機械や電子部品は、使い始めてすぐ壊れるものもあれば、何年も問題なく動いて、古くなってから壊れるものもあります。「いつごろ、どのくらいの割合で壊れるか」を表すのが故障率で、その変わり方を描いたグラフがバスタブ曲線です。このページでは、故障率の意味と単位、バスタブ曲線の3つの期間、MTBF と信頼度、寿命のばらつきを表すワイブル分布とその読み方(ワイブルプロット)、軸受の寿命 L10 との関係、ものづくりでの使い方を、できるだけやさしく説明します。
ひとことで言うと
バスタブ曲線とは
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、機械の故障率と時間の関係を表す曲線を、形が浴槽(バスタブ)に似ていることからバスタブ曲線と呼び、使い始めの「初期故障期」、ふつうに使う「偶発故障期」、古くなってからの「摩耗故障期」の3つに分けています。
同じページは、使い始めの直後は製造上の欠陥で故障が起きることがあるが時間とともに取り除かれ(初期故障期。一般に約1年間)、そのあとも軽い欠陥が残るので偶発的に故障が起き(偶発故障期)、一定の期間がたつと部品の劣化が始まって故障率が時間とともに増える(摩耗故障期)としています。ワイブル分布は、形状パラメータ m を変えると、この3つのどの壊れ方も表せる分布で、m が1より小さいか、1か、1より大きいかで、どの期間の壊れ方かがわかります(パナソニック インダストリーの解説)。

出典:職場のあんぜんサイト 労働安全衛生キーワード(厚生労働省)、リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、ウィキペディア日本語版をもとに AI(Claude)で作成
パナソニック インダストリーのリレーの信頼性の解説は、初期故障を設計のミスや工程の欠陥が表に出たもの、偶発故障を故障率がほぼ一定でランダムに起きるもの、摩耗故障を疲労などで故障率が上がるものとしています。日本語版ウィキペディアは、それぞれの原因を、設計や製造の欠陥、突発的な出来事、摩耗・損耗としています。どの期間の故障かがわかると、打つ手が決まるので、信頼性の考え方の入り口になる図です(編集部の解説)。
出典:バスタブ曲線(故障率曲線)|職場のあんぜんサイト 労働安全衛生キーワード(厚生労働省)、信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、バスタブ曲線|ウィキペディア日本語版
故障率:まだ動いているものが、1時間あたりに壊れる割合

出典:リレー基本情報(パナソニック インダストリー)をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
パナソニック インダストリーは、故障率 λ(ラムダ)を、ある時点まで動いてきたものが、続く単位期間のうちに故障を起こす割合と定義しています。単位には、%/時間、%/回数、FIT(フィット。10⁻⁹/時間)を使うとしています。電子部品のように故障率がとても小さいものは、10億時間あたりの故障の数を表す FIT で書くと、扱いやすい数字になります(編集部の解説)。
たとえば、100台のうち、まだ動いている96台を1,000時間使って2台が壊れたとします。故障率は 2 ÷(96台 × 1,000時間)≒ 2.1 × 10⁻⁵/時間、つまり約0.0021%/時間、約20,800 FIT です(説明のための例。編集部の計算)。割るのは最初の100台ではなく「まだ動いている台数」であることが、故障率の大事なところです。
出典:信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)
3つの期間と、その原因

出典:ウィキペディア日本語版、リレー基本情報(パナソニック インダストリー)をもとに AI(Claude)で作成
初期故障期:使い始めに壊れる
パナソニック インダストリーは、初期故障期を、設計のミスや工程の欠陥が表に出る期間とし、デバッグ(不具合を見つけて直すこと)が要るとしています。作ったときの不良を持つものが先に壊れて抜けていくので、時間がたつほど故障率が下がるのがこの期間です(編集部の解説)。厚生労働省のページは、初期故障期は一般に約1年間とされているとしています。
偶発故障期:ふつうに使っている間
パナソニック インダストリーは、偶発故障期を、故障率が安定してほぼ一定で、故障がランダムに起きる期間とし、リレーでは、使うのはこの期間だけで、その長さを寿命と呼ぶとしています。厚生労働省のページは、初期の故障を取り除いたあとも軽い欠陥が残るので、偶発的に故障が起きるとしています。いつ壊れるかが前の使い方によらないので、「古くなったから壊れやすい」とは言えない期間です(編集部の解説)。
摩耗故障期:古くなって壊れる
厚生労働省のページは、摩耗故障期を、使った時間とともに故障率が増え、部品の劣化が進む期間としています。軸受の疲れ、ゴムのへたり、接点の摩耗などがこれにあたります(編集部の解説)。パナソニック インダストリーは、摩耗故障は予防的な交換で対応できるとしています。
なお、どの製品もこの形になるわけではありません。厚生労働省のページは、バスタブ曲線が当てはまるのは半導体デバイスや電子機器・電気用品が多く、多くの機械類や電動機は初期故障と偶発故障が少なく、摩耗故障期に指数的に上がることがわかってきたとし、ジェット旅客機ではバスタブ曲線の形を示すのは10%未満と報告されているそうだと紹介しています。形は製品によって違うので、自分の製品のデータで確かめます(編集部の解説)。
出典:信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、バスタブ曲線(故障率曲線)|職場のあんぜんサイト 労働安全衛生キーワード(厚生労働省)、バスタブ曲線|ウィキペディア日本語版
MTBF・MTTF と信頼度

出典:ウィキペディア日本語版、リレー基本情報(パナソニック インダストリー)をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
パナソニック インダストリーは、MTBF(平均故障間隔)を、修理しながら使う機器の故障と故障の間の平均の時間、MTTF(平均故障時間)を、修理しないものが故障するまでの平均の時間としています。日本語版ウィキペディア「平均故障間隔」は、故障率 = 1 ÷ MTBFの関係を示しています(故障率が一定の場合。編集部の補足)。
故障率が一定のときの信頼度
R(t) = e^(−λt) = e^(−t ÷ MTBF)
R(t):時間 t まで壊れずに動く確率(信頼度) λ:故障率(一定) e:自然対数の底(約2.718)
故障率が一定なら、信頼度は上の式で表せます(m=1 のワイブル分布=指数分布。英語版ウィキペディア)。t = MTBF を入れると R = e⁻¹ ≒ 0.368 なので、MTBF と同じ時間だけ使うと、壊れずに残るのは約37%です(編集部の計算)。「MTBF 5万時間」は「5万時間はほとんど壊れない」という意味ではありません(編集部の解説)。
出典:信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、平均故障間隔|ウィキペディア日本語版、Weibull distribution|Wikipedia(英語版)
ワイブル分布:m を変えると、3つの壊れ方を表せる

出典:ウィキペディア日本語版、リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、Wikipedia(英語版)をもとに AI(Claude)で作成
ワイブル分布の式
壊れずに残る割合(信頼度) R(t) = e^(−(t ÷ η)^m)
壊れた割合(不信頼度) F(t) = 1 − R(t)
m:形状パラメータ(ワイブル係数) η(イータ):尺度パラメータ(時間の目安)
日本語版ウィキペディア「ワイブル分布」とパナソニック インダストリーは、m が1より小さいと故障率が下がる初期故障型、m = 1 なら一定の偶発故障型、1より大きいと上がる摩耗故障型としています。英語版ウィキペディアは、m = 1 のときは指数分布になるとしています。
英語版ウィキペディアは、時間が尺度パラメータ η と等しいとき、m の値によらず F = 1 − e⁻¹ ≒ 0.632、つまり63.2%が壊れているとしています。η は「全体の63.2%が壊れるまでの時間」と読めます。
ワイブルが広めた分布
名前はスウェーデンの技術者ワロッディ・ワイブル(1887〜1979年)からとられています(アラバマ大学ハンツビル校の K. Siegrist のサイトにある略伝)。ワイブルは1951年に米国機械学会の応用力学の論文誌に「広く使える統計的な分布関数」という論文を書き、略伝は、故障率が下がる・一定・上がるのどれも表せるため、信頼性の分野で広く使われるようになったとしています。英語版ウィキペディアは、ワイブルがこの分布を1939年に詳しく述べ、最初に見つけたのはフレシェだとしています。
出典:ワイブル分布|ウィキペディア日本語版、信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、Weibull distribution|Wikipedia(英語版)、W. Weibull, A Statistical Distribution Function of Wide Applicability(1951年。マギル大学の講義資料に掲載の PDF)、Weibull, Waloddi (1887–1979)|Random(アラバマ大学ハンツビル校 K. Siegrist)
計算してみる:いつ何%壊れるか

出典:Wikipedia(英語版)をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
η = 10,000時間、m = 2(摩耗故障型)の部品で考えます(説明のための例で、実際の部品の値ではありません)。壊れた割合は F(t) = 1 − e^(−(t ÷ 10,000)²) です。
| 使った時間 | 壊れた割合 F | 読み方(編集部) |
|---|---|---|
| 1,000時間 | 約1.0% | まだほとんど壊れない |
| 5,000時間 | 約22.1% | 5台に1台ほどが壊れている |
| 10,000時間(=η) | 約63.2% | m によらず63.2% |
| 20,000時間 | 約98.2% | ほぼすべて壊れている |
全体の10%が壊れる時間(B10寿命)は、F = 0.1 とおいて t = η ×(−ln 0.9)^(1 ÷ m)= 10,000 × 0.1054^0.5 ≒ 3,246時間です。平均の寿命(MTTF)は η × Γ(1 + 1 ÷ m)(Γ はガンマ関数)で、約8,862時間になります(編集部の計算)。平均の約8,900時間よりずっと前に、1割が壊れることがわかります。保証期間や交換の時期は、平均ではなく「何%が壊れる時間か」で決めることが多いのはこのためです(編集部の解説)。
出典:Weibull distribution|Wikipedia(英語版)
ワイブルプロット:データから m と η を読む

出典:ウィキペディア日本語版、Wikipedia(英語版)、日本精工(NSK)をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
日本語版ウィキペディアは、ワイブル分布の式を変形して直線で近似し、目で見てわかるようにしたものをワイブルプロットとしています。英語版ウィキペディアは、データがワイブル分布に従えば、ワイブルプロットの点は直線に並ぶとしています。縦軸と横軸に特別な目盛りを使った方眼紙を、ワイブル確率紙と呼びます(編集部の補足)。
手順は、①壊れた時間を短い順に並べ、i 番目の点の壊れた割合を(i − 0.3)÷(n + 0.4)(n は試験した数)とおく、②点を打つ、③点に合う直線を引く、です(壊れた割合の置き方はメジアンランクの近似式。編集部の補足)。上の図の架空のデータ(8個)では、傾きから m ≒ 2.1、63.2%の時間から η ≒ 972時間と読めます(編集部の計算)。m が1より大きいので、摩耗故障型と考えられます。
点が直線に並ばず折れ曲がるときは、壊れ方(故障モード)が2種類以上まじっている可能性があります(編集部の解説)。加速試験で、温度を変えた試験の結果を同じワイブルプロットに描き、線の傾きがそろうかで壊れ方が同じかを確かめる使い方もあります(課題「加速試験で寿命を見積もりたい」)。
出典:ワイブル分布|ウィキペディア日本語版、Weibull distribution|Wikipedia(英語版)
軸受の寿命 L10 とワイブル分布

出典:日本精工(NSK)ベアリングの基礎知識、日本精工(NSK)、NACHI TECHNICAL REPORT Vol.43 D1(不二越)をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
日本精工(NSK)のベアリングの基礎知識は、同じ軸受を同じ条件で回したときの寿命には、材料の疲れそのものが持つばらつきのため相当大きなばらつきがあるとし、同じ軸受を同じ条件で回して、その90%がフレーキング(はく離)を起こさずに回れる総回転数を基本定格寿命 L10 としています。
基本定格寿命の式
玉軸受:L10 =(C ÷ P)³ ころ軸受:L10 =(C ÷ P)^(10/3) [10⁶回転]
C:基本動定格荷重(軸受の大きさと種類で決まる) P:軸受にかかる荷重(動等価荷重)
NSK は、この式から、荷重を半分にすると寿命は玉軸受で8倍、ころ軸受で約10倍になるとしています。L10 の「10」が、まさに「10%が壊れる時間(B10)」です(編集部の解説)。
不二越(ナチ)の技術報告は、軸受の寿命のばらつきを表すワイブルの傾き(軸受の文献では e と書くことが多い)を、玉軸受で 10/9、ころ軸受で 9/8とし、傾きが1に近いと、半分が壊れる時間 L50 は L10 の5倍近くになるとしています。また、潤滑油に異物がまじるなど潤滑が悪くなると、傾きが大きくなるとしています。m = 10/9 で計算すると L50 は L10 の約5.4倍です(編集部の計算)。軸受の寿命の延ばし方は課題「軸受の寿命を延ばしたい」、ボールねじは課題「ボールねじの寿命・剛性を見極めたい」を参照してください。
出典:4. 基本動定格荷重と疲れ寿命|日本精工(NSK)ベアリングの基礎知識、基本動定格荷重と疲れ寿命|日本精工(NSK)、軸受寿命の信頼性|NACHI TECHNICAL REPORT Vol.43 D1(不二越)
ものづくりでどう効くか

出典:リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、職場のあんぜんサイト 労働安全衛生キーワード(厚生労働省)をもとに AI(Claude)で作成
初期故障を減らす:パナソニック インダストリーは、初期故障の期間にはデバッグが要るとしています。電子部品や装置では、出荷の前に一定の時間動かしたり、温度や電圧をかけたりして、弱いものを先に見つけて取り除く方法(スクリーニング、バーンイン、エージング)がよく使われます(編集部の解説)。根本は、設計と工程の不良を減らすことです(課題「不良の再発を防ぎたい」、「設計の段階で故障を洗い出したい(FMEA・FTA)」)。
偶発故障に備える:故障率が一定の期間は、いつ壊れるかを予想できません。部品を定格より軽い条件で使う(ディレーティング)、壊れても止まらないよう二重にする(冗長化)、故障率から予備品の数を見積もる、といった備え方をします(編集部の解説)。
摩耗故障の前に替える:厚生労働省のページは、予防保全(一定の時間ごとの定期保全や、運転時間ごとの経時保全)を適切に行うことが大事で、バスタブ曲線などの故障率曲線は予防保全をいつ行うかを決めるのにとても有効だとしています。m が1より大きい部品は、壊れる前に時間や回数を決めて取り替えると効果があります。m = 1 の部品を早めに取り替えても、故障率は下がりません(編集部の解説)。振動や温度を見て取り替える時期を決める方法もあります(課題「機械の異音の原因を突き止めたい」)。
寿命を早く確かめる:加速試験
寿命が何年もある部品を、そのまま試験するのは大変です。そこで、温度などを厳しくして早く壊し、ワイブルプロットとアレニウスの式などで、ふだんの条件の寿命に換算します(課題「加速試験で寿命を見積もりたい」)。JFEテクノリサーチは、ゴム・樹脂の寿命の予測に、アレニウスの式を使った加速劣化試験(ふだんの使用温度20〜30℃に対して60〜100℃で数日〜数週間)を案内しています。
「温度が10℃上がると寿命は半分」という目安がよく言われます。電子機器の冷却の専門誌 Electronics Cooling は、これはアレニウスの式から来た経験則で、特定の壊れ方と条件でしか成り立たず、熱サイクルなど決まった温度以外の要因も寿命に効くと注意しています。
出典:信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、バスタブ曲線(故障率曲線)|職場のあんぜんサイト 労働安全衛生キーワード(厚生労働省)、ゴム・樹脂素材の耐久寿命予測|JFEテクノリサーチ、Does a 10°C Increase in Temperature Really Reduce the Life of Electronics by Half?|Electronics Cooling
似ている言葉との違い

出典:リレー基本情報(パナソニック インダストリー)、ウィキペディア日本語版、日本精工(NSK)ベアリングの基礎知識をもとに AI(Claude)で作成
故障率は「今まだ動いているものが、これから単位時間に壊れる割合」、信頼度は「ある時間まで壊れずに動く確率」、MTBF・MTTFは「平均の時間」、B10 寿命は「1割が壊れるまでの時間」です。平均(MTBF・MTTF)と「何%が壊れる時間」(B10)は別のものなので、カタログの数字を比べるときは、どれで書かれているかを必ず見ます。MTTR(平均修復時間)は、壊れてから直すまでの平均の時間です(編集部の解説)。
バスタブ曲線・ワイブル分布が出てくるページ
出典
- バスタブ曲線(故障率曲線)|職場のあんぜんサイト 労働安全衛生キーワード(厚生労働省)
- 信頼性について|リレー基本情報(パナソニック インダストリー)
- バスタブ曲線|ウィキペディア日本語版
- 平均故障間隔|ウィキペディア日本語版
- Weibull distribution|Wikipedia(英語版)
- ワイブル分布|ウィキペディア日本語版
- W. Weibull, A Statistical Distribution Function of Wide Applicability(1951年。マギル大学の講義資料に掲載の PDF)
- Weibull, Waloddi (1887–1979)|Random(アラバマ大学ハンツビル校 K. Siegrist)
- 4. 基本動定格荷重と疲れ寿命|日本精工(NSK)ベアリングの基礎知識
- 基本動定格荷重と疲れ寿命|日本精工(NSK)
- 軸受寿命の信頼性|NACHI TECHNICAL REPORT Vol.43 D1(不二越)
- ゴム・樹脂素材の耐久寿命予測|JFEテクノリサーチ
- Does a 10°C Increase in Temperature Really Reduce the Life of Electronics by Half?|Electronics Cooling
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月7日
