断面二次モーメントは、はりや板の「断面の形」による曲がりにくさを表す量です。同じ材料・同じ重さでも、板を立てる、パイプにする、H形にすると、ぐっと曲がりにくくなります。その理由を数字で説明するのが断面二次モーメントです。このページでは、意味と計算のしかた、代表的な断面の式、たわみ・曲げ応力との関係、平行軸の定理、鋼材のカタログの値、設計での使い方を、できるだけやさしく説明します。
ひとことで言うと
断面二次モーメントとは
断面の各部分の面積に、曲げの中心(中立軸)からの距離の2乗を掛けて、たし合わせた量です。記号は I(アイ)。値が大きいほど、曲げられたときにたわみにくくなります。
ミスミの技術資料は、断面二次モーメントは部品の断面形状だけで決まり、材質には関係しないとしています。材料で決まるのはヤング率(E)で、曲げのかたさは E と I の掛け算で決まります(編集部の解説)。

出典:ミスミ 技術情報をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
定規を寝かせて押すと簡単に曲がりますが、立てて押すとほとんど曲がりません。材料も重さも同じなのに、向きを変えただけで違うのは、材料が曲げの中心から遠くに並ぶほど、曲がりにくくなるからです。幅30mm・厚さ3mm の板なら、立てたときの断面二次モーメントは寝かせたときの100倍になります(編集部の計算。計算は次の節)。
出典:金型部品の断面二次モーメント|ミスミ 技術情報、はりの断面二次モーメント(機械工学と自動機設計-18)|ミスミ 技術情報
定義と単位:距離の2乗 × 面積

出典:日本機械学会 機械工学事典をもとに AI(Claude)で作成
断面二次モーメントの式
I = ∫ y² dA(小さな面積 dA × 距離 y の2乗 を、断面全体でたし合わせる)
I:断面二次モーメント(mm⁴、cm⁴、m⁴) y:中立軸からの距離 dA:小さな面積
日本機械学会の機械工学事典は、断面二次モーメントを、断面上の微小な面積 dA と座標(x または y)の2乗の積を、全面積にわたって積分した値(Ix = ∫y²dA、Iy = ∫x²dA)と定義し、断面の形と寸法が与えられれば求まるとしています。どの軸のまわりで考えるかによって値が変わるので、Ix・Iy のように軸を書き分けます。
長さの2乗(y²)に面積(長さの2乗)を掛けるので、単位は長さの4乗で、国際単位系では m⁴ です(ウィキペディア日本語版)。機械部品では mm⁴、鋼材のカタログでは cm⁴ がよく使われます(1cm⁴ = 10,000mm⁴)。距離が2倍の所にある面積は、4倍よく効きます(編集部の解説)。
出典:断面二次モーメント|日本機械学会 機械工学事典、断面二次モーメント|ウィキペディア日本語版
長方形の断面:幅 × 高さ³ ÷ 12
長方形の断面二次モーメント
I = b × h³ ÷ 12
b:幅(中立軸に平行な辺) h:高さ(曲げる向きの辺)
ミスミの技術資料は、幅 b・高さ h の長方形の断面二次モーメントを I = bh³/12 としています。高さ h は3乗で効き、幅 b は1乗でしか効きません。

出典:この記事の内容をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
幅20mm・高さ10mm の長方形なら I = 20 × 10³ ÷ 12 ≒ 1,667mm⁴ です。高さを2倍の20mm にすると約13,333mm⁴ で8倍、4倍の40mm にすると約106,667mm⁴ で64倍になります。幅を2倍にしても I は2倍にしかなりません(編集部の計算)。
最初の定規の例では、寝かせたとき(幅30mm・高さ3mm)は I = 30 × 3³ ÷ 12 = 67.5mm⁴、立てたとき(幅3mm・高さ30mm)は I = 3 × 30³ ÷ 12 = 6,750mm⁴ で、ちょうど100倍です(編集部の計算)。ミスミの解説の例題では、幅50mm・高さ70mm の角材で I = 50 × 70³ ÷ 12 ≒ 1.43×10⁶ mm⁴ です。
出典:面積・重心・断面二次モーメントの計算|ミスミ 技術情報、はりの断面二次モーメント(機械工学と自動機設計-18)|ミスミ 技術情報
代表的な断面の式

出典:ミスミ 技術情報、東京農工大学、Wikipedia(英語版)をもとに AI(Claude)で作成
| 断面 | 断面二次モーメント I | 断面係数 Z | メモ |
|---|---|---|---|
| 長方形(幅 b・高さ h) | b h³ ÷ 12 | b h² ÷ 6 | ミスミの技術資料 |
| 円(直径 d) | π d⁴ ÷ 64 | π d³ ÷ 32 | 東京農工大学の演習の解答例 |
| 中空円(外径 D・内径 d) | π (D⁴ − d⁴) ÷ 64 | π (D⁴ − d⁴) ÷ (32 D) | 外側の円から内側の円を引く(編集部の計算) |
| 中空長方形(外 B×H・内 b×h) | (B H³ − b h³) ÷ 12 | (B H³ − b h³) ÷ (6 H) | 同上 |
| H形・I形 | (B H³ − (B − t) h³) ÷ 12 | I ÷ (H ÷ 2) | 幅B・高さH・ウェブ厚t、h はフランジの内側の高さ。角の丸みは考えない(同上) |
同じ軸のまわりで考えるなら、断面二次モーメントは足し算・引き算ができます。英語版ウィキペディアも、複雑な断面は、簡単な形に分けて、足したり引いたりして求められると説明しています。パイプは「外側の円 − 内側の円」、角パイプは「外側の長方形 − 内側の長方形」、H形は「外側の長方形 − 両側の空いた部分」です(編集部の解説)。同じ材料でできた断面を曲げるときは、中立軸は断面の図心(面積の重心)を通ります。
出典:面積・重心・断面二次モーメントの計算|ミスミ 技術情報、材料力学 演習課題 No.1 解答例|東京農工大学、Second moment of area|Wikipedia(英語版)
同じ重さなら、パイプが有利

出典:この記事の内容をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
直径20mm の丸棒(断面積 約314mm²)の I は約7,850mm⁴ です。同じ断面積で外径40mm のパイプ(内径 約34.6mm、肉厚 約2.7mm)にすると、I は約55,000mm⁴ で約7倍になります(編集部の計算)。材料の量(重さ)は同じでも、材料を中立軸から遠くへ移しただけで、曲げのかたさが大きく上がります。自転車のフレームや構造物の骨組みにパイプが多いのはこのためです(編集部の解説)。
たわみとの関係:曲げのかたさは E × I

出典:ミスミ 技術情報をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
はりのたわみの式(先に集中荷重をかけた片持ちはり)
δ = F × L³ ÷ (3 × E × I)
δ:たわみ F:力 L:長さ E:ヤング率 I:断面二次モーメント
ミスミの技術資料は、はりの最大たわみを δ = β × W × L³ ÷ (E × I) とし、係数 β を、片持ちはりの先に集中荷重なら1/3、両端を支えたはり(単純支持)の中央に集中荷重なら1/48 などとしています。どの支え方でも、たわみはヤング率 E と断面二次モーメント I の積に反比例します。E × I を曲げ剛性といいます(基礎知識 「剛性」)。
たとえば、鋼(E = 206,000N/mm²)の板 幅30mm・厚さ3mm を、長さ200mm の片持ちにして先に10N(約1kgf)をかけると、寝かせたとき(I = 67.5mm⁴)のたわみは 10 × 200³ ÷ (3 × 206,000 × 67.5) ≒ 1.9mm、立てたとき(I = 6,750mm⁴)は約0.019mm で、100分の1です(編集部の計算。板の自重は考えない)。たわみは長さの3乗に比例するので、長さを半分にするとたわみは8分の1になります。
出典:はりのたわみ(機械工学と自動機設計-17)|ミスミ 技術情報、はりの断面二次モーメント(機械工学と自動機設計-18)|ミスミ 技術情報
曲げの強さ:断面係数 Z

出典:日本機械学会 機械工学事典、ミスミ 技術情報をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
曲げると、断面の片側は引っ張られ、反対側は押し縮められます。中立軸ではどちらでもなく、応力は0です。日本機械学会の機械工学事典は、はりの曲げ応力を σ = M × y ÷ I(M:曲げモーメント、y:中立軸からの距離)とし、いちばん遠い所(表面)で最大になるとしています。この最大の応力を σmax = M ÷ Z と書いたときの Z が断面係数です。
断面係数と曲げ応力
Z = I ÷ e(e:中立軸からいちばん遠い表面までの距離)
σmax = M ÷ Z 長方形なら Z = b × h² ÷ 6
ミスミの資料も、断面係数を「中立軸に関する断面二次モーメントを、中立軸から外表面までの長さで割ったもの」とし、大きいほど曲げに強いとしています。先ほどの板(根元の曲げモーメント M = 10N × 200mm = 2,000N·mm)では、寝かせたとき Z = 45mm³ で約44N/mm²、立てたとき Z = 450mm³ で約4.4N/mm² です。かたさ(I)は100倍でも、強さ(Z)は10倍にとどまります(編集部の計算)。たわみを抑えたいときは I、壊れないかを見るときは Z を使います。応力については 基礎知識 「応力とひずみ」を参照してください。
出典:断面二次モーメント|日本機械学会 機械工学事典、金型部品の断面係数|ミスミ 技術情報、面積・重心・断面二次モーメントの計算|ミスミ 技術情報
平行軸の定理:遠くの面積が効くわけ
平行軸の定理
I = I_G + A × d²
I_G:その部分の図心を通る軸まわりの断面二次モーメント A:その部分の面積 d:二つの軸の距離
日本機械学会の機械工学事典は、図形の図心を通る軸に平行な軸についての断面二次モーメントを、Ix = IX + y₀² × A(y₀:二つの平行な軸の距離、A:面積)としています。これが平行軸の定理です。自分の図心から離れた軸のまわりでは、「面積 × 距離の2乗」の分だけ大きくなるので、H形のフランジ(上下の板)のように中立軸から遠い部分が、全体の I の大部分を受け持ちます。

出典:日本機械学会 機械工学事典をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
高さ100mm・幅50mm・板厚5mm の H形(断面積950mm²)で計算すると、上下のフランジ2枚で約113万mm⁴、ウェブで約30万mm⁴、合計で約143万mm⁴ です。フランジが全体の約79%を受け持ち、その大部分は「A × d²」の部分です。同じ断面積の角棒(1辺 約30.8mm)なら約7.5万mm⁴ なので、H形は約19倍です(編集部の計算)。ウィキペディア日本語版も、H形鋼はフランジに断面を集中させて断面二次モーメントを大きくしているとしています。
出典:平行軸の定理|日本機械学会 機械工学事典、断面二次モーメント|ウィキペディア日本語版
鋼材のカタログの値

出典:ミルコン、日本製鉄をもとに AI(Claude)で作成
鋼材のカタログには、断面積や重さといっしょに、断面二次モーメント(cm⁴)と断面係数(cm³)が載っています。JIS G 3192 の H形鋼 H-200×100×5.5×8(高さ200・幅100・ウェブ厚5.5・フランジ厚8mm)は、ミルコンの断面性能表で強軸まわりの Ix が1,810cm⁴、弱軸まわりの Iy が134cm⁴で、約13.5倍違います。H形鋼は、フランジが上下に来る向き(強軸)で使うのが基本です(編集部の解説)。
| 鋼材 | 断面積(cm²) | 断面二次モーメント(cm⁴) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 丸棒 直径20mm(計算値) | 3.14 | 0.785 | 編集部の計算 |
| 鋼管 STK 外径48.6・厚さ2.3mm | 3.345 | 8.99 | 日本製鉄 |
| 鋼管 STK 外径60.5・厚さ3.2mm | 5.760 | 23.7 | 日本製鉄 |
| 角パイプ □50×50×2.3mm | 4.252 | 15.9 | 日鉄建材 |
| H形鋼 H-100×100×6×8 | 21.59 | Ix 378/Iy 134 | ミルコン(断面積は日本製鉄も同じ) |
| H形鋼 H-200×100×5.5×8 | 26.67 | Ix 1,810/Iy 134 | 同上 |
表を比べると、直径20mm の丸棒(断面積3.14cm²)と、ほぼ同じ断面積の鋼管(外径48.6mm・厚さ2.3mm、3.345cm²)では、鋼管の I が丸棒の10倍以上あります(編集部の計算)。H-100×100 と H-200×100 は、Iy(弱軸)は同じ134cm⁴ ですが、高さが2倍の H-200×100 は Ix が約4.8倍で、断面積は約1.2倍しか増えていません。実際の設計では、使う鋼材の規格やメーカーのカタログで値を確かめます(編集部の解説)。
出典:H形鋼 断面性能表(JIS G 3192)|ミルコン、建設用資材ハンドブック 3-28 H形鋼の標準寸法|日本製鉄、建設用資材ハンドブック 3-61 一般構造用炭素鋼鋼管(STK)|日本製鉄、角パイプ(正方形断面)標準寸法・断面性能表|日鉄建材
ものづくりでどう効くか

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
材料を増やさずに曲がりにくくするには、同じ量の材料を中立軸から遠い所に置いて、断面二次モーメントを大きくするのが基本です。板の端を折り曲げてコの字形やハット形にする、リブ(補強の板)を立てる、パイプや角パイプにする、H形にする、といった方法です(編集部の解説)。ミスミの資料も、断面二次モーメントが大きいほど曲げに強く、たわみも少ないとしています。
- 軽くしたい:薄くした分を形で補う。ヤング率の小さいアルミや樹脂に替えるときも、断面二次モーメントを大きくしてたわみを抑えます(課題「薄く軽くすると強度が足りない」・「鉄をアルミ・樹脂・複合材に替えて軽くしたい」)。
- 振動・騒音を抑えたい:質量が同じなら、曲げ剛性が上がると固有振動数が上がり、共振の周波数を運転の範囲から遠ざけやすくなります(課題「軽くすると振動・騒音が増える」、基礎知識 「共振」)。
- 位置の精度を上げたい:工具や送りねじ、架台のたわみは、加工や位置決めの誤差になります(課題「切削のびびり振動を抑えたい」・「ボールねじの寿命・剛性を見極めたい」)。
- 筐体・カバーをたわみにくく:薄い板の筐体は、折り曲げとリブで剛性を出します(製品「筐体・ケース」)。
ただし、薄い板を高く立てすぎると、曲げる前に横に倒れたり(横座屈)、板が波打ったり(局部座屈)することがあります。高い断面ほど有利という計算は、こうした壊れ方が起きない範囲での話です(編集部の解説)。
似ている言葉との違い

出典:日本機械学会 機械工学事典、Wikipedia(英語版)をもとに AI(Claude)で作成
断面二次極モーメント(Ip):日本機械学会の機械工学事典は、断面に垂直な軸についての断面二次モーメントとし、Ip = ∫r²dA = Ix + Iy としています。ウィキペディア日本語版は、丸棒のねじりの計算などに使うとし、中実の丸棒では Ip = πd⁴/32 としています(Ix の2倍)。
慣性モーメント:回転のしにくさを表す量で、質量の分布で決まり、単位は kg·m² です。断面二次モーメントは英語で second moment of area(area moment of inertia とも)と呼ばれ、ウィキペディア日本語版のとおり慣性モーメントと同じ I の記号で書かれることもありますが、面積の分布で決まる断面二次モーメントと、質量で決まる慣性モーメントは別の量です(編集部の解説)。モーターの選定などで「慣性モーメント」が出てきたら、回転の話だと考えてください。
出典:断面二次極モーメント|日本機械学会 機械工学事典、断面二次モーメント|ウィキペディア日本語版、Second moment of area|Wikipedia(英語版)
断面二次モーメントが出てくるページ
出典
- 金型部品の断面二次モーメント|ミスミ 技術情報
- はりの断面二次モーメント(機械工学と自動機設計-18)|ミスミ 技術情報
- 断面二次モーメント|日本機械学会 機械工学事典
- 断面二次モーメント|ウィキペディア日本語版
- 面積・重心・断面二次モーメントの計算|ミスミ 技術情報
- 材料力学 演習課題 No.1 解答例|東京農工大学
- Second moment of area|Wikipedia(英語版)
- はりのたわみ(機械工学と自動機設計-17)|ミスミ 技術情報
- 金型部品の断面係数|ミスミ 技術情報
- 平行軸の定理|日本機械学会 機械工学事典
- H形鋼 断面性能表(JIS G 3192)|ミルコン
- 建設用資材ハンドブック 3-28 H形鋼の標準寸法|日本製鉄
- 建設用資材ハンドブック 3-61 一般構造用炭素鋼鋼管(STK)|日本製鉄
- 角パイプ(正方形断面)標準寸法・断面性能表|日鉄建材
- 断面二次極モーメント|日本機械学会 機械工学事典
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月6日
