クリープは、材料に一定の力をかけ続けると、力は変わらないのに、時間とともに変形が少しずつ進む現象です。英語の creep は「はう、のろのろと動く」という意味です。高温で使う金属の配管、ねじで締めた樹脂の部品、はんだ付けした部分など、ものづくりのいろいろな所で寿命や不具合にかかわります。このページでは、クリープのしくみ、起きやすい温度と材料、似た現象の応力緩和、寿命の見積もり方、測り方を、できるだけやさしく説明します。
ひとことで言うと
クリープとは
ふつうは、物に一定の力をかけると、すぐに少し変形して、そこで止まります。ところが材料や温度によっては、力が同じでも、時間がたつにつれて変形がじわじわ増えていきます。これがクリープです。
最後には切れてしまうこともあり、これをクリープ破断(クリープ破壊)といいます。

出典:コトバンクをもとに AI(Claude)で作成
世界大百科事典(改訂新版)は、物に力を加えると変形し、力が一定なら変形量も一定になるのがふつうだが、一定の応力のもとでも、時間の経過とともに変形量が増加することがあるとし、この現象をクリープと呼ぶとしています。日本大百科全書も、クリープ試験の項で、クリープを「一定温度、一定応力のもとで時間の経過とともに材料の変形が進行する現象」とし、creep は「這う、のろのろと動く」の意としています。
出典:クリープ(改訂新版 世界大百科事典)|コトバンク、クリープ試験(日本大百科全書)|コトバンク
身近な例:荷物を載せ続けた衣装ケース・棚板

出典:プラスチックス・ジャパン、北海道立総合研究機構 林産試験場をもとに AI(Claude)で作成
プラスチックス・ジャパンの解説は、プラスチック製の衣装ケースの上に長い間荷物を置いていたら、弓なりに変形していたという例を挙げ、これがクリープだとしています。荷物の重さは同じなのに、何日、何か月とたつうちに、へこみやたわみが増えていきます。
木材も同じです。北海道立総合研究機構 林産試験場の資料は、クリープを「継続的に荷重が加わると変形が増えていく現象で、木材のような粘弾性体に特有のもの」とし、建築基準法では、木造の梁(はり)は長い時間かかる荷重に対して、初期の変形の2倍に増えるものとして設計するとしています。建築研究所も、木材やコンクリートなどの建築部材に荷重がかかると、時間とともに変形が増える(クリープ変形)とし、梁などのたわみの設計はクリープ変形を考えて行われているとしています。
出典:製品設計のキモ(11)プラスチックのクリープ特性|プラスチックス・ジャパン、構造材の長期許容応力度|北海道立総合研究機構 林産試験場、クリープ実験棟|建築研究所
クリープ曲線:伸びは3つの段階をたどる
温度と力を一定にして、時間と伸び(ひずみ)の関係をグラフにしたものを、クリープ曲線といいます。

出典:コトバンク、神戸工業試験場をもとに AI(Claude)で作成
- 力をかけた瞬間の伸び:世界大百科事典(改訂新版)は、荷重をかけた瞬間に、まず弾性的な伸びが生じるとしています。
- 遷移クリープ(第1次クリープ):はじめは比較的速く変形しますが、変形の速さはだんだん遅くなります。
- 定常クリープ(第2次クリープ):ほぼ一定の速さで変形が進みます。ハードロック工業は、この段階の伸びの速さ(定常クリープ速度)を、クリープ変形を特徴づける代表値としています。
- 加速クリープ(第3次クリープ):変形の速さが急に大きくなり、ついに破壊します(世界大百科事典)。
この3つの段階の呼び方は、神戸工業試験場のクリープ試験の説明でも同じです(I期 遷移クリープ域、II期 定常クリープ域、III期 加速クリープ域)。
出典:クリープ(改訂新版 世界大百科事典)|コトバンク、金属のクリープについて|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ、クリープ試験|神戸工業試験場
温度が高いほど、力が大きいほど速く進む

出典:コトバンク、ハードロック工業 ねじ締結技術ナビをもとに AI(Claude)で作成
世界大百科事典(改訂新版)は、クリープは、一定温度では応力が大きいほど速く起こり、一定応力では温度が高いほど速く生じるとし、逆に温度が低いほど遅く、ある温度以下では事実上ほとんど起こらないとしています。ハードロック工業も、クリープ曲線は応力が大きいほど、温度が高いほど、左上(短い時間で大きく伸びる側)に移るとしています。
どのくらいの温度から起きるのか

出典:コトバンク、ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ、エレクトロニクス実装学会をもとに AI(Claude)で作成
クリープが起き始める温度は、材料の融点(とける温度)と深い関係があります。世界大百科事典(改訂新版)は、純金属では絶対温度で表した融点の1/3付近がクリープを起こす最低の温度に当たるとし、例として銅では約450K(180℃)としています。絶対温度は、−273℃を0とする温度の目盛りで、単位は K(ケルビン)です。
目安の値は、出典によって少し違います。ハードロック工業は、金属では融点(絶対温度)の0.3〜0.4倍程度の高温からクリープがはっきり起こり始め、鉄鋼材料ではおよそ600℃以上で顕著になるとしています。別のコラムでは、融点の1/2を超えるとクリープが発生し、鋼材のボルトではおよそ600℃以上でクリープ破壊の懸念があるとしたうえで、顕著なクリープが出ない400℃程度でも、わずかなクリープでボルトがゆるむ可能性があるとしています。
融点が低い材料は、ふだんの温度でもクリープします。日本大百科全書は、スズや鉛のように融点の低い金属では室温でもクリープ変形が生じ、プラスチックもクリープ変形の生じやすい材料としています。はんだについて、エレクトロニクス実装学会誌の論文は「はんだは低融点金属であり常温でもクリープする」としています。同じ論文に載っているスズ-鉛はんだの融点は183℃(456K)なので、ふだんの温度(約25℃=298K)は融点の約0.65倍に当たり、上の目安より高い温度で使っていることになります(計算は編集部)。
出典:クリープ(改訂新版 世界大百科事典)|コトバンク、クリープ試験(日本大百科全書)|コトバンク、金属のクリープについて|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ、クリープ破壊|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ、はんだのクリープ特性に及ぼす微視組織の影響(エレクトロニクス実装学会誌 9巻3号、2006年)|エレクトロニクス実装学会
樹脂は、ふだんの温度でもクリープしやすい

ハードロック工業は、プラスチックは金属に比べて耐熱性・融点がかなり低いため、クリープは室温でも顕著に発生するとしています。プラスチックス・ジャパンの解説も、金属や木材など多くの材料が同じ性質(粘弾性)を持つが、室温程度の低い温度でもその性質がはっきり表れることがプラスチックの大きな特徴だとしています。
樹脂の種類によっても違います。ハードロック工業は、熱硬化性樹脂のほうが熱可塑性樹脂より一般に耐クリープ性がよく、熱可塑性樹脂の中では PEEK や PPS などのスーパーエンジニアリングプラスチックが優れるとしています。
樹脂の部品を設計するときは、力をかけた直後の値だけでなく、長い時間たったあとの変形で考えることが大切です(編集部の解説)。JIS K 7115 は、引張クリープの試験で、初期応力とひずみの比を引張クリープ弾性率とし、伸びを1分・3分・6分…1時間…1,000時間のように時間を追って測ることを推奨しています。
出典:プラスチックのクリープについて|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ、製品設計のキモ(11)プラスチックのクリープ特性|プラスチックス・ジャパン、JIS K 7115:1999 プラスチック-クリープ特性の試験方法-第1部:引張クリープ|kikakurui.com
似た現象:応力緩和

出典:プラスチックス・ジャパン、物質・材料研究機構、コトバンクをもとに AI(Claude)で作成
クリープは「力を一定にしておくと、変形が増える」現象でした。反対に、変形(ひずみ)を一定にしておくと、中に生じている力(応力)が時間とともに下がる現象を、応力緩和(リラクセーション)といいます(コトバンク、プラスチックス・ジャパン)。物質・材料研究機構は、高温の金属材料について、応力のリラクセーションを「クリープ現象と表裏をなす現象」とし、例として、フランジを強く締め付けたボルトの締付力が時間とともに下がる現象を挙げています。
プラスチックス・ジャパンの解説は、樹脂の部品をボルト・ねじで締めると、応力緩和で軸力(締め付ける力)が下がり、ねじが回らなくてもゆるみが進む(非回転緩み)としています。身近な例として、張った直後は強く張っていたラケットのガットが、時間とともにゆるんでくることも挙げています。ゴムのシールが時間とともに押し返す力を失うのも、同じ仲間の現象です(編集部の解説)。課題ページ「ねじ・ボルトがゆるむのを防ぎたい」、「ゴム部品がへたる・硬くなる」も参照してください。
出典:応力緩和|コトバンク、製品設計のキモ(12)プラスチックの応力緩和|プラスチックス・ジャパン、クリープデータシート No.48 の発行について(2002年11月5日)|物質・材料研究機構
ものづくりでどう効くか

出典:物質・材料研究機構、ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ、エレクトロニクス実装学会、プラスチックス・ジャパンをもとに AI(Claude)で作成
高温で何万時間も使う設備

物質・材料研究機構は、ボイラーやタービンなどの火力発電プラント、石油化学プラントの圧力容器など、大型の高温機器に使う材料でクリープが問題になるとしています。同機構は、約50種類の耐熱金属材料について、10万時間を超えるデータを得ることを目標にした長時間のクリープ試験を、昭和41年度から続けてきました(2002年の発表)。
ベストマテリア MatGuide の解説は、こうした高温の設備では、クリープを完全に避けて設計することはできないので、使う時間(寿命)を決め、その時間内にクリープによる不具合や破壊が起きないように設計するとしています。国内のボイラー・圧力容器の設計規格のもとになっている JIS B 8265 では、クリープが起きる温度での許容応力を、設計温度で1,000時間に0.01%のクリープひずみを生じる応力の平均値、10万時間でのクリープ破断応力の平均値の67%などのうち、いちばん低い値にするとしています。
出典:クリープデータシート No.48 の発行について(2002年11月5日)|物質・材料研究機構、クリープ損傷を防止するために|ベストマテリア MatGuide
樹脂の部品・はんだ・締結部

力がかかり続ける樹脂の部品(ねじで締めた部品、ばねのように使う部品など)は、ふだんの温度でも少しずつ変形が進み、締め付けがゆるんだり、すき間ができたりすることがあります(編集部の解説)。はんだ付けした部分は、ふだんの温度でもクリープするため、エレクトロニクス実装学会誌の論文は、はんだ材料を評価するときにクリープ特性を把握することが重要としています。課題ページ「はんだ付け不良を減らしたい」、「樹脂と金属をしっかり接合したい」、「圧入・焼きばめの部品が抜ける・割れる」も参照してください。
出典:はんだのクリープ特性に及ぼす微視組織の影響(エレクトロニクス実装学会誌 9巻3号、2006年)|エレクトロニクス実装学会、プラスチックのクリープについて|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ
短い試験から、長い寿命を見積もる

出典:日本機械学会、日本鉄鋼協会(J-STAGE)をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
10万時間は約11年です。使う条件のままで試験していては、結果が出るまでに何年もかかってしまいます。そこで、温度を上げた比較的短い時間の試験の結果から、より低い温度・長い時間の寿命を見積もる方法が使われます。日本機械学会の機械工学事典は、その代表のラーソン・ミラーのパラメーターを、P = T(C + log t)(T:絶対温度、t:破断時間)と説明しています。いくつかの応力・温度での短い試験の結果が1本の線(マスターカーブ)にのるように定数 C を決め、試験の範囲の外の、より低い温度で長い時間の強さや寿命を外挿します。
計算してみよう
日本鉄鋼協会の「鉄と鋼」の論文は、クリープでは20に近い C の値を仮定することが多いとしています。C = 20 と仮定し、ある材料がある力で、600℃(873K)では1,000時間で破断したとします(仮の例)。同じ力のまま温度だけを変えたときの寿命を計算すると、次のようになります(計算は編集部)。
| 温度 | 破断までの時間(見積もり) | 600℃との比 |
|---|---|---|
| 650℃(923K) | 約 57 時間 | 約 1/18 |
| 600℃(873K) | 1,000 時間(試験の結果) | 1 |
| 550℃(823K) | 約 25,000 時間 | 約 25倍 |
P = 873 ×(20 + log 1,000)= 873 × 23 = 20,079 で、550℃では log t = 20,079 ÷ 823 − 20 ≒ 4.40、t ≒ 25,000 時間です。使う温度が50℃違うだけで、寿命が数十倍変わることがわかります。ただし、これは考え方を示すための仮の計算です。同じ論文は、C の値は材料によって違い(ニッケル合金の例では9.5〜12.5)、どの値を使うべきかは検討が必要としています。実際の寿命の見積もりには、その材料の試験データが要ります。
出典:ラーソン・ミラーのパラメータ(機械工学事典)|日本機械学会、高温長時間クリープ特性の推定での信頼性向上(鉄と鋼 105巻8号、2019年)|日本鉄鋼協会(J-STAGE)
クリープの測り方:クリープ試験

出典:神戸工業試験場、物質・材料研究機構をもとに AI(Claude)で作成
神戸工業試験場は、クリープ試験を、電気炉の中で加熱した試験片に力をかけてクリープ変形を起こさせ、破断するまで温度・ひずみ・試験時間を測り続ける試験と説明しています。適用する規格として、金属は JIS Z 2271、樹脂は JIS K 7115・JIS K 7116、コンクリートは JIS A 1157 を挙げ、一般的な試験温度を室温〜1200℃としています。
- JIS Z 2271:金属材料のクリープ及びクリープ破断試験方法(2025年に改正。ISO 204:2023 をもとにした規格)。
- JIS K 7115:プラスチック-クリープ特性の試験方法-第1部:引張クリープ。
試験でわかるのは、時間と伸びの関係(クリープ曲線)、破断までの時間、定常クリープの伸びの速さなどです。世界大百科事典(改訂新版)は、設計に使う値として、決めた温度で特定の伸びの速さ(ふつう1%/10万時間)を生じる応力(クリープ強さ)と、特定の時間(1,000時間、10万時間など)で破断する応力(クリープ破断強さ)を挙げています。
出典:クリープ試験|神戸工業試験場、JIS Z 2271:2025 金属材料のクリープ及びクリープ破断試験方法(プレビュー)|日本規格協会、JIS K 7115:1999 プラスチック-クリープ特性の試験方法-第1部:引張クリープ|kikakurui.com、クリープ(改訂新版 世界大百科事典)|コトバンク
軸受の「クリープ」は別の意味

出典:日本精工をもとに AI(Claude)で作成
転がり軸受の話で出てくる「クリープ」は、ここまでの材料のクリープとは別の現象です。日本精工は、軸受が少ないしめしろで軸に取り付けられ、内輪に荷重を受けて回ると、内輪と軸の間で円周方向の有害な滑りを生じることがあり、これをクリープと呼ぶとしています。はめあい(しめしろ)の選び方が適切でないと、軸受の損傷としてクリープが発生しやすくなるとしています。製品ページ「軸受(ベアリング)」、課題ページ「圧入・焼きばめの部品が抜ける・割れる」も参照してください。
出典:7. はめあいとすきま(ベアリングのABC)|日本精工
クリープが出てくるページ
出典
- クリープ(改訂新版 世界大百科事典)|コトバンク
- クリープ試験(日本大百科全書)|コトバンク
- 製品設計のキモ(11)プラスチックのクリープ特性|プラスチックス・ジャパン
- 構造材の長期許容応力度|北海道立総合研究機構 林産試験場
- クリープ実験棟|建築研究所
- 金属のクリープについて|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ
- クリープ試験|神戸工業試験場
- クリープ破壊|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ
- はんだのクリープ特性に及ぼす微視組織の影響(エレクトロニクス実装学会誌 9巻3号、2006年)|エレクトロニクス実装学会
- プラスチックのクリープについて|ハードロック工業 ねじ締結技術ナビ
- JIS K 7115:1999 プラスチック-クリープ特性の試験方法-第1部:引張クリープ|kikakurui.com
- 応力緩和|コトバンク
- 製品設計のキモ(12)プラスチックの応力緩和|プラスチックス・ジャパン
- クリープデータシート No.48 の発行について(2002年11月5日)|物質・材料研究機構
- クリープ損傷を防止するために|ベストマテリア MatGuide
- ラーソン・ミラーのパラメータ(機械工学事典)|日本機械学会
- 高温長時間クリープ特性の推定での信頼性向上(鉄と鋼 105巻8号、2019年)|日本鉄鋼協会(J-STAGE)
- JIS Z 2271:2025 金属材料のクリープ及びクリープ破断試験方法(プレビュー)|日本規格協会
- 7. はめあいとすきま(ベアリングのABC)|日本精工
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月2日
