センサーを小さく組み込みたい

薄い筐体の中の基板に小さなセンサーのチップを載せ、フレキ基板で別の基板につないだイメージ

製品を小さく・薄くしたら、センサーの入る場所がなくなった。回る部品や動く道具にセンサーを付けたいが、ケーブルを通せない。小さいセンサーに替えたら、値が乱れる。組み込んだらゼロ点がずれた。センサーを小さく組み込む課題は、「センサーそのものを小さくする」「配線をなくす・短くする」「小さくしたことで起きるずれを実装で抑える」に分けて考えると、打つ手が見えてきます。

MEMS センサーや薄膜の素子を使うのか、センサーの近くでデジタル化するのか、無線にするのか、置き場所と実装のしかたを変えるのか。次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)MEMS センサー(加速度・圧力・ジャイロなど)超小型・薄型のセンサー素子(チップ・薄膜・フレキシブル)センサーの近くでデジタル化(センサー IC・デジタル出力)無線化と省電力実装とパッケージ(置き場所・低温実装・フレキ基板・封止)
A入れる場所が狭い・薄い。今のセンサーが入らない◎◎○△○
B動く所・回る所・奥まった所で、配線を通せない△○◎○
C小さくしたら信号が弱く、ノイズで値が乱れる△◎△
D組み込んだら値がずれる・遅れる(基板のひずみ・熱)△◎
E合う形の標準品がない。自社の製品に合わせて作りたい◎○○○◎

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に効く対策は、測る量(加速度・圧力・温度・距離など)、求める精度と応答の速さ、置く場所の温度や振動、生産の数によって異なります。「無線化と省電力」の「△」(症状A)は、配線は減らせても電池と無線の分だけ体積が増えることを示します。「超小型・薄型のセンサー素子」の「△」(症状B)は、薄くて曲げられる素子なら曲面や狭いすき間に沿わせられる場合があることを、(症状D)は、薄い温度センサほど温度の変化に速く追従する(遅れが小さい)ことを示します。「MEMS センサー」の「△」(症状C)は、MEMS は小さい分だけ信号も小さくなりやすく、重りの質量を増やす工夫などで改善した研究例があることを示します。「実装とパッケージ」の「△」(症状C)は、配線を短くしたり、ドライバ IC を近くに置いたりする設計で効く場合があることを示します。◎は、出典の技術資料やメーカーの資料で、その症状に直接はたらくとされている対策、○は効果が期待できる対策を示します(記号の根拠は、下の「解決技術の詳細」と企業紹介の各出典です)。空欄は、その技術だけでは直接の対策になりにくいことを示します。

課題の診断と解決策

困っていること(入らない、配線できない、信号が弱い、組み込むとずれる、合う物がない)から、疑う原因と、まず試す対策の見当をつけられます。症状ごとの詳しい見方は、下のカードで確かめてください。

困っていることから、疑う原因とまず試す対策を選ぶ早見図
困っていることから、疑う原因とまず試す対策を絞る早見図
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
A

入れる場所が狭い・薄い。今のセンサーが入らない

筐体を薄くしたら温度センサが入らない。部品のすき間に加速度センサを入れたいが、基板ごと入る場所がない。

薄い筐体のすき間に、回路とコネクタ・ケーブルの付いたセンサーのモジュールを入れようとしても、高さが合わずに入らないイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
センサーは、素子そのものに加えて、パッケージ、アンプなどの回路、コネクタとケーブルの分だけ場所を取ります(編集部の解説)。MEMS の3軸加速度センサーは、商品化されているもので 2mm×2mm×1mm 前後と小さくなっています。温度センサでは、ガラス基板の上に膜をつくって厚さを0.07mm 程度にした薄膜サーミスタも開発されています。
解決に使える技術
選ぶときの注意

小さくすると、信号が小さくなる、熱や基板のひずみの影響を受けやすくなる、といった別の課題が出ることがあります(症状C・D。編集部の解説)。センサー単体の大きさだけでなく、回路・配線・固定の方法まで含めて、入る大きさを考えます。

B

動く所・回る所・奥まった所で、配線を通せない

回転する部品や、振り回す道具にセンサーを付けたい。可動部を通る配線が切れる。筐体の奥までケーブルを引き回せない。

回転する円板に付けたセンサーのケーブルが軸に巻き付いて切れているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
動く所に付けたセンサーのケーブルは、引っかかったり、曲げを繰り返したりして切れるおそれがあります(編集部の解説)。マイクロストーンは、ゴルフ用具に付けるセンサーでは、有線だとケーブルに引っかかって切断のおそれがあるため、無線方式が必須だったとしています。
解決に使える技術
選ぶときの注意

無線にすると、電池の寿命とデータを送る間隔がトレードオフになります。パナソニックの無線センサの例では、送る間隔を短くするほど電池の寿命が短くなります。ケーブルの断線そのものの対策は「ケーブルが断線する」の課題ページも参考にしてください。

C

小さくしたら信号が弱く、ノイズで値が乱れる

小さいセンサーに替えたら、値のばらつきが大きくなった。アナログの信号線を長く引き回したら、ノイズが乗る。

小さなセンサーから長いケーブルで送るアナログ信号に、そばのモーターからノイズが乗っているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
東京工業大学(当時)などの研究グループは、MEMS 加速度センサーには、重りの質量に反比例するノイズ(ブラウニアンノイズ)があるとし、金属の層を重ねて重りの質量を増やすことで、同じ大きさの従来品より感度100倍以上・ノイズ1/10以下にしています。小さな信号をアナログのまま長く送ると、途中でノイズを拾いやすくなります(編集部の解説)。
解決に使える技術
選ぶときの注意

ノイズの原因は、センサーの大きさだけでなく、配線・接地・インバーターなどの周りの機器にもあります(編集部の解説)。配線と接地の対策は「ノイズでセンサー値が乱れる」の課題ページで詳しく扱っています。

D

組み込んだら値がずれる・遅れる(基板のひずみ・熱)

単体で確かめたときは合っていたのに、製品に組み込むとゼロ点がずれる。ねじを締めると値が変わる。温度の変化に追いつかない。

ねじで留めた基板がねじの近くで曲がり、そばのセンサーにひずみがかかり、電源 IC の熱も届いているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
STMicroelectronics の技術資料は、はんだ付けなどの組み立てで、センサーのチップ・パッケージ・基板の間に熱と力による応力が生じ、オフセット(ゼロ点)や感度がずれるとしています。ねじ・穴・支柱、近くのシールド、アンダーフィル、電池や電源 IC などの熱源も、ずれの原因として挙げています。温度センサでは、素子の熱時定数が大きいほど、温度の変化に遅れて追従します(編集部の解説)。
解決に使える技術
  • 置き場所と実装ねじの間の、ひずみや振動の少ない所に置き、熱源から離す。低温で実装する
  • 薄い温度センサ熱時定数の小さい薄膜の素子で、遅れを小さくする
選ぶときの注意

組み込んだ後のずれは、センサーの不良ではなく、置き場所や固定のしかたが原因のことがあります。試作の段階で、組み込む前と後の値を比べておくと、原因を切り分けられます(編集部の解説)。

E

合う形の標準品がない。自社の製品に合わせて作りたい

測りたい量や大きさに合う市販のセンサーがない。自社の製品の形に合わせたセンサーを作りたいが、社内に製造の設備がない。

曲がった細いすき間に、市販の四角いセンサーは入らず、形に合わせて作ったセンサーなら収まるイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
MEMS は、主要な部分を半導体の集積回路の製造技術でつくり、立体の形や可動の構造をつくる工程も含みます(メムス・コア)。専用の設備が要るため、設計から試作・量産までを受託する会社や、実装の開発を受託する会社を使う方法があります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

受託開発では、測る量・大きさ・精度・使う温度・生産の数を先に整理しておくと、方式や費用の見当が早くつきます(編集部の解説)。

なぜ、センサーを小さく組み込むと問題が起きるのか

センサーは、素子より周りのものが場所を取る

小さなセンサー素子のまわりに、ケース・回路基板・コネクタ・ケーブル・取付け金具が並び、素子よりずっと場所を取っているイメージ
小さな素子:周りの回路・配線・固定の部品が場所を取るイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

センサーを製品に組み込むときは、素子のほかに、パッケージ、信号を増幅・変換する回路、コネクタとケーブル、固定する部品が要ります。メムス・コアは、MEMS を、機械要素・センサー・アクチュエータ・電子回路をひとつの基板の上に集積したデバイスと説明しています。機械の構造と電子回路が別のチップになる場合もあるとしています。素子を小さくしても、回路や配線が外に残れば、全体は小さくなりません(編集部の解説)。

素子と回路が分かれたセンサーと、素子とICを1つのパッケージにまとめたセンサーの比較
センサーは素子より周りの回路・配線が場所を取る
出典:メムス・コア「MEMSとは?」の説明をもとに AI(Claude)で作成(形と大きさは模式)

小さくすると、信号が小さくなりノイズが目立つ

ばねで支えた重りと電極からなる MEMS 加速度センサーで、小さく軽い重りのほうがノイズの揺れが目立つイメージ
軽い重り:小さくすると信号が小さく、ノイズが目立つイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

静電容量式の MEMS 加速度センサーは、ばねで支えた重りが加速度で動き、電極のすき間が変わるのを静電容量の変化として読み取ります(編集部の解説)。東京工業大学(当時)と NTTアドバンステクノロジの研究グループは、このセンサーに重りの質量に反比例するノイズ(ブラウニアンノイズ)があるとし、複数の金の層を重ねて面積あたりの重りの質量を増やしました。4mm 角のチップで、同じ大きさの従来品と比べて感度100倍以上、ノイズ1/10以下にしたとしています。

静電容量式のMEMS加速度センサーの重り・ばね・電極の模式図と、重りの質量とノイズの関係
静電容量式の MEMS 加速度センサーのしくみと、重りの質量とノイズの関係
出典:東京工業大学のニュース(2019年)の記載をもとに AI(Claude)で作成(形は模式)

逆にいえば、同じ方式のまま小さくすると、重りが軽くなって信号が小さくなり、ノイズが目立ちやすくなります(編集部の解説)。小さな信号をアナログのまま長い配線で送ると、途中でノイズを拾います(編集部の解説)。共和電業は、ひずみゲージ式センサの信号をデジタル信号(RS-485・CAN)に変えて伝送すると、アナログ信号と比べて長距離の伝送や分散した配置ができ、省配線やノイズの影響を減らすのに有効としています。

基板のひずみと熱が、値をずらす

STMicroelectronics の MEMS センサーの基板設計の技術資料(TN1383)は、はんだ付けなどの組み立てで、センサーのチップ・パッケージ・基板の間に熱と力による応力が生じ、それがセンサーの構造に伝わって、オフセット・感度・セルフテストの応答がずれるとしています。応力でシリコンのチップが変形すると、電極の位置が動き、本当の加速度などと区別できない信号になるためです。

同じ資料は、組み立て直後の応力は時間とともに戻るが、基板の上の応力のかたよりは、センサーの出力を恒久的にずらすことがあるとしています。原因として、ねじ・穴・支柱、近くに置いたシールド、近くやセンサーの裏側のアンダーフィル、CPU を覆うエポキシ樹脂、センサーに触れるヒートシンクを挙げ、電池や電源 IC などの熱源からセンサーを離すことを勧めています。

基板の上でMEMSセンサーをねじの間に置き、熱源や張り出し部を避ける置き方
MEMS センサーの基板の上の置き場所
出典:STMicroelectronics の技術資料 TN1383の記載をもとに AI(Claude)で作成(基板の形は模式)

温度センサは、小さく薄いほど速く追従する

急に温かい所へ移したとき、極薄の温度センサはすぐに温まり、厚い素子は中まで温まるのに時間がかかるイメージ
薄い温度センサ:熱時定数が小さく、速く追従するイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

村田製作所の技術用語の解説では、熱時定数は、サーミスタを急に別の温度の所へ移したとき、温度差の63.2%に達するまでの時間です。SEMITEC の資料では、一般的な表面実装サーミスタ(1005サイズ)の熱時定数が2.2秒、基板厚0.15mm の薄膜サーミスタが1.1秒、基板厚0.07mm の開発品が0.2秒です。

表面実装サーミスタ2.2秒、薄膜サーミスタ1.1秒、開発品0.2秒の熱時定数の比較と63.2%の定義
サーミスタの熱時定数の比較と、熱時定数の定義
出典:SEMITEC「極薄ガラス基板薄膜サーミスタセンサ」の値と、村田製作所「サーミスタ 技術用語」の定義をもとに AI(Claude)で作成(右の曲線の形は模式)

一方、サーミスタは電流を流して抵抗を測るため、自分の熱で温度が上がります(編集部の解説)。村田製作所は、最大動作電流を、素子単体が0.1℃自己発熱する電流としており、これを超えると自己発熱が増えて検知の誤差が大きくなるとしています。

原因の切り分け方

次は編集部の目安です。まず「センサー単体の大きさの問題か」「回路・配線の問題か」「組み込んだあとの問題か」を分けます。入らないなら、素子・回路・配線のどれが場所を取っているかを書き出します。配線できないなら、無線にするか、フレキ基板で沿わせるかを比べます。値が乱れるなら、センサー単体で測ったときにも乱れるかを確かめます。単体では正しいのに組み込むとずれるなら、置き場所・固定・熱源を疑います。

出典:MEMSとは?|メムス・コア、加速度センサーの高感度化・低ノイズ化に成功|東京工業大学、センサ信号を手軽にデジタル化!(プレスリリース)|共和電業(PR TIMES)、TN1383 PCB design guidelines for MEMS sensors|STMicroelectronics、サーミスタ 技術用語|村田製作所、極薄ガラス基板薄膜サーミスタセンサ|SEMITEC

解決技術の詳細

対策は、センサーそのものを小さくする(MEMS・薄型の素子)、回路を近くにまとめる(デジタル化)、配線をなくす(無線化)、組み込み方を変える(実装とパッケージ)の4つの方向に分けて考えます。小さくしたことで起きるずれは、実装と置き場所で抑えます(編集部の解説)。

MEMS センサー(加速度・圧力・ジャイロなど)

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)は、主要な部分を半導体の集積回路の製造技術でつくり、立体の形や可動の構造をつくる工程も含むデバイスです。メムス・コアは、MEMS の大きさは一般に全長が mm オーダー以下、部品は μm オーダーが普通だとしています。

EE Times Japan の解説では、商品化されている MEMS の3軸加速度センサーは2mm×2mm×1mm 前後と小さく、自動車の衝突検知、産業用の異常振動検知、スマートフォンの動き検出などに使われています。STMicroelectronics の加速度センサー LIS2DU12 は、パッケージが2.0×2.0×0.74mm で、出力データレート100Hz のときの消費電流は3.5μA です。

変位センサ、MEMS加速度センサー、触覚センサ、チップサーミスタの大きさを同じ縮尺で並べた図
小さなセンサーの大きさを同じ縮尺で並べた図
出典:日本システム開発・EE Times Japan・EE Times Japan(LIS2DU12)・SEMITEC・村田製作所の公表値をもとに AI(Claude)で作成(形は模式)

市販の MEMS に合う物がないときは、MEMS の受託会社に設計・試作を頼む方法があります。メムス・コアは、加速度センサー、角速度センサー、触覚センサー、圧力センサーなどの開発を受注してきたとしています。

超小型・薄型のセンサー素子(チップ・薄膜・フレキシブル)

温度センサのチップサーミスタは、村田製作所が0402サイズ(0.4mm×0.2mm)の品をそろえています。SEMITEC は、ガラス基板の上にサーミスタ膜をつくり、基板の厚さを0.03〜0.15mmにした薄膜サーミスタを開発し、今まで使えなかった狭い所への挿入もできるとしています。

圧力を面で測る薄いセンサーも研究されています。東京大学の研究グループは、ナノファイバーを使った厚さ約8μmの圧力センサーを開発し、曲率80μm まで折り曲げても測定精度が変わらず、144点の圧力を同時に測れるとしています。

センサー素子の厚さの比較。0.5mmから約8μmまで
センサー素子の厚さの比較
出典:SEMITEC・東京大学の公表値をもとに AI(Claude)で作成

センサーの近くでデジタル化(センサー IC・デジタル出力)

センサーのすぐそばで増幅・デジタル化すると、別のアンプの基板が要らなくなります(編集部の解説)。日本システム開発の変位センサは、基板の上の平面コイルと専用 IC で構成し、デジタル出力のためアンプが要らないとしています。MEMS の加速度センサーや気圧センサーにも、I2C・SPI などのデジタル出力の品が多くあります(編集部の解説)。

ただし、デジタルのバスにも配線の制約があります。Texas Instruments のアプリケーションノートは、I2C の規格ではバスの容量性負荷が最大400pFに制限され、これを超えると信号の立ち上がりが遅れてタイミングの要件を満たさなくなることがあるとしています。センサーをいくつもつなぐときや、配線が長いときは、バッファで区切る方法があります。

アナログのまま送るとノイズを拾う配線と、センサーの近くでデジタル化してI2Cのバスで送る構成
アナログのまま送る場合と、センサーの近くでデジタル化する場合
出典:共和電業のプレスリリース、Texas Instruments SLVA787をもとに AI(Claude)で作成

無線化と省電力

動く所や奥まった所では、センサー・電池・無線をひとつにまとめて、ケーブルをなくす方法があります(編集部の解説)。マイクロストーンの無線モーションレコーダーは、45×45×19mm・約45g に、センサーと Bluetooth の無線とリチウムイオン電池を収めています。

無線のセンサーでは、データを送る間隔が電池の寿命を大きく左右します。パナソニック インダストリーの無線センサ WR10(2018年9月に受注終了した製品)の仕様では、標準の電池(CR123A)で、送信間隔10秒なら約1か月、10分なら約3年、60分なら約7年を目安としています(25℃、良好な通信状態)。測りたい変化の速さに合わせて、送る間隔と電池の大きさを決めます。配線そのものをなくす給電の方法は「配線をなくしたい」の課題ページで扱っています。

無線センサの送信間隔と電池寿命の関係。10秒で約1か月、10分で約3年、60分で約7年
無線センサの送信間隔と電池寿命の目安
出典:パナソニック インダストリー「無線センサ WR10」(2018年9月に受注終了)の表をもとに AI(Claude)で作成

実装とパッケージ(置き場所・低温実装・フレキ基板・封止)

ひずみと熱の少ない所に置く

STMicroelectronics の TN1383 は、慣性センサーを基板を固定するねじの間に置き、応力が均等にかかるようにすることを勧めています。固定されていない張り出した部分は振動しやすく、誤った値の原因になるので避けるとしています。熱源から離すこと、組み立てた後の基板をゆっくり冷ますことも挙げています。

低い温度で実装し、フレキ基板に載せる

コネクテックジャパンは、長さ40mm の MEMS センサチップをフレキ基板に実装する事例で、はんだのリフロー(260℃)の後に冷やすと基板が大きく縮み、接合部が反って外れたが、170℃の低温のフリップチップ実装で実装できたとしています。ワイヤーを使わないため、フレキ基板を折り曲げて筐体に組み込んでも断線しないとしています。

ワイヤーボンド、はんだのフリップチップ、低温のフリップチップでMEMSをフレキ基板に載せる方法の比較
MEMS をフレキ基板に載せる3つの方法
出典:コネクテックジャパン「MEMSセンサのCOF基板実装」の記載をもとに AI(Claude)で作成(形と反りの大きさは模式)

チップの大きさのまま封止する

メムス・コアは、チップに切り分ける前に、貫通配線を作ったガラスをシリコンのウエハに貼り合わせて封止する、ウエハレベルパッケージングを行っています。チップの大きさのまま一括で組み立てるため、パッケージの小型化・低価格化にも有効としています。

出典:MEMSとは?|メムス・コア、代表的なMEMSセンサーとその応用(前編)|EE Times Japan、ST、I3C搭載の加速度センサーなど(2022年)|EE Times Japan、開発事例|メムス・コア、高温域で高精度な温度測定を実現するNTCサーミスタのラインアップ追加(2024年)|村田製作所、極薄ガラス基板薄膜サーミスタセンサ|SEMITEC、透明なフレキシブル圧力センサー|東京大学、超小型変位センサ|日本システム開発、I2C Buffers(SLVA787)|Texas Instruments、8チャンネル小型無線モーションレコーダー MVP-RF8-JC|マイクロストーン、無線センサ WR10|パナソニック インダストリー、TN1383 PCB design guidelines for MEMS sensors|STMicroelectronics、MEMSセンサのCOF基板実装|コネクテックジャパン、ウエハレベルパッケージング|メムス・コア

センサーを小さく組み込む技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。MEMS を作りたいのか、薄い素子がほしいのか、アンプのいらないセンサーを組み込みたいのか、無線にしたいのか、フレキ基板に実装したいのかによって、相談先が変わります。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
メムス・コアMEMS の受託開発自社製品を持たない MEMS の受託専門。設計から試作・量産まで請け負い、チップのまま封止する技術も持つ。A 入れる場所が狭い・薄い。今のセンサーが入らない
E 合う形の標準品がない。自社の製品に合わせて作りたい
SEMITECセンサー素子メーカー厚さ0.07mm 級のガラス基板の薄膜サーミスタと、直径1.8mm の触覚センサで、狭い所に入る素子をつくる。A 入れる場所が狭い・薄い。今のセンサーが入らない
D 組み込んだら値がずれる・遅れる(基板のひずみ・熱)
日本システム開発センサー・専用 IC メーカー基板の平面コイルと専用 IC だけで、ナノメートル単位の変位をデジタルで出す小さなセンサをつくる。A 入れる場所が狭い・薄い。今のセンサーが入らない
C 小さくしたら信号が弱く、ノイズで値が乱れる
E 合う形の標準品がない。自社の製品に合わせて作りたい
マイクロストーンモーションセンサーメーカーセンサー・電池・無線を手のひらに収め、ケーブルを付けられない動く物の動きや振動を測る。B 動く所・回る所・奥まった所で、配線を通せない
コネクテックジャパン実装の受託開発170℃の低温・低荷重でチップを接合し、MEMS をフレキ基板にじかに載せて小さくする。B 動く所・回る所・奥まった所で、配線を通せない
D 組み込んだら値がずれる・遅れる(基板のひずみ・熱)
E 合う形の標準品がない。自社の製品に合わせて作りたい
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

株式会社メムス・コア|自社製品を持たない MEMS の受託専門。設計から試作・量産まで請け負い、チップのまま封止する技術も持つ

メムス・コアとは

メムス・コアは、宮城県仙台市泉区に本社と工場を置く会社です(2001年12月創立)。事業は、MEMS の設計・開発・試作と製造、MEMS の製造技術の開発、MEMS の開発受託サービスです。

同社は「自社製品を一切出さないからこそ出来る」として、単一の工程の加工から、デバイスの設計・シミュレーション・原理試作・プロトデバイスの試作・量産までを請け負うとしています。外部のファブや大学とも連携しています。

メムス・コアの得意技術

技術内容
MEMS の受託開発・試作半導体の製造技術ではできない MEMS 特有の工程(マイクロマシニング)を持ち、設計から量産まで対応する。主な受注案件に、加速度センサー、角速度センサー(ジャイロ、静電容量方式)、触覚センサー(ピエゾ方式)、圧力センサー(ダイヤフラム構造)、振動発電素子などがある
ウエハレベルパッケージングチップに切り分ける前に、貫通配線を作ったガラスをシリコンのウエハに貼り合わせて封止する。ダイシングのダメージから MEMS を守り、チップの大きさのまま一括で組み立てるため、パッケージの小型化・低価格化にも有効としている

メムス・コアが解決できる課題

  • 市販品にない形・大きさ・測る量の MEMS センサーを試作したい
  • 社内に MEMS の製造設備がなく、一部の工程だけでも外に頼みたい
  • MEMS のチップを小さく封止したい

公開されている実績

  • 主な開発受注案件として、医療(神経電極・血糖値センサー・超音波プローブ)、資源探査(加速度センサー)、ロボット(触覚センサー)、環境発電(振動発電素子)などの分野を挙げている
ウエハレベルパッケージングで、ガラスを貼り合わせて一括で封止し、チップの大きさに切り分ける流れ
ウエハレベルパッケージングの流れ
出典:メムス・コア「ウエハレベルパッケージング」の記載をもとに AI(Claude)で作成

出典:会社概要|メムス・コア、開発支援・受託|メムス・コア、開発事例|メムス・コア、ウエハレベルパッケージング|メムス・コア

SEMITEC株式会社|厚さ0.07mm 級のガラス基板の薄膜サーミスタと、直径1.8mm の触覚センサで、狭い所に入る素子をつくる

SEMITEC(セミテック、旧 石塚電子)は、東京都墨田区に本社を置く会社です(1958年設立、資本金7億7,302万円、従業員は単体234名。2026年3月31日時点)。サーミスタなどの温度センサ、光センサ、風速センサなどをつくっています。

SEMITECの得意技術

技術内容
極薄ガラス基板の薄膜サーミスタ「FT-R」(開発品)ガラス基板の上にサーミスタ膜をつくり、基板の厚さを0.03〜0.15mm にした(従来の薄膜サーミスタの1/5)。今まで使えなかった狭い所への挿入も可能としている。基板厚0.07mm の品の熱時定数は0.2秒で、一般的な表面実装サーミスタ(1005サイズ)の2.2秒より速い。使用温度は -50〜250℃
触覚センサMEMS 技術でつくるピエゾ抵抗式。3軸品は直径1.8mm×厚さ0.2mm、6軸品は直径3.1mm×厚さ0.2mm(いずれもチップ単体)。0〜100gf の範囲で1mV/gf/V を出力する。用途例は、カテーテルなどの操作を助ける医療機器、産業ロボットの触覚センサ

FT-R は開発品で、同社のページでは「最薄0.03mm まで対応予定」としています。

SEMITECが解決できる課題

  • 薄い筐体や部品のすき間の温度を測りたい
  • 温度の変化に速く追従する温度センサがほしい
  • ロボットの指先や医療機器の先端など、小さな空間で接触の力を測りたい
一般の面実装サーミスタ0.5mm、従来の薄膜サーミスタ0.15mm、開発品FT-R 0.07mmの厚さの比較写真
一般の面実装サーミスタ(0.5mm)、従来の薄膜サーミスタ(0.15mm)、開発品 FT-R(0.07mm)の厚さの比較(出典:極薄ガラス基板薄膜サーミスタセンサ|SEMITEC)

出典:会社概要|SEMITEC、沿革|SEMITEC、極薄ガラス基板薄膜サーミスタセンサ|SEMITEC、触覚センサ|SEMITEC

日本システム開発株式会社|基板の平面コイルと専用 IC だけで、ナノメートル単位の変位をデジタルで出す小さなセンサ

日本システム開発とは

日本システム開発(JSD)は、徳島県徳島市に本社を置く会社です(1974年設立、資本金9,800万円、従業員60名)。コンピュータのシステム開発から始まり、1990年代後半から電子機器の技術に取り組み、変位センサと専用の半導体を設計・製造しています。電子機器の開発・製造の受託(OEM/ODM)も行っています。

日本システム開発の得意技術

技術内容
超小型変位センサプリント基板の上の平面コイルと専用 IC で構成し、外観は電子回路の基板そのもの。小型・薄型・省電力で、デジタル出力のためアンプが要らず、機械や装置への組み込みに向くとしている。5ナノメートル以下の変位を非接触で検出するとしている
DS-H3BP1外形11.0×10.0mm(外形図の寸法。側面図の寸法は0.5mm)。測定ポイントは直径3mm のコイル、電源3.3V、消費電流は最大15mA。金属との距離1.5mm で、計測精度は0.6μm/cnt(改良前は1.7μm/cnt)
カスタム製作さまざまな形状のカスタム製作に対応するとしている

同社は、個体差があるため、複数個を使うときは出力値の補正が必要になる場合があるとしています。

日本システム開発が解決できる課題

  • 機械の中の狭い所に、アンプなしで距離・変位のセンサを組み込みたい
  • センサーとアンプを別々に置く場所がない
  • 装置に合わせた形の変位センサを作りたい

公開されている実績

  • 距離測定用 IC の出荷数が延べ150万個に達したとしている
  • 京都大学岡山天文台の3.8m 望遠鏡に同社の変位センサが採用された(2019年のお知らせ)
変位センサDS-H3BP1の外形図。11.0×10.0mm、厚さ0.5mm、コイル直径3mm
DS-H3BP1 の外形図(左)と端子・外観(右)(出典:DS-H3BP1|日本システム開発)
DS-H3BP1の距離と発振周波数、距離と分解能の特性グラフ
DS-H3BP1 の距離と発振周波数(左)、距離と分解能(右)の特性(出典:DS-H3BP1|日本システム開発)

出典:会社概要|日本システム開発、超小型変位センサ(トップページ)|日本システム開発、DS-H3BP1|日本システム開発

マイクロストーン株式会社|センサー・電池・無線を手のひらに収め、ケーブルを付けられない動く物の動きを測る

マイクロストーンとは

マイクロストーンは、長野県佐久市にある会社です(1999年創立、資本金3,900万円(2019年1月時点)、社員9名(2026年2月21日時点、パート社員を除く))。人の動きや機械の振動を測るモーションセンサーの技術を使った製品を開発・製造・販売しています。

マイクロストーンの得意技術

技術内容
小型無線モーションレコーダー MVP-RF8-JC外形45×45×19mm、重さ約45g。Bluetooth 5.0 で通信距離は約30m(参考値)。リチウムイオン二次電池で、連続動作時間は約24時間(内蔵の3軸センサー、サンプリング周期1ms、25℃、満充電からの参考値)
用途に合わせた無線センサーの開発ゴルフ用具メーカーとの共同開発で、用具に付けても違和感なく振れる超小型・軽量の6軸モーションセンサー(およそ直径26×130mm、約30g、サンプリング周期1ms)をつくった

ゴルフの事例では、有線だとスイングの際にケーブルに引っかかって切断するおそれがあることから、無線方式が必須だったとしています。

マイクロストーンが解決できる課題

  • 動く物・回る物に付けるので、ケーブルを引き回せない
  • 試験のたびに配線を付け外しする手間を減らしたい
  • 製品や道具に付けても邪魔にならない大きさで、動きや振動を測りたい

公開されている実績

  • 納入実績として、自動車・電機・機械・半導体製造装置などのメーカーを挙げている
  • ゴルフ用具のフィッティングスタジオで、共同開発した6軸モーションセンサーが採用された
手のひらに載る小型無線モーションレコーダーMVP-RF8-JC
8チャンネル小型無線モーションレコーダー MVP-RF8-JC(出典:MVP-RF8-JC|マイクロストーン)

出典:会社概要|マイクロストーン、8チャンネル小型無線モーションレコーダー MVP-RF8-JC|マイクロストーン、共同開発の事例(ゴルフ用具)|マイクロストーン

コネクテックジャパン株式会社|170℃の低温・低荷重でチップを接合し、MEMS をフレキ基板にじかに載せて小さくする

コネクテックジャパンとは

コネクテックジャパンは、新潟県妙高市にある会社です(2009年11月設立、資本金1億円)。半導体・電子デバイスの実装の開発を受託しており、年間400件以上の実装開発の受託実績があるとしています。

コネクテックジャパンの得意技術

技術内容
低温・低荷重のフリップチップ実装「MONSTER PAC」はんだのリフロー(260℃)ではなく、170℃などの低い温度でチップを基板に接合する。ワイヤーを使わないので、フレキ基板を折り曲げても断線しにくい
フリップチップボンダ「MONSTER DTF」接合温度80〜170℃、接合荷重20N(汎用の装置は260℃・490N)。装置は50kg・0.7×0.8×0.8m と小さい
フレキ基板の設計と狭ピッチ実装フレキ基板の設計・作成から、40μm ピッチの NCP・ACP 実装まで一貫して行う

コネクテックジャパンが解決できる課題

  • MEMS センサーをフレキ基板に載せて、筐体の中で折り曲げて組み込みたい
  • はんだ付けの後に基板が縮み、フレキ基板の上の接合部が反る・外れる
  • 高価な MEMS チップの面積を減らしたい

公開されている実績

  • 長さ40mm の MEMS センサチップを、センサ部が開口したフレキ基板にフリップチップ実装した。ワイヤーボンドでは折り曲げや押し当てで断線し、はんだ実装では基板の収縮で接合が外れたが、170℃の実装で解決した
  • MEMS チップの上に載せていたドライバ IC をフレキ基板の側へ移し、40μm ピッチで接合して、MEMS チップの面積を小さくした
MONSTER PAC工法で、MEMSセンサをフレキ基板に170℃で実装し、折り曲げや押し当てで断線しない構造
MONSTER PAC 工法で MEMS センサをフレキ基板に170℃で実装した事例(出典:MEMSセンサのCOF基板実装|コネクテックジャパン)
ドライバICをフレキ基板側に移し、40μmピッチでMEMSチップと接合して面積を小さくした事例
ドライバ IC をフレキ基板の側へ移し、40μm ピッチで接合して MEMS チップを小さくした事例(出典:狭ピッチMEMS実装|コネクテックジャパン)

出典:会社概要|コネクテックジャパン、コネクテックジャパン(トップページ)、MEMSセンサのCOF基板実装|コネクテックジャパン、狭ピッチMEMS実装|コネクテックジャパン、MONSTER DTF|コネクテックジャパン

選ぶ前に確かめる条件

メーカーや受託会社に相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 測りたい量(加速度・圧力・温度・距離・力など)と、範囲・精度・応答の速さ
  • センサーに使える場所の大きさ(縦・横・厚さ)と、回路・配線を置ける場所
  • 置く場所の環境(温度・振動・水や油・動くか回るか)
  • 信号の送り方(アナログ・デジタル・無線)と、配線の長さ
  • 電源(電池か給電か)と、電池の交換の間隔の目安
  • 生産の数(試作の数個か、量産か)と、開発の期間

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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年9月30日

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