絶縁体とは(導体・半導体との違い・絶縁材料の種類・耐熱クラス)

磁器のがいし、電線の断面、ポリイミドフィルム、樹脂のブロックを並べたイメージ画像

電線のまわりのビニル、コンセントのプラスチック、電柱の白いがいし。どれも電気を通しにくい「絶縁体(ぜつえんたい)」です。このページでは、絶縁体とは何か、導体・半導体との違い、電気が流れない理由(バンドギャップ)、電気抵抗率の大きさ、絶縁材料の種類(気体・液体・固体)、耐熱クラスを図でやさしく説明します。

目次

絶縁体とは:ひとことで言うと

絶縁体

電気(または熱)を通しにくい物質の総称です。「不導体」ともいいます。

電気の絶縁体は、電気を通したい所(導体)のまわりを包んだり支えたりして、電気が外へ漏れないようにするために使います。

ただし、完全に電気を通さない物質はありません。温度や湿気、かかる電圧によって、少しは電気が流れます。

電線の断面。中心の銅の導体を白い絶縁体が包み、その外側をシースが覆う図
図1 身近な絶縁体:電線の被覆(模式図)
出典:Wikipedia「絶縁体」をもとに AI(Claude)で作成

Wikipedia「絶縁体」は、絶縁体を「電気あるいは熱を通しにくい性質を持つ物質の総称」と説明しています。電場の中で分極する(電気の偏りができる)性質に注目するときは「誘電体」とも呼びます(同)。英語版 Wikipedia「Insulator (electricity)」は、絶縁体を電流が自由に流れない物質とし、完全な絶縁体はなく、どの絶縁体にも少しは動ける電荷があること、とても高い温度ではどの絶縁体も電気を通すようになることを説明しています。

このページでは、おもに電気の絶縁を扱います。熱を通しにくくすることは、ものづくりではふつう「断熱」と呼びます(基礎知識「熱伝導率」)。

出典:絶縁体|Wikipedia、Insulator (electricity)|Wikipedia(英語版)

導体・半導体・絶縁体の違い

銅・シリコン・純水・空気・ガラス・硬質ゴム・PTFEの電気抵抗率を対数の目盛りで並べた図
図2 電気抵抗率の比較(20 ℃の代表値)
出典:Wikipedia「Electrical resistivity and conductivity」(英語版)をもとに AI(Claude)で作成

電気の通しやすさは、電気抵抗率(単位 Ω·m)で比べます。値が小さいほど電気を通しやすく、大きいほど通しにくい物質です(くわしくは基礎知識「導電率・電気抵抗率」)。

物質(20 ℃)電気抵抗率(Ω·m)分類
銅1.68×10⁻⁸導体
シリコン2.3×10³半導体
脱イオン水(純水)1.8×10⁵—
空気10⁹〜10¹⁵絶縁体
ガラス10¹¹〜10¹⁵絶縁体
硬質ゴム約10¹³絶縁体
PTFE(テフロン)10²³〜10²⁵絶縁体

英語版 Wikipedia「Electrical resistivity and conductivity」の表の値です。銅と PTFE をくらべると、電気抵抗率は30けた(10の30乗倍)以上もちがいます。半導体は、その間にあって、温度や混ぜる不純物で値が大きく変わる物質です(同)。同じページの分類ごとの表は、金属を 10⁻⁸ Ω·m 程度、絶縁体を 10¹⁶ Ω·m 程度としています。

水は絶縁体?

表のとおり、不純物を取り除いた純水は電気をかなり通しにくい物質です。一方で、Wikipedia「絶縁体」は、電解液のようにイオンを含む液体は電気を通すと書いています。ふだんの水道水や雨水にはイオンがとけているので、ぬれた手や機器で感電・ショートが起きます。絶縁体の表面がぬれたり汚れたりすると、表面を伝って電気が流れやすくなるのも同じ理由です。

出典:Electrical resistivity and conductivity|Wikipedia(英語版)、絶縁体|Wikipedia

絶縁体が電気を通さない理由:バンドギャップ

導体・半導体・絶縁体の、価電子帯と伝導帯とその間のすき間(バンドギャップ)を比べた図
図3 導体・半導体・絶縁体のバンドの図(模式図)
出典:Wikipedia「絶縁体」、Wikipedia「Band gap」(英語版)をもとに AI(Claude)で作成

物質の中の電子は、決まったエネルギーの「帯(バンド)」にいます。電子でいっぱいになっている帯を価電子帯、電子が動き回れる帯を伝導帯といい、その間のすき間をバンドギャップといいます。

Wikipedia「絶縁体」によると、絶縁体では価電子帯と伝導帯が大きなすき間で隔てられているため、電子が伝導帯に上がれず、電流が流れません。半導体よりバンドギャップが大きいものが絶縁体で、両者の間にはっきりした境目はないとしています(同)。英語版 Wikipedia「Band gap」は、導体ではすき間がほとんどない(帯が重なる)こと、すき間が小さいものは半導体、大きいものはふつう絶縁体であることを説明し、代表値としてシリコン 1.14 eV、ダイヤモンド 5.5 eV を挙げています(eV は電子ボルトというエネルギーの単位)。

英語版 Wikipedia「Insulator (electricity)」は、とても高い電圧をかけると絶縁体でも電流が急に流れる絶縁破壊が起きること、固体ではその電圧がバンドギャップの大きさに比例することを説明しています。絶縁破壊は基礎知識「絶縁破壊(絶縁耐力)」でくわしく説明しています。

出典:絶縁体|Wikipedia、Band gap|Wikipedia(英語版)、Insulator (electricity)|Wikipedia(英語版)

絶縁材料の種類:気体・液体・固体

電気の絶縁材料を気体・液体・固体に分け、おもな材料と使われる所の例を示した図
図4 電気の絶縁材料の種類
出典:Wikipedia「絶縁体」、Wikipedia「絶縁油」、Wikipedia「六フッ化硫黄」をもとに AI(Claude)で作成

Wikipedia「絶縁体」は、電気の絶縁材料の例として、固体ではガラス・紙・テフロン(PTFE)・ゴム状の重合体や多くのプラスチック、液体では絶縁油、気体では空気・六フッ化硫黄などの絶縁ガス・真空を挙げています。英語版 Wikipedia「Insulator (electricity)」は、電気機器でいちばん大事な絶縁材料は空気だとしています。

状態おもな材料使われる所の例
気体空気、SF₆(六フッ化硫黄)、真空送電線のまわりの空気。SF₆ はガス遮断器・ガス絶縁開閉装置
液体絶縁油(鉱油が主成分のもの、シリコーン油など)油入変圧器、油入コンデンサ、油入ケーブル
固体ガラス、磁器、紙、マイカ、樹脂(ポリエチレン・塩化ビニル・PTFE・エポキシなど)、ゴム電線・ケーブルの被覆、がいし、モーターや変圧器の巻線の絶縁

気体:空気と SF₆

Wikipedia「六フッ化硫黄」は、SF₆ が高い絶縁性能を持ち、熱的・化学的に安定で燃えにくいため、ガス変圧器・ガス遮断器・ガス絶縁開閉装置などで絶縁や消弧(電流を切るときのアークを消すこと)に使われていると説明しています。一方で、100年間の地球温暖化係数が二酸化炭素の22,800倍と大きく、京都議定書で排出を抑える対象のガスに指定されています(同)。

液体:絶縁油

Wikipedia「絶縁油」は、絶縁油を液状の絶縁材料とし、油入コンデンサ・油入ケーブル・油入変圧器・油遮断器など多くの電力機器で使われていると説明しています。JIS C 2320 は、鉱油を主成分とする1種、シリコーン油を主成分とする6種など、主成分で種類を分けています(1種と2種を混ぜた7種もあります。同)。

固体:がいし(碍子)と樹脂

Wikipedia「碍子」によると、がいしは電線と電柱・鉄塔などの支持物の間を絶縁する器具です。雨・塩分・汚れで表面を伝って電気が漏れやすいので、ひだ(波形・傘形)を付けて表面の距離を長くしています。材料は、絶縁性と強度にすぐれる磁器がもっとも広く使われ、ガラスや、軽くて衝撃に強いポリマー(樹脂)製もあります(同)。電子機器では、エポキシ樹脂やポリイミドなどの樹脂、セラミックスが基板や部品の絶縁に使われます。

出典:絶縁体|Wikipedia、Insulator (electricity)|Wikipedia(英語版)、六フッ化硫黄|Wikipedia、絶縁油|Wikipedia、碍子|Wikipedia

絶縁材料の耐熱クラス

耐熱クラスY・A・E・B・F・H・N・R・250の温度を棒グラフで示した図
図5 耐熱クラスと温度
出典:Wikipedia「絶縁体」、JIS C 4003:2010をもとに AI(Claude)で作成

絶縁材料は、熱で少しずつ劣化します。そこで、モーターや変圧器などの電気機器では、絶縁材料を、使ってよい最高の温度で分けた「耐熱クラス」で選びます。規格は JIS C 4003(電気絶縁―熱的耐久性評価及び呼び方)です。

耐熱クラス温度(℃)材料の例(Wikipedia「絶縁体」の表から)
Y90綿、紙、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、天然ゴム
A105絶縁油、天然ワニス
E120ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンなど
B130マイカ、ガラス繊維などの無機材料
F155シリコンアルキド樹脂などの樹脂
H180シリコーン樹脂
N200生マイカ、磁器など
R220—
250250—

表の温度と材料の例は Wikipedia「絶縁体」の耐熱クラス(JIS)の表によります(表の B・N には石綿も載っていますが、今は使われないので省きました)。JIS C 4003:2010 は、耐熱クラスを「クラス180(H)」のように数字の後ろに括弧で文字を付けて表してもよいこと、250を超える耐熱クラスは25ずつの区切りで増えることを定めています。材料の例は目安で、実際の機器では、材料を組み合わせた絶縁のしくみ全体で耐熱性を確かめます。

モーターの銘板(名前の札)に「耐熱クラス 155(F)」などと書いてあれば、巻線の絶縁がその温度まで耐えられるように作られているという意味です(文字の F だけで示すこともあります)。周囲の温度や負荷が大きく、巻線の温度がこれを超えると、絶縁の寿命が短くなります。化学反応の速さと温度の関係は、基礎知識「アレニウスの式」で説明しています。

出典:絶縁体|Wikipedia、JIS C 4003:2010 電気絶縁―熱的耐久性評価及び呼び方(kikakurui.com の掲載ページ)

ものづくりで絶縁体を考える場面

電気を使う製品は、どれも「電気を通したい所」と「通したくない所」を分ける設計が欠かせません。おもな場面は次のとおりです。

場面考えること関係するページ
電線・ケーブル・端子の被覆電圧・温度・油や薬品に合う被覆の材料技術「絶縁テープ・熱収縮チューブ」
基板・電源・インバーター部品どうしの距離、絶縁材料の耐電圧課題「絶縁破壊を防ぎたい」
モーター・変圧器の巻線耐熱クラス、巻線の温度上昇基礎知識「アレニウスの式」
設備の保守絶縁が劣化していないかを測る技術「絶縁抵抗測定」
静電気絶縁体の表面にたまる電気の逃がし方課題「静電気のトラブルを防ぎたい」

英語版 Wikipedia「Insulator (electricity)」は、がいしの表面がぬれると、表面を伝って放電する電圧(フラッシオーバー電圧)が50 %を超えて下がることがあると説明しています。絶縁体そのものの性能だけでなく、表面の湿気・汚れ・ほこりにも気を付けることが、ショートや漏電を防ぐ近道です。

出典:Insulator (electricity)|Wikipedia(英語版)

出典

  1. 絶縁体|Wikipedia
  2. Insulator (electricity)|Wikipedia(英語版)
  3. Electrical resistivity and conductivity|Wikipedia(英語版)
  4. Band gap|Wikipedia(英語版)
  5. 六フッ化硫黄|Wikipedia
  6. 絶縁油|Wikipedia
  7. 碍子|Wikipedia
  8. JIS C 4003:2010 電気絶縁―熱的耐久性評価及び呼び方(kikakurui.com の掲載ページ)

※図は、出典の説明と数値をもとに編集部がまとめた模式図です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・工場ではありません。

情報の確認日:2026年11月1日

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