ファインセラミックスは、高度に精選または合成した原料粉末を使い、精密に調整した化学組成を、十分に制御した工程でつくるセラミックスです(京セラ)。粘土や珪石などの自然の材料からつくる一般の陶磁器と区別されます。アルミナ・ジルコニア・窒化ケイ素・炭化ケイ素・窒化アルミなどがあり、硬さ・耐熱・電気絶縁・耐食性を生かして、半導体製造装置・軸受・シール・放熱基板・刃物などに使われています。一方で、金属に比べて脆く、急な温度変化や引張に弱いので、材料の選び方と形の設計が大切です。
このページでは、定義と製造工程、代表的な5つの材料の違い、強さ・熱の性質のカタログ値、選び方、脆さと熱衝撃への注意、金属との組み合わせ、加工のしかたをまとめ、得意分野の違う会社を紹介します。硬い材料に細い穴や溝を入れる方法は課題「硬い材料に細かい形・穴を加工したい」、高温で使う材料の比べ方は課題「高温でも使える材料にしたい」で扱っています。
ファインセラミックスの企業(早見表)
| 企業 | 材料・ 焼結 | 研削・ 研磨 | 射出 成形 | 金属と 接合 | 大型 部品 | 多孔質 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本ファインセラミックス炭化ケイ素・窒化ケイ素と受託加工(宮城県) | ● | ● | ● | |||
| アテクトセラミックスの射出成形(CIM)(滋賀県) | ● | ● | ||||
| エムケーセラセラミック部品の研削・研磨、多品種少量(長野県) | ● | |||||
| 友玉園セラミックスアルミナ部品のメタライズ・ろう付(東京都) | ● | ● | ||||
| アスザック大型アルミナ部品(全長 4m まで)・高純度 SiC(長野県) | ● | ● | ● | ● | ||
| ナノテム多孔質セラミックスの真空チャック・研削(新潟県) | ● | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いや事例を確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
この技術で解決できる課題
ファインセラミックスが効くのは、すり減る・高温で弱る・電気を絶縁しながら熱を逃がしたい・薬品やプラズマで傷むといった、金属や樹脂では難しい条件のときです。課題ページでは、耐熱材料・耐摩耗材料・軸受の電食・硬い材料の加工の対策に出てきます(下の表)。

出典:このページの出典をもとに AI(Claude)で作成
| 課題 | この技術での解決 | 課題ページ |
|---|---|---|
| 高温でも使える材料にしたい | 高温でも強さを保つ窒化ケイ素・炭化ケイ素などを選ぶ | セラミックス |
| 摺動部がすり減る | すり減る所を、硬いファインセラミックスに替える | 耐摩耗材料・摺動材料 |
| 軸受の寿命を延ばしたい | 玉を窒化ケイ素にして、電食を防ぐ(ハイブリッド軸受) | 電食の対策 |
| 硬い材料に細かい形・穴を加工したい | 焼結したセラミックスを、ダイヤモンド工具・超音波で加工する | 研削・ダイヤモンド工具超音波加工 |
右の列は、関係する課題ページの対策の節へのリンクです。
仕組み:高純度の粉末を、形にして焼き固める
京セラの解説によると、セラミックスは「非金属・無機材料で、その製造工程において高温処理を受けたもの」で、その中でも高い性能や精度が要る産業用のものを、粘土や珪石などの自然材料からつくる一般の陶磁器と区別して、ファインセラミックスと呼んでいます。JIS R 1600:2011(ファインセラミックス関連用語)は、化学組成、結晶構造、微構造組織・粒界、形状、製造工程を精密に制御して製造され、新しい機能または特性をもつ、主として非金属の無機物質と定義しています。

出典:京セラ「ファインセラミックスとは?」(JIS R 1600:2011 の定義を引用)をもとに AI(Claude)で作成
つくり方:成形して焼き固め、仕上げに研削する
京セラの製造工程の解説では、原料を顆粒にして型で形にし(金型での加圧成形、粘土状にして口金から押し出す押出成形、型に流し込む射出・鋳込成形など)、焼成炉で焼き固めます。焼成では、成形した原料(充填率約60%)を融点以下で加熱し、粒子どうしが接点を通じて物質を移動させて融合し、緻密になります。焼結したあとは非常に硬く、ダイヤモンド砥石などでないと加工できないので、焼結前に縮む分を考えて最終の形に近い形に削っておきます。
京セラのセラミックナイフの例では、約1µm の粒子にそろえた原料を 1cm² あたり約1トンの力で押し固め、焼成すると大きさは焼成前の 3/4、体積は半分近くまで縮みます。縮むことを見込んで成形しておくので、焼成後にねらいの寸法に仕上がるとしています。

出典:京セラ「ファインセラミックスの製造工程」「ファインセラミック製ナイフのつくり方」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの製造工程」、京セラ「ファインセラミック製ナイフのつくり方(事例)」
種類と選び方:代表的な5つの材料
よく使われるのは、アルミナ(Al₂O₃)・ジルコニア(ZrO₂)・窒化ケイ素(Si₃N₄)・炭化ケイ素(SiC)・窒化アルミ(AlN)です。同じアルミナでも、京セラの材料特性表には含有量 90〜99.9%の材質が並び、純度と製法で性質が変わります。下の表の数値は、すべて同じ表(テストピースでの参考値)から取ったものです。

出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」をもとに AI(Claude)で作成
| 材料(京セラの材質記号) | 3点曲げ強さ | 破壊靭性 | 熱伝導率 | 線膨張率 | 主な特長と用途(同じ表) |
|---|---|---|---|---|---|
| アルミナ 99.5%(AO479S) | 400MPa | 4 | 32 | 7.2 | 硬度大・耐食性大・耐摩耗性大。耐摩耗部品・耐食部品 |
| アルミナ 96%(AO476O) | 350MPa | 2.9 | 24 | 7.2 | 表面平滑・印刷性優秀。ハイブリッド IC 皮膜用基板 |
| ジルコニア(ZO201N) | 1,000MPa | 6 | 3 | 10.5 | 強度・衝撃強度大、摺動特性良好、表面平滑。刃物・ハサミ・包丁・ポンプ部品 |
| 窒化ケイ素(SN240O) | 1,020MPa | 7 | 27 | 2.8 | 高温強度大・耐摩耗性大・耐熱衝撃性大・軽量。耐摩耗ライナー・金属溶湯用部品 |
| 炭化ケイ素(SC1000) | 500MPa | 2〜3 | 200 | 3.7 | 高温高強度・耐薬品性大・熱伝導率大。メカニカルシール・摺動部品・高温用部品 |
| 窒化アルミ(AN216A) | 310MPa | 3.2 | 150 | 4.6 | 絶縁・高熱伝導・熱膨張小。均熱部品・半導体製造装置部品 |
単位:破壊靭性 MPa・m^1/2(SEPB 法、JIS R 1607)、熱伝導率 W/(m・K)(20℃、JIS R 1611)、線膨張率 ×10⁻⁶/K(40〜400℃、JIS R 1618)。3点曲げ強さは JIS R 1601。京セラは、これらはテストピースの測定による参考値で、製品の形状や使用条件により異なる場合があるとしています。
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)
強さ:ジルコニアと窒化ケイ素は、割れにくさも高い
同じ表では、3点曲げ強さはジルコニア(ZO201N)1,000MPa・窒化ケイ素(SN240O)1,020MPa で、アルミナ 99.5%の 400MPa の2倍以上です。割れにくさを表す破壊靭性も、窒化ケイ素 7・ジルコニア 6 と高めです。京セラは、ファインセラミックスは一般に破壊靭性値が低い材料だが、刃物に使われる部分安定化ジルコニアは比較的高い靭性をもつと説明しています。

出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「破壊靱性」
熱:熱を伝える材料と、さえぎる材料がある
熱伝導率は、炭化ケイ素(SC1000)200・窒化アルミ(AN216A)150W/(m・K) と高く、ジルコニアは 3 と低い値です。京セラは、窒化アルミと炭化ケイ素は特に熱をよく通し、ジルコニアは熱伝導率がステンレス鋼の10分の1の小ささと説明しています。線膨張率は窒化ケイ素 2.8・炭化ケイ素 3.7 と小さく、京セラは、炭化ケイ素や窒化ケイ素などの共有結合の材料は原子間の結合力が強く熱膨張率が小さい一方、ステンレス鋼などは熱膨張率が大きい傾向にあるとしています(線膨張係数は 技術の基礎知識「線膨張係数」、熱伝導率は 技術の基礎知識「熱伝導率」)。

出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「熱とファインセラミックス-熱伝導率」、京セラ「熱膨張」
硬さ:アルミナはステンレス鋼の約3倍
ビッカース硬さは、炭化ケイ素(SC1000)23.0GPa、アルミナ 99.5%(AO479S)16.0GPa、窒化ケイ素(SN240O)14.0GPa です(材料特性表)。京セラは、アルミナの硬度はステンレス鋼の約3倍、炭化ケイ素は4倍以上と説明しています。すり減りやすい部品に使える一方、焼結後の加工にはダイヤモンド砥石などが要り、手間が増えます(編集部)(硬さの測り方は 技術の基礎知識「硬さ」)。

出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」と「ファインセラミックスの強さ-硬度」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「ファインセラミックスの強さ-硬度」
選ぶ順番:割れにくさ → 熱衝撃 → 熱と絶縁 → 硬さ → 費用
出典の内容を、材料を決める順番に並べると下の図のようになります。衝撃や曲げがかかるならジルコニアか窒化ケイ素、急な温度変化があるなら窒化ケイ素、絶縁しながら熱を逃がすなら窒化アルミ、硬さと耐薬品性なら炭化ケイ素、一般の絶縁部品・耐摩耗部品ならアルミナが候補です。同じ材料名でもメーカーやグレードで値が違うので、材質記号と特性表で比べ、試作で確かめます。費用は材料だけでなく、形と加工の量で大きく変わります(編集部)。

出典:このページの出典(京セラの材料特性表・特性の解説)をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「破壊靱性」、京セラ「耐熱衝撃性」、京セラ「熱とファインセラミックス-熱伝導率」
使う場面ごとの選び方
| 使う場面 | よく使われる材料 | 選ぶときのポイント |
|---|---|---|
| 半導体製造装置(ウェハーの保持・チャンバー) | アルミナ(高純度)、窒化アルミ、炭化ケイ素 | 耐プラズマ性・純度・温度。静電チャックはアルミナと窒化アルミ(京セラ) |
| 軸受・転動体 | 窒化ケイ素 | 軽く(軸受鋼の40%)・非磁性・絶縁体。電食に強い(ジェイテクト) |
| メカニカルシール・摺動部品 | 炭化ケイ素、アルミナ | 硬さ・熱伝導・耐薬品性。相手の材料との組み合わせを確かめる |
| 放熱基板・パッケージ | 窒化アルミ、アルミナ | 熱伝導率と絶縁。窒化アルミはシリコンに近い熱膨張(京セラ) |
| 刃物・粉砕・ポンプ部品 | ジルコニア、アルミナ | ジルコニアは強さ・靭性が高い。熱を伝えにくい点に注意 |
| 溶けた金属・高温の部品 | 窒化ケイ素、炭化ケイ素 | 耐熱衝撃性と高温での強さ。急に冷える部位は窒化ケイ素 |
材料と用途の例は、京セラの材料特性表・製品ページとジェイテクトの資料から。ポイントの列は、出典をもとに編集部が整理したものです。

出典:京セラ・ジェイテクトの資料をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「静電チャック」、ジェイテクト「セラミックボール」、京セラ「窒化アルミニウム基板/パッケージとは」
半導体製造装置:静電チャックとチャンバー部品
京セラの静電チャックは、セラミックスの間に内部電極を形成して一体焼結し、表面に置いたシリコンウェハーとの間の静電気力で、ウェハーを保持する部品で、材質はアルミナと窒化アルミです。高い耐プラズマ性と、幅広い温度環境に対応する点を特長に挙げています。アスザックも、半導体製造装置の真空部品として、ウェハーのクランプや耐プラズマ用にアルミナや炭化ケイ素の使用が増えているとしています。
軸受:窒化ケイ素の玉は軽く、電気を通さない
ジェイテクトは、窒化けい素のセラミックボールの特長として、耐摩耗性・耐焼付き性、高耐食、高耐熱性(800℃)、高剛性、軽量(軸受鋼の40%)、非磁性、絶縁体を挙げています。同社は 1984年にセラミックベアリングを実用化したとしています。インバーターで回すモーターでは、軸受に電流が流れて傷む電食の対策として、玉をセラミックにしたハイブリッド軸受が使われます(課題「軸受の寿命を延ばしたい」)。
向いている条件と注意点
ファインセラミックスが向いている条件
- 硬さが要る・すり減る(摺動・粉体・スラリー)
- 高温で使う・熱で伸びてほしくない
- 電気を絶縁したい(熱を逃がしたい場合は窒化アルミなど)
- 薬品・プラズマ・真空の中で使う
- 軽く・磁石に付かない部品にしたい
注意点
- 脆く、衝撃や局所的な力で欠ける・割れる
- 強さにばらつきがある(破壊源の形や寸法を反映する)
- 急な温度変化で割れることがある(材料で大きく違う)
- 曲げ(引張側)には、圧縮より弱い
- 焼結後は硬く、ダイヤモンド砥石などが要る(加工の手間が増える)
この一覧は、このページの出典(京セラの材料特性表・特性の解説など)をもとに編集部が整理したものです。
脆さ:ほとんど伸びずに割れ、強さにばらつきがある
京セラは、ファインセラミックスは一般に破壊靭性値が低い材料だとしています。編集部の見方では、金属が伸びて(塑性変形して)から壊れるのに対し、ファインセラミックスはほとんど伸びずに割れるので、局所的な力や小さなきずに注意が要ります。京セラの用語辞典(JIS R 1600:1998 からの抜粋)は、ワイブル分布の形状母数 m(ワイブル係数)は、破壊源の形状や寸法を反映した、強さの測定値のばらつきの程度を示すとしています(JIS R 1625 参照)。設計では、平均の強さだけでなく、ばらつきを考えます(ワイブル分布は 技術の基礎知識「バスタブ曲線・ワイブル分布」、靭性は 技術の基礎知識「靭性」)。

出典:京セラ「破壊靱性」「ファインセラミックス用語辞典(ワイブル分布)」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「破壊靱性」、京セラ「ファインセラミックス用語辞典(ワイブル分布)」
熱衝撃:急な温度変化で割れる。窒化ケイ素は強い
京セラの材料特性表は、耐熱衝撃温度差を相対法・水中投下(JIS R 1648)で示しています。値は窒化ケイ素(SN240O)800℃、炭化ケイ素(SC1000)350℃、ジルコニア 300℃、窒化アルミ 250℃、アルミナ 99.5% 180℃です。京セラは、窒化ケイ素は水中落下による耐熱衝撃性でも水冷で 800℃という高い性能をもち、特に大きく温度が上下する部分に使う材料に適しているとしています。

出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」「耐熱衝撃性」をもとに AI(Claude)で作成
試験片での参考値です。実際の部品では、厚み・形・冷え方(片側だけ冷えるかなど)で割れやすさが変わります(編集部)。
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「耐熱衝撃性」
圧縮には強く、曲げには弱い
同じ表で圧縮強さと3点曲げ強さを比べると、アルミナ 99.5%は 2,350MPa と 400MPa、窒化ケイ素は 3,551MPa と 1,020MPa で、圧縮の強さは曲げの強さの数倍です。編集部の見方では、引張がかからず圧縮で力を受ける形にする、角を丸める、局所的に力が集中しないようにする、といった形の工夫が割れを防ぐ基本になります(応力集中のしくみは課題ページや 技術の基礎知識「応力とひずみ」)。

出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)
カタログ値の見方
| 項目 | 見方 |
|---|---|
| 材質記号(例 AO479S) | 同じ「アルミナ」でも純度・製法で値が違う。材料名ではなく、メーカーの材質記号で比べる |
| 3点曲げ強さ | JIS R 1601 などの方法で測った、試験片が破断したときの最大曲げ応力。3点曲げか4点曲げかを確かめる |
| 破壊靭性 | 割れの進みにくさ。SEPB 法(JIS R 1607)など、測り方を確かめる |
| 耐熱衝撃温度差 | 加熱した試験片を水中に落として急冷する試験の値(相対法)。部品の形では変わる |
| 熱伝導率・線膨張率 | 温度の範囲(20℃、40〜400℃など)と方法の注記を見る |
| 体積抵抗率・絶縁破壊の強さ | 温度で大きく変わる(例:アルミナ 99.5%の体積抵抗率は 20℃で 10¹⁴Ω・cm より大、500℃で 10¹⁰) |
体積抵抗率の例は京セラの材料特性表から。見方の列は、出典をもとに編集部が整理したものです。京セラは、表の値はテストピースの測定による参考値としています。
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、京セラ「ファインセラミックス用語辞典(曲げ強さ)」
曲げ強さは、測り方で変わる
京セラの用語辞典(JIS R 1600:1998 からの抜粋)は、曲げ強さを2つの支点の上に置いた試験片の、支点間の中央の1点、または中央から左右に等しい距離の2点に荷重を加えて、破断したときの最大曲げ応力と説明しています(試験方法は JIS R 1601・R 1604)。1点で押すのが3点曲げ、2点で押すのが4点曲げです。ファインセラミックス関係の JIS R 規格は、1981年に制定された「曲げ強さ試験方法」をはじめとして、104件が制定されています(ファインセラミックスセンター)。カタログを比べるときは、試験の方法と試験片の条件がそろっているかを確かめます。

出典:京セラ「ファインセラミックス用語辞典(曲げ強さ)」をもとに AI(Claude)で作成
出典:京セラ「ファインセラミックス用語辞典(曲げ強さ)」、ファインセラミックスセンター「JIS 規格制定への貢献」
加工・組み込み・量産の注意
- 焼成前に形を決める縮む分を見込み、削る量を減らす
- 金属との熱膨張の差接合・はめあいで残る応力に注意
- 欠けときずを防ぐ角・取り扱い・研削のきずが割れの起点
この3点は、このページの出典をもとに編集部が整理したものです。
焼成前の「生加工」と、焼成後の研削
京セラの製造工程の解説では、ファインセラミックスは焼結後に加工するにはダイヤモンド砥石などを用いなければならないため、焼結前に変形(収縮)を考慮して、最終形状に近い形に切削加工を施します。この加工では超硬合金製の刃物やドリルが使われます。高い精度が要る面は、焼成後にダイヤモンド砥石で研削・研磨して仕上げます。編集部の見方では、焼成後に削る量を減らすほど、加工の時間と費用を抑えやすくなります。

出典:京セラ「ファインセラミックスの製造工程」をもとに AI(Claude)で作成
金属と組み合わせるときは、熱膨張の差に気をつける
茨城県工業技術センターの研究報告は、92%アルミナと 42Ni-Fe 合金を活性金属ろう材で接合し、接合温度 740℃で引張強度 40N/mm² 以上が得られたとしています。同じ報告は、前報の結果として、活性金属ろうによる直接接合では接合時の真空度が大きく影響し、高い接合強度を得るには熱膨張を考慮する必要があるとしています。京セラの解説のとおり、セラミックスは金属に比べて熱膨張率が小さいので、接合した温度から冷えるときの縮み方の差が、接合部に応力として残ります。

出典:茨城県工業技術センターの研究報告と京セラ「熱膨張」をもとに AI(Claude)で作成
出典:茨城県工業技術センター「異種材の接合技術に関する研究(第2報)―金属とセラミックスの接合技術―」(PDF)、京セラ「熱膨張」
窒化アルミは、シリコンに近い熱膨張で熱応力を小さくする
京セラは、窒化アルミニウムの放熱基板・パッケージの特長に、高熱伝導率(150W/(m・K) 以上)・高強度・低発塵と、半導体の主材料であるシリコンに近い熱膨張係数を挙げています。シリコンチップを直接接合したとき、温度変化による基板とチップの間の熱応力が小さく、剥離や変形が起こりにくいとしています。
相談する前に整理すること
ファインセラミックスの部品を相談するときは、次の点を整理しておくと話が早く進みます(編集部が整理した項目です)。

出典:このページの出典をもとに AI(Claude)で作成
- 使う温度(最高温度、急に冷える・温まるか)
- かかる力(圧縮・曲げ・衝撃のどれか、大きさ)
- 電気と熱(絶縁が要るか、熱を逃がしたいか・さえぎりたいか)
- 環境(薬品・プラズマ・真空・摩耗・すべり)
- 寸法と精度(形・大きさ・公差・面粗さ)
- 相手の部品(金属との接合・はめあい・熱膨張の差)
- 量と時期(試作の数・量産の数・納期)
- 今の困りごと(割れ・すり減りの写真、今の材料)
企業紹介(ファインセラミックス技術)
材料と焼結から、射出成形、精密な研削・研磨、金属との接合、大型部品、多孔質セラミックスまで、得意分野の違う会社を紹介します。掲載は各社の公開情報にもとづきます。
| 企業 | 材料・ 焼結 | 研削・ 研磨 | 射出 成形 | 金属と 接合 | 大型 部品 | 多孔質 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本ファインセラミックス炭化ケイ素・窒化ケイ素と受託加工(宮城県) | ● | ● | ● | |||
| アテクトセラミックスの射出成形(CIM)(滋賀県) | ● | ● | ||||
| エムケーセラセラミック部品の研削・研磨、多品種少量(長野県) | ● | |||||
| 友玉園セラミックスアルミナ部品のメタライズ・ろう付(東京都) | ● | ● | ||||
| アスザック大型アルミナ部品(全長 4m まで)・高純度 SiC(長野県) | ● | ● | ● | ● | ||
| ナノテム多孔質セラミックスの真空チャック・研削(新潟県) | ● | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いや事例を確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
日本ファインセラミックス株式会社|炭化ケイ素を□1m の大物まで。窒化ケイ素と受託加工も
日本ファインセラミックスとは
宮城県仙台市泉区に本社を置く、ファインセラミックスと複合材料のメーカーです(1984年創立)。株主は日揮ホールディングス(100%)です。

日本ファインセラミックスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 炭化ケイ素(SiC) | 同社が最も得意とするセラミックス。専用の大型真空炉で□1m の部品製作が可能としている |
| 窒化ケイ素(Si₃N₄) | 破壊靭性が高く耐熱衝撃性に優れ、金型の代わりにも使われるとしている。SNP02 は曲げ強度 800MPa、SNP03 は 1,000MPa(同社の表) |
| 受託加工 | 1977年創業の名東技研を 2020年に加工部門とした。研削(平面・内外周・マシニング)、ラッピング、ポリシング、超音波加工、5軸加工機による複雑形状 |
日本ファインセラミックスが解決できる課題
- 半導体製造装置などに使う、大きな炭化ケイ素の部品を作りたい
- 鍛造型・鋳造・ダイカスト機の部品を、耐熱衝撃性の高い窒化ケイ素にしたい
- セラミックス部品の研削・研磨を、少量の試作から頼みたい
出典:日本ファインセラミックス「会社概要」、日本ファインセラミックス「炭化ケイ素 SiC」、日本ファインセラミックス「窒化ケイ素 Si3N4」、日本ファインセラミックス「受託加工サービス」
株式会社アテクト|金属とセラミックスの射出成形(MIM・CIM)を、材料から脱脂焼結まで一貫
アテクトとは
滋賀県東近江市に本社を置く会社です(1969年設立)。衛生検査器材・半導体資材の事業とあわせて、金属とセラミックスの粉末射出成形(PIM)を手がけています。

アテクトの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| PIM の一貫生産 | MIM(金属)と CIM(セラミックス)の双方を製造し、材料・金型・射出成形・脱脂焼結を一貫して手がけるとしている |
| CIM 用フィードストック | 成形助剤とセラミックス粉末を混ぜた成形材料を自社で用意している |
| 窒化ケイ素の薄い基板 | PIM 工法で厚さ 0.32mm±0.15、曲げ強度 700MPa 以上、熱伝導率 70W/mK 以上をクリアしたとしている(顧客の試作依頼にもとづく顧客での評価結果) |
アテクトが解決できる課題
- セラミックス粉末の射出成形(CIM)で、部品を型で成形したい
- 電動車のパワーデバイスに使う、熱を逃がす薄い窒化ケイ素の絶縁板を検討したい
出典:アテクト「企業情報・沿革」、アテクト「製品事例-材料業界」、アテクト「自動車(電動化部品)」、アテクト「PIM」
株式会社エムケーセラ|セラミック部品の研削・研磨を、多品種・小ロット・短納期で
エムケーセラとは
長野県下伊那郡豊丘村にある、セラミック部品・超硬合金部品の加工会社です(2004年設立)。

エムケーセラの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 扱う材料 | アルミナ・窒化ケイ素・ジルコニア・炭化ケイ素・窒化アルミ・ムライト・ステアタイト・マシナブル系セラミック |
| 研削・研磨 | 独自の加工技術で、多品種・小ロットを短納期で柔軟に対応できるとしている |
| 製品 | 半導体製造装置部品、液晶製造装置部品、真空装置部品、医療機械部品、溶接治具など |
エムケーセラが解決できる課題
- 装置のセラミック部品を、1種類ずつ少ない数で、早く作りたい
- 小さな部品や、動く部分の精度が要るセラミック部品を作りたい
出典:エムケーセラ「会社概要」、エムケーセラ「拠点事業案内」、エムケーセラ「ファインセラミックス部品加工」
株式会社友玉園セラミックス|アルミナ部品を加工し、メタライズ・ろう付で金属とつなぐ
友玉園セラミックスとは
東京都大田区に本社を置き、福島県に生産工場をもつ、セラミック関連部品のメーカーです(1882年創業、1955年設立)。

友玉園セラミックスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| アルミナ製品 | メタライズ・ろう付・溶接製品、フィラメント製品、電流導入端子、真空装置用製品、絶縁用製品、耐熱用製品など |
| アルミナの加工 | 外径 Φ140mm まで、長さ約250mm 以内。研磨精度は径 ±0.02(スタンダード)・±0.0025(プレミアム)、厚さ ±0.02・±0.005。ミクロン台の要求には超音波加工機を使う |
| 金属との接合 | アルミナの加工後、金属部品と接合できるとしている |
友玉園セラミックスが解決できる課題
- 電子顕微鏡・質量分析装置・半導体装置に使う、真空用のセラミック部品を作りたい
- アルミナの絶縁部品と金属部品を、ろう付で一体にしたい
出典:友玉園セラミックス「会社概要」、友玉園セラミックス「技術紹介」、友玉園セラミックス「製品使用事例」
アスザック株式会社(ファインセラミックス事業部)|全長 4m までの大型セラミックスと、高純度の SiC
アスザックとは
長野県上高井郡高山村に本社を置く、アスザックのファインセラミックス事業部です(1981年に前身のアキタ理研を設立)。

アスザックの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 大型部品 | 全長 4.0m まで製造できるとし、幅広 1450×1300×20mm、長物 4000×70×50mm などのサイズを示している。ディスプレイ製造装置の絶縁シールドやガラス搬送用ロボットハンドに使われる |
| 炭化ケイ素 | 通常グレード(A-SiC)と、重金属を極力減らした SiC-3N の2グレード。接着剤を使わずに SiC を接合する技術で、流路などを一体構造にできるとしている |
| チャンバー部品 | 半導体製造装置の真空部品として、ウェハーのクランプや耐プラズマ用のアルミナ・炭化ケイ素の部品 |
アスザックが解決できる課題
- 大型ガラス基板を運ぶ長い搬送アームを、分割せずに一体で作りたい
- 半導体製造装置の耐プラズマ部品やヒーター周りの部品を、SiC で作りたい
出典:アスザック ファインセラミックス事業部「会社概要」、アスザック「製造装置用大型部品」、アスザック「炭化ケイ素(SiC)」、アスザック「チャンバー部品」
株式会社ナノテム|2µm の気孔をそろえた多孔質セラミックスの真空チャック
ナノテムとは
新潟県長岡市にある、長岡技術科学大学発のベンチャー企業です(1998年設立)。

ナノテムの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| エアロフィックス | 多孔質セラミックスの真空チャック。主剤と助剤の共晶反応をコントロールする独自の焼結技術で 2µm の気孔を均一に生成し、気孔率 40%としている |
| 使える環境 | ドライ環境・ウェット環境、150℃までの高温環境 |
| 営業内容 | 特殊砥石・真空吸着プレート・平面研削盤の製造販売、精密研削・研磨・ダイシングの受託加工 |
ナノテムが解決できる課題
- 薄い基板やワークを、変形させずに吸着して加工・搬送したい
- 精密な研削・研磨・ダイシングを、受託加工で頼みたい
使われる製品・事例
京セラの材料特性表は、主な用途に、アルミナでは耐摩耗部品・耐食部品・半導体製造装置部品、ジルコニアでは刃物・ハサミ・包丁・ポンプ部品、窒化ケイ素では耐摩耗ライナー・粉砕機・金属溶湯用部品、炭化ケイ素ではメカニカルシール・摺動部品・高温用部品、窒化アルミでは均熱部品・半導体製造装置部品を挙げています。日本ファインセラミックス協会は、2015年度のファインセラミックスの国内生産総額を 2兆4,510億円(前年度比 6.0%増)の見通しとまとめています(日刊工業新聞の報道)。
出典:京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)、ニュースイッチ(日刊工業新聞)「ファインセラミックス国内生産額…」(2015年)
関連する技術
- 研削加工(平面・円筒・センタレス)
- レーザー加工
- 粉末冶金・MIM
- 溶射(セラミックスの皮膜)
- SiC・GaN のパワー半導体
- 放熱シート・グリス
- エンジニアリングプラスチック
- ステンレス鋼
- セラミックス(高温でも使える材料にしたい)
- 耐摩耗材料(摺動部がすり減る)
- 硬さ(技術の基礎知識)
- 熱伝導率(技術の基礎知識)
- 線膨張係数(技術の基礎知識)
- 靭性(技術の基礎知識)
- 材料(物性・劣化)
- 熱
出典・確認日
- 京セラ「ファインセラミックスとは?」
- 京セラ「ファインセラミックスの製造工程」
- 京セラ「ファインセラミック製ナイフのつくり方(事例)」
- 京セラ「ファインセラミックスの特性[材料特性表]」(PDF)
- 京セラ「破壊靱性」
- 京セラ「熱とファインセラミックス-熱伝導率」
- 京セラ「熱膨張」
- 京セラ「ファインセラミックスの強さ-硬度」
- 京セラ「耐熱衝撃性」
- 京セラ「静電チャック」
- ジェイテクト「セラミックボール」
- 京セラ「窒化アルミニウム基板/パッケージとは」
- アスザック「チャンバー部品」
- 京セラ「ファインセラミックス用語辞典(ワイブル分布)」
- 京セラ「ファインセラミックス用語辞典(曲げ強さ)」
- ファインセラミックスセンター「JIS 規格制定への貢献」
- 茨城県工業技術センター「異種材の接合技術に関する研究(第2報)―金属とセラミックスの接合技術―」(PDF)
- 日本ファインセラミックス「会社概要」
- 日本ファインセラミックス「炭化ケイ素 SiC」
- 日本ファインセラミックス「窒化ケイ素 Si3N4」
- 日本ファインセラミックス「受託加工サービス」
- アテクト「企業情報・沿革」
- アテクト「製品事例-材料業界」
- アテクト「自動車(電動化部品)」
- アテクト「PIM」
- エムケーセラ「会社概要」
- エムケーセラ「拠点事業案内」
- エムケーセラ「ファインセラミックス部品加工」
- 友玉園セラミックス「会社概要」
- 友玉園セラミックス「技術紹介」
- 友玉園セラミックス「製品使用事例」
- アスザック ファインセラミックス事業部「会社概要」
- アスザック「製造装置用大型部品」
- アスザック「炭化ケイ素(SiC)」
- ナノテム「会社概要」
- ナノテム「エアロフィックス」
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)「ファインセラミックス国内生産額…」(2015年)
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。
情報の確認日:2026年10月7日 本ページの内容は一般的な情報で、実際の強さ・耐熱・絶縁・加工の可否・費用は、材料のグレード・形・使う条件により異なります。

