機械や車を軽くしたいとき、鉄(鋼)の部品をアルミ・マグネシウム・樹脂・CFRP(炭素繊維強化樹脂)に替えることを考えます。鉄は強くてかたい一方、重い材料です。ところが、軽い材料にそのまま替えると、たわむ、温度や水分で性質が変わる、つなぎ目が腐食する、費用が上がる、といった別の問題が出ることがあります。
この記事では、今の材料(鉄鋼)の課題を確かめ、置き換え先の5つの候補(ハイテン・アルミ合金・マグネシウム合金・樹脂・CFRP)を比べます。同じかたさ・同じ強さで比べたときの重さの計算例、目的ごとの選び方、置き換えるときの注意を紹介します。
今の材料(鉄鋼)の課題
鉄は強くてかたいが、重い
鉄鋼の密度は約7.85g/cm³ で、アルミ合金(A5052 で2.68)の約3倍、マグネシウム合金(AZ31 で1.78)の約4倍です。ガラス繊維30%入りのポリカーボネートは1.40〜1.43、CFRP は1.5〜1.7 とされます。ここで比べた材料の中では、鉄鋼がいちばん重い材料です。

出典:大阪富士工業・プロテリアル特殊鋼・KDA・エーシーエムの値をもとに AI(Claude)で作成
強い鋼に替えても、かたさ(ヤング率)は変わらない

板の伸び・縮みに対するかたさはヤング率と板厚の積に、曲げに対するかたさはヤング率と板厚の3乗の積に比例します(日本製鉄技報)。日本製鉄技報は、金属ではヤング率を密度で割った値がほぼ一定で、構造を変えずに板を薄くすると、重さが減る割合より、かたさが下がる割合のほうが大きくなる可能性があると述べています。強い鋼(ハイテン)にしても、ヤング率は変わりません。この点は課題「薄く軽くすると強度が足りない」でくわしく解説しています。

日本製鉄技報 第412号の「曲げの剛性はヤング率と板厚の3乗の積に比例」をもとに編集部が計算し、作図。AI(Claude)で作成
軽くした分だけ、動かすエネルギーが減る
自動車では、九州大学の講義資料に「車両重量が100kg 減少すれば約1km/l 燃費が改善する」とあり、JST 低炭素社会戦略センターの2014年の資料にも「100kg の重量減で+1km/L の燃費改善」とあります。NEDO の革新的新構造材料等研究開発(2013〜2017年度の中間評価)は、輸送機器の抜本的な軽量化(半減)を目標に、材料を適材適所に使うマルチマテリアル化と、異なる材料をつなぐ接合技術が重要だとしています。産業機械でも、TAC の工作機械の部品の事例では、軽くしたことでモーターの振動やたわみ、イナーシャ(慣性)が減り、発注者の牧野フライス製作所は電力消費が大きく削減されるとしています。

出典:九州大学の講義資料・JST 低炭素社会戦略センター・NEDOをもとに AI(Claude)で作成
出典:各種材料との比較|大阪富士工業、材料の物理的性質|プロテリアル特殊鋼、PC 樹脂の物性値|KDA、CFRPの物性比較|エーシーエム、剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立(2019年)|日本製鉄技報 第412号、軽量化と炭素繊維(2012年)|九州大学 講義資料、低炭素技術をどう社会につなげてゆくか(2014年)|JST 低炭素社会戦略センター、革新的新構造材料等研究開発 中間評価(2017年)|NEDO、アルミ鋳物導入事例 牧野フライス製作所様|TAC
置き換え先の候補
置き換え先は、鉄のまま薄くする方法(ハイテン)と、軽い材料に替える方法(アルミ合金・マグネシウム合金・樹脂・CFRP)に分かれます。ここで比べた金属と樹脂では、軽い材料ほどヤング率(かたさ)も小さいので、同じかたさにするには板を厚くします(CFRP は、軽くてかたい例外です)。

大阪富士工業・KDA・愛媛県産業技術研究所・ミスミの値をもとに、編集部が整理。AI(Claude)で作成
高張力鋼(ハイテン):鉄のまま薄くする

ハイテンは、強度を高めた鋼板です。板厚を減らしても強度を確保できますが、高強度・低延性で成形性が悪く、プレス加工のときにスプリングバック(型から外すと形が戻る)が出て、設計どおりの形にしにくいことが課題とされます(静岡県 浜松工業技術支援センター)。茨城大学の資料では、270MPa 級の鋼板の伸びが55%なのに対し、1,180MPa 級では12%で、ハイテン化で割れ・シワ・スプリングバック・型カジリなどの成形不具合や、加工荷重の増大が起きるとしています。

出典:茨城大学 西野創一郎「難加工材の高精度・低荷重プレス加工技術」をもとに AI(Claude)で作成
アルミニウム合金:重さは約3分の1、かたさも約3分の1
アルミ合金は、密度もヤング率も鋼の約3分の1です。新日本製鉄の2005年の記事は、0.7mm 厚の自動車用鋼板をアルミに替える場合、強度を確保するために1mm 厚のアルミ合金板が必要になるが、約20kg の鋼材を10kg のアルミで代替でき、ほぼ50%の軽量化になると説明しています。一方で、材料費が高く加工効率が悪いため、自動車部品にすると数倍のコストがかかるとしています。ニュースイッチの記事は、アルミは鉄に比べて成形性で劣り、深絞りがしにくく、シワや破断も発生しやすいとしています。

出典:新日本製鉄 NSC 2005年10月号・ニュースイッチをもとに AI(Claude)で作成
マグネシウム合金:アルミよりさらに軽い

マグネシウム合金は、アルミの約3分の2、鉄の約4分の1の重さです(茨城県工業技術センター)。山梨県工業技術センターは、欠点として耐食性が低い・燃えやすい・塑性加工が難しいことを挙げています。燃えやすさについて、消防庁の資料は、マグネシウムは消防法の可燃性固体(第二類)で、2mm の網ふるいを通る塊状のものなどはすでに規制されていること、粒の小さいマグネシウムによる火災の事例はいずれも粉末状だったことを示しています。切り屑や粉の扱いに注意します。

出典:茨城県工業技術センター・山梨県工業技術センター・消防庁・大阪富士工業をもとに AI(Claude)で作成
樹脂(ガラス繊維強化樹脂など):後加工のいらない成形ができる
ガラス繊維30%入りのポリカーボネートの比重は鋼の約5.5分の1ですが、ヤング率もとても小さい材料です。ポリカーボネートの引張弾性率は、ガラス繊維なしで2,400MPa、ガラス繊維30%入りで8,600〜9,700MPa と、繊維を入れると3倍以上になります(KDA)。三菱電機技報(2007年)は、金属材料の部品で PPS などの高剛性・高耐熱樹脂への代替が進められていて、後加工のいらないネットシェイプ成形で製造コストの低減が期待されるとしています。九州大学の講義資料は、自動車の燃料タンクを樹脂化すると、鉄製品に比べ10〜25%の軽量化が可能としています。

出典:KDA「PC 樹脂の物性値」をもとに AI(Claude)で作成
CFRP(炭素繊維強化樹脂):繊維の向きで性能が決まる

CFRP は、比重1.7 程度(鉄は7.8)で、弾性係数は100GPa 程度(鉄は200GPa)とされ、値は繊維の配向角と積層の条件で異なります(愛媛県産業技術研究所)。繊維を一方向にそろえた CFRP の例では、ヤング率が繊維の方向で139.3GPa、直角の方向で約9.0GPa と、約15.5倍の差があります(日本大学)。MONOist の記事では、日産 GT-R の CFRP 製トランクリッドが、アルミ製に比べて約40%軽く、面剛性は1.5倍とされます。一方で、炭素繊維は自動車への適用に向けて価格が課題とされています(日本大学)。

出典:日本大学生産工学部の講演論文(2024年)・エーシーエムをもとに AI(Claude)で作成
出典:高張力鋼板の材料特性データ取得(2025年)|静岡県工業技術研究所 浜松工業技術支援センター、難加工材の高精度・低荷重プレス加工技術(2009年)|茨城大学 西野創一郎、自動車の軽量化ニーズに応える 新日鉄の自動車用アルミ材(2005年)|新日本製鉄 NSC、自動車の軽量化を考える(2)軽量素材の“一番手”-アルミ(2015年)|ニュースイッチ、マグネシウム合金板材の塑性変形性の向上とプレス成形特性(2006年度)|茨城県工業技術センター、マグネシウム合金部品の耐食性向上に関する研究|山梨県工業技術センター、マグネシウム火災に係る対応(案)|消防庁、PC 樹脂の物性値|KDA、高精度射出成形技術の製品への適用(2007年)|三菱電機技報、軽量化と炭素繊維(2012年)|九州大学 講義資料、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所、UD-CFRP の板厚が曲げ強度に及ぼす影響(2024年)|日本大学生産工学部、CFRP製自動車部品の採用拡大に必要なことは「工場の自動化」(2014年)|MONOist、低コスト炭素繊維を用いた CFRP の力学特性評価(2021年)|日本大学生産工学部
計算例:同じかたさ・同じ強さの板で比べる
厚さ1mm の鋼板(270MPa 級)を、ほかの材料の板に替えるとします。板の幅と長さは同じで、板厚だけを変えて、①曲げのかたさ(ヤング率×板厚³)をそろえたとき、②曲げで壊れにくさ(引張強さ×板厚²)をそろえたときの、板厚と重さを計算しました。
①同じかたさの板厚=1mm×(鋼のヤング率÷その材料のヤング率)の3乗根、②同じ強さの板厚=1mm×(鋼の引張強さ÷その材料の引張強さ)の平方根。重さの比=板厚の比×密度の比です。
| 材料 | 密度[g/cm³] | ヤング率[GPa] | 引張強さ[MPa] | ①板厚[mm] | ①重さ(鋼=1) | ②板厚[mm] | ②重さ(鋼=1) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 鋼板(270MPa 級) | 7.85 | 205 | 280 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
| ハイテン(1,180MPa 級) | 7.85 | 205 | 1,220 | 1.00 | 1.00 | 0.48 | 0.48 |
| アルミ合金 A5052-H32 | 2.68 | 70 | 230 | 1.43 | 0.49 | 1.10 | 0.38 |
| マグネシウム合金 AZ31 | 1.78 | 45 | 280 | 1.66 | 0.38 | 1.00 | 0.23 |
| ガラス繊維30%入り PC | 1.42 | 9.2 | 135 | 2.81 | 0.51 | 1.44 | 0.26 |
| CFRP(擬似等方の目安) | 1.7 | 100 | — | 1.27 | 0.28 | — | — |
(編集部の計算。値の出典:鋼の密度は S50C、ヤング率は S45C の値(プロテリアル特殊鋼・ミスミ)、鋼板とハイテンの引張強さは茨城大学の資料の供試材(JAC270F・JSC1180Y)、アルミ合金とマグネシウム合金は大阪富士工業、ガラス繊維30%入り PC は KDA の値の中ほど、CFRP は愛媛県産業技術研究所の「比重1.7、弾性係数100GPa 程度」。CFRP の強さは積層の設計で大きく変わるため、②は計算していません。代表値による目安で、降伏・疲労・座屈・温度・加工・価格は考えていません)

編集部が計算し、作図。値の出典は表の下に記載。AI(Claude)で作成
表から、かたさで決まる部品と、強さで決まる部品で、選ぶ材料が変わることがわかります。ハイテンは②で約0.48倍に軽くなりますが、①の曲げのかたさは板厚の3乗、約0.11倍に下がります。アルミ合金の①の板厚1.43mm は、新日本製鉄の記事の「0.7mm の鋼板に1mm のアルミ板」(約1.43倍)と同じ比率です。
出典:材料の物理的性質|プロテリアル特殊鋼、ヤング率とは|ミスミ meviy、難加工材の高精度・低荷重プレス加工技術(2009年)|茨城大学、各種材料との比較|大阪富士工業、PC 樹脂の物性値|KDA、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所、複合材料研究室における近年の研究結果(2012年)|近畿大学、新日鉄の自動車用アルミ材(2005年)|新日本製鉄 NSC
目的と置き換え先の比較表
行が置き換えの目的、列が置き換え先の材料です。◎は第一候補、○は有効、△は条件によって有効を表します。目的の行をクリックすると、理由と出典を書いたカードに移ります。
| 課題(症状) | 高張力鋼 (ハイテン) | アルミ 合金 | マグネシウム 合金 | 樹脂 (ガラス繊維 強化など) | CFRP (炭素繊維 強化樹脂) |
|---|---|---|---|---|---|
| A同じかたさ(剛性)のまま軽くしたい | △ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ |
| B同じ強さのまま軽くしたい | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ |
| C費用を抑えて量産したい | ◎ | ○ | △ | ○ | △ |
| D熱・水・薬品のある所で使いたい | ○ | ○ | △ | △ | ○ |
| E部品をまとめて点数も減らしたい | ○ | ○ | ○ | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
◎・○・△の理由と出典は、下の「目的ごとの選び方」の各カードに書いています。空欄は、その目的の根拠が今回の調べで見つからなかった候補です。記号は、公設試・大学・業界団体・各社の公開情報と、この記事の計算例をもとにした編集部の評価で、同じ目的の中での比較です。
目的ごとの選び方
目的(A〜E)ごとに、比べた結果、候補、置き換えるときの注意をまとめました。
同じかたさ(剛性)のまま軽くしたい
たわみや振動が増えると困る部品。いまと同じだけ曲がりにくいまま軽くしたい。

- 比べた結果
- 板の曲がりにくさは「ヤング率×板厚の3乗」に比例します(日本製鉄技報)。この記事の計算例では、1mm の鋼板と同じ曲げのかたさの板にすると、重さはアルミ合金で約0.49倍、マグネシウム合金で約0.38倍、CFRP で約0.28倍になります。ガラス繊維入りの樹脂でも約0.51倍ですが、板厚は約2.8倍になります。ハイテンはヤング率が鋼と変わらないため、強さを上げても曲がりにくさは変わりません。
- 候補
- アルミ合金(◎)板を少し厚くして、重さは約半分
- マグネシウム合金(◎)さらに軽い。板厚は約1.7倍
- CFRP(◎)繊維の方向をそろえると、もっとも軽い
- 樹脂(○)軽くできるが、厚さが大きく増える
- ハイテン(△)薄くすると曲がりやすくなる。形で補う
曲がりにくさを保つには、板を厚くできる空間が要ります。ハイテンで薄くするときは、日本製鉄技報が述べるように、板の曲げで支えるのではなく、トラスのような形(構造)で支える工夫が必要です。
同じ強さのまま軽くしたい
壊れないことが一番の部品。曲がりにくさより、強さ(壊れにくさ)を保って軽くしたい。

- 比べた結果
- 計算例で、270MPa 級の鋼板と同じ曲げの強さの板にすると、重さは1,180MPa 級のハイテンで約0.48倍(材料は鉄のまま)、アルミ合金で約0.38倍、マグネシウム合金で約0.23倍、ガラス繊維入り樹脂で約0.26倍になります。CFRP は、引張強度900〜3,000MPa(エーシーエム)と高い値があります。戸畑ターレット工作所は、高強度のアルミ鍛造で、鉄の部品をアルミに替えた事例を公開しています。
- 候補
- ハイテン(◎)鉄のまま、薄くして軽く
- CFRP(◎)繊維の方向に、とても強い
- アルミ合金(○)高強度のアルミ鍛造の事例がある
- マグネシウム合金(○)計算上は軽いが、腐食に注意
- 樹脂(○)温度・水分で強さが下がる
ハイテンで薄くすると、曲げのかたさは板厚の3乗で落ちます。板厚を約0.48倍にすると、曲げのかたさは約0.11倍です(編集部の計算)。強さだけでなく、たわみ・座屈・疲労も確かめます(課題「薄く軽くすると強度が足りない」)。
費用を抑えて量産したい
数がまとまった量産品。軽くしても、部品の費用を大きく上げたくない。

- 比べた結果
- アルミは、コストが鉄の数倍といわれ(ニュースイッチ)、新日本製鉄の2005年の記事も、鋼板をアルミに替えると自動車部品にするときに数倍のコストがかかると書いています。CFRP は、自動車への適用に向けて価格が課題とされます(日本大学)。マグネシウム合金の圧延板は、茨城県の2006年度の資料で 6,000円/kg(アルミ合金板は800円/kg)でした。ハイテンは材料が鉄のままです。一方、戸畑ターレット工作所は、アルミの鍛造品を鉄の鍛造品と遜色のないコストで量産できるとしています。
- 候補
- ハイテン(◎)材料は鉄のまま。ただし成形が難しい
- アルミ合金(○)材料は高いが、工法で抑えた事例がある
- 樹脂(○)成形で後加工を減らせる
- マグネシウム合金(△)板材が高い
- CFRP(△)材料の価格と量産の速さが課題
部品1個の費用だけでなく、軽くなったことで減る費用も比べます。日伸電工の事例では、部品単価は上がったものの、駆動モーターなどの付帯設備が大幅にコストダウンし、トータルコストを削減できたとしています。ハイテンは成形の荷重が増え、従来の加工法・設備が使えないことがあります(茨城大学)。
熱・水・薬品のある所で使いたい
屋外、水まわり、高い温度の近くなどで使う部品。環境で性質が変わると困る。

- 比べた結果
- マグネシウムは、耐食性が低い・燃えやすいことが欠点とされます(山梨県工業技術センター)。ナイロン6は、温度20℃・湿度65%に1週間置くと、引張弾性率が約14%下がりました(KISTEC)。アルミや CFRP は、鉄など別の材料とつなぐと、つないだ所の腐食に注意が要ります(名古屋市工業研究所・日建連)。CFRP は熱膨張率が3ppm 以下と小さいとされます(エーシーエム)。
- 候補
- ハイテン(○)鉄と同じ扱い。錆の対策は今と同じ
- アルミ合金(○)鉄とつなぐ所の腐食に注意
- CFRP(○)温度で寸法が変わりにくい。アルミとの接触に注意
- マグネシウム合金(△)表面処理が前提
- 樹脂(△)温度と吸水で弾性率が下がる
使う温度の範囲・湿度・触れる薬品を書き出し、その条件での値で比べます。材料表の値の多くは室温・乾燥状態の代表値です(編集部の解説)。
部品をまとめて点数も減らしたい
いくつもの部品を溶接・ねじで組んでいる。材料を替えるついでに、部品の数も減らしたい。

- 比べた結果
- 樹脂化では、後加工のいらないネットシェイプ成形ができ、製造コストの低減が期待されます(三菱電機技報、2007年)。ハイテンでも、樋口製作所はプレス品とワッシャの2部品を溶接していた製品を、増肉加工で1部品にしています。日伸電工のマグネシウムの事例では、アルミでは多くなる補強部品を減らしています。
- 候補
- 樹脂(◎)複雑な形を成形で一度に作る
- ハイテン(○)増肉プレスで溶接部品をまとめた例
- アルミ合金(○)鋳造・鍛造で形をまとめる
- マグネシウム合金(○)鋳造で補強部品を減らした例
樹脂のネットシェイプ成形は、収縮の異方性や残留応力による変形で、高い寸法精度を出すのが難しいとされます(三菱電機技報)。工法の比べ方は、課題「工法を切り替えたい」「部品点数を減らしたい」で解説しています。
置き換えるときの注意
材料を替えるときは、求める性能(かたさ・強さ・温度・環境)と数量を書き出し、候補を計算で絞り、形と作り方を新しい材料に合わせ、試作と試験で確かめる、という順に進めます。次の図は、公設試・大学・各社の説明をもとに編集部が整理した進め方です。

出典:公設試・大学・各社の説明をもとに AI(Claude)で作成
鉄とつなぐ所の腐食(異種金属接触腐食)
種類の違う金属が水の中で触れると、電位の低い(卑な)金属が陽極になって腐食が進みます(ステンレス協会)。JFEテクノリサーチは、条件によっては単独の場合の数倍〜十倍以上の速さで腐食が進む可能性があるとしています。日建連の Q&A は、亜鉛めっき鋼材の例のあとで、アルミニウムや裸鋼板でも同様の不具合が起きる可能性があるとし、対策として、同じ材料を使う、塗装で絶縁する、樹脂で絶縁する、を挙げています。CFRP も注意が要ります。名古屋市工業研究所の測定では、CFRP とアルミ板を塩水に浸すと、表面に出た炭素繊維からアルミ側へ電流が流れ、アルミの腐食が促進されるとしています。

出典:ステンレス協会・日建連・名古屋市工業研究所をもとに AI(Claude)で作成
温度と水分で、性質と寸法が変わる
樹脂は、温度や水分で性質が変わります。KISTEC の試験では、ナイロン6を温度20℃・湿度65%に1週間置くと、乾燥した状態に比べて引張強さが約17%、引張弾性率が約14%下がりました。ナイロン66の引張弾性率は、室温で乾燥状態から飽和湿度までの間に1/4〜1/5程度に下がるとする1994年の論文もあります。また、材料ごとに温度による伸び(線膨張係数)が違います。鋼(S50C)の11.9×10⁻⁶/K に対し、アルミ合金 A5052 は23.8、マグネシウム合金 AZ31 は26.8 で約2倍、CFRP は3ppm(3×10⁻⁶/K)以下とされます。違う材料を固定すると、温度が変わったときにずれや力が生まれます(編集部の解説)。

出典:大阪富士工業・プロテリアル特殊鋼・エーシーエムの値をもとに AI(Claude)で作成
形と作り方を、新しい材料に合わせる

今の鉄の部品の形のまま材料だけを替えると、その材料の長所を生かせないことがあります(編集部の解説)。二幸技研も、金属の部品の形のままナイロンで作った検証のあとで、実際の材料置換では、材料に合う形や構造を設計・分析してから試作するとしています。日本製鉄技報は、薄いハイテンを使うには、板の曲げ変形を抑える構造が必要だとしています。日本アルミニウム連盟の1999年の報告書は、自動車のアルミ化の大きな課題として、プレス成形技術と接合技術を挙げています。
費用と、使い終わったあと

材料の価格は、kg あたりで比べると鉄より高いものが多いですが、使う重さが減るので、部品1個の費用と、軽くなって減る費用(駆動の装置、燃料・電力)を合わせて比べます(編集部の解説)。使い終わったあとも考えます。アルミは、再生地金にするエネルギーが新地金を作る場合のわずか3%ですむとされます(日本機械学会誌、2009年)。違う材料を組み合わせた部品は、分けにくくなることがあります。分解しやすい設計は、課題「分解・リサイクルしやすくしたい」で解説しています。
出典:ステンレス鋼管と異種金属とを接続する場合の絶縁施工について(2015年)|ステンレス協会、多電極系での異種金属間接触腐食試験|JFEテクノリサーチ、異種金属接触腐食(電食)Q&A A-7-12|日建連 鉄骨専門部会、異種材料間に流れる電流値の測定|名古屋市工業研究所、プラスチック材料の引張試験における状態調節の影響(2025年)|KISTEC、ナイロンの吸湿性とアミド基濃度との関係(1994年)|兵庫教育大学 福田・宮川、材料の物理的性質|プロテリアル特殊鋼、各種材料との比較|大阪富士工業、CFRPの物性比較|エーシーエム、ナイロンで軽量化。金属パーツをナイロン注型|二幸技研、剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立(2019年)|日本製鉄技報、アルミニウムの活用による機械工業の省エネに関する調査研究報告書(1999年)|日本アルミニウム連盟、初期型アルミ合金製通勤車両のリサイクル手法(2009年)|日本機械学会誌
鉄からの置き換えを相談できる企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。どの材料に替えたいか、どのくらいの数量かによって、合う相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| 戸畑ターレット工作所 | 非鉄鍛造・ダイカスト | 強度が必要な鉄の鍛造部品を、高強度アルミの鍛造に置き換えて軽くする。強度を確保できる形の相談もできる。 | B 同じ強さのまま軽くしたい C 費用を抑えて量産したい | |
| TAC | アルミ鋳物 | 重い鋳鉄の部品を、たわみにくさ(剛性)を確保したアルミ鋳物に置き換える。大型部品の砂型鋳造も行う。 | A 同じかたさ(剛性)のまま軽くしたい | |
| 日伸電工 | ダイカスト・鋳造 | 装置の大型の鋳物を、マグネシウム合金の砂型鋳造で軽くする。さびを防ぐ表面処理もまとめて頼める。 | A 同じかたさ(剛性)のまま軽くしたい C 費用を抑えて量産したい D 熱・水・薬品のある所で使いたい E 部品をまとめて点数も減らしたい | |
| 樋口製作所 | プレス加工・金型 | ハイテン材の増肉プレスで、溶接していた部品を1つにまとめる。必要な所だけ厚くして材料を減らす。 | B 同じ強さのまま軽くしたい C 費用を抑えて量産したい E 部品をまとめて点数も減らしたい | |
| 二幸技研 | 樹脂部品の試作 | 金属の部品をガラス繊維入りナイロンの注型で試作し、樹脂にしたときの軽さを量産の金型の前に確かめる。 | D 熱・水・薬品のある所で使いたい E 部品をまとめて点数も減らしたい | |
| エーシーエム | CFRP の設計・成形 | 鉄やアルミの部品を CFRP にして軽くする。材料設計から成形・機械加工・組立まで社内で受け持つ。 | A 同じかたさ(剛性)のまま軽くしたい B 同じ強さのまま軽くしたい D 熱・水・薬品のある所で使いたい |
株式会社戸畑ターレット工作所|高強度アルミ鍛造で、鉄の部品をアルミに置き換える
戸畑ターレット工作所とは
戸畑ターレット工作所は、北九州市小倉南区に本社工場がある、非鉄鍛造・アルミダイカスト・精密切削加工の会社です(1962年創立)。
戸畑ターレット工作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 高強度アルミ鍛造 | 独自の高速恒温鍛造で、アルミの強度を鉄並みに高める技術。鉄からアルミへの置き換えに使う |
| タイロットエンドの事例 | ステアリング部品のタイロットエンドを鉄からアルミに置き換え、「1/3の大幅な軽量化」を実現したとしている。強度は「鉄に対して、約81%まで」向上し、鉄の鍛造品と遜色のないコストで量産できるとしている。量産車向けのアルミ製タイロットエンドとして世界初としている |
| 特殊アルミとの違い | 鉄並みの強度を持つ一部の特殊アルミは、コストが一般的なアルミの2倍以上と高く、加工速度も遅いため量産部品には向いていなかったと説明している |
戸畑ターレット工作所が解決できる課題
- 強度が必要な鉄の鍛造部品を、アルミにして軽くしたい
- 鉄からアルミに替えても、量産のコストを上げたくない
- 強度を確保できるアルミ部品の形を相談したい

出典:会社概要|戸畑ターレット工作所、高強度アルミ鍛造によるタイロットエンド|戸畑ターレット工作所
株式会社TAC|鋳鉄の部品を、高剛性のアルミ鋳物に置き換える
TACとは
TAC は、埼玉県羽生市に本社・工場がある、アルミ鋳物の会社です(1968年創業)。
TACの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 高剛性のアルミ合金と砂型低圧鋳造 | アルミ地金メーカーと共に、鋳鉄の性能に匹敵する高剛性のアルミ合金『MON.3』を開発した。弾性係数は従来のアルミから27%アップしたとしている |
| 工作機械の部品の事例 | 牧野フライス製作所の5軸制御横形マシニングセンタの部品で、鋳鉄の製品重量1.3t を500kg 以下まで減量した。軽量化によってモーターの振動を抑え、たわみも激減させたとしている |
この事例は、鋼の板ではなく鋳鉄の部品からの置き換えです(編集部の補足)。
TACが解決できる課題
- 重い鋳鉄の部品を、アルミ鋳物にして軽くしたい
- アルミにしても、たわみにくさ(剛性)を確保したい
- 大型の部品を、砂型の鋳造で作りたい

出典:TAC の導入事例をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|TAC、アルミ鋳物導入事例 牧野フライス製作所様|TAC
株式会社日伸電工|大型の鋳物をマグネシウム合金の砂型鋳造で軽くする
日伸電工とは
日伸電工は、兵庫県たつの市に本社・中臣工場がある、ダイカストと鋳造の会社です(会社概要では1970年5月創業)。アルミ・亜鉛・マグネシウムのダイカストと鋳造、機械加工、試作を手がけています。
日伸電工の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| マグネシウム合金の砂型鋳造 | 振動試験装置の筐体を、大型のアルミ鋳物からマグネシウム合金(AZ91D)の精密砂型鋳造に替え、部品の重さの合計を600kg から400kgまで軽くした。後処理は化成処理 |
| 振動と付帯設備 | 部品単価は上がったが、駆動モーターなどの付帯設備が大幅にコストダウンし、トータルコストを削減できたとしている。マグネシウムはアルミに比べ減衰能に優れるため、筐体の振動も改善したとしている |
| マグネシウムのダイカスト | マグネシウムダイカストも手がけている |
この事例は、鉄ではなくアルミ鋳物からの置き換えです(編集部の補足)。
日伸電工が解決できる課題
- 装置の大きな鋳物の部品を、さらに軽くしたい
- アルミでは補強部品が増えてしまう筐体を軽くしたい
- マグネシウムの鋳造と、さびを防ぐ表面処理をまとめて頼みたい

出典:日伸電工の事例をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|日伸電工、マグネシウムによる大型のアルミ鋳物の軽量化事例|日伸電工(イプロス)、ダイカスト|日伸電工
株式会社樋口製作所|ハイテン材の増肉プレスで、溶接していた部品を1つにする
樋口製作所とは
樋口製作所(通称 HIGUCHI)は、岐阜県各務原市にある、金属プレス加工と金型の会社です(1937年創業、1963年創立)。
樋口製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ハイテン材の増肉加工 | 薄い材料を部分的に厚くして一体成形する増肉加工を、難加工材のハイテン材(高張力鋼板)で行い、素材板厚の2倍まで増肉できたとしている。増肉した部分は鍛錬されて、元材料の1.5倍まで強度が上がったとしている |
| 2部品を1部品に | カップ形状のプレス品とワッシャの2部品を溶接していた製品を、増肉加工でプレス品の1部品にし、ワッシャと溶接をなくして原価を下げた |
樋口製作所が解決できる課題
- ハイテン材で、溶接していた部品を1つにまとめたい
- 必要な所だけ厚くして、材料を減らしたい
- 難加工材のハイテンをプレスで成形したい

出典:会社概要|樋口製作所、コスト削減を叶えるハイテン材(高張力鋼板)の増肉加工|樋口製作所
株式会社二幸技研|金属の部品をガラス繊維入りナイロンの注型で試作する
二幸技研とは
二幸技研は、川崎市宮前区に本社工場がある、自動車(四輪・二輪)のプラスチック製品の試作の会社です(1984年創立)。ガラスフィラー入りナイロン注型、真空注型、治具・検具の設計製造、3Dプリンター出力などを手がけています。
二幸技研の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ガラス繊維入りナイロンの注型 | ナイロン6にガラス繊維を30%入れた材料(比重1.36)を注型して、金属の部品と同じ形の部品を作れる |
| 金属の部品をナイロンにした検証 | 市販のバイクの金属製の部品(マフラープロテクター2点とテールキャップ)を、形をそのままにナイロン注型で作り、3点の合計で828g が364gになり、56%軽くなったとしている。今回は金属の形をそのまま作ったもので、実際の材料置換では材料に合う形や構造を設計・分析してから試作するとしている |
二幸技研が解決できる課題
- 金属の部品を樹脂にしたら、どのくらい軽くなるかを試作で確かめたい
- 量産の金型を作る前に、ガラス繊維入りナイロンの部品を少量作りたい

出典:二幸技研のコラムをもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|二幸技研、ナイロンで軽量化。金属パーツをナイロン注型|二幸技研
株式会社エーシーエム|CFRP を材料設計から成形・加工・組立まで受け持つ
エーシーエムとは
エーシーエムは、横浜市都筑区に本社がある、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の会社です(2002年7月設立)。材料設計から成形、機械加工、組立まで社内で受け持ちます。
エーシーエムの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| CFRP の性質 | 比重1.5〜1.7(鉄の1/4以下)、引張強度900〜3,000MPa(S45C は700MPa)、弾性率55〜350GPa(S45C は200GPa)、熱膨張率3ppm 以下としている(一般比較で、実際は積層の設計による) |
| 材料設計から始める | CFRP は繊維の方向に性能が出る異方性材料で、金属・プラスチックと違い、常に「材料設計」から製品作りが始まると説明している |
エーシーエムが解決できる課題
- 鉄やアルミの部品を、CFRP にして軽くしたい
- 温度で寸法が変わりにくい部品にしたい
- ロボットハンドなど、動く部品を軽くしたい(お客様の声に、ロボットハンドの軽量化の相談がある)

出典:エーシーエム「CFRPの物性比較」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|エーシーエム、CFRPの物性比較|エーシーエム、お客様の声|エーシーエム
選ぶ前に確かめる条件
材料の置き換えを相談する前に、次のことを整理しておくと、候補の絞り込みと見積もりが進めやすくなります。
- 今の部品の材料・重さ・板厚と、どのくらい軽くしたいか
- 部品が「かたさ(たわみ)」で決まるのか、「強さ(壊れにくさ)」で決まるのか
- 板を厚くできる空間(寸法の余裕)があるか
- 使う温度の範囲・湿度・水や薬品・屋外かどうか
- つながる相手の材料と、つなぎ方(溶接・ねじ・接着)
- 年間の数量と、1個あたりにかけられる費用
- 軽くなって減る費用(駆動の装置・燃料・電力・運搬)
関連する課題
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月2日





