ボールねじとは、ねじ軸とナットの溝のあいだにたくさんのボール(鋼球)を入れ、ボールが転がることで、モーターの回転を直線の動きに変える送りねじです。ふつうのねじ(すべりねじ・台形ねじ)は面どうしがすべるのに対し、ボールねじは転がるので摩擦が小さく、THK は、すべりねじに比べて駆動トルクが1/3以下になると説明しています。工作機械・半導体製造装置・ロボットなど、正確に位置を決めたい機械の送りに使われ、案内(ガイド)には、同じく転がりで動くリニアガイド(直動案内)を組み合わせるのが一般的です。
この記事では、ボールねじのしくみと構造、台形ねじとの違い、精度等級(C0〜C10)と転造・精密の違い、予圧、選び方(リード・軸径・寿命・回転数の上限)、リニアガイドの種類と寿命、取り付け・潤滑・熱による伸びの注意を、図と表で順に説明します。ボールねじ・リニアガイドを作る4社も紹介します。
知りたいことから読む
- ボールねじとは何か、しくみを知りたい → ボールねじとは
- 台形ねじ(すべりねじ)との違いを知りたい → 台形ねじとの違い
- 精度等級(C3・C5・C7)の意味を知りたい → 精度等級
- 転造ボールねじと精密ボールねじの違いを知りたい → 転造と精密
- 予圧・バックラッシの意味を知りたい → 予圧
- ボールねじの選び方の手順を知りたい → 選定の手順
- 寿命の計算のしかたを知りたい → 寿命
- リニアガイドとは何かを知りたい → リニアガイドとは
- 熱で位置がずれるのを防ぎたい → 熱による伸び
- ベルト・リニアモーターとの使い分けを知りたい → 送りの方式を比べる
ボールねじとは
ボールねじとは:ボールが転がる送りねじ
ウィキペディア「ボールねじ」は、ボールねじをねじ軸、ナット、ボールなどから構成される機械要素部品とし、ボールを途切れなく回し続けるための循環部品が要る、と説明しています。ねじ軸が回ると、ボールが溝の中を転がりながらナットを押し、ナットが軸に沿ってまっすぐ動きます。ナットの端まで来たボールは、循環部品を通って反対側へ戻ります。

出典:THK「ボールねじ」とウィキペディア「ボールねじ」をもとに AI(Claude)で作成
ねじ軸が1回転したときにナットが進む距離をリードといいます。リードが小さいほど細かく位置を決めやすく、リードが大きいほど速く動かせます。
出典:ボールねじ|ウィキペディア、ボールねじ(特長・駆動トルクの算出例)|THK
台形ねじ(すべりねじ)との違い:効率と駆動トルク
THK の算出例では、質量 500 kg のものをリード 10 mm のねじで動かすとき、ボールねじの効率は 0.96(摩擦係数 0.003)、すべりねじは 0.32(摩擦係数 0.2)としています。ウィキペディア英語版「Ball screw」も、ボールねじの効率を90%程度、同じ大きさの台形(アクメ)ねじを20〜25%としています。効率が高いぶん、同じ荷重を動かすモーターが小さくて済みます。

出典:THK「ボールねじ」の特長(すべりねじとの違い)をもとに AI(Claude)で作成
効率が高いことには裏返しもあります。THK は、ボールねじは直線の動きを回転の動きに変えることも容易だとしています(逆作動)。ナットに軸方向の力がかかると、ねじ軸が回ってしまうことがあるので、縦の軸に使うときは、ナットが自重で落ちないよう、落下防止の安全機構を追加するよう同社は注意しています。台形ねじは効率が低いので、止めた位置で保ちやすい反面、動かすのに大きな力が要ります。
出典:ボールねじ(特長・駆動トルクの算出例)|THK、Ball screw|Wikipedia(英語版)、ボールねじの取扱い上の注意|THK
ボールの循環方式
ナットの中でボールを戻す方式には、リターンチューブ式、エンドデフレクタ式、エンドキャップ式、こま式、リターンプレート式、ミドルデフレクタ式などがあります(ウィキペディア「ボールねじ」)。ウィキペディア英語版は、ナットの外側の管でボールを戻す方式、ボールがねじ山1つ分だけ移って戻るボタン(こま)式、ナットの端の穴を通して戻すエンドキャップ式を説明しています。方式によってナットの外径・長さや、向いているリードが変わるので、メーカーのカタログで形番ごとに確かめます。
出典:ボールねじ|ウィキペディア、Ball screw|Wikipedia(英語版)
ボールねじの種類と精度等級
転造ボールねじと精密ボールねじ
THK はボールねじを精密ボールねじと転造ボールねじに分けています。精密ボールねじは、温度を管理した工場で研削・検査して精度を保証したもの、転造ボールねじは、ねじ溝を転造(ダイスで押して形を作る加工)でつくるものです。THK の表では、転造ボールねじの精度等級は C7・C8・C10 です。作れる長さも違い、THK の例では、軸の外径 16 mm の精密ボールねじの最大製作長さは C5 で 1,100 mm、外径 20 mm の転造ボールねじは C7 で 2,000 mm です。
| 比べること | 精密ボールねじ | 転造ボールねじ |
|---|---|---|
| つくり方 | ねじ溝を研削して仕上げ、検査で精度を保証(THK) | ねじ溝を転造でつくる |
| 精度等級(THK の表) | C0・C1・C2・C3・C5(C7 もある) | C7・C8・C10 |
| 向いている使い方(編集部の整理) | 工作機械・測定機・半導体製造装置など、位置決めの精度が要る所 | 搬送・組立装置など、精度より価格を重く見る所 |
出典:ボールねじ(特長・駆動トルクの算出例)|THK、ボールねじの精度(リード精度・軸方向すきま・予圧)|THK、ボールねじの最大製作長さ|THK
精度等級:C0〜C10 の意味
ボールねじのリードの精度は JIS B 1192(ISO 3408)で決まっていて、THK は精度等級 C0〜C5 は直線性と方向性で、C7〜C10 は 300 mm に対する移動量誤差で規定されている、と説明しています。THK の表では、ねじ部 300 mm の中での変動の許容値は C0 で 3.5 μm、C3 で 8 μm、C5 で 18 μm、移動量誤差は C7 で ±50 μm、C8 で ±100 μm、C10 で ±210 μm(いずれも 300 mm あたり)です。

出典:THK「ボールねじの精度」の表1・表2(JIS B 1192 に準拠した許容値)をもとに AI(Claude)で作成
THK の表では、位置決め用は等級 0・1・3・5、搬送用は 0・1・3・5・7・10に分けています。必要以上に高い等級を選ぶと価格と納期が増えるので、機械に要る位置の精度から決めます(位置の精度全体の考え方は課題「寸法・位置の精度を上げたい」)。
出典:ボールねじの精度(リード精度・軸方向すきま・予圧)|THK
軸方向すきまと予圧:バックラッシをなくす
ねじ軸とナットのあいだの軸方向のすきまは、向きを変えたときのガタ(バックラッシ)になります。THK の精密ボールねじの軸方向すきまは、記号 G0 が 0 以下(予圧)、GT が 0〜0.005 mm、G1 が 0〜0.01 mm、G2 が 0〜0.02 mm、G3 が 0〜0.05 mm です。すきまをゼロにし、さらに荷重による変位を小さくするために予圧(ボールに前もって押し合う力をかけておくこと)を与え、高精度の位置決めでは予圧を与えるのが一般的だ、と同社は説明しています。

出典:THK「ボールねじの精度」の予圧の説明とウィキペディア英語版「Ball screw」をもとに AI(Claude)で作成
THK によると、予圧を与えたボールねじは、予圧荷重の約3倍の軸方向荷重まで、変位が予圧なしの約1/2になります。そのため適正な予圧荷重は最大の軸方向荷重の1/3が目安で、予圧が大きすぎると寿命と発熱に悪いので、最大でも軸方向の基本動定格荷重(Ca)の10%を目安にする、としています。予圧の方式には、溝より少し大きなボールを入れるもの、2つのナットを押し広げるダブルナット、1つのナットの途中でリード(溝のピッチ)をずらすものがあります。
出典:ボールねじの精度(リード精度・軸方向すきま・予圧)|THK、ボールねじの剛性|THK、Ball screw|Wikipedia(英語版)
ボールねじの選び方(選定の手順)
選定の手順
THK の選定手順をもとに整理すると、ボールねじは次の順で選びます。
- 使用条件を決める:動かす質量、ストローク、速さ、加減速、位置決めの精度、寿命の目標、使う環境
- 精度等級と軸方向すきまを選ぶ(前の章)
- 軸の長さを仮に決める
- リードと軸径を選ぶ:最高速度とモーターの回転数からリードを、荷重と長さから軸径を決める
- ねじ軸の取付け方法(両端の支え方)を決める
- 許容軸方向荷重(座屈)と許容回転数(危険速度・DN 値)を確かめる
- ナットの形番を選ぶ
- 寿命と剛性を確かめる
- 位置決めの精度、回転トルク、駆動モーターを確かめる
- 安全設計(潤滑・防塵)を決める
モーターの容量の決め方は、課題「サーボ・ステッピングモーターの容量を負荷から計算して選びたい」で計算例とあわせて説明しています。
寿命:荷重の3乗に反比例する
THK は、ボールねじの定格寿命(L10)を、同じ条件で動かした同じボールねじの群の90%が、フレーキング(表面のはく離)を起こさずに到達できる総回転数としています。定格寿命は、基本動定格荷重 Ca と軸方向荷重 Fa から求め、振動や衝撃は荷重係数 fw で割り増して考えます。式は転がり軸受と同じ形で、一般に L10 ={Ca ÷(fw × Fa)}³ × 10⁶ 回転と書きます(係数と式の細部は各社のカタログで確かめてください)。日本精工の技術レポートは、荷重係数 fw を衝撃のない円滑な運転で 1.0〜1.2、普通の運転で 1.2〜1.5、衝撃・振動を伴う運転で 1.5〜3.0としています。

出典:THK「ボールねじの寿命」「LMガイド」(寿命は荷重の3乗に反比例)をもとに AI(Claude)で作成
THK は LMガイドの説明で、寿命は(ボール1個の許容)荷重の3乗に比例するとしています。荷重が3乗で効くので、荷重が2倍になると寿命は1/8になります。動き方によって荷重が変わるときは、3乗で平均した荷重で計算します。計算の手順と例は課題「ボールねじの寿命・剛性を見極めたい」で、軸径 20 mm・リード 10 mm の例を使って説明しています。
出典:ボールねじの寿命|THK、寿命計算(技術レポート)|日本精工、LMガイド(特長)|THK
回転数と押す荷重の上限:危険速度・DN 値・座屈
ねじ軸は細長い棒なので、ある回転数で共振します(危険速度)。THK は、許容回転数は、ねじ軸の危険速度と DN 値(ボール中心径 × 回転数)の両方から求めるとし、危険速度の式には安全係数 0.8 を掛けています。押す向きの荷重では、ねじ軸が座屈(細い棒が横に曲がって折れること)するので、座屈荷重の式に安全係数 0.5 を掛け、降伏応力とあわせて確かめます。

出典:THK「許容軸方向荷重」「許容回転数」とはりの振動・座屈の一般的な関係(編集部の整理)をもとに AI(Claude)で作成
細長い棒の共振の回転数と座屈荷重は、一般に両端の支え方(固定-固定、固定-支持、固定-自由)で係数が変わり、両端をしっかり支えるほど高くなります(編集部の整理。係数の値は各社のカタログで確かめてください)。長いストロークで速く動かしたいときは、軸を太くする、支え方を変える、リードを大きくして回転数を下げる、ナットを回す方式にする、などを検討します。
出典:許容回転数(危険速度・DN値)|THK、許容軸方向荷重(座屈荷重)|THK
研究で分かっていること:寿命式と熱
ボールねじの寿命と熱は、研究でも扱われています。清水・下田(明治大学、2006年)は、現在の ISO の基本動定格荷重の計算がアンギュラ玉軸受の方法にもとづいていて、リード・条数・循環回路の数などが式に表れないと指摘し、直動軸受と同じく 100 km を単位とする寿命式を提案しています。熱については、大塚ほか(2016年)が、ボールねじの熱源をねじとナットの相対回転と支持軸受の2つとし、ペルチェ素子で冷やすことで、長さ 400 mm のボールねじの膨張量を 18 μm から 1 μm に減らしたと報告しています。野﨑ほか(2017年)は、ナットの外側を水冷する2種類のジャケットを比べ、ナットの表面温度からボールねじの温度を推定できることを示しています。
出典:清水・下田:ボールねじの基本動定格荷重と寿命式の理論解析(精密工学会論文集 72巻3号、2006年)|J-STAGE、大塚ほか:精密位置決め装置のボールねじ熱膨張のペルチェモジュール冷却による防止(精密工学会誌 82巻11号、2016年)|J-STAGE、野﨑ほか:ボールねじにおけるナット外筒の水冷却による温度上昇の低減(精密工学会誌 83巻1号、2017年)|J-STAGE
リニアガイド(直動案内)の種類と選び方
リニアガイドとは:転がりで動く案内
リニアガイドは、レールとブロック(キャリッジ)のあいだのボールやローラが転がって、テーブルをまっすぐ案内する部品です。ボールはブロックの端(エンドプレート)で向きを変えて循環します。THK は、LMガイド(同社の商品名)を「世界で初めて直線運動部の転がり化を実用化」したものとし、同社の沿革では1970年代に LMガイドを開発し、1990年代にリテーナ入りの LMガイドを世界で初めて開発した、としています。

出典:THK「LMガイド」の特長と日本トムソンの製品ページをもとに AI(Claude)で作成
すべり案内との違いについて THK は、すべり案内のような摩耗がないので、偏摩耗による摺動面や精度の再調整が要らず、潤滑も少量のグリースを定期的に補給するだけで済む(すべり案内は多量の潤滑油を強制的に送る必要がある)と説明しています。同社の研削盤の例では、テーブルの駆動に使うモーターが、すべり案内の 38.05 kW から 3.7 kW になりました。一方、ウィキペディア英語版「Linear-motion bearing」は、転がりの案内は汚れに弱く、シールと潤滑が要るとしています。
出典:LMガイド(特長)|THK、THKの歴史・沿革|THK、Linear-motion bearing|Wikipedia(英語版)
リニアガイドの種類:ボール形とローラ形・ミニチュア形
| 種類 | 特徴(出典の説明) | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ボール形 | ボールが転がる。総ボールとボールリテーナ入りがある(THK)。4方向等荷重形は、上・下・横のどの向きの荷重にも同じ定格荷重(THK) | 搬送装置・一般の産業機械 |
| ローラ形 | 円筒ころが転がり、ボールより大きな荷重と剛性。THK はローラーの形式に、工作機械向けの「超々重荷重高剛性形」を挙げている | 工作機械(マシニングセンタ・研削盤) |
| ミニチュア形 | 幅・高さが小さい。日本トムソンのリニアウェイL のステンレス鋼製は、医療機器・半導体製造装置などクリーンルーム内の機械に向く、と同社は説明 | 医療機器・半導体・小さな装置 |
| 潤滑ユニット付き | 潤滑剤を含ませた部品を組み込み、給油の手間を減らす(日本精工の K1、日本トムソンの Cルーブ) | 給油しにくい所・切削液や粉じんの多い所 |
出典:LMガイドの形式の選定|THK、LMガイドの等価荷重(4方向等荷重形)|THK、リニアウェイL|日本トムソン、リニアローラウェイスーパーX|日本トムソン、メンテナンスフリーのリニアガイド(NSK K1)|日本精工、Cルーブリニアウェイ LV|日本トムソン
THK によると、ボール1個あたりの許容荷重は、R 溝(ボール径の52%の半径の溝)で接すると、平らな面で接するときの13倍になり、寿命は荷重の3乗に比例するので約2,200倍の差になります。リニアガイドの溝が円弧の形をしているのはこのためです。
リニアガイドの寿命・精度・予圧
リニアガイドの寿命は、回転数ではなく走行距離で表します。THK は、ボールのリニアガイドは定格寿命が 50 km、ローラーのリニアガイドは 100 km になる基本動定格荷重を使って計算するとし、比べるときはどちらの定義かに注意が要る(必要なら ISO 14728-1 で換算する)としています。寿命は、硬さ・温度・ブロックを近づけて並べたとき(接触係数)・速度と振動(荷重係数)で補正します。
| 項目 | THK の区分 |
|---|---|
| 精度等級 | 並級、上級(H)、精密級(P)、超精密級(SP)、超超精密級(UP) |
| ラジアルすきま(予圧) | 普通すきま、C1 すきま(軽予圧)、C0 すきま(中予圧。振動・衝撃のかかる所、重切削の工作機械など) |
| 給脂の目安 | 走行距離 100 km(3〜6か月)。最終的には実機で決める |
THK は、往復運動の振動・衝撃を考えると、マイナスすきま(予圧を与えた状態)を選ぶのが寿命と精度によいとしています。2本のレールを並べて使うと、取付面の真直度・平行度の誤差が平均されます。同社の例では、取付面の精度が上下方向 92.5 μm のとき、テーブルの走り精度は 15 μm(約1/6)でした。
出典:LMガイドの定格寿命|THK、LMガイドの精度規格|THK、LMガイドのラジアルすきま(予圧)の選定|THK、LMガイドの取扱い上の注意|THK、LMガイド(特長)|THK
転がりの案内は、すべりの案内より振動が減衰しにくいことが課題として知られています。日本精工の技術レポートは、減衰のしやすさをすべりガイド > 4点接触タイプ > 2点接触タイプの順としています。菊池ほか(2009年)は、リニアガイドは高精度・高剛性・低摩擦だが減衰が小さく振動しやすいとして、ER 流体で減衰を電気的に変えられる案内を試作し、評価しています。
出典:NSKリニアガイドの吸振性(技術レポート)|日本精工、菊池・古荘・山口:高分子液晶系ER流体を用いたダンピング制御可能なリニアガイドシステムの高せん断速度域における性能評価(日本フルードパワーシステム学会論文集 40巻1号、2009年)|J-STAGE
取り付け・潤滑・トラブルの注意
取り付けの注意:芯ずれ・倒れ・横からの荷重
THK は、ねじ軸の支持部とナットの芯ずれや倒れがあると、寿命が極端に短くなることがあるとし、ボールねじには LMガイドやボールスプラインなどの案内要素を設けて使うよう注意しています。ナットをストロークの端より先へ動かす(オーバーランする)と、ボールの脱落・循環部品の損傷・溝の圧痕が起きる、としています。
- 芯ずれ・倒れ:寿命が極端に短くなる(THK)
- 案内要素(リニアガイドなど)を設けて使う(THK)
- オーバーラン:ボールの脱落・循環部品の損傷・圧痕(THK)
- リニアガイドに位置決めピンを無理に打ち込むと、転動面に圧痕ができる(THK)
- 縦の軸:ナットの自重での落下に、落下防止の安全機構を(THK)
出典:ボールねじの取扱い上の注意|THK、LMガイドの取扱い上の注意|THK
潤滑と防塵
THK は、ボールねじもリニアガイドも、走行距離 100 km(3〜6か月)を目安に給脂し、最終的な間隔と量は実機で決めるとしています。切り粉・クーラント・水が入る所では、ジャバラやカバーで防ぎます。リニアガイドを小さなストロークで往復させ続けると、油膜ができにくくフレッチング(細かな往復で起きる摩耗)を生じることがあるので、耐フレッチング性のよいグリースを使い、ときどきブロックの長さくらい動かして油膜を作るよう勧めています。日本精工は、潤滑ユニット「NSK K1」を組み込んだリニアガイドを、給油の配管が難しい所や、切削液・鋳物の粉・溶接のスパッタで油が奪われる所に向くと説明しています。グリースの選び方は技術「グリース・固体潤滑」で説明しています。
出典:ボールねじの取扱い上の注意|THK、LMガイドの取扱い上の注意|THK、メンテナンスフリーのリニアガイド(NSK K1)|日本精工
熱による伸び:1 m あたり 1℃で 12 μm
ボールねじは、回転するとナットと支持軸受で熱が出て、ねじ軸が伸びます。THK によると、ねじ軸の温度が 1℃上がると、1 m あたり 12 μm 伸びます(熱膨張係数 12×10⁻⁶/℃)。速く動かすほど熱が増え、位置決めの精度が落ちます。

出典:THK「位置決め精度の検討」の熱変位対策(熱膨張係数 12×10⁻⁶/℃)をもとに AI(Claude)で作成
THK は対策として、次の方法を挙げています。
- ボールねじと支持軸受の予圧をできるだけ小さくする
- リードを大きくして回転数を下げる
- ねじ軸の外周を潤滑油や空気で冷やす
- ねじ軸にプリテンション(引っぱる力)を与える
- 温度の上がり方(2〜5℃)を見込んで、移動量の目標をマイナス側にしておく(1 m あたり −0.02〜−0.06 mm)
送りの方式を比べる:ボールねじ・台形ねじ・ベルト
送りの方式を比べる
| 比べること | ボールねじ | 台形ねじ(すべりねじ) | タイミングベルト |
|---|---|---|---|
| 動かし方 | ボールの転がり | 面のすべり | 歯付きベルトをプーリで送る |
| 効率 | 90%程度(ウィキペディア英語版) | 20〜25%程度(同) | — |
| 位置の精度 | 高い(精度等級 C0〜C10 で選べる) | ボールねじより低い | ベルトの伸びに左右される |
| 止めたときの保持 | 逆作動しやすい(縦軸は落下防止が要る) | 保ちやすい | ブレーキが要る |
| 長いストローク | 危険速度・座屈で長さに限りがある | 同じく長さに限りがある | 長くしやすい |
| 価格(編集部の整理) | 台形ねじより高い。転造は比較的安い | 安い | 安い |
出典:THK のボールねじの特長、ウィキペディア英語版「Ball screw」、技術「Vベルト」の歯付きベルトの説明をもとに編集部が整理。
もっと速く・長く・ガタなく動かしたいときは、ナットとねじ軸を使わず、磁石とコイルで直接テーブルを動かすリニアモーターも使われます(制御は技術「PID制御・モーション制御」)。モーターの回転を落として力を上げる所には、減速機(製品「減速機・歯車」)を組み合わせます。
企業紹介(ボールねじ・リニアガイドの技術)
相談先は、困りごとで変わります。
| 困りごと | 相談先の例 |
|---|---|
| 工作機械・重い荷重の送りと案内を選びたい | ボールねじとリニアガイド(ローラ形を含む)を両方出しているメーカー |
| 給油の手間を減らしたい・油が奪われる環境で使いたい | 潤滑ユニット付きのリニアガイドのメーカー |
| 小さな装置・クリーンルームで使いたい | ミニチュア形・ステンレス鋼のリニアガイド、小径ボールねじのメーカー |
| 寿命の計算・修理・再生を相談したい | 課題「ボールねじの寿命・剛性を見極めたい」で紹介している修理・計測の会社 |
ここでは、ボールねじ・リニアガイドを作る4社を紹介します。得意な分野が重ならないように選びました。4社とも、公式サイトの文章・画像の複製や転載を規約で制限しているので、写真は載せていません。
| 会社 | ボール ねじ | リニア ガイド | 小形・ ミニチュア | ローラ形 ガイド | 潤滑 ユニット |
|---|---|---|---|---|---|
| THKLMガイド・ボールねじ(東京都港区) | ● | ● | ● | ● | |
| 日本精工(NSK)ボールねじ・リニアガイド・潤滑ユニット(東京都品川区) | ● | ● | ● | ● | |
| 日本トムソン(IKO)リニアウェイ・ローラウェイ(東京都港区) | ● | ● | ● | ● | |
| 黒田精工小径・精密ボールねじ(川崎市幸区) | ● | ● | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いを確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
THK株式会社|LMガイドとボールねじ(転がりの直線運動)
THKとは
東京都港区芝浦に本社を置く会社です(同社の会社概要)。同社の沿革では、1970年代に LMガイドを開発し、1990年代にリテーナ入りの LMガイドを世界で初めて開発した、としています。
THKの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| LMガイド | 4列サーキュラーアーク溝2点接触の構造で、取付面の狂いをブロックの中で吸収する、と同社は説明。ボール形(総ボール・ボールリテーナ入り)とローラー形、ミニチュア形がある |
| 精密・転造ボールねじ | 精度等級 C0〜C10。すべりねじに比べて駆動トルクが1/3以下、と同社は説明 |
| 選定の技術資料 | 選定手順・精度・寿命・危険速度・座屈・熱変位対策をウェブで公開 |
THKが解決できる課題
- すべり案内を転がりに替えて、駆動の力と保守を減らしたい
- 取付面の精度が出ないところで、走りの精度を上げたい
- ボールねじの精度等級・すきまを、表で比べて選びたい
公開されている実績・用途
- LMガイドの主な用途:工作機械(マシニングセンタ・研削盤など)、搬送装置(同社の製品ページ)
出典:会社概要|THK、THKの歴史・沿革|THK、LMガイド(特長)|THK、ボールねじ(特長・駆動トルクの算出例)|THK、ボールねじの精度(リード精度・軸方向すきま・予圧)|THK
日本精工株式会社(NSK)|ボールねじ・リニアガイドと潤滑ユニット「NSK K1」
日本精工とは
東京都品川区大崎に本社を置く会社です(同社の会社概要)。軸受(ベアリング)のほか、ボールねじ・リニアガイドなどの精機製品を作っています。
日本精工の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| NSK K1 | 潤滑ユニット NSK K1 を組み付けたリニアガイドで、5年間または 10,000 km 以上のメンテナンスフリー化ができる、と同社は説明 |
| 技術レポート | 寿命計算(荷重係数)、リニアガイドの吸振性などを公開 |
日本精工が解決できる課題
- 給油の配管や補給の手間を減らしたい
- 切削液・鋳物の粉・溶接のスパッタで潤滑油が奪われる所で使いたい
公開されている実績・用途
- NSK K1:自動車の製造ライン、とくにスパッタが飛ぶ溶接ライン(同社のページ)
出典:会社概要|日本精工、メンテナンスフリーのリニアガイド(NSK K1)|日本精工、寿命計算(技術レポート)|日本精工、NSKリニアガイドの吸振性(技術レポート)|日本精工
日本トムソン株式会社(IKO)|小形のリニアウェイ・ころのローラウェイ・潤滑部品 Cルーブ
日本トムソンとは
東京都港区高輪に本社を置く会社です(同社の会社概要)。直動案内機器(リニアウェイなど)とニードルベアリングを、IKO のブランドで作っています。
日本トムソンの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| リニアウェイL | 鋼球2条列の4点接触で、極めて小形。ステンレス鋼製は大きさ1〜25、と同社は説明 |
| Cルーブリニアウェイ | 潤滑部品 Cルーブを内蔵し、長期メンテナンスフリーをうたう。LV は大きさ 7・9・12 の超小形 |
| リニアローラウェイスーパーX | 4条列の円筒ころ。大きさ 8〜100。取付寸法がボールのリニアウェイH と同じで、置き換えやすい、と同社は説明 |
日本トムソンが解決できる課題
- 小さな装置・クリーンルームの中で直線の案内を使いたい
- 給油の管理を減らしたい
- ボールの案内を、剛性の高いころの案内に置き換えたい
公開されている実績・用途
- リニアウェイL(ステンレス鋼製):医療機器・半導体製造装置などクリーンルーム内の機械。スーパーX:工作機械、半導体・液晶関連の製造装置(同社の製品ページ)
出典:会社概要|日本トムソン、リニアウェイL|日本トムソン、Cルーブリニアウェイ LV|日本トムソン、リニアローラウェイスーパーX|日本トムソン
黒田精工株式会社|小径のボールねじと選定の道具
黒田精工とは
神奈川県川崎市幸区堀川町に本社を置く会社です(同社の会社概要)。駆動システム(ボールねじ・ボールねじアクチュエータなど)、金型システム、機工・計測システムの事業をしています。
黒田精工の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 小径ボールねじ「Compact Family KURODA」 | サイジングマップから合う範囲を選べ、装置のテーブルを低くしたりユニットの面積を小さくしたりするのに役立つ、と同社は説明 |
| GT シリーズ | 小径・デフレクタ方式の転造ボールねじ。ナットは業界最小クラス、と同社は説明 |
| 選定ガイド | 選定ソフト、サイジングマップ、推奨の軸端の加工図をウェブで提供 |
黒田精工が解決できる課題
- 小さなスペースにボールねじを入れたい
- 選定の手間を減らしたい
公開されている実績・用途
- 主な用途:半導体製造装置、産業用ロボット、工作機械の搬送・位置決め(同社の製品ページ)
出典:会社概要|黒田精工、ボールねじ 製品一覧|黒田精工、Compact Family KURODA|黒田精工、GTシリーズ|黒田精工、ボールねじ選定ガイド|黒田精工、駆動システム|黒田精工
よくある質問
- ボールねじとは、わかりやすく言うと?
- ねじ軸とナットのあいだでボールが転がる送りねじです。モーターの回転を、摩擦の少ない直線の動きに変えます(ボールねじとは)。
- ボールねじと台形ねじの違いは?
- ボールねじは転がり、台形ねじは面がすべります。THK の例では効率がボールねじ 0.96、すべりねじ 0.32 で、ボールねじは駆動トルクが1/3以下になります。その代わりボールねじは逆作動しやすく、縦の軸では落下防止が要ります(台形ねじとの違い)。
- 精度等級 C5 と C7 の違いは?
- C5 までは 300 mm の中での変動などで決まり、THK の表で C5 の変動は 18 μm。C7 は 300 mm 動かしたときの移動量誤差が ±50 μm です。C7 は主に転造ボールねじの等級です(精度等級)。
- 予圧とは?
- ボールに前もって押し合う力をかけ、すきま(バックラッシ)をなくし、剛性を上げることです。THK は、適正な予圧荷重を最大の軸方向荷重の1/3、最大でも Ca の10%を目安としています(予圧)。
- ボールねじの寿命はどう計算しますか?
- 基本動定格荷重 Ca と軸方向荷重の比の3乗に 10⁶ 回転を掛けて、総回転数で求めます。荷重が2倍なら寿命は1/8です(寿命)。
- リニアガイドの寿命は?
- 走行距離で表します。THK は、ボール形は 50 km、ローラー形は 100 km を基準にした基本動定格荷重で計算するとしています(リニアガイドの寿命)。
- ボールねじにグリースはどのくらいの間隔で入れますか?
- THK は走行距離 100 km(3〜6か月)を目安とし、最終的には実機で決めるとしています(潤滑と防塵)。
- ボールねじが熱で伸びるのはどのくらい?
- THK によると、1 m あたり 1℃で 12 μm です。予圧を小さくする、冷やす、プリテンションを与えるなどの対策があります(熱による伸び)。
回答は、このページの出典をもとに編集部がまとめたものです。
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出典・確認日
- ボールねじ|ウィキペディア
- ボールねじ(特長・駆動トルクの算出例)|THK
- Ball screw|Wikipedia(英語版)
- ボールねじの取扱い上の注意|THK
- ボールねじの精度(リード精度・軸方向すきま・予圧)|THK
- ボールねじの最大製作長さ|THK
- ボールねじの剛性|THK
- ボールねじの選定手順|THK
- ボールねじの寿命|THK
- 寿命計算(技術レポート)|日本精工
- LMガイド(特長)|THK
- 許容回転数(危険速度・DN値)|THK
- 許容軸方向荷重(座屈荷重)|THK
- 清水・下田:ボールねじの基本動定格荷重と寿命式の理論解析(精密工学会論文集 72巻3号、2006年)|J-STAGE
- 大塚ほか:精密位置決め装置のボールねじ熱膨張のペルチェモジュール冷却による防止(精密工学会誌 82巻11号、2016年)|J-STAGE
- 野﨑ほか:ボールねじにおけるナット外筒の水冷却による温度上昇の低減(精密工学会誌 83巻1号、2017年)|J-STAGE
- THKの歴史・沿革|THK
- Linear-motion bearing|Wikipedia(英語版)
- LMガイドの形式の選定|THK
- LMガイドの等価荷重(4方向等荷重形)|THK
- リニアウェイL|日本トムソン
- リニアローラウェイスーパーX|日本トムソン
- メンテナンスフリーのリニアガイド(NSK K1)|日本精工
- Cルーブリニアウェイ LV|日本トムソン
- LMガイドの定格寿命|THK
- LMガイドの精度規格|THK
- LMガイドのラジアルすきま(予圧)の選定|THK
- LMガイドの取扱い上の注意|THK
- NSKリニアガイドの吸振性(技術レポート)|日本精工
- 菊池・古荘・山口:高分子液晶系ER流体を用いたダンピング制御可能なリニアガイドシステムの高せん断速度域における性能評価(日本フルードパワーシステム学会論文集 40巻1号、2009年)|J-STAGE
- 位置決め精度の検討(熱変位対策)|THK
- 会社概要|THK
- 会社概要|日本精工
- 会社概要|日本トムソン
- 会社概要|黒田精工
- ボールねじ 製品一覧|黒田精工
- Compact Family KURODA|黒田精工
- GTシリーズ|黒田精工
- ボールねじ選定ガイド|黒田精工
- 駆動システム|黒田精工
※製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。本ページでは数値と事実だけを要約し、各社の文章・図・写真は転載していません。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。
情報の確認日:2026年10月31日 本ページの内容は一般的な情報です。精度・寿命・係数は出典の目安で、実際の値は形番と使い方で変わります。設計では各メーカーの最新の設計資料を確かめてください。各社の製品は、その会社の公開情報をもとに紹介しています。

