摩擦損失を減らしたい

すべり軸受の中で回る軸と油膜、表面の凹凸を拡大したイメージ

機械の送りを速くしたいのに、モーターの力が足りない。止まった状態から動かすときだけ重く、ゆっくり動かすとガタガタする。摺動部が熱くなり、焼き付いてしまう。こうした悩みは、部品どうしがこすれ合うときの摩擦が、エネルギーを熱に変えて失わせていることから起きています。

摩擦を減らす方法は、潤滑油やグリースを見直す、表面に摩擦の小さい膜を付ける、表面に微細な凹みを付けて油を保つ、油がなくても滑る材料に替える、そして、すべりを転がりに置き換える、の大きく5つです。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)潤滑油・グリースの見直し低摩擦コーティング(DLC・固体潤滑)表面テクスチャ自己潤滑の摺動材料転がりへの置き換え
A起動のときや低速で動きが重い・ガタガタ動く○○◎
B駆動の消費電力が大きい・効率が上がらない○○△◎
C摺動部が熱くなる・焼き付く○◎○○△
D油やグリースを差せない・差したくない△○◎
E使ううちに摩擦が増える・なじまない○○◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に使える方法は、荷重(面圧)、すべり速度、温度、動き方(回転・往復・揺動)、相手材、使う環境(粉じん、水、真空、食品)、数量、予算によって異なります。「表面テクスチャ」の「△」(症状B)は、効果が出やすいのが低速・高荷重の混合潤滑の領域で、油膜が十分にある高速の運転では効きにくいことを、「転がりへの置き換え」の「△」(症状C)は、発熱は減るものの、軸受や案内の形と寸法が変わり、設計の変更が大きくなることを、「潤滑油・グリースの見直し」の「△」(症状D)は、乾燥した被膜や固体潤滑剤のように、油を差さずに使える潤滑剤に限られることを示します。

記号の理由と出典(18件)

マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。

症状技術記号理由出典
A潤滑油・グリースの見直し○低速でも油膜を保つ潤滑油で、起動時の静止摩擦を下げられるため編集部の解説
A自己潤滑の摺動材料○静止摩擦と動摩擦の差が小さい材料を摺動面に使えば、動きのガタつきを抑えられるため編集部の解説
A転がりへの置き換え◎転がり案内は静摩擦が小さく動摩擦との差もほとんどなく、スティックスリップが起きないためTHK
B潤滑油・グリースの見直し○低粘度化と摩擦調整剤の組み合わせで、油の抵抗を減らして燃費・効率を改善できるため森泉「MoDTC による低粘度エンジン油の省燃費効果」
B低摩擦コーティング(DLC・固体潤滑)○低摩擦の DLC 膜をエンジンの摺動部に使い、摩擦を下げている実例があるためまてりあ 53(12)
B表面テクスチャ△低速・高荷重の混合潤滑では効くが、油膜が十分にある高速では効きにくいため編集部の解説
B転がりへの置き換え◎転がりねじは機械効率が90%以上と、すべりねじの30%より高く、消費電力が減るため黒田精工
C潤滑油・グリースの見直し○極圧性や耐熱性のある潤滑剤で、油膜が切れたときの焼き付きを抑えられるため編集部の解説
C低摩擦コーティング(DLC・固体潤滑)◎二硫化モリブデンなどの被膜は、摺動部の焼付きやかじりを抑えられるため日本エムティ
C表面テクスチャ○微細な凹みに油を保ち、油膜切れを防いで発熱を抑えられるため編集部の解説
C自己潤滑の摺動材料○固体潤滑剤を含む軸受は、油が切れても潤滑を保てるためオイレス工業
C転がりへの置き換え△転がりにすると発熱は減るが、軸受や案内の形と寸法が変わり設計変更が大きくなるため編集部の解説
D潤滑油・グリースの見直し△乾燥した被膜や固体潤滑剤のように、油を差さずに使える潤滑剤に限られるため編集部の解説
D低摩擦コーティング(DLC・固体潤滑)○DLC などの低摩擦の膜は、乾いた状態でも低い摩擦係数で、油を使えない所で役立つため編集部の解説
D自己潤滑の摺動材料◎材料そのものが潤滑するため、油なしでも使えるためオイレス工業
E潤滑油・グリースの見直し○潤滑剤の劣化や給油間隔を見直せば、摩擦が増える原因の一つに対処できるため編集部の解説
E低摩擦コーティング(DLC・固体潤滑)○二硫化モリブデンなどの被膜が使い始めの摩耗を抑え、なじみを助けるため日本エムティ
E表面テクスチャ◎凹みが潤滑油の供給や異物の排出・捕捉をして、摩耗粉による摩擦の増加を抑えるためジュンツウネット21「表面テクスチャリング」

課題の診断と解決策

A

起動のときや低速で動きが重い・ガタガタ動く

止まった状態から動かすときだけ、大きな力がいる。ゆっくり送ると、なめらかに進まず、止まったり滑ったりを繰り返す。

すべり案内の上のテーブルをねじでゆっくり送ると、案内面の摺動部で止まったり滑ったりを繰り返すようすのイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
止まっているときの摩擦(静止摩擦)は、動いているときの摩擦(動摩擦)より大きいことが多く、速度が遅いほど油膜が薄くなって摩擦が増えます。駆動する側が、ばねのように縮んで力をため、一気に滑る動きを繰り返すのがスティックスリップです。
解決に使える技術
選ぶときの注意

スティックスリップは、摩擦の性質だけでなく、駆動系の剛性(ばねの硬さ)や減衰にも左右されます。摺動面を変える前に、ねじやベルトのたわみ、共振がないかも確かめます。

B

駆動の消費電力が大きい・効率が上がらない

モーターの容量を上げないと、必要な力が出ない。運転中の消費電力が大きく、発熱も多い。

大きなモーターですべりねじを回し、ねじとナットのこすれる所で摩擦が熱になっているようすのイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
入力したエネルギーのうち、摩擦で熱になった分は仕事に使われません。すべりねじやすべり案内は、転がりのものより摩擦が大きくなります。潤滑油は、粘度が高すぎると油をかき回す抵抗や、油膜のせん断による抵抗が大きくなります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

粘度を下げすぎると、油膜が薄くなり、面どうしの接触による摩擦が増えます。シールの締め付けによる摩擦も見落とさないようにします。

C

摺動部が熱くなる・焼き付く

運転を続けると、摺動部が熱くなる。油が切れた所で、表面が溶着したり、むしれたりする(焼付き・かじり)。

すべり軸受の中で油膜が切れ、軸と軸受が直接こすれて焼き付いているようすのイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
面圧が高い、速度が遅い、油が届かない、といった条件では、油膜が保てず、金属どうしが直接こすれる境界潤滑になります。境界潤滑の摩擦係数は0.1〜0.3程度と、油膜で面が離れた流体潤滑の10倍から100倍以上になり、摩擦熱が増えます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

まず、面圧(P)とすべり速度(V)と、その積の PV 値が、材料や潤滑の使える範囲に入っているかを確かめます。範囲を超えているなら、表面処理だけでは足りず、接触面積や形の見直しが必要です。

D

油やグリースを差せない・差したくない

食品や医療の装置、クリーンルーム、真空の中で、油を使えない。給油の手間をなくしたい。グリースが飛び散って周りを汚す。

食品の機械の摺動部から飛び散ったグリースが、下を流れる食品のトレーに落ちるようすのイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
油やグリースがないと、摺動面は乾いたまま接触し、摩擦と摩耗が大きくなります。油の代わりに、材料そのものや表面の被膜に、潤滑する働きを持たせる必要があります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

無給油の軸受は、使える面圧・速度・温度の範囲が、油で潤滑する場合より狭いことがあります。水や薬品がかかる、粉じんが入るといった環境でも使えるかを確かめます。

E

使ううちに摩擦が増える・なじまない

使い始めは問題なかったのに、しばらくすると動きが重くなる。組み立てたばかりの部品が、なじむまでに摩耗が進む。

2つの面の細かな凹凸の山どうしが当たり、すき間に摩耗粉が噛み込んでいるようすのイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
表面の細かな凹凸の山どうしが当たる使い始めは、接触の面圧が高く、摩耗が進みやすい時期です。運転中に油膜が切れたり、摩耗粉がすき間に噛み込んだりすると、摩擦は時間とともに増えます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

摩擦が増える原因が、油の劣化なのか、摩耗なのか、異物なのかで、対策が変わります。摩擦と摩耗を数値で測って比べると、原因を切り分けやすくなります。

なぜ、摩擦で損失が生まれるのか

摩擦の大きさは、油膜の厚さで大きく変わる(ストライベック曲線)

油膜が薄くなり、上下の面の凹凸の山どうしが油膜を突き抜けて当たっているようすのイメージ
境界潤滑:油膜が薄くなり、凹凸の山どうしが当たるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

油で潤滑している面の摩擦は、油膜の厚さによって3つの状態に分かれます。ジュンツウネット21の解説では、油膜が表面の凹凸よりずっと厚く、面が完全に離れている流体潤滑の摩擦係数は0.001〜0.01程度で、面どうしが頻繁に接触する境界潤滑では0.1〜0.3程度に上がります。その間が、油膜と接触が混ざった混合潤滑で、起動のときの低速、振動、揺動、給油の不足で起こりやすい状態です。

ストライベック曲線で、境界潤滑・混合潤滑・流体潤滑の3つの領域と摩擦係数の目安、領域ごとの対策を示した概念図
ストライベック曲線と、領域ごとの摩擦係数の目安と対策
出典:ジュンツウネット21「ストライベック曲線」、まてりあ 53(12)の説明をもとに AI(Claude)で作成(曲線の形は模式)

横軸を「粘度×速度÷荷重」にして摩擦係数を描いたものが、ストライベック曲線です。速度が落ちる、荷重が増える、温度が上がって粘度が下がる、のどれでも、曲線の左側(境界潤滑)へ移り、摩擦が急に増えます。反対に、右端の流体潤滑でも、油の粘りによる抵抗(粘性抵抗)が速度とともに増えます。摩擦を減らす対策は、今どの領域で動いているかによって変わります。

すべりと転がりで、摩擦係数は1桁以上違う

ジェイテクトの資料では、転がり軸受の摩擦係数を、深溝玉軸受で0.0010〜0.0015、形式によって0.0008〜0.0035としています。ジュンツウネット21が示す境界潤滑のすべり(0.1〜0.3)の、およそ100分の1です。一方、DLC などの低摩擦の膜や、樹脂のすべり軸受は、乾いた状態でも0.1前後の摩擦係数を公開しているものがあり、油を使えない所で役立ちます。

転がり軸受、流体潤滑と境界潤滑のすべり、DLC、固体潤滑被膜、樹脂すべり軸受の摩擦係数の目安を対数目盛りで比べた図
摩擦係数の目安の比較
出典:ジェイテクト 表8-1、ジュンツウネット21、表面科学、igus、ナノテック、日本エムティの値をもとに AI(Claude)で作成(測定の条件はそれぞれ異なる)

自動車のエンジンでは、Holmberg らが、乗用車が時速60km で走るとき、燃料の化学エネルギーの11.5%がエンジンの摩擦損失として消費されると試算しています。その大部分は、カムとフォロア、ピストン(リング・スカート)とシリンダー、クランク軸と軸受の摺動部で生まれます(まてりあ 53(12))。どこで、どの状態の摩擦が起きているかを見分けることが、対策の出発点です。

止まる・滑るを繰り返す(スティックスリップ)

静止摩擦が動摩擦より大きく、速度が遅いほど摩擦が増える面では、止まる(固着)と滑るを繰り返す、スティックスリップが起きることがあります。ジュンツウネット21の解説では、原因として、摺動速度による摩擦係数の変化、油に混ざった空気の圧縮性、摺動面の形、作動油の粘度、機器や配管の剛性と共振を挙げています。

ばねで引かれた台が固着と滑りを繰り返すスティックスリップのしくみと、台の位置の時間変化、対策の方向を示した図
スティックスリップのしくみ
出典:ジュンツウネット21、中野「スティックスリップ回避のための設計指針」の説明をもとに AI(Claude)で作成

工作機械のすべり案内面では、油膜ができにくいので、スティックスリップ(びびり)を起こしにくい専用の油が使われます。中野(日本ゴム協会誌)の解析では、スティックスリップの起きやすさには、摩擦の性質に加えて、系を支える剛性と減衰が深く関わるとしています。摺動面の対策と、駆動系の剛性の見直しを、両方から考えます。

出典:ストライベック曲線|ジュンツウネット21、軸受の摩擦係数(参考)|ジェイテクト、自動車エンジン用トライボロジー材料技術の動向|まてりあ 53(12)、スティックスリップ現象とリップパッキンによる防止策|ジュンツウネット21、工作機械のスティックスリップ現象|ジュンツウネット21、スティックスリップ回避のための設計指針|日本ゴム協会誌 80(4)

解決技術の詳細

摩擦を減らす技術は、潤滑剤を変えるもの(潤滑油・グリース)、表面を変えるもの(コーティング、表面テクスチャ)、材料を変えるもの(自己潤滑の摺動材料)、しくみを変えるもの(転がりへの置き換え)に分かれます。まず、困りごとから候補を絞ります。

摩擦の困りごと5つから、まず検討する技術を選ぶ早見図
摩擦の困りごとから技術を選ぶ早見図
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成

潤滑油・グリースの見直し

いちばん手を付けやすいのが、潤滑剤の見直しです。流体潤滑の領域で動いているなら、油の粘度を下げると、粘性抵抗が減ります。ADEKA の森泉の解説では、流体潤滑の摩擦係数は10⁻⁴〜10⁻²程度ですが、固体の接触が起きる境界潤滑では一般に10⁻¹以上です。粘度を下げすぎると、油膜が薄くなって境界潤滑の割合が増え、かえって摩擦が増えることがあります。

油の粘度を変えたときの粘性抵抗と固体の接触による摩擦、その合計の変化を示した概念図
油の粘度と摩擦による損失の関係
出典:森泉「MoDTC による低粘度エンジン油の省燃費効果」の説明をもとに AI(Claude)で作成(曲線は模式)

その対策として使われるのが、摩擦調整剤です。例えば MoDTC(有機モリブデン化合物)は、摩擦を受けた接触部で分解して、せん断抵抗の小さい二硫化モリブデン(MoS₂)の膜を作ります。エンジン油では、低粘度化と摩擦調整剤を組み合わせて燃費を改善しています。

見落としやすいのが、シールの摩擦です。オイルシールの摩擦トルクは、リップを軸に押し付ける力(緊迫力)が大きいほど大きくなり、緊迫力は、しめしろやリップの形で決まります。ジュンツウネット21の解説では、リップの断面を小さくして緊迫力を下げ、摩擦トルクを30%減らした例を紹介しています。NOK は、低フリクションのオイルシールで、シールの機能を保ったまま、最大70%のフリクション低減をうたっています。

低摩擦コーティング(DLC・固体潤滑)

カムが当たるバルブリフターの上面に、摩擦の小さい薄い硬質炭素の膜を付けたようすのイメージ
DLC:摺動面に摩擦の小さい薄い膜を付けるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

面どうしの接触が避けられない摺動部には、摩擦の小さい膜を付けます。代表が DLC(ダイヤモンドライクカーボン)です。表面科学の報告では、水素を含む DLC は、真空中や乾燥した雰囲気で摩擦係数が約0.02と非常に低い一方、水分を含む雰囲気では0.2程度まで上がるとしています。DLC の摩擦は、膜の種類と、使う雰囲気・潤滑油の組み合わせで大きく変わります。

エンジンでは、水素を含まない DLC をバルブリフターやピストンリングに使い、摩擦を下げています(まてりあ 53(12))。膜の厚さは、日本アイ・ティ・エフの製品で0.1〜0.5μm から、厚いものでは20μm までと幅があります。

層状の結晶でできた固体潤滑の被膜が、層と層の間で滑って摩擦を下げるようすのイメージ
固体潤滑の被膜:層状の結晶が滑って摩擦を下げるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

もう1つが、二硫化モリブデン(MoS₂)やグラファイト、PTFE などの固体潤滑剤を含む被膜です。層状の結晶が滑ることで摩擦を下げ、油が切れやすい高荷重の摺動部や、使い始めのなじみに使われます。どちらも、膜がはがれると効果がなくなるので、相手材、面圧、温度に合った膜と、下地の処理を選ぶことが大切です。

表面テクスチャ

表面テクスチャは、摺動面に、微細な凹み(ディンプル)や溝を規則正しく付けて、摩擦を下げる技術です。ジュンツウネット21の解説では、その効果を、動圧の発生、潤滑油の供給、異物の排出・捕捉の3つに分けています。窒化けい素のセラミックスにディンプルを付けた水潤滑の試験では、低速・高荷重の領域で、研磨しただけの面より摩擦が下がったとしています。

ディンプルを付けた面で、油だめ・摩耗粉の捕捉・動圧の発生の3つの効果を示した概念図
表面テクスチャの3つの効果
出典:ジュンツウネット21「表面テクスチャリング」の説明をもとに AI(Claude)で作成(寸法は模式)

効果の出方は、凹みの寸法や配置、荷重、速度、潤滑剤によって変わります。寸法と配置は、実際の条件に近い試験で確かめて決めます。

自己潤滑の摺動材料

固体潤滑剤を含む樹脂のすべり軸受が、油を差さずに軸を支えているようすのイメージ
自己潤滑のすべり軸受:油を差さずに使えるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

油を差せない所や、給油の手間をなくしたい所には、材料そのものが潤滑する働きを持つ、すべり軸受を使います。オイレス工業の解説では、樹脂の軸受は潤滑油・固体潤滑剤・金属石けんなどを含み、無潤滑でも使えるとし、焼結の軸受は、小さな穴に含ませた油で自己給油しながら使うとしています。

igus の樹脂すべり軸受 iglidur G は、鋼の軸に対して、乾いた状態で摩擦係数0.08〜0.15としています。無給油の軸受は、面圧(P)とすべり速度(V)と PV 値が、使える範囲に入っているかで選びます。摩擦係数は、荷重と速度によって変わります。

転がりへの置き換え

すべりを転がりに置き換えると、摩擦は大きく下がります。THK は、転がり案内の LM ガイドの摩擦抵抗を、すべり案内の1/20〜1/40 とし、静摩擦が格段に小さく、動摩擦との差もほとんどないため、スティックスリップが生じないとしています。黒田精工は、ボールねじの機械効率を90%以上、すべりねじを30%としています。

すべり案内と転がり案内の構造と摩擦係数の目安を比べた図
すべりと転がりの比較
出典:ジェイテクト 表8-1、THK、黒田精工の記載をもとに AI(Claude)で作成

THK は、同じ研削面積の平面研削盤で、すべり案内の機械と転がり案内の機械を比べ、使うモーターが38.05kW から3.7kW に、潤滑剤の消費量が年60L(油)から3.6L(グリース)になった例を公開しています(案内の方式のほか、砥石軸の数などの条件も異なる機械どうしの比較です)。転がりにすると、駆動に必要な力が減り、モーターを小さくできます。ただし、形と寸法が変わるので、設計の段階で検討します。

出典:MoDTC による低粘度エンジン油の省燃費効果|オレオサイエンス 20(8)、オイルシールの低摩擦化|ジュンツウネット21、低フリクションオイルシール|NOK、DLC 皮膜の形成と固体潤滑特性|表面科学、DLCとは|日本アイ・ティ・エフ、初期馴染み二硫化モリブデンコーティング|日本エムティ、トライボロジー特性改善のための表面テクスチャリング|ジュンツウネット21、すべり軸受とは?|オイレス工業、iglidur G 材質データ|igus、LMガイドの摩擦係数は、どのくらいですか?|THK、LMガイド|THK、ボールねじの推力について教えてください②|黒田精工

摩擦を減らす技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。膜で摩擦を下げたいのか、表面の形で油を保ちたいのか、無給油の軸受に替えたいのか、転がりに置き換えたいのか、まず摩擦を数値で比べたいのかによって、相談先が変わります。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
日本エムティ表面処理二硫化モリブデンのドライ潤滑被膜。使い始めの摩耗や焼付き、ねじのかじりを抑える。C 摺動部が熱くなる・焼き付く
D 油やグリースを差せない・差したくない
E 使ううちに摩擦が増える・なじまない
ナノテック表面処理DLC・ICF コーティングの受託加工。金型や摺動部品、ギアの摩擦を下げる。B 駆動の消費電力が大きい・効率が上がらない
C 摺動部が熱くなる・焼き付く
D 油やグリースを差せない・差したくない
リプス・ワークスレーザー加工レーザーで表面に微細な凹凸(マイクロテクスチャ)を付け、油膜切れや金型の摩擦を抑える。C 摺動部が熱くなる・焼き付く
E 使ううちに摩擦が増える・なじまない
オイレス工業軸受メーカー給油を減らせる、または無給油で使えるすべり軸受。低速・高荷重・揺動の摺動部に。A 起動のときや低速で動きが重い・ガタガタ動く
C 摺動部が熱くなる・焼き付く
D 油やグリースを差せない・差したくない
黒田精工ボールねじメーカー精密ボールねじ。すべりねじから置き換えて、送りの駆動力と発熱を減らす。A 起動のときや低速で動きが重い・ガタガタ動く
B 駆動の消費電力が大きい・効率が上がらない
新東科学試験機・受託試験摩擦摩耗試験機と受託試験。潤滑剤・コーティング・材料の候補を摩擦の数値で比べる。A 起動のときや低速で動きが重い・ガタガタ動く
B 駆動の消費電力が大きい・効率が上がらない
E 使ううちに摩擦が増える・なじまない
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

日本エムティ株式会社|二硫化モリブデンのドライ潤滑被膜

日本エムティは、愛知県春日井市に本社を置く、1987年設立の会社です(資本金2,450万円)。摺動部の潤滑を助けるドライ潤滑コーティング(ドライサーフェス)などのコーティング加工を手がけています。

日本エムティの得意技術

技術内容
初期なじみ二硫化モリブデンコーティング二硫化モリブデン(MoS₂)やグラファイトなどの固体潤滑剤を高濃度に含んだ被膜。高荷重での潤滑性、焼付きにくさ、初期なじみに効果があり、早く良い当たり面を作るとしている
公開している摩擦係数製品ごとに、動摩擦係数0.13〜0.20、静摩擦係数0.22〜0.36。低摩擦性と耐荷重性に優れる MD1690 は動摩擦係数0.13・静摩擦係数0.22。耐熱は約200℃(MD5511 は約500℃)
固体潤滑剤の使い分け二硫化モリブデン・グラファイト・PTFE・窒化ホウ素の耐荷重性と耐熱性を比べて公開している

同社は、このコーティングの主な目的として、内装部品の異音防止、ステンレス部品・ねじ・ボルト・ナットの焼付きやかじりの防止、軸受の潤滑の補助を挙げています。

日本エムティが解決できる課題

  • 油やグリースだけでは防げない、使い始めの摩耗や焼付きを抑えたい
  • ねじ・ボルト・ナットのかじりや焼付きを防ぎたい
  • 高い荷重のかかる摺動部で、摩擦と摩耗を下げたい
日本エムティの初期なじみ二硫化モリブデンコーティングのページに掲載されている、黒い被膜の付いた歯車の写真
初期なじみ二硫化モリブデンコーティングのページに掲載されている写真(出典:初期馴染み二硫化モリブデンコーティング|日本エムティ)

出典:初期馴染み二硫化モリブデンコーティング|日本エムティ、会社案内|日本エムティ

ナノテック株式会社|DLC・ICFコーティング

ナノテックとは

ナノテックは、千葉県柏市に本社を置く、1989年設立の会社です(資本金9,995万円、従業員37名。九州工場コーティングセンターは福岡県)。DLC コーティングによる表面改質の受託加工を基本の業務とし、成膜装置の製造や、薄膜の評価試験機も手がけています。

ナノテックの得意技術

技術内容
高耐久性 ICFDLC は硬いがゆえに割れやすく、はがれやすいとされてきた。成膜条件と膜の傾斜層を工夫して、初期の摩擦係数が低く、高い荷重でもはがれにくくした膜。仕様は膜厚2〜3μm、摩擦係数0.13〜0.16、硬度 HV1,000〜1,200
試験の条件を公開ボールオンディスクの摩擦摩耗試験(超硬合金の球 φ6mm、荷重20N、周速度100mm/s、移動距離1,000m)の摩擦係数の推移と、従来の DLC との摩耗量の比較を公開している
少量の試作から量産まで目的に合わせた DLC・ICF の膜を、少量のサンプル試作から大量生産まで受託加工するとしている

応用例として、マグネットの圧粉成形のパンチ(SKD11、無潤滑)で、従来の DLC(DLC-Hard)が1万ショットのところ、高耐久性 ICF では30万ショット(寿命30倍)という結果を公開しています。

ナノテックが解決できる課題

  • 金型や摺動部品の摩擦を下げて、寿命を延ばしたい
  • 高い面圧のかかるギアで、初期の摩擦を下げたい
  • DLC がはがれて、効果が長く続かない
ナノテックの高耐久性ICFのボールオンディスク試験で、摩擦係数が0.13前後で推移するグラフ
高耐久性 ICF の摩擦係数の推移(ボールオンディスク、超硬合金の球 φ6mm、荷重20N、周速度100mm/s、移動距離1,000m。出典:高耐久性 ICFコーティング|ナノテック)

出典:高耐久性 ICFコーティング|ナノテック、会社概要|ナノテック

株式会社リプス・ワークス|レーザーのマイクロディンプル

リプス・ワークスとは

リプス・ワークスは、東京都大田区に本社を置く、2009年設立の会社です(資本金2,500万円)。レーザーを使った微細加工を手がけ、表面に微細な凹凸を付けて摩擦を変える「マイクロテクスチャ」の技術を公開しています。

リプス・ワークスの得意技術

技術内容
レーザーマイクロテクスチャレーザーで、表面に直径30〜100μm、深さ3〜30μm の微細な凹み(ディンプル)を、15〜150μm のピッチで並べる
摩擦係数を半減SUS420 の試験片にディンプルを付け、ボールオンディスク(相手材は SUJ2 の鋼球、潤滑剤あり)で試験し、摩擦係数を半減できたとしている。別に行った3,000m の連続試験でも、摩擦係数は一定に保たれた
金型への応用パンチなどの金型にもディンプルを加工する事例を公開している

リプス・ワークスが解決できる課題

  • 摺動部の油膜が切れて、摩擦が増える・焼き付く
  • 金型やパンチの摩擦を下げたい
  • 潤滑剤を増やさずに、摩擦を下げたい
リプス・ワークスのマイクロディンプルの配置の模式と、公開されている寸法と試験の結果
マイクロディンプルの寸法と試験の結果
出典:リプス・ワークス「レーザーマイクロテクスチャによる摩擦低減技術」の記載をもとに AI(Claude)で作成(配置は模式)

出典:レーザーマイクロテクスチャによる摩擦低減技術|リプス・ワークス、会社概要|リプス・ワークス

オイレス工業株式会社|無給油のすべり軸受

オイレス工業とは

オイレス工業は、神奈川県藤沢市に本社を置く、1952年設立の会社です(東京証券取引所プライム市場に上場)。給油を減らせる、または無給油で使えるすべり軸受「オイレスベアリング」のほか、建物や橋の免震・制震装置も手がけています。

オイレス工業の得意技術

技術内容
オイレスベアリング給油の量や回数を減らせる、または無給油で使えるすべり軸受。樹脂系(分散含油・固体潤滑剤分散)、複層系、金属系(固体潤滑剤埋込・多孔質含油)の3つの系統がある
高荷重用の無給油軸受例えば #500SP1-SL1 は、高力黄銅系の合金に固体潤滑剤を埋め込んだ高荷重用の軸受。無給油で −40〜+300℃、最大面圧29N/mm²、最大 PV 値1.65N/mm²·m/s
設計を支える資料面圧(P)・すべり速度(V)・PV 値による選び方の目安や、寿命の計算のしかたを公開している

導入事例を、成形機・金型部品、工作機械、ロボット、食品・包装、半導体などの分野ごとに公開しています。

オイレス工業が解決できる課題

  • 給油の手間をなくしたい、油を差せない所で使いたい
  • 低速・高荷重・揺動の摺動部が摩耗する、焼き付く
  • 軸受の給油の間隔を延ばしたい
オイレス工業のすべり軸受の3つの系統と、#500SP1-SL1 の使用温度・面圧・速度・PV値の仕様の表
オイレスベアリングの系統と、#500SP1-SL1 の仕様
出典:オイレス工業「オイレスベアリングとは?」、「#500SP1-SL1」の記載をもとに AI(Claude)で作成

出典:オイレスベアリングとは?|オイレス工業、#500SP1-SL1|オイレス工業、会社概要|オイレス工業

黒田精工株式会社|ボールねじ

黒田精工とは

黒田精工は、神奈川県川崎市に本社を置く、1949年設立の会社です(創立1925年。東京証券取引所スタンダード市場に上場)。精密ボールねじなどの駆動システムの製品を手がけています。

黒田精工の得意技術

技術内容
ボールねじねじ軸とナットの間でボールが転がって動く送りねじ。台形ねじなどのすべりねじは、軸とナットがこすれ合いながら動く
機械効率ボールねじの機械効率は90%以上で、入力したエネルギーの9割が推力に変わる。すべりねじは機械効率30%で、推力に変わるのは3割としている

黒田精工が解決できる課題

  • 送りねじの駆動に大きなモーターが必要で、消費電力が大きい
  • すべりねじが発熱する・摩耗する
  • 低速の送りで動きがなめらかでない
黒田精工の資料による、ボールねじ(90%以上)とすべりねじ(30%)の機械効率の比較と、ねじの構造の模式
ボールねじとすべりねじの機械効率
出典:黒田精工「ボールねじの推力について教えてください②」の記載をもとに AI(Claude)で作成(ねじの形は模式)

出典:ボールねじの推力について教えてください②|黒田精工、会社概要|黒田精工

新東科学株式会社|摩擦の試験機と受託試験

新東科学とは

新東科学は、東京都千代田区に本社を置く、1952年創業の会社です(資本金4,524万円。工場は埼玉県越生町)。摩擦摩耗試験機「トライボギア」と、実験室用の撹拌機「スリーワンモータ」の専門メーカーで、ブランド名は HEIDON です。

新東科学の得意技術

技術内容
摩擦摩耗試験機(トライボギア)静摩擦係数・動摩擦係数、往復や回転での摩耗、引っかき、密着・付着力などを測る試験機
受託試験試験機を持っていなくても、摩擦や摩耗を測ってもらえる。料金の例は、摩擦測定パックセット49,800円〜、摩耗測定100,000円/時間〜。JIS K 7125、ASTM D 1894 などの規格に対応し、秘密保持契約にも対応するとしている

技術コラムとして、摩擦の相談の事例も公開しています。

新東科学が解決できる課題

  • 潤滑剤・コーティング・材料の候補を、摩擦の数値で比べたい
  • 試験機がなく、摩擦を測れない
  • 手で触った感覚と数値が合わない
新東科学の摩擦摩耗試験の流れと、受託試験の料金の例、対応している規格の例
摩擦摩耗試験の流れと受託試験の料金の例
出典:新東科学「受託試験」、「トライボギア」の記載をもとに AI(Claude)で作成

出典:受託試験|新東科学、トライボギア|新東科学、会社案内|新東科学

選ぶ前に確かめる条件

メーカーに相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 困っている現象(起動が重い、スティックスリップ、消費電力が大きい、発熱・焼付き、摩擦が時間とともに増える)と、どこまで下げたいか
  • 摩擦が起きている部品(軸受、案内、ねじ、歯車、シール)と、動き方(回転・往復・揺動、起動と停止の回数)
  • 荷重(面圧)とすべり速度、PV 値
  • 使う温度と、周りの環境(水、薬品、粉じん、真空、食品・クリーンルーム)
  • 今の潤滑の方法(油・グリース・無給油)、潤滑剤の種類と粘度、給油の間隔
  • 摺動する面の材料と硬さ、表面の粗さ、相手材
  • 今の摩擦の大きさ(トルク、駆動電流、摩擦係数)を測った値があるか
  • 数量(試作か量産か)、納期、予算

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年9月29日

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