電子機器の筐体やシールドの板を、軽く・薄くしたい、という相談が増えています。持ち運ぶ機器、車載の機器、ドローンや人工衛星など、重さが性能や費用に響く製品では、金属の筐体は重く、シールドの板を入れる場所もありません。一方で、金属をやめて樹脂に替えると、電磁波が筐体を通り抜け、ノイズの規格に通らない、内部の回路が誤作動する、といった困りごとが起きます。
この記事では、今の方法(金属の板金・ダイカストの筐体でシールドする)の課題を確かめ、置き換え先の5つの候補(樹脂+シールドめっき、樹脂+導電塗装、真空蒸着・スパッタ、導電性樹脂、シールドフィルム・導電テープ)を、公開されている値で比べます。軽さ・薄さ・シールド効果・形・少量のしやすさの目的ごとの選び方と、重さの計算例、置き換えるときの注意を紹介します。ノイズの対策全体(フィルタ・基板の設計など)は、課題「ノイズで誤作動する・EMCに通らない」で解説しています。
今の方法(金属の筐体)の課題
金属は重い
金属の筐体は、それだけでシールドになりますが、重くなります。密度は、鉄が約7.9g/cm³、アルミが約2.7g/cm³ に対し、ABS などの樹脂は約1.0〜1.2g/cm³ です(一般的な値)。同じ大きさの板なら、樹脂の重さは鉄の約7分の1、アルミの約2.5分の1です(編集部の計算)。

出典:村田製作所「ノイズ対策基礎講座 第4章」と一般的な密度の値をもとに AI(Claude)で作成
シールドは表面の薄い金属でも効く
電磁波のシールドは、金属の面で電磁波をはね返す(反射損失)ことと、金属の中を進むあいだに弱める(吸収損失)ことで効きます(大阪産業技術研究所)。同じ資料では、厚さ0.1mm のアルミ板の吸収損失は30MHz で56dB、1GHz で323dB と計算されています。村田製作所は、厚さ0.1mm の銅で0.1〜1,000MHz にわたり約100dB 以上のシールド効果があり、10µm の銅箔でも実用的な効果があると説明しています。つまり、金属の筐体の厚さ(1mm ほど)は、シールドのためには厚すぎることが多いのです(編集部の解説)。

出典:大阪産業技術研究所「電磁波シールド材の設計法」・村田製作所「ノイズ対策基礎講座 第4章」をもとに AI(Claude)で作成
電磁波が金属の中に入れる深さの目安を表皮深さと言い、周波数が高いほど浅くなります。銅では1MHz で約66µm、100MHz で約6.6µm、1GHz で約2.1µm です(編集部の計算)。大阪産業技術研究所の資料では、アルミの膜は30MHz で15µm 以上、1GHz で2.5µm 以上の厚さがあれば、膜の中での多重反射を考えなくてよいとしています。ただし、低い周波数の磁界は表皮深さが深くなって止めにくく、薄い膜では効きにくいので、鉄など透磁率の高い材料が有利になります(村田製作所)。

出典:編集部の計算と村田製作所「ノイズ対策基礎講座 第4章」をもとに AI(Claude)で作成
すき間と穴から漏れる
金属の筐体でも、ふたの合わせ目・すき間・穴から電磁波が漏れます。村田製作所は、すき間の長さが波長の2分の1になると共振して問題になり(例:12cm のすき間で約1.2GHz)、ねじの間隔は波長の20分の1程度にすると説明しています。樹脂に替えても、この合わせ目の問題はそのまま残ります(編集部の解説)。
出典:電磁波シールド材の設計法(技術シート No.99027、1999年)|大阪産業技術研究所、ノイズ対策基礎講座 第4章|村田製作所
置き換え先の候補
置き換え先は、樹脂の部品の表面に金属の膜を付ける方法(めっき・塗装・蒸着)、樹脂そのものを導電性にする方法、薄いシールド材を貼る・巻く方法に分けられます(編集部の整理)。

出典:塚田理研工業・プラスコート・タツタ電線・Bekaertをもとに AI(Claude)で作成
樹脂+シールドめっき:銅とニッケルの薄い膜
樹脂の部品の表面に、電気を使わない無電解めっきで銅とニッケルを付けます。塚田理研工業は、標準の構成を銅1.0〜2.5µm+ニッケル0.25〜1.5µm とし、100kHz〜10GHz をカバーするとしています。銅は電気をよく通してシールドの主役になり、ニッケルは銅のさびを防ぎます。めっきは、両面に付けるか片面だけかで費用と効きが変わります(同社)。前処理では、樹脂の表面を薬品で荒らしてからめっきを付けます。従来のクロム酸のエッチングは環境への負荷が大きく、ABS 以外の樹脂にめっきするのが難しいことが課題とされます(静岡県工業技術研究所)。
樹脂+導電塗装:内面に塗る
ニッケル・銀・銅などの金属の粉を混ぜた導電塗料を、樹脂の筐体の内面にスプレーで塗ります。導電塗料ドータイトの例では、銀の塗料は10µm で表面抵抗0.1Ω/□・シールド効果35〜80dB、ニッケルの塗料は50µm で1Ω/□・35〜60dB です。銀は効きが高い一方で高価で、ニッケルは安いが膜を厚くする必要があります。1984年の解説では、磁界のシールドは表面抵抗が低いほど大きく、塗料の注意点として、密着性、厚く塗ったときの樹脂の割れ(ソルベントクラック)を挙げています(電気化学)。
真空蒸着・スパッタ:真空の中で金属の膜を付ける
真空の槽の中で、金属を蒸発させたり(蒸着)、たたき出したり(スパッタ)して、部品やフィルムに薄い膜を付けます。マグネトロンスパッタで作った厚さ1µm の銅の膜は、KEC 法で800MHz の電界のシールド効果が77dB、磁界が61dB でした(エレクトロニクス実装学会誌、2008年)。広島県立西部工業技術センターの試験では、ガラスの板にスパッタした厚さ3µm 以上のニッケルの膜が、厚さ2mm のアルミ板と同じくらいのシールド効果でした。膜は薄くできますが、真空の槽に入る大きさの部品に限られ、バッチ式なので少量だと高くなるとされます(プラスコートの比較)。
導電性樹脂:樹脂に導電性のフィラーを混ぜる
樹脂にカーボンや金属の繊維・粉を混ぜて、樹脂そのものに電気を通す性質を持たせ、成形した部品をそのままシールドにします。ステンレスの繊維を混ぜる Bekaert は、シールド効果を30〜80dB とし、自動車で金属のダイカストの代わりに多く使われているとしています。積水テクノ成型は、ポリプロピレンを主な材料にした放熱と電磁波シールドの樹脂(開発品)で、表面抵抗10-1Ω、熱伝導率14W/(m・K) としています。1984年の試験では、カーボンや金属の粉・繊維を体積で25%混ぜたポリプロピレンで19〜40dB 以上(4GHz)でした。金属のフィラーを混ぜたものは密度が1.4〜2.9g/cm³ に上がっています(電気化学)。軽くするには、少ない量で効くフィラーを選ぶことが大切です(編集部の解説)。
シールドフィルム・導電テープ:薄いシールド材を貼る・巻く
銅箔やアルミ箔に粘着剤を付けたテープ、金属の薄い膜を付けたフィルムを、必要な所に貼ったり巻いたりします。タツタ電線の FPC 用のシールドフィルムには、総厚8µm(保護層5µm+シールド層0.3µm+異方導電接着剤3µm)の品番があります。FFC(平たいケーブル)用のフィルムは、銀の薄い膜(約0.1µm)で表面抵抗200mΩ/□、総厚29µm です。部品全体を作り替えずに足せるのが強みです(編集部の解説)。
出典:電磁波シールドめっきとは(コラム)|塚田理研工業、導電塗料ドータイト|macco、多重磁極マグネトロンスパッタ法により作製した Co 及び Cu 薄膜の電磁波シールド効果(2008年)|エレクトロニクス実装学会誌、電磁波シールド方法(1984年)|電気化学、多重磁極マグネトロンスパッタ装置の研究開発|広島県立西部工業技術センター、EVシフトに要求される欠陥レスで高密着な樹脂めっき作製(平成31〜令和2年度の研究成果事例)|静岡県工業技術研究所、EMI shielding in plastics|Bekaert、放熱・電磁波シールド樹脂成形品(イプロス)|積水テクノ成型、FPC 用シールドフィルム|タツタ電線、FFC 用シールドフィルム|タツタ電線、導電塗装とは|プラスコート、Y-Shield|ユケン工業、延伸可能な電磁波シールドフィルム(開発品)|麗光
公開されている値で比べる
候補ごとに、膜の厚さとシールド効果(dB)を、各社・公的機関が公開している値で並べました。
膜の厚さ
金属の筐体の壁が1mm(1,000µm)ほどなのに対し、めっきは1〜数µm、蒸着・スパッタは0.1〜数µm、導電塗装は10〜50µm、シールドフィルムは8〜80µm です。シールドの膜は、金属の板より2〜4桁薄いことがわかります(編集部の整理)。

出典:塚田理研工業・プラスコート・タツタ電線・ユケン工業・麗光・エレクトロニクス実装学会誌をもとに AI(Claude)で作成
シールド効果(dB)
公開されている値は、めっきで80〜110dB、スパッタの銅1µm で77dB、導電塗装で35〜80dB、導電性樹脂で30〜80dB ほどです。ただし、測り方・周波数・電界か磁界かがそろっていないので、目安として見ます。

出典:塚田理研工業・エレクトロニクス実装学会誌・ユケン工業・ドータイト・Bekaertをもとに AI(Claude)で作成
dB の読み方
シールド効果の dB は、エネルギー(電力)で言うと20dB で100分の1、40dB で1万分の1です(大阪産業技術研究所)。電界の強さ(振幅)で言うと20dB で10分の1、40dB で100分の1、60dB で1,000分の1になります(編集部の計算)。「99.99%遮断」は、エネルギーで40dB にあたります(電気化学)。同じ dB でも、振幅とエネルギーで「何分の1」が違うので注意します。dB の考え方は、技術の基礎知識「デシベル(dB)」でも解説しています。

出典:大阪産業技術研究所「電磁波シールド材の設計法」・電気化学(1984年)をもとに AI(Claude)で作成
出典:電磁波シールドめっきとは(コラム)|塚田理研工業、導電塗料ドータイト|macco、エレクトロニクス実装学会誌(2008年)、EMI shielding in plastics|Bekaert、FPC 用シールドフィルム|タツタ電線、電磁波シールド材の設計法|大阪産業技術研究所、電磁波シールド方法(1984年)|電気化学
計算例:重さを比べる
100cm²(10cm 角)の板で比べます。厚さ1mm の鉄の板は 100×0.1×7.87=78.7g、厚さ1mm のアルミの板は 100×0.1×2.70=27.0g です。厚さ2mm の ABS(密度1.05g/cm³)は21.0g で、そこに銅1µm+ニッケル0.25µm のめっきを片面に付けても、増えるのは約0.11g で、合計約21.1g(アルミの約78%)です(編集部の計算)。

出典:編集部の計算をもとに AI(Claude)で作成
この計算から、軽くなる量は、ほぼ樹脂の肉厚で決まることがわかります。めっきの金属はわずかです。樹脂を2mm にするとアルミ1mm より壁が厚くなるので、「薄く」したいときは、樹脂の肉厚をどこまで減らせるか(剛性)を一緒に考えます。めっきを付けたまま樹脂を1.5mm にできれば約15.9g(アルミの約59%)、1mm なら約10.6g(約39%)です(編集部の計算)。密度の考え方は、技術の基礎知識「比重・密度」で解説しています。
目的と置き換え先の比較表
行が置き換えの目的、列が置き換え先の候補です。◎は第一候補、○は有効、△は条件によって有効を表します。目的の行をクリックすると、理由と出典を書いたカードに移ります。
| 課題(症状) | 樹脂+ シールド めっき | 樹脂+ 導電塗装 | 真空蒸着・ スパッタ | 導電性 樹脂 | シールド フィルム・ 導電テープ |
|---|---|---|---|---|---|
| A筐体を軽くしたい | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| B薄くしたい・すき間に入れたい | ○ | △ | ○ | △ | ◎ |
| C高いシールド効果がほしい | ◎ | ○ | ○ | △ | ○ |
| D複雑な形・いろいろな樹脂に付けたい | ○ | ◎ | △ | ○ | △ |
| E試作・少量から始めたい・あとから足したい | ○ | ◎ | △ | △ | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
◎・○・△の理由と出典は、下の「目的ごとの選び方」の各カードに書いています。記号は、各社・公的機関が公開している値と解説をもとにした編集部の評価で、同じ目的の中での比較です。測り方と周波数がそろっていないため、dB の数値はそのまま比べられません。
目的ごとの選び方
目的(A〜E)ごとに、比べた結果、候補、置き換えるときの注意をまとめました。
筐体を軽くしたい
金属の筐体やシールドの板を、樹脂などに替えて軽くしたい。
- 比べた結果
- 金属の筐体を樹脂の筐体に替え、シールドは表面の薄い金属の膜にまかせると、重さはほぼ樹脂の重さで決まります。ユケン工業は、樹脂+めっきで鉄に比べて80%、アルミに比べて60%軽くなるとしています。塚田理研工業は、ポリカーボネートに銅1µm+ニッケル0.25µm のめっきで、30MHz〜1GHz で厚さ3mm のアルミと同じくらいのシールド効果としています。積水テクノ成型は、アルミなどの金属の部材を、放熱と電磁波シールドの機能を持つ樹脂に置き換える開発品を紹介しています。
- 候補
- 樹脂+シールドめっき(◎)鉄比80%・アルミ比60%軽くなる例
- 樹脂+導電塗装(○)樹脂の筐体の内面に塗る
- 真空蒸着・スパッタ(○)膜は1µm ほど
- 導電性樹脂(○)金属の部材を樹脂に置き換える開発品
- シールドフィルム・導電テープ(○)必要な所だけに貼る
樹脂は金属よりかたさ(剛性)が低いので、同じ強さにするには肉厚を厚くしたりリブを足したりします。そのぶん軽くなる量は減ります(編集部の解説)。剛性の考え方は、課題「薄く軽くすると強度が足りない」で解説しています。
薄くしたい・すき間に入れたい
基板と筐体のすき間や、曲がる配線の部分に、薄いシールドを入れたい。
- 比べた結果
- タツタ電線の FPC(曲がる基板)用のシールドフィルムは、総厚8µm(シールド層0.3µm)の品番があります。麗光は、フィルムに銅を0.1〜1.0µm 蒸着した、伸ばせるシールドフィルムを開発品として紹介しています。ユケン工業のシールドフィルム YS-FP は50〜80µm です。めっきは今ある樹脂の部品の表面に1〜数µm を付けるだけなので、部品の厚さはほとんど変わりません(塚田理研工業の構成から)。一方、導電塗装は膜厚が10〜50µm とやや厚くなり(プラスコート)、導電性樹脂は壁そのものなので、壁を薄くする方法ではありません(編集部の解説)。
- 候補
- シールドフィルム・導電テープ(◎)総厚8µm の FPC 用フィルムの例
- 真空蒸着・スパッタ(○)銅0.1〜1.0µm の蒸着フィルム
- 樹脂+シールドめっき(○)部品の表面に1〜数µm
- 樹脂+導電塗装(△)10〜50µm とやや厚い
- 導電性樹脂(△)壁そのものが材料
薄いフィルムやテープは、どこで接地(アース)につなぐかで効きが変わります。浮いたままのシールドは効きにくいので、接地の取り方を先に決めます(編集部の解説)。
高いシールド効果がほしい
規格の試験に通すため、または近くの機器を守るため、大きく減衰させたい。
- 比べた結果
- 塚田理研工業は、ASTM の目安として、銅1.0µm+ニッケル0.25µm のめっきで80〜100dB、銅2.5µm+ニッケル0.25µm で90〜110dB としています。九州電化は99.99%以上(0.1MHz〜6GHz)、ユケン工業は Y-Shield で広い範囲で80dB 以上とし、同社のグラフではシールドフィルム YS-FP が1,000MHz まで80dB を上回っています。スパッタの例では、厚さ1µm の銅の膜で800MHz の電界のシールド効果が77dB でした(エレクトロニクス実装学会誌、KEC 法)。導電塗料(ドータイト)は、銀10µm で35〜80dB、ニッケル50µm で35〜60dB です。導電性樹脂は、ステンレスの繊維を混ぜたもので30〜80dB(Bekaert)です。
- 候補
- 樹脂+シールドめっき(◎)80〜110dB の目安
- 真空蒸着・スパッタ(○)銅1µm で77dB(800MHz・電界)
- 樹脂+導電塗装(○)35〜80dB(銀)
- シールドフィルム・導電テープ(○)YS-FP が80dB を上回るグラフ
- 導電性樹脂(△)30〜80dB
dB の値は、測り方(KEC 法か遠方界か)・周波数・電界か磁界かで大きく変わります。カタログの値どうしを比べず、候補の材料を同じ方法で測って比べます。筐体にしたときの効きは、材料の値より合わせ目や穴で決まることが多いです(編集部の解説)。
複雑な形・いろいろな樹脂に付けたい
リブやボスの多い筐体、大きな部品、めっきが付きにくい樹脂に、シールドを付けたい。
- 比べた結果
- プラスコートは、導電塗装は多くの樹脂に1個から塗れ、複雑な形にも対応できるとし、素材ごとの密着の可否を表にしています(PE・PP は不可)。九州電化は、めっきは複雑な形・大きな物にも対応し、CFRP・GFRP にも付けられるとしています。一方、ABS 以外の樹脂にめっきするのは難しいとされ、前処理の研究が進められています(静岡県工業技術研究所)。真空蒸着は、真空の槽に入れて処理するバッチ式で、形によっては付かない所があり、多くの樹脂で下塗りが要るとされます(プラスコートの比較)。導電性樹脂は、成形で形そのものを作れます。
- 候補
- 樹脂+導電塗装(◎)多くの樹脂・複雑な形に1個から
- 樹脂+シールドめっき(○)複雑な形・大物・CFRP にも。樹脂の種類に制約
- 導電性樹脂(○)成形で形を作る
- 真空蒸着・スパッタ(△)付かない所が出る形がある
- シールドフィルム・導電テープ(△)打ち抜き・曲げで立体に合わせる
塗装もめっきも、付けたくない所(ねじ穴・外観面など)を隠すマスキングが要ります。マスキングの手間と治具の費用も比べます(編集部の解説)。
試作・少量から始めたい・あとから足したい
設計の途中や、ノイズの試験で問題が出たあとに、手早くシールドを足したい。
- 比べた結果
- プラスコートは、導電塗装を試作1個から量産まで受けています。五輪パッキングは、銅箔テープ・アルミテープを形に合わせて打ち抜き・曲げ加工し、安価で小ロットに対応できる材料もあるとしています。九州電化は、めっきの仕様の検討・試作・評価から量産まで一貫して受けています。真空蒸着は、バッチ式なので少量だと高くなるとされます(プラスコートの比較)。導電性樹脂は材料を替えることになるため、成形の条件と強さの確かめ直しが要ります(編集部の解説)。
- 候補
- 樹脂+導電塗装(◎)試作1個から
- シールドフィルム・導電テープ(◎)あとから貼れる。小ロットの材料も
- 樹脂+シールドめっき(○)試作・評価から量産まで
- 真空蒸着・スパッタ(△)少量だと高くなる
- 導電性樹脂(△)材料と成形の見直しが要る
あとから貼るテープは手軽ですが、量産では貼る位置のばらつきと剥がれが問題になります。試作で効きを確かめたら、量産の方法(めっき・塗装・打ち抜き品)に切り替えるかを決めます(編集部の解説)。
置き換えるときの注意
金属の筐体から樹脂+シールドに替えるときは、守りたい周波数と目標の dB を決め、候補の材料を同じ方法で測り、合わせ目と接地を設計し、筐体で試験する、という順に進めます。次の図は、公開情報をもとに編集部が整理した進め方です。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
合わせ目と接地(アース)を設計する
筐体のシールドの効きは、材料の dB より、ふたと本体の合わせ目で決まることが多いです。村田製作所は、筐体のつなぎ目は導電性のガスケットなどで確実に接触させ、ケーブルのシールドは一部だけをつなぐ「ピッグテール」ではなく全周でつなぐと説明しています。めっきや塗装の膜は、合わせ目の面にも付け、ねじやばねで接地につながるようにします(編集部の解説)。日本バンガードは、合わせ目のすき間をふさぐ導電性シリコーンガスケットを作っています。

出典:村田製作所「ノイズ対策基礎講座 第4章」と編集部の計算をもとに AI(Claude)で作成
めっき・塗膜の密着と剥がれ
1984年の解説では、めっきの密着が足りずに割れたり剥がれたりするとシールドの効きが下がり、剥がれた破片が配線に触れて事故になるおそれがあるとし、UL の規格は密着の強さを決めているとしています(電気化学)。めっきや塗装の剥がれの原因と対策は、課題「塗装・めっきが剥がれる」で解説しています。
シールド効果の測り方をそろえる
シート状の材料のシールド効果は、国内ではKEC 法がよく使われます。送信側と受信側の治具のあいだに材料をはさみ、材料があるときとないときの差をシールド効果とします(千葉県産業支援技術研究所)。KEC 法は発生源に近い所(近傍界)の評価で、電界用と磁界用の治具があり、製品の規格の試験(遠方界)とは結果が違うことがあります(同)。治具と材料の導通の取り方でも値が変わるとされます(同)。KEC関西電子工業振興センターは、KEC 法(500Hz〜1GHz)、GHz KEC 法(1〜6GHz)、拡張 GHz KEC 法(5〜18GHz)の試験を受けています。

出典:千葉県産業支援技術研究所・同・KEC関西電子工業振興センターをもとに AI(Claude)で作成
出典:ノイズ対策基礎講座 第4章|村田製作所、電磁波シールド方法(1984年)|電気化学、低周波向け磁界シールド測定用治具の開発(2024年)|千葉県産業支援技術研究所、複合材料の電磁波シールド性評価手法に関する検討(2022年)|千葉県産業支援技術研究所、シールド材試験|KEC関西電子工業振興センター、ウルトラバンシールド(イプロス)|日本バンガード
電磁波シールドを軽く・薄くする技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。めっき・塗装・蒸着・テープの加工の会社と、合わせ目のガスケット、シールド効果を測る試験の機関を挙げました。
プラスコート株式会社|樹脂の筐体の内面に塗る、導電塗装(ニッケル・銀銅・銀)
プラスコートとは
プラスコートは、京都府久世郡久御山町に本社がある塗装の会社です。電子機器などの樹脂の筐体の裏側(内面)に導電性のコーティングをして、電磁波を反射させる導電塗装を、試作1個から量産まで受けています。
プラスコートの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 塗料の種類 | ニッケル(変色が分かりにくい)、銀銅(ニッケルより導電性が高い)、銀(銀銅より導電性が高いが、接触すると変色しやすく高価)と、ガラス・PPS・PBT などに使える自社の塗料 |
| 膜厚 | ニッケルは基本膜厚20〜30µm、銀は5〜10µm。他の方式との比較では、導電塗装の膜厚は「やや厚くなる(10〜50µm)」としている |
| 塗れる素材 | ABS・PC・アクリル・PS は各塗料で可。PE・PP は不可(一部の自社塗料は PP に条件つき)、軟質塩ビには密着しないと表に書いている |
| マスキング | 治具を内製し、マスキングの技術を強みに挙げている |
プラスコートが解決できる課題
- 樹脂の筐体のまま、内面だけを導電性にしてノイズを止めたい
- 1個の試作から、塗装でシールドを試したい
- めっきが付きにくい樹脂や、部分的にだけシールドしたい筐体
公開されている実績
- 静脈認証装置・空間光電導装置の内面(ニッケル)、マスクフィットテスト装置の内面(銀銅)、MRI 用の生体情報モニターの内面(銀、素材 ABS)

出典:プラスコート「導電塗装とは」
出典:会社案内|プラスコート、導電塗装とは|プラスコート、ニッケル導電塗装|プラスコート、銀導電塗装|プラスコート
株式会社九州電化|樹脂や CFRP に直接付ける、電磁波シールドめっき
九州電化とは
九州電化は、福岡市東区に本社があるめっきの会社です。樹脂の表面に直接めっきをして電磁波を遮る「電磁波シールドめっき」を、仕様の検討・試作・評価から量産まで一貫して受けています。
九州電化の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| めっきの付け方 | 樹脂の表面に直接めっきを付ける。片面めっき・両面めっきを選べる |
| シールドの効き | 電磁波を99.99%以上遮断。0.1MHz〜6GHz で、電界・磁界の両方に効くとしている |
| 素材 | ABS・PC などの汎用プラスチック、PPE などのエンジニアリングプラスチック、CFRP・GFRP |
| 特長 | フィルムのように剥がれず、塗料のような膜厚のむらが出にくい、複雑な形や大きな物にも対応できるとしている |
画像は、記事の写真がページに埋め込まれていて出所を示して使えないため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。
九州電化が解決できる課題
- 金属の筐体を樹脂に替えて軽くし、シールドはめっきで保ちたい
- CFRP の部材や筐体に、シールドの機能を持たせたい
- 複雑な形・大きな樹脂部品の全面にシールドを付けたい
公開されている実績
- 人工衛星の電子部品の筐体(CFRP の加工品、500×500×50mm)

出典:九州電化「電磁波シールドめっき」をもとに AI(Claude)で作成
ユケン工業株式会社|めっき・フィルム・シートの電磁波シールド「Y-Shield」
ユケン工業とは
ユケン工業は、愛知県刈谷市に本社と工場がある表面処理の会社です。樹脂に付けるめっきの技術をもとに、電磁波シールド「Y-Shield」を、めっき・フィルム・シートの3つの形で展開しています。
ユケン工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| シールドの効き | KEC 法で測れる100kHz〜6GHz で高いシールド効果を確かめたとし、広い範囲で80dB 以上遮断するとしている |
| 軽さ | 樹脂+めっきで、鉄に比べて80%、アルミに比べて60%軽くなるとしている(同社の記載) |
| フィルム | 高機能シールドフィルム YS-FP は50〜80µmの薄さで、曲げても巻いても性能を保つとしている |
| 種類 | 特殊めっきタイプ(YS-PR・YS-HI・YS-GE・YS-UP)、フィルムタイプ(YS-FC・YS-FP)、シートタイプ(YS-SC・YS-SP) |
ユケン工業が解決できる課題
- 金属の筐体を樹脂に替えて軽くしたい
- 曲がる部分や薄いすき間に、シールドを入れたい
- 広い周波数で、高いシールド効果がほしい

出典:ユケン工業「電磁波シールドめっき Y-Shield」
出典:会社概要|ユケン工業、電磁波シールドめっき Y-Shield|ユケン工業、『Y-Shield』完全電磁波シールドのご案内(2025年)|ユケン工業
株式会社麗光|フィルムに銅を真空蒸着した、伸ばせるシールドフィルム(開発品)
麗光とは
麗光は、京都市右京区に本社がある、フィルムへの蒸着・コーティングの会社です。PET や PI などのフィルムに銅を真空蒸着した、伸ばしてもシールドの効果を保つ電磁波シールドフィルムを開発品として紹介しています。
麗光の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 膜と抵抗 | 銅の膜厚0.1・0.3・1.0µm で、表面抵抗率は2.0×10-1・8.0×10-2・1.7×10-2Ω/□(一定の条件で測った値で、保証値ではないとしている) |
| 伸ばしたとき | ミリ波などの高い周波数を遮り、50%伸ばしたあともシールド率約99%を保つとしている(26.5〜40GHz の測定) |
| ほかの使い方 | 銅箔の代わりや、めっきの下地(シード層)にも使えるとしている |
画像は、同社のサイトのポリシーで文書の許諾なしの複製・転載を禁じているため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。
麗光が解決できる課題
- 成形する前のフィルムにシールドを付け、曲面に沿わせたい
- ミリ波など高い周波数のノイズを、薄い膜で遮りたい

出典:麗光「延伸可能な電磁波シールドフィルム」をもとに AI(Claude)で作成
出典:事業所|麗光、延伸可能な電磁波シールドフィルム(Cu 蒸着・開発品)|麗光
株式会社五輪パッキング|銅箔テープ・アルミテープを形に合わせて打ち抜く・曲げる
五輪パッキングとは
五輪パッキングは、埼玉県入間市に本社がある、シートやテープの打ち抜き加工の会社です。銅箔テープ・アルミテープ・ノイズ吸収シートを、使う場所の形に合わせて打ち抜き、曲げて納めています。
五輪パッキングの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 扱う材料 | 銅箔テープ(銅を圧延して粘着剤を塗ったもの。導電性で電磁波を遮り、腐食に強い)、アルミテープ(軽く、表面の酸化被膜で腐食に強い)、ノイズ吸収シート(ポリエステルの不織布に金属の加工をしたもの) |
| 加工 | 材料を組み合わせた打ち抜き、用途に合わせた曲げ加工、指紋や油汚れのない打ち抜き |
| 提案 | 周波数・色・厚みの提案ができ、安価で小ロットに対応できる材料もあるとしている |
五輪パッキングが解決できる課題
- 基板や部品の一部だけを、薄いシールドで覆いたい
- あとからシールドを足したい・試作で効きを確かめたい

出典:五輪パッキング「シールド材加工」
出典:会社情報|五輪パッキング、シールド材加工|五輪パッキング
日本バンガード株式会社|合わせ目のすき間をふさぐ、導電性シリコーンガスケット
日本バンガードとは
日本バンガードは、神戸市西区にある、日本ジッパーチュービングと米国の Vanguard Products の合弁会社(2000年設立)です。筐体の合わせ目などのすき間をふさぐ、導電性シリコーンガスケットを作っています。
日本バンガードの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ウルトラバンシールド | 導電層と非導電層を押し出しで一体にした二層構造の導電性シリコーンガスケット。中空の形で相手の面に密着し、高い周波数で高いシールド効果があるとしている |
| 使える温度 | -40〜+200℃(静止状態)。RoHS に適合 |
| 加工 | 長さのカット、リングの加工に対応。5G・IoT 向けとしている |
画像は、同社のサイトの利用条件で無断の複製・改変などを禁じているため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。
日本バンガードが解決できる課題
- 樹脂の筐体のふたと本体の合わせ目から、ノイズが漏れる
- シールドと防水・防塵のシールを、1本のガスケットでまかないたい
公開されている実績
- 光トランシーバ、業務用カメラ、測定機器、無線機器、医療機器、半導体製造装置、通信機器、シールドルームなど

出典:日本バンガード「ウルトラバンシールド」(イプロス)をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社案内|日本バンガード、ウルトラバンシールド(イプロス)|日本バンガード
一般社団法人KEC関西電子工業振興センター|シート状の材料のシールド効果を測る KEC 法
KECとは
KEC関西電子工業振興センターは、京都府相楽郡精華町に本部と試験センターがある、電子機器の試験の機関です。自ら開発した「KEC 法」で、シート状の材料の電磁波シールド効果を測る試験を受けています。
KECの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| KEC 法 | 複雑な材料の加工なしに、短い時間でシート状の材料のシールド効果を評価できるとしている。500Hz〜1GHz |
| GHz KEC 法 | 1GHz〜6GHz |
| 拡張 GHz KEC 法 | 5GHz〜18GHz |
画像は、同センターのサイトの著作権の項で無断の転載・複製を禁じているため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。
KECが解決できる課題
- めっき・塗装・フィルムのシールド効果を、同じ方法で比べたい
- 材料メーカーのカタログの値を、自社の候補の材料で確かめたい

出典:KEC関西電子工業振興センター「シールド材試験」をもとに AI(Claude)で作成
出典:アクセス|KEC関西電子工業振興センター、シールド材試験(KEC 法)|KEC関西電子工業振興センター
選ぶ前に確かめる条件
シールドの方法を相談する前に、次のことを整理しておくと、候補の絞り込みと試作が進めやすくなります。
- 止めたいノイズの周波数と、目標のシールド効果(dB)
- 守る側か(外からのノイズ)、出さない側か(規格の試験)
- 電界か磁界か(モーターや電源の近くの低い周波数の磁界は、薄い膜では止めにくい)
- 筐体の樹脂の種類と、形(リブ・ボス・深い穴)、大きさ
- 合わせ目の構造と、接地(アース)の取り方
- 目標の重さと、壁の厚さ(剛性)
- 数量(試作・少量・量産)と、外観・色の決まり
関連する課題
この課題に関係する分野・技術・製品のページ
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月8日
