ガラスの部品が割れて困る場面は多くあります。物が当たって割れる、落として角から割れる、加熱した装置ののぞき窓が温度差で割れる、取り付けたあと何もしないのに割れる、といった割れ方です。ガラスは表面の目に見えない傷から、引っぱられて割れる材料なので、割れ方によって効く対策が違います。
この記事では、ふつうのガラス(焼きなました板ガラス)の課題を確かめ、置き換え先の6つの候補(風冷強化ガラス、倍強度ガラス、化学強化ガラス、合わせガラス、低膨張ガラス、樹脂)を、メーカー・加工会社の公開値と技術解説の資料で比べます。熱割れしない温度差の計算例、加工の順番、強さの確かめ方、相談できる企業も紹介します。
ふつうのガラスの課題
表面の小さな傷から、引っぱられて割れる
ガラスは、原子の結びつきから考えた理論の強さが約9,800MPa を超えるのに、実際の強さはその約1/100(約98MPa)しかありません。表面に目に見えない小さな傷が無数にあり、傷の先に力が集まるためです(NEW GLASS)。ガラスは圧縮には強く引張に弱いので、割れは引っぱられる側の表面の傷から始まります。傷はなくせないので、強化ガラスは表面に「縮もうとする力」(圧縮応力)を入れて、傷が開くのを防ぎます(NEW GLASS)。

出典:NEW GLASS「入門:ガラスの破壊学」「イオン交換法によるガラスの化学強化」をもとに AI(Claude)で作成
温度差で端から割れる(熱割れ)
日射などでガラスの中央が温まって膨らもうとすると、サッシの中や影で冷えたままの周辺が引っぱられます。この引張の力は中央と周辺の温度差に比例し、端の強さを超えると端から割れます(AGC の技術資料)。日射をよく吸うガラス、端の強さが小さい網入りガラス、冬の晴れた日の午前中、カーテンの密着や暖房の風が当たる所で起きやすいとされます(同)。

出典:AGC「板ガラスと熱割れ」をもとに AI(Claude)で作成
切り口と穴が弱い
ガラスの強度は切断した小口(切り口)の品質に大きく影響されるとされ、切り欠きや穴をあけると、角や穴の所の強度が下がります(AGC)。熱割れの計算でも、端はカッターで切ったまま、周辺を加工するときは研磨120番以上の仕上げを前提にしています(AGC の技術資料)。
出典:入門:ガラスの破壊学(NEW GLASS Vol.23 No.3)・イオン交換法によるガラスの化学強化(同)|ニューガラスフォーラム、板ガラスと熱割れ(建材総合カタログ 技術資料編)|AGC、ガラスを安全にお使いいただくために|AGC
置き換え先の候補
置き換え先は、表面に圧縮応力を入れて強くする(風冷強化・倍強度・化学強化)、割れても安全にする(合わせガラス)、熱で伸び縮みしにくくする(低膨張ガラス)、材料を替える(樹脂)の4つの方向に分けられます。

出典:AGC「タフライト」・AGC「HS200」・AGC「ラミペーン」・上武・三菱ガス化学をもとに AI(Claude)で作成
風冷強化ガラス:約700℃から空気で急冷する
板ガラスを約700℃まで熱し、表面に空気を吹きつけて均一に急冷し、表面に圧縮の層を持たせたガラスです。同じ厚さのフロート板ガラスに比べて3〜5倍の静的強度を持ち、割れると破片が鈍角の細かい粒になります(AGC)。学術の解説では、一般の板ガラスの2〜3倍の強度とされています(NEW GLASS)。圧縮の層は深く、板厚の約1/6(3mm の板で約500µm)です(NEW GLASS)。
一方で、表面と内部に温度差を付けて強くするしくみのため、2mm 以下の薄い板は強化しにくく(NEW GLASS)、加工会社は3mm 以上を対象としています(上武)。内部に大きな引張があるので、切断・穴あけ・面取りは強化の前に済ませます(編集部の解説)。不純物によるキズで不意に割れることがあり、強化ガラス専用の素板やヒートソーク処理で減らしているとされます(AGC)。

出典:NEW GLASS「化学強化ガラス」をもとに AI(Claude)で作成
倍強度ガラス:熱割れと風圧に約2倍
倍強度ガラスは、熱処理で耐風圧強度と熱割れ強度を約2倍にした板ガラスで、JIS R 3222 に決まりがあります(AGC、日本規格協会)。AGC の許容荷重の表では、6mm の倍強度ガラスが9,000N、同じ厚さのフロート板ガラスが4,500N です。割れても強化ガラスのように細かい粒にはならず、破片が脱落しにくいとされます(AGC)。
化学強化ガラス:イオンを入れ替えて表面を締める
ナトリウムを含むガラスを、硝酸カリウムの溶けた塩に浸け、表面のナトリウムイオンを大きなカリウムイオンに入れ替える方法です。ガラスが軟らかくならない400〜450℃程度で処理し、冷やすと表面に圧縮応力が残ります(三芝硝材、NEW GLASS)。圧縮の層はふつう10〜100µm と浅く、表面の圧縮は大きく、内部の引張は小さくなります(NEW GLASS)。

出典:三芝硝材「化学強化ガラス」・NEW GLASS「化学強化ガラス」をもとに AI(Claude)で作成
化学強化は、薄い板でも強化でき、透過像に歪みが出にくいのが特徴です(NEW GLASS)。加工会社は0.4mm 厚までの強化(上武)、0.5〜19mm・最大2,000×3,000mm の強化(三芝硝材)を公開しています。内部の引張が小さいので、強化したあとも切断や穴あけができるとされます(NEW GLASS)。ただし、深い傷が付くと強化の効果が失われやすく、研磨紙で付けた傷が #400〜#220 程度の粗さで熱強化ガラスと同じくらいの強度に下がった例があります(NEW GLASS)。スマートフォンのカバーガラスなどでは、アルミノシリケートガラスという、より深く強く強化できる組成が使われています(NEW GLASS)。

出典:NEW GLASS「化学強化ガラス」をもとに AI(Claude)で作成
合わせガラス:割れても破片を中間膜が保つ
透明で接着力の強い中間膜(PVB)を2枚以上のガラスで挟み、加熱・圧着したガラスです。割れても破片の飛散・脱落がほとんどなく、ぶつかった物が突き抜けにくい性能もあるとされます(AGC)。強化ガラスを材料にした合わせガラス(強化合わせガラス)もあります(AGC)。
低膨張ガラス:ほうけい酸・石英・結晶化ガラス
温度による伸び縮み(線膨張係数)の小さいガラスです。ふつうのソーダ石灰ガラスの約9×10⁻⁶/K に対し、ほうけい酸ガラスは約3×10⁻⁶/K(テンパックスは3.25×10⁻⁶/K)、石英ガラスは約0.5×10⁻⁶/K です(コトバンク、大阪硝子工業)。結晶化ガラスには、透明でゼロ膨張とされ、750℃の連続使用に耐える品種もあります(大阪硝子工業のネオセラムの紹介)。線膨張係数が小さいほど、同じ温度差で生まれる熱の応力が小さく、急な加熱・冷却に強くなります。

出典:コトバンク「耐熱ガラス」・大阪硝子工業「テンパックス」・東ソー・クォーツ「石英ガラスについて」・大阪硝子工業「ネオセラム」をもとに AI(Claude)で作成
樹脂(ポリカーボネート):衝撃に強く、成形しやすい
ポリカーボネートのシートは、ガラスや他のプラスチック板と比べて耐衝撃性に優れ、実用温度は約-40〜+120℃(品種による)、加工・成形がしやすいとされます(三菱ガス化学)。アイゾット衝撃値は、ポリカーボネート650J/m に対してアクリル20J/m です(三菱ガス化学の解説、ASTM D256)。表面の傷つきを防ぐため、傷つき防止のハードコートをした品種も用意されています(三菱ガス化学)。高温で使う所、強い薬品に触れる所では、ガラスのほうが向くことがあります(編集部の解説)。
出典:強化ガラス タフライト(建材総合カタログ)|AGC、倍強度ガラス HS200(同)|AGC、合わせガラス ラミペーン(同)|AGC、ガラスを安全にお使いいただくために|AGC、JIS R 3222 倍強度ガラス(閲覧用)|日本規格協会、熱強化法によるガラスの強化(NEW GLASS Vol.30 No.114)|ニューガラスフォーラム、化学強化ガラス(NEW GLASS Vol.26 No.1)|ニューガラスフォーラム、カバーガラスの化学強化(NEW GLASS Vol.30 No.114)|ニューガラスフォーラム、耐熱ガラス|コトバンク、石英ガラスについて|東ソー・クォーツ、テンパックス|大阪硝子工業(イプロス)、ネオセラム|大阪硝子工業(イプロス)、ユーピロン・シート/フィルム|三菱ガス化学、透明樹脂とは|三菱ガス化学(ユピゼータ)、化学強化ガラス(サンケミカル)|三芝硝材、化学強化ガラス特性強度説明|上武
公開値で比べる
候補ごとの強さの倍率と耐熱温度差を、公開されている値で並べました。測り方と条件が違うので、倍率は目安です。採用する前に、自社の形と使い方で試験します(編集部の解説)。
強さの倍率
同じ厚さのふつうのガラスと比べて、倍強度ガラスは約2倍、風冷強化ガラスは3〜5倍(AGC。学術の解説では2〜3倍)、化学強化ガラスは5倍以上(上武)とされます。化学強化した0.7mm の板では、表面の圧縮応力が10kg/mm² から37kg/mm² に上がった値が公開されています(上武)。

出典:AGC「HS200」・AGC「タフライト」・NEW GLASS「熱強化法によるガラスの強化」・上武をもとに AI(Claude)で作成
耐熱温度差
板の一部を急に冷やしたときに割れない温度差(局部冷却の耐熱温度差)は、化学強化で3.3mm の板が75℃から375℃、5.0mm の板が50℃から350℃に上がった公開値があります(上武)。

出典:上武「化学強化ガラス特性強度説明」をもとに AI(Claude)で作成
出典:強化ガラス タフライト|AGC、倍強度ガラス HS200|AGC、熱強化法によるガラスの強化(NEW GLASS)|ニューガラスフォーラム、化学強化ガラス特性強度説明|上武
計算例:熱割れしない温度差の目安
板ガラスの熱割れは、端に生まれる熱の応力を基本応力係数(0.47MPa/℃)×係数×(中央の温度−サッシの温度)で見積もり、品種ごとの端の許容熱応力と比べて判定します(AGC の技術資料。日本建築学会の JASS 17 による)。ほかの係数を1とした最も単純な場合、許容熱応力を0.47で割ると、熱割れしない温度差の目安になります。
たとえば、厚さ3〜12mm のフロート板ガラスの許容熱応力は17.7MPa なので、17.7÷0.47≒約38℃です。網入・線入板ガラスは9.8MPa で約21℃、倍強度ガラスは35.3MPa で約75℃になります(編集部の計算)。

出典:編集部が計算し、AGC「板ガラスと熱割れ」の許容熱応力の値をもとに AI(Claude)で作成
実際の計算では、影・カーテン・面積・端の温度の係数を掛けます。許容熱応力は、端をカッターで切ったまま(クリアーカット)の値です(AGC の技術資料)。中央と端の温度差が目安を超えそうなら、倍強度・強化・低膨張のガラスにするか、端の仕上げと取り付け方を見直します(編集部の解説)。
出典:板ガラスと熱割れ(建材総合カタログ 技術資料編)|AGC
目的と置き換え先の比較表
行が置き換えの目的、列が置き換え先の候補です。◎は第一候補、○は有効、△は条件によって有効を表します。目的の行をクリックすると、理由と出典を書いたカードに移ります。
| 課題(症状) | 風冷強化 ガラス | 倍強度 ガラス | 化学強化 ガラス | 合わせ ガラス | 低膨張 ガラス | 樹脂 (ポリカー ボネート) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A衝撃・曲げで割れにくくしたい | ○ | △ | ◎ | △ | ◎ | |
| B割れても危なくないようにしたい | ○ | ○ | △ | ◎ | ||
| C急な温度差・日射で割れにくくしたい | ○ | ○ | ○ | ◎ | △ | |
| D薄く・軽く・複雑な形のまま強くしたい | △ | ◎ | ○ | |||
| E何もしないのに割れる・落ちるのを避けたい | △ | △ | ◎ | ◎ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
◎・○・△の理由と出典は、下の「目的ごとの選び方」の各カードに書いています。空欄は、その目的の根拠が今回の調べで見つからなかった候補です。記号は、メーカー・加工会社の公開値と技術解説の資料をもとにした編集部の評価で、同じ目的の中での比較です。試験の方法が違うため、倍率や温度はそのまま比べられません。
目的ごとの選び方
目的(A〜E)ごとに、比べた結果、候補、置き換えるときの注意をまとめました。
衝撃・曲げで割れにくくしたい
物が当たる、落とす、押される、曲げられる部品のガラスを、割れにくくしたい。
- 比べた結果
- ガラスは表面の小さな傷から割れるので、表面に圧縮応力を入れて傷が開くのを防ぐのが強化の考え方です(NEW GLASS)。化学強化ガラスは、同じ厚さの未強化ガラスより5倍以上の強度とする加工会社があり(上武)、圧縮応力が1,000MPa を超える例もあります(NEW GLASS、AGC の解説)。風冷強化ガラスは同じ厚さのフロート板ガラスの3〜5倍の静的強度(AGC)、倍強度ガラスは耐風圧強度が約2倍です(AGC)。ポリカーボネートは、ガラスや他のプラスチック板と比べて耐衝撃性に優れるとされます(三菱ガス化学)。
- 候補
- 化学強化ガラス(◎)未強化の5倍以上の例。薄い板にも効く
- 樹脂(ポリカーボネート)(◎)ガラスより衝撃に強い。ハードコート品もある
- 風冷強化ガラス(○)3〜5倍の静的強度(板厚の制約あり)
- 倍強度ガラス(△)耐風圧強度が約2倍
- 合わせガラス(△)割れても物が突き抜けにくい
化学強化は圧縮の層が浅く(ふつう10〜100µm)、深い傷が付くと効果が失われやすいとされます(NEW GLASS)。使う場面で付く傷の深さを想定し、強化したあとの扱いにも気をつけます。どの強さが出ているかは、表面応力計(折原製作所など)と、製品の割れ方に合う強度試験で確かめます。
割れても危なくないようにしたい
人のそばの窓・扉・のぞき窓・保護カバーなど、割れたときにけがをさせたくない。
- 比べた結果
- 風冷強化ガラスは、割れると破片が鈍角の細かい粒状になり、鋭い破片が出ません(AGC)。ただし一部が割れると全面が一瞬で細かく砕け、破片が落ちることがあります(AGC)。合わせガラスは、中間膜(PVB)を2枚以上のガラスで挟んだもので、割れても破片の飛散・脱落がほとんどないとされます(AGC)。倍強度ガラスは割れ方が一般のガラスに近く、破片が脱落しにくいとされます(AGC)。化学強化ガラスは内部の引張が小さいため、割れたときの破片は大きく鋭角になると説明されています(NEW GLASS)。
- 候補
- 合わせガラス(◎)割れても破片が飛び散りにくい
- 風冷強化ガラス(○)割れると細かい粒になる
- 倍強度ガラス(○)破片が脱落しにくい
- 化学強化ガラス(△)破片は大きく鋭角になりやすい
強化ガラスが割れて落ちると危ない場所では、合わせガラスにして、1枚が割れても残りのガラスで荷重に耐えるようにする、と AGC は注意しています。「割れにくさ」と「割れたときの安全」は別の性能なので、両方が要るなら強化ガラスを合わせガラスにする組み合わせを考えます(編集部の解説)。
急な温度差・日射で割れにくくしたい
加熱・冷却する装置ののぞき窓、照明のカバー、日が当たる窓など、温度差で割れるのを防ぎたい。
- 比べた結果
- ガラスの温度差による割れ(熱割れ)は、温度が高い所が膨らもうとして、冷えた端が引っぱられて起きます(AGC)。線膨張係数は、ふつうのソーダ石灰ガラスの約9×10⁻⁶/K に対し、ほうけい酸ガラスは約3×10⁻⁶/K、石英ガラスは約0.5×10⁻⁶/K と小さく(コトバンク)、同じ温度差で生まれる応力が小さいので熱に強くなります。化学強化した3.3mm の板では、局部冷却の耐熱温度差が75℃→375℃に上がった公開値があります(上武)。風冷強化ガラスは一般の板ガラスの数倍の耐熱性(AGC)、倍強度ガラスは熱割れ強度が約2倍です(AGC)。
- 候補
- 低膨張ガラス(◎)温度で伸び縮みしにくい
- 化学強化ガラス(○)3.3mm で耐熱温度差75→375℃の例
- 風冷強化ガラス(○)一般の板ガラスの数倍の耐熱性
- 倍強度ガラス(○)熱割れ強度が約2倍
- 樹脂(ポリカーボネート)(△)実用温度は約-40〜+120℃
熱割れは端(切り口)から始まるので、ガラスの種類だけでなく、端の仕上げ(研磨120番以上など)、取り付け方、カーテンや暖房の風の当たり方も見直します(AGC)。石英ガラスでも、厚いほど耐熱衝撃性は下がり、局所的な急加熱や、熱膨張の違う物が密着していると割れることがあります(東ソー・クォーツ)。
薄く・軽く・複雑な形のまま強くしたい
カバーガラスなど1mm 前後の薄い板、曲げた板、小さな部品を強くしたい。
- 比べた結果
- 風冷強化は、ガラスの表面と内部に温度差を付けて強くするため、2mm 以下の薄い板では温度差を付けにくいとされます(NEW GLASS、AGC の解説)。加工会社は、風冷強化を3mm 以上、化学強化を0.4mm 厚までとしています(上武)。化学強化は強化による変形がほとんどなく、異形や曲げたガラスにも使え(上武、三芝硝材)、透過像に歪みが出にくいとされます(NEW GLASS)。ポリカーボネートは各種の加工・成形がしやすいとされます(三菱ガス化学)。
- 候補
- 化学強化ガラス(◎)0.4mm まで。曲げ・異形にも
- 樹脂(ポリカーボネート)(○)成形しやすい。傷にはハードコート
- 風冷強化ガラス(△)3mm 以上が目安。2mm 以下は難しい
薄い化学強化ガラスでも、落としたときは角・側面(端面)から割れることが多いと報告されています(NEW GLASS)。端面の形と仕上げを決め、角・側面に当てる試験もします。
何もしないのに割れる・落ちるのを避けたい
取り付けたあと、力がかかっていないのに割れた・割れて落ちた、をなくしたい。
- 比べた結果
- 風冷強化ガラスは、ガラスの中の不純物によるキズが内部の引張の層に達すると、外から力が加わらなくても不意に割れることがあります(AGC)。AGC は、強化ガラス専用の素板とヒートソーク処理(特殊熱処理検査)で、この破損を減らしているとしています。倍強度ガラスも熱処理ガラスなので、理論上は不意の破損がありえます(AGC)。化学強化ガラスは内部の引張応力がとても小さいので自然破損しないとされます(三芝硝材)。
- 候補
- 化学強化ガラス(◎)内部の引張が小さく、自然破損しないとされる
- 合わせガラス(◎)割れても破片が落ちにくい
- 風冷強化ガラス(△)専用素板・ヒートソーク処理で減らす
- 倍強度ガラス(△)理論上は不意の破損がありうる
風冷強化ガラスを使うときは、ヒートソーク処理をしているかを確かめます(AGC は6mm 以上の強化ガラス タフライトで全数実施としています)。割れても落ちないようにしたいときは、合わせガラスにします(編集部の解説)。
置き換えるときの注意
ガラスの割れ対策は、割れ方を見て原因を分け、条件を数字にし、候補を選び、加工の順番を決めて、試験で確かめる、という順に進めます。次の図は、公開情報をもとに編集部が整理した進め方です。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
切る・穴をあける・端を磨くのは強化の前に
風冷強化ガラスは内部に大きな引張があるため、強化したあとに切ったり穴をあけたりせず、加工を済ませてから強化します。穴や切り欠きのあるガラスは強度が下がるので、外力がかかる所では強化ガラスの仕様にします(AGC)。化学強化ガラスは強化のあとも切断や穴あけができるとされますが(NEW GLASS)、切った面には圧縮の層がないので、端面は強化の前に仕上げておくのが基本です(編集部の解説)。

出典:AGC「ガラスを安全にお使いいただくために」・NEW GLASS「化学強化ガラス」・NEW GLASS「高強度化学強化ガラスの開発」をもとに AI(Claude)で作成
強さは、製品の割れ方に合う試験で確かめる
化学強化ガラスの強さは、3点曲げ・リングオンリング・鋼球落下などで評価されてきました。スマートフォンを落としたときは角・側面から割れることが多いため、細い金属の円柱を振り子で端面に当てる試験も提案されています(NEW GLASS)。強化ガラスの JIS(R 3206)では、4点曲げの強度が形式検査に、表面圧縮応力が受け渡しの検査に入っています(日本規格協会)。表面の圧縮応力と層の深さは、表面応力計で測れます(折原製作所)。

出典:NEW GLASS「高強度化学強化ガラスの開発」・日本規格協会・折原製作所をもとに AI(Claude)で作成
強化ガラスと合わせガラスを組み合わせる
強化ガラスは割れにくくても、割れたときは全体が砕けて落ちることがあります(AGC)。割れても落ちてはいけない所では、強化ガラスを材料にした合わせガラスを検討します(AGC)。合わせガラスは厚さと重さが増えるので、取り付け部も合わせて見直します(編集部の解説)。
出典:ガラスを安全にお使いいただくために|AGC、化学強化ガラス(NEW GLASS Vol.26 No.1)|ニューガラスフォーラム、高強度化学強化ガラスの開発と新評価装置の提案(NEW GLASS Vol.30 No.114)|ニューガラスフォーラム、JIS R 3206 強化ガラスの表面圧縮応力についての回答|日本規格協会、光弾性・ガラス表面応力計|折原製作所
ガラスの割れ対策を相談できる企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。強化の加工会社、応力の測定機のメーカー、低膨張ガラスの加工会社を挙げました。
三芝硝材株式会社|大判・1枚からの化学強化と、強化・合わせガラス
三芝硝材とは
三芝硝材は、富山県高岡市に本社がある板ガラスの加工会社です。強化ガラス・合わせガラス・デザインガラスなどを加工・製造し、2015年5月に大型の化学強化炉を入れて、化学強化ガラス「サンケミカル」を本格的に生産しています。
三芝硝材の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 化学強化ガラス「サンケミカル」 | 硝酸カリウムの溶けた塩にガラスを浸け、ナトリウムイオンをカリウムイオンに置き換えて、風冷強化ガラスの5倍以上の表面圧縮応力を持たせる。自然破損しない、光学的な歪みや変形がないとしている |
| つくれる範囲 | 板厚0.5〜19mm、最大2,000×3,000mm、1枚から注文できる。平らな板だけでなく、曲げガラスも化学強化できる(形・寸法・厚さで製造できる範囲が変わる) |
| 実績 | 2015年5月の本格生産の開始から、51,000枚以上、24,500㎡以上を生産・販売。手すり・ドア・パーテーション・サインなどの建物の内外に使われている |
画像は、同社のサイトの写真が小さいため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
三芝硝材が解決できる課題
- 大きな板や曲げたガラスを、薄いまま割れにくくしたい
- 風冷強化ガラスの自然破損を避けたい
- まず1枚から化学強化を試したい

出典:三芝硝材「化学強化ガラス(サンケミカル)」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|三芝硝材、化学強化ガラス(サンケミカル)|三芝硝材
株式会社上武|0.4mm の薄板まで化学強化し、強度試験もできる
上武とは
上武は、埼玉県本庄市にある、ガラスと鏡の加工・施工の会社です(1969年設立)。ガラスのケミカル強化(化学強化)処理の受託加工と、各種ガラスの強度テストを行っています。
上武の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 化学強化ガラス(ケミカルハード) | 硝酸カリウムに浸けて表面の Na⁺ を K⁺ に置き換え、同じ厚さの未強化ガラスより5倍以上の強度にする。強化による変形がほとんどなく、異形や曲げガラスも強化できる |
| 薄い板・耐熱 | 0.4mm 厚までの薄板を強化できる(風冷強化は3mm 以上が対象と説明)。局部冷却の耐熱温度差は、3.3mm で強化前75℃→強化後375℃、5.0mm で50℃→350℃ |
| 表面応力と試験 | 表面圧縮応力は、0.7mm で強化前10kg/mm²→強化後37kg/mm²、1.3mm で10→36kg/mm²。静圧荷重試験・落球試験の結果も公開し、ガラスの強度テストを事業にしている |
画像は、同社のサイトの写真が小さいため、公開されている値をもとに編集部が図にしました。
上武が解決できる課題
- カバーガラスなど1mm 以下の薄いガラスを強くしたい
- 急な温度差がかかるガラスを、割れにくくしたい
- 強化と強度試験をまとめて頼みたい

出典:上武「化学強化ガラス特性強度説明」をもとに AI(Claude)で作成
有限会社折原製作所|強化ガラスの表面応力と層の深さを測る応力計
折原製作所とは
折原製作所は、東京都豊島区にある、光学測定機・理化学試験機の製造販売の会社です。光弾性の技術を使った、ガラスの表面応力計・応力分布の測定機をそろえています。
折原製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ガラス表面応力計 FSM-7000H | 強化ガラスの検査方法として多くのガラスメーカーで使われているとしている。化学強化・物理強化、2段の化学強化のガラスに対応し、測定範囲は0〜1,000MPa、試料は100×100mm 以上。PC で自動測定し、データを保管できる |
| 散乱光光弾性応力計 SLP-2000 | Li⁺→Na⁺ のイオン交換による化学強化ガラスの応力の分布を測る。表面から深さ50µm 以上(応力±10MPa、深さ±5µm) |
| そのほかの機種 | 2種類のイオン交換の化学強化ガラスの応力分布を一度に測る SRP-1000、倍強度ガラス用の表面応力計など |
画像は、同社のサイトの製品写真が小さいため、公開されている仕様をもとに編集部が図にしました。
折原製作所が解決できる課題
- 化学強化の表面圧縮応力と層の深さを測って管理したい
- 強化ガラスの受け入れ検査をしたい
- 化学強化の条件を変えたときの応力の分布を見たい

出典:折原製作所「光弾性・ガラス表面応力計」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|折原製作所、光弾性・ガラス表面応力計|折原製作所
株式会社鬼塚硝子|熱膨張の違うガラスや金属を、ゆがみを抑えてつなぐ
鬼塚硝子とは
鬼塚硝子は、東京都青梅市にあるガラス加工の会社です(1967年創業)。炎でガラスを加工するガス加工の技術をもとに、ガラス部品やガラスセル(キュベット)を、試作から量産まで手がけています。
鬼塚硝子の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 段シール加工 | 特性の違う複数の中間ガラスを挟み、熱膨張率の差を段階的にゆるめながら接合して、接合部の歪みを抑える |
| 異種材料接合 | ガラスと熱膨張係数が近いタングステン・モリブデン・コバールなどの金属を、冷えるときの歪みや内部のストレスを抑えて接合し、高い気密性を得る |
| 真空成形加工 | 高温でガラスの内部を真空にして金型に密着させ、内面の寸法精度・平面度の高いガラスセルを五面一体で成形する |
鬼塚硝子が解決できる課題
- 熱膨張の違うガラスどうしを、割れないようにつなぎたい
- ガラスと金属を、気密を保ってつなぎたい
- 複雑な形のガラス部品を、一品物から作ってほしい

出典:鬼塚硝子「製品」

出典:鬼塚硝子「製品」
英興株式会社|石英ガラス・ほうけい酸ガラスの大型品と精密加工
英興とは
英興は、京都市伏見区に本社がある、石英ガラスと工業用ガラス材料の加工・販売の会社です(1947年創立)。石英ガラス・ほうけい酸ガラス・各種耐熱ガラスを扱い、半導体・液晶の製造装置向けの大口径品を加工しています。
英興の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 火炎加工 | 専用機で任意の径に成形する技術を持ち、透明石英の大型の炉芯管・チャンバーを作る。石英の大型ベルジャーは、外径700mm・肉厚6mm・長さ1,500mm などの実績がある |
| 切削・研削 | ダイヤモンドツールを付けたグライディングセンター・NC 平面研削盤・円筒の研削旋盤で、溝切り・穴あけ・円筒と平面の研削・ねじ切りを行う |
| CO2 三次元レーザー加工 | 対応する大きさは1,000×900×500mm、最大の厚さ10mm、最小の穴φ0.3mm。パイプの外周面にも加工できる |
英興が解決できる課題
- 高温や急な加熱・冷却で割れない、石英ガラスの大型部品がほしい
- ほうけい酸・石英ガラスの部品に、穴や溝を加工したい
- ガラス部品を板どうしで貼り合わせたい(接着材を使わない溶着)

出典:英興「石英ガラス」
株式会社トップ精工|石英ガラス・耐熱ガラスの微細な穴・溝の加工
トップ精工とは
トップ精工は、滋賀県長浜市に本社工場がある、セラミックス・ガラスなどの脆い材料の精密加工の会社です(2001年設立、従業員162名)。半導体・測定分析・医療などの部品を作っています。
トップ精工の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 石英ガラス・耐熱ガラスの加工 | 加工できる大きさは板600×800×50mm、丸棒φ100×300mm。穴径φ0.03mm から、穴の深さ400mm まで、穴の数は5,000個まで、溝の幅0.05mm から |
| 材料の特性を生かす用途 | 石英ガラスは線膨張係数0.64×10⁻⁶/℃、テンパックスは3.2×10⁻⁶/℃(同社の表)。急な加熱・冷却にさらされる部品、高温で使う部品、窓部材などに使うとしている |
| 接合・軽量化 | 石英ガラスの熱拡散接合(開発中)、石英のハニカム構造の軽量化加工などの事例を公開している |
トップ精工が解決できる課題
- 急な加熱・冷却にさらされる部品を、低膨張のガラスで作りたい
- 石英ガラスに細かい穴や深い穴をあけたい
- シャワープレートなど半導体製造装置の石英部品を作りたい

出典:トップ精工「石英ガラス・耐熱ガラス」

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選ぶ前に確かめる条件
ガラスの割れ対策を相談する前に、次のことを整理しておくと、候補の絞り込みと試作が進めやすくなります。
- 割れ方(面・端・角のどこから割れたか、割れた破片の形)
- 割れたときの状況(物が当たった・落とした・温度が変わった・何もしていない)
- 板厚・大きさ・形(曲げ、穴、切り欠き)
- 使う温度と、中央と端の温度差
- 割れたときに破片が飛び散ってよいか、落ちてよいか
- 強化のあとに切断・穴あけが必要か
- 数量と、1枚から試せるか(試作・量産)
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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月7日
