製品の電池を、今のリチウムイオン電池から全固体電池などの次世代電池に替えられないか、と考える場面が増えています。燃えにくくしたい、高温や低温で使いたい、基板に電子部品と同じように載せたい、電池の交換をなくしたい、といった理由です。一方で、次世代電池は種類ごとに容量・電流・温度・充電のしかたが大きく違い、今の電池と同じ感覚で置き換えると、容量が足りない、充電回路が合わない、実装で割れる、といった困りごとが起きます。
この記事では、今の電池(液体の電解液のリチウムイオン電池)の課題を確かめ、置き換え先の5つの候補(酸化物系の全固体電池、硫化物系の全固体電池、半固体電池、全固体のナトリウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ)を、公開されている仕様で比べます。安全・温度・実装・寿命・電流の目的ごとの選び方と、使える時間の計算例、置き換えるときの注意を紹介します。
今の電池(液体の電解液のリチウムイオン電池)の課題
電解液が燃えやすい
リチウムイオン電池は、正極と負極のあいだを満たす電解質に可燃性の液体を使っています。そのため、電池が高温になったり内部でショートが起きたりすると、発火するおそれがあります(JST)。熱暴走のしくみと対策は、課題「電池の熱暴走・発火を防ぎたい」で解説しています。

出典:JST「ALCA-SPRING 次世代蓄電池開発の軌跡」をもとに AI(Claude)で作成
温度の範囲が限られる
電解液は有機化合物を含むため、低温では粘度が高くなって充放電の性能が下がり、高温では電解液が蒸発して電池として働かなくなるので、場所を取る冷却装置が欠かせないとされます(JST)。全固体電池は、電解液の代わりに固体の電解質を使い、リチウムイオンだけが電解質の中を動くため副反応や劣化が起こりにくく、温度変化に強い点が大きな強みとされます(同)。
出典:ALCA-SPRING 次世代蓄電池開発の軌跡(JST news 2023年2月号)|JST
置き換え先の候補
置き換え先は、電解質が液体か固体か、動くイオンが何か、で分けられます。全固体電池は固体の電解質だけで作る電池、半固体電池はごく少しの電解液を使う電池です。リチウムの代わりにナトリウムを使う電池や、電池とは原理の違うキャパシタも候補になります(編集部の整理)。

出典:JST・NGK「EnerCera」・日本電気硝子・JSR TECHNICAL REVIEW No.116をもとに AI(Claude)で作成
固体電解質の種類:硫化物系・酸化物系・塩化物系
全固体電池の性能と作り方は、固体電解質の種類で大きく変わります。JST の資料では、硫化物系はイオンの通りやすさ(イオン伝導度)が今の電解液より高く、室温で加圧して成形できる一方、大気中の水分と反応して有害な硫化水素が出ます。酸化物系はイオン伝導度が今の電解液と同じくらいで、大気中で合成できる一方、高温で焼き固める必要があり、硬くて脆いので電極との接合に課題があるとされます。ケミトックスは、塩化物系を成形性と安定性のバランスがよいが金属と腐食反応を起こしやすい材料と説明しています。

出典:JST「ALCA-SPRING 次世代蓄電池開発の軌跡」・ケミトックス「全固体電池の研究開発」・OKIエンジニアリング「全固体電池の信頼性評価」をもとに AI(Claude)で作成
酸化物系の全固体電池:小さなチップ形が量産されている
酸化物系は、硫化物系と比べて有害物質(硫化水素など)の発生がなく安全性が高く、モバイル・ウェアラブルなどの小型の電池が多く、構造がセラミックコンデンサーに似ているとされます(OKIエンジニアリング)。FDK の SoLiCell は、酸化物系の固体電解質と同社独自の正極材料を使った、4.5×3.2×1.4mm・公称3V・公称容量0.15mAh の表面実装できる全固体電池で、RTC(時計)、IoT センサー、ドライブレコーダー、スマートメーターなどを用途に挙げています。
硫化物系の全固体電池:小型は量産、大型は量産の準備
マクセルは、イオン伝導度の高い硫化物系の固体電解質を使い、セラミックパッケージに入れた全固体電池 PSB401010H(10.5mm 角・公称2.3V・標準容量8.0mAh)を量産しています。電気自動車向けでは、出光興産とトヨタ自動車が2023年10月、バッテリーEV 用の全固体電池の量産に向けた協業を発表し、2027〜28年の全固体電池の実用化をより確実なものにするとしています(発表の時点)。硫化物系は水分と反応するので、低い露点のドライルームなど、厳しい雰囲気の管理が要るとされます(ケミトックス)。
半固体電池:ごく少しの電解液を染み込ませる
NGK の EnerCera は、電極の成分だけを焼き固めたセラミックスの正極板に、ごくわずかな電解液を染み込ませた半固体電池です。有機材料を含まないので高温に強く、発熱・発火・爆発の可能性が極めて低いとしています。厚さ0.45mm で曲げに強い Pouch と、基板実装向けの Coin があり、低抵抗で、ためた小さな電力を必要なときに大きな電流で出せるので、環境発電やワイヤレス給電と組み合わせる電源に向くとしています。
ナトリウムイオン電池:リチウムを使わない
日本電気硝子の全固体ナトリウムイオン二次電池は、リチウムの代わりにナトリウムを使い、正極・負極・固体電解質がすべて酸化物です。ガラスを軟らかくして流す同社の技術で部材を強固に一体にしたとしています。リチウム・ニッケル・コバルトなどのレアメタルを使わないことと、-40〜+200℃(耐熱仕様品)の広い温度で動くことを特長に挙げています。標準品の公称電圧は2.9V です。
リチウムイオンキャパシタ:大きな電流と長い寿命
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭、負極にリチウムをあらかじめ入れた(プレドープした)炭素材料を使う蓄電デバイスです。電気二重層キャパシタよりエネルギー密度が高く、リチウムイオン電池より出力密度が大きいとされます(JSR の技術資料)。同じ資料では、標準タイプのエネルギー密度は10A 放電で14Wh/kg(25Wh/L)、作動電圧は3.8〜2.2V で、常温の10万サイクルの試験のあとも容量保持率が90%以上でした。粉体工学会誌の資料では、リチウムイオン電池のセルの重さあたりのエネルギーの代表例を110Wh/kg としており、ためられるエネルギーは電池よりずっと小さくなります。
出典:ALCA-SPRING 次世代蓄電池開発の軌跡(JST news 2023年2月号)|JST、全固体電池の研究開発|ケミトックス、全固体電池の信頼性評価|OKIエンジニアリング、全固体電池 SoLiCell|FDK、全固体電池 SoLiCell FAQ|FDK、全固体電池|マクセル、セラミックパッケージ型全固体電池|マクセル、出光とトヨタ、バッテリーEV用全固体電池の量産実現に向けた協業を開始(2023年)|トヨタ自動車、EnerCera(エナセラ)|NGK、全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池|日本電気硝子、リチウムイオンキャパシタ(JSR TECHNICAL REVIEW No.116、2009年)|JMエナジー、高安全な大型リチウムイオン電池の開発と今後の展望(2013年)|粉体工学会誌『粉砕』No.56
公開されている仕様で比べる
候補ごとに、容量・使える温度・取り出せる電流を、各社が公開している仕様で並べました。次世代電池は、今のところ小さな容量の品番が多く、今のリチウムイオン電池の代わりにそのまま使える容量のものは限られます(編集部の解説)。
容量
FDK の SoLiCell は0.15mAh、NGK の EnerCera は4〜27mAh、マクセルの PSB401010H は8mAh、日本電気硝子の全固体ナトリウムイオン電池は4mAh(耐熱仕様品)〜80mAh(標準品)です(製品ページの仕様表。2024年2月のサンプル出荷の発表では3V・200mAh を標準としていました)。武蔵エナジーソリューションズのキャパシタの角形セルは1.47〜1.82Ah ですが、大きさは150.2×93.2×15.8mm です。

出典:FDK「全固体電池 SoLiCell」・マクセル「セラミックパッケージ型全固体電池」・NGK「EnerCera」・日本電気硝子「全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池」・武蔵エナジーソリューションズ「角形セル」をもとに AI(Claude)で作成
使える温度
全固体電池の中には、100℃を超える温度で使える品番があります。ただし、充電できる温度は放電できる温度より狭いことがあります。

出典:FDK「全固体電池 SoLiCell」・マクセル「セラミックパッケージ型全固体電池」・NGK「EnerCera」・日本電気硝子「全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池」・武蔵エナジーソリューションズ「角形セル」をもとに AI(Claude)で作成
取り出せる電流
無線で送るときなど、機器は瞬間的に大きな電流を使います。小さな全固体電池は取り出せる電流も小さいので、平均の電流だけでなくピークの電流も比べます(編集部の解説)。

出典:FDK「全固体電池 SoLiCell」・マクセル「セラミックパッケージ型全固体電池」・NGK「EnerCera」・日本電気硝子「全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池」・武蔵エナジーソリューションズ「角形セル」をもとに AI(Claude)で作成
出典:全固体電池 SoLiCell|FDK、セラミックパッケージ型全固体電池|マクセル、EnerCera(エナセラ)|NGK、全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池|日本電気硝子、角形セル|武蔵エナジーソリューションズ
計算例:使える時間を見積もる
小さな容量の電池でどのくらい動くかは、容量÷平均の電流でおおよそ見積もれます。たとえば、ふだんは2µA で待機し、60秒に1回、0.05秒だけ10mA で送信する機器の平均の電流は、2µA+10,000µA×0.05÷60≒10µAです。この場合、容量8mAh の電池なら 8÷0.010=800時間(約33日)、0.15mAh なら15時間です(編集部の計算。容量は標準・公称の値で、マクセルの PSB401010H の定格容量7.0mAh で計算すると700時間)。

出典:編集部が計算し、FDK・NGK・マクセル・日本電気硝子の容量の値をもとに AI(Claude)で作成
これは満充電から使い切るまでの単純な計算です。実際には、自己放電、温度、放電を止める電圧で取り出せる量が減り、送信の瞬間の電流が電池の出せる電流を超えると電圧が下がって止まります。上の例の10mA は、FDK の SoLiCell の標準放電電流(0.03mA)やマクセルの PSB401010H の最大放電電流(30mA・1秒)と比べて確かめます(編集部の解説)。
出典:全固体電池 SoLiCell|FDK、セラミックパッケージ型全固体電池|マクセル、EnerCera(エナセラ)|NGK、全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池|日本電気硝子
目的と置き換え先の比較表
行が置き換えの目的、列が置き換え先の候補です。◎は第一候補、○は有効、△は条件によって有効を表します。目的の行をクリックすると、理由と出典を書いたカードに移ります。
| 課題(症状) | 酸化物系の 全固体電池 (チップ形) | 硫化物系の 全固体電池 | 半固体電池 | ナトリウム イオン電池 (全固体) | リチウム イオン キャパシタ |
|---|---|---|---|---|---|
| A発火・液漏れの心配を減らしたい | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ |
| B高温・低温で使いたい | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
| C基板に載せたい・小さくしたい | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
| D長く使いたい・電池交換を減らしたい | ○ | ○ | ○ | ◎ | |
| E大きな電流を取り出したい | △ | △ | ○ | △ | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
◎・○・△の理由と出典は、下の「目的ごとの選び方」の各カードに書いています。空欄は、その目的の根拠が今回の調べで見つからなかった候補です。記号は、各社の公開している仕様と公的な資料をもとにした編集部の評価で、同じ目的の中での比較です。試験の条件が違うため、数値はそのまま比べられません。
目的ごとの選び方
目的(A〜E)ごとに、比べた結果、候補、置き換えるときの注意をまとめました。
発火・液漏れの心配を減らしたい
身につける機器や、人のそば・密閉した所で使う機器の電池を、燃えにくく漏れないものにしたい。
- 比べた結果
- 今のリチウムイオン電池は電解液に可燃性の液体を使い、高温や内部の短絡で発火するおそれがあります(JST)。FDK は、電解質を含む材料をすべて固体にして漏液・発火のない安全性を実現したとし、日本電気硝子は、酸化物だけで作るので発火も有毒ガスのリスクもないとしています。硫化物系のマクセルは350℃の加熱・釘刺し・外部短絡で発火・発煙がなかったとしていますが、硫化物系は水分と反応して有害な硫化水素が出るため安全対策が必要とされます(OKIエンジニアリング)。NGK の半固体電池は、ごくわずかな電解液だけで発熱・発火・爆発の可能性が極めて低いとし、武蔵エナジーソリューションズのキャパシタは正極の熱暴走がないとしています。
- 候補
- 酸化物系の全固体電池(◎)漏液・発火なし。有毒ガスの心配もない
- ナトリウムイオン電池(全固体)(◎)酸化物だけ。発火・有毒ガスのリスクなし
- 硫化物系の全固体電池(○)加熱・釘刺しで発火なし。水分で硫化水素
- 半固体電池(○)電解液はごくわずか
- リチウムイオンキャパシタ(○)正極の熱暴走なし
「全固体」でも、使う規格の安全試験に通っているかは品番ごとに確かめます(編集部の解説)。NGK は EnerCera で IEC62133-2 を取得済みとしています。試験の内容は、ケミトックスなどの試験機関に相談できます。
高温・低温で使いたい
エンジンや工場の設備のそば、屋外、冷凍輸送など、今の電池では温度が合わない所で使いたい。
- 比べた結果
- 今の電池の電解液は、低温では粘度が高くなって充放電の性能が下がり、高温では蒸発するので冷却装置が欠かせないとされます(JST)。全固体電池は温度変化に強い点が大きな強みとされ(同)、マクセルの PSB401010H は放電で-50〜+125℃、日本電気硝子の耐熱仕様品は-40〜+200℃としています。FDK は-20〜105℃(RTC 用途は-40〜105℃)、NGK の ET シリーズは-40℃の低温でも使える品番(-40〜70℃)があり、Coin の ET1210C-H は-20〜105℃、武蔵エナジーソリューションズのキャパシタは-30〜70℃です。
- 候補
- 硫化物系の全固体電池(◎)放電 -50〜+125℃の例
- ナトリウムイオン電池(全固体)(◎)耐熱仕様品 -40〜+200℃
- 酸化物系の全固体電池(○)-20〜105℃の例
- 半固体電池(○)-40〜70℃、-20〜105℃の品番
- リチウムイオンキャパシタ(○)-30〜70℃の例
充電できる温度は、放電できる温度より狭いことがあります。マクセルの PSB401010H は、放電が-50〜+125℃に対し、充電は-20〜+115℃です。低い温度で充電する機器は、充電の温度を必ず確かめます(編集部の解説)。
基板に載せたい・小さくしたい
電池をほかの電子部品と同じように基板に載せ、リフローではんだ付けしたい。
- 比べた結果
- FDK の SoLiCell は 4.5×3.2×1.4mm の表面実装できるチップ形です。マクセルは、セラミックパッケージの外装で耐熱性と密閉性を確保し、最大245℃のリフローで基本特性が劣化しないことを確かめたとしています。NGK の Coin のうち ET1210C-H(4mAh)はリフロー対応(推奨 最大240℃×1回。ET2016C-R はリフロー非対応)、日本電気硝子は300℃のはんだリフローにも対応できるとしています。武蔵エナジーソリューションズのキャパシタは、角形セルが150mm 角ほどの大きさで、基板に載せる用途ではありません。
- 候補
- 酸化物系の全固体電池(◎)4.5×3.2×1.4mm のチップ形
- 硫化物系の全固体電池(○)10.5mm 角・最大245℃のリフロー
- 半固体電池(○)Coin の ET1210C-H はリフロー対応
- ナトリウムイオン電池(全固体)(○)300℃のリフローに対応できるとしている
セラミックスでできた電池は、リフローの熱による応力や基板のたわみで本体に割れが出るおそれがあり、基板との膨張係数の差ではんだ接合部の割れにも注意が要ると説明されています(OKIエンジニアリング)。リフローの条件は、各社に確かめます。
長く使いたい・電池交換を減らしたい
何年も置いておくセンサーや、何度も充放電する機器で、電池の交換をなくしたい・減らしたい。
- 比べた結果
- 武蔵エナジーソリューションズの CPQ3300SD は、容量80%に達するまでのサイクル数が100万以上としています。JSR の技術資料でも、リチウムイオンキャパシタは常温の10万サイクルの試験のあとも容量保持率が90%以上でした。マクセルは60℃保管の加速試験で、90%の容量を保てる日数が同社の従来のコイン形の10日に対し100日だったとし、NGK は Coin が満充電で105℃・1,000時間のあとも容量80%以上を保つとしています。日本電気硝子は、0Vまで放電しても劣化しないこと、ごく小さな電流で充電できることから、環境発電と組み合わせる使い方を挙げています。
- 候補
- リチウムイオンキャパシタ(◎)100万サイクル以上の例
- 硫化物系の全固体電池(○)60℃保管の加速試験で10倍の日数
- 半固体電池(○)105℃・1,000時間で80%以上
- ナトリウムイオン電池(全固体)(○)0Vまで放電しても劣化しない
寿命の値は、試験の温度・充電の状態・放電の深さで大きく変わります。自社の使い方に近い条件(温度、充電を続けるか、どこまで放電するか)で比べます(編集部の解説)。電池の劣化のしくみは、課題「電池の劣化を抑えたい」で解説しています。
大きな電流を取り出したい
無線で送る瞬間やモーターを動かす瞬間に、まとまった電流を流したい。
- 比べた結果
- 武蔵エナジーソリューションズのキャパシタは、最大放電電流が1,300A(CPQ3300SD)です。NGK の EnerCera は低抵抗で、放電ピーク電流が品番により20〜560mA、同サイズの市販電池に比べて抵抗が1/2以下としています。一方、小型の全固体電池は電流が小さく、FDK の SoLiCell の標準放電電流は0.03mA、マクセルの PSB401010H の最大放電電流は30mA(1秒)、日本電気硝子の標準品の放電ピーク電流は400mA(参考値)です。
- 候補
- リチウムイオンキャパシタ(◎)最大1,300A。ためられるエネルギーは小さい
- 半固体電池(○)ピーク20〜560mA
- 酸化物系の全固体電池(△)標準放電電流0.03mA の例
- 硫化物系の全固体電池(△)最大30mA(1秒)の例
- ナトリウムイオン電池(全固体)(△)ピーク400mA(標準品・参考値)
キャパシタは大きな電流を出せる一方、ためられるエネルギーが小さく(JSR の資料で10A 放電のとき14Wh/kg)、電圧が放電につれて下がります(定格3.8〜2.2V)。電池の電流が足りないときは、コンデンサを並べてピークを補う回路にする方法もあります(編集部の解説)。
置き換えるときの注意
次世代電池に替えるときは、使い方を数字にし、仕様表で候補を絞り、回路を合わせ、基板に載せて試し、安全と輸送の決まりを確かめる、という順に進めます。次の図は、公開情報をもとに編集部が整理した進め方です。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
充電のしかたが電池ごとに違う
充電の電圧と方式は品番ごとに違います。FDK の SoLiCell は定電流・定電圧(CC-CV)で3.37〜3.43V、マクセルの PSB401010H は2.6V、NGK の ET Coin は定電圧(CV)で2.7V、日本電気硝子の全固体ナトリウムイオン電池は上限4.5V です。今のリチウムイオン電池の充電回路をそのまま使うことはできないので、電池に合わせて充電と放電の止め方を決めます(編集部の解説)。

出典:FDK「全固体電池 SoLiCell」・マクセル「セラミックパッケージ型全固体電池」・NGK「EnerCera」・日本電気硝子「全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池」・武蔵エナジーソリューションズ「角形セル」をもとに AI(Claude)で作成
基板に載せると割れることがある
OKIエンジニアリングは、全固体電池を基板に載せるとき、リフローの熱による応力と、実装したあとの基板のたわみで電池の本体に割れが出るおそれがあると説明しています。例として、はんだが多すぎると縮むときに本体が割れる、吸着ノズルの支え方が悪いと本体の中央に力がかかる、はんだごての修正で熱ひずみが出る、基板の分割やねじ止め、落下で基板がたわむ、を挙げています。電池と基板の膨張係数の差が大きいので、温度差の大きい所でははんだ接合部の割れにも注意が要るとしています。はんだ付けの不良の対策は、課題「はんだ付け不良を減らしたい」で解説しています。

出典:OKIエンジニアリング「全固体電池の信頼性評価」をもとに AI(Claude)で作成
硫化物系は水分に気をつける
硫化物系の固体電解質は、水分と反応すると有害な硫化水素が出るため、安全対策が必要とされます(OKIエンジニアリング、JST)。ケミトックスは、硫化物系の開発では低い露点の環境が欠かせず、ドライルームが最も重要な設備の1つだとしています。製品に組み込んだあとも、外装が壊れたときの扱いをメーカーに確かめます(編集部の解説)。
安全の試験と、受託の評価
電池の安全性は、規格にもとづく試験で確かめます。ケミトックスは、釘刺し・圧壊、熱暴走、類焼、外部短絡、過充電、強制放電、サイクル劣化や保存劣化の試験を、JIS などの規格にもとづいて受託しています。NGK は EnerCera で IEC62133-2 を取得済みとしています。採用する品番がどの規格の試験に通っているか、輸送の決まりにどう対応しているかは、メーカーのデータシートと問い合わせで確かめます(編集部の解説)。
出典:全固体電池の信頼性評価|OKIエンジニアリング、全固体電池の研究開発|ケミトックス、リチウムイオン電池の試験評価|ケミトックス、ALCA-SPRING 次世代蓄電池開発の軌跡(JST news 2023年2月号)|JST、EnerCera(エナセラ)|NGK、全固体電池 SoLiCell|FDK、セラミックパッケージ型全固体電池|マクセル、全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池|日本電気硝子
次世代電池を相談できる企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。電池のメーカーと、電池を評価する試験の会社の両方を挙げました。
FDK株式会社|電子部品のように表面実装できる、酸化物系の小さな全固体電池
FDKとは
FDK は、東京都港区に本社がある電池の会社です。ニッケル水素電池・リチウム電池・アルカリ乾電池に加えて、全固体電池「SoLiCell」を扱い、静岡県湖西市の工場で生産しています。
FDKの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| SoLiCell の大きさと電圧 | 酸化物系の固体電解質と同社独自の正極材料を使った、4.5×3.2×1.4mm・0.05g の表面実装できる全固体電池。公称電圧3V、公称容量0.15mAh(SCC4532K)。充電は定電流・定電圧(CC-CV)で3.37〜3.43V |
| 安全性と使える環境 | 電解質を含む材料をすべて固体にして、漏液・発火のない安全性を実現したとしている。使用温度は-20〜105℃(RTC のバックアップ用途は-40〜105℃)で、回転体や真空の環境でも安定して動作し、温度衝撃にも強いとしている |
| 用途の例 | RTC(リアルタイムクロック)、IoT センサー、ドライブレコーダー、スマートメーター、リモコンなど |
画像は、同社のサイトのご利用条件で許可なく複製・転用ができないため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
FDKが解決できる課題
- 時計(RTC)のバックアップ電源を、基板に載せる小さな電池にしたい
- 漏液・発火のない電池を、電子部品と同じように実装したい
- 回転する部分や真空の中で使う機器に、電源を組み込みたい

出典:FDK「全固体電池 SoLiCell」・同 FAQをもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|FDK、全固体電池 SoLiCell|FDK、全固体電池 SoLiCell FAQ|FDK
マクセル株式会社|セラミックパッケージに入れた、硫化物系の全固体電池
マクセルとは
マクセルは、東京都港区と京都府乙訓郡大山崎町に本社を置く、電池・機能性部材料・光学部品などの会社です(1960年設立)。イオン伝導度の高い硫化物系の固体電解質を使った全固体電池を、セラミックパッケージに入れて量産しています。
マクセルの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| セラミックパッケージ型(PSB401010H) | 10.5×10.5×4.0mm・1.4g、公称電圧2.3V、標準容量8.0mAh。外装をセラミックパッケージにして耐熱性と密閉性を確保し、最大245℃のリフローで容量や負荷特性などの基本特性に劣化がないことを確かめたとしている |
| 温度と信頼性 | 放電は-50〜+125℃、充電は-20〜+115℃。60℃保管の加速試験で90%の容量を保てる日数が、同社の従来のコイン形リチウム二次電池の10日に対して100日だったとしている |
| 安全性 | 350℃の加熱、釘刺し、外部短絡などの安全性試験で発火・発煙がなかったとしている。開発中の PSB401515H は14.5mm角・16.0mAh |
画像は、同社のサイトの利用条件で書面の許諾なしの複製ができないため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
マクセルが解決できる課題
- 高温・低温の過酷な環境に置くセンサーやバックアップの電源を、二次電池にしたい
- 電池交換などのメンテナンスの回数を減らしたい
- リフローで基板に載せられる二次電池がほしい

出典:マクセル「全固体電池」・同「セラミックパッケージ型全固体電池」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|マクセル、全固体電池|マクセル、セラミックパッケージ型全固体電池|マクセル
NGK株式会社|セラミックスの正極板を使った、薄くて小さな半固体電池
NGKとは
NGK(旧 日本ガイシ)は、名古屋市瑞穂区に本社がある、セラミックスの会社です。がいしや排ガス浄化用のセラミックスなどのほか、超薄型・小型のリチウムイオン二次電池「EnerCera(エナセラ)」を扱っています。
NGKの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 半固体電池のしくみ | 有機材料を含まず電極の成分だけを焼き固めた結晶配向セラミックス正極板に、ごくわずかな電解液を染み込ませる。発熱・発火・爆発の可能性が極めて低いとしている |
| 2つの形 | 厚さ0.45mm で曲げに強い Pouch(20〜27mAh、公称3.8V)と、厚さ1.3〜2.05mm の基板実装向けの Coin(4〜25mAh、公称2.3V)。Coin の ET1210C-H はリフロー対応(推奨 最大240℃×1回。ET2016C-R はリフロー非対応) |
| 温度・電流・寿命 | ET シリーズは-40℃の低温でも使える。放電ピーク電流は品番により20〜560mA。Coin は、満充電で105℃・1,000時間のあとも容量維持率80%以上としている。IEC62133-2 を取得済み |
画像は、同社のサイトの利用条件で私的使用などの範囲を超える利用ができないため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
NGKが解決できる課題
- 環境発電やワイヤレス給電と組み合わせ、電池交換のいらない IoT 機器を作りたい
- 冷凍輸送(コールドチェーン)や屋外で使う、薄いセンサータグの電源がほしい
- 身につける機器に、発火の心配が小さい薄い電池を入れたい

出典:NGK「EnerCera(エナセラ)」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|NGK、EnerCera(エナセラ)|NGK
日本電気硝子株式会社|結晶化ガラスで作る、全固体のナトリウムイオン電池
日本電気硝子とは
日本電気硝子は、滋賀県大津市に本社がある特殊ガラスの会社です。ガラスを軟らかくして流す独自の技術で、正極・負極・固体電解質がすべて酸化物の全固体ナトリウムイオン二次電池を開発し、2024年2月にサンプル出荷を始めました。
日本電気硝子の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 酸化物だけで作る全固体電池 | 主な部材がすべて安定な酸化物で、液体の電解質を使わないので発火のリスクがなく、硫化物・塩化物・フッ化物などを使わないので有毒ガスのリスクもないとしている。リチウム・ニッケル・コバルトなどのレアメタルを使わない |
| 仕様 | 標準品は60×42×10mm・公称2.9V・80mAh・-40〜+100℃。耐熱仕様品は厚さ1mm・4mAh・-40〜+200℃で、200℃の環境で20Cの高速充放電ができるとしている。充電は定電圧定電流(CCCV)で上限4.5V |
| 使い方 | 300℃のはんだリフローにも対応できるとし、宇宙・海洋・医療(高温)など過酷な条件、エナジーハーベスティング、100℃以上で使う機器の無線化を想定用途に挙げている。0Vまで放電しても劣化しないとしている |
画像は、同社のサイトのご利用にあたっての条件で、法律で認められる範囲を超える使用ができないため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
日本電気硝子が解決できる課題
- 100℃を超える高温や、低温・真空の中で使う機器の電源を二次電池にしたい
- 発火や有毒ガスの心配のない電池を使いたい
- リチウムやコバルトなどのレアメタルを使わない電池を検討したい

出典:日本電気硝子「全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池」・同 ニュース(2024年2月)をもとに AI(Claude)で作成
出典:拠点一覧|日本電気硝子、全固体ナトリウム(Na)イオン二次電池|日本電気硝子、全固体ナトリウムイオン二次電池のサンプル出荷を開始(2024年)|日本電気硝子
武蔵エナジーソリューションズ株式会社|大電流で何度も充放電できる、ハイブリッドスーパーキャパシタ
武蔵エナジーソリューションズとは
武蔵エナジーソリューションズは、山梨県北杜市に本社がある、蓄電デバイスの会社です。ハイブリッドスーパーキャパシタ(HSC)の角形セルと、それを組んだモジュールを扱っています。HSC は、電気二重層キャパシタの正極と、リチウムイオンをあらかじめ入れた(プレドープした)リチウムイオン電池の負極を組み合わせた構造だと説明しています。
武蔵エナジーソリューションズの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 角形セルの仕様 | CPQ3300SD は3,300F・1.47Ah、CPP4100SA は4,100F・1.82Ah。定格電圧は3.8〜2.2V。エネルギー密度は13〜17Wh/kg(20〜26Wh/L) |
| 大電流と寿命 | 連続放電電流は100〜200A、最大放電電流は1,200〜1,300A。容量80%に達するまでのサイクル数は、CPQ3300SD で100万以上、CPP4100SA で10万以上 |
| 温度と安全性 | 使用温度は-30〜70℃。正極の熱暴走がなく、1万時間での電圧低下が5%未満と自己放電が小さいとしている |
画像は、公式サイトの写真の大きさが記事に使える大きさでないため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
武蔵エナジーソリューションズが解決できる課題
- 無人搬送車・ロボットの電源に、大電流で何度も充放電できる蓄電デバイスを使いたい
- 半導体製造工場やデータセンターの電源の備えに、蓄電デバイスを検討したい
- 船舶などで、負荷の変動を蓄電デバイスで補いたい

出典:武蔵エナジーソリューションズ「角形セル」・同「ハイブリッドスーパーキャパシタとは」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|武蔵エナジーソリューションズ、ハイブリッドスーパーキャパシタとは|武蔵エナジーソリューションズ、角形セル|武蔵エナジーソリューションズ
OKIエンジニアリング株式会社|全固体電池を基板に載せたときの信頼性評価
OKIエンジニアリングとは
OKIエンジニアリングは、東京都練馬区にある、信頼性試験・故障解析の受託の会社です。全固体電池について、基板に載せた状態の評価と、電池の単体の品質評価・不具合の原因の特定を行っています。
OKIエンジニアリングの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 基板実装の評価 | 温湿度サイクル、吸湿したあとのリフローの影響、基板を分割したときの割れ、冷熱衝撃、せん断の強さ、くり返しの曲げと限界の曲げ、落下などを評価する |
| 実装で起きやすい問題 | リフローの熱による応力と、実装したあとの基板のたわみで電池の本体に割れが出るおそれがあり、電池と基板の膨張係数の差が大きいので、温度差の大きい所でははんだ接合部の割れにも注意が必要と説明している |
| 電池の単体の評価 | 硫化物系・酸化物系、バルク型・薄膜型の全固体電池の構造の調査、品質の評価、不具合の原因の特定を行う |
画像は、同社のサイトの利用条件で営利目的の複製ができないため、公開されている情報をもとに編集部が図にしました。
OKIエンジニアリングが解決できる課題
- 全固体電池を基板に載せたときの割れやはんだの信頼性を確かめたい
- 採用を検討している全固体電池の構造や品質を、自社の外で調べてほしい
- 全固体電池の不具合の原因を突き止めたい

出典:OKIエンジニアリング「全固体電池の信頼性評価」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|OKIエンジニアリング、全固体電池の信頼性評価|OKIエンジニアリング
株式会社ケミトックス|硫化物系の全固体電池の開発と、電池の安全性・性能の受託試験
ケミトックスとは
ケミトックスは、東京都大田区に本社がある試験機関です。リチウムイオン電池の性能・安全性の受託試験に加えて、硫化物系の固体電解質を使った全固体電池の大型化と量産技術の開発に取り組み、2026年中の事業化を目指すとしています。
ケミトックスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 全固体電池の研究開発 | 硫化物系の固体電解質は水分で分解しやすいので、2024年9月に竣工した北杜甲斐駒先端研究所に150㎡のドライルームを整え、材料の合成から電極シートの作製、パウチセルの作製まで行うとしている |
| 固体電解質の比べ方 | 硫化物系はイオン伝導度が高く成形しやすいが空気中の水分で分解しやすい、酸化物系は空気中で安定だが焼結に高温・高圧が要り割れやすい、塩化物系は成形性と安定性のバランスがよいが金属と腐食反応が起こりやすい、と説明している |
| 電池の受託試験 | 充放電の特性、サイクル劣化・保存劣化、釘刺し・圧壊、熱暴走、類焼、外部短絡、過充電、強制放電などを、JIS などの規格にもとづいて試験する |
ケミトックスが解決できる課題
- 硫化物系の全固体電池の大型化・量産技術の開発について相談したい
- 電池の性能と安全性を、規格にもとづく試験で確かめたい
- 自社ではできない釘刺しや類焼などの危険な試験を任せたい

出典:ケミトックス「全固体電池の研究開発」
出典:会社概要|ケミトックス、全固体電池の研究開発|ケミトックス、リチウムイオン電池の試験評価|ケミトックス
選ぶ前に確かめる条件
電池を相談する前に、次のことを整理しておくと、候補の絞り込みと試作が進めやすくなります。
- 平均の電流と、ピークの電流(送信やモーターの起動の瞬間)
- 電池をもたせたい期間と、充電の手段(電源・環境発電・ワイヤレス給電・充電しない)
- 使う温度の範囲と、充電する温度
- 電池を置ける大きさ、基板に載せるか(リフローの条件)
- 今の回路の電圧と、充電・放電の止め方
- 必要な安全の規格と、輸送のしかた
- 数量と、量産品かサンプルか(供給の時期)
関連する課題
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月6日
