屋外の鉄骨が赤く錆びる、配管に穴があく、ボルトのまわりに錆が出る。こうした現象をまとめて腐食(ふしょく)といいます。このページでは、腐食とは何か、鉄が錆びるしくみ(局部電池)、全面腐食と孔食・すき間腐食などの局部腐食の種類、腐食を速める条件、溶融亜鉛めっきの耐用年数の計算、腐食を防ぐ方法を、図で順に解説します。
腐食とは:ひとことで言うと
腐食とは
腐食は、金属がまわりの環境と化学的・電気化学的に反応して、表面から消耗していく現象の総称です(日本製鉄)。金属が溶け出したり、腐食生成物(さび)ができたりして、厚さが減ったり穴があいたりします(Wikipedia「腐食」)。
セラミックスやプラスチックも腐食・劣化を起こしますが(同)、このページでは金属の腐食を扱います。英語では corrosion です。

出典:Wikipediaをもとに AI(Claude)で作成
腐食は、水分を伴うかどうかで2つに分けられます。湿食は水分を伴い、水や土の中で起きる腐食、乾食は水分を伴わず、空気やガスによって起きる腐食です(Wikipedia「腐食」)。水と酸素で鉄が錆びるのは湿食です。
腐食による損失は大きく、日本の2015年度の調査では、腐食のコストは年4.3兆円(国民総所得 GNI の0.78%)と見積もられています(Uhlig 法。別の Hoar 法では6.6兆円、GNI の1.27%)(腐食防食学会などによる調査「Cost of Corrosion in Japan」)。
出典:1.腐食の概念|日本製鉄、腐食|Wikipedia、Cost of Corrosion in Japan|材料と環境 Vol.69 No.11(J-STAGE)
鉄が錆びるしくみ:局部電池

出典:日本製鉄、コトバンクをもとに AI(Claude)で作成
水にぬれた鉄の表面には、わずかな不純物・ひずみ・濃度の差などから、電気の流れやすさのちがう場所ができます。ここにアノード(溶ける所)とカソードがつながった小さな電池ができ、これを局部電池といいます(コトバンク「局部電池」)。
- アノード:鉄が電子を放して鉄イオンになり、溶け出す。Fe → Fe²⁺ + 2e⁻
- カソード:電子が水の中の酸素と反応する。中性・アルカリ性では ½O₂ + H₂O + 2e⁻ → 2OH⁻、酸性では 2H⁺ + 2e⁻ → H₂(水素が出る)
- さびができる:Fe²⁺ + 2OH⁻ → Fe(OH)₂(水酸化鉄(II))。さらに酸素の作用で 2Fe(OH)₂ + ½O₂ + H₂O → 2Fe(OH)₃ となり、不溶性のさびになる
反応式は日本製鉄の解説によります。同社は、この反応は水と酸素が共存する限り進むと説明しています。電子は鉄の中を、イオンは水の中を流れるので、水がなければ電池の回路がつながらず、湿食は進みません(この言い方は編集部の補足)。金属の溶けやすさの順番は技術の基礎知識「イオン化傾向」で解説しています。
腐食の種類:全面腐食と局部腐食

出典:コトバンク、Wikipediaをもとに AI(Claude)で作成
腐食は、進み方の形で全面腐食と局部腐食に分けられます。全面腐食は金属の表面全体にほぼ均一に起きる腐食、局部腐食は特定の場所に腐食が集中して起きる腐食です(コトバンク「腐食」)。局部腐食で強度部材が壊れると、構造物全体の安全をおびやかします(同)。
| 種類 | しくみ・起きる所 |
|---|---|
| 全面腐食 | 金属の表面全体にほぼ均一に起きる |
| 孔食(こうしょく) | 表面のごく一部に小さくて深い穴があき、金属の内部に向かって進む局部腐食。塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンが引き金になる |
| すき間腐食 | 金属どうしの継ぎ目や、表面に付着した異物の下などのせまいすき間で起きる |
| 粒界腐食 | 金属や合金の結晶粒界(結晶の境目)に選んだように起きる。ステンレスでは、600〜800℃の温度を経ると粒界にクロムの炭化物ができ、まわりのクロムが減ることで起きる |
| 応力腐食割れ | 力(応力)で表面の皮膜の一部がこわれ、そこに腐食が集中して起きるといわれる割れ |
| 異種金属接触腐食 | 種類のちがう金属が電気的につながった状態で水溶液にふれると、腐食電位のちがいで、より卑な金属に起きる。ガルバニック腐食ともいう |
| エロージョン | 流れる水や土砂などによって金属が物理的にすり減る。腐食と重なるとエロージョン・コロージョンになる |
表は、コトバンク「腐食」と Wikipedia「腐食」の説明をまとめたものです(エロージョン・コロージョンの一文は編集部の補足)。粒界にできる組織は技術の基礎知識「金属組織」、流れで表面が削られる現象は技術の基礎知識「キャビテーション」、すり減る現象そのものは技術の基礎知識「摩耗」で解説しています。
それぞれの防ぎ方は、課題「ステンレスの錆び(もらい錆・孔食)を防ぎたい」、課題「異種金属の接触で起きる腐食(電食)を防ぎたい」、課題「応力腐食割れ(SCC)を防ぎたい」でくわしく扱っています。
腐食を速める条件

出典:日本製鉄、Wikipedia、コトバンクをもとに AI(Claude)で作成
腐食の速さは、まわりの環境で大きく変わります。おもな条件は次のとおりです。
- 水と酸素:鉄の腐食は水と酸素が共存する限り進む(日本製鉄「腐食の概念」)
- 塩分:海塩粒子(海の泡がはじけてできる、塩分を含む小さな水滴)が金属の表面に付くと結露しやすくなり、水滴の電気も通りやすくなるため、腐食を速める(日本製鉄「大気腐食」)。塩化物イオンは孔食の引き金にもなる(Wikipedia「腐食」)
- 酸:水分と微量の酸は腐食を速める(Wikipedia「腐食」)。酸性ではカソードで水素も発生する(日本製鉄「腐食の概念」)
- すき間・付着物:継ぎ目や付着した異物の下のせまいすき間で、すき間腐食が起きる(コトバンク「腐食」)
- 異種金属の接触:ちがう金属が電気的につながって水にふれると、卑な金属のほうに腐食が起きる(コトバンク「腐食」)
塩分のほかにも、結露で表面がぬれることは腐食のもとになります。結露が起きる温度は技術の基礎知識「露点」、対策は課題「制御盤・筐体の中の結露を防ぎたい」で解説しています。
出典:1.腐食の概念|日本製鉄、3.外面腐食 – 大気腐食|日本製鉄、腐食|Wikipedia、腐食|コトバンク
腐食の速さと寿命:溶融亜鉛めっきの耐用年数の計算

出典:日本溶融亜鉛鍍金協会をもとに AI(Claude)で作成
腐食の速さがわかれば、寿命を見積もれます。鋼を亜鉛でおおう溶融亜鉛めっきでは、日本溶融亜鉛鍍金協会が、大気中の耐用年数を耐用年数 = 亜鉛付着量(g/m²)÷ 腐食速度(g/m²・年)× 0.9 で求める式を示しています。
| 使う環境 | 腐食速度(g/m²・年) | 耐用年数(年) |
|---|---|---|
| 都市・工業地帯 | 8.0 | 62 |
| 田園地帯 | 4.4 | 113 |
| 海岸地帯 | 19.6 | 25 |
表は同協会が示す日本の平均値です。海岸地帯では腐食速度が都市・工業地帯の2倍以上になり、耐用年数は25年に縮みます。
計算例:付着量と置く場所から耐用年数を出す
同協会のページには、表の計算に使った付着量は書かれていません。式に付着量 550 g/m² を入れると、都市・工業地帯で 550 ÷ 8.0 × 0.9 ≒ 62年、田園地帯で 550 ÷ 4.4 × 0.9 ≒ 113年、海岸地帯で 550 ÷ 19.6 × 0.9 ≒ 25年となり、表の値とほぼ合います(編集部の計算)。
同じ式で、付着量が 350 g/m² のめっきを考えると、都市・工業地帯では 350 ÷ 8.0 × 0.9 ≒ 39年、海岸地帯では 350 ÷ 19.6 × 0.9 ≒ 16年です(編集部の計算例)。同じめっきでも、置く場所で寿命が2倍以上ちがうことがわかります。実際の設計では、置く場所の腐食速度とめっきの規格の付着量を確かめて使います。
腐食を防ぐ方法

出典:コトバンク、Wikipediaをもとに AI(Claude)で作成
腐食を防ぐ方法(防食)は、大きく次のように分けられます(コトバンク「防食」、Wikipedia「腐食」)。
- 材料を選ぶ:使う環境で腐食しにくい耐食合金などを選ぶ(コトバンク)。アルミニウムやステンレス鋼は、表面の酸化物の層(不動態皮膜)が内部を守る(Wikipedia)。ステンレス鋼の不動態皮膜は厚さ1〜3nm で、一般の環境ではこわれてもすぐに再生する(ステンレス協会)
- 表面をおおう(被覆):塗装やめっきでおおい、腐食の原因の物質から金属を切り離す(コトバンク)。被膜には、ブリキ・ほうろう・塗装・樹脂被覆のように水や酸素を通さないもの、アルマイトなどの酸化被膜、トタン(亜鉛めっき)のように自分が先に溶けて鋼を守るものがある(Wikipedia)
- 電気で守る(電気防食):亜鉛などの卑な金属をつなぐか、外部の電源を使って、守りたい金属の電位を下げ、腐食を抑える(コトバンク)。亜鉛・アルミ・マグネシウムなどを使う流電陽極方式と、直流電源を用いる外部電源方式がある(Wikipedia)
- 環境を変える:インヒビター(腐食抑制剤)を少し加えて金属の表面に吸着させ、腐食を遅くする(コトバンク)。つり橋のメインケーブルのように乾いた空気を流し続ける方法や、防錆油・気化性防錆紙・乾燥剤・脱酸素剤で包む方法もある(Wikipedia)
それぞれの方法は、技術「めっき」、技術「粉体塗装・電着塗装」、技術「アルマイト」、技術「溶射」、技術「ステンレス鋼」で詳しく解説しています。腐食の対策をまとめて比べるなら課題「錆びる・腐食する」、試験で確かめるなら課題「製品の耐環境性を温湿度・塩水噴霧の試験で確かめたい」が入口です。
出典:防食|コトバンク、腐食|Wikipedia、ステンレス鋼の概説|ステンレス協会

出典:永井みつるのキギョズム研究室 (企ギョズム)(YouTube)
動画は、表面処理で錆びにくくしたボルトと、それを作る会社を紹介しています。
腐食が出てくるページ
出典
- 1.腐食の概念|日本製鉄
- 腐食|Wikipedia
- Cost of Corrosion in Japan|材料と環境 Vol.69 No.11(J-STAGE)
- 局部電池|コトバンク
- 腐食|コトバンク
- 3.外面腐食 – 大気腐食|日本製鉄
- 溶融亜鉛めっきの耐食性|日本溶融亜鉛鍍金協会
- 防食|コトバンク
- ステンレス鋼の概説|ステンレス協会
※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月30日
