圧電素子(ピエゾ素子)は、力を加えると電気を出し、電気をかけると形が変わる素子です。インクジェットプリンタのヘッド、ディーゼルエンジンのインジェクター、超音波洗浄機、センサーなどに使われています。動きは小さいものの、速く、大きな力を出せるのが特徴です。
この記事では、しくみ、材料と形の違い、カタログの数値の読み方、インクジェットとディーゼルでの使われ方、選び方、壊れる原因、企業をまとめます。
知りたいことから読む
- なぜ電気で動くのか知りたい → 圧電効果
- 素子の形の違いを知りたい → 単板・積層・バイモルフ・ランジュバン
- ハード材とソフト材を比べたい → ハード材とソフト材
- インクジェットでの使われ方を知りたい → インクジェットプリンタ
- ディーゼルでの使われ方を知りたい → ディーゼルエンジン
- 用途に合う素子を選びたい → 目的から選ぶ
- すぐ壊れないか心配 → 湿度と寿命
圧電素子とは
圧電効果:力と電気を行き来させる

出典:Wikipedia「Piezoelectricity」と村田製作所の説明をもとに AI(Claude)で作成
押すと電圧が出る性質を正圧電効果、電圧をかけると変形する性質を逆圧電効果と呼びます。センサーは前者、アクチュエータは後者を使います。超音波の振動子は、電圧で超音波を出し、はね返りを電圧に戻すので両方を使います。
この性質を持つのは、結晶の中の原子の並びが、中心に対して対称でない材料です。力で結晶がゆがむと、プラスとマイナスの電荷の中心がずれて電圧が生じます。
出典:Wikipedia「Piezoelectricity」、Wikipedia「圧電効果」
分極処理:焼いただけでは動かない

出典:富士セラミックスの説明と Wikipedia「Piezoelectricity」をもとに AI(Claude)で作成
圧電セラミックスは小さな結晶の集まりで、焼いただけでは分極の向きがばらばらです。そこで高温で高い直流電圧をかけて向きをそろえます。これを分極処理と呼びます。
富士セラミックスは、代表的な材料の PZT を、チタン酸鉛とジルコン酸鉛を混ぜたペロブスカイト構造の強誘電体と説明しています。混ぜる比率で特性を変えられます。
出典:富士セラミックス「Piezoelectric Ceramics」、Wikipedia「Piezoelectricity」
圧電効果の歴史
1880年にジャック・キュリーとピエール・キュリーの兄弟が正圧電効果を実験で示しました。翌1881年に、リップマンが逆の効果を理論から導き、キュリー兄弟が確かめました。1917年には、ランジュバンが水晶を使ったソナーを作り、超音波で水中の物を探す技術につながりました。
出典:Wikipedia「Piezoelectricity」、Wikipedia「圧電効果」、モンペリエ大学「Jacques Curie」の記事
材料と形の種類
材料の種類
| 材料 | 特徴 | 主な使い道 |
|---|---|---|
| PZT(ハード材) | 損失が小さく、Qm が高い。大きな振幅で連続して動かす用途向き | 超音波洗浄機、超音波溶着機、魚群探知機 |
| PZT(ソフト材) | 圧電定数が大きい。損失が大きく、キュリー点が低めの材料がある | 超音波センサー、医用プローブ、アクチュエータ |
| チタン酸鉛(PT)系 | 比誘電率が低く、厚み方向と面方向の結合係数の差が大きい | 超音波探傷、超音波流量計、レベル計 |
| ビスマス層状(BiT)系 | キュリー点が高い | 高温型の超音波流量計 |
| 水晶 | 天然にもある圧電材料。ランジュバンのソナーに使われた | — |
| PVDF(樹脂) | 薄く柔らかい膜にできる。セラミックスより電圧の出力係数が大きく、センサーに向く | センサー |
| 非鉛材料(KNN など) | 鉛を含まない。PZT に代わる材料の研究が続く | 本多電子は無鉛の製品を実用化した |
出典:富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」、Wikipedia「圧電効果」、Wikipedia「List of piezoelectric materials」、本多電子「圧電セラミックス」
鉛の規制
PZT は鉛を含みます。TÜV の解説によると、EU の委任指令 2025/2363 は RoHS の適用除外を分け、PZT 圧電セラミックスを含む 7(c)-VI の期限を 2027年12月31日としました。EU に出す製品は、最新の条文と部品メーカーの見解を確かめてください。
出典:TÜV Rheinland「EU Directive 2025/2363」の解説、本多電子「圧電セラミックス」
素子の形:単板・積層・バイモルフ・ランジュバン

出典:富士セラミックスの製品の説明と Wikipedia「圧電素子」をもとに AI(Claude)で作成
| 形 | しくみ | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 単板(バルク) | 1枚のセラミックスの両面に電極を付ける | センサー、超音波振動子 |
| 積層 | 薄い層と内部電極を重ね、低い電圧で大きな変位を得る | 精密位置決め、バルブ、ポンプ、インジェクター |
| バイモルフ | 伸縮する素子2枚を貼り合わせ、一方が伸びると他方が縮んでたわむ | マイクロポンプ、振動スイッチ、音響ピックアップ |
| ランジュバン型 | 2個の金属ブロックの間に素子をはさんだ一体構造。高電力で大きな振幅を出せる | 超音波洗浄、ワイヤーボンダ、プラスチックウェルダー、超音波カッター |
出典:富士セラミックス「応用製品」、富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)、トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
カタログの数値の読み方
主な定数の意味
| 記号 | 名前 | 読み方 |
|---|---|---|
| d33 | 圧電定数 | 電界あたりの伸びの大きさ。大きいほど、同じ電圧で大きく変位する。アクチュエータで見る |
| g33 | 電圧出力係数 | 力あたりの出る電圧の大きさ。センサーで見る |
| k33・kp | 電気機械結合係数 | 電気と機械の間で、どれだけエネルギーを変換できるか |
| Qm | 機械的品質係数 | 共振の鋭さ。大きいほど、共振で動かすときの機械の損失が小さい |
| tan δ | 誘電損失 | 電気の損失の大きさ。大きいと発熱しやすい |
| ε33/ε0 | 比誘電率 | 大きいほど素子の静電容量が大きくなる |
| Tc | キュリー点 | 圧電性が失われる温度 |
添え字の 33 は、電界と変形の向きがどちらも分極の方向であることを表します。31 は、分極方向の電界で、それと直交する方向に変形する場合です。表の読み方は編集部の整理で、値は次の節のカタログのものです。
ハード材とソフト材

出典:富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」をもとに AI(Claude)で作成
ハード材は Qm が高く、超音波で動かす用途に向きます。ソフト材は d33 が大きく、変位やセンサーの感度を取る用途に向きます。上の図の材料では、Qm は 25 から 2,500 まで、100倍の開きがあります。
| 材料 | 系 | d33 | g33 | k33 | Qm | tan δ(%) | ε33/ε0 | Tc(℃) | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| C-213 | ハード | 310 | 23.4 | 0.70 | 2,500 | 0.30 | 1,470 | 315 | 超音波洗浄機、溶着機、超音波モーター |
| C-2 | ハード | 367 | 29.2 | 0.76 | 1,200 | 0.25 | 1,460 | 300 | 超音波洗浄機、ソナー、魚群探知機 |
| C-6 | ソフト | 472 | 25.0 | 0.76 | 80 | 1.60 | 2,130 | 295 | 超音波センサー、アクチュエータ |
| C-82 | ソフト | 600 | 18.5 | 0.75 | 65 | 1.90 | 3,650 | 195 | 医用プローブ、アクチュエータ |
| C-93 | ソフト | 826 | 15.4 | 0.77 | 67 | 1.70 | 6,050 | 150 | 医用プローブ、アクチュエータ |
| M-5 | PT 系 | 58.2 | 30.3 | 0.47 | 1,450 | 1.50 | 220 | 310 | 超音波探傷機、レベル計 |
| B-600 | BiT 系 | 19.0 | 14.3 | — | 5,980 | 0.30 | 150 | 670 | 超音波流量計(高温型) |
単位は d33 が ×10⁻¹² m/V、g33 が ×10⁻³ V·m/N。いずれも代表値で保証値ではありません。B-600 の d33 と g33 は参考値です。
キュリー点と使ってよい温度
村田製作所の説明では、キュリー点を超えると結晶の形が変わって圧電性を失い、室温に戻しても回復せず、高い直流電圧で分極し直す必要があります。使ってよい温度は、キュリー点よりかなり低い所にあります。たとえば富士セラミックスの SA シリーズは、キュリー点 295℃ に対して使用温度の範囲が −20〜+100℃ です。
上の表のとおり、d33 の大きいソフト材にはキュリー点が低いものがあります。C-93 は d33 が最大の一方で、キュリー点は 150℃ です。高温で使うなら、まず温度から材料を絞ります。
出典:村田製作所 FAQ「キュリー点」、Micromechatronics「Material Characteristics」、富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)、富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」
アクチュエータとしての性能
積層にすると変位が足し算になる

出典:富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」の d33 の値(試算は編集部)をもとに AI(Claude)で作成
1枚の素子の伸びはわずかです。d33 が 600×10⁻¹² m/V の材料に 150 V をかけても、約 0.09 µm しか伸びません。そこで薄い層を重ね、すべての層に同じ電圧をかけて、伸びを足し合わせます。上の図の 100 層の値は、編集部の試算で、理想の場合です。
変位は長さ、力は断面

出典:富士セラミックスの SA シリーズのカタログをもとに AI(Claude)で作成
| 型式 | 断面(mm) | 全長(mm) | 変位量(µm) | 発生力(N) | 共振周波数(kHz) | 静電容量(µF) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SA0505-150-08M | 5×5 | 10 | 8 | 950 | 126 | 0.34 |
| SA0707-150-16M | 7×7 | 20 | 16 | 1,900 | 64 | 1.36 |
| SA1010-150-32M | 10×10 | 40 | 32 | 3,800 | 32 | 5.44 |
変位量は全長に、発生力は断面積に比例します。この例では全長 1 mm あたりの変位は 0.8 µm、つまり伸びは 0.08%です。一方で、長くすると共振周波数は下がり、太く長くすると静電容量は増えます。トーキンのカタログには、発生力 20,000 N や変位量 100 µm を超える金属ケース封入型も載っています。
出典:富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)、トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
変位と力の関係

出典:富士セラミックスの SA シリーズのカタログをもとに AI(Claude)で作成
発生力は、150 V をかけた状態で、変位が 0 に戻るまで押し返すときの力です。最大の変位と最大の発生力を同時には取り出せません。おもりのように一定の荷重なら、変位の幅は変わらず、原点だけがずれます。ばねのように押し返す相手では、変位が減ります。
出典:富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)、トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
ヒステリシスと制御

出典:富士セラミックスの SA シリーズのカタログの図をもとに AI(Claude)で作成
電圧と変位は一直線にはならず、ヒステリシスがあります。トーキンは nm のオーダーで制御できるとしていますが、そのためには変位を測って電圧を直す方法が要ります。駆動では、ヒステリシスのほかに、共振によるリンギング、発熱、容量の充放電の電流も考えます。
出典:富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)、トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
変位が足りないときは拡大する

出典:Wikipedia「Piezoelectricity」の説明をもとに AI(Claude)で作成
直動の圧電アクチュエータのストロークは、通常 100 µm 未満です。mm の単位が必要なら、てこやヒンジで広げる機構を組み合わせます。メカノトランスフォーマの MechaTrans は、この考え方の製品です。広げた分だけ力は小さくなります。
出典:Wikipedia「Piezoelectricity」、メカノトランスフォーマ公式サイト
使い道
インクジェットプリンタ:インクを押し出す

出典:エプソンの説明と Wikipedia「インクジェットプリンター」をもとに AI(Claude)で作成
ピエゾ式のヘッドは、インクの通り道に付けた素子に電圧をかけ、素子の変形でインクを押し出します。サーマル式はヒーターでインクに気泡を作って押し出します。
| ピエゾ式 | サーマル式 | |
|---|---|---|
| 押し出す力 | 圧電素子の変形 | 加熱してできる気泡 |
| 長所 | 電圧で滴の大きさを制御しやすい。インクの種類が広い。ヘッドの耐久性が高い | ヘッドの構造が比較的単純。高密度化しやすい |
| 短所 | インク内の気泡に弱い。ヘッドが複雑 | 熱に強いインクが要る。ヘッドの寿命が短く交換することが多い |
エプソンは、1993年の MJ-500 で圧電素子の方式「マイクロピエゾ」を製品にしました。同社の説明では、PrecisionCore の薄膜ピエゾ素子の厚さは約1ミクロンで、1つのノズルから1秒間に最大5万発近いインクを吐出します。別の説明では、1つのノズルから最大5種類の大きさの滴を出せるとしています。いずれもメーカーの説明です。

出典:アルマーク株式会社 (Almarq)(YouTube)
出典:エプソン「PrecisionCore」、Epson UK「Micro Piezo Technology」、Wikipedia「インクジェットプリンター」、PC Watch「マイクロピエゾ20周年特別インタビュー【前編】」
ディーゼルエンジン:燃料を噴く弁を動かす

出典:SAE 2006-01-0274 と Phys.org の記事をもとに AI(Claude)で作成
ディーゼルエンジンのコモンレールでは、高圧の燃料をレールにためておき、インジェクターの弁を開いて噴きます。弁を動かす部品に積層圧電素子を使うのが、ピエゾ式インジェクターです。1回の燃焼の間に何回にも分けて噴くため、弁には速い応答が求められます。
デンソーの論文では、ピエゾ式は 180 MPa で燃焼1回あたり最大5回の噴射ができ、最短の噴射間隔が、ソレノイド式の 0.4 ms から 0.1 ms に縮まったとしています。ピエゾ素子はソレノイドより速く作動するとも説明しています。Motor-Fan の記事は、ボッシュの第三世代のピエゾ式インジェクターがソレノイド式より 30%軽いと伝えています。
シーメンス VDO が VW と共同で開発したピエゾ式ユニットインジェクターは、2004年11月に量産が始まりました。ユニットインジェクターは、噴射ポンプとノズルを1つにまとめた方式です。2005年の記事によると、噴射圧は 2,000 bar を超え、最大 2,200 bar で、ソレノイド式の3倍速いとされています。

出典:Motor-Fan の記事の年表をもとに AI(Claude)で作成
出典:SAE 2006-01-0274「180MPa Piezo Common Rail System」(デンソー)、Phys.org「Siemens VDO advanced piezo」(2005年5月)、Motor-Fan「ディーゼル覇権の歴史」(2022年8月)
超音波:洗浄・溶着・計測・魚群探知
圧電素子は超音波を出す部品としても広く使われます。大きな振幅を出すならランジュバン型、距離や流量を測るならセンサーや振動子という分け方です。富士セラミックスの洗浄機用のランジュバン型振動子は 28 kHz と 40 kHz で、加工機用はワイヤーボンダ、プラスチックウェルダー、超音波カッターに使われます。

出典:古野電気の送受波器ガイドをもとに AI(Claude)で作成
古野電気の説明では、魚群探知機の振動子は振動して超音波を出し、はね返りを電気信号に変えます。50 kHz は探知角度が 45 度前後、200 kHz は 10 度前後です。空中の距離センサーも同じ考え方で、自動車の後方検知や自動ドアに使われます。
出典:富士セラミックス「応用製品」、古野電気「魚群探知機 送受波器ガイド」、村田製作所「超音波センサ」
そのほかの使い道
| 使い道 | 圧電素子の働き |
|---|---|
| 圧電サウンダ | 圧電振動板を共鳴器のケースに組み込み、入力の信号に応じて音を出す |
| ガスライター | ばねで打ったハンマーが素子をたたき、出た高電圧で放電させて着火する |
| 超音波モーター | カメラのレンズの駆動に使う。キヤノンは1987年に交換レンズ用の USM を実用化したとしている |
| 加速度センサー、AE センサー | 振動や力を電荷に変えて測る |
| 環境発電 | 振動から小さな電力を取り出す。排熱や振動で発電したいを参照 |
出典:村田製作所「圧電サウンダ」、Wikipedia「Gas lighter」、キヤノンカメラミュージアム「EF レンズ」、富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」、富士セラミックス「応用製品」
選び方
目的から選ぶ
| 目的 | まず検討するもの | 見る数値 |
|---|---|---|
| µm の位置決め、大きな力 | 積層(ソフト材) | 変位量、発生力、共振周波数、静電容量 |
| 100 µm を超える動き | 変位拡大機構つき、バイモルフ | ストローク、発生力、応答 |
| 超音波で洗浄・溶着・加工 | ランジュバン型(ハード材) | 周波数、Qm、tan δ、キュリー点 |
| 距離や物の有無を測る | 超音波センサーの部品 | 周波数、指向性、防滴の有無 |
| 振動や力を測る | 加速度センサー、フォースセンサー | 感度、周波数の範囲、使用温度 |
| 音を出す | 圧電サウンダ | 周波数、音圧、実装の形 |
| 100℃を超える環境 | 金属ケースの高温品、キュリー点の高い材料 | 最高使用温度、キュリー点 |
| 湿度の高い環境 | 金属ケース封入型 | 封止の方式、MTTF |
この表は、この記事の出典をもとに編集部が整理した目安です。
電源の見積もり
圧電素子は電気から見るとコンデンサーです。電圧を保つだけならほとんど電流は流れませんが、速く動かすと充放電の電流が要ります。トーキンの AE シリーズは、保持のときの漏れ電流を 100 µA 以下としています。
電流の目安は、静電容量と電圧の変化の速さの積です。0.34 µF の素子を 0〜150 V の正弦波、1 kHz で動かすと、ピークの電流は 2π × 1,000 × 0.34×10⁻⁶ × 75 ≒ 0.16 A です(編集部の試算)。電圧だけでなく、電源の電流も足りるかを確かめます。
動かせる周波数の目安として、トーキンは自己共振周波数の 1/3 程度としています。また、リンギングによる破損を防ぐため、立ち上がりの速さが共振周期の 3 倍以上になるように駆動するよう求めています。
出典:トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)、富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)
設計で確かめること
- 動きと力:必要な変位と、そのときかかる力は線の下側か。相手の剛性で目減りしないか
- 周波数:共振周波数の 1/3 程度までか。発熱は許せるか
- 温度:使用温度の範囲に入るか。キュリー点だけで判断していないか
- 湿度:樹脂外装で足りるか。金属ケースが要るか
- 取り付け:曲げ、ねじり、引っ張りがかからないか。予圧はかけたか
- 電源:電圧、ピーク電流、逆電圧がかからないこと
- 規制:鉛を含む材料を、出荷先の規制で使えるか
壊れる原因と注意点
トーキンは、積層の主な故障モードを絶縁抵抗の劣化、ショート、オープンとしています。ショートした場合も考えて、製品側で冗長設計や延焼対策をするよう求めています。
湿度と寿命

出典:トーキンのカタログの推定式をもとに AI(Claude)で作成
トーキンの推定式では、直流で使う樹脂外装タイプの寿命は、電圧、湿度、温度で変わります。湿度を 60%から 40%に下げると、推定の寿命は約7倍になります。金属ケース封入型は素子が外気と遮断されるので、式に湿度が入りません。同社の例では、25℃・150 V で約 179,000 時間(約 20.4 年)です。
パルスで動かすときは、発熱で湿度の影響を受けにくくなり、寿命が大きく延びるとしています。AE0203D08 は 0〜150 V・500 Hz で 500 時間(9億回相当)、ASB170C801NP0 は 85℃・90〜95%RH で 1,000 時間(1億回相当)故障がなかったという結果です。
出典:トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
引っ張りと曲げに弱い

出典:トーキンのカタログの固定方法の例をもとに AI(Claude)で作成
積層は引っ張る力に弱く、常に圧縮の力がかかる状態で使います。トーキンは素子に加える圧力を発生力の 20〜50%、富士セラミックスは発生力の 0.3 倍程度を目安に挙げています。発生力 800 N の品で、引っ張りの目安は 50 N 以下です。
金属ケース封入型は、ケースで内部の素子に予め圧縮力がかかるように作られています。どちらの形でも、素子の軸と荷重の中心を合わせ、曲げやねじりがかからないように取り付けます。
出典:トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)、富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)
発熱
誘電損失があるので、高い周波数で動かすと発熱します。富士セラミックスの SA0505-150-08M は、0〜150 V・1,000 Hz の正弦波で3分動かしたときの発熱の値が約 90℃ です(カタログのグラフの読み取り)。同じ周波数でも 0〜50 V なら 10℃ 未満です。Micromechatronics は、ソフト材の損失率を 2〜4%、ハード材を約 0.5%とし、高い周波数で動かすときは熱暴走に注意するよう求めています。
出典:富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)、Micromechatronics「Material Characteristics」
保管と取り扱い
- 高電圧を使うので、感電に注意する
- 樹脂外装タイプは素手で扱わず、有機溶剤で洗浄しない
- 落下などの過度な衝撃を加えない(内部のセラミック素子が壊れることがある)
- 樹脂外装タイプは、−5〜+40℃・40%RH 以下が望ましい環境で保管し、結露させない
- 100℃以上の環境に置いたときや、3か月以上保管したあとは、使用前に分極し直す(手順はカタログを参照)
トーキンのカタログの注意事項をまとめました。製品ごとの条件は各社の仕様書で確かめてください。
出典:トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
企業紹介(圧電素子技術)
圧電セラミックス、積層アクチュエータ、超音波部品を手がける会社です。下の表の●は、各社の公式サイトやカタログで扱いを確認できたものです。空欄は、扱っていないという意味ではありません。
株式会社富士セラミックス|圧電セラミックスとセンサの専門メーカー
富士セラミックスとは
富士セラミックスは、静岡県富士宮市に本社を置く、1975年設立の会社です。圧電セラミックスとセンサを専門に作っています。

富士セラミックスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 圧電素子 | バルク素子、積層圧電アクチュエータ、複合振動子。材料は PZT のハード材とソフト材、PT 系、PN 系、BiT 系 |
| 応用製品 | ランジュバン型超音波振動子、空中超音波センサ、バイモルフ型振動子、霧化器用振動子 |
| センサ | 加速度センサ、AE センサ、フォースセンサ |
富士セラミックスが解決できる課題
- 用途に合わせて材料や形を選びたい
- 超音波洗浄や加工の振動子を調達したい
- 振動や AE を測るセンサーを探したい
出典:富士セラミックス「会社案内」、富士セラミックス「圧電素子」、富士セラミックス「応用製品」、富士セラミックス「圧電センサ」、富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」
株式会社トーキン|積層圧電アクチュエータを作る
トーキンとは
トーキンは、宮城県白石市に本社を置く電子部品の会社です。生産品目に、コンデンサやセンサと並べて圧電デバイスを挙げています。

出典:トーキンのカタログをもとに AI(Claude)で作成
トーキンの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| AE シリーズ | 樹脂外装型。発生力 3,500 N/cm²(typ.)、nm のオーダーで制御できるとしている |
| ASB・ASL・AHB シリーズ | 金属ケース封入型。最高使用温度 85℃ の品と 150℃ の品がある |
| そのほか | 圧電セラミックス、圧電式振動センサ |
トーキンが解決できる課題
- 精密な位置決めの駆動源が欲しい
- 湿度の高い環境で積層を使いたい
- カタログの式で寿命を見積もりたい
出典:トーキン「会社概要」、トーキン公式サイト、トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
有限会社メカノトランスフォーマ|変位拡大機構つきの圧電アクチュエータを作る
メカノトランスフォーマとは
メカノトランスフォーマは、東京都千代田区にある会社です。変位拡大機構つきのピエゾアクチュエータ MechaTrans を設計・製造し、量産メーカーへの技術供与とコンサルタントも事業に挙げています。

メカノトランスフォーマの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| MechaTrans | 変位拡大機構を持つピエゾアクチュエータ。MTAU・MTD・MTKK などのシリーズ |
| ステージとねじ | ピエゾアシストステージ、高速チップ・チルトステージ、ピエゾ位置決めねじ MTSCREW |
| 素子と材料 | 積層圧電アクチュエータ、マクロファイバーコンポジット、1-3 圧電複合材 |
メカノトランスフォーマが解決できる課題
- 圧電素子の変位では足りず、機構で広げたい
- 特注の設計や駆動回路の条件を相談したい
- 薄いシート状のアクチュエータやセンサーを試したい
出典:メカノトランスフォーマ「会社概要」、メカノトランスフォーマ公式サイト
本多電子株式会社|超音波の応用製品を材料から作る
本多電子とは
本多電子は、愛知県豊橋市に本社を置く会社です。圧電セラミックス、圧電高分子膜、圧電薄膜を研究開発から生産まで一貫して手がけています。

出典:本多電子の公式サイトをもとに AI(Claude)で作成
本多電子の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| センサ・振動子 | 15 kHz〜400 MHz の周波数帯 |
| 製品 | 圧電セラミックス素子、超音波センサ、ボルト締め振動子 |
| 無鉛 | 無鉛圧電セラミックス製品を実用化した |
| 超音波機器 | 洗浄機、流量計、レベル計、探傷機、溶着器、魚群探知機、医療用の画像診断装置 |
本多電子が解決できる課題
- 超音波のセンサーや振動子を、周波数に合わせて調達したい
- 鉛を含まない圧電材料を検討したい
出典:本多電子「会社概要」、本多電子「圧電セラミックス」、本多電子公式サイト
日本セラミック株式会社|超音波センサなどのセンサを作る
日本セラミックとは
日本セラミックは、鳥取県鳥取市に本社を置く、各種センサやモジュールなどの電子部品の会社です。

出典:日本セラミックの製品ページの説明をもとに AI(Claude)で作成
日本セラミックの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 超音波センサ | 振動子に圧電セラミックを用いる。密閉型と開放型 |
| そのほかのセンサ | 赤外線センサ、電流センサ、ホール素子 |
日本セラミックが解決できる課題
- 物の有無や距離を超音波で測りたい
- 標準品に加えて特注品も相談したい
出典:日本セラミック「会社概要」、日本セラミック「超音波センサ」
株式会社村田製作所|超音波センサと圧電サウンダを扱う
村田製作所とは
村田製作所は電子部品の会社です。独自の圧電セラミック技術で超音波センサを商品化しているとしており、圧電サウンダも扱っています。

出典:村田製作所の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
村田製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 超音波センサ | 高周波型 300 kHz・φ9.9 mm、防滴型 48 kHz・φ15.5 mm、開放型 40 kHz・φ9.9 mm(開放型は新規設計非推奨の表示あり) |
| 圧電サウンダ | SMD タイプとピンタイプ。発振回路を内蔵せず、入力の信号に応じて音を出す(製品ページに生産中止予定の表示あり) |
村田製作所が解決できる課題
- 自動車の後方検知や自動ドアの距離センサーを探したい
出典:村田製作所「超音波センサ」、村田製作所「圧電サウンダ」
よくある質問
- 圧電素子とは何ですか?
- 力を加えると電気を出し、電気をかけると形が変わる素子です。ピエゾ素子とも呼びます。
- ピエゾと圧電は違いますか?
- 同じものです。ピエゾ(piezo)はギリシャ語の「押す」が由来で、圧電効果を英語で piezoelectric effect と呼びます。
- インクジェットではどう使われていますか?
- ヘッドの素子に電圧をかけて変形させ、インクを押し出します。熱を使わないので、インクの種類が広いとされています。
- ディーゼルエンジンではどう使われていますか?
- インジェクターの弁を動かします。ソレノイド式より応答が速く、1回の燃焼の間に何回にも分けて噴射しやすくなります。
- どれくらい動きますか?
- 直動の積層で、通常 100 µm 未満です。富士セラミックスの 150 V の標準品は、全長 10 mm で 8 µm です。mm の単位が要るなら拡大機構を組み合わせます。
- ハード材とソフト材はどう選びますか?
- 超音波で大きな振幅を出すならハード材、変位やセンサーの感度を取るならソフト材が出発点です。
- 何度まで使えますか?
- 材料と製品で変わります。キュリー点より十分低い温度で使います。富士セラミックスの SA シリーズはキュリー点 295℃ に対して +100℃ までです。
- すぐに壊れますか?
- 主な故障は絶縁の低下によるショートで、樹脂外装タイプは湿度の影響を強く受けます。湿度を下げるか、金属ケース封入型を検討します。
回答は、このページの出典をもとに編集部がまとめたものです。
関連する技術・ページ
- ひずみゲージ・ロードセル
- ファインセラミックス
- PID制御・モーション制御
- 非破壊検査
- 基礎知識:共振
- 基礎知識:ヒステリシス
- 基礎知識:誘電率・誘電正接
- 製品:アクチュエーター
- 製品:センサー
- 装置の排熱や振動で発電したい
- センサーを小さく組み込みたい
- 状態を検知したい
出典・確認日
- Wikipedia「Piezoelectricity」
- Wikipedia「圧電効果」
- 富士セラミックス「Piezoelectric Ceramics」
- モンペリエ大学「Jacques Curie」の記事
- 富士セラミックス「圧電セラミックスの材料特性」
- Wikipedia「List of piezoelectric materials」
- 本多電子「圧電セラミックス」
- TÜV Rheinland「EU Directive 2025/2363」の解説
- 富士セラミックス「応用製品」
- 富士セラミックス「積層型圧電アクチュエータ(樹脂外装タイプ)」(2020年3月)
- トーキン「積層圧電アクチュエータ Vol.01」(2017年)
- 村田製作所 FAQ「キュリー点」
- Micromechatronics「Material Characteristics」
- メカノトランスフォーマ公式サイト
- エプソン「PrecisionCore」
- Epson UK「Micro Piezo Technology」
- Wikipedia「インクジェットプリンター」
- PC Watch「マイクロピエゾ20周年特別インタビュー【前編】」
- SAE 2006-01-0274「180MPa Piezo Common Rail System」(デンソー)
- Phys.org「Siemens VDO advanced piezo」(2005年5月)
- Motor-Fan「ディーゼル覇権の歴史」(2022年8月)
- 古野電気「魚群探知機 送受波器ガイド」
- 村田製作所「超音波センサ」
- 村田製作所「圧電サウンダ」
- Wikipedia「Gas lighter」
- キヤノンカメラミュージアム「EF レンズ」
- 富士セラミックス「会社案内」
- 富士セラミックス「圧電素子」
- 富士セラミックス「圧電センサ」
- トーキン「会社概要」
- トーキン公式サイト
- メカノトランスフォーマ「会社概要」
- 本多電子「会社概要」
- 本多電子公式サイト
- 日本セラミック「会社概要」
- 日本セラミック「超音波センサ」
※製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。写真は出典を示した会社のものです。そのほかの図と文章は、各社の資料の数値と事実を要約して編集部が作成しました。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。
情報の確認日:2026年11月4日 本ページの内容は一般的な情報です。数値はカタログや出典の例で、実際の選定と設計は最新の仕様書と規制で確かめてください。

