ブラシレスモーターとは(しくみ・ブラシ付きとの違い・センサーレス・種類)

ブラシレスモーターの断面のイメージ(AIで生成)

ブラシレスモーターは、ブラシと整流子を使わずに、電子回路で電流を切り替えて回すモーターです。回転するのは永久磁石で、コイルは止まったまま。磁石の位置に合わせてコイルの電流を切り替えます。このページでは、しくみ、ブラシ付きとの違い、回し方、位置の検出のしかた、種類を説明します。

ブラシレス DC モーターや BLDC モーターとも呼ばれます。

目次

ブラシレスモーターとは:ひとことで言うと

ブラシレスモーター(Brushless motor)

回転子に永久磁石、固定子にコイルを置き、半導体の駆動回路でコイルの電流を切り替えて回すモーターです。

こすれる部品がないので、ブラシの摩耗がありません。その代わり、専用の駆動回路がないと回りません。

ブラシレスモーターの断面の模式図に、固定子、コイル、永久磁石、回転子の名前を付けた図
図1 ブラシレスモーターの主な部分
出典:ニデック「ブラシレスDCモータとは」をもとに AI(Claude)で作成

磁石には、例えばネオジム磁石を使います。磁石の種類については技術:永久磁石で説明しています。

出典:2-2-1 ブラシレスDCモータとは|ニデック、1-4-1 ブラシレスモーターとは(1)|東芝デバイス&ストレージ

ブラシ付き DC モーターとの違い

ブラシ付きはコイルが回りブラシと整流子で電流を送り、ブラシレスは磁石が回りインバーターで固定子のコイルへ電流を送ることを並べた図
図2 ブラシ付きとブラシレスの構造
出典:東芝「ブラシレスモーターとは」、東芝「ブラシ付きDCモーターとブラシレスモーターの比較」をもとに AI(Claude)で作成

ブラシ付きモーターは、回るコイルへブラシと整流子で電流を送ります。ブラシレスモーターでは磁石とコイルの場所が入れ替わり、切り替えの役目を電子回路が受け持ちます。

比べる点ブラシ付き DC モーターブラシレスモーター
寿命低い(ブラシが摩耗する)高い
音・振動・ノイズ—静かで、振動・ノイズが小さい
効率—良い
コスト比較的安い制御回路を含めるとやや高い
回すのに要るもの回転子の位置の検出は要らないインバーターと位置検出が要る

東芝の比較表の内容をまとめました。この表には具体的な数値はありません。「—」は、表に記載のない項目です。

効率の数字の例

効率はモーターの大きさや条件で変わるので、数字を見るときは機種と条件をいっしょに確かめます。

資料機種・条件値
オリエンタルモーターブラシレスモーター BLH230(30 W)のモーターの最大効率約 74 %
オリエンタルモーター(同じ資料の比較相手)三相インダクションモーター 4IK25GN-SW2(25 W、三相 200 V・50 Hz)のモーターの最大効率約 52 %
マブチモーターカタログに載る特定の機種の値(メーカーの説明)最高 90 %

オリエンタルモーターの資料の比較相手は、ブラシ付きモーターではなく誘導モーターです。

出典:2-2 ブラシ付きDCモーターとブラシレスモーターの比較|東芝デバイス&ストレージ、1-3-2 ブラシレスDCモータ|ニデック、インバータ駆動による三相インダクションモーターとブラシレスモーターの効率比較(RENGA No.173、2010年)|オリエンタルモーター、ブラシレスモータ カタログ|マブチモーター

回るしくみ:インバーターで電流を切り替える

直流電源からインバーターを通してU相V相W相の3本でモーターへ電流を送り、回転子の位置を制御回路へ戻す流れの図
図3 ブラシレスモーターを回すのに要るもの
出典:東芝「ブラシレスモーターとは」、ニデック「ブラシレスDCモータとは」をもとに AI(Claude)で作成

ブラシレスモーターは、位置の検出とインバーターがセットです。磁石が今どこにあるかを知り、それに合わせて3相のコイルの電流を切り替えます。インバーターそのものについては技術:インバーターで説明しています。

トルクと速度の関係は、DC モーターとほぼ同じです。

出典:1-4-1 ブラシレスモーターとは(1)|東芝デバイス&ストレージ、2-2-1 ブラシレスDCモータとは|ニデック、1-3-2 ブラシレスDCモータ|ニデック

2つの回し方:矩形波駆動と正弦波駆動

矩形波駆動(6ステップ)

U→V、U→W、V→W、V→U、W→U、W→Vの6つの通電で磁界の向きが60度ずつ進み、回転子のN極が追いかける図
図4 矩形波駆動の6つのステップ
出典:東芝「矩形波駆動とは」、Texas Instruments「Sensorless Trapezoidal Control of BLDC Motors」をもとに AI(Claude)で作成

回転の角度に応じてスイッチを入れたり切ったりして、1回転で6回、60度ごとに電流の向きを切り替えます。いちばん簡単な方法で、センサーレスでは最も多く採られています。同時に流れるのは2相です。切り替えのときにトルクの脈動が出ます。

Nanotec の解説は、矩形波の切り替えでは角度のずれによりピークのトルクが 13.4 %(1 − cos30°)下がり、脈動により平均で約 4.5 % のトルクを失うとしています。

正弦波駆動

矩形波駆動の階段状の電流と、正弦波駆動のなめらかな電流を並べた図
図5 1相の電流の形
出典:東芝「矩形波駆動とは」、東芝「正弦波駆動とは」、Texas Instruments「Sensorless Trapezoidal Control of BLDC Motors」をもとに AI(Claude)で作成

各相に、120度ずつずらした正弦波の電圧をかけます。矩形波より効率が良く、振動と騒音が小さくなります。その代わり、回転子の位置を推定する必要があります。

矩形波駆動正弦波駆動
切り替え60度ごと連続して変える
同時に流れる相2相3相
効率・振動・騒音—矩形波より効率が良く、低振動・低騒音
制御の特徴いちばん簡単な方法回転子の位置の推定が要る

出典:3-7 矩形波駆動とは|東芝デバイス&ストレージ、3-8 正弦波駆動とは|東芝デバイス&ストレージ、Sensorless Trapezoidal Control of BLDC Motors(SPRABZ3)|Texas Instruments、Brushless DC motors|Nanotec

回転子の位置を知る方法:ホールセンサーとセンサーレス

回転子のまわりに3個のホールセンサーを置く方式と、誘起電圧が基準を横切る点を読むセンサーレス方式を並べた図
図6 位置の検出のしかた
出典:東芝「ホールセンサーによる位置検出」、東芝「誘起電圧による位置検出」をもとに AI(Claude)で作成

位置の検出には、主に2つの方法があります。センサーレスは部品を減らせますが、止まっているときは位置がわかりません。

ホールセンサーセンサーレス(誘起電圧)
しくみ3個を120度間隔に置き、60度ごとに検知する電流を止めている相の電圧から、60度ごとに検出する
長所非接触で耐久性が高いセンサーが要らず、超小型・安価なものに向く
短所高温に弱く、劣悪な環境には使えない停止中は電圧が出ず位置がわからない。この検出は矩形波駆動だけ

Nanotec の解説は、単純な逆起電力の検出は定格速度の約 20 % より遅いと不安定としています。位置を細かく合わせるサーボには、高精度のエンコーダーやレゾルバを使います。サーボについては基礎知識:サーボモーターで説明しています。

出典:3-5 ホールセンサーによる位置検出|東芝デバイス&ストレージ、3-6 誘起電圧による位置検出|東芝デバイス&ストレージ、Brushless DC motors|Nanotec

ブラシレスモーターの種類

インナーローターとアウターローター

固定子の内側に回転子があるインナーローターと、固定子の外側に回転子があるアウターローターを並べた図
図7 回転子の位置で分ける2つの形
出典:Nanotec「Brushless DC motors」をもとに AI(Claude)で作成
インナーローターアウターローター
回転子の場所固定子の内側固定子の外側
特長回転子の慣性が小さい。放熱に優れる回転子の径が大きく、同じ磁力でトルクが大きい。量産向きで安い
注意する点—慣性が大きく、超高速には向かない
使われ方産業用の大半—

「—」は、確かめた資料に特に書かれていない項目です。

磁石の付け方:SPM と IPM

磁石を回転子の表面に貼るものを表面磁石型(SPM)、中に埋め込むものを埋込磁石型(IPM)と呼びます。

BLDC と PMSM の違い

BLDCの台形の誘起電圧とPMSMの正弦波の誘起電圧を並べた図
図8 誘起電圧の形の違い
出典:Texas Instruments「Sensorless Trapezoidal Control of BLDC Motors」をもとに AI(Claude)で作成

PMSM(永久磁石同期モーター)は、ブラシレスモーターと基本的に同じ構造です。Texas Instruments の資料は、違いは誘起電圧の形だけで、BLDC は台形波、PMSM は正弦波と説明しています。一方で、制御のしかたで分けることもあり、東芝の解説は、呼び名はメーカーによってそろっていないとしています。カタログでは、呼び名より誘起電圧の形と駆動のしかたを確かめます。

出典:Brushless DC motors|Nanotec、1-3-2 ブラシレスDCモータ|ニデック、Sensorless Trapezoidal Control of BLDC Motors(SPRABZ3)|Texas Instruments、1-3 ブラシレスモーターの位置づけ|東芝デバイス&ストレージ

使われている所

ニデックの解説は、ハードディスク、CD-ROM ドライブ、冷蔵庫、洗濯機、冷蔵庫やエアコンのコンプレッサーを例に挙げています。

出典:1-3-2 ブラシレスDCモータ|ニデック

選ぶときに見る数字

見る数字意味
トルク定数(N·m/A)電流1Aあたりのトルク
電圧定数(V/krpm)回転数あたりに生じる電圧(逆起電力)
定格とピークNanotec の例では、ピークは定格の約3倍で約5秒まで

モーターだけでは回らないので、駆動回路とあわせて選びます。必要なトルクの計算については、課題「サーボ・ステッピングモーターの容量を負荷から計算して選びたい」も参考になります。ピークの値は機種で違うので、カタログで確かめます。

出典:Brushless DC motors|Nanotec

出典

  1. 2-2-1 ブラシレスDCモータとは|ニデック
  2. 1-4-1 ブラシレスモーターとは(1)|東芝デバイス&ストレージ
  3. 2-2 ブラシ付きDCモーターとブラシレスモーターの比較|東芝デバイス&ストレージ
  4. 1-3-2 ブラシレスDCモータ|ニデック
  5. インバータ駆動による三相インダクションモーターとブラシレスモーターの効率比較(RENGA No.173、2010年)|オリエンタルモーター
  6. ブラシレスモータ カタログ|マブチモーター
  7. 3-7 矩形波駆動とは|東芝デバイス&ストレージ
  8. 3-8 正弦波駆動とは|東芝デバイス&ストレージ
  9. Sensorless Trapezoidal Control of BLDC Motors(SPRABZ3)|Texas Instruments
  10. Brushless DC motors|Nanotec
  11. 3-5 ホールセンサーによる位置検出|東芝デバイス&ストレージ
  12. 3-6 誘起電圧による位置検出|東芝デバイス&ストレージ
  13. 1-3 ブラシレスモーターの位置づけ|東芝デバイス&ストレージ

※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・装置ではありません。

情報の確認日:2026年11月5日

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