トルク

スパナで締めるボルト、減速機付きのモーター、トルクレンチが作業台に並ぶイメージ(AI で生成)

トルクは、軸やねじを「回そうとする力」の大きさです。モーターのカタログ、ボルトの締付け、車のエンジンの性能など、回る物が出てくる所には必ず出てきます。このページでは、トルクの意味と単位、力のかけ方による違い、出力・回転数との関係、減速機でトルクが増えるしくみ、モーターのトルクの特性、モーターを選ぶときの計算、ねじの締付けトルク、トルクの測り方を、できるだけやさしく説明します。

目次

ひとことで言うと

トルクとは

力 × 回転軸からの距離で表される、回そうとする力の大きさです。単位は N·m(ニュートンメートル)。同じ力でも、軸から遠い所を押すほどトルクは大きくなります。

ウィキペディア日本語版は、トルクを回転軸のまわりにはたらく力のモーメントとし、一般的には「ねじりの強さ」として表されるとしています。力矩・ねじりモーメントとも呼ばれます。

同じ100Nの力を、ボルトから0.1mの所と0.3mの所にかけたときのトルク10N·mと30N·mを比べた計算例
図1 同じ力でも、柄が長いほどトルクは大きい
出典:ウィキペディア日本語版、コトバンクをもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

スパナの先に 100N(約10kg の物の重さくらい)の力をかけるとき、柄の長さが 0.1m なら 10N·m、0.3m なら 30N·m です(編集部の計算)。柄が3倍なら、同じ力で3倍のトルクになります。日本大百科全書(ニッポニカ)も、トルクは軸を回転させる力に軸心からの距離を掛けたもので、同じトルクを出すには中心からの距離が遠いほど小さな力でよい、としています。固いねじを長いスパナで回すと楽なのはこのためです。

出典:トルク|ウィキペディア日本語版、トルク(日本大百科全書・世界大百科事典)|コトバンク

定義と単位:力 × 腕の長さ

トルクの式

T = F × r(F:力[N] r:回転軸から力の作用線までの距離(腕の長さ)[m])

力が腕に斜めにかかるときは、腕に直角な成分だけが効く:T = F × r × sinθ

スパナの柄に斜めに力をかけたとき、柄に直角な成分F sinθだけがトルクになることを示した図と、角度90°・60°・30°・0°のトルクの表
図2 効くのは、柄に直角な力の成分だけ
出典:ウィキペディア日本語版をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

ウィキペディア日本語版は、トルクを「回転に寄与する実効的な力の大きさ × 腕の長さ」と表しています。柄の向きにまっすぐ押したり引いたりしても、ねじは回りません。柄に直角に力をかけたときがいちばん大きなトルクになり、100N・腕0.2m なら、直角で 20N·m、60°なら約17.3N·m、30°なら 10N·m です(編集部の計算)。

トルクには向きもあります。時計回りと反時計回りのトルクが同じ大きさなら、物は回り始めません(つり合い)。日本機械学会の機械工学事典は、材料力学の言葉として、棒の端に偶力のモーメントを加えると棒がねじられ、このモーメントをトルクまたはねじりモーメントというとしています。

出典:トルク|ウィキペディア日本語版、トルク|日本機械学会 機械工学事典

単位の換算

N·m、N·cm、kgf·m、kgf·cm、lbf·ft、ozf·inをN·mに直す換算表
図3 トルクの単位の換算
出典:TONEをもとに AI(Claude)で作成

今のトルクの単位は N·m です。工具メーカーの TONE は、1999年(平成11年)10月の計量法の改正で、トルクの単位が N·m になったとしています。古い資料やカタログでは kgf·m や kgf·cm が使われていて、1kgf·m = 9.80665N·m、1kgf·cm = 0.09807N·m です(TONE)。米国の資料の lbf·ft(ポンドフィート)は 1lbf·ft = 1.356N·m です。

例えば、古いカタログの 30kgf·cm は、30 × 0.0980665 ≒ 2.94N·m です(編集部の計算)。数字だけを見て、単位の違う値をそのまま比べないようにします。

出典:トルク値の国際単位系換算|TONE、トルクの単位と換算表・締付けトルク値参考資料|TONE

出力・回転数とトルクの関係

出力1.5kWで一定のとき、750r/minで約19.1N·m、1,500r/minで約9.55N·m、3,000r/minで約4.77N·mになることを示したグラフ
図4 同じ出力なら、回転が遅いほどトルクは大きい
出典:ウィキペディア日本語版、三菱電機をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

出力とトルク

P = T × ω(P:出力[W] ω:角速度[rad/s]= 2π × N ÷ 60)

回転速度 N[r/min]、出力 P[kW]なら:T ≒ 9,550 × P ÷ N[N·m]

モーターやエンジンの出力(動力)は、トルクと回転の速さの掛け算です。三菱電機のギヤードモータの技術資料は、所要動力を P₀ = T × N ÷(9,550 × η)[kW](T:必要トルク[N·m]、N:回転速度[r/min]、η:機械効率)としています。9,550 は、kW を W に直す1,000 と、r/min を rad/s に直す 60 ÷ 2π(約9.55)を掛けた数です(編集部の解説)。

同じ 1.5kW のモーターでも、1,500r/min なら約9.55N·m、750r/min なら約19.1N·m のトルクを出せる計算です(編集部の計算。損失は考えない)。出力が同じなら、回転を半分にするとトルクは2倍になります。「力持ち」か「速い」かは、出力の配分のしかたの違いです。

出典:ギヤードモータ 技術編|三菱電機、トルク|ウィキペディア日本語版

減速機でトルクが増えるしくみ

モーター1,500r/min・1.0N·mが、減速比10・効率0.9の減速機を通ると150r/min・9.0N·mになる模式図
図5 減速機を通すと、トルクは「減速比 × 効率」倍に
出典:ミスミ、三菱電機をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

オリエンタルモーターのカタログ(ミスミの配信)は、モーターにギヤヘッド(減速機)を組み合わせると、必要な回転速度に減速したり、トルクをアップしたりできるとしています。減速比 i の減速機を通すと、回転は 1/i に遅くなり、トルクはおよそ i × 効率 倍になります。減速比10・効率0.9なら、1.0N·m・1,500r/min のモーターで、出力軸は 9.0N·m・150r/min です(編集部の計算)。

出力(トルク × 回転の速さ)は、減速機を通っても増えません。効率の分だけ少し減ります(この例では約157W → 約141W)。また、減速機には大きさと減速比ごとに許容トルクが決められているので、出力軸のトルクがそれを超えないように選びます(編集部の解説)。減速機の選び方は製品「減速機・歯車」も参照してください。

出典:ギヤヘッド(オリエンタルモーター総合カタログ)|ミスミ

モーターのトルクは回転速度で変わる

誘導モーターの起動トルク・最大トルク・定格トルクと、ステッピングモーターの保持トルク・プルアウトトルクの曲線を示した模式図
図6 モーターのトルクは、回転速度で変わる
出典:オリムベクスタをもとに AI(Claude)で作成

モーターが出せるトルクは、回転速度によって変わります。カタログには、回転速度とトルクの関係のグラフ(特性曲線)が載っています。

  • 誘導モーター(交流):止まった状態から回り始めるときの起動トルク、途中で最も大きくなる最大トルク(停動トルク)、決められた条件で連続して使える定格トルクがあり、ふだんは定格トルクの近くで回します(編集部の解説。図は模式図で、形は機種で違う)。
  • ステッピングモーター:オリエンタルモーターの技術セミナーのテキスト(オリムベクスタ)は、通電して止まっているときに出せる最大の保持力を励磁最大静止トルク、それぞれの回転速度で運転できる最大トルクをプルアウトトルクとしています。速く回すほど出せるトルクが下がるので、使う速さで、要るトルクが曲線より下に、余裕をもってあるようにします。

トルクが足りないと、ステッピングモーターは指令に追いつけずに脱調します。課題「ステッピングモーターが脱調する」も参照してください。

出典:ステッピングモーターの基礎から使い方まで(技術セミナーテキスト)|オリムベクスタ

モーターを選ぶときのトルクの計算

負荷トルク0.3N·mと加速トルク1.2N·mを足した1.5N·mに安全率2を掛けて3.0N·mになる計算例の棒グラフ
図7 モーターに要るトルク =(負荷トルク + 加速トルク)× 安全率
出典:オリエンタルモーター、Oriental Motor USAをもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

モーターを選ぶときは、「回し続けるのに要るトルク(負荷トルク)」と「速さを変えるのに要るトルク(加速トルク)」を分けて考えます。オリエンタルモーターの資料は、必要なトルクを(負荷トルク + 加速トルク)× 安全率としています。

  • 負荷トルク:摩擦や、物を持ち上げる重さに逆らって回し続けるためのトルク。
  • 加速トルク:回転の速さを変えるためのトルク。慣性モーメント J と角加速度 α の掛け算 T = J × α です(ウィキペディア日本語版の Iα = τ と同じ式)。回転体が重く大きいほど、また短い時間で速くするほど大きくなります(基礎知識 「慣性モーメント」)。

例えば、直径100mm・厚さ10mm の鋼の円板(J ≒ 0.00077kg·m²)を 0.1秒で 1,500r/min にする加速トルクは約1.2N·m です。摩擦などの負荷トルクが 0.3N·m なら合計1.5N·m、安全率を2とすると 3.0N·m 以上を出せるモーターを選びます(編集部の計算。安全率の値は例)。オリエンタルモーター米国法人の解説は、実効トルクに対する余裕(実効負荷安全率)を一般に1.5〜2以上としています。

出典:モーターの選定 モーター選定計算式|オリエンタルモーター、Motor Sizing Basics Part 3: Acceleration Torque and RMS Torque|Oriental Motor USA、トルク|ウィキペディア日本語版

ねじの締付けトルク

ボルトの締付けトルクT、トルク係数K、呼び径d、軸力Fの関係T=K×d×Fと、M10で44.5N·mなら約22kNになる計算例と、トルクの約9割が摩擦に使われることを示した図
図8 ねじを締めるトルクの多くは、摩擦に使われる
出典:MONOist、TONEをもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

締付けトルクと軸力

T = K × d × F(T:締付けトルク[N·m] K:トルク係数 d:ねじの呼び径[m] F:軸力[N])

ボルトは、トルクで締めると軸の方向に引っぱられ、その力(軸力)で部品どうしを押さえつけます。MONOist の解説は、締付けトルクと軸力の関係をトルク係数とねじの呼び径で表し、トルク係数は 0.15〜0.2 が一般的な値のようだとしています。TONE の締付けトルクの参考表は、トルク係数0.2・軸力をボルト耐力の60%として、M10・強度区分8.8 で 44.5N·m としています。このとき軸力は 44.5 ÷(0.2 × 0.010)≒ 約22kN です(編集部の計算)。

同じ MONOist の解説は、摩擦トルクは全トルクの90%程度としています。締めたトルクのほとんどは、ねじ山と座面(ボルトの頭やナットの下の面)の摩擦に使われます。そのため、油やめっき、座面の状態で摩擦が変わると、同じトルクで締めても軸力は大きく変わります。トルクだけで締付けを管理するときは、この「ばらつき」に気をつけます(編集部の解説)。ねじのゆるみ止めは課題「ねじ・ボルトがゆるむのを防ぎたい」、摩擦については 基礎知識 「摩擦係数」も参照してください。

出典:ボルト締め付けトルクと軸力の関係(設計者向けCAEを使ったボルト締結部の設計(4))|MONOist、ボルトの締め付けトルクを決める(同(6))|MONOist、トルクの単位と換算表・締付けトルク値参考資料|TONE

トルクの測り方

トルクレンチ、モーターと負荷の間に入れる回転式トルクセンサー、腕の先におもりをつるす実荷重式トルク標準機の模式図
図9 トルクの測り方の例
出典:TONE、産業技術総合研究所 計量標準総合センター、コトバンクをもとに AI(Claude)で作成

ボルトを決めたトルクで締めるには、トルクレンチを使います。TONE のカタログは、締め過ぎ(オーバートルク)でボルトがねじ切れる事故が多く、きちんとしたトルク管理が大切としています。回っている軸のトルクは、モーターと負荷の間に入れるトルクセンサー(トルク計)で測ります。世界大百科事典(コトバンク)は、トルクは軸のねじれ角や、負荷の制動トルクから求められるとしています。

産業技術総合研究所(計量標準総合センター)は、トルクの国家標準を、重りにはたらく重力をモーメントアーム(腕)の先端にかけて既知のトルクを発生させる、実荷重式トルク標準機で実現しているとしています。「力 × 腕の長さ」というトルクの定義そのものを使った方法です。現場のトルクレンチやセンサーは、こうした基準につながる形で校正して使います(編集部の解説)。

出典:トルクレンチ・トルクチェッカー カタログ|TONE、トルク(日本大百科全書・世界大百科事典)|コトバンク、力・トルクの国家計量標準について|産業技術総合研究所 計量標準総合センター

似ている言葉との違い

トルク、力のモーメント、曲げモーメント、仕事・エネルギー、出力の5つについて、何を表すか、式、単位、よく出る所を比べた表
図10 似ている言葉との違い
出典:ウィキペディア日本語版、日本機械学会 機械工学事典をもとに AI(Claude)で作成

力のモーメント:力が物を回そうとするはたらきの大きさで、トルクとほぼ同じ意味で使われます。ウィキペディア日本語版は、トルクを回転軸のまわりの力のモーメントの、軸の方向の成分としています。

曲げモーメント:はりや軸を「曲げよう」とする力のモーメントです。トルク(ねじりモーメント)は軸を「ねじろう」とするもので、どちらも単位は N·m ですが、軸の強さを計算するときは分けて考えます(編集部の解説)。

仕事・エネルギー:力 × 動いた距離で、単位はJ(ジュール)= N·m です。トルクと単位の形は同じでも、別の量なので、トルクは N·m、エネルギーは J と書き分けます(編集部の解説)。トルク × 回った角度(rad)が、回転でした仕事になります。

出典:トルク|ウィキペディア日本語版、トルク|日本機械学会 機械工学事典

出典

  1. トルク|ウィキペディア日本語版
  2. トルク(日本大百科全書・世界大百科事典)|コトバンク
  3. トルク|日本機械学会 機械工学事典
  4. トルク値の国際単位系換算|TONE
  5. トルクの単位と換算表・締付けトルク値参考資料|TONE
  6. ギヤードモータ 技術編|三菱電機
  7. ギヤヘッド(オリエンタルモーター総合カタログ)|ミスミ
  8. ステッピングモーターの基礎から使い方まで(技術セミナーテキスト)|オリムベクスタ
  9. モーターの選定 モーター選定計算式|オリエンタルモーター
  10. Motor Sizing Basics Part 3: Acceleration Torque and RMS Torque|Oriental Motor USA
  11. ボルト締め付けトルクと軸力の関係(設計者向けCAEを使ったボルト締結部の設計(4))|MONOist
  12. ボルトの締め付けトルクを決める(同(6))|MONOist
  13. トルクレンチ・トルクチェッカー カタログ|TONE
  14. 力・トルクの国家計量標準について|産業技術総合研究所 計量標準総合センター

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月6日

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