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AIデータセンターの液冷(GPUの水冷:コールドプレート・液浸・空冷との選び方)

AIデータセンターの液冷は、GPU などのチップの熱を、空気ではなく水などの液体で運び出す冷やし方です。

AIデータセンターの液冷(GPUの水冷:コールドプレート・液浸・空冷との選び方)
6件解決できる課題
6社紹介している企業
23点図と写真
23件出典

AIデータセンターの液冷(GPUの水冷:コールドプレート・液浸・空冷との選び方)

データセンターのサーバーラックで、各段の GPU サーバーに青い管(冷たい液)とオレンジの管(温まった液)が縦のマニホールドからつながり、右にチップの上の銅の冷却板に液が流れ込み温まって出ていく拡大図を描いたイラスト(AI で生成したイメージ)

高性能化信頼性・長寿命コストダウン伝熱(放熱・冷却)流れと圧力損失漏れ・気密半導体・電子機器

AIデータセンターの液冷は、GPU などのチップの熱を、空気ではなく水などの液体で運び出す冷やし方です。生成AIの計算に使う GPU は1個で最大700W を使い、GPU を72個詰めたラックは電源の合計が132kWになります。空気で冷やせる目安(1ラック約25〜30kW)を大きく超えるため、チップに冷却板を当てて液を流す「直接液冷(コールドプレート)」や、サーバーごと液に浸す「液浸」が広がっています。

このページでは、装置・部品の設計者や、データセンターの設備の担当者に向けて、なぜ液体で冷やすのか、空冷・コールドプレート・液浸の違い、CDU・継手・冷却液などの部品、温度と効率(PUE)、条件からの選び方、液もれなどのトラブルと対策、関わる会社を1ページにまとめました。

水冷ジャケット・冷却板の一般的な選び方(インバーター・モーター・レーザーなど)は、技術ページ「液冷(水冷ジャケット・コールドプレートの選び方)」にあります。このページは、AIデータセンターのサーバーの冷却に絞っています。

知りたいことから読む

目次

なぜAIは水で冷やすのか

理由は2つです。チップとラックの発熱が急に大きくなったことと、空気は水に比べて熱を運びにくいことです。

GPU 1個の発熱が大きくなった

チップが使った電力は、ほぼすべて熱になります。NVIDIA の仕様では、GPU の最大の消費電力(TDP)は、A100(SXM)が標準の構成で400W、H100(SXM)は最大700Wです。8個の GPU を積んだサーバー DGX B200 は、1台で最大約14.3kW です。

A100 の400W と H100 の最大700W を並べた横棒グラフ
図1 GPU 1個の最大の消費電力(TDP)
出典:NVIDIA の A100・H100 の仕様をもとに AI(Claude)で作成

出典:NVIDIA A100 Tensor Core GPU(仕様)|NVIDIA、NVIDIA H100 Tensor Core GPU(仕様)|NVIDIA、NVIDIA DGX B200(仕様)|NVIDIA

1ラックが100kW を超える

さらに、GPU をたくさん1つのラックに詰める設計が増えました。NVIDIA の GB200 NVL72 は、72個の GPU と36個の CPU を1つのラックにまとめた、液冷を前提とした設計です。Supermicro の GB200 NVL72 のラックは、電源の合計が132kW です。

英国の建築設備の技術者団体の誌面 CIBSE Journal は、従来の空冷で冷やせるのは1ラック約25〜30kW までで、新しい計算の用途では1ラック100kW を超えることが多いとしています。空冷の限界の値は資料によって違い、JLL(不動産サービスの会社)の記事では、担当者が「ラックが70kW を超えると空冷で効果が見込める限界」と述べています。

空冷の目安の約25〜30kW、DGX B200 1台の約14.3kW、GB200 NVL72 1ラックの132kW を並べた横棒グラフ
図2 1ラック(1台)の電力と、空冷の目安
出典:CIBSE Journal・NVIDIA(DGX B200)・Supermicro(GB200 NVL72)の資料をもとに AI(Claude)で作成

出典:NVIDIA GB200 NVL72|NVIDIA、Supermicro NVIDIA GB200 NVL72(ラックの仕様)|Supermicro、Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal、グリーンデータセンターとは?実現の鍵を握る「液体冷却」に世界が注目(2024年3月27日)|JLL 日本

空気は熱を運びにくい

身近なパソコンでは、CPU の上のヒートシンクで熱を広げ、ファンの風で運び出します。データセンターの空冷も同じ考え方です。しかし、CIBSE Journal によると、水の体積あたりの熱容量は、空気の3,400倍以上あります。同じ量の熱を運ぶのに、水なら空気よりずっと少ない流れで済みます。

空冷のままラックの電力を上げると、ファンを強く回すことになります。同誌は、高密度のサーバーでは、ファンの動力がサーバーの電力の10〜20%に達しうるとしています。

同じ体積の空気と水で運べる熱を比べ、水は空気の3,400倍以上であることを点の多さで示した図
図3 同じ体積・同じ温度の上がり方で運べる熱
出典:CIBSE Journalをもとに AI(Claude)で作成

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal

冷やし方の種類:空冷・コールドプレート・液浸

データセンターの冷やし方は、液体をどこまでチップに近づけるかで大きく3つに分かれます。

空冷(ヒートシンクとファン)、直接液冷(チップの上の冷却板に液を流す)、液浸(サーバーを電気を通さない液に浸す)の3つを並べた模式図
図4 データセンターの主な冷やし方
出典:CIBSE Journal(模式図)をもとに AI(Claude)で作成
方式しくみ主な冷却液向いている場面注意
空冷ヒートシンクで熱を広げ、ファンの風で運ぶ。背面の扉を液冷の熱交換器にして排気の熱を回収する方法もある空気(背面扉は水など)1ラック数十kW までの今の部屋ファンの動力が増える。高密度では足りない
直接液冷(コールドプレート)CPU・GPU に冷却板を当て、中の細い流路に液を流す。温まった液は CDU で冷やして回す水、水とプロピレングリコールの混合液(PG25)、冷媒GPU サーバー。今の空冷の部屋に足していけるチップ以外の部品は空気で冷やす。継手の漏れ対策
液浸(単相)サーバーを電気を通さない液に浸し、液をポンプで外の熱交換器へ送る電気を通さない液(誘電性の液)サーバーごと冷やし、冷却の電力を大きく減らしたい液の重さ・燃えやすさ・保守の手順
液浸(二相)沸点の低い液をチップの熱で沸騰させ、蒸気を上のコイルで冷やして液に戻す沸点の低い冷媒(フッ素系など)単相の2〜3倍の効率になりうるとされ、ラック100kW 超の将来に有望とされるフッ素系の液は環境面の配慮・供給

CIBSE Journal の説明をもとに、編集部が表にまとめました(「向いている場面」は編集部の整理を含む)。

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal

空冷

空冷は、いちばん広く使われてきた方式です。CIBSE Journal は、サーバーのラックの背面の扉を、液で冷やす熱交換器に替える方法(リアドア熱交換器)を紹介しています。ファンの温まった排気が扉を通るときに液が熱を受け取るので、今の空冷の部屋に後から足しやすいのが特長です。

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal

直接液冷(コールドプレート)

直接液冷は、CPU・GPU など発熱の大きい部品に冷却板(コールドプレート)を直接当てる方式です。冷却板の中の細い流路を液が流れて熱を受け取り、CDU(冷却液分配装置)で冷やされてまた戻ります。CIBSE Journal によると、二次側の液には水75%・プロピレングリコール25%の混合液(PG25)がよく使われます。

液は冷却板を付けた部品の近くだけを流れるので、電源など液で冷やさない部品には、空冷が必要になることがあります。冷却板の流路の工夫は冷却板(コールドプレート)で紹介します。

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal

液浸(単相・二相)

液浸は、サーバーを丸ごと、電気を通さない液に浸す方式です。単相式は液が液のまま温まり、ポンプで外の熱交換器へ送って冷やします。二相式は、沸点の低い液がチップの熱で沸騰し、その蒸気を槽の上のコイルで冷やして液に戻すしくみです。

方式しくみ身近な例
単相(液のまま)液の温度が上がって熱を運ぶ。液をポンプで外の熱交換器へ送って冷やす車のラジエーター(水が温まって熱を運ぶ)
二相(沸騰させる)沸点の低い液がチップの熱で沸騰し、蒸気を槽の上のコイルで冷やして液に戻す汗(蒸発するときに体の熱を奪う)

ファンや空調を減らせるため、冷却の電力を減らせるのが強みです。KDDI・三菱重工業・NECネッツエスアイの実証では、PUE 1.05を達成しました(温度と効率:PUE と温かい水で冷やす考え方)。

二相式沸騰冷却液浸システム「爽空 sola」「爽空 sola mini」(YouTube の動画)
動画 二相式沸騰冷却液浸システム「爽空 sola」「爽空 sola mini」
出典:篠原電機株式会社(YouTube)

動画は篠原電機の公式チャンネルの動画です(二相式の沸騰冷却による液浸冷却システムの実機)。

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal、データセンター内のサーバーを液体冷却、冷却電力の94%減を達成(2023年3月6日)|三菱重工業

液冷の部品:冷却板・CDU・継手・冷却液

液冷は、サーバーの中を回る液(二次側)と、建物の水(一次側)の2つのループでできています。2つをつなぐのが CDU です。

サーバーの GPU の冷却板からマニホールドを通って CDU へ液が回り、CDU の熱交換器で建物の水に熱を渡し、建物の水は冷却塔やチラーで冷やされる流れを示した模式図
図5 液冷のループ
出典:CIBSE Journal・ニデック・Supermicro の資料(模式図)をもとに AI(Claude)で作成

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal、最大300kWの冷却能力を備えたIn-Rack CDUを開発(2026年6月8日)|ニデック、Supermicro NVIDIA GB200 NVL72(ラックの仕様)|Supermicro

冷却板(コールドプレート)

冷却板は、チップの熱を液に渡す部品です。日立製作所は2026年10月、AIデータセンターの GPU を冷やす冷却板を試作したと発表しました。冷却液を GPU の発熱部へ向けて流し、U字に折り返して出口へ流す「U字トンネル流路」で、入口の冷たい液と出口の温まった液が混ざりにくくしています。従来の、面に沿って流す方式では、流路の後半で液の温度が上がるのが課題でした。

数千本の細い流路を並べて1本を短くし、圧力損失を抑えたのも特長です。試作品は、冷却液の流量が毎分4L のとき、熱抵抗0.011K/W、圧力損失27.6kPaでした(日立は脚注で、熱抵抗を GPU の発熱を数kW と仮定した場合の冷却性能の目標値とも説明しています)。熱抵抗が小さいほど、同じ発熱でもチップの温度が上がりにくくなります。製品化の時期は発表されていません。

左は液が面に沿って流れ出口へ進むほど温まる流路、右は冷たい液が発熱部へ向かって流れ U字に折り返して出る流路を並べた考え方の模式図
図6 面に沿って流す流路と、U字に折り返す流路
出典:日立製作所の発表(2026年10月21日)をもとに AI(Claude)で作成

出典:日立、次世代AIデータセンターの電力消費量を低減するGPU冷却用コールドプレートを開発(2026年10月21日)|日立製作所、U字に折り返す流路で、GPUを45℃の水で冷やす(2026年10月21日)|Impress Watch、数千本のU字流路でGPUを冷やす 日立のコールドプレート(2026年10月28日)|EE Times Japan

CDU(冷却液分配装置)

CDU は、二次側の液をポンプで回し、熱交換器で一次側の水に熱を渡す装置です。ラックの中に入れる In-Rack 型と、ラックの列に置く In-Row 型があります。ニデックは2026年6月、最大300kW の冷却能力をもつ In-Rack の CDUの試作品を発表しました。漏水センサーと、温度・圧力・流量・液位の監視を備えています。

Supermicro の GB200 NVL72 のラックでは、ラックの中に入れる250kW の CDU と、列に置く1.3MW の CDU を選べます。建物に冷却塔や水の設備がない場合に向けて、液の熱を空気に捨てる「液-空」の方式(180kW・240kW)も用意しています。

出典:最大300kWの冷却能力を備えたIn-Rack CDUを開発(2026年6月8日)|ニデック、Supermicro NVIDIA GB200 NVL72(ラックの仕様)|Supermicro

継手(カプラ)とマニホールド

ラックの中では、マニホールド(分岐の配管)から各サーバーへ液を配り、サーバーの抜き差しのたびに継手(カプラ)を外します。外したときに液がたれにくい継手が要になります。日東工器は、データセンターの水冷の配管に使えるカプラとして「コンパクトゼロスピルカプラ」を紹介しており、外したときの液だれは0.015mL(CZL-1)です(使用条件で変わる)。

出典:カプラ(製品紹介)|日東工器、コンパクトゼロスピルカプラ CZL(仕様)|日東工器

冷却液

コールドプレートの二次側は、水やプロピレングリコールの混合液がよく使われます。液浸の液は、電気を通さないことが条件です。ENEOS は2024年2月、単相式の液浸の冷却液「ENEOS IX シリーズ」を発表しました。日本の消防法を考えて引火点を250℃以上にした品など3種類があります。

二相式の液浸に使われてきたフッ素系の液には、PFAS(有機フッ素化合物)の問題があります。3M は年次報告書で、2025年末に PFAS の製造から撤退したとしています。

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal、環境負荷低減に貢献する液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」の販売開始について(2024年2月5日)|ENEOS、3M Company Form 10-K(2025年12月期)|米国証券取引委員会(SEC)

温度と効率:PUE と温かい水で冷やす考え方

PUE:データセンター全体の電力 ÷ IT 機器の電力

データセンターの効率は、PUE で表します。データセンター全体の消費電力量を、IT 機器の消費電力量で割った値で、1.0 に近いほど、冷却などに使う電力が少ないことを表します。JLL の記事によると、資源エネルギー庁のベンチマーク制度では、データセンターのめざす水準をPUE 1.4 以下としています。

一般的なデータセンターの1.7、資源エネルギー庁のめざす1.4、NTTデータの液浸の実証の推定1.07、KDDI ほかの液浸の実証の1.05を並べた横棒グラフ
図7 PUE の例
出典:三菱重工業・JLL 日本の資料をもとに AI(Claude)で作成

KDDI・三菱重工業・NECネッツエスアイは2023年、液浸冷却と外気で冷やす装置を組み合わせ、100kVA 相当の IT 機器で PUE 1.05を達成し、サーバーの冷却に使う電力を94%減らしたと発表しました(PUE 1.7 の一般的なデータセンターとの比較)。JLL の記事によると、NTTデータも2022年6月の液浸の実証で推定 PUE 1.07 としています。どちらも発表した会社の条件での値です。

出典:データセンター内のサーバーを液体冷却、冷却電力の94%減を達成(2023年3月6日)|三菱重工業、グリーンデータセンターとは?実現の鍵を握る「液体冷却」に世界が注目(2024年3月27日)|JLL 日本

温かい水で冷やすと、冷凍機がいらない時間が増える

液冷では、冷やす液の温度を高くできるほど、電気で冷やすチラー(冷凍機)を使わず、外気で水を冷やせる時間が長くなります。日立製作所の発表は、45℃程度の冷却液で冷やす「高温水冷却」に触れています。同社は、東京など代表的な都市の外気の温度をもとに年間のチラーの稼働を試算し、冷却に必要な電力を30%減らせる見込みとしています(試算。条件で結果は変わる)。

空調の基準を作る米国の学会 ASHRAE は、第5版の指針で液冷の施設の水の温度クラスを W17・W27・W32・W40・W45・W+ に改めました(数字は供給温度の上限)。W40 は、データセンターの排熱を再利用する関心が高まったことから新しく設けられたクラスです。

W17 から W45、W+ までの施設の水の温度クラスを、供給温度の上限の17℃・27℃・32℃・40℃・45℃・45℃超で並べた横棒グラフ
図8 施設の水の温度クラス(ASHRAE 第5版)
出典:Upsite Technologies(ASHRAE 第5版の解説)をもとに AI(Claude)で作成

出典:日立、次世代AIデータセンターの電力消費量を低減するGPU冷却用コールドプレートを開発(2026年10月21日)|日立製作所、Major Changes to ASHRAE’s Fifth Edition of Thermal Guidelines – Part 3: Liquid Cooling Chapter Updates(2024年7月31日)|Upsite Technologies

条件から冷やし方を選ぶ

選ぶときは、まず「1ラックで何kW を冷やすか」と「建物に水を引けるか」を数字と条件にするのが近道です。

条件まず考える冷やし方
1ラック 20〜30kW 程度まで・今の空冷の部屋空冷(背面扉の熱交換器を足す)
GPU サーバーでラックが数十〜100kW 超直接液冷(コールドプレート)
建物に水を引けない・まず数ラックから直接液冷+液-空の CDU
サーバーごと冷やし、PUE を下げたい液浸(単相)
将来、ラックが100kW を大きく超える二相(沸騰)の液冷・液浸(有望とされる)

この表は、このページの出典をもとに編集部が整理したものです。ほとんどの GPU ラックは、液で冷やす部分と空気で冷やす部分の両方をもちます。実際には、サーバーのメーカーが指定する冷やし方に従います。

ラックの電力で分ける

空冷の目安(CIBSE Journal で約25〜30kW)を超えるなら、液冷を考えます。GB200 NVL72 のように最初から液冷を前提にしたサーバーも出ています。

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal、NVIDIA GB200 NVL72|NVIDIA

今ある建物の設備で分ける

コールドプレートの方式は、今の空冷の部屋のまま、液冷のラックを少しずつ足していけるのが強みです。冷却塔や水の設備がない建物では、液の熱を空気に捨てる「液-空」の CDU を使う方法もあります。ニデックの CDU は、OCP(Open Compute Project)の ORV3 規格のラックに合わせ、段階的な液冷化の改修にも使えるとしています。

左は建物に水を引ける場合で、空冷のラックの横に液冷のラックを足し CDU で建物の水に熱を渡す図、右は水の設備がない場合で、液-空の CDU のファンで部屋の空気に熱を捨てる図の模式図
図9 今の空冷の部屋に、液冷のラックを足す2つの方法
出典:CIBSE Journal・Supermicro(GB200 NVL72)・ニデックの資料(模式図)をもとに AI(Claude)で作成

出典:Supermicro NVIDIA GB200 NVL72(ラックの仕様)|Supermicro、最大300kWの冷却能力を備えたIn-Rack CDUを開発(2026年6月8日)|ニデック

建物の重さと高さも見る

JLL の記事によると、液冷にすると空調の設備を減らせる一方、同じ床面積に同じ規模の IT 機器を置いた場合、床にかかる重さは1m² あたり12〜15kPa から、少なくとも20kPa に増えるとされています。液浸では、天井の高さの条件をゆるめられ、海外で標準的な6m に対し4m 程度で収まるとしています。

出典:グリーンデータセンターとは?実現の鍵を握る「液体冷却」に世界が注目(2024年3月27日)|JLL 日本

液もれ・腐食などのトラブルと対策

液冷では、空冷にはなかったトラブルが起きます。考え方は「漏れない」だけでなく「漏れても早く見つけて止める」です。主なものと対策を整理しました(編集部が整理)。

トラブル起きる所・原因対策
液もれ継手・配管のつなぎ目液だれの少ない継手、CDU の漏水センサー
水質・腐食冷却板の銅とほかの金属がつながる(電食)、細い流路の詰まり液の管理・フィルター
床の重さ液と装置で床にかかる重さが増える(12〜15kPa → 20kPa 以上の例)建物の耐荷重を確かめる
燃えやすさ液浸の液引火点・発火点を確かめる
冷却液の供給フッ素系の液(3M は PFAS の製造から撤退)代わりの液と供給の見通しを早めに確かめる
温度の管理流量が足りず一部が熱くなる、圧力損失が大きい流量・温度・圧力の監視
液冷のラックのマニホールドの継手を外しても液だれが0.015mLと少ないこと、ラックの下の漏水センサーが漏れを見つけて CDU の監視が異常を検知・通知する流れを示した模式図
図10 液もれを「少なくする」「早く見つける」しくみ
出典:日東工器・ニデックの資料(模式図)をもとに AI(Claude)で作成

液もれ:見つけて止める

液もれは、継手や配管のつなぎ目から起きやすくなります。対策は、外したときに液がたれにくい継手を使うことと、漏水センサーで早く見つけることです。ニデックの CDU は、内部と外部に漏水センサーを置き、異常のときに速やかに検知・通知するとしています。

出典:コンパクトゼロスピルカプラ CZL(仕様)|日東工器、最大300kWの冷却能力を備えたIn-Rack CDUを開発(2026年6月8日)|ニデック

水質と腐食:異種金属と細い流路

冷却板の銅と、配管・熱交換器のほかの金属が同じ液の中でつながると、異種金属の接触による腐食(電食)が起きることがあります。細い流路は、スケール(水あか)や異物で詰まりやすくなります。液の管理とフィルターで防ぎます。

燃えやすさと冷却液の供給

液浸の液は、引火点・発火点を確かめます。ENEOS の液浸冷却液は、日本の消防法を考えて引火点250℃以上にした品と、発火点300℃超の品を用意しています。フッ素系の液は、3M が PFAS の製造から撤退しており、代わりの液や供給の見通しを早めに確かめる必要があります。

出典:環境負荷低減に貢献する液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」の販売開始について(2024年2月5日)|ENEOS、3M Company Form 10-K(2025年12月期)|米国証券取引委員会(SEC)

流量と圧力損失

細い流路を通すほど、圧力損失が大きくなり、ポンプの動力が増えます。流量が足りないと、チップの一部だけが熱くなります。流量・温度・圧力を監視し、ポンプの能力と配管の太さを合わせて決めるのが基本です。

企業紹介(AIデータセンターの液冷の技術)

冷却板・CDU・冷却液・継手・データセンターの設備まで、得意な部分が違う6社を紹介します。掲載は各社の公式の発表・製品ページで確認できた事実だけです。各社のサイトの規約で写真の転載ができないため、各社が受け持つ所を模式図にまとめました。

直接液冷のループで、冷却板に日立製作所(試作)と古河電気工業、継手に日東工器、CDU にニデック、液浸の槽で冷却液に ENEOS、液浸のデータセンターに三菱重工業を示した模式図
図11 紹介する6社が受け持つ所
出典:日立製作所・ニデック・古河電気工業・ENEOS・三菱重工業・日東工器の発表(模式図)をもとに AI(Claude)で作成

導入・相談の前に整理すること

冷却の装置・部品の会社に相談する前に、整理しておきたい項目です(編集部が整理)。

  • ラックの電力:1ラックあたり何kW か(今と、将来の計画)
  • チップの発熱:1個あたりの W と、1台あたりの個数
  • 冷却液の温度:入口・出口の温度、サーバーのメーカーの指定
  • 建物の水:冷却塔・チラーの有無、施設の水の温度(ASHRAE の W クラス)
  • 床と天井:床の耐荷重、天井の高さ(液浸)
  • 冷却液:水・PG25・油・フッ素系のどれか。引火点と供給の見通し
  • 継手と監視:継手の種類、漏水センサー、温度・圧力・流量の監視
  • 保守:サーバーの交換の手順、液の補充・交換、こぼれたときの対応

出典:Module 254: Liquid cooling in data centre applications(2025年10月)|CIBSE Journal、Major Changes to ASHRAE’s Fifth Edition of Thermal Guidelines – Part 3: Liquid Cooling Chapter Updates(2024年7月31日)|Upsite Technologies、グリーンデータセンターとは?実現の鍵を握る「液体冷却」に世界が注目(2024年3月27日)|JLL 日本、環境負荷低減に貢献する液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」の販売開始について(2024年2月5日)|ENEOS、最大300kWの冷却能力を備えたIn-Rack CDUを開発(2026年6月8日)|ニデック

会社冷却板CDU冷却液継手設備・
データ
センター
日立製作所U字トンネル流路(東京都千代田区)●●
ニデックIn-Rack CDU(京都市南区)●●
古河電気工業水冷モジュール(東京都千代田区)●
ENEOS液浸冷却液(東京都千代田区)●
三菱重工業液浸のデータセンター(東京都千代田区)●
日東工器ゼロスピルカプラ(東京都大田区)●

●は、各社の公式の発表・製品ページで確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。日立製作所の冷却板は試作品です。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。

株式会社日立製作所|U字トンネル流路の GPU 用冷却板(試作)

日立製作所とは

東京都千代田区に本店を置く会社です。2026年10月、次世代のAIデータセンター向けに、GPU を冷やす冷却板(コールドプレート)を試作したと発表しました。

日立製作所の得意技術

技術内容
U字トンネル流路冷却液を GPU の発熱部へ向けて流し、U字に折り返して出口へ流す。入口と出口の液が混ざりにくい
試作品の性能冷却液の流量が毎分4L のとき、熱抵抗0.011K/W、圧力損失27.6kPa(熱抵抗は GPU の発熱を数kW と仮定した場合の値)
冷却電力の試算東京など代表的な都市の外気の条件で、冷却に必要な電力を30%減らせる見込み(試算)

製品化の時期は発表されていません。成果の一部は、ASME の国際会議 InterPACK2026(2026年10月26〜29日、米国サンディエゴ)で発表する予定としています。

日立製作所が解決できる課題

  • GPU の発熱が大きく、冷却板の性能が足りない
  • 冷却に使う電力(チラーの稼働)を減らしたい

出典:日立、次世代AIデータセンターの電力消費量を低減するGPU冷却用コールドプレートを開発(2026年10月21日)|日立製作所、U字に折り返す流路で、GPUを45℃の水で冷やす(2026年10月21日)|Impress Watch、日立 サステナビリティレポート2023(会社概要)|日立製作所

ニデック株式会社|In-Rack で最大300kW の CDU

ニデックとは

京都市南区に本社を置く会社です。データセンターの液冷の製品として、CDU(In-Rack・In-Row)と、マニホールド・継手(Quick Disconnect)を扱っています。

ニデックの得意技術

技術内容
In-Rack CDU最大300kW の冷却能力の試作品(2026年6月の発表)。2027年第1四半期の量産開始をめざす
監視内部と外部の漏水センサー、温度・圧力・流量・液位のリアルタイムの監視
ラックへの適合OCP の ORV3 規格のラックに適合。段階的な液冷化の改修にも

ニデックが解決できる課題

  • ラックの発熱が大きく、CDU の能力が足りない
  • 液もれを早く見つけたい

公開されている実績・用途

  • 2026年6月10日からの Interop Tokyo 2026 で In-Rack CDU を初公開(2026年6月の発表)

出典:最大300kWの冷却能力を備えたIn-Rack CDUを開発(2026年6月8日)|ニデック、液冷ソリューション|ニデック

古河電気工業株式会社|データセンタ向けの水冷モジュール

古河電気工業とは

東京都千代田区に本社を置く会社です。データセンタの CPU・GPU を冷やす水冷モジュールを作っています。

古河電気工業の得意技術

技術内容
水冷モジュール流路を設けた冷却板を素子の上に載せ、水などの液体を循環させて熱を回収する
生産フィリピンの工場(FTL)を拡張。生産能力は2024年7月の計画時点の2倍以上。拡張部分は2028年1月の量産開始をめざす
売上の計画水冷モジュールで2027年度に500億円以上、2030年度に1,000億円

古河電気工業が解決できる課題

  • CPU・GPU を液で冷やすモジュールを量産で調達したい

出典:データセンタ向け水冷モジュールの製造工場を拡張(2025年11月10日)|古河電気工業

ENEOS株式会社|単相式の液浸冷却液「ENEOS IX シリーズ」

東京都千代田区に本社を置く会社です。2024年2月、サーバーを浸して冷やす単相式の液浸冷却液を発表しました。

ENEOSの得意技術

技術内容
高引火点品日本の消防法を考え、引火点250℃以上にした品
高冷却効率品世界的な基準とされる発火点300℃超を満たしつつ冷却効率を追求した品
カーボンニュートラル対応品植物を原料にした品

添加剤の処方の技術で酸化安定性を高め、長く使えるようにしたとしています。KDDI・Intel・GRC と協業して開発しました。

ENEOSが解決できる課題

  • 液浸の冷却液を、消防法の条件に合わせて選びたい
  • 冷却液を長く使いたい

公開されている実績・用途

  • KDDI の液浸の実証(Phase3)に参画。冷却の電力の94%減を達成した実証(2024年2月の発表の関連情報)

出典:環境負荷低減に貢献する液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」の販売開始について(2024年2月5日)|ENEOS、データセンター内のサーバーを液体冷却、冷却電力の94%減を達成(2023年3月6日)|三菱重工業

三菱重工業株式会社|液浸冷却のデータセンター

三菱重工業とは

東京都千代田区に本店を置く会社です。KDDI・NECネッツエスアイとともに、液浸冷却のデータセンターの実証を進めてきました。

三菱重工業の得意技術

技術内容
液浸の実証液浸冷却と外気で冷やす装置を組み合わせ、100kVA 相当の IT 機器で PUE 1.05。サーバーの冷却の電力を94%減(2023年3月の発表)
コンテナ型12ft のコンテナに液浸25kVA・空冷8kVA・水冷8kVA のサーバーを同時に積める40kVA 級(2023年10月の発表)
想定の PUE40℃の環境で、液浸だけなら1.05、液浸と空冷の併用で1.14(想定)

三菱重工業が解決できる課題

  • データセンターの冷却の電力を大きく減らしたい
  • 小さな規模から液浸を試したい

出典:データセンター内のサーバーを液体冷却、冷却電力の94%減を達成(2023年3月6日)|三菱重工業、「液浸・空冷ハイブリッド冷却方式コンテナ型データセンター」を開発(2023年10月4日)|三菱重工業、会社案内|三菱重工業

日東工器株式会社|液だれの少ないカプラ(継手)

日東工器とは

東京都大田区に本社を置く、継手(カプラ)などのメーカーです。同社のカプラは、データセンターやスーパーコンピュータなどで使われているとしています。

日東工器の得意技術

技術内容
コンパクトゼロスピルカプラ外したときの液だれを減らしたカプラ。データセンター内の水冷式の配管に使える
液だれ・空気の混入液だれ0.015mL・空気の混入0.02mL(CZL-1。使用条件で変わる)
圧力最高使用圧力1.0MPa、耐圧力1.5MPa

日東工器が解決できる課題

  • 冷却の配管を切り離すときに液がたれるのを防ぎたい
  • 狭いピッチで冷却の配管をしたい

出典:カプラ(製品紹介)|日東工器、コンパクトゼロスピルカプラ CZL(仕様)|日東工器、会社概要|日東工器

よくある質問

なぜ液冷か・方式の違い

なぜAIのデータセンターは水で冷やすのですか?
GPU 1個が最大700W、GPU 72個のラックが132kW と発熱が大きく、空気で冷やせる目安(1ラック約25〜30kW)を超えるためです。水の体積あたりの熱容量は空気の3,400倍以上あります(なぜAIは水で冷やすのか)。
コールドプレートと液浸の違いは何ですか?
コールドプレートはチップに冷却板を当てて中に液を流し、ほかの部品は風で冷やします。液浸はサーバーを丸ごと電気を通さない液に浸します(冷やし方の種類:空冷・コールドプレート・液浸)。
単相と二相の違いは何ですか?
単相は液が液のまま温まって熱を運びます。二相は液を沸騰させ、蒸発の熱で冷やします(液浸(単相・二相))。
CDU とは何ですか?
サーバーの中を回る液をポンプで送り、熱交換器で建物の水に熱を渡す装置です(CDU(冷却液分配装置))。

効率・導入・漏れ

PUE とは何ですか?
データセンター全体の消費電力量を IT 機器の消費電力量で割った値です。1.0 に近いほど効率がよく、資源エネルギー庁はめざす水準を1.4以下としています(PUE:データセンター全体の電力 ÷ IT 機器の電力)。
温かい水で冷やせるのはなぜよいのですか?
液の温度が高いほど、電気で冷やすチラーを使わず外気で水を冷やせる時間が長くなり、冷却の電力が減るからです(温かい水で冷やすと、冷凍機がいらない時間が増える)。
今の空冷のデータセンターでも液冷にできますか?
コールドプレートの方式は、液冷のラックを少しずつ足していけます。水の設備がなければ、液の熱を空気に捨てる「液-空」の CDU もあります(今ある建物の設備で分ける)。
液もれは心配ないですか?
継手や配管から漏れることがあります。液だれの少ない継手と漏水センサーで、漏れても早く見つけて止める設計にします(液もれ:見つけて止める)。

回答は、このページの出典をもとに編集部がまとめたものです。

出典・確認日

※製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。本ページでは数値と事実だけを要約し、各社の文章・図は転載していません。消費電力・冷却能力・PUE・削減率などの数値は、各社の発表の時点と条件によるもので、資料をまたいで細かく比べないでください。日立製作所の冷却板は試作品で、冷却電力の削減は試算です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。

情報の確認日:2026年10月29日 本ページの内容は一般的な情報です。各社の製品・事業は、その会社の公開情報にもとづきます。

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