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デジタルツイン(意味と仕組み・シミュレーションとの違い・工場での活用事例・ISO 23247)

デジタルツイン(意味と仕組み・シミュレーションとの違い・工場での活用事例・ISO 23247)
6件解決できる課題
6社紹介している企業
33点図と写真
38件出典

デジタルツイン(意味と仕組み・シミュレーションとの違い・工場での活用事例・ISO 23247)

左に産業用ロボット・ベルトコンベヤー・マシニングセンタの実物の生産セル、右に同じ配置の青いワイヤーフレームのデジタルモデルを並べ、その間を両向きの点線の矢印でつないだイラスト(AI で生成したイメージ)

開発・評価を速く確かにコストダウン品質の安定デジタルツインIoT異常検知・予測計測・制御制御(位置・力)寸法・形状の測定産業機械・ロボット自動車・モビリティ化学・素材製造物流・倉庫

デジタルツインは、工場・設備・製品などの現物を、データでつないだデジタルのモデルとして写し続け、監視・予測・最適化に使うしくみです。ただの3Dモデルやシミュレーションと違うのは、個別の現物と同期していることです。

このページでは、設計者・生産技術者に向けて、デジタルツインの定義と段階(デジタルモデル・シャドウ・ツイン)、シミュレーションとの違い、現物とのつなぎ方と同期、工場・設備・製品での使い方、効果と費用(計算例・事例つき)と導入の進め方、標準と研究、よくある失敗、相談できる会社までをまとめました。センサーと通信の選び方は技術ページ「IoT」、設備の診断は「予知保全」、構造・熱流体の解析は「CAE」、形のデータは「3D CAD」、カメラと AI は「画像認識AI」にあります。

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症状から探す

症状考えられる原因対策を書いた所
3Dモデルを作ったが、何に使うか決まらない目的(何を決めるか)が先に決まっていない導入の進め方:目的から決め、小さく始める
シミュレーションの結果が現場と合わない現物のデータとつながっていない・モデルの検証不足シミュレーション・CAE・IoT との違い:個別の現物と同期しているか・よくある失敗と、まず疑うところ
設備ごとにデータの形式がばらばら集める規格・データモデルを決めていないしくみ:現物とのつなぎ方・同期と、よくある失敗
ラインの立ち上げで、プログラムの手直しに時間がかかる設備の完成を待ってからデバッグしている仮想立ち上げ(バーチャルコミッショニング)
図面と今の工場の配置が違う現況の形(点群など)を更新していない現況の3D:図面と今の工場のずれをなくす
費用に見合う効果が出るかわからない回収の見込みを立てていない費用の考え方と計算例
作った人しか直せない保守の体制を決めていないよくある失敗と、まず疑うところ

このページの出典をもとに編集部が整理したものです。リンクを押すと、対策を書いた所へ移ります。

目次

デジタルツインの基本:定義・段階・似た言葉との違い

デジタルツインの定義

総務省の情報通信白書(令和6年版)は、デジタルツインを「現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術」としています。産総研の解説は、厳密な定義は存在しないとしたうえで、現実空間の対象のデータを集めてデジタル空間にコピーし、もう一つの世界を作る手法で、目的はそのコピーで現実の対象の管理・制御・問題解決・予測などをデジタル上で行うことだとしています。

製造業向けの規格 ISO 23247 では、デジタルツインを「観測できる製造の要素(OME)の、目的に合ったデジタルの表現で、OME とその表現の間に同期があるもの」と定めています(NIST の解説による)。OME は、人・設備・材料・工程・施設・環境・製品・文書のように、製造の中で観測できるものです。

左に現実の工場の設備、右に同じ形のデジタルのモデルを置き、現実からモデルへデータを集める矢印と、モデルから現場へ結果を戻す矢印でつないだ図
図1 デジタルツイン:現物とモデルを、データでつなぎ続ける
出典:NIST AMS 400-2(ISO 23247 の解説)・産総研の解説をもとに AI(Claude)で作成

出典:令和6年版 情報通信白書 第7節(3)デジタルツイン|総務省、デジタルツインとは?|産総研マガジン(2024年7月17日)、Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)

段階:デジタルモデル・シャドウ・ツイン

Kritzinger らの論文(2018年)は、製造のデジタルツインの文献を、統合の度合いでデジタルモデル(DM)・デジタルシャドウ(DS)・デジタルツイン(DT)に分け、いちばん進んだ段階である DT の文献は少なく、DM と DS の文献が多いとしています。一般には、現物とモデルの間のデータのやりとりが両方向とも手作業なら DM、現物からモデルへは自動で、モデルから現物へ戻すのは人なら DS、両方向とも自動なら DT と説明されます。

デジタルモデル、デジタルシャドウ、デジタルツインの3つの段階を並べ、現物からモデルへの矢印とモデルから現物への矢印が、それぞれ自動か手作業かを実線と点線で示した図
図2 3つの段階:データの流れが自動か手作業か
出典:Kritzinger ほか(2018)と一般的な説明をもとに AI(Claude)で作成

製品やサービスの名前に「デジタルツイン」と付いていても、段階は DM や DS のものがあります。どの段階が要るかは目的で決まり、いつも DT を目指す必要はありません(編集部の整理)。たとえば、レイアウトの検討なら DM で足りることが多く、稼働の監視なら DS、自動で条件を調整するなら DT が要ります。

出典:Kritzinger, W. et al.: Digital Twin in manufacturing: A categorical literature review and classification, IFAC-PapersOnLine(2018)

何のデジタルツインか:製品・設備・工場・人

NIST の解説は、製造のデジタルツインの使い方の例として、分析(何が起きたか・なぜか・何が起きそうか・どうすればよいか)、リアルタイムの制御、設備の健全性の確認、スケジュールと経路、仮想での立ち上げ(バーチャルコミッショニング)、予知保全を挙げています。

対象使い方の例
製品運用中の機体・製品の状態を写し、寿命や整備を考える(NASA 2012)
設備工作機械・ロボット・プラントの状態の監視と保全の計画
ライン・工場レイアウト・スケジュール・仮想での立ち上げ(仮想試運転)
人と作業作業者の動き・身体の負担・ロボットとの協働の安全(NEDO・産総研)

考え方の古い例として、NASA と米空軍の研究者の論文(2012年)は、超高精度のシミュレーションを、機体に載せた健全性管理のシステム・整備の履歴・機体群のデータと統合し、実際に飛ぶ1機の一生を写す「デジタルツイン」を、従来のやり方を変える考え方として示しています。

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)、Glaessgen, E. and Stargel, D.: The Digital Twin Paradigm for Future NASA and U.S. Air Force Vehicles(2012)|NASA NTRS

シミュレーション・CAE・IoT との違い:個別の現物と同期しているか

シミュレーションや CAE は、代表の条件を入れて結果を予測する道具です。NIST は製造のデジタルツインを「同期した仮想のモデル」と呼び、産総研の解説も、現実世界は常に変化しているので、それに同期してデジタル世界も変化させないと「ツイン」にはならないとしています。つまり、デジタルツインはシミュレーションを使うことが多いものの、特定の現物の今の状態とつながっているかが違いです。

3D モデル(CAD)シミュレーション・CAEIoT・見える化デジタルツイン
形を持つ○○(多くは)-○(目的しだい)
現物のデータ-条件として入れる○(集める)○(集め続ける)
特定の1台と同期--(代表の条件)○○
予測・最適化-○△(分析しだい)○
結果を現物に戻す-人が判断人が判断○(自動のことも)

NIST・NASA・産総研の説明をもとに編集部が整理(○△-は目安)。

出典:Digital Twins for Advanced Manufacturing|NIST、デジタルツインとは?|産総研マガジン(2024年7月17日)、Glaessgen, E. and Stargel, D.: The Digital Twin Paradigm for Future NASA and U.S. Air Force Vehicles(2012)|NASA NTRS

どのページを読めばよいか

したいこと合う技術詳しいページ
形のデータを作る・渡す3D CAD・3DA モデル3D CAD
強度・熱・流れを作る前に予測する構造解析・熱流体解析CAE
設備の状態をセンサーで集めて見るセンサー・無線・データ収集IoT
故障の前ぶれをつかむ振動・電流・油の診断予知保全
カメラの画像で判定する画像認識・深層学習画像認識AI
上のどれかを、現物とつないで使い続けるデジタルツインこのページ

デジタルツインは、上の技術を組み合わせて作ることが多い技術です(編集部の整理)。

しくみ:現物とのつなぎ方・同期と、よくある失敗

ISO 23247 の参照アーキテクチャ:利用者・中核・データ収集・製造の領域

ISO 23247-2 は、デジタルツインのしくみを利用者の領域・中核の領域・データ収集と機器制御の領域・観測できる製造の領域の4つに分けています(NIST の解説)。データ収集と機器制御の領域は、センサーから集めて OME とツインを同期させ、OME を制御・作動させます。中核の領域は、分析・シミュレーション・最適化などのサービスで、ツインの運用と管理をします。

利用者の領域、中核の領域、データ収集と機器制御の領域、観測できる製造の領域の4つを上から下へ積み、隣どうしを上下の矢印でつないだ図
図3 ISO 23247 の参照アーキテクチャ:4つの領域
出典:NIST AMS 400-2(ISO 23247-2 の解説)をもとに AI(Claude)で作成

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)

同期の速さは用途で決める

ISO 23247-1 は、通信の手段を使い、用途が決める速さで、ツインを OME の今の状態に保つことを同期としています(NIST の解説)。同期で更新するのは、状態・条件・部品の形・製造の資源の変化などです。速いほどよいわけではなく、決めたいことに間に合う速さで足ります(編集部の整理)。

用途同期の速さ(目安)考え方
制御・安全速い(その場で)モデルの結果で現物を動かす。遅れが許されない
監視・異常の検知数秒〜数分ごと状態の変化に気づければよい
計画・スケジュール数時間〜1日ごと日々の段取り・生産計画に使う
レイアウト・設計の検討変更のたび現況の形(点群など)を更新する

表の速さは考え方を示す目安で、規格の値ではありません(編集部の整理)。速くするほど、通信・保存・計算の費用が増えます。

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)

つなぐ規格:OPC UA・AAS・MTConnect

現物からデータを集める規格には、OPC UA(2008年に公開された、プラットフォームに依存しないサービス指向の枠組み。Publish-Subscribe は多対多のやりとり向け。メッセージの暗号化や、署名で送り元と改ざんの有無を確かめるしくみなどのセキュリティを持つ)、機器のデジタル表現の構造を決めるAAS(アセット管理シェル、IEC 63278-1:2023)、工作機械のデータの規格 MTConnect(NIST の試験環境では、工作機械のデータを MTConnect で集めている)などがあります。ISO 23247-4 も、情報交換に使える規格と技術の一覧を示しています(NIST の解説)。

規格中身
OPC UA2008年に公開。環境に依存しないサービス指向の枠組み。PubSub は多対多向け。暗号化・署名つき
AAS(管理シェル)IEC 63278-1:2023。資産(機器)のデジタル表現の構造を標準化(2023年12月発行)
MTConnect工作機械のデータの形式。OPC UA への対応づけ(コンパニオン仕様)がある

センサーと無線の選び方、データの集め方の基本は技術ページ「IoT」にあります。

出典:OPC Unified Architecture|OPC Foundation、IEC 63278-1:2023 Asset Administration Shell for industrial applications – Part 1|IEC Webstore、Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)

よくある失敗と、まず疑うところ

失敗まず疑うところ対策
作ったが使われない目的(何を決めるか)が決まっていない目的と使う人を先に決める(導入の進め方:目的から決め、小さく始める)
データがそろわない設備ごとに形式がばらばら集める規格・データモデルを決める(つなぐ規格:OPC UA・AAS・MTConnect)
モデルと現場が合わない図面が古い・同期が止まっている・検証をしていない現況を測り直す・現物と比べて検証する(現況の3D:図面と今の工場のずれをなくす)
作った人しか直せない保守の体制を決めていない使う部署も直せる体制にする(下の事例)
費用ばかりかかる忠実度・範囲を広げすぎ決めたいことに足りる所で止める(費用の考え方と計算例)
つないだら危ないネットワークとアクセスの管理セキュリティを設計に入れる(下の節)

このページの出典をもとに編集部が整理したものです。

内製した仕組みの保守が、新しい開発の時間を奪う

ダイキン工業の浜靖典氏の講演(ITmedia Virtual EXPO 2025 夏)を紹介した MONOist の記事(2025年)によると、ダイキン工業は「止まらない工場」に向けて工場デジタルツインや設備故障予知などを使い、生産ロスの削減やリードタイムの短縮につなげています。一方で、新しく入れた仕組みをすべて社内の技術者が内製したため、維持管理やアップデートもその技術者が行う必要があり、新規の開発に取り組む時間が捻出できなくなったという課題を挙げ、仕組みを使う事業部のメンバーも一緒に開発・改修できる環境や体制が必要としています。設備の故障予知は導入と維持管理のコストがかかるため、予知保全は重要な故障への対応に留め、事後保全への対応を増やすなどの使い分けと、迅速な事後保全がより必要だとしています。

出典:ダイキンが目指す止まらない工場、そこで見えてきた課題と新たな取り組み(1/2)(2025年10月23日)|MONOist、同(2/2)|MONOist

データの統合と、時間の同期

産総研の解説は、集められるデータの種類も量も増えたため、それらをどう統合するかが次の課題とし、現実世界は常に変化するので、それに同期してデジタル世界も変化させないとツインにならないとしています。データをそろえる方法は、つなぐ規格:OPC UA・AAS・MTConnectの規格と、技術ページ「IoT」を見てください。

出典:デジタルツインとは?|産総研マガジン(2024年7月17日)

つなぐほど、セキュリティと信頼が要る

NIST IR 8356(2025年)は、デジタルツインを現実の物理的な対象(建物・電子機器など)や物理的でない対象(工程など)の電子的な表現とし、そのセキュリティと信頼の考え方を扱っています。現物を制御するツインでは、モデルの誤りや不正なアクセスが現物の動きに直接つながるので、OPC UA の暗号化・署名などの仕組みと、ネットワークの分け方・アクセスの管理を最初から設計に入れます(編集部の整理)。

出典:NIST Releases NIST IR 8356, Security and Trust Considerations for Digital Twin Technology(2025)|NIST CSRC、OPC Unified Architecture|OPC Foundation

使い方:工場・生産ラインと、設備・製品

工場・ラインでは、レイアウト、ラインの能力、仮想での立ち上げ、人とロボットの作業の分け方を、実物を止めずに確かめるのに使われます。

レイアウト・搬入ルート・動線

トヨタ自動車は貞宝工場で、新しい設備をまず3Dモデルで作り、設計担当・製造担当・実際に使う作業者が事前に不具合を洗い出すことで、設計から生産開始までのリードタイムが半分になったとしています(同社の発表)。静岡県工業技術研究所は、市販の LiDAR スキャナで工場の点群をとり、ゲームエンジンで仮想の工場を作って、設備の増設に伴う搬入ルートとレイアウトの検討をできるようにしました。

出典:工場の景色を変え、モノづくりの未来を変えていく(2023年9月)|トヨタ自動車、設備、モノ、ヒトの統合的データ分析による生産性の効率化(令和4〜6年度 研究成果事例)|静岡県工業技術研究所

ラインの能力とボトルネック

静岡県工業技術研究所は、市販の生産シミュレーターでプレス金属加工の県内企業のラインを再現し、作業者7名・プレス加工機3台のラインに2台を増やすと、25%の作業時間の短縮が期待できるとしています。設備を買う前に、増やした効果を数字で見られるのが利点です。生産シミュレーションの進め方は課題「生産ラインをデジタルツインで事前に検証したい」にあります。

出典:設備、モノ、ヒトの統合的データ分析による生産性の効率化(令和4〜6年度 研究成果事例)|静岡県工業技術研究所

仮想立ち上げ(バーチャルコミッショニング)

設備の制御プログラム(PLC)やロボットのプログラムを、実機が完成する前に、仮想の設備につないで試す方法です。NIST の解説は、制御の設計と戦略を物理のシステムなしで試し評価するツインとして挙げています。ロックウェル・オートメーションの事例では、熱処理炉のメーカー ECM テクノロジーズが、メキシコの自動車工場向けの設備で、ロックウェルの Emulate3D を使って PLC コードを生産と並行してデバッグしました。同社の担当者は、Emulate3D を使わなかった7年前の同じような設置と比べて、立ち上げ時間が50%短縮されたとし、プロジェクトのリードタイムは最大5カ月短縮できると見積もっています(事例の見出しは「最大50%短縮」)。

これまでの設計、製作・据え付け、プログラムのデバッグ、生産の流れと、製作・据え付けと並行して仮想の設備でデバッグし、早く生産を始める流れを比べた図
図4 仮想立ち上げ:設備の完成を待たずにプログラムを試す
出典:ロックウェル・オートメーションの事例をもとに AI(Claude)で作成

ロボットのプログラムを PC の上で作る方法は課題「ロボットの立ち上げ・ティーチングの手間を減らしたい」に、ロボットそのものは技術ページ「産業用ロボット」にあります。

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)、ECMテクノロジーズ社、デジタルツインの洞察により設置および立上げ時間を最大50%短縮|ロックウェル・オートメーション

人とロボットの協働

NEDO と産総研は、人とロボットが同じ環境で作業する状態を仮想空間に写し、作業者の全身の動き・身体の負荷・安全の状態をリアルタイムで分析するデジタルツインを開発しました。トヨタ自動車の協力による模擬生産工場での部品供給の実証で、生産性(同じ作業者が作業完了に要する時間)を10〜15%向上、作業者の負担(腰と肩の関節トルクの推定量)を約10%軽減したとしています。

出典:生産性の持続的向上と人の負担軽減を両立するデジタルツインを開発(2023年1月31日)|NEDO・産総研

設備や製品では、「その1台」の状態を追い、加工・運転・保守の判断に使うことが、代表の条件で計算するシミュレーションとの違いです。

工作機械:仮想のテスト加工

DMG森精機は、工具・加工素材・治具だけでなく、工作機械本体の物理特性までデジタル上に作り、切削加工そのものを再現する「デジタルツインテストカット」を2021年に始めました。切削力・工具振動・面品位を確かめられ、実際の加工と比べた誤差は±数パーセント、依頼から最短2営業日で回答するとしています(同社の発表)。

出典:デジタルツインテストカットの開始(2021年2月16日)|DMG森精機

プラント:運転データを集めて施策を事前に確かめる

横河電機は、制御システムのプロセスデータに加えて、設備の運転状況・原料と製品の在庫・エネルギー消費量などをリアルタイムに自動で集めて統一された形式に変える統合情報サーバを2021年に発売し、統合したデータでプラントのデジタルツインを作れば、操業改善の施策やパラメータ設定を事前に検証できるとしています(同社の発表)。

出典:統合情報サーバの発売について(2020年10月19日)|横河電機

現況の3D:図面と今の工場のずれをなくす

工場や物流施設は配置がよく変わり、最新の図面と現場の配置が違うことが珍しくありません。構造計画研究所は、NavVis の計測機で広い工場や物流施設をミリ単位の精度ですばやくスキャンし、点群を「現況の基準データ」として管理する使い方を紹介しています(同社のページ)。点群のとり方は課題「生産ラインをデジタルツインで事前に検証したい」の点群の節にもあります。

出典:KION の事例(NavVis と NVIDIA Omniverse)|構造計画研究所

製品の運用:1台ごとの寿命と整備

製品のデジタルツインは、出荷したあとの1台ごとの使われ方・負荷・整備の履歴をモデルと合わせ、寿命や整備の時期を考えるものです。NASA の論文(2012年)が示したのはこの使い方で、機体の健全性管理のシステム・整備の履歴を高精度のシミュレーションと統合するとしています。設備の診断の方法は技術ページ「予知保全」にあります。

出典:Glaessgen, E. and Stargel, D.: The Digital Twin Paradigm for Future NASA and U.S. Air Force Vehicles(2012)|NASA NTRS

効果と費用(事例)と、導入の進め方

公開されている効果の例

公開されている効果は、立ち上げ・リードタイムの短縮が多く見られます。ただし、比べる対象と条件がそれぞれ違うので、数字どうしを比べることはできません。

トヨタ、シーメンスの工場、ECM、PLATEAU、静岡県工業技術研究所、NEDO・産総研の効果の数値を横棒で並べた図
図5 公開されている効果の例(各出典の値)
出典:各社・各機関の発表をもとに AI(Claude)で作成
出典効果(原文の条件)
トヨタ自動車(貞宝工場)設備を先に3Dモデルで作る:設計から生産開始までのリードタイムが半分。金型・設備部品加工設備の材料投入などの作業を3Dモデル上で改善・自動化(双方向のデジタルツイン):生産性3倍、改善リードタイムが従来比で3分の1
シーメンスのバードノイシュタット工場工場全体の見える化の成果として、リードタイム(スループットタイム)40%削減、新しい機械の立ち上げ時間60%削減、ツールコスト20%削減(MONOist、2018年)
ECM テクノロジーズ仮想立ち上げで、Emulate3D を使わなかった前の同じような設置と比べて立ち上げ時間が50%短縮。リードタイムは最大5カ月短縮できると見積もり(ロックウェルの事例)
国土交通省 PLATEAU(インフラ)地下埋設物の3D都市モデルで、支障移設の業務工程が13.0日から約7.0日(約46%短縮の試算。モデルが事前に整備されている前提)
静岡県工業技術研究所設備増設の想定で作業時間25%短縮の期待。協力企業で人件費・宣伝費に係る費用が約300万円程度削減できる見込み
NEDO・産総研模擬工場で、生産性10〜15%向上・作業者の負担約10%軽減

各社・各機関の発表による(ECM はロックウェル・オートメーションの事例、シーメンスは報道)。

出典:工場の景色を変え、モノづくりの未来を変えていく(2023年9月)|トヨタ自動車、古い工場で実現したデジタルツイン、シーメンスが示す“デジタル”の本当の意味(2018年8月20日)|MONOist、ECMテクノロジーズ社、デジタルツインの洞察により設置および立上げ時間を最大50%短縮|ロックウェル・オートメーション、地下埋設物の3D都市モデル(2025年度ユースケース uc25-06)|国土交通省 PLATEAU、設備、モノ、ヒトの統合的データ分析による生産性の効率化(令和4〜6年度 研究成果事例)|静岡県工業技術研究所、生産性の持続的向上と人の負担軽減を両立するデジタルツインを開発(2023年1月31日)|NEDO・産総研

費用の考え方と計算例

費用は、最初の構築費(モデル作り・センサー・通信・ソフト)と、使い続けるための更新・保守の費用に分けて考えます。効果は「1回使うと何日・何時間減るか×1日あたりの費用」で見ます。静岡県工業技術研究所は、デジタルツインの構築には多大なコストがかかるため、中小企業での導入事例はまだ少ないとしています。

横軸を使った回数、縦軸を差し引きの金額にして、構築費400万円、1回の更新費50万円、1回の効果300万円の仮の値で、約1.6回で差し引きがゼロになることを示したグラフ
図6 計算例:何回使えば構築費を回収できるか(仮の値)
出典:編集部の計算(仮の値)をもとに AI(Claude)で作成

説明用の仮の値で計算します。構築費400万円、1回の立ち上げ・変更でモデルを直す費用50万円、1回で10日短くなり、1日あたりの費用(技術者の工数とラインの停止)を30万円とすると、1回の効果は300万円です。N回使ったときの差し引きは、300×N−50×N−400=250×N−400(万円)で、N≒1.6、つまり2回目の立ち上げ・変更で回収できます(編集部の計算)。

同じモデルを何度も使えるほど回収は早くなります。逆に、1回しか使わない検討なら、細かいツインを作るより、範囲をしぼったシミュレーションで足りることがあります(編集部の整理)。

出典:設備、モノ、ヒトの統合的データ分析による生産性の効率化(令和4〜6年度 研究成果事例)|静岡県工業技術研究所

導入の状況

IDC Japan の国内企業ユーザー調査(2024年8月発表)では、産業領域のデジタル化に取り組む企業の69.1%が、デジタルツインを導入済みか導入を検討中と答えました。OT(設備を動かす制御・運用の技術)関連のデジタルツインを導入・検討している企業に対象をたずねると、「複雑な製品や機械」37.5%、「工場のライン、作業員の動作など」33.3%でした。

出典:デジタルツインに関する国内企業ユーザー調査結果を発表(2024年8月22日)|IDC Japan

企業と公的機関の発表、専門メディアから、デジタルツインで期間や作業が変わった事例と、課題が見えた事例を集めました。

事例:設備を先に3Dで作り、設計から生産開始までのリードタイムを半分に(トヨタ自動車、2023年公開)

トヨタ自動車は、新しい設備を立ち上げる過程で、図面では予期しなかった不具合や作業しづらい部分が見つかり、やり直しのムダでリードタイムが長くなることを課題としていました。貞宝工場でまず3Dモデルを作り、設計・製造の担当と作業者が事前に不具合を洗い出すことで、設計から生産開始までのリードタイムが半分になったとしています。既存設備では、材料投入などの作業を3Dモデル上で改善・自動化して実際の設備に反映し、生産性3倍、改善リードタイム3分の1を実現したとしています(同社の発表)。

出典:工場の景色を変え、モノづくりの未来を変えていく(2023年9月)|トヨタ自動車

事例:人とロボットの協働をツインで分析し、生産性と負担を同時に改善(NEDO・産総研、2023年)

NEDO の事業で産総研が開発したデジタルツインで、トヨタ自動車の協力による模擬生産工場(産総研臨海副都心センター)で部品供給作業を実証しました。生産性が10〜15%向上し、人の負担が約10%軽減したとしています。従来は相反するとされてきた生産性の向上と作業負担の軽減を、同時に改善できることを示したとしています。

出典:生産性の持続的向上と人の負担軽減を両立するデジタルツインを開発(2023年1月31日)|NEDO・産総研

事例:仮想立ち上げで、設備の立ち上げ時間を50%短縮(ECM テクノロジーズ、2024年公開)

ロックウェル・オートメーションの事例によると、熱処理炉のメーカー ECM テクノロジーズは、メキシコの自動車工場向けの設備で、ロックウェルの Emulate3D を使って設備の納入前に PLC コードをシミュレーションし、生産と並行してデバッグしました。同社の担当者は、Emulate3D を使わなかった7年前の同じような設置と比べて、立ち上げ時間が50%短縮されたとし、リードタイムは最大5カ月短縮できると見積もっています(ソフトのメーカーが公開した事例)。

出典:ECMテクノロジーズ社、デジタルツインの洞察により設置および立上げ時間を最大50%短縮|ロックウェル・オートメーション

事例:古い設備の工場で、新しい機械の立ち上げ時間60%削減(シーメンス、2018年の報道)

MONOist の記事(2018年)によると、シーメンスのバードノイシュタット工場(サーボモーター工場)は、工場全体の見える化の成果として、生産のリードタイム(スループットタイム)40%削減、新しい機械の立ち上げ時間60%削減、ツールコスト20%削減を挙げています。

出典:古い工場で実現したデジタルツイン、シーメンスが示す“デジタル”の本当の意味(2018年8月20日)|MONOist

事例:中小企業版のデジタルツイン:LiDAR とゲームエンジンで工場を再現(静岡県工業技術研究所、令和4〜6年度)

静岡県工業技術研究所は、デジタルツインの構築には多大なコストがかかり中小企業の導入事例はまだ少ないことから、安価で容易に作れる中小企業版のデジタルツインを提案しました。市販の LiDAR スキャナの点群とゲームエンジンで工場を再現し、市販の生産シミュレーターで、プレス加工機を2台増やすと25%の作業時間の短縮が期待できることを示しました。協力企業で人件費・宣伝費に係る費用が約300万円程度削減できる見込みとしています。

出典:設備、モノ、ヒトの統合的データ分析による生産性の効率化(令和4〜6年度 研究成果事例)|静岡県工業技術研究所

事例:BMW の仮想工場:30以上の工場の計画を1つの環境で(NVIDIA の事例)

NVIDIA の事例ページによると、BMW グループは NVIDIA Omniverse 上で工場計画のアプリケーションを作り、30を超える工場の計画者が、1人あたり平均で週に3回の変更を仮想の環境で扱っています。工場計画の最適化などで30%の節約を見込むとしています(見込みの値)。

出典:BMW Group Develops Custom Application on NVIDIA Omniverse|NVIDIA

事例:地下埋設物の3D モデルで、支障移設の業務工程を約46%短縮の試算(国土交通省 PLATEAU、2025年度)

国土交通省の PLATEAU のユースケースでは、藤沢市の再開発を対象に、地下埋設物の3D都市モデルを支障移転の会議で使う検証をしました。回答者の95%が従来の2D図面に代えて使えると評価し、エスカレーターの建設に伴う支障移設の業務工程は13.0日(102時間)から約7.0日(55時間)へ、約46%短縮と試算されました。モデルが事前に整備されている前提の試算です。製造業ではありませんが、図面から3Dのツインに移すときの効果と前提がわかる例です。

出典:地下埋設物の3D都市モデル(2025年度ユースケース uc25-06)|国土交通省 PLATEAU

1件目・2件目・5件目は企業・公的機関の発表、3件目・6件目はソフトのメーカーが公開した事例、4件目は専門メディアの報道、7件目は国土交通省の発表です(編集部の整理)。課題が見えた事例(ダイキン工業)は内製した仕組みの保守が、新しい開発の時間を奪うにあります。

導入の進め方:目的から決め、小さく始める

デジタルツインは、「何を決めるために使うか」から決め、範囲をしぼって小さく始めるのが近道です。進め方を、このページの出典をもとに編集部が7つの手順に整理しました。

手順決めることポイント
1 目的何を決めるために使うか(レイアウト・立ち上げ・保全・品質など)目的が段階(DM・DS・DT)と同期の速さを決める(段階:デジタルモデル・シャドウ・ツイン)
2 対象どの設備・ライン・製品を写すか効果の大きい1か所から始める
3 忠実度どこまで細かく写すか決めたいことに足りる細かさで止める
4 データ何のデータを、どこから集めるかPLC・CAD・点群・作業記録など今あるデータを先に洗い出す
5 同期どの速さ・どの規格でつなぐか用途が決める速さで足りる(同期の速さは用途で決める)
6 検証モデルが現物と合っているか現物の測定とモデルの結果を比べる。ISO 23247-7 として枠組みが検討されている
7 運用誰が更新・保守するか作った人だけに頼らない体制(よくある失敗と、まず疑うところ)

このページの出典をもとに編集部が整理したものです。

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)、Digital Twins for Advanced Manufacturing|NIST

導入前のチェックポイント

デジタルツインは、目的と範囲を先に決め、忠実度は「決めたいこと」に足りる所で止めるのが近道です。入れる前の確認点を、編集部が整理しました。

  • 目的:何を決めるために使うか(レイアウト・立ち上げ・保全・品質など)を決めた
  • 範囲:最初に写す設備・ライン・製品をしぼった
  • 忠実度:どこまで細かく写すかの線を決めた
  • データ:集めるデータの項目と、出どころ(PLC・センサー・CAD・点群・作業記録)を洗い出した
  • 同期:用途に合う速さと、つなぐ規格(OPC UA など)を決めた
  • 検証:モデルと現物を比べる方法と、合格の目安を決めた
  • 保守:モデルを更新する担当と費用を決めた(作った人だけに頼らない)
  • 安全:ネットワークの分け方とアクセスの管理を決めた

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)、Digital Twins for Advanced Manufacturing|NIST、同(2/2)|MONOist、NIST Releases NIST IR 8356, Security and Trust Considerations for Digital Twin Technology(2025)|NIST CSRC

標準(ISO 23247・AAS・OPC UA)と研究

ISO 23247(製造のデジタルツインの枠組み)

ISO 23247(Digital Twin Framework for Manufacturing)は2021年に発行されました。1部 概要と原則、2部 参照アーキテクチャ、3部 デジタル表現、4部 情報交換の4部構成で、目的と範囲の決め方、モデルにする要件の分析、用語、参照アーキテクチャ、OME の情報のモデル化と、ツインと OME の同期を扱います(NIST の解説)。3部は、OME の情報に静的なものと動的なものがあり、できるだけ既存の規格(例:IEC 62264-2)を使って表すとしています。

部中身
1部 概要と原則用語を定め、現物を OME として、目的に合わせてモデルにする
2部 参照構造4つの領域と機能の単位(FE)でツインのしくみを示す
3部 デジタル表現OME の静的・動的な情報の基本の属性。既存の規格をできるだけ使う
4部 情報交換4つのネットワーク(利用者・サービス・アクセス・近接)と候補の規格

NIST は、5部(デジタルツインのためのデジタルスレッド)の実装例の計画と、7部として検証・妥当性確認・不確かさの定量化(VVUQ)の枠組みのガイドライン規格の新しい作業項目を紹介しています。

出典:Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)、Digital Twins for Advanced Manufacturing|NIST

主な標準の一覧

2008年のOPC UA公開、2021年のISO 23247-1〜4、2023年のIEC 63278-1、検討中のISO 23247-5・-7を時間軸に並べた図
図7 デジタルツインの主な標準
出典:OPC Foundation・IEC・NIST の発表をもとに AI(Claude)で作成
標準扱うことこのページ
ISO 23247-1〜4(2021年)製造のデジタルツインの枠組み(原則・参照アーキテクチャ・デジタル表現・情報交換)ISO 23247(製造のデジタルツインの枠組み)
IEC 63278-1:2023AAS(アセット管理シェル):資産の標準化したデジタル表現の構造。2023年12月14日発行つなぐ規格:OPC UA・AAS・MTConnect
OPC UA機器に依存しない通信とデータのモデル(2008年に公開)つなぐ規格:OPC UA・AAS・MTConnect
NIST IR 8356(2025年)デジタルツインのセキュリティと信頼性の考え方つなぐほど、セキュリティと信頼が要る

規格の本文は、それぞれの発行元から購入して確かめてください。

出典:IEC 63278-1:2023 Asset Administration Shell for industrial applications – Part 1|IEC Webstore、OPC Unified Architecture|OPC Foundation、NIST Releases NIST IR 8356, Security and Trust Considerations for Digital Twin Technology(2025)|NIST CSRC

研究:本当の「双方向」のツインはまだ少ない

Kritzinger らの論文(2018年)は、製造のデジタルツインの文献を DM・DS・DT に分け、最も進んだ段階の DT の文献は少ないとしています。Thelen らのレビュー(2022年)も、ツインの技術をデータの流れる向き(物理から仮想へ・仮想から物理へ)で分けて整理しています。

出典:Kritzinger, W. et al.: Digital Twin in manufacturing: A categorical literature review and classification, IFAC-PapersOnLine(2018)、Thelen, A. et al.: A Comprehensive Review of Digital Twin — Part 1(2022)|arXiv

研究:92本の文献から、13の特徴と7つのすき間

Jones らの系統的レビュー(2020年)は、過去10年の92本のデジタルツインの文献を分析し、13の特徴(物理の実体・仮想の実体・物理の環境・仮想の環境・状態など)にまとめ、効果の見え方・ライフサイクルをまたぐツイン・忠実度のレベル・データの所有などの7つの研究のすき間を挙げています。Fuller らのレビュー(2020年)は、デジタルツインを「物理と仮想の機械の間で、どちらの向きにもデータを無理なく統合すること」と表しています。

出典:Jones, D. et al.: Characterising the Digital Twin: A systematic literature review, CIRP J. Manuf. Sci. Technol.(2020)|ブリストル大学、Fuller, A. et al.: Digital Twin: Enabling Technologies, Challenges and Open Research, IEEE Access(2020)|arXiv

研究:中小企業ほど難しく、標準と検証が課題

NIST は、デジタルツインを正しく作るのは特に中小企業にとって難しく、大きな障壁は標準の不足(用語・設計・相互運用性・信頼性・検証の方法などの共通のルール)としています。NIST の別の報告(2021年)も、デジタルツインの考え方と実際の製造システムでの実装には多くの課題が残っており、特に中小企業で大きいとしています。

出典:Digital Twins for Advanced Manufacturing|NIST、Shao, G.: Use Case Scenarios for Digital Twin Implementation Based on ISO 23247, NIST AMS 400-2(2021)

企業紹介(デジタルツイン)

プラント、ロボットのセル、制御機器、工作機械、現況の3D計測、工場をまたぐデータの統合まで、デジタルツインの得意な層の違う会社を紹介します。技術ページ「IoT」「予知保全」「CAE」「3D CAD」「画像認識AI」で紹介した会社とは重なりません。掲載は各社の公開情報にもとづきます。各社のサイトの画像は使わず、公開されている情報をもとに図にしました。

相談する前に整理すること

デジタルツインの会社に相談するときは、次の点を整理しておくと話が早く進みます(編集部が整理した項目です)。

  • 目的:何を決めたいか(レイアウト・立ち上げ・保全・品質)
  • 対象:設備・ライン・工場・製品のどれか
  • 今あるデータ:PLC・CAD・点群・作業記録・稼働データ
  • 通信:設備がつながる規格(OPC UA・各社の通信)
  • 同期:どの速さで更新したいか
  • 忠実度:どこまで細かく写したいか
  • 予算と期間:まず小さく試す(PoC)範囲
  • 体制:作る人と、作ったあと直す人

困りごとごとの相談先

困りごと相談先の種類このページで紹介した会社
プラントの運転データを集めて、施策を事前に確かめたいプラントの制御・データ統合横河電機
ロボットのセルを仮想環境で作り込み、立ち上げを短くしたいロボットのシミュレーション安川電機
他社機器も含めて設備全体の動きを事前に確かめたい制御機器の3Dシミュレーションオムロン
工作機械のテスト加工を早く・仮想で見たい工作機械のメーカーDMG森精機
今の工場の形を3Dで正確にとりたい3D計測・点群構造計画研究所
工場・協力会社をまたいで生産データをまとめたい製造データの統合東芝
センサー・無線を後付けしたいIoT技術ページ「IoT」

各社の公式サイトと発表をもとに編集部が整理したものです。紹介は下にあります。

会社工場・
ライン
ロボット・
設備
工作
機械
プラント現況
3D
データ
統合
横河電機プラントのデジタルツイン(東京都武蔵野市)●●
安川電機ロボットのセルの仮想環境(福岡県北九州市)●●
オムロン設備全体の3Dシミュレーション(京都市下京区)●
DMG森精機デジタルツインテストカット(東京都江東区)●
構造計画研究所工場の現況の3D計測(東京都中野区)●●●
東芝工場をまたぐデータの統合(神奈川県川崎市)●●

●は、各社の公式サイトと発表で扱いを確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。

横河電機株式会社|プラントの運転データを集め、施策を事前に検証するデジタルツイン

横河電機とは

東京都武蔵野市に本社を置く会社です(1920年12月設立、創立は1915年9月)(同社の会社概要)。プラントの制御システムなどを扱っています。

横河電機の統合情報サーバ、事前の検証、8Dデジタルツインの3枚のカードの図
図8 横河電機のプラントのデジタルツイン
出典:横河電機の発表をもとに AI(Claude)で作成

横河電機の得意技術

技術内容
統合情報サーバ制御システムのプロセスデータに加え、設備や装置の運転状況・原料と完成品の在庫・エネルギー消費量などの操業データを、リアルタイムに自動で収集し、統一されたフォーマットに変換(同社の発表、2020年)
プラントのデジタルツイン統合したデータでプラントのデジタルツインを構築すれば、新たなソリューションやパラメータ設定の導入などの操業改善の施策を事前に検証できる(同社の発表)
8D デジタルツイン韓国(ソウル)の TIM Solution とグローバル販売契約(2024年)。ドキュメント・図面・スペーシャル(空間)・リアルタイム・コスト・メンテナンス・サステナビリティ・安全性の8次元でデータを統合。PaaS で提供(同社の発表)

横河電機が解決できる課題

  • ばらばらの制御・設備・在庫・エネルギーのデータを、同じ形式で集めたい
  • 運転条件の変更を、実プラントで試す前に確かめたい
  • 設計の図面・文書と運転・保守の情報を、設備の一生を通してつなぎたい

出典:会社概要|横河電機、統合情報サーバの発売について(2020年10月19日)|横河電機、TIM Solution とのデジタルツインのグローバル販売契約(2024年1月18日)|横河電機

株式会社安川電機|ロボットのセルをバーチャルに再現し、立ち上げとトラブル対応を早く

安川電機とは

福岡県北九州市に本社を置く会社です(1915年7月創立)(同社の会社の基本事項)。ロボットとモーション制御の機器を作っています。

安川電機のCell Simulator、Cockpit、考え方の3枚のカードの図
図9 安川電機の i³-Mechatronics とデジタルツイン
出典:安川電機の公式サイトをもとに AI(Claude)で作成

安川電機の得意技術

技術内容
YASKAWA Cell Simulatorバーチャル上に現場環境を構築し、デジタルツインを実現するエンジニアリングツール(同社のテクニカルレポート)
YASKAWA Cockpitロボットの関節のサーボモータから出る振動値・トルク値など100種類ものデジタルデータの稼働状況を視える化(同社のページ)
i³-Mechatronics次世代ものづくりのキーテクノロジーを「自律分散制御」「データ活用」「デジタルツイン」とする(同社のテクニカルレポート)

同社は、実際の生産ラインの稼働データを集めてバーチャル上のラインでシミュレーションし、効率のよい稼働条件を実際のラインへフィードバックする使い方を説明しています(同社のページ)。

安川電機が解決できる課題

  • ロボットのセルを、実機の前に仮想環境で作り込みたい
  • 生産時のトラブルを、バーチャル上で再現して早く解決したい
  • 計画と実行のずれを分析して、次の計画に反映したい

出典:会社の基本事項|安川電機、i³-Mechatronics によるデータを軸とした次世代ものづくり(テクニカルレポート)|安川電機、ロボットのデジタル化(デジタルツイン)|安川電機

オムロン株式会社|他社機器も含めた設備全体の3Dシミュレーション

オムロンとは

京都市下京区に本社を置く会社です(同社の発表)。制御機器・FA の機器を作っています。

オムロンのSysmac Studio 3Dシミュレーションの設備全体、工数、稼働後の3枚のカードの図
図10 オムロンの Sysmac Studio 3D シミュレーション
出典:オムロンの発表をもとに AI(Claude)で作成

オムロンの得意技術

技術内容
設備全体のシミュレーションロボット統合コントローラーで制御する自作のカスタムロボット(パラレルリンク機構・シリアルリンク機構)と、EtherCAT 接続の他社機器(電動シリンダー・電動チャックなど)を3Dシミュレーションに組み込める(同社の発表、2021年)
設計・検証の工数設備を立ち上げる前にデジタル上で動きを事前検証でき、設備設計や動作検証の工数を50%削減(2020年7月 同社調べ。同社で設備設計を行い従来の構築プロセスと比較)
稼働後実機の動作状況をデジタル上で確認・モニタリングし、異常時の原因解明までの時間を短くし、リモートでのプログラム修正を実現(同社の発表)

オムロンが解決できる課題

  • 自作のロボット機構や他社機器を含めて、設備全体の動きを事前に確かめたい
  • 設備の立ち上げ前に、動作検証の時間を短くしたい
  • 稼働後の異常の原因を、早く突き止めたい

出典:パートナー企業の制御機器を含めて製造現場のDX化を加速するシミュレーションソフトウェアを提供開始(2021年9月29日)|オムロン(共同通信PRワイヤー)

DMG森精機株式会社|工作機械まで写したデジタルツインテストカット

DMG森精機とは

東京都江東区にグローバル本社を置く工作機械の会社です(1948年10月設立。第二本社は奈良県奈良市)(同社の会社概要)。

DMG森精機のデジタルツインテストカットの再現するもの、精度、納期の3枚のカードの図
図11 DMG森精機のデジタルツインテストカット
出典:DMG森精機の発表をもとに AI(Claude)で作成

DMG森精機の得意技術

技術内容
再現するもの工具・加工素材・治具だけでなく、工作機械本体の物理特性までデジタル上で構築し、切削加工そのものを再現するテスト加工技術(同社の発表、2021年)
確認できること加工時の切削力や工具振動などの切削状態や面品位を、実際の工作機械で加工したときと同じように確認。実際の加工と比較した誤差精度はプラスマイナス数パーセント(同社の発表)
回答までの目安依頼から最短2営業日。ワーク1個あたりの加工時間が10分で2営業日、1時間で3営業日、10時間以上で5営業日(同社の発表)

同社は、世界中で年間約6,000件のテストカットを行い、そのノウハウをもとに、どのような治工具が必要か・加工精度を実現できるか・加工時間を短縮できないかを事前に検証しているとしています(同社の発表)。

DMG森精機が解決できる課題

  • 機械の空きを待たずに、テストカットの結果を早く知りたい
  • 必要な治工具・加工精度・加工時間を、加工の前に確かめたい
  • テスト加工の工具・素材・クーラントのむだを減らしたい

出典:会社概要|DMG森精機、デジタルツインテストカットの開始(2021年2月16日)|DMG森精機

株式会社構造計画研究所|工場の今の形を3D計測で写し、現況のデジタルツインに

構造計画研究所とは

東京都中野区に本所を置く会社です(1959年5月設立、創業は1956年)(同社の会社概要)。解析・シミュレーションなどの事業をしています。

構造計画研究所のNavVis VLX 3、NavVis IVION、連携の3枚のカードの図
図12 構造計画研究所の現況3D(NavVis)
出典:構造計画研究所の公式サイトをもとに AI(Claude)で作成

構造計画研究所の得意技術

技術内容
NavVis VLX 3広大な工場や物流施設でも、ミリ単位の精度ですばやくスキャンできる(同社のページ)
NavVis IVIONNavVis VLX で取得した現場のデータを閲覧する Web ビューワ。3次元空間上でさまざまな情報を一元的に管理。AWS の日本リージョンでのクラウドサービスを開始(同社の発表)
外部ソフトとの連携Point Streaming API で、必要な点群データだけを外部ソフトに連携。OpenUSD や NVIDIA Omniverse ベースのアプリケーションとも接続できる(同社のページ)

構造計画研究所が解決できる課題

  • 最新の図面と、今の工場の配置が違う
  • 稼働を止めずに、レイアウトの変更や動線を検討したい
  • 自動車工場・プラントの製造設備・生産ラインの検討や、維持保全業務を効率化したい

公開されている実績・用途

  • KION(ドイツ)の工場・倉庫の現況のデジタルツイン(NavVis と NVIDIA Omniverse の組み合わせ)を紹介(同社のページ)

出典:会社概要|構造計画研究所、NavVis IVION のクラウドサービスを日本国内のデータセンターにて提供開始|構造計画研究所、KION の事例(NavVis と NVIDIA Omniverse)|構造計画研究所

株式会社東芝|工場や協力会社をまたいで生産データを統合する Meister Factory

神奈川県川崎市に本店を置く会社です(1875年7月創業)(同社の会社概要)。製造業向けのデータ活用の製品は、東芝のサイトで紹介されています。東芝は2025年9月に、東芝デジタルソリューションズを2026年4月1日付で東芝に統合すると発表しています。

東芝のMeister Factoryシリーズの統合データモデル、DigitalTwin Connector、ダッシュボードの3枚のカードの図
図13 東芝の Meister Factory シリーズ
出典:東芝の公式サイトをもとに AI(Claude)で作成

東芝の得意技術

技術内容
製造業向けデジタルツインものづくりの知見から作り上げた統合データモデルで、IoT や各種システムのデータを、すぐに連携して活用できる形に統合管理(同社のページ)
Meister DigitalTwin Connector各工場に分散した生産データをオンラインで収集・結合し、工場を横断した統合管理を可能に。各工場が設定したデータの共有範囲内で、協力会社工場も含めて把握(2021年の発表。特許出願済)
ダッシュボード生産管理の標準指標である ISO 22400 などを参考にしたダッシュボード(2021年の発表)

東芝が解決できる課題

  • システムや設備にデータが点在していて改善に活かせない
  • 関連工場の状況がすぐに把握できない
  • マネジメント視点でのデータ活用ができていない

公開されている実績・用途

  • 東芝ライテック(全生産ラインのデータの集約・可視化)などの事例を掲載(同社のページ)

出典:会社概要 基本データ|東芝、東芝デジタルソリューションズ株式会社の当社への統合について(2025年9月2日)|東芝、Meister Factory シリーズ|東芝、Meister Factory シリーズの新バージョン(Meister DigitalTwin Connector)(2021年11月10日)|東芝デジタルソリューションズ

よくある質問

言葉としくみ

デジタルツインとは何ですか?
現物(工場・設備・製品など)のデータを集めてデジタルのモデルに写し、同期させ続けて、監視・予測・最適化に使うしくみです(デジタルツインの定義)。
デジタルツインとシミュレーションの違いは?
シミュレーションは代表の条件で予測する道具です。デジタルツインは、それを特定の現物の今の状態とつないで使い続けます(シミュレーション・CAE・IoT との違い:個別の現物と同期しているか)。
デジタルモデル・デジタルシャドウとの違いは?
現物とモデルの間のデータが両方向とも手作業ならモデル、現物からモデルへだけ自動ならシャドウ、両方向とも自動ならツインと説明されます(段階:デジタルモデル・シャドウ・ツイン)。
IoT とデジタルツインの違いは?
IoT はデータを集める手段で、デジタルツインは集めたデータでモデルを現物に合わせ続けて使う考え方です。IoT はツインの部品の一つです(どのページを読めばよいか)。
どのくらいの速さで同期すればよいですか?
ISO 23247 では、同期の速さは用途が決めます。制御なら速く、計画なら1日ごとでも足ります(同期の速さは用途で決める)。

使い方・費用・導入

工場ではどんな使い方がありますか?
レイアウト・搬入ルート、ラインの能力、仮想立ち上げ、人とロボットの作業の分け方などです(使い方:工場・生産ラインと、設備・製品)。
費用はどのくらいかかりますか?
対象と忠実度で大きく変わります。構築費と更新費を、1回あたりの効果×使う回数で回収できるかで考えます(費用の考え方と計算例)。
中小企業でも作れますか?
静岡県工業技術研究所は、市販の LiDAR スキャナ・ゲームエンジン・生産シミュレーターを使った中小企業版のデジタルツインを提案しています(事例:中小企業版のデジタルツイン:LiDAR とゲームエンジンで工場を再現(静岡県工業技術研究所、令和4〜6年度))。
関係する規格は?
製造の枠組みの ISO 23247(2021年)、資産のデジタル表現の AAS(IEC 63278-1:2023)、通信の OPC UA などです(標準(ISO 23247・AAS・OPC UA)と研究)。
よくある失敗は?
目的が決まらないまま作る、データがそろわない、モデルと現場が合わない、作った人しか直せない、などです(よくある失敗と、まず疑うところ)。

回答は、このページの出典をもとに編集部がまとめたものです。

課題このページでの解決課題ページ
生産ラインをデジタルツインで事前に検証したい工場・ラインでの使い方(使い方:工場・生産ラインと、設備・製品)バーチャルコミッショニング
ロボットの立ち上げ・ティーチングの手間を減らしたい仮想の環境でロボットを試す(仮想立ち上げ(バーチャルコミッショニング))オフラインティーチング
作る前に性能を予測したい解析とツインの違い(シミュレーション・CAE・IoT との違い:個別の現物と同期しているか)構造解析
試作回数を減らしたい仮想でのテスト加工(工作機械:仮想のテスト加工)解析で候補を絞る
工場内の搬送を自動化したいレイアウトと動線の検討(レイアウト・搬入ルート・動線)台数とシステム
工場の電力を減らしたい稼働とエネルギーのデータの統合(プラント:運転データを集めて施策を事前に確かめる)電力の見える化

右の列は、関係する課題ページ(対策の節)へのリンクです。

出典・確認日

※製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。本ページでは数値と事実だけを要約し、各社の文章・図は転載していません。費用の計算例は、説明のための仮の値で編集部が計算したもので、実際の価格ではありません。各社の効果の数値は、その会社・機関の発表によるものです。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。

情報の確認日:2026年10月22日 本ページの内容は一般的な情報です。各社の製品・サービスの内容は変わることがあるので、導入の前に各社に確かめてください。規格の内容は、各規格の最新版で確かめてください。

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