マグネシウムは実用金属の中で最も軽い金属で、その合金がマグネシウム合金です。構造材料の AZ31 の比重は 1.78 で、アルミニウムの約3分の2、鉄の約4分の1です(大阪富士工業)。軽さに加えて、振動を吸収する力(減衰能)や電磁波シールド性、切削性のよさもあり、ノートパソコンやカメラの筐体、自動車の部品などに使われています。一方で、錆びやすい・燃えやすい・常温で曲げや絞りがしにくいことが弱点とされ(山梨県工業技術センター)、表面処理や切粉の扱い、温めて加工する(温間加工)といった準備が要ります。
出典:マグネシウム合金の特性|大阪富士工業、マグネシウム合金部品の耐食性向上に関する研究|山梨県工業技術センター
このページでは、マグネシウム合金の性質をアルミ・チタン・ステンレスと比べ、合金の記号と種類(展伸材とダイカスト用)、選び方、錆び・燃えやすさへの対策、削る・曲げるときの注意をまとめ、材料・成形・加工・表面処理の得意分野が違う会社を紹介します。ダイカストの工法そのものは技術「ダイカスト(アルミ・マグネシウム)」で扱っています。
マグネシウム合金の企業(早見表)
| 企業 | 材料 (板・押出・引抜) | 射出成形 (チクソ) | 切削 | 曲げ・ 引抜 | 表面 処理 | 難燃 合金 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本金属AZ31B・LZ91 の圧延材(板・帯)と温間プレスの支援(東京都) | ● | |||||
| 不二ライトメタルAZ31B などの押出材と、難燃性・耐熱合金(熊本県) | ● | ● | ||||
| 藤岡エンジニアリングチクソモールディングと機械加工・塗装の一貫生産(岡山県) | ● | ● | ● | |||
| マクルウ棒・管の冷間引抜、曲げ・溶接の試作(静岡県) | ● | ● | ||||
| サンブライトマグネシウム製品の切削専用棟と化成処理・塗装(福島県) | ● | ● | ||||
| 堀金属表面処理工業クロムを使わない陽極酸化と導電性陽極酸化(静岡県) | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いや事例を確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
この技術で解決できる課題
マグネシウム合金が効くのは、鉄やアルミの部品・筐体をもっと軽くしたい、薄くするとたわむ、振動を早く止めたいといった困りごとです。錆びやすさ・燃えやすさ・加工のしにくさへの対策が要るので、課題ページでは、アルミ・樹脂・CFRP と比べる候補の一つとして出てきます。

出典:このページの出典(大阪富士工業・山梨県工業技術センター)をもとに AI(Claude)で作成
| 課題 | この技術での解決 | 課題ページ |
|---|---|---|
| 鉄をアルミ・樹脂・複合材に替えて軽くしたい | アルミよりさらに軽いマグネシウム合金に替える(錆び・燃えやすさの対策とセットで) | マグネシウム合金 |
| 薄く軽くすると強度が足りない | 軽い材料で板を厚くして、かたさを保ったまま軽くする | 材料を替える |
| 錆びる・腐食する | 化成処理・陽極酸化などで表面を守る | めっき・化成処理で表面を守る |
| 部品点数を減らしたい | ダイカスト・チクソモールディングで、複雑な形を一体で作る | 金属の一体成形 |
右の列は、関係する課題ページの対策の節へのリンクです。
仕組み:軽さ・かたさ・熱の性質
大阪富士工業の比較表(代表値)で、マグネシウム合金 AZ31 の密度は 1.78、AZ91 は 1.81 で、アルミ合金 5052-H32 の 2.68、純チタンの 4.51、SUS304 の 8.03 より小さい値です。ヤング率は AZ31・AZ91 とも 45GPa で、アルミ合金(70GPa)の約3分の2です。線膨張係数は AZ31 で 26.8×10⁻⁶ と、アルミ合金の 23.8×10⁻⁶ より少し大きいので、鉄やチタンの部品と組み合わせるときは、温度による伸びの差に注意します。

出典:大阪富士工業「各種材料との比較」の表をもとに AI(Claude)で作成
熱伝導率は同社の表の単位(cal/cm²/℃/cm)のまま並べました。値は代表値で、保証値ではありません(同社)。
軽くて強い:比強度
同社の機械的性質の表で、引張強度を比重で割った比強度は、AZ31 の圧延材が 163、AZ61 の圧延材が 178 で、アルミ合金 A5052 の圧延材(109)より大きい値です。ダイカストどうしでも、AZ91D(127)はアルミの ADC10(108)より大きくなっています。同じ強さなら、アルミより軽くつくれることが、軽量化で選ばれる理由です。

出典:大阪富士工業「代表的なマグネシウム合金の機械的性質」の表をもとに AI(Claude)で作成
たわみにくさ:厚くしても軽い
ヤング率が小さいので、同じ厚さの板ではたわみやすくなります。板の曲げのかたさは「ヤング率×厚さの3乗」に比例するとして、SUS304 の板と同じかたさにする厚さと重さを計算すると、AZ31 は板を約1.65倍に厚くしても、重さは SUS304 の約0.37倍、アルミ合金 5052 の約0.77倍になります(編集部の計算)。日本金属も、同じ重さで比べたとき、比剛性に優れるマグネシウム合金はたわみが小さいとしています。

出典:大阪富士工業「各種材料との比較」の表(計算は編集部)をもとに AI(Claude)で作成
出典:マグネシウム合金と各種材料との比較|大阪富士工業、マグネシウム合金製品|日本金属
振動を吸収する:減衰能
大阪富士工業は、振動のエネルギーを熱として吸収する能力(減衰能)について、純マグネシウムと M1 合金が特に優れているとし、振動を嫌うハードディスクや CD などに向くとしています。産総研などの発表では、M1 合金(マンガンを含む合金)の内部摩擦は純マグネシウムの約70%、AZ31 は約30%です。つまり、合金元素を多く加えると減衰能は下がるので、振動を抑えたいなら合金の種類まで確かめます。

出典:マイナビニュース(産総研などの発表)・大阪富士工業「マグネシウム合金の特性」をもとに AI(Claude)で作成
出典:マグネシウム合金の特性|大阪富士工業、産総研など、M1合金の圧延材の室温成形性を高める新しい圧延法を開発(2013年)|マイナビニュース
電磁波シールド性・放熱性
大阪富士工業は、マグネシウム合金は 30〜200MHz の帯域で 90〜100dB のシールド効果を示すとしています。金属なので、樹脂の筐体と比べて電磁波を遮り、熱を逃がしやすいことも、薄型ノートパソコンなどで使われる理由とされます。比熱が小さく、温まりやすく冷めやすいので、はんだ付けの炉で部品を運ぶリフローパレットにも使われています(同社)。

出典:マグネシウム合金の特性|大阪富士工業、マグネシウム合金製品|日本金属
種類と選び方:展伸材とダイカスト用
合金の名前は、ASTM の記号で呼ぶのが一般的です。前のアルファベットが主な添加元素(A=アルミニウム、Z=亜鉛、M=マンガン、E=希土類元素 など)、続く数字がそのおよその量(%)を表し、AZ31 は「アルミが約3%、亜鉛が約1%」という意味です。JIS では、AZ31 の板材は1種(MP-1)、棒材は MB-1 などの記号になります(大阪富士工業)。

出典:大阪富士工業「マグネシウム合金の呼称」をもとに AI(Claude)で作成
| 合金 | 比重 | 特性 | 用途の例 |
|---|---|---|---|
| AZ31B | 1.78 | 中程度の強度と高い伸び。最もポピュラーな素材で、成形性・溶接性に優れる | 板材・管材・棒材・形材。ノートパソコン、スピーカー振動板、車椅子部品 |
| AZ61A | 1.80 | 強度は AZ31B と AZ80A の中間。押出材・鍛造材 | 車椅子、歩行器、MTB 用リム |
| AZ80A | 1.81 | 押出用の中で最も強度が高い。フレーム材など | 車椅子、歩行器、カメラ部品 |
| ZK60A | 1.83 | 高強度で伸びがある。押出・熱間鍛造に優れるが、溶接性に乏しい | 航空宇宙部品、競技用車両部材、鍛造ホイール |
| LZ91(Mg-Li) | 1.51 | AZ31B より約19%軽い。5000系アルミ合金と同等の常温加工性 | 携帯電話・パソコンなど小型機器の筐体 |
| AMX602・AZX912(難燃性) | 1.80 | 発火しにくくした合金 | ETC 遮断機の阻止棒、輸送機器、機械構造体 |
| 純マグネシウム | 1.74 | 振動吸収性に優れる | スピーカー振動板、音響ケーブル用シールド材 |
不二ライトメタルの取り扱い合金の表から抜粋。
ダイカスト用の合金
ダイカスト用は JIS H 5303 で「MDC-AZ91D」のように記号を付けます。改正案の表では、AZ91D は耐食性に優れ、AM20A・AM50A・AM60B は伸びとじん性、AE44 は耐クリープ性に優れるとされ、Ca などを入れた難燃性の合金(AZX912・AXE500 など)も規格に入っています。参考値の引張強さは AZ91D で 200〜260MPa、伸びは 1〜9%、AM60B は 190〜250MPa・4〜18%です。大阪富士工業は、AM60B を衝突時のエネルギー吸収が求められる部品に使われる合金としています。

出典:JIS H 5303 改正案(日本規格協会)の表 JA.1をもとに AI(Claude)で作成
値は改正案の附属書 JA の参考値(質別 F)で、規定値は受渡当事者間の協定によります。
出典:JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会、各種マグネシウム合金の化学成分|大阪富士工業
選ぶ順番:形 → 強さ → 使う温度・燃えにくさ
出典の内容を、合金を決める順番に並べると下の図のようになります。板・押出なら AZ31、ダイカストなら AZ91Dが出発点で、割れにくさが要るなら AM 系、高い温度で使うなら耐クリープの AE 系・AS 系、燃えにくさが要るなら難燃性の合金を候補にします(編集部が整理)。

出典:このページの出典(大阪富士工業・JIS H 5303 改正案・不二ライトメタル)をもとに AI(Claude)で作成
出典:各種マグネシウム合金の化学成分|大阪富士工業、JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会、マグネシウム合金|不二ライトメタル
使う場面ごとの選び方
| 使う場面 | よく使われる種類 | 選ぶときのポイント |
|---|---|---|
| ノートパソコン・カメラ・携帯機器の筐体 | AZ31(板)、AZ91D(ダイカスト・チクソ)、LZ91 | 薄さと軽さ、表面処理(化成処理・陽極酸化)と塗装 |
| 自動車・輸送機器の部品 | AZ91D、AM60B、AE44 など(ダイカスト) | 衝突時のエネルギー吸収、使う温度(耐クリープ) |
| ホイール・フレーム・鍛造品 | AZ80、ZK60、AZ61 | 強度と、溶接するかどうか(ZK60A は溶接性に乏しい) |
| 音響・振動を嫌う機器 | 純マグネシウム、M1 | 減衰能。合金元素が多いと下がる |
| 鉄道・航空など燃えにくさが要る所 | 難燃性マグネシウム(AMX602・AZX912 など) | 発火する温度、規格・認定の条件 |
| 医療(体内で溶ける部品) | 生体吸収性の合金 | 医療機器の承認。2026年に国内で初めて承認された骨固定ねじがある |
用途は大阪富士工業・不二ライトメタル・JIS H 5303 改正案・メルフロンティアの発表から。種類とポイントの列は、このページの出典をもとに編集部が整理したものです。

出典:大阪富士工業「展伸材の用途」・JIS H 5303 改正案・メルフロンティアの発表をもとに AI(Claude)で作成
出典:マグネシウム合金展伸材の用途|大阪富士工業、マグネシウム合金|不二ライトメタル、JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会、吸収性体内固定用ネジ「マグジール」医療機器承認取得のお知らせ(2026年)|メルフロンティア(AMED 掲載)
電子機器の筐体:薄く、軽く
藤岡エンジニアリングは、チクソモールディング(半溶融のマグネシウム合金を金型に射出する方法)で、デジタルカメラ部品や携帯電話の筐体を、手のひらサイズから A4 サイズまで成形しています。同社は、ダイカストと比べて溶融温度が低いため、寸法精度や機械的性質が向上するとしています。
出典:Mgの特徴・射出成形法|藤岡エンジニアリング、製品例|藤岡エンジニアリング
医療:体内で溶けるねじ
メルフロンティアは、産業技術総合研究所が開発したマグネシウム合金を使った吸収性体内固定用ネジ「マグジール」について、2026年5月14日付で国内の医療機器製造販売承認を取得したと発表しました。日本初の生体吸収性マグネシウム合金製の骨固定スクリューで、手足の小骨片の固定に使い、治癒後に抜去しなくてよいことを特長としています。
出典:吸収性体内固定用ネジ「マグジール」医療機器承認取得のお知らせ(2026年)|メルフロンティア(AMED 掲載)
向いている条件と注意点
マグネシウム合金が向いている条件
- とにかく軽くしたい(実用金属で最も軽い)
- 板を厚くしてでも、軽くかたくしたい
- 振動を早く止めたい(純Mg・M1)
- 電子機器の筐体で、電磁波を遮り熱を逃がしたい
- 削る時間を短くしたい(切削抵抗が小さい)
注意点
- 錆びやすい。表面処理が前提
- 細かい切粉・研削粉は燃えやすい。水で消せない
- 常温では曲げ・絞りが難しい(温間加工)
- ヤング率が小さく、同じ厚さではたわむ
- 線膨張係数がアルミより少し大きい
この一覧は、このページの出典(大阪富士工業・山梨県工業技術センター・茨城県工業技術センター)をもとに編集部が整理したものです。
錆びやすさ:不純物と表面処理
マグネシウム合金の耐食性には、不純物の量が大きく効きます。JIS H 5303 改正案では、AZ91B の鉄・ニッケル・銅の上限が 0.03・0.03・0.35%なのに対し、AZ91D は 0.005・0.002・0.030%と小さく、耐食性に優れるとされています。大阪富士工業も、耐食性の改善にはマンガンを加えることと、Fe・Cu・Ni を減らすことが重要としています。そのうえで表面処理をします。日本金属によると、化成処理は電気を通す数百nm の薄い皮膜で耐食性を上げ、ノートパソコンなどの筐体に広く使われています。陽極酸化処理は、電解処理で数µm 以上の酸化皮膜をつくります。

出典:JIS H 5303 改正案の表1・表2、日本金属、大阪富士工業をもとに AI(Claude)で作成
出典:JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会、マグネシウム合金の添加元素の影響|大阪富士工業、マグネシウム合金帯のプレス加工・表面処理技術|日本金属、マグネシウム合金取扱い上の注意|大阪富士工業
鉄やステンレスの部品と接すると、電位の低いマグネシウムの側が腐食しやすくなります。しくみは 技術の基礎知識「イオン化傾向(と異種金属接触腐食)」で扱っています。
燃えやすさ:形で大きく変わる
大阪富士工業は、ある程度の容積を持った圧延材や押出材は容易には燃えず、火元がない状態で自然に発火することもないとしています。一方で、火災は主に微細なマグネシウム片から起き、部品の使用中より、むしろ機械加工や研磨中に起こることがあるとしています。消防庁の資料によると、マグネシウムは消防法の可燃性固体(第二類)で、目開き 2mm の網ふるいを通る塊状のもの等が規制されています。同じ資料は、過去5年(2010〜2014年)に粒径の小さなマグネシウム等が原因となった火災事例4件は、いずれも粉末状だったとしています。

出典:熊本大学の発表・大阪富士工業「取扱い上の注意」・消防庁の資料をもとに AI(Claude)で作成
出典:マグネシウム合金取扱い上の注意|大阪富士工業、マグネシウム火災に係る対応(案)|消防庁、不燃性の高強度マグネシウム合金の開発に世界で初めて成功(2012年)|熊本大学
燃えにくくした合金:難燃性・不燃性
熊本大学の2012年の発表は、一般的なマグネシウム合金は 550〜600℃程度で溶け始めると発火するとし、従来の難燃性マグネシウム合金の発火温度を 650〜850℃としています。同大学は、発火温度 1,105℃で、純マグネシウムの沸点(1,091℃)でも発火しない合金を開発したと発表しました。実用の難燃性合金では、不二ライトメタルが AMX602・AZX912 を扱い、AMX602 は高速道路の ETC 遮断機の阻止棒などに使われているとしています。
出典:不燃性の高強度マグネシウム合金の開発に世界で初めて成功(2012年)|熊本大学、マグネシウム合金|不二ライトメタル
カタログ値(材料の表・規格)の見方
| 項目 | 見方 |
|---|---|
| 合金の記号 | ASTM(AZ31 など)と JIS(1種・MP-1、MDC-AZ91D など)の対応を確かめる |
| 加工方法・質別 | 圧延・押出・鋳造・ダイカストで値が違う。AZ31 の引張強度は圧延 290MPa、押出 250MPa(大阪富士工業の代表値) |
| 引張強度・0.2%耐力・伸び | メーカーの代表値(保証値ではない)か、規格の参考値かを分けて見る |
| 化学成分(Fe・Ni・Cu) | 不純物の上限が小さい種類(AZ91D など)ほど耐食性がよい |
| ヤング率・熱伝導率・線膨張係数 | たわみ・放熱・ほかの材料と組むときの計算に使う。表の単位を確かめる |
| 難燃性 | Ca などを入れた難燃合金か。発火温度の試験条件 |
見方の列は、このページの出典をもとに編集部が整理したものです。

出典:このページの出典をもとに AI(Claude)で作成
出典:代表的なマグネシウム合金の機械的性質|大阪富士工業、各種マグネシウム合金の化学成分|大阪富士工業、JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会
同じ AZ31 でも、形で強さが違う
大阪富士工業の表では、AZ31 の引張強度は圧延材で 290MPa・伸び 20%、押出材で 250MPa・伸び 16%です。AZ91D も、砂型鋳造(T6)で 275MPa・伸び 5%、ダイカストで 230MPa・伸び 3%です。合金名だけでなく、加工方法と質別まで指定すると、比べ間違いを防げます(編集部)。
加工を頼むときの注意(削る・曲げる・つなぐ)
- 切粉・粉をためない専用のふた付き容器と湿式集塵機。水では消さない
- 曲げ・絞りは温めて200〜300℃の温間プレスで深絞りができる
- 表面処理までまとめる化成処理・陽極酸化・塗装の順番と、電気を通す所
この3点は、このページの出典(大阪富士工業・日本金属・茨城県工業技術センター)をもとに編集部が整理したものです。
削る・磨く:切粉の扱い
大阪富士工業は、マグネシウム合金を自社で機械加工するときの注意として、よく研いだ鋭い工具で重切削にし、切削油は鉱物油を使い、切粉はこまめに集めてふた付きの専用の容器に入れることを挙げています。研磨では、ほかの金属と併用する機械は完全に掃除し、マグネシウム専用の湿式集塵機を使います。水で湿ったスラッジは水素を出し、半乾きのものは燃えやすいので、貯める間は十分な水を入れておくとしています。燃えたときは水や泡・ふつうの消火器を使わず、マグネシウム専用の消火剤で覆って鎮火を待ちます。

出典:大阪富士工業「マグネシウム合金取扱い上の注意」をもとに AI(Claude)で作成
曲げる・絞る:温間プレス
茨城県工業技術センターは、マグネシウム合金は常温では底面すべりが中心で、プレス成形には 250℃程度の温間加工が不可欠としています。AZ31 の板(厚さ1.0mm)の深絞りの実験では、金型温度 270℃以上ではすべて成形でき、200℃以下ではすべて成形できなかったと報告しています。日本金属は、ダイと板押さえを加熱しポンチを冷やす金型と、速さや停止を自由にできるサーボプレスを組み合わせた温間プレスを勧め、200〜300℃の温間加工で深絞り品が得られるとしています。

出典:日本金属「マグネシウム合金帯のプレス加工」・茨城県工業技術センターの研究報告をもとに AI(Claude)で作成
出典:マグネシウム合金板材の塑性変形性の向上とプレス成形特性(研究報告 第35号)|茨城県工業技術センター、マグネシウム合金帯のプレス加工・表面処理技術|日本金属
つなぐ・引き抜く:専門の会社に
マクルウは、常温での塑性加工は難しいとされてきたマグネシウム合金で、棒材・管材の冷間引抜・冷間圧延の技術を確立したとしています。押出の棒材・管材と比べて寸法精度や表面粗さがよくなり、角や楕円の形もできるとしています。同社は、パイプの曲げ・拡管・縮管と、板材やパイプの TIG 溶接も行っています。マグネシウムの溶接や引抜は、扱いに慣れた会社に試作から相談するのが近道です(編集部)。
出典:当社の技術|マクルウ、マグネシウム合金による試作|マクルウ
相談する前に整理すること
マグネシウム合金の部品の製作や材料を相談するときは、次の点を整理しておくと話が早く進みます(編集部が整理した項目です)。

出典:このページの出典をもとに AI(Claude)で作成
- 使う環境(水・塩分・湿度、接する金属)
- 求める性質(軽さ・かたさ・強さ・振動の吸収・電磁波シールド)
- 合金と材料の形(AZ31 の板・押出材、AZ91D のダイカスト、難燃合金)
- 形と大きさ(図面、板厚、最大の寸法)
- 加工の内容(切削・温間プレス・引抜・溶接、チクソモールディング)
- 表面処理(化成処理・陽極酸化・塗装、電気を通す所)
- 燃えにくさ(難燃合金が要るか、規格・認定)
- 数(試作・量産の数、納期)
企業紹介(マグネシウム合金の技術)
マグネシウム合金の板・押出材の材料、チクソモールディング、切削、冷間引抜、表面処理まで、得意分野の違う会社を紹介します。掲載は各社の公開情報にもとづきます。
| 企業 | 材料 (板・押出・引抜) | 射出成形 (チクソ) | 切削 | 曲げ・ 引抜 | 表面 処理 | 難燃 合金 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本金属AZ31B・LZ91 の圧延材(板・帯)と温間プレスの支援(東京都) | ● | |||||
| 不二ライトメタルAZ31B などの押出材と、難燃性・耐熱合金(熊本県) | ● | ● | ||||
| 藤岡エンジニアリングチクソモールディングと機械加工・塗装の一貫生産(岡山県) | ● | ● | ● | |||
| マクルウ棒・管の冷間引抜、曲げ・溶接の試作(静岡県) | ● | ● | ||||
| サンブライトマグネシウム製品の切削専用棟と化成処理・塗装(福島県) | ● | ● | ||||
| 堀金属表面処理工業クロムを使わない陽極酸化と導電性陽極酸化(静岡県) | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いや事例を確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
日本金属株式会社|マグネシウム合金の板・帯(圧延材)を、0.045mm の薄さから
日本金属とは
東京都港区に本社を置く、ステンレスの圧延・加工などの会社です(設立1939年)。マグネシウム合金の帯(コイル)は板橋工場で製造しています。

日本金属の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 圧延材(帯) | 自社開発の圧延機と独自の圧延技術で、板厚 0.045〜2.0mm の板厚精度の高い材料をつくるとしている |
| AZ31B | 高強度で温間成形に優れた材料として、2002年に世界で初めてコイル材の量産化に成功したとしている |
| LZ91(Mg-Li) | 比重1.5で、同社によると AZ31B(1.78)より約20%軽く、室温でプレス成形ができる。国際マグネシウム協会の 2013年度の優秀賞 |
日本金属が解決できる課題
- 筐体やカバーを、薄い板で軽くしたい
- 温間プレスで深く絞りたい(同社は加熱金型とサーボプレスの温間プレスを勧め、プレス加工・表面処理のネットワークで商品化まで支援するとしている)
- さらに軽い材料(LZ91)を試したい
公開されている実績・用途
- AZ31B の採用例:パソコン外装、スマートフォン部品、スピーカー振動板、マグネシウム電池電極、介護用品
出典:会社概要|日本金属、マグネシウム合金製品|日本金属、AZ31B(高強度・温間加工性)|日本金属、LZ91(超軽量)|日本金属
不二ライトメタル株式会社|マグネシウム合金の押出材と、難燃性・耐熱合金
不二ライトメタルとは
熊本県玉名郡長洲町に本社を置く、アルミとマグネシウムの押出材の会社です(設立1969年、従業員686名)。

出典:不二ライトメタル「マグネシウム合金」をもとに AI(Claude)で作成
不二ライトメタルの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 押出材 | AZ31B の押出材で、丸棒 φ4.0〜98.0mm、平板 幅90〜290mm・厚さ2.0mm以上、丸パイプ φ18.0〜40.0mm の製作例。ビレット・インゴットの販売もある |
| 難燃性・超軽量 | 難燃性の AMX602・AZX912、超軽量の LZ91(比重1.51)を扱う |
| 耐熱合金の大型化 | 2003年から熊本大学などと共同研究し、高強度マグネシウム合金の大型化技術を開発したとしている(KUMADAI 耐熱マグネシウム合金、Mg-Zn-Y 系) |
不二ライトメタルが解決できる課題
- マグネシウムの棒・パイプ・形材を使いたい
- 燃えにくいマグネシウム合金を、構造の部品に使いたい
- 高い温度でも強い合金を試したい
公開されている実績・用途
- AMX602:高速道路の ETC 遮断機の阻止棒、輸送機器、多軸ボール盤の多軸ヘッド、福祉用具(同社の用途例)
出典:会社概要|不二ライトメタル、マグネシウム合金|不二ライトメタル、マグネシウム合金事業|不二ライトメタル
株式会社藤岡エンジニアリング|チクソモールディングから、機械加工・塗装まで一貫で
藤岡エンジニアリングとは
岡山県真庭市に本社工場を置く、精密部品の製造と金型の会社です(設立1952年、従業員168名)。本社工場は、ミノルタカメラの製造子会社として設立されたのが始まりとしています。

藤岡エンジニアリングの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| チクソモールディング | チクソ成形機5台(220t・280t・650t)。薄肉成形で、手のひらサイズから A4 サイズまでの製品を成形できるとしている |
| 機械加工 | マシニングセンター80台以上。カメラの加工で培ったノウハウで、20ミクロンまでの精度で加工できるとしている |
| 一貫生産 | 金型製作(久世工場)・成形・機械加工・塗装・印刷・組立まで。精密三次元測定機などの測定機をそろえる |
藤岡エンジニアリングが解決できる課題
- 薄くて複雑な形のマグネシウムの筐体を量産したい
- 成形のあとの機械加工・塗装まで一か所で頼みたい
公開されている実績・用途
- デジタルカメラ部品、携帯電話筐体(同社の製品例)
出典:会社概要|藤岡エンジニアリング、藤岡の強み|藤岡エンジニアリング、Mgの特徴・射出成形法|藤岡エンジニアリング、製品例|藤岡エンジニアリング
株式会社マクルウ|マグネシウム合金の棒・管の冷間引抜と、曲げ・溶接の試作
マクルウとは
静岡県富士宮市の、マグネシウム合金の加工に特化したベンチャーです(設立2010年)。パイプ・ワイヤー・ロッドの冷間引抜と、曲げ・溶接などの二次加工を行っています。

マクルウの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 冷間引抜・冷間圧延 | マグネシウム合金の棒材・管材を常温で引き抜く。押出材と比べて寸法精度・表面粗さがよく、角や楕円の形もできるとしている |
| パイプの二次加工 | ドローベンチ・パイプベンダーなどで、引抜・曲げ・楕円・拡管・縮管 |
| 板の曲げと溶接 | 簡易型と簡易プレスによる板材の曲げ、板材やパイプの TIG 溶接。化成処理・塗装までの一貫製作は関係各社の協力で |
マクルウが解決できる課題
- 細いマグネシウムのパイプ・棒を、精度よく使いたい
- パイプを曲げたり溶接したりした試作品を作りたい
公開されている実績・用途
- AZ61 パイプの曲げ(R=2.2D)・拡管・縮管、AZ31 板材(t3)の曲げの加工例。丸パイプだけで作ったロッキングチェア
出典:会社概要|マクルウ、当社の技術|マクルウ、マグネシウム合金による試作|マクルウ

株式会社サンブライト|マグネシウム製品の切削専用の棟と、化成処理・塗装の一貫生産
サンブライトとは
福島県双葉郡大熊町に本社、会津若松市に会津河東工場を置く、金属の切削加工の会社です(設立1991年)。マグネシウム合金を中心とした事業展開を行っているとしています。

出典:サンブライト「事業内容」「工場見学」をもとに AI(Claude)で作成
サンブライトの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| マグネシウムの切削 | C棟はマグネシウム製品の切削加工の専用で、同社は「業界最大規模の専用加工工場」としている |
| 化成処理・塗装 | 2015年に完成した D棟で、マグネシウムの化成処理と塗装を行い、素材から機械加工・表面処理・塗装までの一貫生産体制になったとしている |
| 薄肉・精密 | カメラ業界で鍛えた技術で、薄肉・角度精度・外観精度の厳しい製品を得意とするとしている |
サンブライトが解決できる課題
- マグネシウムの精密な部品を削り出したい
- 切削から化成処理・塗装までを一か所にまとめて、リードタイムを短くしたい
出典:会社案内|サンブライト、事業内容|サンブライト、工場見学|サンブライト
堀金属表面処理工業株式会社|クロムを使わない陽極酸化と、電気を通す陽極酸化
堀金属表面処理工業とは
静岡県掛川市に本社を置く、化成処理・陽極酸化・塗装の会社です(1981年創立)。2000年に岡山工場にマグネシウムの陽極酸化処理のラインを設置しています。

出典:堀金属表面処理工業「事業案内」をもとに AI(Claude)で作成
堀金属表面処理工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 環境調和型陽極酸化 | クロムやマンガンなどの重金属を使わない。塩水噴霧試験1000時間以上の耐食性と塗装の密着性があり、塗装の1コート化でコストを下げられるとしている |
| 導電性陽極酸化 | 電子機器の筐体の帯電防止に必要な表面抵抗 0.6Ω に対し 0.4Ω以下。岡山県工業技術センターとの共同研究で開発し、特許取得済みとしている |
| 化成処理・電着塗装 | マグネシウム・亜鉛系合金・ステンレスなどの化成処理、鉛フリーのカチオン電着塗装(岡山工場) |
堀金属表面処理工業が解決できる課題
- マグネシウムの部品の錆びを、クロムを使わずに防ぎたい
- 電子機器の筐体で、表面処理をしても電気を通したい(アース・帯電防止)
公開されている実績・用途
- 導電性陽極酸化:デジタルカメラ部品や携帯電話筐体などに 300万台以上を出荷(同社の記載)
出典:会社概要|堀金属表面処理工業、事業案内|堀金属表面処理工業
使われる製品・事例
大阪富士工業は、展伸材の用途として、圧延材ではノートパソコン・携帯電話・デジカメ・ビデオカメラなどの筐体や内部部品、メガネフレーム、ゴルフクラブ、リフローパレット、押出材では鞄フレーム・液晶テレビのフレーム・ハードディスクのリードアーム・自転車や自動車の形材、鍛造材ではカメラ鏡筒・腕時計本体・自転車クランク・自動車ホイールを挙げています。ダイカストでは、JIS H 5303 改正案が用途例に輸送機器部品・チェーンソー・ノートパソコン・ビデオカメラ・音響機器・スポーツ用品などを挙げています。
出典:マグネシウム合金展伸材の用途|大阪富士工業、JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会
関連する技術
- ダイカスト(アルミ・マグネシウム)
- チタン・チタン合金
- ステンレス鋼
- エンジニアリングプラスチック
- 板金・プレス加工
- アルマイト(陽極酸化)
- 鍛造
- 防振ゴム・制振材
- マグネシウム合金に替える(鉄をアルミ・樹脂・複合材に替えて軽くしたい)
- 材料を替える(薄く軽くすると強度が足りない)
- 比重・密度(技術の基礎知識)
- ヤング率(技術の基礎知識)
- イオン化傾向(技術の基礎知識)
- 材料(物性・劣化)
出典・確認日
- マグネシウム合金の特性|大阪富士工業
- マグネシウム合金部品の耐食性向上に関する研究|山梨県工業技術センター
- マグネシウム合金と各種材料との比較|大阪富士工業
- 代表的なマグネシウム合金の機械的性質|大阪富士工業
- マグネシウム合金製品|日本金属
- 産総研など、M1合金の圧延材の室温成形性を高める新しい圧延法を開発(2013年)|マイナビニュース
- マグネシウム合金の呼称|大阪富士工業
- マグネシウム合金|不二ライトメタル
- JIS H 5303 マグネシウム合金ダイカスト(改正案)|日本規格協会
- 各種マグネシウム合金の化学成分|大阪富士工業
- マグネシウム合金展伸材の用途|大阪富士工業
- 吸収性体内固定用ネジ「マグジール」医療機器承認取得のお知らせ(2026年)|メルフロンティア(AMED 掲載)
- Mgの特徴・射出成形法|藤岡エンジニアリング
- 製品例|藤岡エンジニアリング
- マグネシウム合金の添加元素の影響|大阪富士工業
- マグネシウム合金帯のプレス加工・表面処理技術|日本金属
- マグネシウム合金取扱い上の注意|大阪富士工業
- マグネシウム火災に係る対応(案)|消防庁
- 不燃性の高強度マグネシウム合金の開発に世界で初めて成功(2012年)|熊本大学
- マグネシウム合金板材の塑性変形性の向上とプレス成形特性(研究報告 第35号)|茨城県工業技術センター
- 当社の技術|マクルウ
- マグネシウム合金による試作|マクルウ
- 会社概要|日本金属
- AZ31B(高強度・温間加工性)|日本金属
- LZ91(超軽量)|日本金属
- 会社概要|不二ライトメタル
- マグネシウム合金事業|不二ライトメタル
- 会社概要|藤岡エンジニアリング
- 藤岡の強み|藤岡エンジニアリング
- 会社概要|マクルウ
- 会社案内|サンブライト
- 事業内容|サンブライト
- 工場見学|サンブライト
- 会社概要|堀金属表面処理工業
- 事業案内|堀金属表面処理工業
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。
情報の確認日:2026年10月8日 本ページの内容は一般的な情報で、実際の材料の性能・耐食性・加工の可否・費用は、合金の種類・形・使う環境・加工する会社により異なります。

