剛性(ごうせい)は、部品や構造が、力を受けたときの変形のしにくさです。同じ鋼でできた部品でも、厚さ・形・支え方を変えるだけで、たわみ方は何倍、何十倍も変わります。材料の性質であるヤング率とは違い、剛性は「材料 × 形 × 支え方」で決まります。このページでは、剛性の意味、計算のしかた、剛性を上げる方法、強さとの違い、振動との関係、測り方を、できるだけやさしく説明します。
ひとことで言うと
剛性とは
力を加えたときに、どれだけ変形しにくいかを表す値です。
同じ力で押してもあまりたわまない部品は「剛性が高い」、大きくたわむ部品は「剛性が低い」といいます。値で表すときは、加えた力を変形の大きさで割り(k = F ÷ δ)、N/mm や N/μm などの単位を使います(式は編集部の解説)。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
日本機械学会の機械工学事典は、剛性(静剛性)を「構造物の変形のしにくさを表す特性値」で、単位の変位(1だけ変形させる)に必要な力で示すとしています。値が大きいほど、外から力を受けても変形しにくいということです。ミスミの解説は、剛性を「変形のしにくさ」、強度を「壊れにくさ」と分けて説明しています。
出典:静剛性|日本機械学会 機械工学事典、【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy
身近な例:同じ棒でも、立てると曲がりにくい
幅30mm・厚さ3mm の平たい鋼の棒を2本の台に渡し、真ん中を押してみます。平らに寝かせて押すとたわみますが、同じ棒を90°回して、縦に立てて押すと、ほとんどたわみません。材料も重さも同じなのに、向きを変えただけで曲がりにくさが変わります(編集部の例)。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
曲がりにくさは、力の向きに測った断面の高さの3乗に比例します(下の式)。寝かせたときの高さは3mm、立てたときの高さは30mm で、高さが10倍なので、10の3乗 ÷ 幅の比10 = 曲がりにくさは約100倍、たわみは約100分の1になります(計算は編集部)。棚板を横にして使うより、板を縦に立てて渡したほうが重い物を支えられるのも、同じ理由です。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所
式と種類:剛性=力÷変形
剛性は、どの向きに力を受けるかで呼び名が変わります。どれも「材料の値 × 形の値」でできています。

出典:東京大学、愛媛県産業技術研究所をもとに AI(Claude)で作成
| 種類 | 表し方 | 意味 |
|---|---|---|
| 引張・圧縮の剛性 | k = E × A ÷ L | E:ヤング率、A:断面積、L:長さ。棒を引っ張る・押すとき |
| 曲げ剛性 | E × I | I:断面二次モーメント(断面の形による曲がりにくさ) |
| ねじり剛性 | G × J | G:横弾性係数、J:ねじりの断面の値。軸をねじるとき |
東京大学の講義資料では、ヤング率 E・断面積 A・長さ l の部材の伸び剛性を k = EA ÷ l としています。愛媛県産業技術研究所の資料は、板の曲げにくさ(曲げ剛性)は、材料としての曲げにくさ E と、構造としての曲げにくさ I の積 EIで表されると説明しています。ねじり剛性の表し方は編集部の解説です。
ヤング率(E)は材料だけで決まる値ですが、剛性は断面積・断面二次モーメント・長さを含むので、同じ材料でも形と大きさで変わります。ヤング率については、基礎知識 「ヤング率」 で解説しています。
出典:建築数理設計特論 講義資料「微小変形理論における剛性行列」(平成29年度)|東京大学、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所
計算してみよう:角棒の先を押したときの剛性

片方を固定した棒(片持ちはり)の先に力 F をかけると、先のたわみは δ = F × L³ ÷(3 × E × I)です。ミスミの例では、長さ100mm・10mm 角の棒の先に100N をかけると、鋼(SS400、E = 206,000MPa)で約0.19mm、アルミニウム合金(A5052、E = 71,000MPa)で約0.56mm たわみます。
| 材料 | たわみ(100N) | 剛性 k = F ÷ δ |
|---|---|---|
| 鋼(SS400) | 約 0.19mm | 約 520N/mm |
| アルミニウム合金(A5052) | 約 0.56mm | 約 180N/mm |
剛性に直すと、鋼の棒は約520N/mm(先を1mm 押し下げるのに約520N、約53kgf の力が要る)、アルミの棒は約180N/mm で、同じ形ならアルミは鋼の約3分の1の剛性です(剛性への換算は編集部)。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy
剛性を決めるもの:材料・厚さ・長さ・支え方

出典:ミスミ meviy、愛媛県産業技術研究所をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
長方形の断面の棒の場合、断面二次モーメントは I = 幅 × 厚さ³ ÷ 12 です。片持ちはりのたわみの式と合わせると、曲げの剛性は ヤング率と幅には比例し、厚さの3乗に比例し、長さの3乗に反比例します(倍率は編集部の計算)。
- ヤング率を2倍にする → 剛性は2倍(アルミから鋼に替えると約3倍)
- 幅を2倍にする → 剛性は2倍
- 厚さを2倍にする → 剛性は8倍
- 長さ(支えから力の点まで)を半分にする → 剛性は8倍
MONOist の記事も、厚さ1mm の鉄板を2mm にすると、たわみは8分の1、引張応力は4分の1になるとしています。剛性を上げたいときは、材料を替えるより、厚さ・断面の形・長さを変えるほうが効きやすいのはこのためです(編集部の解説)。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所、チリも積もれば予想外:「失敗学」から生まれた成功シナリオ(2)|MONOist
支え方でも変わる

出典:ミスミ meviy、愛媛県産業技術研究所をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
同じ長さ L の棒でも、支え方で剛性は変わります。片持ちはりの先に力をかけるときは k = 3EI ÷ L³(ミスミのたわみの式 δ = FL³ ÷ 3EI を剛性の形に直したもの)、両端を台に載せて真ん中に力をかけるとき(3点曲げ)は k = 48EI ÷ L³ です(愛媛県産業技術研究所の3点曲げ試験の式 EI = PL³ ÷ 48δ を、剛性の形に直したもの)。両端をしっかり固定して真ん中に力をかけると、材料力学の公式では k = 192EI ÷ L³ になります(編集部の解説)。片持ちと比べると、両端で支えると16倍、両端を固定すると64倍です(倍率は編集部の計算)。
実際の部品では、ボルトで留めた所や溶接した所も少したわむので、図面どおりの「固定」にはなりません。支えのたわみも含めて剛性を見積もります(編集部の解説)。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所
断面の形を工夫する

材料を増やさずに剛性を上げるには、断面の形を工夫します。板の端を折り曲げる、ハット形やコの字形にする、リブ(補強の板)を立てる、パイプにするなどです。どれも、材料を曲げの中心から遠い所に置いて、断面二次モーメントを大きくする方法です(編集部の解説)。ミスミの解説も、たわみ対策には板厚を上げる、リブを立てるなど、断面二次モーメントを増やすことが必要としています。同じ量の鋼板でも、折り曲げ方で曲げのかたさが平らな板の数十倍から数百倍になる計算例を、課題ページ「薄く軽くすると強度が足りない」で紹介しています。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy
「強さ」と剛性は別のもの

出典:ミスミ meviyをもとに AI(Claude)で作成
剛性(変形のしにくさ)と強度(壊れにくさ)は、よく混同されます。ミスミの解説によると、鉄鋼材料のヤング率は、強度を上げても約206GPa でほぼ同じです。そのため、同じ形のまま高強度の鋼に替えても、剛性は上がりません。
自動車部品の例では、深井製作所の embrella 製サイドシル(試作品)の紹介で、超ハイテン化で強度は上がっても、ヤング率は鉄である以上大きく変えられず、薄くして下がった剛性は、断面二次モーメントを広げて補わなければならないとしています(同社は、独自の加工で同じ材質・板厚でも剛性を上げられると提案しています)。強い材料にして薄くすると、壊れにくさは保てても、たわみやすくなることに注意します(編集部の解説)。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy、1,180MPa級超ハイテン embrella製サイドシル(深井製作所)|MarkLines
ものづくりでどう効くか
つながった部品の剛性は、いちばん柔らかい所に引っ張られる

出典:ケーエスエス、日本精工をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
機械は、たくさんの部品をつないでできています。力が部品を順に伝わる場合、全体の剛性 K は、それぞれの剛性 k₁、k₂… から 1 ÷ K = 1 ÷ k₁ + 1 ÷ k₂ + … で求めます(ばねの直列つなぎ)。ボールねじの送り軸では、日本精工・ケーエスエスとも、ねじ軸・ナット・支持軸受・取付け部の剛性をこの式で合わせて、送り系全体の剛性を求めるとしています。
たとえば、ねじ軸 60N/μm・ナット 300N/μm・支持軸受 500N/μm なら、全体は約45N/μm で、いちばん柔らかいねじ軸の60N/μm より、さらに小さくなります(ナットと軸受の値は説明のための仮定。計算は編集部)。全体を硬くしたいときは、いちばん柔らかい部分から硬くするのが効きます。詳しくは課題ページ「ボールねじの寿命・剛性を見極めたい」で計算しています。
出典:ボールねじ技術解説(PDF)|ケーエスエス、精機製品 NSKガイド ボールねじ モノキャリア(6.2 送りねじ系の剛性)|日本精工
剛性が高いほど、固有振動数は高くなる

出典:ミスミ meviy、MONOistをもとに AI(Claude)で作成
物には、たたいたときに自然に揺れる速さ(固有振動数)があります。ミスミの解説は、部品の固有振動数は、剛性(ばね定数)が高いほど高くなるとしています。MONOist の記事は、板厚を2倍にすると剛性は8倍になり、8の平方根をとって、共振する周波数は約2.8倍になるとしています。
ばねと質量の簡単なモデルでは、固有振動数 f =(1 ÷ 2π)× √(k ÷ m)で、剛性 k を4倍にすると f は2倍、質量 m を半分にすると f は約1.4倍になります(式と倍率は編集部の解説)。固有振動数が、モーターの回転数など揺らす力の周波数と重なると、大きく揺れる共振が起きます。軽くした結果、剛性がそれ以上に下がると固有振動数が下がり、共振しやすくなります。課題ページ「軽くすると振動・騒音が増える」も参照してください。
出典:【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy、チリも積もれば予想外:「失敗学」から生まれた成功シナリオ(2)|MONOist
軽くしたい:重さあたりの剛性で比べる

日本製鉄の技報では、板の曲げの剛性はヤング率と板厚の3乗の積に比例する一方、重さは板厚に比例するため、構造を変えずに板を薄くすると、重さが減る割合より、剛性が下がる割合のほうが大きくなりうるとしています。また、自動車の車体のような構造では、剛性は板厚の1乗から3乗に比例し、板の曲げで変形する部分が多いほど3乗に近づくとしています。同じ技報は、新しい世代の車体でねじり剛性(車体をねじったときのかたさ)を 16.3kNm/deg から 20.6kNm/deg へ26%上げた例を紹介しています。
同じ技報では、板の曲げで変形する部分を減らした構造では、重さあたりの剛性がヤング率 ÷ 密度に比例し、金属の場合、ヤング率 ÷ 密度はほぼ一定(26×10⁶ m²/s²)なので、アルミやマグネシウムのような密度の低い金属を使わなくても、剛性と軽量化を両立できるとしています。ヤング率 ÷ 密度を比剛性と呼び、金属どうしでは、材料を替えるだけでは重さあたりのかたさはあまり変わらないので、軽い金属に替えるときは厚くするなど形で補います(比剛性の呼び方と、形で補う話は編集部の解説)。愛媛県産業技術研究所の資料では、CFRP は比重1.7(鉄は7.8)と軽く、弾性係数は100GPa 程度(繊維の向きと積み方で変わる)で、軽くて曲げにくい板にできるとしています。
出典:剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立|日本製鉄技報 第412号、CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所
剛性の測り方

出典:愛媛県産業技術研究所、福島県をもとに AI(Claude)で作成
- 押して測る(静剛性):部品に力を加えて、変形を測ります。愛媛県産業技術研究所は、両端を支えた板の真ん中に荷重をかける3点曲げ試験で、荷重 P・支点の間の距離 L・たわみ δ から曲げ剛性を EI = PL³ ÷ 48δ で求めています。力を少しずつ増やし、力と変形のグラフの傾きから剛性を出す、という考え方です(グラフの説明は編集部の解説)。
- たたいて測る(動剛性・固有振動数):揺れる力に対する剛性(動剛性)は、揺らす速さ(周波数)ごとに変わる値です(編集部の解説)。広島県の研究報告では、工作機械の主軸に付けた工具をインパルスハンマーでたたき、加速度ピックアップで揺れを測って、動剛性の逆数(変位 ÷ 力)であるコンプライアンスを求め、仕上げ面の粗さとの関係を調べています。福島県は、郡山の施設で、加速度センサーを貼った物をハンマーでたたき、生じた振動を解析して固有振動数を求めるハンマリング試験の装置を、企業が使えるように置いています。

日本機械学会の機械工学事典では、工作機械のような精密機械では、静剛性は重要な評価の値の1つで、剛性の設計が重視されるとしています。工具の突き出しが長いと剛性が下がり、加工面が悪くなりやすいことも、広島県の研究報告で触れられています。
出典:CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所、高速高精度加工に関する研究:工具突出長が長い場合の機械剛性を考慮した仕上切削法の検討(西川隆敏・前田圭治・山下弘之)|広島県、ハンマリング振動測定システム(郡山、令和4年導入の設備)|福島県、静剛性|日本機械学会 機械工学事典
剛性が出てくるページ
出典
- 静剛性|日本機械学会 機械工学事典
- 【設計者必見】ヤング率(縦弾性係数)とは?強度との違い・主要材料一覧・たわみ計算まで徹底解説|ミスミ meviy
- CFRPを用いた高剛性軽量積層板の開発|愛媛県産業技術研究所
- 建築数理設計特論 講義資料「微小変形理論における剛性行列」(平成29年度)|東京大学
- チリも積もれば予想外:「失敗学」から生まれた成功シナリオ(2)|MONOist
- 1,180MPa級超ハイテン embrella製サイドシル(深井製作所)|MarkLines
- ボールねじ技術解説(PDF)|ケーエスエス
- 精機製品 NSKガイド ボールねじ モノキャリア(6.2 送りねじ系の剛性)|日本精工
- 剛性評価技術に基づく剛性向上と軽量化の両立|日本製鉄技報 第412号
- 高速高精度加工に関する研究:工具突出長が長い場合の機械剛性を考慮した仕上切削法の検討(西川隆敏・前田圭治・山下弘之)|広島県
- ハンマリング振動測定システム(郡山、令和4年導入の設備)|福島県
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月2日
