冬になると、電子部品の不良が増える。成形品やフィルムにほこりが付いて取れない。シートがローラーに巻き付く。作業者がバチッとくる。粉体を扱う所で、放電による着火が心配。こうしたトラブルの多くは、物や人にたまった静電気が原因です。
静電気の対策は、帯電しているのが金属か樹脂か人かで、効く方法が変わります。困っている症状(部品の破壊、ほこりの付着、搬送、着火、原因が分からない)から、次のマトリクスで使える対策を確かめてください。
課題と解決技術のマトリクス
| 課題(症状) | 除電器(イオナイザー) | 接地と作業者の対策(導電床・導電靴・リストストラップ) | 帯電しにくい材料(導電性・帯電防止の樹脂・フィルム・袋) | 湿度の管理(加湿) | 測って管理する(表面電位・帯電の分布・抵抗の点検) |
|---|---|---|---|---|---|
| A電子部品・基板が静電気で壊れる・誤作動する | ○ | ◎ | ○ | △ | ○ |
| Bほこり・異物が製品に付く | ◎ | △ | ○ | ○ | ○ |
| Cフィルム・シート・部品がまとわりつく・うまく流れない | ◎ | △ | ○ | ○ | ○ |
| D粉体・溶剤の近くで、放電や着火が心配 | △ | ◎ | ◎ | △ | ○ |
| Eどこで帯電しているか分からない・対策しても効かない | ○ | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
※記号は一般的な傾向に基づく目安です。どの対策が合うかは、帯電しているものが導体か絶縁体か、場所の湿度、可燃物の有無、作業のしかたによって変わります。症状Aの「接地と作業者の対策」の「◎」は、電子部品を扱う手作業の工程では、導電床・導電靴・リストストラップで人体の静電気を逃がし、人体からの静電気放電による不具合や破壊を防ぐとする説明(ベッセル)、「除電器」の「○」は、電子部品・電子機器の静電気・異物対策を用途に挙げる除電器があること(TRINC)、「帯電しにくい材料」の「○」は、導体が使えない場合は導電性材料の用品に代えて接地するとする記述(静電気安全指針)、「湿度の管理」の「△」は、湿度が高いと帯電電圧が下がる一方(村田製作所)、結露やさびの悪影響があること(キーエンス)、「測って管理する」の「○」は、静電気対策をしても起きる IC や基板の不具合で放電の位置を探す装置があること(阪和電子工業)を示します。症状Bの「除電器」の「◎」は、除電器とエアで吹く方法を併用すると再付着を防げるとする説明(キーエンス)と、異物の付着数を99%減らした事例(TRINC)、「接地」の「△」は、導体に付くほこりは静電誘導で引き寄せられ、ほこりの側を除電する必要があること(キーエンス)、「帯電しにくい材料」の「○」は、絶縁体は導電化で対策するとする説明(キーエンス)、「湿度の管理」の「○」は、吸湿性のある不導体は加湿で表面抵抗が下がり電荷が逃げやすくなること(静電気安全指針)、「測って管理する」の「○」は、表面電位計で帯電の大きさを測れること(キーエンス)を示します。症状Cの「除電器」の「◎」は、トラブルの箇所を狙って除電するとする説明(キーエンス)、「接地」の「△」は、ローラーなどの導体は接地で除電できるが、樹脂などの絶縁体には効果がないこと(キーエンス)、「帯電しにくい材料」の「○」は、材質の変更も静電気の除去に有効な方法の1つとする説明(キーエンス)、「湿度の管理」の「○」は、紙は湿度管理で対策するとする説明(キーエンス)、「測って管理する」の「○」は、金属のローラーの近くでは見かけ上の値になることを踏まえて、測る場所を選ぶ必要があること(キーエンス)を示します。症状Dの「接地」「帯電しにくい材料」の「◎」は、接地・ボンディングと不導体の排除(導電性の容器・袋などを使って接地)を静電気災害の防止の基本とする記述(静電気安全指針)、「除電器」の「△」は、除電器はほかの対策との併用が原則で、除電器も着火源になりうること、「湿度の管理」の「△」は、粉体では通常の50〜65%の湿度では電荷の緩和は期待できず、70%以上で多くの粉体の表面抵抗が下がるとすること(どちらも静電気安全指針)、「測って管理する」の「○」は、静電電位の監視装置や防爆関連の製品があること(春日電機)を示します。症状Eの「接地」の「○」は、床・靴・リストストラップの抵抗を定期的に点検する管理値の例(ベッセル)、「測って管理する」の「◎」は、帯電の分布や放電の位置を見えるようにする装置(阪和電子工業)と、表面電位計などで測る方法(キーエンス)を示します。◎は、業界の資料や企業の情報で、その症状に直接はたらくとされている方法、○は効果が期待できる方法、△は条件によって有効な方法を示します(記号の根拠は、下の「解決技術の詳細」と企業紹介の各出典です)。空欄は、その方法だけでは直接の対策になりにくいことを示します。
課題の診断と解決策
困っていること(部品の破壊、ほこりの付着、搬送のトラブル、着火の心配、原因が分からない)から、まず試す対策の見当をつけられます。症状ごとの詳しい見方は、下のカードで確かめてください。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
電子部品・基板が静電気で壊れる・誤作動する
組み立てや検査の工程で、部品や基板が壊れる。冬になると不良が増える。

- 起きている現象
- 人は約3kV くらいから電撃を感じるとされます(村田製作所・静電気安全指針)。一方で、キーエンスの解説は参考値として、MOS 半導体では約80〜100V の電圧がかかるだけで機能を失う可能性があるとしています。人が何も感じない程度の帯電でも、部品は壊れることがあります。放電の原因になる帯電体には、作業者、装置、部品そのものがあります(人体帯電モデル HBM・マシンモデル MM・デバイス帯電モデル CDM)。
- 解決に使える技術
- 作業者と導体を接地する導電床・導電靴・リストストラップ、金属の治具の接地
- 絶縁物を除電する接地できない樹脂のケース・トレーなどは除電器で
- 放電の場所を探す対策しても起きる不具合は、測って原因を探す
接地は、樹脂などの絶縁体には効果がありません(キーエンス)。作業台の上の樹脂のトレーなどは、除電器や帯電しにくい材料で対策します(編集部の解説)。部品の静電気への強さは種類で大きく違うので、扱う部品のデータシートで確かめます(編集部の解説)。
ほこり・異物が製品に付く
成形品やフィルム、レンズ、基板にほこりが付いて外観不良になる。エアで吹いても、すぐにまた付く。

- 起きている現象
- 帯電した物は、ほこりを引き寄せます。キーエンスの解説は、絶縁体には逆の極性に帯電したほこりがクーロン力で付き、導体には静電誘導で付くとしています。帯電したフィルムの例の試算では、直径1μm 程度のほこりが、重力のおよそ1,200〜1,700倍の力で引き付けられるとしています。エアで吹き飛ばしても、静電気が残っていれば、また付きます。
- 解決に使える技術
- 除電しながら吹き飛ばす除電器とエアを併用し、再付着を防ぐ
- 作業空間をまとめて除電する空間除電で、浮いているほこりの静電気も中和する
- 帯電しにくい材料にする包装・トレー・治具を帯電防止の材料に
付く相手が絶縁体(樹脂・フィルム)なら物の側を、導体なら異物の側を除電する、というように対策の向きが変わります(キーエンス)。異物の正体や入ってくる経路が分からない場合は、課題「異物が混入する」も参考にしてください(編集部の解説)。
フィルム・シート・部品がまとわりつく・うまく流れない
フィルムがローラーに巻き付く、シートが重なって離れない、パーツフィーダで部品が浮いて流れない、塗布の位置がずれる。

- 起きている現象
- キーエンスの解説は、搬送のトラブルを、引き合う力と反発する力に分けています。シートとローラーが引き合うとシートがロールに貼り付いて巻き込み、部品とレールが同じ極性に帯電すると反発して部品が浮き、パーツフィーダの振動が伝わらなくなるとしています。フィルムの巻き出しのように同じ素材が連続する工程では、はがすときの帯電(剥離帯電)がたまっていきます。
- 解決に使える技術
- トラブルの場所を狙って除電する巻き込む手前、はがした直後など
- 帯電しにくい材料にするフィルム・シートを帯電防止品にする
- 湿度を上げる紙など吸湿性のあるものは加湿が効く
裏側に金属のローラーがある所では、静電誘導で見かけ上は除電されたように見え、測っても低い値になります(キーエンス)。除電器は、金属から離れた所に置きます。
粉体・溶剤の近くで、放電や着火が心配
粉体を袋や容器に移す、溶剤を扱う、空気で粉体を送る。静電気の放電で着火しないか心配。

- 起きている現象
- 静電気安全指針は、最小着火エネルギーの範囲をおおまかに、ガス・蒸気では0.001〜1mJ、粉じんでは1.0〜5,000mJ 程度としています。人が感じる程度の放電でも、着火源になりえます。労働安全衛生総合研究所の報告は、化学工場などの危険物施設の火災(平成24年〜令和3年、2,049件)で、着火の原因は静電気放電が最多(338件、16.5%)だったとする白書の値を紹介しています。
- 解決に使える技術
- 導体を接地・ボンディングする浮いた金属をなくし、作業者も接地する
- 導電性・帯電防止の容器や袋にする絶縁物を減らす(不導体の排除)
- 除電器は併用で使う危険な場所では防爆型を選ぶ
可燃性のガス・粉じんがある場所での静電気対策は、労働安全衛生総合研究所の「静電気安全指針」が技術的なよりどころです。除電器も着火源になりうるので、危険な場所で使うときはリスクアセスメントを行い、防爆型を選ぶなどの対策が必要としています。専門家への相談を前提にしてください(編集部の解説)。
どこで帯電しているか分からない・対策しても効かない
除電器を付けたのに不良が減らない。冬になると不良が増えるが、どこが原因か分からない。

- 起きている現象
- キーエンスの解説は、帯電の大きさは電圧で表し、表面電位計などで測るとしています。測る距離が基準と違うと値が狂い、対象がセンサーの検出範囲より小さいと低く出るとしています。対策が効かない理由には、除電器の針の汚れや摩耗、接地の外れや汚れもあります(キーエンス)。
- 解決に使える技術
- 帯電の場所と大きさを測る工程の前後で測り、帯電が増える所を探す
- 帯電の分布・放電の場所を見る面で測る、放電の位置を探す装置
- 接地と用品を点検する床・靴・リストストラップの抵抗を定期的に測る
冬に不良が増えるなら、湿度の記録と不良の記録を並べて見ると、静電気が関係しているかの見当がつきます(編集部の解説)。対策のあとも、同じ場所でもう一度測って、効いているかを確かめます。
なぜ、静電気のトラブルが起きるのか
ふれる・こする・はがすときに、電気がかたよる

静電気は、2つの物がふれたり、こすれたり、はがれたりするときに、片方からもう片方へ電気(電子)が移って起きます(キーエンス)。大阪府立産業技術総合研究所(現 大阪産業技術研究所)の技術シートは、帯電量は「電荷の発生量」から「漏えい量」を引いたものとし、繊維や高分子の材料は電気を通しにくいので、発生しやすく、逃げにくいとしています。

出典:キーエンス「静電気の発生原因」・大阪府立産業技術総合研究所 技術シート No.98006・静電気安全指針 2007をもとに AI(Claude)で作成
金属などの導体は、接地すれば電気がすぐに逃げます。樹脂などの絶縁体には、接地の効果がありません(キーエンス)。静電気安全指針は、接地で静電気の帯電を防げるのは、体積抵抗率が10⁸Ω·m 以下、表面抵抗率が10¹⁰Ω 以下の材料でできた物だとしています。
乾いた季節に、トラブルが増える

同じ技術シートは、カーペットを歩いたときの人体の帯電圧は、相対湿度が下がるにつれて指数関数的に大きくなり、20%RH では10kV 以上になる場合もあるとし、静電気のトラブルは夏より湿度の下がる冬に多いとしています。村田製作所の解説は、相対湿度が高いとき(65〜90%)と低いとき(10〜20%)の帯電電圧の例を示しています。

出典:村田製作所「静電気とは?基礎知識と ESD 対策」をもとに AI(Claude)で作成
起きること:部品の破壊、ほこりの付着、搬送のトラブル、着火
人が電撃を感じるのは約3kV からとされます。静電気安全指針は、3kV で「針で刺された感じを受け、ちくりと痛む」、4kV で「指がかすかに痛む」、放電の発光が見えるとしています。一方、部品は、もっと低い電圧で壊れることがあります(キーエンス)。

出典:キーエンス「静電気破壊対策 Q&A」・静電気安全指針 2007をもとに AI(Claude)で作成
帯電した物は、まわりのほこりを引き寄せます。導体か絶縁体かで、付くしくみと対策の向きが変わります(キーエンス)。

出典:キーエンス「異物付着対策の Q&A」をもとに AI(Claude)で作成
搬送では、引き合う力と反発する力の両方がトラブルになります。SMC の解説は、静電気が起こすトラブルとして、塗装のむら、成形品の排出ミス、シートの複数枚吸着、フィーダの詰まりなどを挙げています。

出典:キーエンス「搬送トラブル」をもとに AI(Claude)で作成
可燃性のガス・蒸気・粉じんがある所では、静電気の放電が着火源になります。労働安全衛生総合研究所の報告は、静電気に起因する火災は毎年100件程度発生し、帯電物体は衣類(約19%)、液体(約15%)、粉体(約12%)が主なものだとする火災年報の値を紹介しています。

出典:静電気安全指針 2007・労働安全衛生総合研究所 JNIOSH-SRR-No.53をもとに AI(Claude)で作成
原因の切り分け方
次は編集部の整理です。まず、表面電位計などで、どこが、どちらの極性に、何V 帯電しているかを測ります。工程の前後で測ると、帯電が増える場所がわかります。帯電しているのが導体(金属の治具・台・ローラー)なら接地、絶縁体(樹脂・フィルム・紙)なら除電器・材料・湿度、人なら床・靴・リストストラップが、まず試す対策です。

出典:キーエンス「静電気の測定」「アースへの接続」と、この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
出典:静電気安全指針 2007(JNIOSH-TR-No.42)|労働安全衛生総合研究所、技術シート No.98006「繊維・高分子材料の帯電性とその評価方法」(1998年)|大阪府立産業技術総合研究所(現 大阪産業技術研究所)、静電気とは?基礎知識と ESD 対策|村田製作所、静電気の発生原因|キーエンス、静電気破壊対策 Q&A|キーエンス、異物付着対策の Q&A|キーエンス、搬送トラブル|キーエンス、塗布・印字トラブル|キーエンス、静電気トラブル|SMC、高引火点引火性液体ミストの静電気放電による着火危険性の調査(JNIOSH-SRR-No.53、2023年)|労働安全衛生総合研究所
解決技術の詳細
静電気の対策は、大きく5つに分けられます。静電気安全指針は、静電気災害の防止の基本を、接地・ボンディング、不導体の排除、作業者の接地などとし、除電器はほかの対策との併用を原則としています。どの対策も、測って効果を確かめながら進めます。
除電器(イオナイザー)

除電器は、空気をイオンにして、帯電した物に逆の極性のイオンを届けて電気を打ち消す装置です。接地できない絶縁体の除電に使います。静電気安全指針は、針に5〜10kV 程度の電圧をかける電圧印加式、接地した針や導電性の繊維を使う自己放電式、軟X線で空気を電離する軟X線式などを挙げています。

出典:キーエンス「除電器の方式による性能」・同「設置の注意点」・同「メンテナンス」・静電気安全指針 2007をもとに AI(Claude)で作成
キーエンスの解説は、電圧のかけ方の違いで、向く距離や除電の速さ、イオンバランス(プラスとマイナスのイオンの量のつり合い)が変わるとしています。設置では、除電器と金属体を200mm 以上離す必要があるとしています。針の先には空気中の粒子や二酸化ケイ素などが付いて汚れ、イオンの発生量が減って除電が遅くなり、イオンバランスも崩れます。アルコールを浸した綿棒で拭き取る清掃は、2週間程度ごとが目安とされ、針そのものも摩耗するので交換が必要です(タングステンの針で約2年)。
接地と作業者の対策(導電床・導電靴・リストストラップ)
導体は、接地すれば静電気が逃げます。静電気安全指針は、接地・ボンディングが必要なのは導体で、プラスチックの配管の上の金属のフランジや絶縁性の床の上の金属ドラムのように、電気的に浮いた金属をなくすことを挙げています。

出典:静電気安全指針 2007・キーエンス「アースへの接続」をもとに AI(Claude)で作成
人の対策では、静電気安全指針は、作業者の漏えい抵抗を10⁸Ω 以下にして、帯電電位を100V 以下にする必要があるとし、人体の漏えい抵抗は主に靴の抵抗と床の漏えい抵抗の和なので、床と靴の導電化が必要だとしています。腰掛けた作業のように動く範囲が限られる場合は、リストストラップによる接地も有効としています。接地の効果は、接続のゆるみや汚れで落ちます(キーエンス)。
帯電しにくい材料(導電性・帯電防止の樹脂・フィルム・袋)
絶縁体を、電気を逃がしやすい材料に替える方法です。導電性の材料は、カーボンブラックや金属粉などを混ぜて導電性を高めたゴムやプラスチックです(静電気安全指針)。表面抵抗率の区分の例として、山形大学の資料は、導電性は10⁵Ω まで、静電気拡散性は10⁵〜10¹²Ω、絶縁性は10¹²Ω 以上としています(区分の境目は資料によって違います)。

出典:山形大学 杉本俊之「非接触型表面抵抗率測定技術」・静電気安全指針 2007・テクノスタット工業の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
静電気安全指針は、帯電防止剤は主に界面活性剤を主成分とし、絶縁体の表面に親水性を与えて吸湿性を増すことなどで帯電を防ぐもので、帯電防止の性能は湿度の影響を受け、相対湿度が40〜50%以下になると効果が低下するとしています。また、導電性材料の性能は環境に影響されることがあるので、相対湿度を50%以下にして導電性を定期的に点検することが望ましいとしています。湿度の影響が少ない高分子型の材料を使ったフィルムもあります(テクノスタット工業)。
湿度の管理(加湿)

吸湿性のある絶縁体は、加湿すると表面の抵抗が下がり、電気が逃げやすくなります。静電気安全指針は、加湿するときは相対湿度を50〜65%程度にするとしています。キーエンスの解説は、一般的に相対湿度が65%を超えると静電気は発生しにくくなる目安とし、注意点として結露やさびによる機械への悪影響、広い範囲を同じ条件で管理するコストを挙げています。
湿度が効かない場合もあります。静電気安全指針は、粉体では通常の50〜65%の湿度では電荷の緩和は期待できず、70%以上で多くの粉体の表面抵抗が下がるが、低速の空気輸送や常温の工程にしか使えないとしています。工場によっては湿度を上げられない場合もあり、その場合は除電器などを使います(TRINC)。
測って管理する(表面電位・帯電の分布・抵抗の点検)

静電気は目に見えないので、測ってから対策を選び、対策のあとも測ります。キーエンスの解説は、帯電の大きさは電圧で表し、ハンディ型やラインに設置する型の表面電位計で測るとしています。測る距離が基準と違うと値が狂う、対象がセンサーの検出範囲より小さいと低く出る、という注意があります。帯電の分布を面で測る装置や、放電が起きた位置を探す装置もあります(阪和電子工業)。
接地や床・靴の対策は、時間がたつと効果が落ちます。床・靴・リストストラップの抵抗は、点検の頻度と管理値を決めて測り、記録します(ベッセル)。静電気安全指針は、試料の測定では温度と湿度を記録するとしています。
出典:静電気安全指針 2007(JNIOSH-TR-No.42)|労働安全衛生総合研究所、除電器(イオナイザ)の方式による性能|キーエンス、除電器の設置の注意点|キーエンス、除電器のメンテナンス|キーエンス、アースへの接続|キーエンス、湿度管理|キーエンス、静電気の測定|キーエンス、非接触型表面抵抗率測定技術|山形大学 杉本俊之
静電気のトラブルを防ぐ技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。除電、接地と作業者、材料、測定のどこで困っているかによって、合う相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| TRINC | 除電器メーカー | 作業空間をまるごと除電し、静電気で付くほこり・異物を減らす。加湿したくない現場の乾燥期の不良にも。 | B ほこり・異物が製品に付く | |
| ヒューグルエレクトロニクス | 除電器・測定器 | イオンバランスを自動で制御するバー型の除電器。近距離から遠距離まで距離に合わせて除電し、放電針の汚れの管理も。 | C フィルム・シート・部品がまとわりつく・うまく流れない | |
| 春日電機 | 除電器・測定器 | 除電器・静電気測定器・接地の監視をそろえる。フィルムの加工ラインや風を嫌う粉体の工程の除電、人や物の帯電電位の測定。 | A 電子部品・基板が静電気で壊れる・誤作動する B ほこり・異物が製品に付く C フィルム・シート・部品がまとわりつく・うまく流れない D 粉体・溶剤の近くで、放電や着火が心配 E どこで帯電しているか分からない・対策しても効かない | |
| 阪和電子工業 | 測定・検査装置 | 帯電の分布を面で見えるようにし、放電がいつ・どこで起きているかを調べる。部品の静電破壊への耐性の評価も。 | A 電子部品・基板が静電気で壊れる・誤作動する E どこで帯電しているか分からない・対策しても効かない | |
| テクノスタット工業 | フィルム・包装材 | 帯電防止・導電性のフィルムと粉体用の袋。湿度が低くても帯電防止の性能が落ちにくい包装。 | B ほこり・異物が製品に付く C フィルム・シート・部品がまとわりつく・うまく流れない D 粉体・溶剤の近くで、放電や着火が心配 | |
| ベッセル | 作業工具・静電気対策品 | 床・靴・リストストラップの静電気対策と、点検の頻度・管理値の決め方。手作業の工程の人からの放電を防ぐ。 | A 電子部品・基板が静電気で壊れる・誤作動する D 粉体・溶剤の近くで、放電や着火が心配 E どこで帯電しているか分からない・対策しても効かない |
株式会社TRINC|作業空間をまるごと除電し、静電気で付く異物を減らす
TRINCとは
TRINC(トリンク)は、静岡県浜松市中央区に本社がある、除電器(イオナイザー)のメーカーです(1991年設立。1999年に自社ブランドの除電器を開発)。
TRINCの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 空間除電(空間トリンク) | 作業空間をイオンで満たし、空間全体を除電する。イオン量を検知するセンサーを内蔵し、プラスとマイナスのイオンが同数出るようにしているとしている |
| 加湿に頼らない除電 | 工場によっては湿度を上げられない、水分が品質に悪影響を及ぼす場合があるとして、イオンによる中和で湿度不要の乾燥環境での静電気対策を確立したとしている |
| バー型・ガン型の除電器 | バートリンク、ガントリンクなど、場所に合わせた形の除電器もそろえている |
TRINCが解決できる課題
- 静電気でほこり・異物が製品に付く
- 乾燥する季節に静電気の不良が増えるが、加湿はしたくない
- クリーンルームを作らずに、作業場所の異物の付着を減らしたい
公開されている実績
- プリント基板メーカーの中国工場で空間トリンクを導入し、効果が顕著なエリアで異物の付着数が23万個から1,500個へ(99%削減)になったとしている
- 事例の一覧には、光学機器・自動車の塗装前の研磨・樹脂ペレットなどの工程の事例がある

出典:TRINC「プリント基板加工時の付着異物が99%減少」
出典:会社概要・沿革|TRINC、空間トリンク|TRINC、プリント基板加工時の付着異物が99%減少|TRINC
ヒューグルエレクトロニクス株式会社|イオンバランスを自動で制御するバー型の除電器
ヒューグルエレクトロニクスとは
ヒューグルエレクトロニクスは、東京都千代田区に本社がある会社です(1969年に米国ヒューグルインダストリーズ社の極東支社として発足し、1971年に設立)。半導体・フラットパネルの製造関連機器、除電器と静電気測定機器、半導体容器の洗浄装置などを手がけています。
ヒューグルエレクトロニクスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| フレキシブル AC 方式の除電器(MODEL 4100V) | 本体の底面のイオン量センサーで帯電状態とイオンバランスを測り、印加電圧を制御して除電効率を上げる方式としている |
| 距離に合わせた周波数の切り替え | 周波数を11段階(40Hz〜0.08Hz)で切り替え、搬送中などの近距離からクリーンブースなどの遠距離まで除電するとしている |
| 汚れにくさとメンテナンス | 周囲のエアーで針先にゴミを寄せ付けにくい構造とし、放電針のクリーニングの時期を3段階で設定して、警報も出せるとしている |
ヒューグルエレクトロニクスが解決できる課題
- 除電器のイオンバランスの片寄りを抑えたい
- 搬送中などの近距離から、クリーンブースなどの遠距離まで、距離に合わせて除電したい
- 放電針の汚れによる性能の低下を、手間をかけずに管理したい

出典:ヒューグルエレクトロニクス「MODEL 4100V」
出典:会社概要|ヒューグルエレクトロニクス、フレキシブル AC 式イオナイザバー MODEL 4100V|ヒューグルエレクトロニクス
春日電機株式会社|除電器・静電気測定器・接地の監視をそろえる
春日電機とは
春日電機は、神奈川県川崎市幸区に本社がある、静電気の対策機器のメーカーです(1955年設立。1956年に静電気除去装置の製造販売を始めた)。
春日電機の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 用途ごとの除電器 | バー・ファン・ノズル・コンパクト(無風)・ガン・防爆・真空対応・自己放電タイプなどをそろえる。コンパクトタイプ KD-110/KD-110SI は直流コロナ放電式で、オゾン発生量は 0.02ppm 以下(300mm)、粉体など風を嫌う工程での無風の除電に使うとしている |
| 静電気の測定器 | 表面電位測定器、人体電位測定器、チャージプレートモニタ、電荷量測定器などをそろえている |
| 接地と監視 | 静電電位監視装置などを扱う。沿革では、1960年にフィルムの除電除塵装置を販売開始し、接地の監視の「見まもるアース」が2014年に消防防災科学技術賞の優秀賞を受けたとしている |
春日電機が解決できる課題
- フィルムの加工ライン(コーター・スリッター・押出など)で、除電・除塵をしたい
- 風を嫌う粉体の工程で除電したい
- 人や物の帯電電位を測って管理したい
公開されている実績
- コーター、スリッター、押出ライン、インフレーション成形などの工程の実用事例を公開している

出典:春日電機の製品ページ・KD-110/KD-110SIをもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要・沿革|春日電機、コンパクトタイプ静電気除去装置(KD-110/KD-110SI)|春日電機、静電気測定器|春日電機、実用事例|春日電機
阪和電子工業株式会社|帯電の分布と放電の場所を見えるようにする
阪和電子工業とは
阪和電子工業は、和歌山県和歌山市に本社がある、半導体の評価用の測定器・検査装置のメーカーです(1966年に阪和電研所として発足、1976年に株式会社として設立)。
阪和電子工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 静電気可視化モニタ | ハンディタイプの HSK-5064 は、64個のセンサで 100mm×100mm を同時かつ高速に測定し、帯電の形や時間による動きをリアルタイムで見られるとしている。据え付け型のバータイプもある |
| 放電位置可視化モニタ(試作開発品) | 4本のアンテナで受けた電磁波の時間差から、静電気放電が起きた位置を3次元的に解析するとしている。24時間の無人の連続計測ができ、鹿児島県工業技術センターの特許技術をもとに共同で開発したとしている |
| 半導体の静電破壊の試験装置 | ESD・TLP の試験装置など、半導体の静電破壊の評価装置を手がけている |
阪和電子工業が解決できる課題
- どこがどれだけ帯電しているかを、面で見えるようにしたい
- 静電気対策をしても起きる IC や基板の不具合で、放電がいつ・どこで起きているかを知りたい
- 部品の静電破壊への耐性を評価したい

出典:阪和電子工業「静電気可視化モニタ」・同「放電位置可視化モニタ」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要・沿革|阪和電子工業、静電気可視化モニタ|阪和電子工業、放電位置可視化モニタ|阪和電子工業
株式会社テクノスタット工業|帯電防止・導電性のフィルムと粉体用の袋
テクノスタット工業とは
テクノスタット工業は、栃木県那須塩原市に本社・工場がある、機能性の包装用プラスチックフィルムのメーカーです(2000年設立)。
テクノスタット工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 粉体用の袋 STAT-FDM | ドラム缶の内袋(25kg 入り用)。表面抵抗率は内面 8.9×10¹¹Ω/□、5000V をかけて1%まで下がる減衰時間は内面 0.2秒(23℃・相対湿度12%)と公表している。低温・高温・高温高湿や、擦れ・拭き取り・水濡れのあとも性能を保つとしている |
| 帯電防止フィルム | 高分子型の非帯電樹脂を使ったフィルムは、表面抵抗値が10⁸Ω台(23℃・50%RH)で、帯電防止剤の移行の心配がなく、湿度依存性が少ないとしている |
| 導電性のフィルム・袋 | 導電性ラミネートフィルム(表面抵抗 10⁴〜10⁵Ω)、カーボンを練り込んだ袋、カーボンナノチューブを使った袋などがある |
テクノスタット工業が解決できる課題
- 粉体を袋や容器に詰めるとき、静電気の放電による粉じん爆発を防ぎたい
- 湿度が低くても帯電防止の性能が落ちない包装にしたい
- 帯電防止剤が中身に移るのを避けたい

出典:テクノスタット工業「STAT-FDM」・同「帯電防止フィルム」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|テクノスタット工業、粉体用静電気放電粉塵爆発防止袋 STAT-FDM|テクノスタット工業、帯電防止フィルム|テクノスタット工業、導電性フィルム|テクノスタット工業
株式会社ベッセル|床・靴・リストストラップの静電気対策と点検の管理値
ベッセルとは
ベッセルは、大阪市東成区に本社がある、ドライバーなどの作業工具のメーカーです(1916年創業)。静電気対策品も扱い、静電気対策の解説サイト「静電気ゼロナビ」を公開しています。
ベッセルの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 床の静電気対策 | 導電性のシート・タイルや導電性塗料を使い、床材はアース線付きの銅板などで「面」で接地する。アース線を床材に直接つなぐのは禁止(抵抗値が上がり、接地経路も確認できないため)としている |
| 作業者の静電気対策 | 導電靴は導電床と組み合わせる。常時作業する場合は導電床と導電靴の組み合わせを推奨し、どちらかが不足する場合はリストストラップを必ず装着するとしている |
| 点検の管理値 | 床・マットは3か月に1回、7.5×10⁵≦Rg≦1×10⁹Ω、導電靴は1日1回、1×10⁵≦Rg≦1×10⁸Ω、リストストラップは1日2回などの点検規格を示している |
ベッセルが解決できる課題
- 作業場の床・靴・リストストラップの組み合わせ方を決めたい
- 静電気対策の用品が効いているかを、定期的に点検したい
- 電子部品を扱う手作業の工程で、人からの放電による不具合を防ぎたい

出典:ベッセル「静電気対策のポイント〜床〜」
出典:会社概要|ベッセル、静電気対策のポイント〜床〜|ベッセル 静電気ゼロナビ、静電気対策のポイント〜作業者〜|ベッセル 静電気ゼロナビ
選ぶ前に確かめる条件
相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。
- 困っている症状(部品の破壊・誤作動、ほこりの付着、搬送のトラブル、着火の心配)と、起きる工程
- 帯電しているもの(金属、樹脂・フィルム・紙、粉体、人)と、その大きさ・形
- 測った帯電の大きさ(どこで、どちらの極性で、何V か)。測っていなければ、その旨
- 季節や湿度による変化(冬に増えるか)と、工場の湿度を上げられるか
- 可燃性のガス・溶剤・粉じんがあるか(防爆の区分)
- 除電器を置ける場所と距離、近くの金属、エアを使えるか
- 扱う部品の静電気への強さ(データシートの値)と、守るべき規格・顧客の要求
関連する課題
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月2日





