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精密鋳造(ロストワックス)・砂型鋳造(工程・精度・選び方)

鋳造は、溶かした金属を型に流し込んで固め、形をつくる方法です。

精密鋳造(ロストワックス)・砂型鋳造(工程・精度・選び方)
8件解決できる課題
7社紹介している企業
32点図と写真
28件出典

精密鋳造(ロストワックス)・砂型鋳造(工程・精度・選び方)

ワックスの模型のツリー、断面を見せたセラミックの鋳型に溶けた金属を注ぐ様子、鋳込んだ金属のツリー、羽根車の形の空洞がある上型・下型の砂型を作業台に並べたイラスト(AI で生成したイメージ)

コストダウン材料・部品・工法を置き換える開発・評価を速く確かに金属耐熱鋳造・鍛造産業機械・ロボット自動車・モビリティ航空・宇宙

鋳造は、溶かした金属を型に流し込んで固め、形をつくる方法です。そのうちロストワックス(精密鋳造)は、ワックスの模型をセラミックの型で包み、ワックスを溶かし出してから金属を注ぐ方法で、ステンレスや耐熱合金でも複雑な形を一体で作れます。砂型鋳造は、模型で砂に型を作って鋳込む方法で、型が安く、大きな鋳物や少量の生産に向いています。どちらも削り出しや溶接の部品を置き換える候補になりますが、鋳放しの精度や欠陥の出方が違います。

出典:ハヤカワロストワックス「ロストワックス精密鋳造」、九州精密機器「ロストワックスとは?」、新潟大学 工学部「第9章 鋳造」(実習資料、PDF)

このページでは、ロストワックスと砂型の工程、砂型の種類、精度・鋳肌・数量の比べ方、寸法公差(JIS B 0403)、代表的な欠陥と設計の注意をまとめ、得意分野の違う鋳造の会社を紹介します。アルミ・マグネシウムを金型で大量に作る方法は技術「ダイカスト」、金属粉末で小さな部品を作る方法は技術「粉末冶金・MIM」も参考になります。

精密鋳造・砂型鋳造の企業(早見表)

企業ロスト
ワックス
真空
鋳造
石膏
鋳造
砂型・
Vプロセス
フル
モールド
3D砂型鋳鉄
FC・FCD
木村鋳造所鋳鉄の大物のフルモールドと、3Dプリンターの砂型(静岡県)●●●●
キングパーツロストワックスの鉄・ステンレス・アルミ。最少5個から(広島県)●●
ヨネダアドキャスト真空溶解でニッケル・チタン・コバルト合金を精密鋳造(富山県)●●●
モールドモデル石膏鋳造でアルミの試作。5〜100個程度(山梨県)●
アスザックVプロセスで大型のアルミ鋳物(長野県)●
渡辺鋳造所鋳鉄 FC・FCD を1個から。独自の高機能鋳鉄(山形県)●●

●は、各社の公式サイトで扱いや事例を確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。

目次

この技術で解決できる課題

鋳造が効くのは、削り出しで材料のむだが多い、いくつもの部品を溶接・ねじで組んでいる、大きな部品を少しだけ作りたいといった困りごとです。キングパーツは、削り出しでは材料の約80%を削り取る形もあるのに対し、ロストワックスなら削り代は通常 0.5mm 程度としています。

削り出しの部品が高い、部品を溶接・ねじで組んでいる、ステンレス・耐熱鋼で複雑な形を作りたい、大きな鋳物を少しだけ作りたい、試作を量産に近い工法で確かめたいという困りごとと、鋳造でできることの対応図
図1 困りごとと、鋳造でできること
出典:このページの出典(ハヤカワロストワックス・九州精密機器・武杉製作所・木村鋳造所)をもとに AI(Claude)で作成

出典:キングパーツ「コストダウン事例」、武杉製作所「鋳造の種類」

課題この技術での解決課題ページ
工法を切り替えたい削り出し・溶接の部品を、形に近い鋳物に置き換える鋳造に替える
工程を減らせる設計にしたい精密鋳造で製品に近い形にし、削る・つなぐ工程を減らす成形で製品に近い形にする
部品点数を減らしたいいくつもの部品を一体の鋳物にする金属部品の一体化
試作回数を減らしたい砂型の3Dプリントなどで、量産に近い材料・工法で早く試す量産に近い材料・工法で試す
高温でも使える材料にしたい耐熱鋼・耐熱合金を鋳物にする耐熱金属
鉄をアルミ・樹脂・複合材に替えて軽くしたい大型の鋳物をマグネシウム合金の砂型鋳造で軽くするマグネシウム合金

右の列は、関係する課題ページの対策の節へのリンクです。

仕組み:型に溶けた金属を流し込み、固めて形をつくる

新潟大学の実習資料は、鋳造によれば複雑な形状のものや、大形のものなどを容易に、安価に作ることができるとし、鋳造法の例として砂型鋳造法(生型・乾燥型・ガス型など)、精密鋳造法(シェルモールド法・インベストメント法など)、遠心鋳造法、ダイカスト、低圧鋳造法を挙げています。ロストワックスは、このインベストメント法にあたります。

ロストワックス:ワックスの模型を溶かし出す

ハヤカワロストワックスは、工程を金型作成、ワックス模型作成、ワックス組立、鋳型製作、脱ろう、鋳型焼成、鋳造、型バラシ、切断、仕上げ、検査の順に挙げています。九州精密機器の解説によると、ワックスの模型を湯道につないだ「ツリー」をセラミック液に浸して層を重ね、高温の蒸気などでワックスを溶かし出し、焼成で固めた型に溶けた金属を注ぎ、冷えたら型を壊して取り出します。

ワックスのツリー、セラミックの殻で包んだ鋳型、ワックスを溶かし出して中が空洞になった鋳型、溶けた金属を注いだ鋳型の4つの絵と、金型作成から検査までの11の工程を並べた図
図2 ロストワックスの工程
出典:ハヤカワロストワックス・九州精密機器の工程の説明をもとに AI(Claude)で作成

出典:ハヤカワロストワックス「ロストワックス精密鋳造」、九州精密機器「ロストワックスとは?」

砂型:模型で砂に型を作り、上型・下型を合わせる

新潟大学の資料では、鋳物は、原型(模型)を作り、上型・下型と中子を作り、型を合わせて鋳込み、湯口・鋳ばりを取る流れで作ります。形と寸法の正しい鋳物にするには、製品の部分のほかに湯口・押し湯・上りなどの補助部分が要り、押し湯は、鋳物の収縮に対して湯口だけでは湯の供給が十分でないときに設けるものです。ガス抜き穴は、型の中の空気や、型から出る水蒸気・ガスを外へ逃がします。

上型と下型を分割面で合わせた砂型の断面に、湯口・湯道・押湯・中子・ガス抜きと、溶湯が入った製品の空洞を描いた模式図と、原型から製品までの7つの工程
図3 砂型鋳造の鋳型の各部と工程(模式図)
出典:新潟大学 工学部の実習資料「鋳造」をもとに AI(Claude)で作成

出典:新潟大学 工学部「第9章 鋳造」(実習資料、PDF)

種類と選び方:精度・鋳肌・数量・大きさで比べる

鋳造法は、作る数・大きさ・必要な精度と鋳肌・材料で選びます。アスザックの比較表では、ロストワックスの最適製品重量は 1〜10kg、最小抜け勾配は 0°、最小肉厚は 1.5mm、最適生産数は 1000以下です。砂型鋳造は 1kg〜、1〜5°、5mm、1〜100 で、大きな鋳物は Vプロセス(5〜300kg)などの砂型が受け持ちます。

Vプロセス、砂型鋳造、金型鋳造、ロストワックス、ダイカストの最適製品重量、最小抜け勾配、最小肉厚、最適生産数、型費を並べた表
図4 鋳造法の比較(重さ・抜き勾配・肉厚・数・型費)
出典:アスザック アルミ事業部の鋳造法の比較表をもとに AI(Claude)で作成

出典:アスザック アルミ事業部「Vプロセス鋳造」

鋳造法寸法精度(±mm)表面粗さ Ra(µm)向いている場面
砂型鋳造0.5〜1.525〜50大物・少量。型が安く早い
シェルモールド0.25〜0.7512.5〜25精度が要る量産(金型代が高い)
ロストワックス0.1〜0.53.2〜12.5複雑な形の小〜中型。鋼・耐熱合金も
金型鋳造0.05〜0.251.6〜6.3アルミなどの量産
遠心鋳造0.5〜1.06.3〜12.5管・リングなど回転体

寸法精度と表面粗さは BANTEC の比較表の値(加工会社の一般的な目安で、条件は書かれていません)。向いている場面の列は、武杉製作所・アスザックの記述をもとに編集部が整理したものです。遠心鋳造の場面は編集部の補足です。

砂型鋳造、シェルモールド、遠心鋳造、ロストワックス、金型鋳造の寸法精度(±mm)と表面粗さRa(µm)の範囲を並べた横棒グラフ
図5 鋳造法ごとの寸法精度と鋳肌の粗さ(目安)
出典:BANTEC「鋳物の加工種類と精度分類」の比較表をもとに AI(Claude)で作成

出典:BANTEC「鋳物の加工種類と精度分類」、武杉製作所「鋳造の種類」、アスザック アルミ事業部「Vプロセス鋳造」

砂型の種類:生型・自硬性・シェルモールド・フルモールド

武杉製作所は、生型は低コストで量産できるが鋳肌が粗く寸法精度は劣る、自硬性鋳型は鋳肌がきれいだが気温や湿度の影響を受けやすく管理が難しい、シェルモールドは寸法精度が高いが金型代が高い、フルモールドは納期とイニシャルコストを抑えられ、単品・小ロットに向くと整理しています。新潟大学の資料は、生型は工程が少なく能率が良いが、砂の水分が湯にふれて水蒸気になるので、逃がす工夫が要るとしています。

生型、ガス硬化性鋳型、自硬性鋳型、シェルモールド、フルモールドの5つのカードに、長所と短所を並べた図
図6 砂型の種類と、長所・短所
出典:武杉製作所「鋳造の種類」、新潟大学の実習資料をもとに AI(Claude)で作成

出典:武杉製作所「鋳造の種類」、新潟大学 工学部「第9章 鋳造」(実習資料、PDF)

数量と型の費用:ロストワックスは数百〜数千個

プロテックジャパンは、ロストワックスは数百から数千個程度で、高い精度が求められる場合に最も高いコストパフォーマンスを発揮するとし、数万個単位の大量生産ならダイカストのほうが有利、型を安く早く準備できるのは砂型鋳造としています。大きな平らな面を持つ厚い板状の部品は凝固のときに「ひけ」が出やすく、複雑すぎる内部の中空は、中に詰めた耐火物を後の工程で完全に取り除かなければならないので慎重な判断が要るとしています。

フルモールド、砂型、ロストワックス、シェルモールド、ダイカストの向いている数量の範囲を横棒で並べた目安の図
図7 数量と、向いている鋳造法(目安)
出典:プロテックジャパン・武杉製作所・アスザックの記述をもとに AI(Claude)で作成

出典:プロテックジャパン「ロストワックス製法のデメリット」、武杉製作所「鋳造の種類」、アスザック アルミ事業部「Vプロセス鋳造」

使う場面ごとの選び方

使う場面よく使われる鋳造法選ぶときのポイント
削り出し・溶接の小〜中型部品を置き換えるロストワックス数百〜数千個か(プロテックジャパン)。合わせ面・軸穴は削る前提で(九州精密機器)
ステンレス・耐熱鋼の複雑な部品ロストワックス炭素鋼・ステンレス鋼・低合金鋼・耐熱鋼などに対応(九州精密機器)
ニッケル基・チタンなどの特殊な合金真空溶解の精密鋳造真空鋳造炉の有無。会社によって扱える合金が違う
工作機械のベッドなど、鋳鉄の大物砂型(フルモールドなど)重さ・大きさに合う鋳枠と設備があるか
アルミの試作を量産に近い形で石膏鋳造・砂型(3Dプリンターの砂型)数・納期・寸法の精度
建材など大型のアルミ鋳物Vプロセス肉厚と大きさ、月に何個作るか(アスザック)

鋳造法とポイントの列は、このページの出典と各社の公開情報をもとに編集部が整理したものです。

自動車、産業機械、航空宇宙、医療機器、工作機械・エンジン、大物・少量の6つの場面と、使われる部品をまとめたカード
図8 精密鋳造・砂型鋳造が使われる場面
出典:九州精密機器の解説、木村鋳造所の製品例をもとに AI(Claude)で作成

出典:九州精密機器「ロストワックスとは?」、木村鋳造所「フルモールド鋳造法」

置き換え:削り代と部品の一体化

キングパーツは、ロストワックスに置き換えると、マシニング加工を大幅に減らせ、ねじ止めや溶接構造、ばね掛けやピンなど多くの部品を一体化した事例があるとしています。一体化の効果として、部品管理費と組立工程の削減、積み重なる誤差がなくなって精度が安定すること、ねじ止め部分の強度アップを挙げています。

出典:キングパーツ「コストダウン事例」

向いている条件と注意点

鋳造が向いている条件

  • 形が複雑で、削り出すと材料のむだが多い
  • いくつもの部品を一体にしたい
  • ステンレス・耐熱鋼など削りにくい材料(ロストワックス)
  • 大きい・重い部品を少しだけ作る(砂型)
  • 形に合わせて肉厚を変えたい(鋳物の形の自由度)

注意点

  • 鋳放しの精度は切削に及ばない。合わせ面・軸穴は削る
  • 引け巣・ガス欠陥などの内部の欠陥が出ることがある
  • 型の費用と、最初の試作までの日数
  • ロストワックスは大型品・平らで厚い板でひけが出やすい
  • 複雑すぎる中空は、中の耐火物を取り除くのが難しい

この一覧は、このページの出典(九州精密機器・プロテックジャパン・エンジニアのための生産技術)をもとに編集部が整理したものです。

よくある欠陥:引け巣とガス欠陥

エンジニアのための生産技術は、引け巣は液体から固体になるときに体積が減り、最後に固まる厚い所に溶湯の補給が届かないとできるとし、押湯と冷やし金で最後に固まる所を製品の外へ移す(指向性凝固)ことを対策に挙げています。ガス欠陥は、砂の粘結剤や水分が溶湯の熱で分解したガスが原因で、ガス抜きの穴を増やします。マルサン木型製作所は、引け巣の対策として押し湯からの補給、厚肉部を作らず肉厚を均一にすること、冷やし金を挙げています。

引け巣、ガス欠陥、砂かみ・すくわれ、のろかみ、湯回り不良・湯境・湯じわ、割れ・ひずみの6つの欠陥について、主な原因と対策の例を並べた表
図9 代表的な鋳造欠陥と、原因・対策
出典:エンジニアのための生産技術・マルサン木型製作所の解説をもとに AI(Claude)で作成

出典:エンジニアのための生産技術「砂型鋳造の欠陥と対策」、マルサン木型製作所「鋳造欠陥の種類と原因」

押湯がなく厚い所の中に引け巣ができた鋳物と、押湯と冷やし金で固まる順番をつくり、引けを押湯の中に移した鋳物を左右に並べた模式図
図10 引け巣:最後に固まる所を、押湯へ移す(模式図)
出典:エンジニアのための生産技術・新潟大学の実習資料をもとに AI(Claude)で作成

出典:エンジニアのための生産技術「砂型鋳造の欠陥と対策」、マルサン木型製作所「鋳造欠陥の種類と原因」

寸法公差(JIS B 0403)と図面の見方

鋳造品の寸法公差は、JIS B 0403 の公差等級 CT(CT1〜16)で決めます。長期間製造する鋳放し鋳造品の表では、砂型の手込めは鋳鋼・鋳鉄で CT11〜14、機械込めとシェルモールドは CT8〜12、軽金属は手込め CT9〜12、機械込め CT7〜9 です。基準寸法 63mm を超え 100mm 以下の鋳造公差(全幅)は、CT7 で 1.1mm、CT9 で 2.2mm、CT11 で 4.4mm、CT13 で 9mm です。肉厚には1等級大きい公差を当てます。太陽パーツの FAQ は、一般的な寸法公差を、ロストワックスは CT6〜7、砂型鋳造は CT9〜12 としています。

JIS B 0403の砂型手込め・機械込めとシェルモールドの公差等級の表と、基準寸法63超100以下・160超250以下のCT6からCT13の鋳造公差を並べた棒グラフ
図11 鋳造品の寸法公差:公差等級 CT(JIS B 0403)
出典:JIS B 0403:1995(NBK の抜粋)と太陽パーツの FAQをもとに AI(Claude)で作成

出典:NBK(鍋屋バイテック会社)「鋳造品の寸法公差 JIS B 0403:1995 より抜粋」(PDF)、太陽パーツ ダイカスト鋳造コストダウンNavi「よくある質問(寸法公差)」

項目見方
材料記号ステンレス鋳鋼品(JIS G 5121、SCS13 など)、ねずみ鋳鉄品(JIS G 5501)、球状黒鉛鋳鉄品(JIS G 5502)など、鋳物の規格の記号で書く
寸法公差普通公差は JIS B 0403 の CT で指示。厳しい所だけ個別に公差を書く
鋳放し面と加工面どの面を削るか(削り代)、どこを鋳肌のまま使うか
鋳肌の粗さ鋳造法で大きく違う(目安は砂型 Ra25〜50µm、ロストワックス Ra3.2〜12.5µm。BANTEC)
欠陥の許容巣・介在物をどこまで許すか、どの検査で確かめるか

材料記号の例はヨネダアドキャストの材質一覧から。見方の列は、このページの出典をもとに編集部が整理したものです。

材料記号、寸法公差、鋳放し面と加工面、鋳肌の粗さ、欠陥の許容、型の費用と持ち主の6つの項目と、それぞれの見方を並べた表
図12 図面・見積もりで確かめる項目
出典:このページの出典(JIS B 0403・ヨネダアドキャストの材質一覧・BANTEC)をもとに AI(Claude)で作成

出典:ヨネダアドキャスト「事業案内」、NBK(鍋屋バイテック会社)「鋳造品の寸法公差 JIS B 0403:1995 より抜粋」(PDF)、BANTEC「鋳物の加工種類と精度分類」

会社の公差表は、寸法ごとに見る

ハヤカワロストワックスは、ロストワックスの寸法公差を 0〜25mm で ±0.25mm、25〜50mm で ±0.4mm、50〜100mm で ±0.8mm、100mm 以上で ±1%、角度は ±1° としています。九州精密機器は、一般的なロストワックスの寸法公差を ±0.5%程度とし、高い精度が要る所(接合面・摺動部・軸穴など)は鋳造のあとの機械加工が必須としています。会社や資料で値の書き方が違うので、見積もりのときに寸法ごとの公差を確かめます(編集部)。

出典:ハヤカワロストワックス「ロストワックス精密鋳造」、九州精密機器「ロストワックスとは?」

設計と発注の注意(形・寸法・数)

  1. 肉厚をそろえる厚い所は引け巣のもと。肉の急な変化を避ける
  2. 削る所を決めておく合わせ面・軸穴は削り代を残す
  3. 数と型の費用で工法を選ぶ試作・少量・量産で向く鋳造法が違う

この3点は、このページの出典をもとに編集部が整理したものです。

形の注意:肉厚・隅の R・抜き勾配

新潟大学の資料は、木型の寸法は、固まるときの収縮分、仕上げに必要な仕上しろ、型から抜きやすくする抜けこう配、面取り、隅の Rなどを考えて決め、収縮分は寸法を何%か大きくした物差し(伸尺)で見込むとしています。マルサン木型製作所は、寸法不良の原因に設計段階の収縮率の誤りを挙げています。抜き勾配は、アスザックの表でロストワックスが 0°、砂型が 1〜5° です。

肉厚をそろえる、隅のRと面取り、抜き勾配、削り代を残す、縮む分を見込む、中空の耐火物を取り出せるかの6つのカード
図13 鋳物の設計で気をつけること
出典:新潟大学の実習資料・マルサン木型製作所・プロテックジャパン・アスザックをもとに AI(Claude)で作成

出典:新潟大学 工学部「第9章 鋳造」(実習資料、PDF)、マルサン木型製作所「鋳造欠陥の種類と原因」、アスザック アルミ事業部「Vプロセス鋳造」、プロテックジャパン「ロストワックス製法のデメリット」

湯回り不良とひずみ:薄すぎる肉に注意

マルサン木型製作所は、湯回り不良・湯境・湯じわの原因に、充填時間が長い、鋳込み温度が低い、薄肉、ガス抜きの設計の不足、湯口の形の不適切を挙げ、肉厚・湯口の形・鋳込み速度の見直しを対策にしています。歪みは残留応力が原因で、肉厚が薄いほど生じやすいので、鋳造のあとの歪み取りの工程が要るとしています。薄くできる限界は工法と面積で変わり、キングパーツのロストワックスでは、100×100mm の面で鉄系・ステンレス 2.0mm、アルミ 1.5mm です。

出典:マルサン木型製作所「鋳造欠陥の種類と原因」、キングパーツ「ロストワックスの大きさ」

相談する前に整理すること

鋳物の製作を相談するときは、次の点を整理しておくと話が早く進みます(編集部が整理した項目です)。

形と大きさ、材料、数、精度、今の作り方、品質、後加工、型の8項目のチェック表
図14 鋳物を相談する前に整理すること
出典:このページの出典をもとに AI(Claude)で作成
  • 形と大きさ(図面・3D データ、最大寸法、重さ)
  • 材料(鋼・ステンレス・耐熱合金・鋳鉄・アルミ・銅合金など。規格の記号)
  • 数(試作・量産の数、年間の数、納期)
  • 精度(公差を厳しくしたい所、削る面)
  • 今の作り方(削り出し・溶接・組立品からの置き換えか)
  • 品質(許せる巣・欠陥、検査・ミルシートの要否)
  • 後加工(機械加工・熱処理・表面処理まで頼むか)
  • 型(型の費用の考え方、持ち主)

企業紹介(精密鋳造・砂型鋳造技術)

ロストワックス、真空溶解の精密鋳造、石膏鋳造、Vプロセス、フルモールドと3Dプリンターの砂型、鋳鉄の砂型鋳造まで、得意分野の違う会社を紹介します。掲載は各社の公開情報にもとづきます。

企業ロスト
ワックス
真空
鋳造
石膏
鋳造
砂型・
Vプロセス
フル
モールド
3D砂型鋳鉄
FC・FCD
木村鋳造所鋳鉄の大物のフルモールドと、3Dプリンターの砂型(静岡県)●●●●
キングパーツロストワックスの鉄・ステンレス・アルミ。最少5個から(広島県)●●
ヨネダアドキャスト真空溶解でニッケル・チタン・コバルト合金を精密鋳造(富山県)●●●
モールドモデル石膏鋳造でアルミの試作。5〜100個程度(山梨県)●
アスザックVプロセスで大型のアルミ鋳物(長野県)●
渡辺鋳造所鋳鉄 FC・FCD を1個から。独自の高機能鋳鉄(山形県)●●

●は、各社の公式サイトで扱いや事例を確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。

株式会社木村鋳造所|鋳鉄の大物をフルモールドで。試作は3Dプリンターの砂型で

木村鋳造所とは

静岡県駿東郡清水町に本社を置く鋳造の会社です(1927年創業、従業員856名)。発泡スチロールの模型を使うフルモールド鋳造法と、3Dプリンターで砂型を作る試作を行っています。

木村鋳造所のフルモールド鋳造法のページに載っている、発泡スチロールの模型を削り出す大型のNC加工機が工場に並ぶ写真
木村鋳造所の、発泡スチロールの模型を削る NC 機の工場(出典:木村鋳造所)

木村鋳造所の得意技術

技術内容
フルモールド鋳造ねずみ鋳鉄(FC)・ダクタイル鋳鉄(FCD)は最大40トン、鋳鋼は3トンまで。鋳枠は 8,600×3,800mm など。模型を削る NC 機を40台以上保有
3Dプリンターの砂型(DMP)積層機のボックスサイズ 1,800×1,000×700mm、積層厚さ 240µm。鋳物の製作は通常納期7日から(試作品目・工事内容による)
材質と精度FC・FCD・耐熱鋳鉄・ステンレス鋳鋼(SCS)・耐熱鋳鋼(SCH)・アルミ(AC)・銅合金(CAC)。寸法精度は鋳鉄 CT7〜9、アルミ・銅合金 CT6〜8 としている

木村鋳造所が解決できる課題

  • 工作機械のベッドなど、数トンの鋳鉄の大物を作りたい
  • 鋳物の試作を、木型・金型を作らずに早く作りたい
  • 鋳物の形を、量産の前に確かめたい

公開されている実績・用途

  • ベッド(FC300、3,500kg など)、コンプレッサーケーシング(FCD450、12,000kg)、ディーゼルエンジンブロック(FCD450、7,500kg)

出典:木村鋳造所「会社概要」、木村鋳造所「フルモールド鋳造法」、木村鋳造所「3Dプリンター砂型(DMP)」

キングパーツ株式会社|ロストワックスの鉄・ステンレス・アルミを、最少5個から

キングパーツとは

広島県福山市に本社を置く、ロストワックス精密鋳造の会社です(1964年設立、従業員317名)。

キングパーツのロストワックスで作れる大きさと重さ、面積ごとの最小肉厚の表と、削り出しで材料の約80%を削る形と、削り代0.5mm程度のロストワックスを比べた図
図15 キングパーツのロストワックスの大きさ・薄さと、削り出しとの違い
出典:キングパーツ「大きさ」「コストダウン事例」「5つの強み」をもとに AI(Claude)で作成

キングパーツの得意技術

技術内容
大きさと薄さ5mm 程度から 750×500×400mm 程度まで。最大の重さは鉄系 30kg、アルミ系 10kg。100×100mm の面で鉄系 2.0mm・アルミ 1.5mm まで薄くできるとしている
材質炭素鋼・低合金鋼・耐熱鋼、ステンレス(オーステナイト系・マルテンサイト系など)、アルミ合金、銅合金。真空鋳造炉でニッケル基・コバルト基合金
小ロットと短納期最少5個から。金型を100%自社で作り、初回の試作は最短3週間。コストダウンの実績は30,000点としている

キングパーツが解決できる課題

  • 削り出しの部品を、削る量の少ない鋳物に置き換えたい
  • ねじ止め・溶接で組んでいる部品を一体にしたい
  • 少ない数から、ロストワックスを試したい

出典:キングパーツ「会社概要」、キングパーツ「ロストワックスの大きさ」、キングパーツ「対応材質」、キングパーツ「5つの強み」、キングパーツ「コストダウン事例」

株式会社ヨネダアドキャスト|真空溶解で、ニッケル・チタン・コバルト合金を精密鋳造

ヨネダアドキャストとは

富山県高岡市の精密鋳造の会社です(1965年設立)。1987年に純チタン・チタン合金などの精密鋳造品の製造を始め、2002年に ISO9001 の認証を取得しています。

石灰のるつぼで金属を真空溶解する模式図と、鋳造できる合金の例、セラミックシェル中子と3Dプリンターの模型の工夫をまとめた図
図16 ヨネダアドキャストの石灰るつぼの真空溶解と、型の工夫
出典:ヨネダアドキャスト「事業案内」「コア技術」をもとに AI(Claude)で作成

ヨネダアドキャストの得意技術

技術内容
石灰るつぼの真空溶解石灰(カルシア)のるつぼを自社で作り、高周波真空溶解に使う。インコネル 713C・738LC 相当、ハステロイC 相当、チタン合金、TiAl、医療用 Co-Cr-Mo 合金、純クロムなどを鋳造
セラミックシェル中子溶融シリカやアルミナのスラリーを成形・焼成した中子を自社で作り、羽根車のような内部の複雑な形を鋳造
3Dプリンターの模型積層造形のモデルをろう型の代わりにして、小ロット・短納期の鋳造品にも対応。水ガラスを炭酸ガスで固めた砂型で、ステンレス・耐熱鋼の砂型鋳造も

ヨネダアドキャストが解決できる課題

  • ニッケル基・コバルト基の耐熱合金やチタンで、複雑な形を作りたい
  • 羽根車のように中が入り組んだ形を、精密鋳造で作りたい
  • 新しい合金を少しだけ溶かして試したい(同社はインゴットの委託溶解・鋳造も行う)

出典:ヨネダアドキャスト「会社概要」、ヨネダアドキャスト「事業案内」、ヨネダアドキャスト「コア技術」

有限会社モールドモデル|石膏鋳造で、アルミの試作を5〜100個程度

山梨県都留市の、石膏鋳造の会社です(1997年に石膏鋳造の専業として設立)。

モールドモデルの石膏鋳造のページに載っている、細いピンと薄い壁が並ぶアルミの鋳物の写真
モールドモデルの石膏鋳造のアルミ部品(出典:モールドモデル)

モールドモデルの得意技術

技術内容
石膏鋳造最大外形寸法 600×350×200mm 程度。アルミ合金(AC2B・AC4C・AC7A など)、マグネシウム合金、亜鉛合金、ダイカスト用の ADC 材
数量の目安寸法・形状で異なるが、コストパフォーマンスの高いレンジは 5〜100個程度としている
寸法公差25mm 以下 ±0.1mm、50〜75mm ±0.2mm、100〜150mm ±0.3mm など、寸法区分ごとの公差を公開

モールドモデルが解決できる課題

  • 量産はダイカストの部品を、量産の前に同じアルミ合金で試作したい
  • ヒートシンクのような薄い壁・細いピンの形を鋳物で作りたい

公開されている実績・用途

  • ヒートシンク、バルブボディ、工作機アーム、カム部品、球状歯車、コントローラーカバー

出典:モールドモデル「会社概要」、モールドモデル「石膏鋳造」

アスザック株式会社|Vプロセスで、大型のアルミ鋳物を

アスザックとは

長野県上高井郡高山村に本社を置く会社です(1946年設立)。アルミ事業部で、Vプロセスによるアルミの建材・エクステリアの鋳物を手がけています(鋳造ラインはベトナムの子会社)。

アスザックのVプロセス鋳造のページに載っている、網の目のように抜けた薄いアルミ鋳物の鋳肌を斜めから写した写真
アスザックの Vプロセスのアルミ鋳物の鋳肌(出典:アスザック)

アスザックの得意技術

技術内容
Vプロセス粘結材を含まない流動性の良い砂を、微振動で均一に充填する鋳造法。抜き勾配は 0.5〜1度で、ほかの砂型鋳造法の 2〜3度より小さいとしている
大きさと肉厚鋳造できる目安は最大 5,800×2,000×270mm。最薄肉厚は 1m² まで 6mm 以上、1〜2m² は 7mm 以上、2m² 以上は 8mm 以上
型の費用比較表では型費 15〜60万円。月に100個程度なら、金型に比べて型の償却費を抑えられるとしている

アスザックが解決できる課題

  • 大きく薄いアルミの鋳物を、少ない数で作りたい
  • 鋳肌をそのまま外観に使いたい(同社は鋳肌の良さで追加の仕上げを減らせるとしている)

出典:アスザック「会社概要」、アスザック アルミ事業部「Vプロセス鋳造」

有限会社渡辺鋳造所|鋳鉄 FC・FCD を1個から。綱車の材質を FCVP に替えた例も

渡辺鋳造所とは

山形県山形市の、鋳鉄の機械鋳物の会社です(1900年創業、ISO9001 認証)。産業機械、油空圧部品、昇降機用の耐摩耗鋳造品を主に作っています。

渡辺鋳造所のFCVPのページに載っている、エレベーターの概略図、綱車の溝の形(30°Y溝)、FCD700とFCVPのシーブの磨耗量を運転時間で比べたグラフを並べた図
渡辺鋳造所の FCVP の説明図(エレベーターの概略・綱車の溝・FCD700 と FCVP の磨耗の比較)(出典:渡辺鋳造所)

渡辺鋳造所の得意技術

技術内容
FC・FCD の多種変量1個から1,000個/ロット(サイズ・形状による。試作から対応)。手のひらサイズから φ1500mm のエレベーターの滑車くらいまで。FC は ~600kg/個、FCD は ~450kg/個
FCVP全パーライト系芋虫状黒鉛鋳鉄。強度 400〜800N/mm²、硬度 Hs38〜45。球状黒鉛鋳鉄に対し切削効率30%向上、耐摩耗性は球状黒鉛鋳鉄と同等としている

渡辺鋳造所が解決できる課題

  • 鋳鉄の部品を、試作の1個から作りたい
  • 鋳鉄の部品の削る手間と摩耗を両方減らしたい

公開されている実績・用途

  • エレベーター用の綱車(シーブ)の材質を FCD700 から FCVP にし、鋳造歩留まり・機械加工性・耐摩耗性が良くなり、大幅なコストダウンを達成したとしている

出典:渡辺鋳造所「会社概要」、渡辺鋳造所「FC・FCD」、渡辺鋳造所「FCVP(全パーライト系芋虫状黒鉛鋳鉄)」

使われる製品・事例

九州精密機器は、ロストワックスの用途として、自動車部品(ターボチャージャー)、産業機械(バルブ、ポンプ)、医療機器(人工関節)、航空機部品を挙げています。木村鋳造所は、フルモールド鋳造の製品例として工作機械のベッド・コラム、エンジンブロック、コンプレッサーケーシング、風力発電用の鋳物を公開しています。

出典:九州精密機器「ロストワックスとは?」、木村鋳造所「フルモールド鋳造法」

出典・確認日

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。

情報の確認日:2026年10月7日 本ページの内容は一般的な情報で、実際の精度・品質・費用・納期は、形・材料・数量・鋳造する会社により異なります。

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