ネオジム磁石のモーターは小さく強い一方、ネオジムやジスプロシウムなどのレアアースを使います。レアアースは産出と精錬が中国に集中しており、価格が大きく動いたり、輸出が規制されたりしてきました。そこで、レアアースを減らす、または使わないモーターの開発と製品化が、自動車や部品のメーカーで進んでいます。
この記事では、今のネオジム磁石のモーターの課題を数字で確かめ、置き換え先の候補(重希土類を使わないネオジム磁石・フェライト磁石のモーター・磁石を使わないモーター・磁石のリサイクル)を比べ、目的ごとの選び方と、置き換えるときの注意を紹介します。
ネオジム磁石のモーターの課題
産出と精錬が中国に集中している
財務省の「ファイナンス」(2025年10月号)は、米国地質調査所(USGS)のデータをもとに、2024年の中国のレアアースは採掘生産が世界の69.2%、精錬は約9割、埋蔵量は48.9%を占めるとしています。

出典:財務省「ファイナンス」2025年10月号の記載(USGS のデータ)をもとに AI(Claude)で作成
2025年4月4日、中国はサマリウム・ガドリニウム・テルビウム・ジスプロシウム・ルテチウム・スカンジウム・イットリウムの7種の中重希土類の輸出管理を始め、輸出には商務部の許可が要るようになりました(JETRO)。同じ財務省の記事は、4月上旬以来に出された数百件の輸出許可の申請のうち、承認されたのは25%程度だったとしています。2025年10月9日に発表された、さらに広い輸出管理の措置は、中国商務部が10月30日に実施を1年間停止すると公表しています(CISTEC)。停止は2026年11月10日までの暫定のものです(JETRO、2026年3月)。
日本向けには、2026年1月6日に商務部公告2026年第1号が出て即日施行され、全ての両用(デュアルユース)品目について、日本の軍事ユーザー・軍事用途と、日本の軍事力の向上に寄与するそのほか一切のエンドユーザー・用途への輸出が禁止されました。JETRO は、1月7日の時点で、こうした用途の定義の詳しい説明はなく、規制の対象が不明瞭だとしています(JETRO、2026年1月)。
JETRO のレポート(2026年3月)によると、日本企業への影響が最も大きかったのは2025年4月の7種の管理でした。中国からの日本向けのレアアース磁石の輸出は2025年4〜5月に大きく減り、5月の25.7トンは近年で最低の水準でした。7月以降はおおむね過去2年間の単月の実績と同じ程度まで戻りましたが、輸出の許可は申請から約3カ月以上かかる場合が多いとしています。
価格が大きく動く
2010年9月の尖閣諸島の漁船衝突事件のあと、中国はレアアースを実質的に対日禁輸の状態にし(10月28日解除の報道)、2011年の第1回の輸出許可枠も前年から35%減らされました。2011年7月には、2010年1月と比べてネオジムが約13倍、ジスプロシウムが約23倍の過去最高値になりました(JX日鉱日石リサーチ(現 ENEOS 総研)のレポート、2012年)。

出典:JX日鉱日石リサーチのレポート(2012年)をもとに AI(Claude)で作成
高温で使うには、重希土類を加えてきた
ネオジム磁石は、温度が上がると保磁力が下がり、磁力を失いやすくなります。そこで、ネオジムの一部をジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)に置き換えて保磁力を上げてきました。ただし、保磁力が上がる一方で、残留磁束密度(磁力の強さ)は下がります(プロテリアル)。ハイブリッド車のモーターは使用中に200℃程度まで温度が上がるため、Dy が8%程度使われていました(NIMS・JST、2014年)。

出典:プロテリアル・NIMS・JSTの説明をもとに AI(Claude)で作成(数値ではない)
出典:コラム「中国の戦略物資としてのレアアース」(ファイナンス 2025年10月号)|財務省、中国商務部、7種の中重希土類の輸出管理を発表(2025年4月)|JETRO、米中合意についてのファクトシート(2025年11月5日)|CISTEC、中国、デュアルユース品目の対日輸出管理を強化(2026年1月)|JETRO、中国のレアアース輸出管理(1)日本への磁石輸出に大きな影響(2026年3月)|JETRO、レアアースをめぐる中国の戦略と日本の対応(2012年)|JX日鉱日石リサーチ、ネオジム磁石とは?特徴や課題、高性能化のポイントを解説|プロテリアル、ジスプロシウムフリーネオジム磁石の開発(2014年3月26日)|NIMS・JST
置き換え先の候補
置き換え先は、どこまでレアアースを減らすかで分かれます。ネオジムは使い続けて重希土類だけをなくす方法、磁石をフェライト磁石にする方法、磁石そのものを使わないモーターにする方法です。もう1つの候補として、磁石をリサイクルしてレアアースを取り戻す方法も比べます。

編集部が整理した分類。AI(Claude)で作成
重希土類を使わないネオジム磁石
ホンダと大同特殊鋼は、重希土類を全く使わない熱間加工のネオジム磁石を、ハイブリッド車の駆動モーターに使えるようにしました(2016年)。結晶の粒を従来の焼結磁石の約10分の1に細かくして、そろえて並べることで、耐熱性と磁力を両立させたとしています。トヨタは2018年に、重希土類を使わず、ネオジムの一部をランタンとセリウムに置き換えて、ネオジムの使用量を最大50%減らした磁石を発表しました。
焼結磁石の結晶の境目(粒界)に重希土類をしみこませる粒界拡散は、重希土類をなくすのではなく、使う量を大幅に減らす方法です(プロテリアル)。愛知製鋼の MAGFINE のように、Dy・Tb を使わないボンド磁石(磁石の粉を樹脂で固めた磁石)もあります。

出典:日立金属のポスター要旨(2020年)・愛知製鋼「MAGFINE の技術」をもとに AI(Claude)で作成(フェライト焼結磁石の1/10 は編集部の計算)
フェライト磁石のモーター
フェライト磁石は、酸化鉄が主成分で安く、化学的に安定しています。ただし最大エネルギー積はネオジム磁石の10%程度と小さいため(日立金属(現 プロテリアル)の資料)、同じ形のモーターにそのまま入れると、出力が下がります。そこで、磁石の置き場所と大きさを工夫します。
プロテリアルは、高性能のフェライト磁石を使い、磁石の置き場所と大きさを最適化したモーターを試作して、100kW を超える出力を確かめました(2023年)。ローターとステーターの径は変えず、運転温度や高速回転での強度を考えて設計したとしています。フェライト磁石はネオジム磁石より電気抵抗が高く、高速回転での渦電流損失を抑えることにもつながるとしています。北海道大学と NEDO は2010年に、フェライト磁石を使うアキシャルギャップ形のモーターで、同じ大きさのハイブリッド車用の希土類磁石モーターに匹敵する50kW を出したと発表しています。

一般的な形を簡略化した模式図。実際の形は機種ごとに異なる。AI(Claude)で作成
リラクタンスモーター(SR・同期リラクタンス)

リラクタンスモーターは、鉄心の磁気の通りやすさの差で回転する力(リラクタンストルク)を生みます。磁石がいらず、鉄心と銅で作れます。SR(スイッチトリラクタンス)モーターは、ローターが歯車のような突極の鉄心だけでできています(編集部の解説)。日本電産(現 ニデック)は2012年に EV 用の SR モーターを発表し、SR モーターの課題だった振動や騒音を低減したとしました。一方で、永久磁石のモーターより精密に制御しなければならないため、専用のインバーターが必要になります(EE Times Japan、2012年)。

同期リラクタンスモーターは、ローターの鉄心にすき間(フラックスバリア)を設けて、磁気の通りやすい向きと通りにくい向きを作ります(編集部の解説)。東芝産業機器システムは2015年に、永久磁石を使わずに国際高効率規格で IE5 相当を実現できるとするモーターを参考出展しました(MONOist)。メタルアートと Yamada Power Unit は2023年に、電動車用の同期リラクタンスモーターを共同開発し、銅の使用量を約10%減らせる、誘導モーター並みの低騒音・低振動を確かめたと報じられています(ニュースイッチ。実用化の時期は未定)。
誘導モーター・巻線界磁モーター

誘導モーターは、ステーターの回転磁界でローターに電流を流して回ります(編集部の解説)。レアアースを使いませんが、永久磁石のモーターに比べて出力密度で劣り、小型・高出力にするには不利とされます。ニデックは、回転数を最高3万2000rpm に上げて小型・高出力にした、磁石を使わない誘導モーターの電動アクスルを出展しています(日経クロステック、2024年)。

巻線界磁モーターは、磁石の代わりにローターのコイルに電流を流して磁界を作ります。日産は EV「アリア」の駆動に使い、高速走行時の効率、音と振動の低減、レアアースのリスクの低減を理由に挙げています(日経クロステック)。ただし、ローターに電流を送るブラシの機構の分、軸方向に長くなるとされます(Motor Fan)。
磁石のリサイクル

使用済みのモーターから磁石を取り出し、レアアースを取り戻す方法です。新しく掘り出すレアアースを減らせますが、回収できる量は、使い終わる製品の量で決まります(編集部の解説)。日産と早稲田大学は2021年に、モーターを手で分解せずに炉で溶かしてレアアースを回収する技術を発表し、作業時間を50%減らせるとしています(MONOist)。エコアドバンスは、使用済みモーターからのネオジム磁石の回収を2011年から行っています。
出典:世界初、重希土類完全フリー磁石をハイブリッド車用モーターに採用(2016年)|本田技研工業、重希土類フリーでネオジム使用量半減の車載モーター用磁石、トヨタが開発(2018年)|MONOist、ネオジム磁石とは?特徴や課題、高性能化のポイントを解説|プロテリアル、MAGFINE|愛知製鋼、粒界近傍の微細組織が保磁力に及ぼす影響の解析(2020年)|日立金属(文部科学省 元素戦略 ポスター)、プロテリアルが高性能フェライト磁石を適用したモーターの性能を実機で確認(2023年)|Motor Fan、レアアースフリーのハイブリッド自動車用モータを開発(2010年)|北海道大学・NEDO、レアアース不要のEV用モーター、日本電産が2013年にも量産へ(2012年)|EE Times Japan、永久磁石を使わずIE5相当の高効率、東芝がリラクタンスモーターを参考出展(2015年)|MONOist、永久磁石不要のEV用モーター(2023年)|ニュースイッチ、ニデックが3万rpm超EVモーター、磁石フリーでも小型・高出力化(2024年)|日経クロステック、駆動に巻き線界磁式モーターを選択、日産新型EVのなぜ|日経クロステック、巻線界磁式モーターの解説|Motor Fan、使用済みモーターからのレアアース回収時間を半減、日産と早稲田大学(2021年)|MONOist
目的と置き換え先の比較表
行が置き換えの目的、列が置き換え先の候補です。◎は第一候補、○は有効、△は条件によって有効を表します。目的の行をクリックすると、理由と出典を書いたカードに移ります。
| 課題(症状) | 重希土類を使わない ネオジム磁石 | フェライト磁石の モーター | リラクタンス モーター(SR など) | 誘導モーター・ 巻線界磁モーター | 磁石の リサイクル |
|---|---|---|---|---|---|
| ADy・Tb(重希土類)の調達と価格が不安 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
| Bネオジムも含めて、レアアースを使わずに作りたい | △ | ◎ | ◎ | ◎ | △ |
| C今の大きさのまま、出力を保ちたい | ◎ | ○ | △ | △ | |
| D熱や温度で磁力が落ちるのが心配 | ○ | △ | ◎ | ◎ | |
| E量産の実績がある方法から選びたい | ◎ | △ | ○ | ○ | ○ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
◎・○・△の理由と出典は、下の「目的ごとの選び方」の各カードに書いています。空欄は、その目的には効かない候補です。記号は、各社・研究機関の公開情報をもとにした編集部の評価で、同じ目的の中での比較です。
目的ごとの選び方
目的(A〜E)ごとに、比べた結果、候補、置き換えるときの注意をまとめました。
Dy・Tb(重希土類)の調達と価格が不安
ネオジム磁石のモーターを使っていて、ジスプロシウム・テルビウムの値上がりや輸出規制が心配。

- 比べた結果
- ネオジム磁石にジスプロシウム(Dy)を加えるのは、高温でも磁力を保つためです。ハイブリッド車のモーターは200℃程度まで温度が上がるため、Dy が8%程度使われていました(NIMS・JST、2014年)。Dy・Tb は、2025年4月に中国が輸出管理を始めた7種の中重希土類に入っています。この目的には、Dy・Tb を使わない磁石と、磁石を使わないモーターのどれもが効きます。
- 候補
- 重希土類を使わないネオジム磁石(◎)ローターの設計は見直すが、モーターの方式は変えずに Dy・Tb をなくす
- フェライト磁石・磁石を使わないモーター(◎)レアアースそのものを使わない
- 磁石のリサイクル(○)回収した磁石から Dy・Tb を取り戻す。量は限られる
Dy・Tb を使わないネオジム磁石にしても、ネオジムは残ります。ネオジムも含めて調達の不安をなくしたいなら、カードB の候補を比べます。
ネオジムも含めて、レアアースを使わずに作りたい
レアアースを一切使わない形にしたい。軽希土類のネオジムの調達も心配。

- 比べた結果
- レアアースを使わない方法は、磁石をフェライト磁石にするか、磁石を使わないモーターにするかです。フェライト磁石は酸化鉄が主成分で安く、化学的に安定しています(日立金属(現 プロテリアル)の資料)。磁石を使わないモーターには、SR モーター・同期リラクタンスモーター・誘導モーター・巻線界磁モーターがあります。
- 候補
- フェライト磁石のモーター(◎)磁石の置き場所と量を工夫する
- リラクタンスモーター(◎)鉄心と銅だけで作る
- 誘導モーター・巻線界磁モーター(◎)電流で磁界を作る
- 重希土類を使わないネオジム磁石・リサイクル(△)ネオジムは使う
レアアースを使わない方法は、同じ大きさでは出力が下がりやすい(カードC)ので、モーターの設計から見直すことになります。
今の大きさのまま、出力を保ちたい
モーターの取り付け寸法や重さは変えられない。出力も落とせない。

- 比べた結果
- フェライト磁石の最大エネルギー積(磁石の強さの目安)は、ネオジム磁石の10%程度です(日立金属(現 プロテリアル)の資料)。ただしプロテリアルは、高性能のフェライト磁石を使い、ローターとステーターの径を変えずに100kW を超える出力を実機で確かめました(2023年)。誘導モーターは、永久磁石のモーターより出力密度で劣り、小型・高出力にするには不利とされます(日経クロステック、2024年)。
- 候補
- 重希土類を使わないネオジム磁石(◎)ホンダは駆動用モーターに量産で使った
- フェライト磁石のモーター(○)磁石の置き方を最適化すれば、大出力の例がある
- リラクタンス・誘導・巻線界磁(△)回転数を上げる、極の数を増やすなどの工夫が要る
磁力の弱い磁石に替えるときは、磁石の量が増えることがあります。愛知製鋼の例では、ネオジム焼結磁石 100g を同社のボンド磁石 137g に替えており、ネオジムの量は 26g から 42.5g に増えています。重さとローターの強度も合わせて確かめます。
熱や温度で磁力が落ちるのが心配
モーターの温度が高くなる使い方をしている。寒い所でも使う。

- 比べた結果
- ネオジム磁石は高温で保磁力(磁力を保つ力)が下がるため、Dy・Tb を加えて保磁力を上げてきました(プロテリアル)。重希土類を使わない磁石では、結晶の粒を細かくするなどの方法で耐熱性を上げています(ホンダ・大同特殊鋼、トヨタ)。フェライト磁石は磁力が弱いため、車のモーターに使うと不可逆減磁(温度や逆向きの磁界で磁力が戻らなくなること)を起こす問題があった、と北海道大学などは説明しています。磁石を使わないモーターには、磁石の減磁という問題そのものがありません(編集部の解説)。
- 候補
- リラクタンスモーター(◎)磁石がないので減磁しない
- 誘導モーター・巻線界磁モーター(◎)同上
- 重希土類を使わないネオジム磁石(○)使う温度で保磁力が足りるかを確かめる
- フェライト磁石のモーター(△)減磁させない磁気回路の設計が要る
磁石を使わないモーターでも、巻線や軸受の温度の制限はあります。フェライト磁石は、温度による磁力の変わり方がネオジム磁石と異なるため、使う温度の上限と下限の両方で減磁しないかを確かめます(編集部の解説)。
量産の実績がある方法から選びたい
新しい材料の研究を待つのではなく、今ある製品や方法から選びたい。

- 比べた結果
- 重希土類を使わないネオジム磁石は、2016年にホンダがハイブリッド車の駆動モーターに量産で使いました(大同特殊鋼との共同開発)。巻線界磁モーターは、日産が EV「アリア」の駆動に使っています。SR モーターは、明和製作所が産業用の小さなモーター(定格280〜600W)を製品にしています。磁石のリサイクルは、エコアドバンスが2011年からモーターのネオジム磁石を回収しています。フェライト磁石の駆動用モーターは、プロテリアルが実機で性能を確かめた段階です(2023年)。
- 候補
- 重希土類を使わないネオジム磁石(◎)車の駆動用で量産の例
- リラクタンス・誘導・巻線界磁(○)用途と大きさによって製品がある
- 磁石のリサイクル(○)回収の事業がある。量は限られる
- フェライト磁石のモーター(△)車の駆動用は実機での確認の段階
「実績がある」かは、自社と同じ用途・大きさで確かめます。同じ方式でも、数百 W の産業用と数十 kW の車の駆動用では、求められる性能が違います(編集部の解説)。
置き換えるときの注意
置き換えは、今のモーターの使い方と、どのレアアースをどこまで減らしたいかを書き出すところから始めます。次の図は、各社の説明をもとに編集部が整理した進め方です。

出典:各社・研究機関の説明をもとに AI(Claude)で作成
どのレアアースを減らしたいかを決める
「レアアースを使わない」には、重希土類(Dy・Tb)だけをなくす場合と、ネオジムも含めてなくす場合があります。重希土類だけなら、モーターの方式は変えずに済みます。ただしホンダは、重希土類を使わない磁石に合わせてローターの形も見直したモーターを新しく設計しており、愛知製鋼も同じ大きさで同じ出力を出すにはローターの設計の工夫が要ったとしています。磁石の入れ替えだけで済むとは限りません。ネオジムもなくすなら、モーターの方式や磁気回路から設計し直すことになります(編集部の解説)。
大きさ・重さ・出力を、同じ条件で比べる

磁力の弱い磁石や、磁石を使わない方式では、同じ出力を出すために磁石の量を増やしたり、回転数を上げたりします。愛知製鋼の例では磁石の重さが 100g から 137g に増え、ニデックの誘導モーターは回転数を最高3万2000rpm に上げています。減速機を含めた大きさと重さ、回転数が上がることによる軸受や強度への影響も、合わせて確かめます(編集部の解説)。
制御と騒音を確かめる

SR モーターは、永久磁石のモーターより精密な制御が必要で、専用のインバーターが要ります(EE Times Japan)。インバーターと制御のソフトウェアを含めて置き換えを考え、振動・騒音は試作で確かめます。巻線界磁モーターは、ローターに電流を送るブラシの保守も考えます(編集部の解説)。
規制と調達の最新の情報を確かめる
輸出管理の対象や時期は変わります。2025年10月に発表された措置の停止は2026年11月10日までで、そのあとどうなるかは公表されていません(2026年10月6日時点)。4月から始まった7種の管理と、2026年1月の日本向けの措置がどう運用されるかを含め、調達先と最新の公的情報で確かめます(編集部の解説)。
出典:世界初、重希土類完全フリー磁石をハイブリッド車用モーターに採用(2016年)|本田技研工業、MAGFINE の技術|愛知製鋼、ニデックが3万rpm超EVモーター、磁石フリーでも小型・高出力化(2024年)|日経クロステック、レアアース不要のEV用モーター、日本電産が2013年にも量産へ(2012年)|EE Times Japan、米中合意についてのファクトシート(2025年11月5日)|CISTEC
レアアースを使わないモーターづくりに役立つ技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。磁石を替える、磁石を使わないモーターを使う・設計する、磁石をリサイクルする、のどれを相談したいかによって、合う相談先が変わります。
| 企業 | 解決できる課題 | 種類 | 何ができるか | 合う症状 |
|---|---|---|---|---|
| 明和製作所 | モーターメーカー | 永久磁石を使わない SR モーターと、それに対応したコントローラーを作る。撹拌機・ブロア・遠心分離機などの小さなモーター向け。 | A Dy・Tb(重希土類)の調達と価格が不安 B ネオジムも含めて、レアアースを使わずに作りたい D 熱や温度で磁力が落ちるのが心配 E 量産の実績がある方法から選びたい | |
| 長岡モーターディベロップメント | 受託開発 | SR モーターなど、磁石を使わないモーターの設計・試作・駆動をまとめて請け負う。試作の前に損失と性能を解析で見積もる。 | A Dy・Tb(重希土類)の調達と価格が不安 B ネオジムも含めて、レアアースを使わずに作りたい C 今の大きさのまま、出力を保ちたい D 熱や温度で磁力が落ちるのが心配 | |
| エコアドバンス | リサイクル | 使用済みモーターを切断・解体し、ネオジム磁石を取り出して資源に戻す。 | A Dy・Tb(重希土類)の調達と価格が不安 E 量産の実績がある方法から選びたい | |
| 愛知製鋼 | 磁石メーカー | Dy・Tb を使わないネオジム系の異方性ボンド磁石 MAGFINE を作る。磁石に合わせたローターの設計の見直しにも対応。 | A Dy・Tb(重希土類)の調達と価格が不安 C 今の大きさのまま、出力を保ちたい D 熱や温度で磁力が落ちるのが心配 E 量産の実績がある方法から選びたい |
株式会社明和製作所|磁石を使わない SR モーターと、そのコントローラーを作る
明和製作所とは
明和製作所は、福岡県糸島市にある、電気モーターと部材・応用製品の設計・製造の会社です(1959年創業、1967年設立)。永久磁石を使わない SR(スイッチトリラクタンス)モーターを製品にしています。
明和製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| SR モーター SR2-80 | 「永久磁石を使用しない、レアアース不要の省エネモータ」としている。定格出力 280〜600W、定格回転数 6,300〜18,000r/min、軸径φ12、ブラケット(フランジ)□100 |
| 特性 | 整流子モーターに似た垂下特性としている(回転が上がるとトルクが下がる特性。括弧内は編集部の補足) |
| コントローラー | SR モーター用のコントローラー(SRC シリーズ)も製品にしている |
| 用途の例 | 撹拌機、ブロアファン、吸引器、遠心分離機、振動解析試験機を挙げている |
明和製作所が解決できる課題
- 磁石を使わないモーターで、高い回転数を出したい
- 撹拌機・ブロア・遠心分離機などの小さなモーターを、レアアースを使わない形にしたい
- SR モーターに対応したコントローラーもあわせて使いたい


長岡モーターディベロップメント株式会社|SR モーターなどの設計・試作・評価を受託する
長岡モーターディベロップメントとは
長岡モーターディベロップメントは、新潟県長岡市の、電動機(モーター)の受託開発・コンサルティングの会社です(2016年設立)。モーターの設計・試作・駆動をまとめて請け負うとしています。
長岡モーターディベロップメントの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| SR モーターの設計と試作 | 設計と試作の例を公開している。設計仕様は出力 750W、最大回転数 5,000min⁻¹、最大トルク 2.39Nm、電圧65V、3相、固定子18極・回転子12極、外径105mm、ギャップ長0.25mm |
| 損失の解析 | SR モーターで、定格出力時の損失を実測と解析で比べ、誤差率は3.43%だったとしている。この SR モーターでは銅損が多くを占めていた |
| 設計の道具 | モーター設計のウェブツール Motor Sketcher(無料)や、ベクトル制御のシミュレーターを公開している |
長岡モーターディベロップメントが解決できる課題
- 磁石を使わないモーター(SR モーターなど)の設計・試作を外に頼みたい
- 試作の前に、モーターの損失と性能を解析で見積もりたい
- モーターの駆動(制御)まで含めて相談したい

出典:長岡モーターディベロップメント「SRモータの設計と試作」・「事例:損失解析」をもとに AI(Claude)で作成(断面は形を簡略化した模式図)
出典:会社概要|長岡モーターディベロップメント、SRモータの設計と試作|長岡モーターディベロップメント、事例:損失解析|長岡モーターディベロップメント、Motor Sketcher|長岡モーターディベロップメント
株式会社エコアドバンス|使用済みモーターを切断・解体し、ネオジム磁石を取り出す
エコアドバンスとは
エコアドバンスは、埼玉県さいたま市岩槻区に本社がある、使用済みモーターなどの再資源化の会社です(2000年創業)。
エコアドバンスの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| モーターの解体 | 使用済みの冷蔵庫やエアコンに使われる黒モーターを、回転させながらプラズマで切断する装置と方法で特許を取っている(特許第4619138号)。切断・分離解体・銅線の引き抜きなどの工程がある。同社は月600〜800tのニーズに対応するとしている |
| ネオジム磁石の回収 | 2011年から、黒モーターに含まれるネオジム磁石などのレアアースの回収を始めた |
| エアコンの磁石の循環 | 2026年6月、三菱電機・信越化学工業と、家庭用エアコンのレアアース磁石を三菱電機の家庭用空調製品に戻すリサイクルを始めた。エコアドバンスは、ローターからレアアース磁石を取り出す役を担う |
三菱電機の発表によると、この取り組みで再利用するレアアース磁石は、同社が国内で家庭用空調製品を作るときに使うレアアースの約35%(重量ベース)を見込んでいます(ジスプロシウムとテルビウムを対象にした同社の試算)。
エコアドバンスが解決できる課題
- 使用済みのモーターから、ネオジム磁石を取り出して資源に戻したい
- 大量のモーターを、切断・解体して素材ごとに分けたい

出典:エコアドバンス「モーター再資源化」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社情報|エコアドバンス、モーター再資源化|エコアドバンス、家庭用エアコンのレアアース磁石の自己循環リサイクル(2026年6月2日)|三菱電機
愛知製鋼株式会社|Dy・Tb を使わないネオジム系ボンド磁石 MAGFINE を作る
愛知製鋼とは
愛知製鋼は、愛知県東海市に本社がある、鋼材・鍛造品・電子機能材料と、磁石応用製品のメーカーです(1940年創立)。重希土類を使わないネオジム系の異方性ボンド磁石 MAGFINE を作っています。
愛知製鋼の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 重希土類を使わない | MAGFINE は、Dy・Tb の重希土類とコバルトを使っていないネオジム系の異方性ボンド磁石 |
| 磁力 | 磁力はフェライト焼結磁石の5倍、ネオジム焼結磁石の1/2としている |
| 電気抵抗 | 磁粉の間に樹脂があるので、ネオジム焼結磁石より約100倍電流が流れにくいとしている |
| IPM ローターの例 | 同社の例では、ネオジム焼結磁石 100g(うち Nd 26g・Dy 5g)を MAGFINE 137g(Nd 42.5g・Dy 0g)に替え、希土類資源指数(2011年の価格をもとにした同社の指標)を76から42.5(44%削減)にした。ネオジムの量は増えている。同じ大きさで同じ出力を出すには、ローターの設計の工夫が要ったとしている |
愛知製鋼が解決できる課題
- モーターの磁石から、Dy・Tb をなくしたい
- Dy・Tb を使わない磁石に合わせて、ローターの設計を見直したい

出典:愛知製鋼「MAGFINE の技術」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|愛知製鋼、MAGFINE|愛知製鋼、MAGFINE の技術|愛知製鋼
選ぶ前に確かめる条件
置き換えを相談する前に、次のことを整理しておくと、方式の選定や試作が進めやすくなります。
- 今のモーターの出力・トルク・回転数と、使う磁石の種類と重さ
- 減らしたいのは重希土類(Dy・Tb)だけか、ネオジムも含むか
- 取り付けの寸法と重さの制限(減速機を含めて変えられるか)
- モーターの温度の上限と、使う場所のいちばん低い温度
- インバーターと制御を変えられるか、振動・騒音の許容値
- 生産の数量と、置き換えを終えたい時期
- 使い終わった製品を回収できるか(リサイクルを使う場合)
関連する課題
この課題に関係する分野・技術・製品のページ
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月1日(中国の輸出管理の記述は2026年10月6日)





