ノイズで誤作動する・EMCに通らない

金属の筐体から出たケーブルにフェライトコアを取り付け、ノイズの放射を抑えるイメージ

EMC試験の放射エミッションで、ある周波数だけが許容値を超えた。冬になると静電気で画面が止まる。工場でインバータの近くに置くと、センサーの値が乱れる。フェライトコアを付けたり外したりしても、なかなか下がらない。こうした悩みの多くは、ノイズが「どこで発生し、どの経路で伝わり、どこで悪さをしているか」を分けずに、部品を足して対応していることが原因です。

ノイズの対策は、自分の機器が出すノイズ(エミッション)なのか、外から受けるノイズ(イミュニティ)なのか、線を伝わるのか空間を伝わるのかによって、使う技術が変わります。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)ノイズ対策部品(フィルタ・フェライト)シールド・電磁波吸収基板・配線の設計サージ・静電気の保護素子測定・可視化・EMC試験
A放射ノイズが規格を超える(放射エミッション)◎◎◎○
B電源線から出るノイズが規格を超える(伝導エミッション)◎△○○
C静電気で誤作動・リセットする△○◎◎
Dリレー・インバータ・雷などの外来ノイズで誤作動する◎○○◎○
Eノイズがどこから出て、どこから入るのかわからない△◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際の効果は、ノイズの周波数、伝わり方(伝導か放射か、ノーマルモードかコモンモードか)、機器の構造やケーブルの引き回し、求められる規格によって異なります。多くの場合、1つの技術だけでなく、いくつかを組み合わせて対策します。

記号の理由と出典(19件)

マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。

症状技術記号理由出典
Aノイズ対策部品(フィルタ・フェライト)◎フェライトコアは基板を変えずにケーブルに付けられ、放射ノイズの対策としてすぐ使える村田製作所
Aシールド・電磁波吸収◎筐体のすき間やつなぎ目が漏れ道になるため、シールドで電気的につなぐことが第一候補村田製作所
A基板・配線の設計◎ループ面積を小さくするなど発生そのものを減らせるため、放射ノイズの第一候補CEND
A測定・可視化・EMC試験○放射の試験では出ている場所が分からないが、可視化で発生箇所が分かれば対策を絞れるノイズ研究所
Bノイズ対策部品(フィルタ・フェライト)◎コモンモード・ノーマルモードのチョークやコンデンサを組み合わせたフィルタで電源線のノイズを抑えるため第一候補岡谷電機産業
Bシールド・電磁波吸収△フィルタの前後の配線が近いと空間を通ってノイズが戻るため、配線を離す・仕切る条件つきで有効岡谷電機産業
B基板・配線の設計○パスコンを素子の近くに置くなどスイッチング電源まわりの設計で発生を減らせるため有効CEND
B測定・可視化・EMC試験○ノーマルモードとコモンモードのどちらが大きいかを確かめ、対策の部品を選べるため有効編集部の解説
Cシールド・電磁波吸収△筐体の金属部分とつなぎ目の導通を確かめる程度の対策で、条件によって効く編集部の解説
C基板・配線の設計○放電電流が回路の近くを通らないようグラウンドと筐体のつなぎ方を見直せるため有効編集部の解説
Cサージ・静電気の保護素子◎コネクタや操作部の近くで静電気を回路の手前で逃がせるため、第一候補編集部の解説
C測定・可視化・EMC試験◎帯電した人体の放電を試験器で再現し、どこに何kVで誤作動するか確かめられるため第一候補ノイズ研究所
Dノイズ対策部品(フィルタ・フェライト)◎入口にフィルタやフェライトを入れて入ってくるノイズを減らせるため第一候補編集部の解説
Dシールド・電磁波吸収○信号ケーブルのシールドとノイズ源の配線の分離で入りにくくできるため有効編集部の解説
D基板・配線の設計○入口のフィルタや保護素子のグラウンドを短く筐体につなぐ設計で効果が出るため有効編集部の解説
Dサージ・静電気の保護素子◎雷サージのような大きなエネルギーから回路を守れるため第一候補岡谷電機産業
D測定・可視化・EMC試験○リレーなどのバーストノイズを試験器で再現し、効果を確かめられるため有効ノイズ研究所
E基板・配線の設計△原因が分かったあとに設計の段階の対策へ戻る形で使うため、条件つき編集部の解説
E測定・可視化・EMC試験◎電磁界プローブと画像の重ね合わせで発生箇所を可視化でき、出入りの場所の特定に第一候補ノイズ研究所

課題の診断と解決策

A

放射ノイズが規格を超える(放射エミッション)

EMC試験の放射エミッションで、ある周波数だけが許容値を超えた。ケーブルをつなぐとノイズが増える。基板を作り直す時間がない。

電波暗室の試験台に置いた機器から、垂れ下がったケーブルと筐体のふたのすき間からノイズが放射され、離れたアンテナで受けるイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
放射ノイズの多くは、基板の中でノーマルモードとして発生したノイズがコモンモードに変わり、ケーブルや筐体がアンテナになって放射されます。グラウンドにつないだケーブルは、ダイポールアンテナのように働くことがあります。筐体のすき間や、筐体から出るケーブルも漏れ道になります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

フェライトコアは基板を変えずに付けられるため、試験直前の対策に使われます。ただし、発生源が基板にある場合は、部品を足すだけでは対策が増え続けます。次の設計では基板と配線から見直します。

B

電源線から出るノイズが規格を超える(伝導エミッション)

雑音端子電圧の試験で、150kHz〜数MHzのあたりが許容値を超えた。スイッチング電源を載せてから、電源線のノイズが増えた。

スイッチング電源の基板を載せた機器から、電源コードを伝わってコンセントの方へノイズが出ていくイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
伝導エミッションは、機器から電源線や通信線を伝わって外に出るノイズで、測定の周波数は150kHz〜30MHzの場合が多くあります。スイッチング電源などで発生したノイズが、電源線の2本の間を往復するノーマルモードと、2本に同じ向きに乗って大地を通って戻るコモンモードの両方で出ていきます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

ノイズフィルタは取り付け方で効き方が変わります。フィルタの前と後の配線を束ねたり近づけたりすると、空間を通ってノイズが再結合します。アースは太く短くします。

C

静電気で誤作動・リセットする

冬になると、人が触ったときに画面が止まる、リセットがかかる。静電気試験で、ある電圧から誤動作する。

指先と機器の金属のボタンの間で静電気が放電し、その電流が筐体を通って中の基板の近くへ流れるイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
帯電した人が機器に触れると、静電気が放電し、立ち上がりの非常に速い大きな電流が流れます。放電の電流が筐体やグラウンドを通って回路の近くを流れたり、コネクタやスイッチから直接回路に入ったりすると、誤作動や故障につながります。IEC 61000-4-2の静電気試験は、帯電した人体からの放電への耐性を確かめるものです。
解決に使える技術
選ぶときの注意

静電気試験の判定は、正常に動き続けるか、自分で回復するか、操作や再起動が必要か、壊れるか、の段階で分けます。製品に求める判定基準を先に決めてから対策します。

D

リレー・インバータ・雷などの外来ノイズで誤作動する

工場でインバータやモーターの近くに置くと、センサーの値が乱れる。リレーが動くたびに通信が止まる。雷の後に電源回路が壊れた。

制御盤のインバータとリレーの接点で出たノイズが、モーターへの動力線に乗り、並んで走るセンサーの信号線に入るイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
リレーやモーターなどの誘導性の負荷を開閉すると、接点の放電で立ち上がりの速いノイズが繰り返し発生し、電源線を伝わったり、近くの信号線に誘導されたりして機器に入ります。雷では、電力線や通信線に大きなエネルギーのサージが誘導されます。放送や無線機の電波も、ケーブルに誘導されて入ってきます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

外から入るノイズの多くはコモンモードで入り、回路の中でノーマルモードに変わって誤作動を起こします。どの線から入るのかを試験で確かめてから、入口で止めます。

E

ノイズがどこから出て、どこから入るのかわからない

対策部品をいくつ付けても下がらない。付けたり外したりをくり返して、試験所の予約だけが増えていく。

ケーブルにフェライトコアやフィルタをいくつも付けても、機器のあちこちからノイズが出続けているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
ノイズの問題は、発生源、伝わる経路、受け手の3つがそろったときに起きます。どれか1つを見誤ると、効かない場所に部品を足し続けることになります。放射ノイズの試験は、アンテナで数m離れた位置から測るため、機器のどこから出ているかまではわかりません。
解決に使える技術
選ぶときの注意

EMC試験の測定結果は、ケーブルの引き回しや機器の配置で変わります。社内で測るときも試験所で測るときも、配置を写真で記録し、同じ配置で比べます。

なぜノイズで誤作動し、EMCに通らないのか

ノイズの3要素:発生源・伝わる経路・受け手

村田製作所のノイズ対策基礎講座は、ノイズの障害は、ノイズの加害者(発生源)、被害者(受け手)、伝搬経路の3者がそろったときに発生するとしています。伝わり方には、空間を伝わる空間伝導と、導体を伝わる導体伝導があり、空間伝導にはシールドが、導体伝導にはフィルタが使われます。

機器をノイズの加害者として見たときのノイズの放出をエミッション、被害者として見たときのノイズへの耐性をイミュニティ(EMSと呼ぶこともあります)と呼び、ノイズの規制は、この両方について定められています。岡谷電機産業の解説は、EMC(電磁両立性)を、自らが出すノイズで他の機器の動作を妨げず、周囲から受けるノイズで自らが誤動作しない、この両方を満たした状態として説明しています。

ノイズの3要素(発生源・伝わる経路・受け手)と、対策の3つの方向を示した図
ノイズの3要素と、対策の3つの方向
出典:村田製作所の公開情報をもとに AI(Claude)で作成

ノーマルモードとコモンモード

ノイズが2本の線を伝わるときには、2本の線の間を往復するノーマルモードと、2本に同じ向きで乗って大地(グラウンド)を通って戻るコモンモードの2つがあります。村田製作所の講座によると、多くの場合、ノイズはノーマルモードで発生したあとコモンモードに変わり、機器のグラウンドを通じて伝わって、ケーブルや筐体をアンテナとして放射されます。受けるときはこの逆で、ノイズの侵入はコモンモードが多い一方、最終的に回路が誤動作したり壊れたりするときはノーマルモードになっています。

ノーマルモードとコモンモードの電流の流れ方の違いを示した図
ノーマルモードとコモンモード
AI(Claude)で作成

同じ講座では、グラウンドのインピーダンス(主にグラウンドパターンのインダクタンス)が高いと、信号の帰り電流によってグラウンドに電圧が生じ、そこにつないだケーブルがダイポールアンテナのように働いて、ノイズの放射が強くなる例を示しています。ケーブルをつないだとたんに放射ノイズが増えるのは、このためです。

EMC試験では、何を測るのか

エミッションの試験には、電源線や通信線を伝わって出るノイズの電圧を測る伝導エミッション試験(雑音端子電圧)と、空間に出るノイズをアンテナで受けて測る放射エミッション試験があります。CENDの解説(秋田県産業技術センター執筆)によると、伝導エミッションの測定周波数は150kHz〜30MHzの場合が多く、放射エミッションは30MHz〜1GHzの場合が多いものの、CISPR 32やVCCIなどでは1GHzを超える周波数も測ります。どちらも規格によって範囲が異なります。

イミュニティの試験は、IEC 61000-4シリーズで、ノイズの種類ごとに分かれています。ノイズ研究所の解説によると、静電気(61000-4-2)は帯電した人体からの放電、放射イミュニティ(-4-3)は放送や携帯電話などの電波、ファスト・トランジェント/バースト(-4-4)はスイッチの接点間の放電やモーターのアーク放電による繰り返しの速いノイズ、雷サージ(-4-5)は雷による誘導ノイズ、伝導イミュニティ(-4-6)は150kHz〜80MHzの無線送信機の電波が線に誘導されたもの、を模擬します。

EMC試験の主な項目(エミッションとイミュニティ)を整理した図
EMC試験の主な項目
出典:CEND、ノイズ研究所の公開情報をもとに AI(Claude)で作成

出典:EMI除去フィルタが必要とされる背景|村田製作所、EMCって何?その定義と分類|岡谷電機産業、導体伝導とコモンモード|村田製作所、導体伝導とコモンモード 2|村田製作所、伝導エミッション試験とは|CEND、放射エミッション試験とは|CEND、IEC 61000-4-2 静電気試験について|ノイズ研究所、IEC 61000-4-3 放射イミュニティ試験について|ノイズ研究所、IEC 61000-4-4 EFT/B試験について|ノイズ研究所、IEC 61000-4-5 雷サージ試験について|ノイズ研究所、IEC 61000-4-6 伝導性イミュニティ試験について|ノイズ研究所

解決技術の詳細

ノイズの対策に使う技術は、大きく分けて、①ノイズ対策部品(フィルタ・フェライト)、②シールド・電磁波吸収、③基板・配線の設計、④サージ・静電気の保護素子、⑤測定・可視化・EMC試験、の5つです。①は線を伝わるノイズを、②は空間を伝わるノイズを止めます。③はノイズの発生そのものと、ノイズが変換される場所を減らします。④は外から入る大きなエネルギーを逃がし、⑤はどこで何が起きているかを確かめます。

5つのノイズ対策技術が、機器の電源入口・筐体・基板・ケーブルのどこに効くかを示した図
5つの対策技術が、機器のどこに効くか
AI(Claude)で作成

ノイズ対策部品:フィルタとフェライトで、線を伝わるノイズを止める

電源線のノイズには、電源用のノイズフィルタを使います。岡谷電機産業の解説によると、ノイズフィルタは、2本の配線に同じ向きで乗るコモンモードノイズを抑えるコモンモードチョークコイル、線間を往復するノーマルモードノイズを抑えるノーマルモードチョークコイル、線間に入れてノーマルモードノイズを抑えるXコンデンサ、電源ラインと大地の間に入れてコモンモードノイズをグランドへ逃がすYコンデンサを組み合わせたものです。Yコンデンサは、定常時にもわずかな漏洩電流を大地に流すため、安全規格の許容値に合わせて選びます。

ケーブルをフェライトコアに通すと、コアの先で高周波のノイズが小さくなるイメージ
フェライトコア:線を伝わる高周波のノイズを弱めるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

ケーブルには、フェライトコアを使います。村田製作所の解説によると、リング状のフェライトコアの穴に導線を通すと、導線とコアがコイル(インダクタ)になり、高周波ほど高いインピーダンスを持ちます。さらに、フェライトの磁気損失によってノイズ電流のエネルギーの一部が失われます。フェライトコアは基板に取り付ける必要がないため、納期が迫っていて基板を変更する時間がないときに重宝される、としています。

フィルタは取り付け方で効き方が変わります。岡谷電機産業は、フィルタの前の配線と後の配線を束ねたり近づけたりすると、空間を介してノイズが再結合すること、アースは太く短く、筐体に直付けするのがよいことを挙げています。

シールドと電磁波吸収:空間を伝わるノイズを止める

金属の筐体のふたのつなぎ目のすき間から電波が漏れ、導電性のガスケットでふさいだ側からは漏れないイメージ
シールドのすき間:つなぎ目から電波が漏れるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

村田製作所の講座によると、実際のシールドでは、接続部分や開口部がネックになって材料の性能を十分に引き出せないことが多く、シールド面に開口部や隙間があると電流が流れにくくなって効果が損なわれます。スリット状の隙間は、隙間の長さが半波長になる周波数で特に電波が漏れやすくなります(12cmの隙間なら約1.2GHz)。また、シールドから配線が突き出していると、シールドケース自体がアンテナになって放射することがあります。

そのため、筐体のつなぎ目には導電性のガスケットやテープを使って電気的につなぎ、筐体から出るケーブルにはシールドやフェライトを組み合わせます。基板の上のノイズ源の近くには、磁性体の粉を使った電磁波吸収シートを貼る方法もあります。吸収シートは、扱う周波数帯によって材料を選びます。

基板・配線の設計:ノイズを出さない

信号の配線の下のグラウンドにすき間があると、帰り電流がすき間の端を大回りして、そこからノイズが出るイメージ
帰り電流:信号の配線はプレーンのスリットをまたがないイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

CENDの「プリント基板のEMC対策」は、配置・配線の注意点として、信号配線に対して、回路図には書かれない帰り電流(リターン電流)の経路を常に意識すること、重要な信号は電源プレーンの分割のスリットをまたがないこと、ビアで層を移動するときは近くにグラウンドのビアを追加すること、クロックなどの信号は基板の端に配線せず内層で配線すること、配線はできるだけ短くしてグラウンドまで含めたループ面積を最小にすること、パスコンは素子の近くに置くこと、を挙げています。

多層基板では、電源とグラウンドのプレーンが平行平板として固有の周波数で共振し、アンテナとして放射することがあります。同じ解説は、共振の周波数と位置をシミュレーションで確かめ、コンデンサや抵抗で対策するとしています。部品を足す対策と違い、設計の段階で直せば、あとからの部品の追加を減らせます。

保護素子:雷サージや静電気のエネルギーを逃がす

送電線に落ちた雷のサージを、機器の電源の入口にあるバリスタと放電管で接地へ逃がし、中の基板を守るイメージ
保護素子:雷サージを接地側へ逃がすイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

雷サージのような大きなエネルギーからは、保護素子で回路を守ります。岡谷電機産業の解説によると、代表的な部品は、一定以上の電圧で抵抗値が急に下がるバリスタ(安価で応答が速い)と、管内のガス放電でサージ電流を接地側へ逃がすガス入り放電管(GDT。定常時の漏れ電流が極めて少なく、静電容量が極めて低い)です。応答性に優れたシリコンサージアブソーバ(ABD)は、サージ耐量ではGDTやバリスタに劣るため、大きな雷サージには他の部品と併用します。これらを組み合わせた複合製品をサージプロテクタ(SPD)と呼びます。

GDTは、いったん放電が始まるとサージが過ぎた後も電源電圧で放電が続く(続流)ため、バリスタと組み合わせて続流を断つ設計が必要です。保護素子は、サージがどの経路(電源線、通信線、アースからの逆流)で入るかを想定して、入口に置きます。

測定・可視化・EMC試験:どこで何が起きているかを確かめる

小さなループの付いた近傍電磁界プローブで基板の上をなぞり、ノイズの強い場所を見つけるイメージ
電磁界プローブ:ノイズの発生箇所を探すイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

放射エミッションの試験では、機器から3mや10m離れたアンテナで受けて測るため、機器のどこからノイズが出ているかまではわかりません。ノイズ研究所は、電磁界プローブで測ったデータと被測定物の画像を重ね合わせて、電磁波の発生箇所を可視化するシステムを開発しています。発生箇所がわかれば、効く場所に対策を打てます。

イミュニティは、試験器でノイズを再現して確かめます。静電気試験(IEC 61000-4-2)の試験レベルは、接触放電で2kV、4kV、6kV、8kV、気中放電で2kV、4kV、8kV、15kVの4段階です。判定は、仕様の範囲で正常に動く、自分で回復する一時的な低下、操作や再起動が必要な一時的な低下、回復できない低下や損傷、の段階で分けます。

エミッションの測定結果は、機器の配置やケーブルの束ね方、ケーブルと床面との間隔で変わるため、CENDの解説は、設置状況を写真などで記録し、同じ配置で一連の測定を行うことで、結果の再現性を確保しやすくなるとしています。

出典:ノイズフィルタとは?|岡谷電機産業、ノイズ対策の基礎【第8回】フェライトコア|村田製作所、ノイズのシールド|村田製作所、プリント基板のEMC対策|CEND、雷サージとは?回路を守るサージ対策の基礎知識|岡谷電機産業、可視化技術を利用した近傍電磁界測定システム|ノイズ研究所、IEC 61000-4-2 静電気試験について|ノイズ研究所、放射エミッション試験とは|CEND、伝導エミッション試験とは|CEND

ノイズ・EMC対策の技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
北川工業ノイズ対策部品フェライトコアやシールド材などのノイズ対策部品をつくり、試験・対策の相談にも応じる。A 放射ノイズが規格を超える(放射エミッション)
B 電源線から出るノイズが規格を超える(伝導エミッション)
C 静電気で誤作動・リセットする
E ノイズがどこから出て、どこから入るのかわからない
岡谷電機産業ノイズ・サージ対策部品電源の入口に付けるノイズフィルタと、雷サージから回路を守る保護素子をつくる。B 電源線から出るノイズが規格を超える(伝導エミッション)
D リレー・インバータ・雷などの外来ノイズで誤作動する
竹内工業電磁波吸収・シールド材周波数帯ごとの電磁波吸収シートと、後付けできるケーブルシールドをつくる。A 放射ノイズが規格を超える(放射エミッション)
ノイズ研究所EMC試験器メーカー静電気や雷サージなどのノイズを再現する試験器で、イミュニティを開発中に確かめられるようにする。C 静電気で誤作動・リセットする
D リレー・インバータ・雷などの外来ノイズで誤作動する
E ノイズがどこから出て、どこから入るのかわからない
e・オータマEMC試験所EMC試験所の専任エンジニアが、電磁波の測定と設計段階からのノイズ対策を支援する。A 放射ノイズが規格を超える(放射エミッション)
B 電源線から出るノイズが規格を超える(伝導エミッション)
C 静電気で誤作動・リセットする
E ノイズがどこから出て、どこから入るのかわからない
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

北川工業株式会社|フェライトコアやシールド材から、試験・対策の相談まで

北川工業とは

北川工業は、1963年設立の部品メーカーです。電磁波ノイズ対策、熱対策、防振などの部品をつくり、コンピュータ、家電、自動車、航空機などに使われています。日東工業が議決権の100%を持つグループ会社です。

北川工業のノイズ対策部品、シールド材、EMCテクニカルセンターのサービスを整理した図
北川工業のノイズ対策部品、シールド材と、EMCテクニカルセンターのサービス
出典:北川工業の公開情報をもとに AI(Claude)で作成

北川工業の得意技術

技術内容
フェライトコア・ナノ結晶合金コア他配線済みのケーブルに取り付けられるコア、非分割タイプのコア、1MHz以下の伝導ノイズ向けのローカットコア、ノーマルモードノイズ対策向けのメタルコア、基板に載せるSMDコモンモードフィルタなど
シールド材シールドガスケット、導電テープ・シート、グランド強化材、電磁波吸収(ノイズ抑制)シートなど
EMCテクニカルセンター(愛知県春日井市)電波暗室とシールドルームを持ち、EMC技術セミナー、対策支援(コンサルティング)、EMC試験を行う。40GHzまで測定できるシステムや、シールド材のシールド効果の測定にも対応

対策支援では、出張対策支援、3D可視化装置でのノイズ測定、受託試験、共同研究開発による支援を行っているとしています。

北川工業が解決できる課題

  • EMC試験で基準を超えたが、基板を作り直す時間がない
  • ケーブルや筐体のすき間からノイズが漏れている
  • どこからノイズが出ているかを測って、対策の相談をしたい

出典:フェライトコア・ナノ結晶合金コア他|北川工業、ノイズ対策(EMC対策)製品|北川工業、EMC技術支援サービス|北川工業、EMCテクニカルセンター施設紹介|北川工業、EMCソリューションサービス|北川工業、会社概要|北川工業

岡谷電機産業株式会社|電源の入口で、伝導ノイズと雷サージを止める部品

岡谷電機産業とは

岡谷電機産業は、東京都世田谷区に本社を置く、1939年設立の電子部品メーカーです。ノイズ対策製品、サージ対策製品、LEDなどの表示関連製品、センサを扱っています。

電源の入口に置くサージプロテクタとノイズフィルタ(Xコンデンサ、コモンモードチョーク、Yコンデンサ)の模式図
電源の入口に置くサージプロテクタとノイズフィルタの模式図
出典:岡谷電機産業の解説をもとに AI(Claude)で作成

岡谷電機産業の得意技術

技術内容
ノイズフィルタ・チョークコイル単相・三相のノイズフィルタ、コモンモードコイル、EMCコア。電磁ノイズによる機器の誤作動の防止やEMI規制への対応に使う
フィルムコンデンサ電源のX/Yコンデンサとして使うAC用フィルムコンデンサ、スパークキラー(CR複合部品)
サージ対策製品AC電源用・通信信号用のサージプロテクタ(SPD)、ガス入り放電管(GDT)、シリコンサージアブソーバ(ABD)。放電・真空管の製造技術がベース

同社の解説では、Yコンデンサは性質上、定常時にもわずかな漏洩電流を大地に流すため、用途や安全基準に合わせてYコンデンサの容量を選べるノイズフィルタも用意しているとしています。

岡谷電機産業が解決できる課題

  • 電源線から出るノイズ(伝導エミッション)が規格を超える
  • 雷サージで、屋外につながる機器の電源や通信の回路が壊れる
  • リレーやモーターの開閉で出るノイズを抑えたい

出典:製品情報|岡谷電機産業、ノイズフィルタとは?|岡谷電機産業、雷サージとは?回路を守るサージ対策の基礎知識|岡谷電機産業、会社概要|岡谷電機産業

竹内工業株式会社|周波数帯ごとの電磁波吸収シートと、後付けできるケーブルシールド

竹内工業とは

竹内工業は、東京都大田区に本社を置く、1981年設立の会社です。プラスチックファスナー、電磁波ノイズ対策製品、熱対策製品をつくっており、オリジナル製品の受託開発も受けています。

竹内工業の高周波帯用電磁波吸収シート ギガメイト GM-S のロールとシート
高周波帯用電磁波吸収シート ギガメイト GM-S(出典:電磁波吸収シート|竹内工業)

竹内工業の得意技術

技術内容
電磁波吸収シート高透磁率の軟磁性金属粉を使ったシート。低周波帯向けのメガメイト MM-SD(初期透磁率38)、高周波帯向けのギガメイト GM-S(初期透磁率22)、透磁率100〜250のノンハロゲンタイプ、マイクロ波〜ミリ波帯の近傍界対策向けの電磁波抑制シート NF5G-017 など
ケーブルシールディング面ファスナーで貼り合わせるシールドケーブルカバー、自己巻き付け性のあるシールドラッピングチューブなど、ケーブルの着脱が容易で後付け対策に適したもの。錫めっき銅線とポリエステルモノフィラメントを混ぜて編んだシールド編組チューブ、アルミ箔で覆うフラットケーブルシールドもある
そのほかのノイズ対策製品フェライトコア、シールディングガスケット、シールディングテープ、グラウンディング

竹内工業が解決できる課題

  • 基板の上や近くのノイズ源から出るノイズを、シートで抑えたい
  • ケーブルから出るノイズを、配線をやり直さずに後から抑えたい
  • 扱う周波数帯に合った材料を選びたい

出典:電磁波吸収シート|竹内工業、ケーブルシールディング|竹内工業、会社概要|竹内工業

株式会社ノイズ研究所|静電気や雷サージなどのノイズを再現して、耐性を確かめる試験器

ノイズ研究所とは

ノイズ研究所は、神奈川県相模原市に本社を置く、1975年設立のEMC試験器メーカーです。取引企業は世界10カ国5,000社以上としています。

ノイズ研究所の静電気試験器 ESS-PS1 と放電ガン GT-31S
静電気試験器 ESS-PS1 と放電ガン GT-31S(出典:静電気試験器 ESS-PS1 & GT-31S|ノイズ研究所)

ノイズ研究所の得意技術

技術内容
静電気試験器人体に帯電したエネルギーが電子機器へ放電した際の耐性を評価する。ESS-PS1とGT-31S(放電ガン)の組み合わせでは、出力電圧0.20kV〜30.5kV
ファスト・トランジェント/バースト試験器、雷サージ試験器スイッチなどの開閉で出る繰り返しの速い高周波ノイズや、落雷で電力線・電話線に誘導されるノイズを模擬して発生させる
方形波インパルスノイズ試験器ほか誘導性負荷の開放で出る、立ち上がりの速いノイズを模擬する。電源電圧変動試験器、車載用EMC試験器もある

同社は、電磁界プローブで測ったデータと被測定物の実画像を重ね合わせて、電磁波の発生箇所を可視化するシステムも開発しています。

ノイズ研究所が解決できる課題

  • 静電気で機器が誤作動・リセットする。開発中に社内で試験したい
  • リレーやモーターの開閉ノイズ、雷サージへの耐性を確かめたい
  • イミュニティ試験に何度も通らず、試験所に持ち込む前に再現したい

出典:EMC試験器|ノイズ研究所、静電気試験器 ESS-PS1 & GT-31S|ノイズ研究所、可視化技術を利用した近傍電磁界測定システム|ノイズ研究所、会社概要|ノイズ研究所、会社情報|ノイズ研究所

株式会社e・オータマ|EMC試験所の専任エンジニアが、設計段階からノイズ対策を支援

e・オータマとは

e・オータマは、東京都稲城市に本社を置く、1989年設立の会社です。電磁波測定、電磁環境調査、各国申請代行を行い、東京・山梨・東海にEMCセンター(試験所)を持っています。

e・オータマのノイズ対策支援を、設計段階からEMC試験後まで段階ごとに示した図
e・オータマのノイズ対策支援の流れ
出典:e・オータマの公開情報をもとに AI(Claude)で作成

e・オータマの得意技術

技術内容
ノイズ対策支援ノイズ対策専任エンジニアが、図面設計、部品レイアウトやパターン設計、対策部品の実装方法の段階から支援する。EMC試験でノイズが落ちないときの対策や、ノイズ対策部品の削減提案も行う
支援の形設計段階の図面検討、EMC立会い試験時の対策支援、出張対策支援、出張診断測定、受託診断(予備試験)、受託対策
EMC試験EMC試験と、それに付随する電磁波調査・対策、各国申請代行

同社は、部品を付け加えるよりも、部材を増やさずに最適なバランスを保つことを考えた対策を行っているとし、対策支援で効果がなかった場合は料金を半額返金する制度があるとしています。

e・オータマが解決できる課題

  • 製品化の直前にEMC規格を満たせない。出荷時期が迫っている
  • 社内にノイズ対策が得意な人が足りない
  • ノイズ対策部品を減らしてコストを下げたい

公開されている実績

  • 対策支援の実績例:IT機器、医療機器、産業工作機械、制御装置、計測機器、車載機器、半導体製造装置ほか

出典:ノイズ対策|e・オータマ、ノイズ対策支援:詳細フロー|e・オータマ、EMC試験|e・オータマ、会社概要&組織|e・オータマ

選ぶ前に確かめる条件

企業に相談したり、部品や試験を選んだりする前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 困っているのはエミッション(出すノイズ)か、イミュニティ(受けるノイズ)か。両方か
  • 適合させたい規格と、その試験項目(CISPR 32、VCCI、IEC 61000-4シリーズ、車載規格など)と、製品を出す国・地域
  • 規格を超えた周波数と、どれだけ超えたか(試験の結果のデータ)。誤作動した試験の種類とレベル
  • 機器の構成:電源の種類(AC・DC、スイッチング電源の有無)、クロックの周波数、筐体の材質、外につながるケーブルの本数と長さ
  • ケーブルを外す、電源を変えるなど、条件を変えたときにノイズや誤作動がどう変わったか
  • 基板や筐体をまだ変えられる段階か、部品の追加でしか対策できない段階か
  • 試験したときの機器の配置とケーブルの引き回し(写真)
  • 漏洩電流、サイズ、コストなど、対策部品に対する制約

この課題に関係する分野・技術・製品のページ

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年9月29日

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次