キャビテーション(気泡ができてつぶれるしくみ・壊食・NPSH)

透明な管の狭くなった部分で白い泡ができ、下流で消えていくキャビテーションのイメージ(AI で生成)

「ポンプからバリバリと音がする」「羽根車に虫食いのような穴があいた」。その原因として名前が挙がるのが、キャビテーションです。キャビテーションは、液体の圧力が下がって泡ができ、圧力が戻ったときにその泡がつぶれる現象です。このページでは、泡ができるしくみ、沸騰との違い、泡がつぶれるときに何が起きるか、起きやすい場所、困ることと役に立つ使い方、ポンプで使う NPSH(吸込みの余裕)の考え方を、図で順に解説します。

目次

キャビテーションとは:ひとことで言うと

キャビテーションとは

キャビテーションは、液体の中で局所的に圧力が蒸気圧以下まで下がって泡ができ、その後その泡がつぶれる現象です(カトウ光研の解説)。

ポイントは2つです。① 泡の正体は、空気ではなく液体そのものが蒸発してできた蒸気が中心であること。② 泡ができる所ではなく、圧力が戻って泡がつぶれる所で、強い衝撃が出ることです。

キャビテーションのしくみの図:狭くなった管ののど部で流れが速くなり、圧力が飽和蒸気圧より下がって泡ができ、下流で圧力が戻ると泡がつぶれる。下に流れ方向の圧力のグラフ
図1 キャビテーションのしくみ:圧力が下がると泡ができ、戻るとつぶれる
出典:カトウ光研、エバラ時報(荏原製作所)をもとに AI(Claude)で作成

管が狭くなった所では、流れが速くなり、その分だけ圧力が下がります(ベルヌーイの定理)。荏原製作所の技術者の解説(エバラ時報の抄録)は、配管では絞り部で流速が上がって静圧が下がることで、ポンプでは羽根車の吸込側でキャビテーションが起きると説明しています。圧力が、その温度で決まる飽和蒸気圧まで下がると、液体が激しく気化して泡になります。泡が流れに乗って圧力の高い所へ運ばれると、泡はつぶれて消えます。

出典:キャビテーションとは|カトウ光研、能見基彦「ポンプキャビテーション現象の基礎知識[第1回]」No.245(2014)の抄録(JAXA リポジトリに収録)|エバラ時報(荏原製作所)

動画で見る:泡ができてつぶれるようす

「キャビテーション観察」のスローモーション映像(YouTube の動画)
動画 「キャビテーション観察」のスローモーション映像
出典:株式会社フォトロン(YouTube)

高速度カメラのメーカーのフォトロンが、キャビテーションをスローモーションで撮った動画です。泡ができてつぶれるまでの動きを、ゆっくり見ることができます。

沸騰との違い:温度を上げるか、圧力を下げるか

水の飽和蒸気圧の曲線の図:沸騰は大気圧のまま温度を100℃まで上げて線をこえ、キャビテーションは20℃のまま圧力を約2.3kPaまで下げて線をこえる。右に温度ごとの飽和蒸気圧の表
図2 沸騰とキャビテーション:水の飽和蒸気圧の線をこえる向きが違う
出典:The Engineering ToolBox、エバラ時報(荏原製作所)をもとに AI(Claude)で作成

水が蒸気になるかどうかは、温度と圧力の組み合わせで決まります。その境目が飽和蒸気圧です。やかんの水は、大気圧(約101kPa)のまま温度を上げ、飽和蒸気圧が大気圧に届く100℃で沸騰します。キャビテーションは反対に、温度はそのままで、圧力のほうを飽和蒸気圧まで下げて蒸発させます。どちらも「液体が蒸気になる」点は同じで、線をこえる向きが違うだけです(編集部の解説)。

水の温度飽和蒸気圧大気圧(101.3kPa)とくらべると
10℃1.23 kPa約80分の1
20℃2.34 kPa約43分の1
40℃7.38 kPa約14分の1
60℃19.9 kPa約5分の1
80℃47.4 kPa約2分の1
100℃101.4 kPaほぼ同じ(ここで沸騰する)

表のとおり、20℃の水なら、圧力が約2.3kPa(大気圧の約43分の1)まで下がると蒸発し始めます。液温が高いほど飽和蒸気圧が高いので、少し圧力が下がっただけでキャビテーションが起きやすくなります。カトウ光研の解説も、温度が高いほど蒸気圧が上がり、発生しやすくなるとしています。

出典:Water – Saturation Pressure vs. Temperature|The Engineering ToolBox、キャビテーションとは|カトウ光研

泡がつぶれると何が起きるか:衝撃と壊食

壁の近くの泡がつぶれる順番の図:まわりから押されて片側がへこみ、噴流(マイクロジェット)が壁に当たり、くり返すと表面に小さな穴があく
図3 壁の近くで泡がつぶれると、噴流と衝撃で表面が傷む
出典:KAKEN(科学研究費助成事業データベース)、カトウ光研、千代田第一工業をもとに AI(Claude)で作成

泡がつぶれる瞬間には、高い圧力が出ます。壁の近くでつぶれると、泡を突き抜ける細い液体の噴流(マイクロジェット)や、衝撃波が壁をたたきます。大阪大学の研究(科研費の実績報告書、1988年度)は、マイクロジェットが壁に与える衝撃圧を1〜2MPa程度、作用する範囲を直径2〜3mm、衝撃波による衝撃圧は30MPa程度になる場合もある(ばらつきが大きい)、と報告しています。

1回ごとの傷は小さくても、たくさんの泡が同じ所でつぶれ続けると、表面が少しずつ削られていきます。これをキャビテーション・エロージョン(壊食)といいます。ポンプでは、羽根車やケーシングの内面に虫食い状の穴ができます(伏虎金属工業の解説)。

なお、表面処理メーカーの千代田第一工業は、壊食のしくみには衝撃波説・マイクロジェット説などいくつかの説があり、今も完全には解明されていない、としています。

出典:木本日出夫「キャビテーション損傷に関与する液体マイクロジェットの局所影響評価」1988年度 実績報告書|KAKEN(科学研究費助成事業データベース)、キャビテーションを防ぐポンプ対策完全ガイド|伏虎金属工業、キャビテーション・エロージョン|千代田第一工業

キャビテーションが起きやすい場所

キャビテーションが起きやすい場所の図:ポンプの羽根車の入口、船のプロペラの羽根の先、バルブ・絞りの下流、渦の中心
図4 キャビテーションが起きやすい場所:流れが速く、圧力が下がる所
出典:カトウ光研、エバラ時報(荏原製作所)、千代田第一工業をもとに AI(Claude)で作成

キャビテーションは、流れが速く、圧力が下がる所で起きます。カトウ光研は、船舶のスクリュー、ポンプのインペラ(羽根車)、ポンプの吸入口、タービンを挙げ、高速の流れの中の障害物の後ろ、翼の面、渦の中心でも起きるとしています。千代田第一工業は、船のプロペラ、水車、ポンプ、軸受、管路、ダムの吐出口など、液体が流れるあらゆる所で起きるとしています。

出典:キャビテーションとは|カトウ光研、能見基彦「ポンプキャビテーション現象の基礎知識[第1回]」No.245(2014)の抄録(JAXA リポジトリに収録)|エバラ時報(荏原製作所)、キャビテーション・エロージョン|千代田第一工業

動画で見る:船のプロペラのキャビテーション

実船用プロペラのキャビテーション試験 "通常海域用翼角、船速12ktで航走中"(YouTube の動画)
動画 実船用プロペラのキャビテーション試験 "通常海域用翼角、船速12ktで航走中"
出典:JAMSTEC 海洋研究開発機構(YouTube)

海洋研究開発機構(JAMSTEC)が、航走中の実際の船のプロペラで行ったキャビテーション試験の動画です。

困ることと、役に立つ使い方

キャビテーションで困ること(騒音・振動、性能の低下、壊食、ほかの部品の傷み)と、役立てる使い方(超音波洗浄、分散・乳化、キャビテーション噴流、医療の研究)の一覧の図
図5 キャビテーションで困ること、役に立てる使い方
出典:酉島製作所、伏虎金属工業、カトウ光研、シャープ 産業用洗浄システムをもとに AI(Claude)で作成

機械では困る:音・振動・性能低下・壊食

ポンプメーカーの酉島製作所は、キャビテーションで困ることとして、騒音・振動・発熱による軸受の損傷、泡で流路がふさがれることによる全揚程の低下、壊食による羽根車の損傷を挙げています。キャビテーションが起きているポンプからは「バリバリ」という高い音が聞こえ、その周波数は600Hz〜25,000Hz と説明しています。伏虎金属工業は、「ガリガリ」「ジャリジャリ」という音、吐出量の不足、軸受やメカニカルシールの寿命の低下、液漏れ、シャフトの破損まで進むことがあるとしています。

出典:キャビテーション発生によるトラブル|酉島製作所、キャビテーションを防ぐポンプ対策完全ガイド|伏虎金属工業

ポンプ不具合事例集 キャビテーション編(YouTube の動画)
動画 ポンプ不具合事例集 キャビテーション編
出典:(株)丸八ポンプ製作所(YouTube)

ポンプメーカーの丸八ポンプ製作所が、ポンプのキャビテーションの不具合事例を解説する動画です。

わざと起こして役立てる:超音波洗浄など

泡がつぶれるときの力は、うまく使えば道具になります。代表が超音波洗浄です。シャープは、超音波で揺さぶられた液体の中に圧力の差ができて泡が生まれ、泡が破裂するときの衝撃波で、洗う物から汚れや異物を引き離す、と説明しています。カトウ光研は、ほかに、液滴を細かくする分散・乳化(マヨネーズ・ドレッシングなどの食品、化粧品、塗料)、高圧の水流やキャビテーション噴流を使った硬い材料の加工、腎臓結石の破砕や薬を届ける研究などの医療の分野を挙げています。

出典:超音波洗浄のしくみ(よくあるご質問)|シャープ 産業用洗浄システム、キャビテーションとは|カトウ光研

ポンプでの目安:NPSH(吸込みの余裕)

NPSHの考え方の図:地下7mの液面からポンプで吸い上げる例。大気圧10.3mから吸上げ高さ7mを引いたNPSHa3.3mを、ポンプAのNPSHr2.3m(吸い上げられる)、ポンプBの4.3m(足りない)と比べる
図6 ポンプの吸込みの余裕(NPSH):液面から吸い上げる例
出典:モーノポンプ(兵神装備)をもとに AI(Claude)で作成

ポンプがキャビテーションを起こさないかどうかは、NPSH(Net Positive Suction Head、正味吸込ヘッド)で確かめます。NPSH は圧力を「水の高さ(m)」に直した値で、2種類あります。有効吸込ヘッド(NPSHa)は、使う条件(配管)で得られる吸込みの余裕、必要吸込ヘッド(NPSHr)は、ポンプが騒音や振動を出さずに吸い込むのに必要な最低限の値です。NPSHa が NPSHr より大きければ吸い込めます(モーノポンプの解説)。

モーノポンプの解説は、大気圧 0.101MPa を水の高さに直すと 10.3m になる、として、地下ピットの深さ7mの液面から吸い上げる例を出しています。NPSHa=10.3−7=3.3m で、吸込能力8mのポンプ(NPSHr=2.3m)なら吸い上げられ、吸込能力6mのポンプ(NPSHr=4.3m)では足りません。実際の計算では、ここから液体の蒸気圧の分と、吸込配管の損失の分も差し引きます(編集部の補足)。

出典:NPSHとは|モーノポンプ(兵神装備)

キャビテーションを防ぐには

ポンプでの基本は、NPSHa を大きくするか、NPSHr の小さいポンプを選ぶことです。出典が挙げている主な方法は次のとおりです。

  • 液面とポンプの高さの差を小さくする、タンクの液面を高く保って押し込み圧を確保する(モーノポンプ、伏虎金属工業)
  • 吸込配管を短く、太く、まっすぐにして、エルボやバルブを減らし、流速を落とす(伏虎金属工業。モーノポンプも配管を太くすることを挙げる)
  • 液温が高く蒸気圧が無視できないときは、タンクに入れて液面を加圧する(モーノポンプ)
  • ポンプを適正な能力の範囲で使い、インバーターやバルブで流量の出しすぎを避ける。ストレーナーやバルブの詰まりにも注意する(伏虎金属工業)
  • 応急対策として、吐出側のバルブを少し閉めて吐出量を小さくする、押し込みで使っているならタンクの水位を少し上げる(酉島製作所。あくまで一時的な処置で、その後は同社への相談を勧めている)
  • 壊食に対しては、表面を滑らかにする、母材をたわみにくい硬い材料に変える、硬い表面処理をする(千代田第一工業)

出典:NPSHとは|モーノポンプ(兵神装備)、キャビテーションを防ぐポンプ対策完全ガイド|伏虎金属工業、キャビテーション発生によるトラブル|酉島製作所、キャビテーション・エロージョン|千代田第一工業

ポンプでの原因の見分け方と対策は課題「ポンプのキャビテーションを防ぎたい」、配管の太さの決め方は課題「配管のサイズ(口径)を流量から決めたい」、圧力損失は技術の基礎知識「圧力損失」で解説しています。

出典

  1. キャビテーションとは|カトウ光研
  2. 能見基彦「ポンプキャビテーション現象の基礎知識[第1回]」No.245(2014)の抄録(JAXA リポジトリに収録)|エバラ時報(荏原製作所)
  3. Water – Saturation Pressure vs. Temperature|The Engineering ToolBox
  4. 木本日出夫「キャビテーション損傷に関与する液体マイクロジェットの局所影響評価」1988年度 実績報告書|KAKEN(科学研究費助成事業データベース)
  5. キャビテーションを防ぐポンプ対策完全ガイド|伏虎金属工業
  6. キャビテーション・エロージョン|千代田第一工業
  7. キャビテーション発生によるトラブル|酉島製作所
  8. 超音波洗浄のしくみ(よくあるご質問)|シャープ 産業用洗浄システム
  9. NPSHとは|モーノポンプ(兵神装備)

※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月30日

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