潤滑油(じゅんかつゆ)は、動く部品のすき間に油の膜を作り、摩擦と摩耗を減らし、焼付きを防ぐ油です。潤滑油協会(JALOS)は、潤滑油を機械装置の「血液」にたとえています。中身は、基油(ベースオイル)に、目的に合わせた添加剤を加えたもので、選ぶときにいちばん大事なのは運転する温度で、ちょうどよい粘度になっていることです。
この記事では、潤滑油のはたらきとしくみ、粘度(ISO VG・粘度指数)の読み方、基油と添加剤、用途別の種類、選び方、劣化と管理までを、図と表で順に説明します。半固体のグリースや固体潤滑剤は、技術ページ「グリース・固体潤滑」で説明しています。
知りたいことから読む
- 潤滑油とは何か、何をしているのか知りたい → 潤滑油とは
- VG32・VG46 などの数字の意味を知りたい → ISO VG の読み方
- 油圧作動油・ギヤ油・タービン油などの違いを知りたい → 用途別の潤滑油の種類
- 軸受に使う油の粘度を決めたい → 軸受の油の粘度の決め方
- 油が黒くなった・白くにごった・交換の目安を知りたい → 劣化の原因と管理
潤滑油とは:はたらきと中身
潤滑油は、こすれ合う面のあいだに入りこみ、面どうしが直接ふれないように油の膜(油膜)を作ることで、摩擦と摩耗を減らします。油は流れるので、摩擦で出た熱や、摩耗粉などのごみを外へ運び出すこともできます(本田、精密工学会誌、2009)。

出典:JALOS(潤滑油協会)の解説をもとに AI(Claude)で作成
潤滑油の8つのはたらき
潤滑油協会(JALOS)の解説は、潤滑油を使う目的として次の8つを挙げています。
| はたらき | 内容 |
|---|---|
| 焼付きの防止 | 油膜で面どうしの金属接触を防ぐ |
| 摩耗の防止 | 面がすり減るのを防ぐ |
| 摩擦損失の低減 | 摩擦による動力のむだを減らす |
| 冷却 | 摩擦などで出た熱を運び出す |
| 応力の分散 | 接触する所にかかる力を油膜で分散する |
| 洗浄 | 摩耗粉や汚れを運び出す |
| さび止め・防食 | 表面をおおってさび・腐食を防ぐ |
| 密封 | すき間をふさいで、漏れや異物の侵入を防ぐ |
はたらきの名前は JALOS の解説。「内容」の説明は編集部の補足(冷却と、摩耗粉などを運ぶはたらきは本田(2009)も挙げている)。
出典:潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)、本田知己「潤滑油の劣化診断・検査技術」精密工学会誌 75巻3号(2009)
中身は「基油+添加剤」
JALOS によると、潤滑油は基油と各種の添加剤を組み合わせ、使用目的に応じて調合されています。基油は、原油からガソリンや灯油を作るときに同時に得られる精製した鉱油がもっとも一般的で、特殊な用途には化学的に合成した合成油が使われます。添加剤は、酸化を遅らせる、境界潤滑で面を守る、温度による粘度の変化を小さくする、などの役割を受け持ちます(基油と添加剤)。

出典:JALOS(潤滑油協会)の解説をもとに AI(Claude)で作成
潤滑のしくみ:油膜とストライベック曲線
流体潤滑・混合潤滑・境界潤滑
潤滑の状態は、油膜の厚さで3つに分けられます。2つの面が油膜で隔てられた状態が流体潤滑、油膜が薄くなり、ところどころで面が直接接触する状態が境界潤滑、そのあいだの入り混じった状態が混合潤滑です(JALOS)。

出典:JALOS(潤滑油協会)の解説をもとに AI(Claude)で作成
JALOS によると、油性向上剤や摩耗防止剤は金属の表面に膜を作って、摩擦や摩耗を減らします。油膜が切れやすい境界潤滑では、こうした膜が役立ちます(編集部の整理。添加剤)。
ストライベック曲線:粘度が高すぎても低すぎてもだめ
ストライベック曲線(ストライベック線図)は、縦軸に摩擦係数、横軸に「粘度×速度÷荷重」をとった図です。JALOS の解説によると、流体潤滑の領域では、粘度が上がると摩擦係数も上がり、動力の損失や発熱が生じます。反対に、粘度を下げすぎると混合潤滑から境界潤滑に入り、摩擦が大きくなります。高荷重や高温で油膜が切れると、固体どうしの摩擦になり、最後は焼付きに至ります。

出典:JALOS(潤滑油協会)の解説をもとに AI(Claude)で作成
つまり、潤滑油の粘度は「高いほど安心」ではありません。速度・荷重・温度に合わせて、ちょうどよい粘度を選びます(選び方)。摩擦係数については 技術の基礎知識「摩擦係数」、摩耗については 技術の基礎知識「摩耗とは」で説明しています。
粘度の読み方:ISO VG と粘度指数
ISO VG(粘度グレード)の読み方
工業用の潤滑油の「VG32」「VG46」などの数字は、JIS K 2001(ISO 3448 に対応)のISO 粘度グレードです。40℃ での動粘度(単位 mm²/s)の中心値を表し、許容の幅は中心値の ±10% です。たとえば ISO VG 32 は、40℃ の動粘度が 28.8〜35.2 mm²/s の油です。グレードは 2 から 3200 まで 20 あり、数字が大きいほど粘い(ねばい)油です。

出典:JIS K 2001 の要約ページをもとに AI(Claude)で作成
出典:JIS K 2001 工業用潤滑油-ISO 粘度分類(規格の要約ページ)
注意したいのは、ISO VG は 40℃ での値だということです。実際に機械が動いている温度では、粘度はこれより下がります(下の粘度指数)。粘度そのものの意味は 技術の基礎知識「粘度」で説明しています。
粘度指数:温度で粘度がどれだけ変わるか
油は、温度が上がると粘度が下がり、温度が下がると粘度が上がります。JALOS は、低温では粘度が高くなって始動しにくく、運転中は温度が上がって粘度が下がり、油膜切れによる摩耗や焼付きを起こしやすくなると説明しています。
この変わりやすさを表すのが粘度指数(VI)です。JIS K 2283 は、粘度指数を「石油製品の動粘度が温度によって変化するときの,変化の度合」とし、粘度指数が大きくなると、温度による動粘度の変化が小さくなるとしています。40℃ と 100℃ の動粘度から計算します。

出典:JIS K 2283 の要約ページ・JALOS(潤滑油協会)の解説をもとに AI(Claude)で作成
出典:JIS K 2283 原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法(規格の要約ページ)、潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)

出典:エスペック株式会社 – Official(YouTube)
基油と添加剤の種類
基油:鉱油と合成油
基油は、原油から作る鉱油(鉱油系基油)がもっとも一般的です。JALOS によると、減圧蒸留で取り出した留分を、溶剤抽出(フルフラールなど)・溶剤脱ろう・水素化仕上げで精製して作ります。
化学的に合成した合成油は、鉱油では温度が合わない所で使います。NTN の軸受カタログは、転がり軸受の潤滑油には、マシン油・タービン油などの鉱油が多く用いられるが、−30℃ 以下の低温または 150℃ 以上の高温になる使用条件では、エステル油・シリコーン油・ふっ素油などの合成油を用いるとしています。
| 基油 | 主な使いどころ |
|---|---|
| 鉱油 | 一般の機械(油圧・ギヤ・軸受・タービンなど)。もっとも一般的 |
| 合成油(エステル油・シリコーン油・ふっ素油など) | −30℃ 以下の低温、150℃ 以上の高温などの特殊な条件 |
出典:潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)、転がり軸受総合カタログ 11章 潤滑|NTN
添加剤の種類とはたらき
JALOS の解説をもとに、主な添加剤をまとめます。
| 添加剤 | はたらき | 代表的な成分の例 |
|---|---|---|
| 酸化防止剤 | 油が酸化して劣化するのを遅らせる | ヒンダードフェノール系、芳香族アミン系(高温用にはジチオリン酸亜鉛も併用) |
| 油性向上剤 | 表面に吸着して、境界潤滑で摩擦を下げる | 脂肪酸、動植物油脂、合成エステル |
| 摩耗防止剤 | 表面に膜を作り、摩耗を防ぐ | ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、トリクレジルフォスフェート |
| 極圧添加剤 | 高い荷重で金属と反応して膜を作り、焼付きを防ぐ | 硫黄化合物、リン化合物 |
| 粘度指数向上剤 | 温度による粘度の変化を小さくする | ある種のポリマー |
| 流動点降下剤 | 低温でろう分が固まって流れなくなるのを防ぐ | ポリアルキルメタクリレート(PMA) |
| あわ消し剤 | 油のあわを消す | シリコーン |
| 清浄分散剤 | 汚れを分散させる(主にエンジン油) | スルホネート化合物など |
| 乳化剤 | 油を水に分散させる(水溶性切削油剤など) | — |
油性向上剤・摩耗防止剤・極圧添加剤をまとめて耐荷重添加剤とよびます。JALOS によると、油性向上剤は主に金属加工油・ギヤ油・摺動面油、摩耗防止剤は耐摩耗性の作動油・エンジン油など、極圧添加剤は主にギヤ油・金属加工油剤に使われます。粘度指数向上剤のポリマーは、せん断速度の大きい所で切断されて粘度が下がることがあります(岩本、日本舶用機関学会誌)。
出典:潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)、岩本賢三「潤滑油の品質と動向(6)油圧作動油」日本舶用機関学会誌 16巻7号
研究の知見:添加剤の効き方は相手の材料で変わる
添加剤は「入れれば効く」とは限りません。本田ほか(トライボロジスト、2017)は、高シリコンのアルミニウム合金で添加剤の効果を調べ、ZnDTP を入れると無添加より摩擦係数が高くなり、硫黄を含む耐摩耗剤では摩擦係数が下がった(どちらも耐摩耗性は向上した)と報告しています。大久保ほか(日本機械学会論文集、2015)は、DLC 膜に対して、PAO(合成油)に有機の摩擦調整剤を加えると摩擦係数が 0.02〜0.03 まで下がり、ZnDTP を加えると、摩擦調整剤だけの場合より摩擦係数が上がったと報告しています(どちらも試験の条件での結果)。相手の材料や表面処理が変わるときは、油の選び方も見直します。
出典:本田知己ほか「高シリコン含有アルミニウム合金の摩擦摩耗特性に及ぼす各種潤滑油添加剤の影響」トライボロジスト 62巻1号(2017)、大久保光ほか「H-free DLC膜に対する無灰系摩擦調整剤の潤滑効果に及ぼすZnDTP添加の影響に関する研究」日本機械学会論文集 81巻824号(2015)
用途別の潤滑油の種類
工業用の潤滑油は、使う機械の部分ごとに、粘度と添加剤を合わせた種類があります。ENEOS は工業用潤滑油を、油圧作動油・タービン油・汎用(多目的)油・ギヤ油・摺動面油・圧縮機油・真空ポンプ油・冷凍機油・熱媒体油・油膜軸受油・食品機械用などに分けています。

出典:ENEOS・出光興産・ユシロ・スギムラ化学工業の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
| 種類 | 使う所 | 選ぶときのポイント |
|---|---|---|
| 油圧作動油 | 油圧ポンプ・バルブ・シリンダー | ENEOS・松村石油は VG 32・46・68 の製品をそろえる。省電力・高引火点・生分解性の製品もある |
| タービン油 | 蒸気タービン・水力タービン・ターボ形の送風機・圧縮機 | JIS K 2213。粘度は ISO VG 32・46・68 の3等級。無添加の1種と添加の2種 |
| ギヤ油 | 歯車箱(減速機) | 面圧が高いので、耐荷重添加剤(極圧剤など)を使う |
| 軸受油・スピンドル油 | 転がり軸受・すべり軸受・工作機械の主軸 | 運転温度で必要な粘度を下回らないもの(下の表) |
| 摺動面油 | 工作機械の案内面(すべり面) | 低速で起きるスティックスリップ(固着すべり)を抑える |
| 圧縮機油・真空ポンプ油 | コンプレッサー・真空ポンプ | 機械メーカーの指定に合わせる(編集部の整理) |
| 冷凍機油・熱媒体油 | 冷凍機、加熱・冷却の循環 | 使う温度の範囲(極低温〜高温)で選ぶ |
| 食品機械用 | 食品・飲料の製造機械 | NSF H1 の認証品を使う |
| 切削油(金属加工油剤) | 切削・研削・プレス | 水で薄めて使う水溶性と、不水溶性がある |
出典:工業用潤滑油|ENEOS、スーパーハイランドSE|ENEOS、油圧作動油|松村石油、JIS K 2213 タービン油(規格の要約ページ)、潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)、転がり軸受総合カタログ 11章 潤滑|NTN、ユニウェイD|ENEOS、熱媒体油|松村石油、食品機械用潤滑油|松村石油、スギカット|スギムラ化学工業、ユシローケン|ユシロ
油圧の機器は技術ページ「ポンプ」、コンプレッサーは「コンプレッサー」、切削は「切削加工」で説明しています。
潤滑油の選び方
潤滑油は、①機械の種類(用途)で種類を決め、②速度・荷重・温度で粘度を決め、③使う環境で特別な性能を足すの順で選ぶと迷いにくくなります。機械メーカーの指定がある場合は、それに従います。
速度・荷重・温度で粘度を決める
NTN の軸受カタログは、粘度が低すぎると油膜が不十分になって転がり面を傷め、粘度が高すぎると粘性抵抗が大きくなって温度上昇・摩擦損失が増えるとし、一般に回転速度が大きいほど粘度の低いもの、重荷重になるほど高粘度の油を使うとしています。
| 条件 | 粘度の向き |
|---|---|
| 回転が速い | 低め(かき混ぜの抵抗と発熱を減らす) |
| 荷重が大きい・衝撃がある | 高め(油膜を厚くする) |
| 運転温度が高い | 高め(運転温度で粘度が下がるため) |
| 低温で始動する | 低め、または粘度指数の高い油 |
出典:転がり軸受総合カタログ 11章 潤滑|NTN、潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)
軸受の油の粘度の決め方
NTN のカタログは、軸受の種類ごとに運転温度で必要な動粘度を示しています。玉軸受・円筒ころ軸受・針状ころ軸受は 13 mm²/s 以上、自動調心ころ軸受・円すいころ軸受・スラスト針状ころ軸受は 20 mm²/s 以上、スラスト自動調心ころ軸受は 30 mm²/s 以上です。

出典:NTN の転がり軸受カタログ(11章 潤滑)をもとに AI(Claude)で作成
同じカタログは、運転温度と dn 値(軸受の内径 mm × 回転速度 min⁻¹)から ISO VG の目安を示しています(油浴または循環給油の場合)。抜粋は次のとおりです。
| 運転温度 | dn 値 | 普通荷重 | 重荷重・衝撃荷重 |
|---|---|---|---|
| 0〜60℃ | 15,000〜80,000 | VG 32・46 | VG 68 |
| 0〜60℃ | 80,000〜150,000 | VG 22・32 | VG 32 |
| 0〜60℃ | 150,000〜500,000 | VG 10 | VG 22・32 |
| 60〜100℃ | 15,000 まで | VG 150 | VG 220 |
| 60〜100℃ | 15,000〜80,000 | VG 100 | VG 150 |
| 60〜100℃ | 80,000〜150,000 | VG 68 | VG 100・150 |
| 60〜100℃ | 150,000〜500,000 | VG 32 | VG 68 |
NTN「転がり軸受総合カタログ」表11.9 から抜粋。dn 値 80,000〜150,000 の行はスラスト玉軸受を除き、150,000〜500,000 の行は単列ラジアル玉軸受・円筒ころ軸受が対象(どちらの温度帯も同じ)。全体と注記はカタログで確かめてください。
表から、温度が高いほど、また回転が遅いほど、高い粘度グレードを選ぶことが読み取れます。軸受の寿命の考え方は課題「軸受の寿命を延ばしたい」で説明しています。
使う環境で足す性能
- 火災が心配な所:引火点の高い油圧作動油。ENEOS のスーパーハイランドSE の SE-P32・46・68 は引火点 250℃ 以上で、消防法上の「可燃性液体類」の扱いです
- 食品の製造ライン:NSF H1 の認証品(松村石油のバーレル FG シリーズなど)
- 極低温〜高温の温度管理:熱媒体油。松村石油のバーレルの熱媒体油は、シリーズの紹介文で −70℃〜+370℃ で使われているとしています
- 電気代を下げたい:摩擦調整剤を入れた省エネ型の油圧作動油(ENEOS の事例:前の油(亜鉛系)と比べて、ベーンポンプで 4〜10% の省電力)
- 環境への配慮:生分解性の作動油(松村石油の BIO-46W など)
出典:スーパーハイランドSE|ENEOS、スーパーハイランドSE 省電力事例|ENEOS、食品機械用潤滑油|松村石油、熱媒体油|松村石油、油圧作動油|松村石油
違う油を混ぜない・入れ替えるときは確かめる
種類や銘柄の違う油は、添加剤どうしの組み合わせが変わるため、混ぜずに使うのが基本です。入れ替えるときは、油のメーカーに相性と、前の油をどこまで抜くかを確かめます(編集部の整理)。
劣化の原因と管理
本田(精密工学会誌、2009)は、劣化を「潤滑油の性質、清浄度が変化し、初期状態で有していた目的の機能を失うこと」とし、酸化などの化学的な変化と、水分・ごみ・摩耗粉が混ざる汚損の2つに分けています。

出典:本田(精密工学会誌、2009)をもとに AI(Claude)で作成
出典:本田知己「潤滑油の劣化診断・検査技術」精密工学会誌 75巻3号(2009)
酸化:温度が 10℃ 上がると寿命は約半分
油は空気中の酸素と反応して酸化し、酸性の物質やスラッジができます。岩本(日本舶用機関学会誌)は、油圧作動油の試験で寿命は温度の上昇とともに指数関数的に下がり、「温度が10℃上昇すると寿命は1/2」という一般的な言い方とほぼ合うと述べています。油の温度を上げすぎないことが、長持ちさせるいちばんの近道です。温度と反応の速さの関係は 技術の基礎知識「アレニウスの式(10℃2倍則)」で説明しています。

出典:岩本(日本舶用機関学会誌)をもとに AI(Claude)で作成
出典:岩本賢三「潤滑油の品質と動向(6)油圧作動油」日本舶用機関学会誌 16巻7号
水分と異物:さび・摩耗・酸化のもと
本田(2009)によると、水分は油の乳化、しゅう動部や配管のさびの原因になり、酸化を進め、油膜切れによる潤滑不良を起こします。硬い固形の異物は、酸化を進める触媒になるうえ、研磨する粒(アブレシブ粒子)として摩耗を増やします。油をきれいに保つには、フィルターと、水やごみを入れない密封が大切です(技術ページ「ろ過・フィルター」)。
出典:本田知己「潤滑油の劣化診断・検査技術」精密工学会誌 75巻3号(2009)
油の分析で状態を見る
| 見るもの | わかること |
|---|---|
| 動粘度 | 粘度が変わっていないか(下がると油膜が足りなくなる) |
| 全酸価 | 油の中にできた酸性物質の量(値が大きいほど多い) |
| 油中の金属元素(SOAP 法) | 摩耗粉の元素と量から、摩耗の進み具合を見る |
| フェログラフィー | 摩耗粉の形と大きさ |
| パーティクルカウンタ(ISO 4406 の清浄度コード) | 粒子による汚れの程度 |
| RPVOT(ASTM D2272。タービン油) | 酸化に耐える力がどれだけ残っているか |
本田(2009)は、日常の分析は動粘度や全酸価などの性状分析とし、さらに劣化の根本の原因(酸化生成物・固形の異物・水分)を取り除く「プロアクティブ保全」を紹介しています。タービン油の規格(JIS K 2213 の2種)は、酸化安定度を「1000h後の全酸価」1.0 以下と定めています(試験の実施は受渡当事者間の協定による)。設備の状態から故障を予測する方法は技術ページ「予知保全」で説明しています。
出典:本田知己「潤滑油の劣化診断・検査技術」精密工学会誌 75巻3号(2009)、JIS K 2213 タービン油(規格の要約ページ)
症状から原因と対策を探す
| 症状 | 考えられる原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 油の色が濃い・スラッジが出る | 酸化(温度が高い・長く使っている) | 油温を下げる・交換の周期を見直す |
| 油が白くにごる | 水が混ざった(乳化) | 水の入り口をふさぐ・水を取り除く |
| 摩耗粉が多い・異音 | 粘度不足・異物・境界潤滑 | 運転温度での粘度を確かめる・ろ過 |
| 発熱・動力が大きい | 粘度が高すぎる(流体潤滑の領域でのかき混ぜ抵抗) | 粘度を見直す |
| 工作機械の送りがぎくしゃくする | スティックスリップ | 摺動面油を使う |
このページの出典をもとに編集部が整理。機械の異音の原因の調べ方は課題「機械の異音の原因を突き止めたい」、摺動部のすり減りは課題「摺動部がすり減る」で説明しています。
企業紹介(潤滑油の技術)
潤滑油の選び方や切り替え、劣化の診断は、潤滑油のメーカーに相談できます。相談するときは、機械の種類と潤滑する部分、速度・荷重・運転温度、今の油の銘柄と粘度、困りごと(発熱・摩耗・油の汚れ・電気代など)、環境の条件(食品・火気・屋外)を整理しておくと話が早く進みます。
| 困りごと | 相談先の例 |
|---|---|
| 機械に合う油を選びたい・油の種類を減らしたい | 工業用潤滑油のメーカー |
| 油の劣化や摩耗を分析したい | 潤滑油メーカーの分析・サポート窓口 |
| 食品ライン・極低温・高温で使う油がほしい | 特殊な潤滑油の専業メーカー |
| 切削・研削・プレスの油剤を選びたい | 金属加工油剤のメーカー |
| グリースや固体潤滑剤を使いたい | グリースのメーカー(グリース・固体潤滑) |
ここでは、工業用の潤滑油と金属加工油剤を扱う5社を紹介します。得意な分野が重ならないように選びました。
| 会社 | 油圧 作動油 | ギヤ油 | 摺動面油 | 熱媒体油 | 食品 機械用 | 切削油 | 分析・ 相談 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ENEOS石油製品(東京都千代田区) | ● | ● | ● | ● | ● | ||
| 出光興産潤滑油・燃料(東京都千代田区) | ● | ● | ● | ● | |||
| 松村石油特殊な工業用潤滑油(大阪市北区) | ● | ● | ● | ● | |||
| ユシロ金属加工油剤(横浜市港北区) | ● | ||||||
| スギムラ化学工業金属加工油剤(名古屋市中区) | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いを確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
ENEOS株式会社|油圧作動油・摺動面油など工業用潤滑油の全般
ENEOSとは
東京都千代田区大手町に本社を置き、1888年(明治21年)5月10日に設立された会社です(従業員は単体 7,539人、2026年3月31日時点。同社の会社概要)。事業内容に、ガソリン・灯油・潤滑油などの石油製品の精製と販売があります。

出典:ENEOS の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
ENEOSの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 工業用潤滑油 | 油圧作動油・タービン油・汎用油・ギヤ油・摺動面油・圧縮機油・真空ポンプ油・冷凍機油・熱媒体油・油膜軸受油・食品機械用などを製品ページで分類 |
| スーパーハイランドSE(油圧作動油) | 各種の油圧ポンプ・モーター向け。摩擦調整剤で油圧系の消費電力を下げる。SE-P32・46・68 は引火点 250℃ 以上で消防法上の可燃性液体類 |
| ユニウェイD(摺動面油) | 工作機械の摺動面油で、スティックスリップ(固着すべり)を抑える。ISO VG 32・68 |
ENEOSが解決できる課題
- 油圧機器の消費電力を下げたい
- 工作機械のすべり面のぎくしゃく(スティックスリップ)を抑えたい
- 火災の危険を下げるため、引火点の高い作動油にしたい
公開されている実績・用途
- スーパーハイランドSE の省電力の事例として、前の油(亜鉛系)と比べて、ベーンポンプで 4〜10%、ギヤポンプで 3〜6%、ピストンポンプで 2〜4% を示している(同社の事例ページ。条件は各事例による)
出典:会社概要|ENEOS、工業用潤滑油|ENEOS、スーパーハイランドSE|ENEOS、スーパーハイランドSE 省電力事例|ENEOS、ユニウェイD|ENEOS
出光興産株式会社|工作機械の油をまとめて選べるダフニーの工業用潤滑油
出光興産とは
東京都千代田区大手町に本社を置き、1940年3月30日に設立された会社です(創業は1911年6月20日。同社の会社概要)。燃料油・基礎化学品・高機能材・電力・再生可能エネルギー・資源の各分野で事業をしています。潤滑油は自動車用と工業用があり、28 カ国に製造・販売・研究開発の拠点を持つとしています。

出典:出光興産の潤滑油のページをもとに AI(Claude)で作成
出光興産の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ダフニースーパーマルチオイル | 工作機械油の推薦一覧で、歯車・軸受・滑り面・油圧の各項目の推薦油に載っている |
| ダフニースーパーギヤオイル | 高荷重の密閉歯車(ウォーム歯車など)向け。320・460・680 |
| ルブカスタマーサポートセンター | 潤滑油のアフターサービスや潤滑油分析の相談を受け付ける窓口がある |
出光興産が解決できる課題
- 工作機械の歯車・軸受・滑り面・油圧に合う油を選びたい
- 高荷重の歯車に合うギヤ油を選びたい
- 使っている油の状態を分析して相談したい
出典:会社概要|出光興産、潤滑油|出光興産、工作機械油|出光興産
松村石油株式会社|熱媒体油・食品機械用など特殊な工業用潤滑油(バーレル)
松村石油とは
大阪市北区に本社を置く会社です。1907年(明治40年)5月1日に創業し、1937年(昭和12年)4月15日に設立されました(従業員 162名、2026年2月28日現在。同社の会社概要)。事業内容は工業用潤滑油の製造・販売などで、製品のブランドは「バーレル(BARREL)」です。製品案内では、極低温から高温までの温度制御や高真空の環境で使う潤滑剤などを紹介しています。

出典:松村石油の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
松村石油の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 熱媒体油 | シリーズの紹介文では −70℃〜+370℃ で使われている(同社。製品ごとの上限は別で、400℃ までの製品もある)。半導体製造装置のチラー用のブラインもある |
| 食品機械用潤滑油(FG シリーズ) | NSF H1 認証。油圧作動油・コンプレッサー油・ギヤ油・チェーン油・真空ポンプ油などをそろえる |
| 油圧作動油 | 高引火点の HT-A・NZ-A シリーズ、植物由来の合成炭化水素の基油を使う GSC シリーズ、生分解性の BIO-46W |
松村石油が解決できる課題
- 装置の加熱・冷却に使う熱媒体油を選びたい
- 食品の製造ラインで H1 の潤滑油にそろえたい
- 火災対策や環境対応の油圧作動油にしたい
出典:会社概要|松村石油、製品案内|松村石油、熱媒体油|松村石油、食品機械用潤滑油|松村石油、油圧作動油|松村石油
株式会社ユシロ|水溶性切削油剤を中心とする金属加工油剤
ユシロとは
神奈川県横浜市港北区に本社を置き、昭和19年7月24日に設立された会社です(従業員 394名、2026年4月1日現在。同社の会社概要)。事業内容は、切削・圧延・引抜・プレス油剤、ダイカスト離型剤、防錆油剤、洗浄剤などの金属加工油剤と、ビルメンテナンス製品の製造・販売です。

出典:ユシロの製品ページをもとに AI(Claude)で作成
ユシロの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ユシローケン(水溶性切削・研削油剤) | エマルション・ソリュブル・ソリューションの全48品種。希釈の推奨濃度は 2〜10%(品種による) |
| ユシローケン Revos | 低ミスト型の水溶性切削油。同社の試験条件で、従来品比で水溶性ミストを 50% 低減したとしている |
| 加工ごとの油剤 | 圧延・引抜・プレス油剤、ダイカスト離型剤、防錆油剤、洗浄剤 |
ユシロが解決できる課題
- 切削・研削の油剤を、材料と加工に合わせて選びたい
- 加工機のまわりのミストを減らしたい
- プレス・ダイカスト・洗浄の油剤もまとめて相談したい
出典:会社概要|ユシロ、ユシローケン|ユシロ、ユシローケン Revos|ユシロ
スギムラ化学工業株式会社|切削・プレス・引抜など加工ごとの潤滑油剤と防錆油
スギムラ化学工業とは
名古屋市中区に本社を置き、1955年(昭和30年)12月2日に設立された会社です(従業員 203名。同社の会社概要)。事業内容は、金属加工用の潤滑油剤、金属腐食抑制剤、金属防錆油剤などの製造・販売です。

出典:スギムラ化学工業の製品案内をもとに AI(Claude)で作成
スギムラ化学工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| スギカット(切削・研削油) | 切削加工時に使う潤滑剤で、不水溶性と水溶性がある。効果として工具寿命の延長、仕上げ面粗さ・寸法精度の向上などを挙げている |
| サンプレス・サンドロー・サンホーマー | プレス加工油、引抜加工油、圧造加工油 |
| プレトン(防錆油) | プレス洗浄用・鋼板用・水切用などの防錆油 |
スギムラ化学工業が解決できる課題
- 切削・研削の油剤を、不水溶性と水溶性から選びたい
- プレス・引抜・圧造など、加工の種類に合う油剤がほしい
- 加工のあとの部品のさびを防ぎたい
出典:会社概要|スギムラ化学工業、製品案内|スギムラ化学工業、スギカット|スギムラ化学工業
よくある質問
- 潤滑油とは何ですか?
- 動く部品のすき間に油膜を作り、摩擦と摩耗を減らし、焼付きを防ぐ油です。基油に添加剤を加えて作ります。冷却・洗浄・さび止め・密封のはたらきもあります(潤滑油とは)。
- 潤滑油と潤滑剤の違いは?
- 潤滑剤は、潤滑に使うもの全体の呼び名で(編集部の整理)、液体の潤滑油のほか、半固体のグリースや、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を含みます。グリースは技術ページ「グリース・固体潤滑」で説明しています。
- 「潤滑油」はなんと読みますか?
- 「じゅんかつゆ」と読みます。
- VG32 や VG68 の数字は何ですか?
- ISO 粘度グレードで、40℃ での動粘度(mm²/s)の中心値です。VG32 は 28.8〜35.2 mm²/s で、数字が大きいほど粘い油です(ISO VG の読み方)。
- 粘度指数とは何ですか?
- 温度で粘度がどれだけ変わるかを表す値で、大きいほど変わりにくい油です。40℃ と 100℃ の動粘度から計算します(粘度指数)。
- 粘度は高いほうが安心ですか?
- いいえ。高すぎると、かき混ぜの抵抗で発熱と動力の損失が増えます。低すぎると油膜が切れて摩耗・焼付きが起きます。速度・荷重・温度に合った粘度を選びます(ストライベック曲線)。
- 鉱油と合成油はどう使い分けますか?
- 一般の機械は鉱油がもっとも多く、−30℃ 以下の低温や 150℃ 以上の高温ではエステル油・シリコーン油・ふっ素油などの合成油を使います(基油)。
- 軸受にはどの粘度の油を使えばよいですか?
- 運転温度で、玉軸受なら 13 mm²/s 以上、自動調心ころ軸受などなら 20 mm²/s 以上が目安です(NTN)。温度と回転速度から ISO VG を選びます(軸受の油の粘度の決め方)。
- 潤滑油の交換の目安は?
- NTN の軸受カタログは、重要な装置では定期的に性能や清浄度の劣化を見て交換の限度を決めることが望ましいとし、目安として油温 50℃ 以下なら1年程度、80〜100℃ なら少なくとも3か月ごとの交換を挙げています。油圧作動油の酸化寿命の試験では、10℃ 上がると寿命がおよそ半分になるという目安とほぼ合いました(劣化の原因と管理)。
- 油が白くにごったのはなぜですか?
- 水が混ざって乳化したと考えられます。さびや油膜切れの原因になるので、水の入り口をふさぎ、水を取り除くか油を交換します(水分と異物)。
回答は、このページの出典をもとに編集部がまとめたものです。
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- 摩擦損失を減らしたい
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- ねじ・摺動部の焼付き・かじりを防ぎたい
- 軸受の寿命を延ばしたい
出典・確認日
- 潤滑油の基礎知識|JALOS(潤滑油協会)
- 本田知己「潤滑油の劣化診断・検査技術」精密工学会誌 75巻3号(2009)
- JIS K 2001 工業用潤滑油-ISO 粘度分類(規格の要約ページ)
- JIS K 2283 原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法(規格の要約ページ)
- 転がり軸受総合カタログ 11章 潤滑|NTN
- 岩本賢三「潤滑油の品質と動向(6)油圧作動油」日本舶用機関学会誌 16巻7号
- 本田知己ほか「高シリコン含有アルミニウム合金の摩擦摩耗特性に及ぼす各種潤滑油添加剤の影響」トライボロジスト 62巻1号(2017)
- 大久保光ほか「H-free DLC膜に対する無灰系摩擦調整剤の潤滑効果に及ぼすZnDTP添加の影響に関する研究」日本機械学会論文集 81巻824号(2015)
- 工業用潤滑油|ENEOS
- スーパーハイランドSE|ENEOS
- 油圧作動油|松村石油
- JIS K 2213 タービン油(規格の要約ページ)
- ユニウェイD|ENEOS
- 熱媒体油|松村石油
- 食品機械用潤滑油|松村石油
- スギカット|スギムラ化学工業
- ユシローケン|ユシロ
- スーパーハイランドSE 省電力事例|ENEOS
- 会社概要|ENEOS
- 会社概要|出光興産
- 潤滑油|出光興産
- 工作機械油|出光興産
- 会社概要|松村石油
- 製品案内|松村石油
- 会社概要|ユシロ
- ユシローケン Revos|ユシロ
- 会社概要|スギムラ化学工業
- 製品案内|スギムラ化学工業
※製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。本ページでは数値と事実だけを要約し、各社の文章・図は転載していません。JIS の内容は規格の要約ページで確かめた範囲で、規格票そのものではありません(規格は改正されることがあります)。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。
情報の確認日:2026年10月30日 本ページの内容は一般的な情報です。潤滑油の選定は、機械メーカーの指定と、潤滑油メーカーの資料に従ってください。各社の製品・サービスは、その会社の公開情報をもとに紹介しています。

