PFAS・鉛を使わずに作りたい

はんだ付けした電子基板、黄銅の継手と切りくず、水滴をはじく板を並べたイメージ画像

取引先から「PFAS を含まない材料に替えてほしい」と言われた。フッ素樹脂のコーティングや撥水処理を、何に替えればよいかわからない。はんだを鉛フリーにしたら、ブリッジやぬれ不良が増えた。快削黄銅の部品を鉛レスにしたいが、削りにくくならないか心配。こうした悩みの多くは、PFAS や鉛が、ほかの材料では1つで代わりにくい性能を担ってきたことが原因です。

置き換えは、材料を替えるだけでは終わりません。今の材料がどの性能を担っているかを書き出し、代わりの材料で足りない分を、設計や工程で補います。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)非フッ素系コーティング(無機系・PEEK系など)非フッ素系の撥水・非粘着剤鉛フリーはんだ鉛レス黄銅(ビスマス系・シリコン系)含有・排出の分析
Aフッ素樹脂コーティングの非粘着・滑りを、PFASなしで出したい◎○△
Bフッ素系の撥水・撥油・防汚処理を置き換えたい○◎△
Cはんだを鉛フリーにしたい・鉛フリーで不良が出る◎△
D快削黄銅(C3604など)の部品を鉛レスにしたい◎△
E製品や排水に PFAS・鉛が入っていないか確かめたい◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に選べる方法は、求める性能(温度、摩耗、薬品、精度など)、使う国と用途の規制、量産の条件によって異なります。分析の「△」は、切り替えの前後で、含有していないことを確かめる用途です。

記号の理由と出典(11件)

マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。

症状技術記号理由出典
A非フッ素系コーティング(無機系・PEEK系など)◎無機系や PEEK 系で非粘着・耐摩耗・耐熱を品種ごとに選べ、PFAS なしで代替できるため関西ポリマー
A非フッ素系の撥水・非粘着剤○シリカ系の薄膜で同等の非粘着性をうたう製品があるが、自社の部品で確かめる必要があるため奥野製薬工業
A含有・排出の分析△代替材そのものではなく、切り替え後に PFAS が残っていないかを確かめる用途のため編集部の解説
B非フッ素系コーティング(無機系・PEEK系など)○厚い塗膜で非粘着と耐久性は出せるが、撥水・撥油の置き換えが主目的ではないため編集部の解説
B非フッ素系の撥水・非粘着剤◎フッ素を使わない処理で撥水・防汚を置き換えられるため(油をはじくのは難しい)奥野製薬工業
B含有・排出の分析△置き換えの前後で PFAS を含まないことを確かめる用途のため編集部の解説
C鉛フリーはんだ◎銀を使わない合金で、鉛フリー化でのブリッジやぬれ不良を抑える選択肢があるため日本スペリア社
C含有・排出の分析△部品や基板に鉛が残っていないかを確かめる用途のため編集部の解説
D鉛レス黄銅(ビスマス系・シリコン系)◎鉛の代わりにビスマスなどを加え、C3604 と同程度の切削性を目指した代替材があるためサンエツ金属
D含有・排出の分析△受け入れた材料と完成品の鉛を確かめる用途のため編集部の解説
E含有・排出の分析◎鉛はスクリーニングと精密分析、PFAS は別の分析法で、含有や排出を確かめられるため東京都立産業技術研究センター

課題の診断と解決策

A

フッ素樹脂コーティングの非粘着・滑りを、PFASなしで出したい

金型や搬送ロール、食品の製造ラインで、フッ素樹脂(PTFEなど)のコーティングを使っている。取引先から PFAS を含まない処理を求められたが、同じ性能が出るかわからない。

食品ラインの押し付けローラーの表面に、生地がくっついて持ち上がっているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
フッ素樹脂は、くっつきにくい、滑りやすい、熱や薬品に強い、といった性能を1つで兼ね備えています。関西ポリマーは、PFAS には PTFE・PFA・FEP などのフッ素樹脂も含まれると説明しています。
解決に使える技術
選ぶときの注意

関西ポリマーは、フッ素樹脂について「完全な代替品はございません」としています。同社の PFAS フリーコーティングでも、耐摩耗が高い PEEK 系は非粘着が「△」で、非粘着と耐摩耗、耐熱のどれを優先するかを決める必要があります。今の処理で、どの性能が本当に効いているのかを先に書き出します。

B

フッ素系の撥水・撥油・防汚処理を置き換えたい

部品や製品の表面に、水や油をはじく処理をしている。フッ素系の処理剤を、PFAS を含まないものに替えたい。

コーティングした板の上で、水は丸い粒になってはじかれ、油は薄く広がってぬれているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
水は表面張力が大きく、ヘキサンのような油は表面張力が小さいため、油のほうが表面に広がりやすくなります。フッ素系の処理は、表面のエネルギーを低くして、水だけでなく油もはじけるようにしてきました。
解決に使える技術
選ぶときの注意

水をはじくことと、油をはじくことは別の性能です。何をはじきたいのか(水、油、皮脂、薬品)と、どの程度の耐久性が必要かを決めてから、候補を試します。撥水・防汚そのものの技術は、撥水・防汚・防曇を持たせたいの課題ページも参考になります。

C

はんだを鉛フリーにしたい・鉛フリーで不良が出る

鉛入りのはんだ(Sn-Pb)を使ってきた基板を、鉛フリーに切り替えたい。切り替えたら、ブリッジ、ぬれ不良、部品の熱ストレスが増えた。

基板の裏で、となり合う2本のリードのはんだがつながり(ブリッジ)、つららが垂れているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
鉛入りの共晶はんだは183℃で溶けますが、鉛フリーの標準的な Sn-3.0Ag-0.5Cu(SAC305)は217℃で溶け始め、220℃で溶けきります。はんだ付けの温度が上がり、ぬれ性や、はんだの流れ方も変わります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

はんだ合金だけでなく、部品の電極のめっき、基板の表面処理、フラックス、はんだ付けの温度プロファイルもセットで見直します。鉛フリーの一部の合金では、ウィスカ(金属の針状結晶)が発生するリスクも指摘されています。

D

快削黄銅(C3604など)の部品を鉛レスにしたい

水栓、バルブ、継手、端子などを、快削黄銅の棒から削っている。鉛の少ない材料に替えたいが、削りにくくならないか、コストが上がらないか心配。

旋盤で黄銅の棒を削ると、切りくずが分断されずに長くつながって棒と工具に絡みつくイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
C3604(快削黄銅棒)は、鉛を1.80〜3.70% 含みます。この鉛が、削ったときに切りくずを細かく分断するため、発熱と工具の摩耗が小さく、速く削れます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

鉛レス黄銅の切りくずは、鉛入りの黄銅と混ぜずに回収する必要があります。サンエツ金属は、鉛レス黄銅の削り粉などは「完全分別が必要」としています。同じ工場で一部の部品だけ切り替える場合は、機械と切りくずの置き場を分ける段取りも考えます。

E

製品や排水に PFAS・鉛が入っていないか確かめたい

取引先から、PFAS と鉛の非含有の証明を求められた。工場の排水や、処理に使った活性炭に PFAS が残っていないかも気になる。

活性炭の槽を通った工場の排水を、排水口で採水びんに取っているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
鉛は、蛍光X線分析(XRF)で、壊さずにスクリーニングできます。PFAS は1万種類以上あるとされ、個別の物質を測る分析と、有機フッ素の総量を見る分析を使い分けます。
解決に使える技術
  • 含有・排出の分析鉛は XRF でスクリーニングし、基準に近いものは精密分析。PFAS は LC-MS/MS で個別の物質を、燃焼イオンクロマトグラフィーで有機フッ素の総量を測る
選ぶときの注意

スクリーニング分析で「検出されない」ことが、そのまま「含まない」ことの証明になるとは限りません。東京都立産業技術研究センターは、測定値が基準に近いグレーゾーンでは精密分析を行うよう説明しています。どの物質を、どの方法で、どの濃度まで確かめればよいかを、取引先の要求と照らして決めます。

なぜ、PFAS や鉛を置き換えるのは難しいのか

PFAS と鉛は、1つで複数の性能を担ってきた

環境省によると、PFAS(有機フッ素化合物)は、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称で、1万種類以上の物質があるとされています。環境省の Q&A では、PFOS は半導体用の反射防止剤・レジスト、金属めっきの処理剤、泡消火薬剤などに、PFOA はフッ素ポリマーの加工助剤、界面活性剤などに使われてきたと説明しています。

鉛も、ものづくりの中で大事な役割を担ってきました。鉛入りの共晶はんだは183℃という低い温度で一気に溶け、快削黄銅の鉛は、削ったときに切りくずを細かく分断します。どちらも、1つの材料が複数の性能を同時に担っているため、代わりの材料では、どれかの性能が足りなくなりやすいのが、置き換えの難しさです。

PFASと鉛が担ってきた役割と、置き換え先の例、置き換えるときの壁を4つの材料ごとに並べた図
PFAS と鉛が担ってきた役割と、置き換えるときの壁
AI(Claude)で作成

規制は、個別の物質から、グループ全体へ広がっている

環境省の Q&A によると、PFOS・PFOA・PFHxS は、それぞれ2009年・2019年・2022年に、ストックホルム条約(POPs条約)の対象になりました。日本では、PFOS を2010年、PFOA を2021年に化審法の第一種特定化学物質に指定し、製造・輸入などを原則として禁止しています。長鎖のペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)も、2025年に条約の対象になることが決まりました。水道では、PFOS と PFOA の合計で 50ng/L(0.00005mg/L)以下とする水質基準が、2026年4月1日から施行されています。

EU では、2023年1月に、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局が、PFAS をグループ全体で制限する提案を欧州化学品庁(ECHA)に提出しました。業界団体の Fluorocarbons.org によると、社会経済分析委員会(SEAC)は2026年末までに最終意見を採択する見込みで、欧州委員会はその意見をもとに制限案を示します。一方、環境省は、PFOS・PFOA・PFHxS など以外の PFAS については、これらと同様の有害性等があると確認されているわけではない、としています。

PFASの規制の流れを、POPs条約、化審法、EUの提案、水道の水質基準の年表で示した図
PFAS の規制の流れ
出典:環境省の資料などをもとに AI(Claude)で作成

鉛については、EU の RoHS 指令が、電気電子機器に含まれる鉛を0.1%以下に制限しています。ただし、快削黄銅などの銅合金中の鉛(4%まで)や、鋼・アルミニウム中の鉛には、期限つきの適用除外があります。TÜV ラインランドによると、EU は2025年11月に、鋼・アルミニウム・銅の合金成分としての鉛の適用除外を改正する指令(EU)2025/2364 を公表しました。適用除外は期限と条件が見直されていくため、部品ごとに、どの適用除外にいつまで頼れるのかを確かめる必要があります。日本でも、資源有効利用促進法により、パソコンやエアコンなど家電7品目では、鉛などの6物質が含有率の基準値を超える場合、J-Moss(JIS C 0950)に基づく含有マークの表示が2006年7月から義務付けられています。

出典:有機フッ素化合物(PFAS)について|環境省、PFASに関するよくある質問|環境省、水質基準に関する省令の一部を改正する省令等の公布について|環境省、PFAS Restriction: the RAC final and SEAC draft opinions and next steps|Fluorocarbons.org、鉄鋼、アルミニウム、銅の合金成分としての鉛の適用除外に関するRoHS改正指令|TÜVラインランド、C3604とは?|tec-note、J-MOSS(JIS C 0950)|日本電機工業会

解決技術の詳細

PFAS・鉛の置き換えは、①どこに入っているかを確かめる、②その物質が担っている性能を書き出す、③代わりの材料・工法を選んで試す、④信頼性を確かめて工程を切り替える、の順で進めます。ここでは、代わりの材料と、確かめるための分析を、5つに分けて説明します。

PFAS・鉛を使わない製品にする4つの手順と、分析の使い分けを示した図
PFAS・鉛を使わない製品にする進め方と、分析の使い分け
AI(Claude)で作成

非フッ素系コーティング(無機系・PEEK系など)

フッ素樹脂コーティングの代わりには、シリカなどの無機系、PEEK・PEKK などのスーパーエンジニアリングプラスチック系、二硫化モリブデン系などのコーティングがあります。関西ポリマーの特性表(参考値)では、無機系は非粘着が「○〜◎◎」で耐熱温度は100〜400℃、PEEK 系は耐摩耗が「◎◎」で硬度9Hですが、非粘着は「△」です。

1枚の部品で、食品が触れる面は非粘着のコーティング、スクレーパーがこする端は耐摩耗のコーティングに分けたイメージ
部位ごとに選ぶ:くっつく所とこすれる所で、コーティングを分けるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

このように、非粘着・耐摩耗・耐熱のどれを優先するかで、選ぶべきコーティングが変わります。フッ素樹脂では1種類で済んでいた部品でも、部位ごとに品種を分けることを考えます。食品に触れる部品は、食品に対応した品種かどうかも確かめます。

非フッ素系の撥水・非粘着剤

撥水は、フッ素を使わなくても、シリコーン系やシリカ系などの処理で出せます。難しいのは油です。化学便覧のデータでは、水の表面張力が 72.8mN/m なのに対して、エタノールは 22.4、ヘキサンは 18.4mN/m と小さく、表面張力が小さい液体ほど、固体の表面に広がりやすくなります。

水と油の表面張力の比較と、フッ素系・非フッ素系の処理面での水滴・油滴の広がり方の概念図
液体の表面張力と、はじき方の違い
出典:化学便覧のデータをもとに AI(Claude)で作成

一方で、フッ素化合物を使わずに、非粘着性や撥水撥油性をうたう製品も出てきています。奥野製薬工業は、シリカ系の薄膜コーティング剤で、一般的なフッ素コーティング剤と同等の非粘着性・防汚性・撥水撥油性を付与できるとしています。はじきたい液体と使う条件で、自社の部品で確かめます。

鉛フリーはんだ

鉛フリーはんだの代表は、すず・銀・銅の Sn-Ag-Cu 系(SAC305 など)です。溶ける温度は217〜220℃で、鉛入りの共晶はんだの183℃より約35℃高くなります。このほか、銀を使わない Sn-Cu-Ni 系や、低温ではんだ付けできる Sn-Bi 系(約139℃)などがあります。

低温はんだ、鉛入り共晶はんだ、鉛フリー標準はんだSAC305の溶ける温度を比べた棒グラフ
はんだの種類と溶ける温度
AI(Claude)で作成

鉛フリーはんだでは、はんだ付けの温度が上がるため、部品と基板の耐熱性と、温度の管理が重要になります。共晶はんだに比べてぬれ性が劣る場合があるほか、一部の合金ではウィスカが発生するリスクも指摘されています。合金を選ぶときは、はんだ付けの方法(リフロー・フロー・手はんだ)と、部品のめっき、基板の表面処理を合わせて評価します。

鉛レス黄銅(ビスマス系・シリコン系)

C3604 などの快削黄銅は、鉛を加えることで、切削時に切りくずが細かく分断され、発熱や工具摩耗が抑えられて工具寿命が長くなります(ミスミの技術解説)。鉛の代わりにビスマスやシリコンを加えた鉛レス材(鉛0.1%以下)も、JIS H3250 に規定されています。

鉛入りの快削黄銅では切りくずが短く分断され、鉛を除いた黄銅では切りくずがつながりやすいことを示す概念図
快削黄銅の鉛が切りくずを分断するしくみ
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成

鉛レス材の切削性は C3604 に近いともいわれますが、tec-note の解説によると、切りくずを鉛入りの材料と混ぜられないため、一部の部品だけを切り替えるのが難しい面もあります。シリコン系は強度が高い一方、切削性はビスマス系ほど良くないとする材料メーカーもあります。削る部品の形と精度で試し削りをして、工具と切削条件を合わせ込みます。

含有・排出の分析

手持ちの蛍光X線分析装置を黄銅のバルブに当て、壊さずに成分を調べているイメージ
蛍光X線分析:部品を壊さずに鉛をスクリーニングするイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

鉛などの RoHS の対象物質は、蛍光X線分析(XRF)で、壊さずに簡便にスクリーニングできます。東京都立産業技術研究センターの解説では、スクリーニングの結果が基準値に近い「グレーゾーン」の場合は、精密分析で確かめます。

試料を炉で燃やし、出たガスを液に吸収させてイオンクロマトグラフで測る、燃焼イオンクロマトグラフィーの流れのイメージ
燃焼イオンクロマトグラフィー:燃やして有機フッ素の総量を見るイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

PFAS は、個別の物質を液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS/MS)で測る方法が中心です。これに加えて、試料を900〜1000℃で燃やして有機フッ素をフッ化水素に変え、イオンクロマトグラフィーで測る燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)では、未知の PFAS も含めた有機フッ素の総量を評価できます。ただし、CIC では個別の PFAS の種類は特定できません(Metrohm のアプリケーションノート)。何を確かめたいのか(特定の物質の有無か、フッ素化合物全体か)で、分析方法を選びます。

出典:C3604とは?特性・用途・加工・鉛フリー代替材まで|ミスミ(meviy)、C3604とは?|tec-note、はんだの融点一覧表|genba-manage、共晶はんだ(有鉛はんだ)と鉛フリーはんだの違いとは?|SST、物性化学 第7回 界面現象(講義資料)、スクリーニング分析によってRoHS指令の対象物質が検出されなければ非含有と考えて良いでしょうか?|東京都立産業技術研究センター、燃焼イオンクロマトグラフィによる環境水のPFAS分析|Metrohm、PFASフリーコーティング|関西ポリマー、トップセラリリース IG|奥野製薬工業

PFAS・鉛を使わないための技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。コーティングや材料を替えるのか、はんだを替えるのか、まず含有を確かめるのかによって、相談先が変わります。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
関西ポリマーコーティング加工フッ素樹脂コーティングの会社で、無機系・PEEK系などフッ素樹脂を使わない「PFASフリーコーティング」も揃える。A フッ素樹脂コーティングの非粘着・滑りを、PFASなしで出したい
B フッ素系の撥水・撥油・防汚処理を置き換えたい
奥野製薬工業表面処理の薬剤メーカーフッ素化合物を使わない、シリカ系の非粘着・防汚コーティング剤を手がける。アルミなどの金属部品に透明で薄い皮膜を付けられる。A フッ素樹脂コーティングの非粘着・滑りを、PFASなしで出したい
B フッ素系の撥水・撥油・防汚処理を置き換えたい
日本スペリア社はんだメーカー銀を使わない Sn-Cu-Ni 系の鉛フリーはんだ「SN100C」を開発・製造。フローはんだのブリッジや材料費の見直しの相談先。C はんだを鉛フリーにしたい・鉛フリーで不良が出る
サンエツ金属黄銅棒メーカービスマス系の「BZシリーズ」とシリコン系の「NEO BRASS」の2種類の鉛レス黄銅棒を製造する。D 快削黄銅(C3604など)の部品を鉛レスにしたい
中外テクノス分析水質・廃棄物・製品などの PFAS の分析を行う。工場の排水や使い終わった活性炭、泡消火剤などの製品を調べられる。E 製品や排水に PFAS・鉛が入っていないか確かめたい
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

関西ポリマー株式会社|無機系・PEEK系などの PFAS フリーコーティング

関西ポリマーとは

関西ポリマーは、大阪府貝塚市に本社を置く、フッ素樹脂コーティング・ライニングの会社です(1978年創業、2000年設立)。関東事業所(埼玉県戸田市)も持ち、フッ素樹脂コーティングのほか、セラミックコーティングや溶射、サンドブラスト加工を手がけています。あわせて、フッ素樹脂を使わない「PFASフリーコーティング」を揃えています。

関西ポリマーのPFASフリーコーティング10品番の非粘着・耐摩耗・硬度・耐熱温度の一覧図
関西ポリマーの PFAS フリーコーティングの特性
出典:PFASフリーコーティング|関西ポリマーの特性表をもとに AI(Claude)で作成

関西ポリマーの得意技術

技術内容
PFASフリーコーティング無機系、PEEK系、PEKK系、二硫化モリブデン系の10品番を揃える。特性表の参考値で、硬度(鉛筆硬度)は2H〜9H、耐熱温度は100〜400℃
非粘着を重視する品番無機系の塗料。非粘着が「◎」の品番(KP-9931-2、KP-8919-2)や、表面に凹凸を付けた超非粘着の品番(KP-10F-2)がある。常温で硬化できる品番もある
耐摩耗・耐薬品を重視する品番PEEK系・PEKK系の塗料。耐摩耗は「◎◎」、硬度9Hだが、非粘着は「△」。耐荷重・低摩擦係数をうたう二硫化モリブデン系もある

同社は、フッ素樹脂について「完全な代替品はございません」と説明しています。どの性能を優先するかで品番が変わるため、使う温度、くっつく相手、こすれ方、食品に触れるか(2025年4月時点で多くの品番が食品に対応)を伝えて相談します。

関西ポリマーが解決できる課題

  • フッ素樹脂コーティングを、PFASを使わないコーティングに切り替えたい
  • こすれて早くすり減るので、非粘着より耐摩耗を優先したコーティングを選びたい
  • 食品の製造ラインで、PFASを含まない非粘着の表面処理を探している

出典:PFASフリーコーティング|関西ポリマー、会社概要|関西ポリマー

奥野製薬工業株式会社|フッ素化合物を使わない、シリカ系の非粘着・防汚コーティング剤

奥野製薬工業とは

奥野製薬工業は、大阪市中央区に本社を置く、1905年創業の化学メーカーです(1944年設立、従業員数504名、2026年4月現在)。表面処理(METAL FINISHING)、先端材料(ADVANCED MATERIALS)など4つの分野で事業を手がけています。

奥野製薬工業のトップセラリリースIGの非粘着性評価。90°剥離試験で、アルミ基材に比べて剥離力が下がり、一般的なフッ素コーティングと同程度になったことを示すグラフ
トップセラリリース IG の非粘着性の評価(90°剥離試験)(出典:トップセラリリース IG|奥野製薬工業)

奥野製薬工業の得意技術

技術内容
トップセラリリース IG有機フッ素化合物を使わないシリカ系の薄膜コーティング剤。主剤・硬化剤・非粘着性付与剤の3液で構成する
塗り方スプレーで塗り、150℃で熱処理すると、透明なシリカ系の皮膜ができる。アルミニウムなどの金属に対して、よく密着するとしている
性能同社は、一般的なフッ素コーティング剤と同等の非粘着性・防汚性・撥水撥油性を付与できるとしている。皮膜は耐食性にも優れるとしている

同社は、90°剥離試験で、アルミ基材に比べて剥離力が下がり、一般的なフッ素コーティングと同じ程度の非粘着性が得られた評価結果を公開しています。

奥野製薬工業が解決できる課題

  • フッ素系の非粘着・防汚コーティングを、PFASを含まないものに置き換えたい
  • アルミなどの金属部品に、透明で薄い非粘着の皮膜を付けたい
  • PFAS規制への対応として、表面処理の薬剤を見直したい

出典:トップセラリリース IG|奥野製薬工業、会社概要|奥野製薬工業

株式会社日本スペリア社|銀を使わない Sn-Cu-Ni 系の鉛フリーはんだ「SN100C」

日本スペリア社とは

日本スペリア社は、大阪府吹田市に本社を置く、1966年設立の、はんだ・フラックス・ろう材などの電子機器用金属接合材料のメーカーです(従業員数100名、2023年1月現在)。同社が開発した鉛フリーはんだ「SN100C」を中心に、製品を展開しています。

日本スペリア社の鉛フリーはんだSN100Cの製品群(リール、ソルダペースト、やに入りはんだなど)
鉛フリーはんだ SN100C の製品(出典:製品情報|日本スペリア社)

日本スペリア社の得意技術

技術内容
SN100CSn(すず)-Cu(銅)-Ni(ニッケル)-Ge(ゲルマニウム)系の鉛フリーはんだ。銀を含まないため、材料費を抑えられるとしている。基本組成の Sn-Cu-Ni は国際規格ISOに登録されている
作業性微量のNiとGeの働きで、はんだの流動性が高く、つらら・ブリッジの発生を抑えるとしている。ぬれ上がり・ぬれ広がりにも優れるとしている
接合の信頼性Niの効果で引け巣を抑え、銅パターンや銅線の「銅食われ」を抑える。銅とはんだの界面に、安定した合金層を作るとしている

同社は、従来の鉛フリーはんだ(例として Sn-3.0Ag-0.5Cu)の課題として、つらら・ブリッジ、ぬれ上がり不足、引け巣、銅食われなどを挙げ、SN100C はこれらを抑える特性を持つと説明しています。

日本スペリア社が解決できる課題

  • 鉛フリーにしたら、フローはんだでブリッジやつららが増えた
  • 鉛フリーはんだの材料費(銀の価格)を下げたい
  • スルーホールの銅食われや、引け巣を減らしたい

公開されている実績

  • 1999年3月に、松下電器のビデオ用基板の製造ラインで初めて採用された
  • SN100Cで電子部品を接合した製品は、累計24億台以上。エアコン、冷蔵庫、LED照明、パソコンなど幅広い製品に使われている
基板の上のはんだ接合部(フィレット)の拡大写真
SN100C の紹介ページに掲載された、はんだ接合部の拡大写真(出典:SN100Cについて|日本スペリア社)

出典:SN100Cについて|日本スペリア社、製品情報|日本スペリア社、会社概要|日本スペリア社

サンエツ金属株式会社|ビスマス系・シリコン系の鉛レス黄銅棒

サンエツ金属とは

サンエツ金属は、富山県砺波市に本社を置く、黄銅棒・線と精密部品のメーカーです(従業員数530名)。鉛レス黄銅棒として、ビスマス系の「BZシリーズ」と、シリコン系の「NEO BRASS(ネオブラス)」の2種類を製造しています。

サンエツ金属の鉛レス黄銅棒の束
鉛レス黄銅棒。下は同社が掲載している飲料水用部品の規格(NSF/ANSI 61)の認証の表示(出典:鉛レス黄銅棒|サンエツ金属)

サンエツ金属の得意技術

技術内容
BZシリーズ(ビスマス系、JIS H3250 C6801・C6802)鉛の代わりにビスマスを加えた鉛レス黄銅棒。2001年に量産を始め、累計生産量は4万トンを上回るとしている。電気・電子機器の分野で使われている
BZ5A(C3604の代替)鉛入りの快削黄銅棒 C3604 の代替材で、精密切削加工に向く。おおむね C3604 と同じ程度の切削性としているが、精度の要求が非常に高い場合は、製品の実現が難しいこともあるとしている
BZ3N・NEO BRASSBZ3N は鉛の含有0.1%以下を保証する耐脱亜鉛黄銅で、熱間鍛造にも向く。NEO BRASS(C6931・C6932)はシリコンを加えた高力黄銅 C6782 の代替材で、高強度・耐摩耗だが、切削性は BZシリーズほど良くない

同社は、鉛レス黄銅の削り粉などは「完全分別が必要」としています。鉛入りの黄銅と同じ工場で削る場合は、切りくずの回収を分ける段取りも必要です。

サンエツ金属が解決できる課題

  • C3604 で削っている部品を、鉛レスの材料に替えたい
  • 水栓・バルブなどの部品で、鉛の少ない耐脱亜鉛黄銅を使いたい
  • 高力黄銅の部品を、強度を保ったまま鉛レスにしたい

出典:鉛レス黄銅棒|サンエツ金属、会社概要|サンエツ金属

中外テクノス株式会社|PFAS の分析(水質・廃棄物・製品など)

中外テクノスは、広島市西区に本社を置く、1953年創業の会社です(従業員1,012人)。環境調査・分析のほか、構造物調査、非破壊検査、CAE解析なども手がけています。PFASの分析には、10年以上前から取り組んでいるとしています。

活性炭からPFASを抽出するソックスレー抽出装置
使用済み活性炭から PFAS を抽出するソックスレー抽出装置(出典:活性炭に残るPFASをどう測る?|中外テクノス)

中外テクノスの得意技術

技術内容
試験所認定水質中のPFAS分析で、試験所認定の国際規格 ISO/IEC 17025:2017 を取得(US EPA Method 537.1・533)。国内の規格に加えて、US EPA や ISO の海外規格にも対応するとしている
分析できるもの水道水・環境水の PFOS・PFOA・PFHxS、排ガス、EPA Method 1633 による水質・底質、土壌、泡消火剤などの製品中の PFAS、LC-QTOF/MS によるノンターゲット分析など
廃棄物・活性炭環境省の技術的留意事項に準拠した、燃え殻・汚泥・廃水などの PFAS 分析。使用済み活性炭の PFAS 30成分を、ソックスレー抽出で一括分析する(定量下限の目安 0.5ng/g)

PFOS・PFOA は、通常、試料の受付後10営業日以内に結果を報告するとしています(納期は試料の数と種類で変わります)。

中外テクノスが解決できる課題

  • 工場の排水や、使い終わった活性炭に PFAS が残っていないかを確かめたい
  • 泡消火剤などの製品に PFAS が含まれているかを調べたい
  • 海外の分析法(US EPA)に沿った PFAS の分析結果が必要

出典:PFAS分析について|中外テクノス、活性炭に残るPFASをどう測る?|中外テクノス、会社概要|中外テクノス

選ぶ前に確かめる条件

材料メーカーや加工会社、分析会社に相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 置き換えたい物質と、それが入っている部品・材料・工程(コーティング、撥水剤、はんだ、黄銅、めっきの薬剤など)
  • その物質が担っている性能と、必要な水準(非粘着、滑り、耐熱温度、耐薬品、撥油、融点、切削性など)
  • 製品を出す国・地域と用途、取引先の要求(どの物質を、どの濃度まで、どの証明で求められているか)
  • 今使っている適用除外や猶予があるか。その期限はいつか
  • 代わりの材料で足りない性能を、設計や工程の変更で補えるか(部位ごとに材料を分ける、はんだ付けの温度を見直すなど)
  • 切り替えたときの評価項目と期間(寿命、耐熱、ぬれ性、切削の工具寿命など)
  • 鉛入りと鉛レスの材料・切りくずを、工場の中で分けて管理できるか
  • 数量と時期:試作の数、量産に切り替えたい時期、在庫の切り替え方

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年9月29日

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次