電子機器を防水・防じんにしたい

ふたを少し持ち上げた防水の筐体とガスケット、ケーブルグランド、通気フィルター、かかる水しぶき(AI で生成したイメージ)

屋外に置いたセンサーの箱に、いつの間にか水がたまっていた。洗浄の水がかかる装置で、制御基板がショートした。工場の粉じんでファンが止まった。電子機器の防水・防じんは、水や粉じんがどこから、どんな力で入るかによって、効く対策が違います。

「パッキンを付ければ防水になる」と決める前に、水のかかり方(雨・噴流・水没)、ケーブルの引き込み口、温度の上がり下がりによる圧力の変化、求められている IP 等級を切り分けることが大切です。困っていることから、次のマトリクスで候補になる対策を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)筐体のシール(ガスケット・O リング)ケーブルグランド・防水コネクター通気フィルター(防水通気膜)基板の保護(封止・防湿コーティング)IP 試験と評価
A雨・水しぶき・洗浄の水が、合わせ面・ねじ穴・ボタンから入る◎○○
Bケーブル・コネクターの引き込み口から水が入る◎○○
C温度の上がり下がりで、中に水や湿気を吸い込む・結露する△◎○△
D粉じんが入って故障する◎○△△○
EIP 等級を満たしているか確かめられない・試験に通らない○○◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。どの対策が合うかは、筐体の材料と大きさ、置く場所(屋外・洗浄・水没)、温度の変化、ケーブルの本数、修理のしやすさ、費用によって変わります。症状Aの「筐体のシール」の「◎」は、ガスケットが接触面の間で漏れを防ぐものとする説明(スリーボンドの技術資料)と、IP68〜IP44 の防水・防じんのボックス(タカチ電機工業)、「基板の保護」の「○」は、ケースなしで LED インジケーターを IP68 に防水封止した事例(松本加工)、「IP 試験と評価」の「○」は、噴流・浸せきなどの防水試験(川重テクノロジー)を示しています。症状Bの「ケーブルグランド」の「◎」は、品番ごとに電線の径と締め付けトルクで防水試験をした結果(日本エイ・ヴィー・シー)、「基板の保護」の「○」は、ケーブルの出口を含めて部品ごと樹脂で包めば引き込み口のすき間が残らないこと(編集部の解説)と、LED インジケーターを IP68 に防水封止した事例(松本加工)、「IP 試験と評価」の「○」は、電線の被覆や外径の公差で防水が難しい場合があり、必ず防水試験で評価してから使うとする注意(日本エイ・ヴィー・シー)を示しています。症状Cの「通気フィルター」の「◎」は、温度や高さの変化で生じる圧力差がガスケットやシールの強度を下げるとし、通気ベントで内外の圧力をそろえるとする説明(ゴア)と、温度の寒暖差による筐体内の圧力変動を調整するフィルター(タカチ電機工業)、「基板の保護」の「○」は、結露などで生じやすいイオンマイグレーションの説明(村田製作所)とマイグレーション防止をうたう防湿コーティング(フロロテクノロジー)、「筐体のシール」の「△」は、圧力差がシールの強度を下げるとする説明(ゴア)から、シールだけでは防ぎきれない場合があることを、「IP 試験と評価」の「△」は、冷熱衝撃のあとに防水を確かめた例(日本エイ・ヴィー・シー)を示しています。症状Dの「筐体のシール」の「◎」は、防じんパッキン(共和工業)と IP44〜IP68 の防水・防じんのボックス(タカチ電機工業)、「ケーブルグランド」の「○」は、引き込み口も粉じんの入り口になるため(編集部の解説)、「通気フィルター」の「△」は、通気口を設けるときに防水・防じんの性能を持つフィルターでふさぐ場合(タカチ電機工業)、「基板の保護」の「△」は、防湿コーティングがほこりや汚染から基板を守るとする説明(DigiKey の TechForum)、「IP 試験と評価」の「○」は、IP5X・IP6X の防じん試験と粉じん環境試験(川重テクノロジー)を示しています。症状Eの「IP 試験と評価」の「◎」は、IP 試験の受託(川重テクノロジー、TÜV ラインランド ジャパン)と公設試の防水試験室(北海道立総合研究機構)、「筐体のシール」の「○」は、防水機能が出なかったときにゴムの硬度を変えて確かめる方法(共和工業)、「ケーブルグランド」の「○」は、品番ごとの電線の径と締め付けトルクの範囲(日本エイ・ヴィー・シー)を示しています。◎は、業界の資料や企業の情報で、その症状に直接はたらくとされている対策、○は効果が期待できる対策、△は条件によって有効な対策を示します(記号の根拠は、下の「解決技術の詳細」と企業紹介の各出典です)。空欄は、その対策だけでは直接の対策になりにくいことを示します。

課題の診断と解決策

水や粉じんの入り口は、合わせ面、ねじ穴・ボタン、ケーブルの引き込み口、そして温度の変化で空気が出入りする所に分けて考えると、まず見る対策の見当をつけられます。症状ごとの詳しい見方は、下のカードで確かめてください。

筐体の断面の模式図で、合わせ面・ボタン、ケーブルの引き込み口、通気口、粉じんの入り口と、それぞれの対策を示した早見図
図1 水と粉じんの入り口と、まず見る対策
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
A

雨・水しぶき・洗浄の水が、合わせ面・ねじ穴・ボタンから入る

屋外に置いた機器の中が濡れていた。洗浄の水がかかる所で、ふたの合わせ目から水が入った。

雨と洗浄の水が、筐体のふたの合わせ面・ねじ穴・ボタンのすき間から中に入るイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
ふたと本体の合わせ面、ねじの穴、スイッチやボタンのすき間は、どれも水の入り口になります。IP コードでは、水のかかり方(滴下・散水・噴流・水没)ごとに等級が分かれていて、どの水に耐えればよいかで、必要な等級も対策も変わります(川重テクノロジー)。
解決に使える技術
選ぶときの注意

ガスケットは、ねじで締めた力でつぶして初めてはたらきます。ねじとねじの間でふたがたわむと、そこだけつぶれが足りずに水が入ることがあります(編集部の解説)。ふたの剛性とねじの間隔も合わせて見直します。

B

ケーブル・コネクターの引き込み口から水が入る

筐体は防水なのに、ケーブルを通した所から水が入った。ケーブルグランドを付けたのに漏れた。

ケーブルグランドを通したケーブルの表面を伝って、水が筐体の中に入り基板に落ちるイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
ケーブルグランドは、ゴムのシールでケーブルの外側を締め付けて水を止めます。日本エイ・ヴィー・シーは、電線の被覆の材質・外径の公差・使用条件によって防水が難しい場合があるとして、必ず防水試験で評価してから使うよう求めています。
解決に使える技術
選ぶときの注意

グランドで締め付けているのはケーブルの外側だけです。ケーブルの他端が濡れる所にあると、被覆の内側(芯線のすき間)を水が伝ってくることがあります(編集部の解説)。両端がどこにあるかも確かめます。

C

温度の上がり下がりで、中に水や湿気を吸い込む・結露する

日中は問題ないのに、夕立のあと中に水滴が付いていた。密閉したはずの筐体の中が曇る。

日なたで温まった密閉の筐体が雨で冷え、合わせ面から湿気を吸い込んで中に結露するイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
密閉した筐体は、温まると中の圧力が上がり、冷えると下がって外より低くなります。ゴアは、温度や高さの変化で生じる圧力差が、ガスケットやシールの強度を下げ、液体の浸入への耐性を損なうおそれがあるとしています。
解決に使える技術
選ぶときの注意

通気フィルターも、屋外の使用で通気量が落ちることがあります。日本エイ・ヴィー・シーの測定では、塩害地で3〜4年使ったプラグの通気量は新品の63〜72%で、4年7か月使った1つは同じ圧力では測定できませんでした。置く場所の環境に合わせて選びます。

D

粉じんが入って故障する

工場や屋外の粉じんが入り、接点やファンにたまって止まった。

ファンの風で通気口から粉じんが入り、基板やリレー、ファンにたまるイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
IP コードの第一特性数字は、外来の固形物(粉じんなど)に対する保護の等級です。5は「防じん形」(粉じんの侵入はあっても動作・安全性に支障がない)、6は「耐じん形」(粉じんが侵入しない)で、意味が違います(川重テクノロジー)。
解決に使える技術
選ぶときの注意

冷却ファンで外気を取り入れる機器は、密閉と冷却がぶつかります。ファンの風が通る所だけフィルターで守るのか、筐体を密閉して外側で熱を逃がすのかを、先に決めます(編集部の解説)。

E

IP 等級を満たしているか確かめられない・試験に通らない

取引先から IP67 の証明を求められた。試作品で防水試験をしたら水が入った。

水槽に沈めて防水試験をした筐体を開けると、中の基板に水が入っていたイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
IP 試験は、IP コードの等級ごとに決められた試験を行い、合否は試験のあとに分解して水や粉じんの浸入を目で確かめます。TÜV ラインランド ジャパンは、粉じん試験と防水試験で別の試料が要る(計2台)としています。
解決に使える技術
選ぶときの注意

2026年1月に JIS C 0920 は JIS C 60529 に置き換えられ、IPX9 が加わりました(JIS のまえがき、AV Watch)。取引先の求める規格の番号と版を、試験の前にそろえます。

なぜ、電子機器に水や粉じんが入るのか

IP コードは「どんな水・粉じんに耐えるか」の等級

IP コードは、電気機器の外郭(筐体)が、外来の固形物(粉じんなど)や水の浸入に対してどれだけ保護されているかを表す等級です。「IP67」のように IP の後に2桁の数字を並べ、1桁目(第一特性数字)が固形物、2桁目(第二特性数字)が水に対する等級を表します。対象外のときは数字ではなく「X」を書きます(川重テクノロジー)。

水の等級は、数字ごとに試験のしかたが違います。IPX5 は約12.5L/min の噴流、IPX6 は約100L/min の暴噴流、IPX7 は水深1m で30分の一時的な潜水で(川重テクノロジー)、IPX7 は水に沈める試験、IPX5・IPX6 は水を噴きかける試験です。雨や洗浄の水がかかる機器と、水に沈むおそれがある機器では、必要な等級が違います(編集部の解説)。

IP67の読み方と、IPX4からIPX9までの水の試験の例の表
図2 IP コードの読み方と、水の等級ごとの試験の例
出典:川重テクノロジー「IP 試験(防じん試験・防水試験)」をもとに AI(Claude)で作成

水は、すき間・ケーブル・圧力の差から入る

筐体の合わせ面のすき間、ケーブルの引き込み口、冷えたときの吸い込みの3つから水が入るイメージ
入り口は3つ:すき間・ケーブル・圧力の差イメージ(AI[ChatGPT]で生成)

筐体への水の入り口は、大きく3つに分けられます(編集部の整理)。1つ目は、ふたの合わせ面、ねじ穴、ボタンや窓のまわりなどのすき間です。2つ目は、ケーブルやコネクターの引き込み口です。3つ目は、温度の上がり下がりで中の空気が縮み、外より圧力が下がって水や湿気を吸い込むことです。

密閉した筐体は、冷えると水を吸い込む(呼吸作用)

雨で冷えた密閉の筐体が、合わせ面から湿った空気を吸い込み、内側に結露して基板に落ちるイメージ
呼吸作用:冷えると中が負圧になり、湿気を吸い込むイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

ゴアの事例では、急な温度の変化で生じた圧力差によって機器の筐体の中が負圧になり、シールに負担がかかって水蒸気が引き込まれ、中で結露して電子部品を壊しました。ゴアは、温度や高さの変化で生じる圧力差が、ガスケットやシールの強度を下げ、液体の浸入への耐性を損なうおそれがあるとしています。

どれくらいの圧力差になるかを、編集部が計算してみます。日なたで40℃になった密閉の筐体が、雨で15℃まで冷えたとすると、筐体が変形せず空気の量も変わらないとした場合、中の圧力は 101.3kPa×288.15K÷313.15K=約93.2kPa になり、外より約8kPa 低くなります。水の深さにすると約0.8m 分です(湿気の影響は考えていない、編集部の計算)。筐体が変形せず空気も漏れない場合の上限の目安ですが、IPX7 の試験の水深1m に近い圧力差が、ふだんの温度の変化でかかり得ます。

密閉した筐体が40℃から15℃に冷えると中の圧力が約8kPa下がり、すき間から水を吸い込む呼吸作用の図
図3 密閉した筐体は、冷えると中の圧力が下がる(呼吸作用)
出典:編集部が計算し、日本ゴア「GORE プレッシャーベント」をもとに AI(Claude)で作成

入った水は、結露と腐食・マイグレーションで故障につながる

基板の2つの電極の間の水滴の中で、金属が枝のように伸びてショートしかけるイメージ
マイグレーション:水と電圧で金属が伸び、ショートにいたるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

村田製作所は、イオンマイグレーションを「電極間に水分が存在している状態で電圧が印加されたとき、陽極金属がイオン化して陰極に移行し」、析出・成長して最終的にはショートにいたる現象とし、特に結露などで生じやすいとしています。大阪産業技術研究所の技術シートは、汚染物質があると低い湿度でも腐食が生じ、イオン性の物質があると腐食反応が清浄な金属に比べて数十から数百倍の速さで進むとしています。

入った水が結露し、電極の間で腐食やイオンマイグレーションを起こしてショートにいたる流れ
図4 入った水が故障につながる流れ
出典:村田製作所(2015年)・大阪産業技術研究所 技術シート No.97001をもとに AI(Claude)で作成

原因の切り分け方

次は編集部の整理です。まず、水の跡がどこから始まっているか(合わせ面の一部、ケーブルの近く、全体が曇っている)を見ます。合わせ面の一部なら、ねじの間のたわみとガスケットのつぶし、ケーブルの近くならグランドの選び方と締め付け、全体の曇りや水滴なら呼吸作用と結露を疑います。粉じんなら、通気口とファンの経路を確かめます。

出典:シリーズ|IP 試験(防じん試験・防水試験)|川重テクノロジー、GORE プレッシャーベント(カタログ、2024年)|日本ゴア、GORE Protective Vents Eliminate Internal Vacuum to Prevent Water Damage and Corrosion|Gore、結露環境下でのイオンマイグレーションを抑制する撥水コンデンサを開発(2015年)|村田製作所、技術シート No.97001 電子部品の腐食損傷と分析|大阪産業技術研究所

解決技術の詳細

防水・防じんの対策は、大きく5つに分けられます。1つの機器でも、合わせ面はガスケット、ケーブルはグランド、圧力の差は通気フィルター、基板は防湿コーティングで守り、最後に IP 試験で確かめる、のように組み合わせて使います(編集部の解説)。

筐体のシール(ガスケット・O リング)

合わせ面の防水は、ガスケットや O リングを2つの面ではさんでつぶし、その反発力で漏れを止めます。スリーボンドの技術資料は、シールのしくみを、締め付けで生じる圧縮の反力で漏れを防ぐ「圧縮シール」と、液状のガスケットが固まって接着力で漏れを防ぐ「接着シール」に分けています。液状のガスケットのうち、塗って固めてから組み立てる CIPG は固形のガスケットと同じ圧縮シール、塗ってすぐ組み立てる FIPG は、固まったあとの凝集力と接着力で漏れを防ぐ接着シールです。

つぶす量の目安がつぶし率(つぶした量÷線径)です。桜シールは、O リングのつぶし率は8〜30%の範囲が適正で、40%以上になると破損するおそれがあるとしています。つぶすには力が要ります。松本産業(NOK の代理店)の技術ニュースは、O リングはゴムをつぶすことで反力を生んで封止するので、反力を正しく把握し、それ以上の力でハウジングを締結することが重要だとし、つぶし率20%・内径21.8mm の例で、線径3.5mm・硬さ A90 なら反力は387N としています(NOK のカタログの値)。

溝の中のOリングの断面と、ねじの間でふたがたわんでガスケットのつぶれが足りなくなる図
図5 ガスケット・O リングのつぶし率と、ねじの間のたわみ
出典:桜シール「O リングのつぶし代とつぶし率」・松本産業 技術ニュース Vol.007・スリーボンド Technical News No.72をもとに AI(Claude)で作成
筐体の形に合わせて成形したカスタムの防水パッキン
図6 筐体の形に合わせたカスタムの防水パッキン
出典:共和工業「防水パッキン・防塵パッキン・O リング」

ケーブルグランド・防水コネクター

ケーブルグランドは、筐体の穴に取り付け、ナットを締めてゴムのシールでケーブルの外側を締め付ける部品です(編集部の解説)。日本エイ・ヴィー・シーは、品番ごとに電線の径と締め付けトルクの範囲を決めて防水試験をした結果を公開しています。同社は、カタログの適応電線サイズの細い側に近いときは前もって相談するよう書いています。

温度の変化にも注意が要ります。同社の冷熱衝撃試験(-40℃と100℃を5サイクル)では、試験のあとにシールのナットの戻しトルクが下がり、同社は電線の被覆がなじんでクランプ部の反発力が下がったためと考えられるとしています(防水は IP68/30m の結果で、試験前よりは低下したが十分に高い防水性能を確かめたとしています)。

ケーブルグランドの断面の模式図(締め付けナット・ゴムのシール・本体・ロックナット)と注意点
図7 ケーブルグランドのしくみ(模式図)と注意点
出典:日本エイ・ヴィー・シー「技術資料」・同社トップページをもとに AI(Claude)で作成

通気フィルター(防水通気膜)

通気フィルターは、空気は通し、水や粉じんは通さない膜で、筐体の中と外の圧力をそろえます。ゴアは、膜を ePTFE(延伸した PTFE)とし、圧力差によるシールへの負担を防ぐとしています。タカチ電機工業の PMF シリーズは、GORE-TEX 製のフィルターで温度の寒暖差で発生する筐体内の圧力変動を調整し、水蒸気の放出を促して筐体内の結露防止にも有効だとしています。

通気量は製品で大きく違います。PMF-6B は300ml/min、PMF-12HA は4,000ml/min(どちらも差圧7kPa)です(タカチ電機工業)。筐体の容積が大きいほど、また温度の変化が速いほど、多くの空気を出し入れする必要があります(編集部の解説)。屋外で使うと、日本エイ・ヴィー・シーの測定のように新品より通気量が下がることがあり、環境によって差が出ます(同社の報告書は、カタログ値以上は保っているとしています)。

通気膜が空気と水蒸気を通し、水滴と粉じんを通さないしくみの図
図8 通気フィルターのしくみ(模式図)
出典:日本ゴア「GORE プレッシャーベント」・タカチ電機工業「PMF シリーズ」をもとに AI(Claude)で作成

基板の保護(封止・防湿コーティング)

筐体で水を止めきれない所や、結露が避けられない所では、基板そのものを守ります。防湿コーティング(コンフォーマルコーティング)は、基板と部品を湿気・ほこり・汚染などから守る高分子の膜です。DigiKey の解説は、アクリルは速く乾くが傷や剥がれが出やすく、エポキシは耐湿・耐薬品にすぐれるが除去や修理が難しく、シリコーンは120℃を超える高温に向く、などの違いを挙げています。

ポッティング・封止は、基板やセンサーを樹脂で埋めて固める方法です。松本加工は、2液ポッティングがハウジングに流し込んで2時間程度加熱して硬化させるのに対し、ホットメルトの低圧成形はハウジングが要らず、〜5MPa 程度の低い圧力で数十秒で固まるとしています。どちらも、埋めたあとは部品の交換や修理が難しくなります(編集部の解説)。

防湿コーティング・ポッティング・低圧成形の違いを比べた図と表
図9 防湿コーティングと封止の違い
出典:DigiKey「コンフォーマルコーティングの種類」・松本加工「ホットメルトモールディングとは」・フロロテクノロジー「フロロサーフ FG-3650 シリーズ」をもとに AI(Claude)で作成
USBメモリーの基板(左)、ホットメルトで封止したもの(中)、完成品(右)
図10 ホットメルトの低圧成形で基板を封止した例(左から基板・封止後・完成品)
出典:松本加工「ホットメルトモールディングとは」

IP 試験と評価

IP 試験は、IP コードの等級ごとに決められた試験です。2026年1月20日に JIS C 60529「電気機械器具の外郭による保護等級(IP コード)」が制定され、JIS C 0920:2003 は廃止されてこの規格に置き換えられました(JIS のまえがき)。高温・高圧の水の噴流に対する IPX9 も加わりました(AV Watch)。

防じんの試験はタルク粉を使い、試験のあとに製品を分解して目で浸入を確かめます。TÜV ラインランド ジャパンは、粉じんの試験と防水の試験で別の試料が必要(計2台)としています。公設試にも設備があり、北海道立総合研究機構の工業試験場は、IPX4・IPX5・IPX6 の試験ができる防水試験室(最大放水量100L/分)を設けています。川重テクノロジーは、防水試験設備が JIS の認証設備ではないことを断っています。認証のための試験か、開発中の確認かで、頼む先も変わります(編集部の解説)。

IP試験の流れ(等級と規格を決める、試料をそろえる、試験する、分解して確かめる)と頼める先の例
図11 IP 試験の流れと、頼む前に決めること
出典:TÜV ラインランド ジャパン「IP 試験」・川重テクノロジー・北海道立総合研究機構 工業試験場をもとに AI(Claude)で作成

出典:Technical News No.72 UV-Cured-In-Place Gasket(2009年)|スリーボンド、O リングのつぶし代とつぶし率|桜シール、技術ニュース Vol.007 反力測定試験(2022年)|松本産業、技術資料|日本エイ・ヴィー・シー、GORE プレッシャーベント(カタログ、2024年)|日本ゴア、プロテクティブベント PMF シリーズ(イプロス)|タカチ電機工業、コンフォーマルコーティングの種類(TechForum の投稿)|DigiKey、ホットメルトモールディングとは|松本加工、JIS C 60529:2026 電気機械器具の外郭による保護等級(IP コード)(規格票のプレビュー)|日本規格協会、防水・防塵の JIS 規格が改正(2026年)|AV Watch、IP 試験|TÜV ラインランド ジャパン、寒冷地ものづくりラボ(2026年)|北海道立総合研究機構 工業試験場

防水・防じんの技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。箱から選ぶなら防水ボックス、合わせ面ならパッキン、ケーブルならグランド、基板なら封止やコーティング、確認なら IP 試験、というように、困りごとで合う相談先が変わります。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
タカチ電機工業筐体メーカー防水のプラスチックボックスと通気フィルター。温度の変化による筐体の中の圧力の変化と結露を抑える。A 雨・水しぶき・洗浄の水が、合わせ面・ねじ穴・ボタンから入る
B ケーブル・コネクターの引き込み口から水が入る
C 温度の上がり下がりで、中に水や湿気を吸い込む・結露する
D 粉じんが入って故障する
共和工業ゴム成形品シリコーンゴムの防水・防じんパッキンと O リング。筐体に合わせたカスタム形状や試作・少量も。A 雨・水しぶき・洗浄の水が、合わせ面・ねじ穴・ボタンから入る
D 粉じんが入って故障する
E IP 等級を満たしているか確かめられない・試験に通らない
日本エイ・ヴィー・シー配線部品防水ケーブルグランドと排気プラグ。電線の径に合う品番と締め付けトルク、屋外で使ったときの通気の変化。B ケーブル・コネクターの引き込み口から水が入る
C 温度の上がり下がりで、中に水や湿気を吸い込む・結露する
E IP 等級を満たしているか確かめられない・試験に通らない
松本加工封止・成形ホットメルトの低圧成形で、基板やセンサーをケースなしで防水封止する。B ケーブル・コネクターの引き込み口から水が入る
フロロテクノロジーコーティング剤基板の防湿・防水コーティング剤。湿気・結露から基板を守り、マイグレーションを防ぐ。C 温度の上がり下がりで、中に水や湿気を吸い込む・結露する
川重テクノロジー試験・分析IP 試験(防じん・防水)の受託。大型の機器や持ち込めない設備の試験、試験の内容の相談も。A 雨・水しぶき・洗浄の水が、合わせ面・ねじ穴・ボタンから入る
D 粉じんが入って故障する
E IP 等級を満たしているか確かめられない・試験に通らない
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

株式会社タカチ電機工業|防水のプラスチックボックスと通気フィルター

タカチ電機工業とは

タカチ電機工業は、埼玉県川口市に本部(営業部・工場)がある、ケース・ボックス・筐体の会社です(1974年創業、1979年設立)。業務内容は「電子・電機・制御機器用筐体及びカスタム筐体の開発・生産・販売」です。

タカチ電機工業の得意技術

技術内容
防水・防じんのプラスチックボックス保護等級 IP68・IP67・IP66・IP65・IP44 の防水・防じん機能を持つボックスをそろえ、無線通信基地局、屋外用センサー機器、FA コントロールボックス、太陽光発電接続箱などの用途を挙げている
IP68 の開閉式ボックスポリカーボネート製の UPC シリーズを「水没2メートル24時間に耐える高い防水性」としている
通気フィルター(PMF シリーズ)GORE-TEX 製のメンブレンフィルターで、温度の寒暖差で発生する筐体内の圧力変動を調整するとしている。IP68(水深2m/1時間)、通気量は PMF-6B で 300ml/min(差圧7kPa)などとしている

ボックスの IP 等級は、ボックス単体の性能です。穴あけ加工やケーブルの引き込みをしたあとの性能は、使う状態で確かめます(編集部の解説)。

タカチ電機工業が解決できる課題

  • 屋外や水のかかる所に置く機器の、防水・防じんの箱を選びたい
  • 温度の上がり下がりによる筐体内の圧力の変化と、結露を抑えたい
タカチ電機工業の防水プラスチックボックスと通気フィルターPMFシリーズの公開情報の整理
図12 タカチ電機工業の防水ボックスと通気フィルター(公開情報の整理)
出典:タカチ電機工業「防水プラスチックボックス」・同「開閉式プラスチックボックス」・同「PMF シリーズ」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社案内|タカチ電機工業、防水プラスチックボックス|タカチ電機工業、開閉式プラスチックボックス|タカチ電機工業、プロテクティブベント PMF シリーズ(イプロス)|タカチ電機工業

共和工業株式会社|シリコーンゴムの防水パッキンを作る

共和工業は、埼玉県川口市に本社・工場がある、シリコーンゴムの成形品の会社です(1976年設立)。印刷・抜き加工・切削加工・接着を社内で行い、防水パッキン・防じんパッキン・O リングを作っています。

共和工業の得意技術

技術内容
抜き型の平パッキンゴムシート・スポンジシートを安価な抜き型で打ち抜く平パッキン。金型では1か月程度かかる納期が1〜2週間程度で対応できるとしている。厚くて幅が狭い形は、断面が変形して抜き加工ではできない場合があるとしている
金型のカスタム防水パッキン抜き型や切削でできない形は、金型を起こすカスタム品として作る。防水性能に重要な線径の寸法を、画像測定器で複数の角度から確かめているとしている
防水機能が出なかったときの対処金型を改造する前に、ゴムの硬度を変えて確かめる方法があるとしている

同社は「防水設計はしておりません」として、防水機能を測る専用の試験機を持たず、IP のレベルの評価は行っていないとしています。筐体の防水設計と IP の確認は、自社か試験機関で行う前提で相談します。

共和工業が解決できる課題

  • 試作や少量の防水パッキンを、金型を作らずに早く用意したい
  • 筐体に合わせたカスタム形状の防水・防じんパッキンを作りたい
シリコーンゴムの防水パッキン・Oリング・グロメットなどの成形品
図13 共和工業のシリコーンゴムのパッキン・O リングなど
出典:共和工業「防水パッキン・防塵パッキン・O リング」

出典:会社案内|共和工業、防水パッキン・防塵パッキン・O リング|共和工業

日本エイ・ヴィー・シー株式会社|防水ケーブルグランドと排気プラグ

日本エイ・ヴィー・シーとは

日本エイ・ヴィー・シーは、滋賀県守山市に本社がある、防水ケーブルグランドの会社です(1985年創業、2001年設立)。事業内容は「防水ケーブルグランド等電気配線部品の販売」で、工場は台湾にあります。

日本エイ・ヴィー・シーの得意技術

技術内容
防水ケーブルグランド「完全防水 IP68/69」をうたい、品番ごとに、電線の径・締め付けトルクの範囲・試験の条件(0.1〜0.5MPa、おもに60分)を並べた社内の防水試験の結果を参考資料として公開している
冷熱衝撃試験-40℃と100℃に各30分さらす試験を5サイクル行ったあと、戻しトルクは下がったが、防水試験では IP68/30m の結果で、試験前よりは低下したが十分に高い防水性能を確かめたとしている(2020年)
排気用防水保護プラグ屋外の照明器具で使ったプラグの通気量を測り、新品0.98L/min に対して、屋外の使用品は79〜96%、塩害地の使用品は63〜72%で、塩害地の1つは同じ圧力では測定できなかったとしている(2022年)

同社は、電線の被覆の材質・外径の公差・使用条件によって防水が難しい場合があるとして、必ず防水試験で評価してから使うように求めています。適応電線の細い側に近いときは、前もって相談するよう書いています。

日本エイ・ヴィー・シーが解決できる課題

  • ケーブルの引き込み口から水が入らないようにしたい
  • 電線の径に合うケーブルグランドと、締め付けトルクを知りたい
  • 屋外で何年も使ったときの、通気プラグの性能の変化を知りたい
排気用防水保護プラグの通気量を、新品と屋外・塩害地で使ったもので比べた棒グラフ
図14 排気用防水保護プラグの通気量(新品と、屋外で使ったもの)
出典:日本エイ・ヴィー・シー「通気量測定試験報告書」(2022年)をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社案内|日本エイ・ヴィー・シー、技術資料|日本エイ・ヴィー・シー、社内防水試験結果一覧表|日本エイ・ヴィー・シー、冷熱衝撃試験報告書(2020年)|日本エイ・ヴィー・シー、通気量測定試験報告書(2022年)|日本エイ・ヴィー・シー

松本加工株式会社|ホットメルトの低圧成形で基板を封止

松本加工は、静岡県富士市にある、ホットメルト成形の会社です。事業内容に、ホットメルト接着剤の販売、ホットメルト成形機と金型の設計・製作・販売、ホットメルト成形業務の請負、パッキン・ガスケットなどシーリング部品の製造販売を挙げています。

松本加工の得意技術

技術内容
ホットメルトモールディングホットメルト接着剤で電装部品をインサート封止する成形技術。〜5MPa 程度の極めて低い圧力で成形でき、1液の熱可塑性なので数十秒で固まるとしている
2液ポッティングとの比較2液ポッティングはハウジングに流し込んで2時間程度加熱して硬化させるのに対し、ホットメルトはハウジングが要らず、1分程度で完成するとしている(同社の比較)
事例LED インジケーターの防水封止(IP68)、IoT のフィールドセンサー・磁気センサーなどを紹介している

松本加工が解決できる課題

  • 基板やセンサーを、ケースなしで防水封止したい
  • ポッティングの硬化時間が長く、生産が詰まっている
LEDインジケーターの封止前(左)とホットメルトで防水封止したあと(右)
図15 LED インジケーターの防水封止(IP68)。左が封止前、右が封止後
出典:松本加工「その他電子機器」

出典:会社概要|松本加工、ホットメルトモールディングとは|松本加工、その他電子機器|松本加工

株式会社フロロテクノロジー|基板の防湿・防水コーティング剤

フロロテクノロジーとは

フロロテクノロジーは、愛知県春日井市にある、フッ素コーティング剤の会社です(2003年設立)。プリント基板の防水・防湿コーティング(コンフォーマルコーティング)の解説と製品を公開しています。

フロロテクノロジーの得意技術

技術内容
フロロサーフ FG-3650 シリーズ電子部品の防水・絶縁保護、実装基板の防湿・防水コーティングに使うコーティング剤で、非引火性・有機溶剤非該当としている
防湿性同じ膜厚でウレタン系・アクリル系の防湿コート剤に比べて4倍、シリコーン系に比べて10倍以上の防湿性としている(同社の比較)
扱いやすさ塗ったあと常温で5〜20分で乾き、コーティング後のリペアもできるとしている。速乾性のモデルは10ミクロン以下の薄膜で基板を保護するとしている

防湿コーティングは基板の表面を守る膜で、筐体の IP 等級を代わりに満たすものではありません(編集部の解説)。

フロロテクノロジーが解決できる課題

  • 基板を湿気・結露から守り、マイグレーションを防ぎたい
  • 防湿コーティングを、乾燥の早い・扱いやすいものにしたい
フロロサーフFG-3650の防湿性を、ウレタン系・アクリル系とシリコーン系に比べた同社の比較
図16 フロロテクノロジーの防湿コーティング剤(同社の比較)
出典:フロロテクノロジー「フロロサーフ FG-3650 シリーズ」・同「プリント基板の防水・防湿コーティング」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|フロロテクノロジー、プリント基板の防水・防湿コーティング|フロロテクノロジー、フロロサーフ FG-3650 シリーズ(イプロス)|フロロテクノロジー

川重テクノロジー株式会社|IP 試験(防じん・防水)の受託

川重テクノロジーとは

川重テクノロジーは、兵庫県明石市に本社がある、試験・分析・解析の会社です(1978年設立、川崎重工業の100%出資)。IP 試験(防じん試験・防水試験)の解説と実施例を公開しています。

川重テクノロジーの得意技術

技術内容
防じん試験IP0X〜IP6X の試験に対応し、大型防じん試験装置(W4,300×D3,000×H2,900mm)で、大型配電盤や屋外用の大型液晶パネルなどを複数台同時に試験できるとしている
防水試験IPX0〜IPX9 に対応し、防水試験装置は可搬式で、持ち込みが難しい試験体は客先で試験することもできるとしている。IPX7・IPX8 では試験品に合わせて専用の水槽を作った実績があるとしている
試験の実施例自動車用コネクタの防じん(JIS D 5020 IP5KX)、屋外用表示器の IP5X、屋外設置用バルブの IPX6、大型ケーシングの IPX7、農業機械の粉じん環境試験を紹介している

同社は、防水試験設備が JIS C 60529(旧 JIS C 0920)の認証設備ではないと断っています。認証の目的で試験するときは、必要な条件を先に確かめます。

川重テクノロジーが解決できる課題

  • IP 等級を満たしているか、試験で確かめたい
  • 大型の機器や、持ち込めない設備の防水・防じん試験をしたい
  • どんな試験をすればよいかから相談したい
川重テクノロジーの防じん試験と防水試験の公開情報の整理
図17 川重テクノロジーの IP 試験(公開情報の整理)
出典:川重テクノロジー「IP 試験(防じん試験・防水試験)」・同「技術レポート:防水試験」をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|川重テクノロジー、シリーズ|IP 試験(防じん試験・防水試験)|川重テクノロジー、技術レポート:防水試験|川重テクノロジー

選ぶ前に確かめる条件

相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 求められている IP 等級と、規格の番号(JIS C 60529・旧 JIS C 0920・JIS D 5020 など)
  • 水のかかり方(雨・噴流・高圧洗浄・水没)と、粉じんの有無
  • 置く場所の温度の範囲と、温度の変わり方(日なた・夜間・雨・洗浄の温水)
  • 筐体の材料・大きさと、ふたの留め方(ねじの本数・間隔)
  • ケーブル・コネクターの本数と、ケーブルの外径・被覆の材質
  • 中の発熱と冷却のしかた(ファンの有無)
  • 修理や部品の交換をするか(封止してよいか)

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月2日

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