典:コマツ「KELK、産業排熱回収ユニットおよび熱電EH振動センサーデバイスを新発売」・EE Times Japan(2009年)と編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

気をつけたいのは、熱源と外気の温度差が、そのまま素子にかかるわけではないことです。熱は、熱源の表面 → 取り付け面 → 素子 → ヒートシンク → 外気、と流れ、それぞれの所で温度が下がります。KELK は、熱電の振動センサー KSGD-SV8 について、無風のときに受熱面と外気の差が5℃でも、発電部の上下の差は3℃と注記しています。冷たい側をよく冷やし、熱源にすき間なく当てるほど、素子にかかる温度差が大きくなります。

変換効率は高くありません。2009年の EE Times Japan の記事では、KELK の50mm 角の熱電発電モジュールで、温度差250℃のときの変換効率を7.2%としています。熱の大部分は素子を通り抜けて外へ出るので、熱電は「効率」より「捨てている熱の温度差を使えるか」で考えます。材料の性能の指標(性能指数 ZT)は、技術ページ「ペルチェ素子」で解説しています。

③ 振動:加速度の2乗で効き、共振周波数を合わせる

振動発電の多くは、錘をばねで支えた振動子を使い、機械の振動で錘を揺らして、その動きを圧電素子やコイルで電気に変えます。大阪産業技術研究所は、圧電 MEMS 振動発電デバイスの性能を、面積と加速度(G)の2乗あたりの発電量(µW/mm²/G²)で示しています。同じ素子なら、加速度が半分で発電量は4分の1という見方です。

そして、振動子には共振周波数があり、機械の振動の周波数が共振周波数からずれると、発電量は大きく落ちます。金沢大学とトヨタ自動車の例では、プレス機の下の配管板が20Hz で振動していたため、デバイスに付ける錘を調整して共振をこの周波数の近くに合わせています。ずれ方の計算は、下の計算例で示します。

④ 電源回路と蓄電:起動できる電圧と、ためて使うしくみ

熱電素子は温度差が小さいと出力電圧が低く、振動発電は交流で出力が揺れます。そのため、昇圧・整流して蓄電する電源回路が要ります。たとえば Texas Instruments の環境発電用の昇圧充電 IC BQ25570 は、入力600mV 以上で起動(コールドスタート)し、起動後は100mV まで発電を集め続け、自分の消費電流は488nA(標準)です。最大電力点を追う機能を持ち、リチウムイオン電池・スーパーキャパシタなどにためられます。

センサーの計測・送信は mA 級の電流を短く流すので、発電した電力をいったんキャパシタや二次電池にため、たまったら送る、という使い方になります。エイブリックの CLEAN-Boost 電源コアも、微小な環境エネルギーを蓄電・昇圧して、計測や無線発信に使うしくみです。

出典:KELK、産業排熱回収ユニットおよび熱電EH振動センサーデバイスを新発売|コマツ、廃熱から電力を回収、熱電モジュールの開発進む(2009年)|EE Times Japan、圧電MEMS振動発電デバイス|大阪産業技術研究所、プレス機の振動から電力を回収|V-GENERATOR(金沢大学)、BQ25570|Texas Instruments、電源コア CLEAN-Boost|エイブリック

計算例:無線の振動センサー1台を動かせるか

モーターの近くに無線の振動センサーを1台付け、10分ごとに振動を測って送るとします。このセンサーを、熱電と振動発電で動かせるかを見積もります。センサーの数値はすべて仮の値で、編集部の試算です。発電量は各社・機関の公表値をもとにしていますが、条件をそろえた比較ではありません。自社のセンサーと設置場所の数値に置き換えて使ってください。

条件値(仮の値)
1回の計測・送信3.0V・10mA で1秒 = 30mJ
待機(スリープ)3.0V・2µA = 6µW
送る間隔10分(600秒)ごと
電源回路(昇圧・蓄電)の効率70%
熱電の発電量配管巻付け型の公表値(熱源と周りの温度差15℃で1.5mW)をもとに、温度差の2乗に比例するとして延ばす
振動発電の発電量圧電 MEMS の公表値(10.5µW/mm²/G²)で、素子の面積25mm²(公表された寸法の範囲で最大の長さ10mm×幅2.5mm)、共振の周波数で振動すると仮定

手順1:センサーの平均の消費電力

30mJ ÷ 600秒 = 50µW に、待機の6µW を足して、平均 56µW です。1日では 56µW × 86,400秒 ≒ 4.8J になります。電源回路の効率を70%とすると、発電素子に要る電力は 56 ÷ 0.7 = 80µW です。

手順2:熱電で足りるか

熱源と周りの温度差が15℃なら、公表値どおり1.5mW(1,500µW)で、要る80µW の約19倍あります。温度差が5℃に下がると、2乗に比例するとして 1.5mW ×(5/15)² ≒ 167µW で約2倍、3℃では 1.5mW ×(3/15)² = 60µW で足りません。

熱源と外気の温度差と熱電の発電量の関係のグラフ。15℃で1.5mW、5℃で約167µW、3℃で約60µW、必要な80µW の線
図5 熱源と外気の温度差と、熱電の発電量の目安
出典:Eサーモジェンテック「プレスリリース 2024年9月9日」をもとに編集部が仮の値で試算し、AI(Claude)で作成

同じ製品の温度差50℃の公表値は10mW で、15℃の値から2乗で延ばした約17mW より小さく、実際には比例どおりにはなりません。この延ばし方は、温度差の小さい側で桁をつかむための目安です。

手順3:振動発電で足りるか

面積25mm²の圧電 MEMS 素子が共振の周波数で振動すると、10.5µW/mm²/G² × 25mm² × 加速度²で、1G なら約263µW、0.5G なら約66µWです。1G なら足り、0.5G では足りません。

さらに、共振周波数が機械の振動とずれると、発電量は落ちます。質量・ばね・減衰でつくった振動発電のモデル(Williams・Yates, 1996)で計算すると、共振の鋭さ Q が50の素子では、周波数が2%ずれるだけで発電量は約5分の1になります。1G でも 263µW × 0.2 ≒ 53µW で、足りなくなります。

振動の周波数と共振周波数のずれに対する振動発電の出力の比のグラフ。Q=50 では2%ずれると約0.2、Q=10 は山が広い
図6 共振周波数のずれと、振動発電の出力
出典:Williams・Yates(1996)をもとに編集部が仮の値で試算し、AI(Claude)で作成

Q が低い(山が広い)素子は、ずれに強い代わりに、ぴったり合ったときの発電量が小さくなります。モーターの回転数が変わる機械や、電源の周波数(50Hz・60Hz)で振動の周波数が変わる設備では、取り付け場所の振動の周波数と加速度を先に測ってから素子を選びます。振動の測り方は、技術ページ「予知保全」で解説しています。

手順4:大きな振動なら、桁が変わる

プレス機や建設機械のように振動の大きい所では、大きな錘を使う振動発電で桁の違う電力が得られます。金沢大学の磁歪式の振動発電デバイスは、プレス機の振動で1回あたり0.2J、ブルドーザのブレードで平均約30mWを得た例があります。この計算例のセンサーが1日に使う4.8J を、効率70%で1回0.2J の発電でまかなうなら、4.8 ÷ 0.7 ÷ 0.2 ≒ 35回のプレスで足ります。

計算例で、熱電と圧電 MEMS の条件ごとの発電量を、センサーに要る80µW と比べた横棒グラフ
図7 計算例:センサー1台に要る電力と、発電量の目安
出典:Eサーモジェンテック「プレスリリース 2024年9月9日」・大阪産業技術研究所「圧電MEMS振動発電デバイス」をもとに編集部が仮の値で試算し、AI(Claude)で作成

足りないときは、送る間隔を延ばして合わせる

発電が少ないときは、送る間隔を延ばして平均の消費電力を下げます。送れる間隔は、1回のエネルギー ÷(発電量 × 効率 − 待機の電力)です。温度差3℃の60µW なら、30mJ ÷(60 × 0.7 − 6)µW ≒ 833秒で、約14分ごとに送れます。KELK の熱電振動センサー KSGD-SV10 も、温度差3℃のときの測定の頻度を40分に1回としています。

発電量と、無線センサーが送れる間隔の関係のグラフ。60µW で約14分、80µW で10分、167µW で約4.5分
図8 発電量と、送れる間隔
出典:KELK「熱電発電センサー KSGD-SV10 の発表」をもとに編集部が仮の値で試算し、AI(Claude)で作成

逆に、発電量に効率を掛けた値が待機の電力(この例では6µW)より小さいと、いくら待っても1回分がたまりません。待機の電力を小さくすることは、送信の電力を小さくするのと同じくらい大事です。発電が止まる時間(夜間や設備の停止中)に測る必要があるなら、その間の分をためておく蓄電の容量も見積もります。

出典:プレスリリース 2024年9月9日|Eサーモジェンテック、圧電MEMS振動発電デバイス|大阪産業技術研究所、Analysis of a micro-electric generator for microsystems(C. B. Williams, R. B. Yates, Sensors and Actuators A 52, 1996)、プレス機の振動から電力を回収|V-GENERATOR(金沢大学)、電池レスリアルタイム無線加速度センシング|V-GENERATOR(金沢大学)、世界初 500m データ送信可能な熱電発電センサーを KELK が発表|KELK

熱電素子・圧電素子の材料と、振動発電の方式

発電素子の材料は、使う温度・鉛などの規制・耐久性で選びます。

熱電材料:低い温度の排熱なら Bi-Te 系、中温はシリサイドを研究中

いま製品に多く使われているのは、ビスマス・テルル系(Bi-Te)です。2009年の EE Times Japan の記事で、KELK は300℃以下では Bi₂Te₃ が最適と述べています。Eサーモジェンテックのフレキシブル熱電モジュールも、Bi-Te 系の素子で300℃程度以下の低温の排熱を狙っています。

ビスマス・テルル系、マグネシウムシリサイド、酸化物の熱電材料の、向く温度と特徴と使われ方を比べた表
図9 熱電材料の違い
出典:EE Times Japan(2009年)・TECH+(2020年)・Eサーモジェンテック「プレスリリース 2024年9月9日」をもとに AI(Claude)で作成

一方で、ビスマスやテルルは希少な元素で、密度が大きく(7g/cm³ 超)、効率が最も高い温度が室温付近です。東北大学などの研究チームは、資源の豊富なマグネシウムとシリコンでできたマグネシウムシリサイド(Mg₂Si)は、軽く、最適な温度が300℃程度で産業の排熱に向くが、熱伝導率が高く変換効率が低いことが課題で、その改善に取り組んでいる、と発表しています(2020年)。産業技術総合研究所は酸化物の熱電材料を使った熱発電装置も開発しています。

酸化物熱発電システム【産総研公式】(YouTube の動画)
動画 酸化物熱発電システム【産総研公式】
出典:産総研チャンネル(YouTube)

産総研の動画は、熱電材料を使った小型の熱発電装置で、身の回りの熱から電気をつくるようすを紹介しています。

圧電材料:PZT と非鉛

圧電式の振動発電では、圧電の性能が高いチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が広く使われてきました。PZT は鉛を含むため、EU の RoHS 指令では適用除外として使われています。2025年の委員会指令(EU)2025/2363 は、圧電の PZT セラミックスに含まれる鉛の適用除外(7(c)-VI)を設け、期限を2027年12月31日としています。欧州向けの製品では、期限と更新の動きを確かめておきます。

PZT と非鉛の圧電薄膜(BiFeO3 など)、ほかの非鉛の圧電材料の特徴と気をつけることを比べた表
図10 圧電材料の違い
出典:TÜV Rheinland(EU 指令 2025/2363)・大阪産業技術研究所「圧電MEMS振動発電デバイス」をもとに AI(Claude)で作成

鉛を使わない材料の研究も進んでいます。大阪産業技術研究所は、PZT を BiFeO₃ に置き換えた圧電薄膜で MEMS の振動発電デバイスをつくり、面積あたりの発電量が PZT とほぼ同等になったとしています。非鉛の材料は、性能・使える温度・耐久性が PZT と違うので、メーカーや研究機関のデータで確かめて選びます。

振動発電の4つの方式

振動を電気に変える方式には、圧電式のほかに、磁石とコイルを使う電磁誘導式、磁歪材料の伸び縮みで磁束を変える磁歪式、電荷を持つ膜(エレクトレット)と電極の距離を変える静電式があります。三菱電機の電磁誘導発電モジュールは、試作した床発電装置で、圧電素子の床発電装置の100倍の200mW を確かめたとしています。

圧電式・電磁誘導式・磁歪式・静電式の振動発電の、しくみと公表されている例の表
図11 振動発電の4つの方式
出典:大阪産業技術研究所「圧電MEMS振動発電デバイス」・三菱電機「電磁誘導発電モジュールを開発」・金沢大学 V-GENERATOR「プレス機の振動から電力を回収」・金沢大学 V-GENERATOR「電池レスリアルタイム無線加速度センシング」・電力中央研究所の動画の説明欄をもとに AI(Claude)で作成
究極のエコ?!超微小振動を電気にチェンジ(#1エナジーハーベスト)【電中研】(YouTube の動画)
動画 究極のエコ?!超微小振動を電気にチェンジ(#1エナジーハーベスト)【電中研】
出典:一般財団法人電力中央研究所(YouTube)

電力中央研究所の動画は、電気二重層のエレクトレットを使った振動発電素子のしくみを紹介しています。説明欄では、1Hz 程度の振動で電極間の電位差が約2V、最大1.2mW/cm²程度の電力が得られた、としています。

出典:廃熱から電力を回収、熱電モジュールの開発進む(2009年)|EE Times Japan、開発商品|Eサーモジェンテック、東北大など、熱電変換材料「Mg2Siハニカム多孔体」の変換効率を向上(2020年)|TECH+、酸化物熱発電システム(動画)|産総研チャンネル(YouTube)、Commission Delegated Directive (EU) 2025/2363|EUR-Lex、Directive (EU) 2025/2363 amending RoHS Directive on exemptions for lead in glass or ceramic components|TÜV Rheinland、圧電MEMS振動発電デバイス|大阪産業技術研究所、【報道提供】磁界振動発電「ジバでんき」量産品について|大阪産業技術研究所、わずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュールを開発|三菱電機、V-GENERATOR|金沢大学、究極のエコ?!超微小振動を電気にチェンジ(動画の説明欄)|一般財団法人電力中央研究所(YouTube)

設置と設計のポイント

環境発電の出力は、素子そのものより、熱の逃がし方・取り付け方・電源回路で決まることが多くあります。

熱電・振動・電源回路と蓄電の、それぞれの設置と設計のポイントを3つの枠にまとめた図
図12 設置と設計のポイント
出典:ヤマハ「YGPX024 のサンプル提供を開始」・コマツ「KELK、産業排熱回収ユニットおよび熱電EH振動センサーデバイスを新発売」・Texas Instruments「BQ25570」と編集部の整理をもとに AI(Claude)で作成

熱電:冷たい側をつくる、すき間なく当てる

温度差をつくるには、熱い側を熱源に密着させ、冷たい側をヒートシンクや風で冷やします。配管のような曲面には、曲げられるモジュールや巻付け型を使います。ヤマハは、熱電発電モジュールでは動作中の温度差による熱応力でモジュールが壊れることが大型化・高温化を難しくしてきたとして、応力緩和の構造とステンレスのパッケージで対策したとしています。KELK は、排熱回収ユニットの冷却部に結露が多く出ることから、防水構造を新しく開発したとしています。

振動:場所を測ってから、固定する

振動発電は、取り付ける場所の振動の周波数・加速度、止まっている時間で発電量が決まります。計算例のように、共振が少しずれるだけで発電量は大きく落ちるので、振動を測ってから素子と錘を決め、しっかり固定します。電線の磁界のように、決まった周波数で揺れる力を使う方法もあります。大阪産業技術研究所などの「ジバでんき」は、交流の電線の周りの磁界で磁石を振動させ、圧電素子で発電します。

電池を減らす理由も整理しておく

Eサーモジェンテックは、無線センサーに一般に使われている塩化チオニルリチウム電池などは使う場所の温度が高くなると容量が下がり、交換がいっそう頻繁になること、欧州バッテリー規則で使用済み電池の回収の義務が生じることを、熱電の電源に替える理由に挙げています。電池の交換の手間・費用・規制を数字にしておくと、環境発電の費用と比べやすくなります。

出典:ヤマハ車載用熱電発電モジュール『YGPX024』のサンプル提供を開始|ヤマハ、KELK、産業排熱回収ユニットおよび熱電EH振動センサーデバイスを新発売|コマツ、【報道提供】磁界振動発電「ジバでんき」量産品について|大阪産業技術研究所、プレスリリース 2024年9月9日|Eサーモジェンテック

排熱や振動での発電を相談できる企業・機関

各企業・機関が解決できる課題と技術の内容を、公開している情報をもとに紹介します。熱電のセンサー・電源・大型モジュール、振動発電(磁歪・圧電・電磁誘導)、微小な電力を使う電源回路を挙げました。

株式会社KELK|電池のいらない熱電振動センサー KELGEN SD

KELK は、神奈川県平塚市に本社・工場を置く、サーモ・モジュール(熱電素子)と温度調節機器のメーカーです(1966年設立。コマツの100%子会社)。2009年に熱電発電モジュールの販売を始めています。

KELKの得意技術

技術内容
熱電 EH 振動センサーデバイス KSGD-SV10センサーを付けた面と大気の温度差3℃から、電池なしで動く振動センサー。温度差3℃のとき40分に1回、温度・速度 RMS・加速度などを測り、920MHz 帯の無線で約500m 先まで送る。63×45×25mm、IP67、受熱面80℃以下
産業排熱回収ユニット KELGEN G-Unit KSGU250鍛造・鋳造・熱処理炉などの局所的な排熱から、熱電変換で数百ワット以上の電力を得るユニット(約29×29cm)。冷却部の結露に備えた防水構造

コマツの粟津工場・大阪工場の設備のモニタリングで、センサーデバイスの有効性を確かめてきた、としています。

KELKが解決できる課題

  • モーター・ポンプの振動を、電池交換も配線もなしで監視したい
  • 通信距離の長い工場・プラントで、無線の振動センサーを使いたい
  • 炉や熱間鍛造の排熱を電力として回収したい
KELK の熱電振動センサー KSGD-SV10 の動く温度差・測る頻度・通信・大きさ・用途の表
図13 KELK の熱電振動センサー KSGD-SV10
出典:KELK「熱電発電センサー KSGD-SV10 の発表」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|KELK、世界初 500m データ送信可能な熱電発電センサーを KELK が発表|KELK、同|コマツ、KELK、産業排熱回収ユニットおよび熱電EH振動センサーデバイスを新発売|コマツ

株式会社Eサーモジェンテック|配管に巻き付ける熱電の IoT 用自立電源

Eサーモジェンテックとは

Eサーモジェンテックは、京都市南区に本社を置く、熱電発電のベンチャーです(2013年設立)。極薄のフレキシブル基板に Bi-Te 系の熱電素子を高密度に実装したフレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ」を持ち、300℃程度以下の低温の排熱の利用を目指しています。

Eサーモジェンテックの得意技術

技術内容
IoT 用自立電源 S1α シリーズ配管巻付け型 S1-P001E は、熱源と周りの温度差50℃で10mW、15℃で1.5mW(出力3.6V。25A の配管、15〜150℃)。平面に磁石で付ける平面型 S1-F102、配管が密集した所に向くフィンレス型 S1-P051B もある
無線センサーの電池の置き換え村田製作所と協力して接続部品を作り、同社のモーターの予知保全用の振動センサー(LBAC0ZZ1TF)の一次電池を S1α シリーズで置き換えられるようにした。複数のユーザー企業との PoC で動作を確かめた、としている

Eサーモジェンテックが解決できる課題

  • 工場の温水・蒸気の配管の熱で、無線センサーを電池なしで動かしたい
  • 高温の場所で、一次電池の容量の低下や交換の手間をなくしたい
  • 今使っている無線の振動センサーの電池を、熱電の電源に替えたい
Eサーモジェンテックの IoT 用自立電源 S1α シリーズの3つの型の出力と、振動センサーの電池の置き換えの表
図14 Eサーモジェンテックの IoT 用自立電源 S1α シリーズ
出典:Eサーモジェンテック「プレスリリース 2024年9月9日」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|Eサーモジェンテック、プレスリリース 2024年9月9日|Eサーモジェンテック、開発商品|Eサーモジェンテック

ヤマハ株式会社|高い温度の排熱から発電する熱電発電モジュール

ヤマハは、静岡県浜松市中央区に本社を置く、楽器・音響機器などの会社です(1887年創業)。電子デバイスの事業で、光通信用のペルチェモジュールを作ってきた材料と実装の技術をもとに、熱電発電モジュールを開発しています。

ヤマハの得意技術

技術内容
車載用熱電発電モジュール YGPX024温度差385℃(高温側400℃・低温側15℃)で1個あたり最大143W(出力密度1.5W/cm²)、高温側285℃・低温側100℃で40W。143×103mm、厚さ2.1mm。加熱面は最大400℃・常用300℃
壊れにくい構造温度差による熱応力でモジュールが壊れる問題に、独自の応力緩和構造とステンレスのパッケージで対応した、としている。熱伝導性グリースの塗布や結露対策が要らず、熱源と冷却面ではさんで押すだけで発電できる、としている

想定する用途として、自動車の排ガス、工場の排熱、コージェネレーション、地熱・太陽熱を挙げています(2021年3月にサンプル販売を開始)。

ヤマハが解決できる課題

  • 数百℃の排熱から、W 単位の電力を取り出したい
  • 多数の小さなモジュールを並べる代わりに、大きなモジュールで数を減らしたい
ヤマハの熱電発電モジュール YGPX024 の出力・大きさ・使える温度・用途の表
図15 ヤマハの熱電発電モジュール YGPX024
出典:ヤマハ「YGPX024 のサンプル提供を開始」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|ヤマハ、ヤマハ車載用熱電発電モジュール『YGPX024』のサンプル提供を開始|ヤマハ

金沢大学|磁歪式の振動発電デバイス V-GENERATOR

金沢大学 V-GENERATORとは

金沢大学(石川県金沢市)は、鉄ガリウム合金の逆磁歪効果を使う振動発電デバイス「V-GENERATOR」を開発し、企業との共同研究で社会実装を進めています。評価用サンプルの販売やお試しキットの提供、共同研究・技術相談の窓口を設けています。

金沢大学 V-GENERATORの得意技術

技術内容
磁歪式の振動発電デバイスU字型のフレームに鉄ガリウム合金の板を貼ってコイルを巻き、中央に永久磁石を置いた構造。先端の錘が振動するとフレームが変形し、合金の磁束が変わってコイルに電圧が出る。摩耗する部分がない、としている
工場・建設機械での例トヨタ自動車とは、プレス機の下の配管板の20Hz の振動に共振を合わせ、1回あたり0.2J を取り出した。コマツとは、ブルドーザのブレードに2台付けて平均約30mW を得て、無線の加速度センサーを動かし続けた

金沢大学 V-GENERATORが解決できる課題

  • プレス機・建設機械など振動の大きい設備で、ワイヤレスのセンサーを電池なしで動かしたい
  • 機械の振動に合わせた振動発電を、共同研究で試したい
金沢大学の磁歪式振動発電デバイス V-GENERATOR のしくみと、トヨタ自動車・コマツとの例の表
図16 金沢大学の磁歪式振動発電デバイス V-GENERATOR
出典:金沢大学「V-GENERATOR」・金沢大学 V-GENERATOR「プレス機の振動から電力を回収」・金沢大学 V-GENERATOR「電池レスリアルタイム無線加速度センシング」をもとに AI(Claude)で作成

出典:V-GENERATOR|金沢大学、プレス機の振動から電力を回収(トヨタ自動車との例)|V-GENERATOR、電池レスリアルタイム無線加速度センシング(コマツとの例)|V-GENERATOR

地方独立行政法人大阪産業技術研究所|非鉛の圧電 MEMS と、電線の磁界で発電する「ジバでんき」

大阪産業技術研究所とは

大阪産業技術研究所(ORIST)は、大阪府和泉市に本部を置く公設の試験研究機関です。電子・機械システム研究部で、圧電体の薄膜と MEMS の加工を使った振動発電デバイスを研究しています。技術相談は無料です。

大阪産業技術研究所の得意技術

技術内容
非鉛の圧電 MEMS 振動発電デバイス鉛を含む PZT を BiFeO₃ に置き換えた圧電薄膜の片持ちばり(長さ6〜10mm)。面積あたりの発電量 10.5µW/mm²/G² は PZT とほぼ同等、としている
磁界振動発電「ジバでんき」交流の電線の周りの磁界で永久磁石を振動させ、圧電素子で発電する IoT 電源。電線に取り付けるだけで電気的な接続なしに発電し、受配電盤の中など光発電を使えない所でも使える。ダイヘン・大阪公立大学と共同開発し、2026年10月に量産品の受注を始める(製品化は合同会社かちクリエイト)

大阪産業技術研究所が解決できる課題

  • 鉛を使わない圧電材料で、小さな振動発電素子を作りたい
  • 受配電盤・キュービクルの中のセンサーを、電池なしで動かしたい
  • 振動発電や圧電薄膜について、公設試験研究機関に技術相談したい
大阪産業技術研究所の非鉛の圧電 MEMS 振動発電デバイスの構造と発電量、ジバでんきの表
図17 大阪産業技術研究所の圧電の振動発電
出典:大阪産業技術研究所「圧電MEMS振動発電デバイス」・大阪産業技術研究所「磁界振動発電「ジバでんき」量産品について」をもとに AI(Claude)で作成

出典:圧電MEMS振動発電デバイス|大阪産業技術研究所、【報道提供】磁界振動発電「ジバでんき」量産品について|大阪産業技術研究所

三菱電機株式会社|わずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュール(開発)

三菱電機とは

三菱電機は、東京都千代田区に本社を置く総合電機メーカーです。研究開発で、独自の複合磁気ワイヤーを使ったコイル型の発電素子と、磁界を強める磁気回路からなる電磁誘導発電モジュールを開発しています。

三菱電機の得意技術

技術内容
電磁誘導発電モジュール(開発)そよ風や弱い水流、人が床を踏む動きなど、ゆっくりした軽い力の動きでも発電するように、磁石と磁気誘導ヨークの配置を最適化した。数 mW 程度の機器・センサーの電源を想定している
床発電の実証試作した床発電装置で、従来の圧電素子の床発電装置の100倍の200mW を確認した。床板と発電素子が触れない構造で、続けて使っても劣化しない。1回踏んだときの電力で温度データを無線で送れた、としている

2025年2月の発表時点では開発段階で、今後は発電量の向上と、一次電池を使う IoT センサーの代わりの電源への適用を目指す、としています。

三菱電機が解決できる課題

  • 人の通行・扉の開け閉めなどの動きで、センサーの電源をつくりたい
  • 圧電素子の床発電で、続けて使ったときの劣化が気になる
三菱電機の電磁誘導発電モジュールの特徴と床発電の試作の結果の表
図18 三菱電機の電磁誘導発電モジュール
出典:三菱電機「電磁誘導発電モジュールを開発」をもとに AI(Claude)で作成

出典:わずかな動きで発電する電磁誘導発電モジュールを開発|三菱電機、会社情報|三菱電機

エイブリック株式会社|微小な電力をためて昇圧する CLEAN-Boost 電源コア

エイブリックとは

エイブリックは、東京都港区に本社を置く、アナログ半導体の専業メーカーです(ミネベアミツミの100%子会社)。

エイブリックの得意技術

技術内容
CLEAN-Boost 電源コア微小な環境エネルギーを蓄電・昇圧し、センサーによる計測や無線発信を可能にする電池レスのソリューション。環境発電の素子・センサー・BLE などと組み合わせて使う
工場と輸送の利用シーン工場で、熱源を持つ装置と外気の温度差で発電し、装置の周りの温湿度を電池なしで測る例や、トラックの振動で発電し、扉が開いたら BLE でスマートフォンに知らせる例を紹介している。電池を使わないので、高温の環境でも電池の破壊による爆発の心配がない、としている

エイブリックが解決できる課題

  • 熱電・振動の小さな発電で、無線の計測・発信を動かす電源回路が欲しい
  • 高温の場所で、電池を使わずに温湿度を測りたい
エイブリックの CLEAN-Boost 電源コアのしくみと、工場と輸送の利用例の表
図19 エイブリックの CLEAN-Boost 電源コア
出典:エイブリック「電源コア CLEAN-Boost」をもとに AI(Claude)で作成

出典:電源コア CLEAN-Boost|エイブリック、会社概要|エイブリック

選ぶ前に確かめる条件

環境発電を相談する前に、次のことを整理しておくと話が早く進みます。

  • 動かしたい機器:1回の計測・送信の電圧・電流・時間、待機の電流、送る間隔(必要な最短の間隔)
  • 熱の条件:熱源の表面温度と周りの温度、形(配管の径・平面)、風の有無、温度の変わり方
  • 振動の条件:周波数・加速度とその変わり方(回転数・電源周波数)、止まっている時間
  • 設置の条件:大きさ・重さの上限、固定の方法、水・油・結露・粉じん、防爆の要否
  • 発電が止まる時間:夜間・休日・設備停止のあいだも測る必要があるか(蓄電の容量)
  • 比べる相手:電池の寿命と交換の費用、配線工事の費用、ワイヤレス給電などほかの方法

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・設備ではありません。

情報の確認日:2026年10月23日

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