粉体工学の基礎知識(粉の歴史・基礎物性・特性・用途・トラブルと対策)

ろうとから落ちる粉が山になり、横に粒の大きさが違う3つの粉の皿が並ぶイメージ

小麦粉、セメント、薬、化粧品、電子部品の材料。身の回りの多くのものは、作る途中で粉の状態を通ります。粉の大きさや流れ方を調べ、うまく扱う方法を考える学問が粉体工学です。このページでは、はじめて粉体を学ぶ人に向けて、粉の歴史と恩恵、基礎物性、特性、使われる分野、トラブルと対策の順に、計算例をまじえて説明します。

粉体工学をひとことで言うと

粉は、固体なのに液体のように流せて、表面積が大きいので溶けたり反応したりしやすい材料の形です。

一方で、壁にくっつく、詰まる、かたよる、舞って爆発するといった、粉ならではの困りごとがあります。粉の性質を数値でつかむと、良さを使い、困りごとを防げます。

「粉体」は、細かく分かれた固体の粒の集まりです。粒の大きいものを粒体、小さいものを粉体と呼び分けることもありますが、区別せずに粉体と呼ぶことも多くあります。気体や液体と違って、粉は粒ごとに大きさや形がばらばらです。そのため、同じ材料でも粒の状態が変わると、ふるまいが変わります。

粉体工学は、大きく3つの柱でできています。粉そのものの性質を調べる「粉体物性論」、流体の中などでの粉の動きを調べる「粉体運動論」、粉砕・ふるい分け・混合・焼結などの処理を扱う「粉体単位操作論」です。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

目次

1. 粉の歴史とその恩恵

人は昔から、ものを粉にしてきた

旧石器時代の叩き石から、水車の製粉、蒸気機関の製粉工場、ポルトランドセメントの特許、ロール式製粉機、日本の粉体工学の研究会の発足までを並べた年表
図1 粉と人の歴史(主なできごと)
出典:ホソカワミクロン「粉砕」No.57、コトバンク「製粉」、Grace’s Guide「Joseph Aspdin」、粉体工学会「沿革」をもとに AI(Claude)で作成

粉作りの歴史は長く、旧石器時代にはすでに、叩き石や磨石(すりいし)といった粉砕機の原型が使われていました。粉の技術は、人の暮らしとともに続いてきたものです。

歴史をたどりやすいのが、穀物を粉にする製粉です。はじめは人や家畜の力で石臼を回していました。紀元前450〜前400年ごろには水車形式の製粉工場が設計され、後600年ごろには風車も発明されたとされます。17世紀には、何回か別の石臼にかけ、そのたびにふるい分ける「段階式」の製粉が始まりました。1784年にはイギリスで蒸気機関を使った石臼製粉工場が設立され、1870年ごろにはロール式製粉機が実用化されて、石臼から置きかわっていきました。

工業の材料でも、粉は欠かせません。陶磁器、セメント、ガラスを作る窯業(ようぎょう)では、鉱物を砕いてふるい分けた粉を混ぜ、形にして焼き固めます。古代の土器づくりも、基本の工程は同じです。今のセメントの原型とされるポルトランドセメントの特許は、1824年にイギリスのジョセフ・アスプディンが取りました。

学問としては、日本では1956年の中部粉体工学研究会に続いて1957年に粉体工学研究会が発足し、1978年に粉体工学会と名前を変えています。

出典:猪ノ木雅裕「微粒子の高機能化に対応した最新の粉体技術」粉砕 No.57|ホソカワミクロン、製粉(日本大百科全書)|コトバンク、三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学、Joseph Aspdin|Grace’s Guide to British Industrial History、小林孝一「ポルトランドセメントの200年とこれから」|土木学会、沿革|一般社団法人 粉体工学会

粉にすると、なぜ便利なのか

1センチの立方体を1マイクロメートルの立方体に砕くと、個数が1兆個、表面積が6平方センチから6平方メートルへ1万倍に増えることを示す図
図2 砕くと表面積が増える(計算例)
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成

粉の大きな特徴は、同じ量でも表面積が大きくなることです。計算してみましょう。1辺 1 cm の立方体の表面積は、1 cm² の面が6つで 6 cm² です。これを1辺 1 µm(1 mm の1000分の1)の立方体に砕くと、1辺あたり1万個に分かれるので、個数は 10,000 × 10,000 × 10,000 = 10¹² 個です。1個の表面積は 6 µm² なので、合計は 6 × 10¹² µm²、つまり 6 m² になります。体積は同じなのに、表面積は1万倍です(編集部の計算)。

溶ける、反応するといった変化は、物の表面で起きます。砂糖のかたまりより粉砂糖のほうが早く溶けるのも、水にふれる面が広いからです。

粉にして得られることどう役立つか例
表面積が大きくなる反応や溶解が速くなる薬の原薬
流せるようになる固体でも管や容器の中を流体のように運べる原料の貯蔵と供給
形にしやすくなる混ぜて練り、形にしてから焼き固められる陶磁器、ファインセラミックス
ばらばらに広げられる粉砕の目的のひとつに分散性の向上がある(細かすぎると逆に凝集する。3章を参照)化粧品の微粉体、顔料

かたまりの石では、練って固めることも流すこともできません。粉にすることで、はじめてできる加工があります。

出典:猪ノ木雅裕「微粒子の高機能化に対応した最新の粉体技術」粉砕 No.57|ホソカワミクロン、三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

2. 粉体の基礎物性

粉を扱う第一歩は、その粉を数字で表すことです。大きさ、大きさのばらつき、密度、表面積、形の順に見ていきます。

粒子径:粒の大きさの表し方

ふぞろいな粒を、体積が同じ球、投影面積が同じ円、沈む速さが同じ球に置きかえて直径を表すことを示した図
図3 粒子径は、球や円に置きかえて表す
出典:新潟大学「粉体工学」講義資料をもとに AI(Claude)で作成

球なら、粒の大きさは直径で決まります。しかし実際の粒は、きれいな球ではありません。そこで基準を決めて、形のわかるものに置きかえた大きさを「代表粒子径」として使います。主なものは次のとおりです。

名前決め方どんなときに出てくるか
体積相当径体積が同じ球の直径粒の体積や質量を考えるとき
表面積相当径表面積が同じ球の直径表面積を考えるとき
ヘイウッド径(面積相当径)投影面積が同じ円の直径粒の写真から測るとき
周長相当径投影した輪郭の長さが同じ円の直径粒の写真から測るとき
ストークス径液体の中を沈む速さが同じ球の直径沈降法で測るとき
フェレー径投影した粒を平行な2本の線ではさんだ間隔粒の写真から測るとき
ふるい目開き径通ったふるいの目の大きさふるい分けで測るとき

大切なのは、同じ粒でも、どの定義で測るかによって値が変わることです。たとえば 1×1×10 µm の細長い直方体では、体積相当径は約 2.7 µm、周長相当径は約 7.0 µm です。粒子径の数字を比べるときは、測り方もあわせて確かめます。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

粒度分布:大きさのばらつきを表す

粉の粒は、大きさがそろっていません。どの大きさの粒がどれだけあるかを示したものが粒度分布(粒子径分布)です。ふるい分けの例で、数字の読み方を見てみましょう。

ふるいの目開きそのふるいに残った割合ふるい上の積算
2,360 µm1.20%1.20%
1,700 µm2.90%4.10%
1,180 µm18.8%22.9%
850 µm28.8%51.7%

「残った割合」が頻度にあたり、上から足していったものが積算です。850 µm の行の 51.7% は、850 µm より大きい粒が全体の 51.7% あるという意味です。100% から引いた 48.3% は、850 µm より小さい粒の割合(ふるい下の積算)になります。

粒子径を横軸に、頻度を棒で、積算を曲線で示し、積算が50パーセントになる粒子径がD50であることを示したグラフ
図4 頻度と積算のグラフの例(ロジン・ラムラー分布の式で描いた例で、実測値ではない)
出典:新潟大学「粉体工学」講義資料、堀場製作所「粒度分布とは」をもとに AI(Claude)で作成

分布をひとつの数字で代表させるときは、次の3つをよく使います。分布が左右対称なら3つは同じ値になり、かたよっていると違う値になります。

代表の値意味
メディアン径(D50)粒全体を半分に分ける粒子径。積算が 50% になる値
モード径頻度がいちばん多い粒子径。グラフの山の頂上
平均径粒子径と頻度を掛けて合計した値

もうひとつ気をつけたいのが、数えているのが個数か、質量かです。ふるいや沈降の測定は質量の割合になり、顕微鏡で数えると個数の割合になります。同じ材料の球なら、直径 10 µm の粒1個の質量は、直径 1 µm の粒1,000個分です(編集部の計算)。同じ粉でも、個数で見ると小さい粒が多く見え、質量で見ると大きい粒が多く見えます。

分布を式で表すこともあります。粉砕した粉には、ロジン・ラムラー分布の式 R = exp[−(D/Dₑ)ⁿ] が簡単で使いやすいとされます。R はふるいの上に残る割合、D は粒子径です。D = Dₑ を入れると R = exp(−1) ≒ 0.368 になるので、Dₑ はふるい上が 36.8% になる粒子径を表します。n(均等数)が大きいほど、分布は狭くなります。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学、粒度分布とは|堀場製作所

密度:3つの呼び方

粒の中の孔を含めない真密度、孔を含める粒子密度、粒どうしのすきまも含めるかさ密度を比べた図
図5 粉の3つの密度
出典:新潟大学「粉体工学」講義資料をもとに AI(Claude)で作成

密度は「質量 ÷ 体積」ですが、粉ではすきまをどこまで体積に入れるかで値が変わります。

呼び名体積に入れるもの使う場面の例
真密度固体の部分だけ(粒の中の孔は入れない)材料そのものの比較
粒子密度粒の中の孔や割れ目も入れる粒の沈みやすさの計算
かさ密度粒の中の孔に加えて、粒どうしのすきま、容器との間のすきまも入れる容器や袋に入る量の計算

粒子密度 ρp とかさ密度 ρb は、空隙率 ε(全体の体積に対するすきまの割合)を使って ρb = ρp(1 − ε) と結びつきます。粒子密度 2.65 g/cm³、空隙率 0.4 の粉なら、ρb = 2.65 × (1 − 0.4) ≒ 1.59 g/cm³ です(編集部の計算例)。同じ材料でも、すきまが多いほどかさ密度は小さくなります。

かさ密度は、詰め方でも変わります。容器にゆるく入れたときと、容器をたたいて詰めたとき(タップ密度)とでは値が違います。この差は、あとで説明する流れやすさの目安に使います。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学、粉体の流動性(公開資料)|医薬品医療機器総合機構(PMDA)

比表面積:表面積の多さを表す

比表面積は、重さあたり(または体積あたり)の表面積です。単位は m²/kg、m²/g、cm²/g などを使います。粒が細かいほど大きくなります。

球の粒なら、比表面積 Sw は密度 ρ と直径 D を使って Sw = 6/(ρD) で計算できます。密度 2,650 kg/m³ の球で計算すると、直径 10 µm で約 226 m²/kg(0.226 m²/g)、直径 1 µm で約 2,260 m²/kg(2.26 m²/g)です(編集部の計算)。直径が10分の1になると、比表面積は10倍になります。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

粒の形:同じ大きさでも流れ方が変わる

粒の大きさが同じでも、球に近いほうが流れやすく、運びやすくなります。ふるいで大きさはある程度そろえられますが、形まではそろえられません。

形を数字で表す指標のひとつが円形度です。写真に写った粒と同じ面積の円の周の長さを、粒の輪郭と同じ長さの円の周の長さで割ります。1に近いほど円に近い形です。ほかに、長さと幅の比(長短度。大きいと針状)、幅と厚みの比(扁平度。大きいと板状)も使います。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

測り方と規格

レーザー光を粒に当てると、大きい粒では小さな角度に、小さい粒では大きな角度に光が広がり、その角度を検出器で測ることを示す図
図6 レーザ回折・散乱法の考え方(模式図)
出典:日鉄テクノロジー「レーザー回折式粒子径分布測定法の解説」をもとに AI(Claude)で作成

粒子径の測り方はいくつかあり、それぞれ測っている「大きさ」の意味が違います。レーザ回折・散乱法は、気体や液体の中に分散させた粉に光を当て、粒の大きさによって光の広がる角度が変わることを利用します。角度ごとの光の強さを測り、計算で粒度分布を求めます。測れる範囲は装置によって違い、10 nm〜3.5 mm という機種の例があります。

測るもの方法しくみ関係する JIS
粒子径ふるい分け目の大きさの違うふるいに通し、残った質量を量るJIS Z 8815、Z 8801-1(試験用ふるい)
粒子径レーザ回折・散乱法光の広がる角度から求めるJIS Z 8825
粒子径沈降法液体の中を沈む速さから求めるJIS Z 8822
粒子径・形画像解析法粒の画像から求めるJIS Z 8827-1
比表面積ガス吸着粉の表面に吸着した気体の量から求めるJIS Z 8830
密度ガスピクノメータ法気体を使って粒の体積を求める(骨格密度)JIS Z 8837

出典:レーザー回折式粒子径分布測定法の解説と測定例|日鉄テクノロジー、三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学、粉体関連の JIS 一覧(2025年12月時点)|日本粉体工業技術協会

3. 粉体の特性

粉は、気体や液体とも、かたまりの固体とも違うふるまいをします。粉の難しさの多くは、粒どうしがくっつく力と、粒のすきまから生まれます。

くっつく:小さい粒ほど重力に勝つ

2つの粒の間に働く分子間力、水分の橋による液架橋力、電気の力である静電気力を並べた図
図7 粒をくっつける3つの力
出典:新潟大学「粉体工学」講義資料をもとに AI(Claude)で作成

粉が壁につくことを付着、粒どうしがくっついてかたまりになることを凝集といいます。くっつける力には、分子間力(ファンデルワールス力)、液架橋力、静電気力の3つがあります。

粒子径を横軸に、付着力の線と重力の線を両対数で描き、約36マイクロメートルで交わり、それより小さい粒は付着力が勝つことを示したグラフ
図8 付着力と重力の比べ(計算例:粒子密度 2.65 g/cm³、付着力の係数 1.80×10⁻⁵ kg/s²)
出典:新潟大学「粉体工学」講義資料、ホソカワミクロン「粉砕」No.59をもとに AI(Claude)で作成

なぜ小さい粒ほどくっつくのでしょうか。粒にかかる重力は粒の体積に比例するので、粒子径の3乗で変わります。一方、ファンデルワールス力を考えると、付着力は粒子径の1乗に比例します。粒子径が10分の1になると、重力は1000分の1になりますが、この付着力は10分の1にしかなりません。そのため粒が小さくなるほど重力より付着力のほうが大きくなり、落ちずに壁にくっつきます。

この2つがつり合う粒子径を、平衡粒子径といいます。付着力を F = kD、球の重さを W = (π/6)ρgD³ として F = W を解くと、D = √(6k/(πρg)) です。粒子密度 2.65 g/cm³、k = 1.80×10⁻⁵ kg/s² の場合、約 36 µm になります。粉と粒に厳密な境目はありませんが、付着しやすさに注目すると、境目は 30 µm 程度とされています。

小さい粒どうしは接触する点の数も増えるので、微粉のほうが強く凝集します。いったんできた凝集のかたまりをほぐすときも、小さい粒でできたものほど分散しにくくなります。付着の力は、まわりの雰囲気(湿度など)、表面の粗さ、置いた時間などによっても変わります。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学、後藤邦彰「粒子分散技術と粉体の付着性に関する一考察」粉砕 No.59|ホソカワミクロン、付着・凝集性|粉体工学用語辞典(粉体工学会)

流れる:流れやすさを数字で比べる

積み上げた粉の山の斜面の角度である安息角と、メスシリンダーをたたいて詰まり方を調べる圧縮度を示した図
図9 流れやすさの測り方
出典:PMDA「粉体の流動性」をもとに AI(Claude)で作成

粉の流れやすさは、安息角、圧縮度・ハウスナー比、オリフィスからの流出、せん断セルの4つの方法がよく使われます。ここでは簡単な2つを紹介します。安息角は、粉を積んでできた山の斜面の角度です。圧縮度とハウスナー比は、ゆるく入れたときの体積 V₀ と、たたいて詰めたあとの体積 Vf から、次の式で求めます。

  • 圧縮度(%)= (V₀ − Vf) ÷ V₀ × 100
  • ハウスナー比 = V₀ ÷ Vf

たとえば 100 mL の粉をたたいて 80 mL になったなら、圧縮度は 20%、ハウスナー比は 1.25 です(編集部の計算例)。下の表では「やや良好」にあたります。圧縮度は、粒子径、形、含水率、付着性などの影響を総合した尺度とされています。

流れやすさ安息角圧縮度ハウスナー比
極めて良好25〜30°10%以下1.00〜1.11
良好31〜35°11〜15%1.12〜1.18
やや良好36〜40°16〜20%1.19〜1.25
普通41〜45°21〜25%1.26〜1.34
やや不良46〜55°26〜31%1.35〜1.45
不良56〜65°32〜37%1.46〜1.59
極めて不良66°超38%超1.60超

これは医薬品の分野の目安です。安息角が 50° を超えると、製造に向かないことが多いとされています。また、これらは粉そのものに固有の値ではなく、測り方によって変わります。比べるときは同じ方法で測ります。

ほかに、安息角・圧縮度など4つの測定値を点数にして合計するカーの流動性指数や、粉にかかる圧力と固まりの強さの関係を表すフローファンクションがあります。フローファンクションは、ホッパーの出口を設計するジェニケの方法に使います。

出典:粉体の流動性(公開資料)|医薬品医療機器総合機構(PMDA)、カーの流動性指数|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、フローファンクション|粉体工学用語辞典(粉体工学会)

ためる:深くても底の圧力は増え続けない

液体をためた容器では、深いほど底の圧力は高くなります。粉は違います。高く積んでも、底の圧力は粉の重さより小さい一定の値に近づき、積んだ高さによらなくなります。19世紀末にヤンセンが見いだした現象で、壁との摩擦が関わります。ヤンセンの式は、粉をためる構造物の圧力の計算に広く使われています。

出典:Discrete element simulations of floor pressure due to granular material in a cylindrical vessel|New Jersey Institute of Technology、A Review of Analytical Methods for Calculating Static Pressures in Bulk Solids Storage Structures|KONA Powder and Particle Journal

固まる:置いておくとかたまりになる

粉を置いておくと、かたまりになることがあります。これが固結です。貯蔵や供給で問題になる主な原因は、吸湿です。水に溶ける粒が吸湿すると粒の接触点に液体の橋ができ、乾くときに結晶になって、固体の橋に変わります。

固結は、いつも悪者とは限りません。熱で粒をつなげる焼結や、セメントがコンクリートになる変化、造粒・打錠は、同じ現象を積極的に使っています。

出典:固結|粉体工学用語辞典(粉体工学会)

4. さまざまな分野で使われる粉粒体

10ナノメートルから100マイクロメートルの目盛りの上に、チタン酸バリウム、MLCCの誘電体層の厚さ、ザラつきを感じる下限、金属3Dプリンターの粉を並べた図
図10 粒の大きさのものさし
出典:村田製作所 Metamorphosis No.19、新潟大学「粉体工学」講義資料、Amazemet「Laser Powder Bed Fusion Technology」をもとに AI(Claude)で作成

粉の大きさは、使う分野によって大きく違います。それぞれの分野で、粉のどの性質を使っているのかを見ていきます。

産業粉の例
鉱業・鉄鋼鉄鉱石、石灰石
窯業・建設ケイ砂、アルミナ、セメント、砂
食品小麦粉、でんぷん、砂糖、食塩
医薬品原薬、顆粒剤、散剤
化粧品タルク、マイカ、シリカ、酸化チタン
電子材料チタン酸バリウム、フェライト、金属粉
塗料・印刷粉体塗料、顔料、トナー

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

食品:小麦粉

小麦の製粉は、ロール機で何回も挽き、そのたびにふるい分ける段階式で行います。粉砕とふるい分けを組み合わせた、粉の処理の身近な例です。

出典:製粉(日本大百科全書)|コトバンク

建設:セメント

セメントの細かさ(比表面積)は、品質の項目として規格で決められています。JIS R 5210 は比表面積の下限を、普通ポルトランドセメントで 2,500 cm²/g、早強で 3,300 cm²/g、超早強で 4,000 cm²/g と定めています。

出典:JIS R 5210:2019 ポルトランドセメント(kikakurui.com の掲載ページ)

医薬品:原薬と錠剤

薬の有効成分である原薬は、溶解度などの特性に応じて、吸収をよくするために細かく砕くことがあります。表面積を増やす恩恵の例です。ただし、細かい粉は工程の途中でフィルターから抜けたり、フィルターを詰まらせたりして、成分の含量が下がることがあります。良さと困りごとは表裏の関係にあります。

出典:流動層造粒乾燥工程 バリデーションの考え方と実施例|大阪府

化粧品:ファンデーション

人が触ってザラつきを感じる下限は約 30 µm とされます。ファンデーションの微粉体は、これより小さく調製しないとザラザラした触感が出ます。砂糖の結晶の粒も同じです。

出典:三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

電子部品:チタン酸バリウム

チタン酸バリウムは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の材料です。村田製作所の研究報告では、約 10 nm の粒子の作り方を研究し、30 nm を超える粒で強誘電性を確認しています。粒を小さくすると、材料の性質そのものが変わることがある例です。同じ報告で絶縁劣化の観察に使った MLCC の誘電体層の厚さは 3.8 µm でした。

出典:Research of nanoparticle fabrication and nanoscale characterization on dielectrics(Metamorphosis No.19)|村田製作所

電池:正極の材料

リチウムイオン電池の正極活物質を小さくして表面積を増やし、イオンの動く距離を短くする研究があります。ただし、電池の特性は粒子径だけでなく、電極の厚さや空隙率にも左右されます。

出典:山木準一ほか「LiCoO2 ナノ粒子の合成とリチウム二次電池への応用展開」粉砕 No.52|ホソカワミクロン

ものづくり:金属3Dプリンターの粉

レーザーで金属の粉を固めていく金属3Dプリンターでは、細かい形を作る場合に 15〜45 µm の粉がよく使われます。粉を薄く均一に敷くために、流れやすさや球に近い形が求められます。

都産技研 金属3Dプリンター(金属粉末積層造形装置)による造形(YouTube の動画)
動画 都産技研 金属3Dプリンター(金属粉末積層造形装置)による造形
出典:東京都立産業技術研究センター(YouTube)

出典:Laser Powder Bed Fusion Technology|Amazemet

印刷:トナー

プリンターのトナーは、高画質のために粒を小さくする流れがあります。砕いて作る方法は、粒を小さくするほどコストが上がります。一方、樹脂を重合して作る方法は、コストが粒の大きさにほとんどよらないため、広がってきました。

出典:大柴知美ほか「重合トナー Digital Toner 2000 の電子写真特性」|コニカミノルタ

関連:粉末冶金・MIM、金属3Dプリンター、粉体塗装・電着塗装

5. 粉体に関するトラブルの実態と対策

粉のトラブルは、大きく分けると、流れない、かたよる、爆発する、吸い込むの4つです。順に、なぜ起きるのか、どう防ぐのかを説明します。

流れない:ブリッジとラットホール

ホッパーの中で出口の上にアーチができるブリッジ、出口の真上だけ抜けるラットホール、大きさの違う粒がかたよる偏析を並べた図
図11 ホッパーで起きるトラブル(模式図)
出典:粉体工学用語辞典「架橋現象」、同「ラットホール」、同「粒子偏析」をもとに AI(Claude)で作成

ブリッジ(架橋)は、容器の中で粉がアーチを作り、重力で出ていく流れを止める現象です。付着する力がほとんど働かない粗い粉でも、出口が粒に比べて小さいと起きます。こうした粉では、経験的に出口の大きさが粒子径の5倍以上なら詰まらないとされますが、粒の形や分布にも影響されるので、あくまで参考値です。

ラットホールは、出口の真上だけが抜けて円筒状の穴があき、まわりの粉が残る現象です。容器の中の流れ方と関係があります。

容器の中の粉が全部動くマスフローと、出口の上の粉だけが動き壁ぎわの粉が止まるファネルフローを比べた図
図12 マスフローとファネルフロー(模式図)
出典:粉体工学用語辞典「マスフロー」、同「ファネルフロー」をもとに AI(Claude)で作成

粉が全部動く流れ方をマスフロー、出口の上の粉だけが動き、壁ぎわの粉が止まっている流れ方をファネルフローといいます。マスフローになるかどうかは、ホッパーの壁の傾きと、粉と壁の摩擦に左右されます。

対策は、まず形から考えます。出口を大きくする、ホッパーの傾斜を改善する、壁面をなめらかにするといった方法です。それでも防げない付着性の強い粉には、空気を吹き込む、振動を与える、かき混ぜるなどしてアーチを崩す装置(アーチブレーカー)を使います。

対策の選び方は、課題ページ「粉体がホッパーで詰まる・流れないのを防ぎたい」で詳しく説明しています。

出典:架橋現象|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、閉塞限界寸法|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、ラットホール|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、マスフロー|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、ファネルフロー|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、アーチブレーカー|粉体工学用語辞典(粉体工学会)

止まらない:フラッシング

詰まりとは逆に、粉が気体を含むと急に流れやすくなり、粘りの少ない液体のように流れることがあります。これがフラッシングです。容器の中のアーチが衝撃で崩れたときにも起きます。いったん起きると、ロータリーバルブやスクリューフィーダーでも流れを止められません。

出典:フラッシング|粉体工学用語辞典(粉体工学会)

かたよる:偏析

大きさや密度などの違う粒を混ぜた粉は、流れている間に分かれて、場所によって成分がかたよることがあります。これが偏析です。容器に入れるときや出すときの、粉を落とす点の近くなどで起きます。気体や液体と違い、粉は均一には混ざりきらないので、せっかく混ぜても、運ぶ途中で分かれることがあります。

出典:粒子偏析|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学

固まる:固結

水に溶ける粉では、固結の主な原因は湿気です。湿度と温度の変化、かかる圧力、置いておく時間を見直します。詳しいしくみは「3. 粉体の特性」のとおりです。

出典:固結|粉体工学用語辞典(粉体工学会)

爆発する:粉じん爆発

かたまりは燃える、積もった粉は爆発しない、空気中に舞った粉じん雲は炎が広がって爆発することを並べた図
図13 状態による燃え方の違い
出典:ホソカワミクロン「粉砕」No.61をもとに AI(Claude)で作成

プラスチックのように燃える材料は、かたまりなら火をつけても燃えるだけです。積もった粉は火がつきやすくなりますが、爆発はしません。ところが、空気中に舞った粉(粉じん雲)に火がつくと、炎が粉じん雲の中を速く広がり、爆発します。小さな粉は炎の熱で速くガスになることなどが、炎の広がりを助けます。

可燃性の粉じん、空気中に浮く、酸素など、閉じた空間、着火源の5つを五角形の頂点に置き、右に対策を並べた図
図14 粉じん爆発の5つの条件と対策
出典:CCPS「Process Safety Beacon」、ホソカワミクロン「粉砕」No.61をもとに AI(Claude)で作成

爆発の条件は、可燃性の粉じん、空気中に浮くこと、酸素など、閉じた空間、着火源の5つです。粉じん雲、着火源、酸素の3つにまとめて説明することもあり、この3つのどれかを欠けば爆発は起きません。閉じた空間は、圧力の上がりやすさに関わります。

危険の大きさは、爆発の「起きやすさ」と「激しさ」に分けて数値で評価します。

分類特性値意味
起きやすさ爆発下限界濃度(JIS Z 8818)爆発する最も薄い粉じんの濃度
起きやすさ最小着火エネルギー(JIS Z 8834)火をつけるのに必要な最小のエネルギー
起きやすさ限界酸素濃度これより酸素が少ないと爆発しない濃度
激しさ最大爆発圧力(JIS Z 8817)密閉容器の中で圧力がどこまで上がるか
激しさ圧力上昇速度・爆発指数(JIS Z 8817)圧力がどれだけ速く上がるか

爆発下限濃度は、一般に 20〜60 g/m³ とされています(1969年の資料)。同じ材料でも粒が小さいほど下限濃度は低く、爆発が起きやすくなります。これらの値は測定の条件によって変わるので、実際の現場との条件の違いも考えて使います。

事故が多い工程と対策は次のとおりです。

工程なぜ危ないか防止の例
集じん粉じんが濃くなる。バグフィルタでの事故が多い帯電防止のろ布、アース、堆積物の清掃
粉砕金属片の混入や摩擦熱で着火する異物の混入防止、装置の中の堆積防止
乾燥高温の熱源があり着火しやすい供給量の制御、過熱防止、窒素パージ
輸送・貯蔵可動部の不具合による高温や静電気で着火する。バケットエレベータや貯蔵ビンでの事故が多い保守、異常の感知、突起物をなくす

爆発は速いので、起きてから対応しても間に合いません。そのため、起こさない対策に加えて、起きたときの被害を小さくする設備を前もって用意します。

被害を小さくする方法内容
放散破裂板などが開いて圧力を逃がす
抑制爆発を瞬時に検出し、水や消火剤を吹き込んで止める
伝ぱの遮断高速遮断弁などで、隣の装置へ広がるのを防ぐ
耐圧の構造爆発の圧力で壊れない装置にして、中に封じ込める

酸素を減らす方法では、窒素などで置きかえて限界酸素濃度より下げます。酸素を完全になくす必要はありません。効果は大きいものの、コストがかかります。

怖いのは、最初の爆発の爆風で積もっていた粉が舞い上がり、2回目の爆発につながることです。ふだんの清掃が大切な理由のひとつです。2008年に米国ジョージア州の Imperial Sugar の製糖工場で起きた爆発では、大量に積もっていた砂糖の粉が燃料となり、14人が亡くなり、38人が負傷しました。

防爆の機器については「防爆エリアで電気機器を安全に使いたい」、静電気については「静電気のトラブルを防ぎたい」で説明しています。

出典:可燃性粉塵の危険性はいたるところにある!(Process Safety Beacon 2021年6月号)|CCPS(AIChE)、爆発(安全衛生キーワード)|職場のあんぜんサイト(厚生労働省)、産業安全研究所 技術資料 RIIS-TN-69-1(1969年)|労働安全衛生総合研究所、土橋律「粉じん爆発の危険性とその対策」粉砕 No.61|ホソカワミクロン、Imperial Sugar Company Dust Explosion and Fire|米国化学物質安全性委員会(CSB)

吸い込む:じん肺

粉じんを長い期間、大量に吸い込み続けると、肺の組織が線維化して硬くなる「じん肺」になることがあります。日本では粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)などの対策が進み、じん肺の新規有所見労働者は、昭和55年の 6,842 人から平成28年の 122 人へ減りました。粉を扱う作業では、法令に沿った対策が必要です。

出典:第9次粉じん障害防止総合対策の推進について(基発0209第3号)|厚生労働省、じん肺、じん肺健康診断、じん肺管理区分について|奈良労働局

出典

  1. 三上貴司「粉体工学」講義資料(概要・基本物性)|新潟大学
  2. 猪ノ木雅裕「微粒子の高機能化に対応した最新の粉体技術」粉砕 No.57|ホソカワミクロン
  3. 製粉(日本大百科全書)|コトバンク
  4. Joseph Aspdin|Grace’s Guide to British Industrial History
  5. 小林孝一「ポルトランドセメントの200年とこれから」|土木学会
  6. 沿革|一般社団法人 粉体工学会
  7. 粒度分布とは|堀場製作所
  8. 粉体の流動性(公開資料)|医薬品医療機器総合機構(PMDA)
  9. レーザー回折式粒子径分布測定法の解説と測定例|日鉄テクノロジー
  10. 粉体関連の JIS 一覧(2025年12月時点)|日本粉体工業技術協会
  11. 後藤邦彰「粒子分散技術と粉体の付着性に関する一考察」粉砕 No.59|ホソカワミクロン
  12. 付着・凝集性|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  13. カーの流動性指数|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  14. フローファンクション|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  15. Discrete element simulations of floor pressure due to granular material in a cylindrical vessel|New Jersey Institute of Technology
  16. A Review of Analytical Methods for Calculating Static Pressures in Bulk Solids Storage Structures|KONA Powder and Particle Journal
  17. 固結|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  18. JIS R 5210:2019 ポルトランドセメント(kikakurui.com の掲載ページ)
  19. 流動層造粒乾燥工程 バリデーションの考え方と実施例|大阪府
  20. Research of nanoparticle fabrication and nanoscale characterization on dielectrics(Metamorphosis No.19)|村田製作所
  21. 山木準一ほか「LiCoO2 ナノ粒子の合成とリチウム二次電池への応用展開」粉砕 No.52|ホソカワミクロン
  22. Laser Powder Bed Fusion Technology|Amazemet
  23. 大柴知美ほか「重合トナー Digital Toner 2000 の電子写真特性」|コニカミノルタ
  24. 架橋現象|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  25. 閉塞限界寸法|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  26. ラットホール|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  27. マスフロー|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  28. ファネルフロー|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  29. アーチブレーカー|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  30. フラッシング|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  31. 粒子偏析|粉体工学用語辞典(粉体工学会)
  32. 可燃性粉塵の危険性はいたるところにある!(Process Safety Beacon 2021年6月号)|CCPS(AIChE)
  33. 爆発(安全衛生キーワード)|職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
  34. 産業安全研究所 技術資料 RIIS-TN-69-1(1969年)|労働安全衛生総合研究所
  35. 土橋律「粉じん爆発の危険性とその対策」粉砕 No.61|ホソカワミクロン
  36. Imperial Sugar Company Dust Explosion and Fire|米国化学物質安全性委員会(CSB)
  37. 第9次粉じん障害防止総合対策の推進について(基発0209第3号)|厚生労働省
  38. じん肺、じん肺健康診断、じん肺管理区分について|奈良労働局

※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・装置ではありません。

情報の確認日:2026年11月2日

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