表皮効果(表皮深さ)

作業台の上に、断面の外周がオレンジ色に塗られた太い銅の丸棒と、細い素線をより合わせたリッツ線、鋼の軸に巻いた銅管のコイルがあるイメージ(AI で生成)

モーターの巻線、電源のトランス、EV のバスバー、高速の基板の配線。交流の電気を流す部品の設計で、よく出てくるのが「表皮効果」です。表皮効果は、交流の周波数が高くなるほど、電流が導体の表面近くに集まる現象です。電流の通り道が実質的に細くなるので、交流の抵抗と発熱が増えます。一方で、高周波焼入れや渦電流探傷のように、この性質を利用する技術もあります。このページでは、表皮効果が起きるしくみ、表皮深さの式と銅・アルミの値、抵抗の増え方の計算例、近接効果、抑える工夫、ものづくりで効く場面を、図で順に解説します。

目次

ひとことで言うと

表皮効果とは

直流の電流は、電線の断面の全体に同じように流れます。交流では、周波数が高いほど電流が表面に集まり、中心にはあまり流れなくなります。これを表皮効果といいます。電流が流れる部分が実質的に細くなるので、同じ電線でも交流の抵抗は直流より大きくなります。

電流が流れる層の厚さの目安を「表皮深さ」と呼びます。銅の場合、家庭の電気の周波数(50Hz・60Hz)で約1cm、1MHz で約0.07mm と、周波数が上がるほど薄くなります(値は下の節)。

丸い導体の断面の電流の分布の模式図:直流では断面の全体に同じ濃さで流れる。交流で周波数が低いと中心が少し薄くなる。周波数が高いと表面のごく薄い層に集まり、中心はほとんど流れない。表面から電流が集まる層の厚さが表皮深さ δ
図1 直流と交流の、導体の断面の電流の分布(模式図)
出典:ウィキペディア日本語版、コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)をもとに AI(Claude)で作成

コトバンクの「デジタル大辞泉」は、表皮効果を、高周波電流が導体の表面付近に集中する現象とし、そのため実効的な抵抗が著しく増すとしています。同じページの「精選版日本国語大辞典」は、周波数が高くなるほど顕著になり、電気抵抗が大きくなるとしています。

出典:表皮効果|コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)

なぜ表面に集まるのか:導体の中の渦電流

表皮効果のしくみの模式図:導体を縦に切った断面に、交流の電流が左から右へ流れる。電流の変化で導体の中に渦電流のループができ、中心側では渦電流がもとの電流と逆向きで電流を弱め、表面側では同じ向きで強める。右に、電流のまわりに磁界ができる、交流なので磁界が強くなったり弱くなったりする、磁界の変化を妨げる向きに渦電流が流れる、渦電流は中心で打ち消し表面で強める、の4段階
図2 電流の変化が導体の中に渦電流を生み、中心の電流を打ち消す(模式図)
出典:ウィキペディア日本語版、村田製作所をもとに AI(Claude)で作成

電流が流れると、そのまわりと導体の中に磁界ができます。交流では電流の向きと大きさが変わり続けるので、磁界も変わり続けます。ウィキペディア日本語版は、交流による磁場の変化を打ち消そうとして起電力が生じ、その起電力による渦電流が導体の中心部では交流電流と逆向きになるため、中心ほど電流が流れにくくなると説明しています。渦電流は輪になって流れるので、中心で逆向きなら表面側では同じ向きになり、表面の電流を強めます(編集部の解説)。

磁界の変化が速いほど、つまり周波数が高いほど、この打ち消しは強くなります。材料にもよります。村田製作所のノイズ対策の講座は、表皮の厚さは材料の透磁率と導電率で変わり、導電率や透磁率が大きいほど薄くなるとしています。鉄は導電率が銅より低い一方で透磁率がはるかに高いため、表皮の厚さは銅より約1桁薄くなる、としています。

出典:表皮効果|ウィキペディア日本語版、空間伝導と対策 3(ノイズ対策 基礎講座)|村田製作所

表皮深さの式と、銅・アルミの値

ウィキペディア日本語版は、電流密度が表面の 1/e(約0.37)になる深さを表皮深さ d とし、d=√(2ρ/(ωμ))で表しています。ρ は導体の抵抗率、ω は角周波数(2π×周波数 f)、μ は導体の透磁率です。ω=2πf を入れると、δ=√(ρ/(πfμ))とも書けます(編集部の式変形)。表皮深さより深い所にも電流は流れますが、深くなるほど指数関数的に少なくなります。

銅とアルミの表皮深さと周波数のグラフ(両対数):周波数が100倍になると表皮深さは1/10になる右下がりの直線。銅は 50Hz で約9.3mm、60Hz で約8.4mm、1kHz で約2.1mm、10kHz で約0.65mm、100kHz で約0.21mm、1MHz で約65μm、1GHz で約2.1μm。アルミは同じ周波数でそれぞれ約1.25倍深い
図3 銅とアルミの表皮深さ(20℃の抵抗率で計算)
出典:ウィキペディア日本語版をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

上の図は、ウィキペディア日本語版「電気抵抗率の比較」の20℃の値(銅 1.69×10⁻⁸ Ωm、アルミニウム 2.65×10⁻⁸ Ωm。どちらも概算)と、銅・アルミの透磁率を真空の透磁率とみなして、編集部が計算した値です。式にあるとおり、表皮深さは周波数の平方根に反比例するので、周波数が100倍になると表皮深さは1/10になります。

ほかの資料の値とも、おおむね合います。ウィキペディア日本語版「表皮効果」の表は、銅線の表皮深さを 60Hz で 8.57mm、10kHz で 0.66mm、10MHz で 21μm としています(使った抵抗率の違いで、計算値と少しずれます)。コトバンクの「世界大百科事典」は、銅で 50Hz の交流なら約1cm としています。実際の導体では温度で抵抗率が変わるので、表皮深さも変わります。

出典:表皮効果|ウィキペディア日本語版、電気抵抗率の比較|ウィキペディア日本語版、表皮効果|コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)

材料表皮深さの傾向理由
銀・銅浅い電気を通しやすい(抵抗率が小さい)
アルミ銅より少し深い(約1.25倍)抵抗率が銅の約1.6倍
鉄(磁性体)銅より約1桁浅い透磁率がとても大きい(村田製作所)

※アルミの倍率は、上の抵抗率から編集部が計算(√(2.65/1.69)≒1.25)。鉄の値は、村田製作所の講座の説明(比透磁率1000を仮定した計算)によります。

出典:電気抵抗率の比較|ウィキペディア日本語版、空間伝導と対策 3(ノイズ対策 基礎講座)|村田製作所

交流の抵抗はどれくらい増えるか

電流が表面の厚さ δ ほどの層だけを流れると考えると、抵抗の増え方の見当がつきます。ウィキペディア日本語版は、直径 D が表皮深さ d より十分大きい丸い導体の抵抗を、R≒(ρ/d)×(L/(πD))と近似しています(L は長さ)。直流の抵抗は断面積(直径の2乗)に反比例しますが、表皮効果が強いときの交流の抵抗は、直径にほぼ反比例します。直径を2倍(断面積4倍)にしても、交流の抵抗は約半分にしかなりません(編集部の解説)。

銅の丸い導体(20℃)の交流抵抗と直流抵抗の比の表:直径2mm では 50Hz・1kHz で1.00倍、10kHz で1.10倍、100kHz で2.69倍。直径10mm では 1kHz で1.46倍、10kHz で4.08倍、100kHz で約12倍。直径20mm では 50Hz で1.03倍、1kHz で2.69倍、10kHz で7.89倍、100kHz で約24倍。直径30mm では 50Hz で1.13倍、1kHz で3.89倍、10kHz で約12倍、100kHz で約36倍。下に直径20mm の断面の電流の分布を周波数ごとに示す
図4 銅の丸い導体の、交流の抵抗が直流の何倍になるか(計算例)
出典:ウィキペディア日本語版をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

上の表は、丸い導体の電流の分布を表す式(ベッセル関数を使う式)で、編集部が計算した例です。直径2mm の電線なら 10kHz でも1.1倍ほどですが、直径20mm の太い導体では 1kHz で約2.7倍になります。太い導体ほど、周波数が低くても影響が出ます。実際の部品では、近くの導体の影響(次の節の近接効果)や温度で、さらに変わります。

大電流の部品では、これが発熱の問題になります。MONOist の記事(三菱ケミカルへのインタビュー)は、EV の厚い単体のバスバーでは、高周波の交流で電流が表面に集中して中心部にほとんど流れず、抵抗が増えて発熱するという趣旨の説明をしています。ウィキペディア日本語版も、表皮効果は大電流を扱う電力系統でも重要で、直流送電が有利とされる理由の一つとしています。

出典:表皮効果|ウィキペディア日本語版、コンデンサー材料がEVのバスバーで役立つ(EV向け機能材料インタビュー、2/2ページ)|MONOist

近接効果:となりの導体の電流でも、かたよる

近接効果の模式図:左は行きと帰りで電流が逆向きの2本の導体で、電流は向かい合う側に集まる。右は電流が同じ向きの2本の導体で、電流は外側(離れた側)に集まる
図5 近接効果:となりの導体の電流で、電流の分布がかたよる(模式図)
出典:パワーエレクトロニクス研究室(YouTube)をもとに AI(Claude)で作成

表皮効果は、自分の電流がつくる磁界で起きます。これに対して、となりの導体を流れる電流の磁界で、電流の分布がかたよることを近接効果といいます。電流が逆向きの行きと帰りの導体では向かい合う側に、同じ向きに並べた導体では外側に集まります(編集部の解説)。コイルのように導体が何重にも並ぶ部品では、表皮効果に近接効果が重なり、交流の抵抗がさらに増えます。

【パワエレ】表皮効果と近接効果によるインダクタの抵抗成分増大 Skin and Proximity Effects in Inductors(YouTube の動画)
動画 【パワエレ】表皮効果と近接効果によるインダクタの抵抗成分増大 Skin and Proximity Effects in Inductors
出典:パワーエレクトロニクス研究室―Power Electronics Lab.(YouTube)

上の動画は、大学のパワーエレクトロニクス研究室のチャンネルが、パワーエレクトロニクスを学ぶ大学生や若手社会人向けに出しているものです。説明欄の目次によると、インダクタ(コイル)を作って測り、表皮効果、リッツ線と単線の比較、並べた銅線での近接効果の観察、近接効果による抵抗の増え方までを順に扱っています。

出典:【パワエレ】表皮効果と近接効果によるインダクタの抵抗成分増大(動画の説明)|パワーエレクトロニクス研究室(YouTube)

表皮効果を抑える工夫

表皮効果による抵抗の増え方を抑える工夫の4枚のカード:リッツ線は細い素線を1本ずつ絶縁してより合わせ、電流を素線に均等に分ける(約1MHzまで)。表皮深さより薄い金属を重ねる積層バスバーは交流抵抗を小さくする。表面をなめらかにすると、高い周波数で表面を流れる電流の抵抗が増えにくい。ただ太くするのは効きにくく、直径を2倍にしても交流の抵抗は約半分にしかならない
図6 表皮効果による抵抗の増え方を抑える工夫
出典:ウィキペディア日本語版、MONOistをもとに AI(Claude)で作成

リッツ線:細い線を絶縁してより合わせる

ウィキペディア日本語版は、リッツ線を、互いに絶縁した細い素線を撚り合わせた電線とし、特殊な撚り方で各素線が全体を通して外側に均等に配置され、電流が均等に分配されるとしています。約1MHzまでの周波数で使えるように設計されており、IH調理器やワイヤレス充電の送信機でよく見られるとしています。ただし、近接効果による抵抗の増加は残り、約2MHz以上では単線より交流抵抗が大きくなってしまう、とも書いています。

出典:リッツ線|ウィキペディア日本語版

薄い導体を重ねる、表面をなめらかにする

MONOist の記事(上の EV のバスバーの話)は、表皮深さより薄い金属を何枚も重ねた積層体(三菱ケミカルは、薄い樹脂フィルムと金属を貼り合わせた材料「アルセット」で提案)にすると、金属単体のバスバーより交流抵抗が小さくなり、発熱を抑える効果が期待できるとしています。高い周波数では、電流は表面のごく薄い層を流れるので、表面の状態も効きます。MONOist の前田真一氏の連載は、銅箔の表面の凹凸が表皮深さに比べて小さければ影響はなく、凹凸が表皮深さに近づくと抵抗値に大きな影響が出るとしています。

反対に、ただ太くするのは効きにくいことも覚えておくと便利です。前の節の近似式のとおり、表皮深さより十分太い導体では、交流の抵抗は直径にほぼ反比例するからです(編集部の解説)。

出典:コンデンサー材料がEVのバスバーで役立つ(EV向け機能材料インタビュー、2/2ページ)|MONOist、第32回 損失の解析(前田真一の最新実装技術あれこれ塾、1/3ページ)|MONOist、表皮効果|ウィキペディア日本語版

ものづくりで表皮効果が効く場面

ものづくりで表皮効果が効く場面の表:使う側は高周波焼入れ(周波数が高いほど電流が表面に集まる)、渦電流探傷(磁性の鋼では表層に集まり表面に開いたきずだけ)、電磁波シールド(周波数が高く板が厚いほど吸収損失が効く)。困る側はバスバー・太い導体(抵抗と発熱が増える)、コイル・トランスの巻線(表皮効果と近接効果、リッツ線を使う)、高速の基板・高周波の配線(銅箔の表面の凹凸が損失に効く)
図7 ものづくりで表皮効果が効く場面:使う側と、困る側
出典:富士電子工業、三菱重工 ITEC、村田製作所、MONOist、ウィキペディア日本語版をもとに AI(Claude)で作成

高周波焼入れ:表面だけを熱して硬くする

富士電子工業の解説は、表皮効果を、交流電流がワークに流れるとき表面に近いほど電流密度が高くなる現象とし、最表面の電流密度を1としたときに0.368倍まで減衰する距離を電流浸透深さ(δ)と呼ぶとしています。そのうえで、周波数が高くなるほど、より表面に電流が集中するので、必要な硬化層深さに応じて適正な周波数を選ぶことが大切だとしています。

クランクシャフト 高周波焼入れ 【熱処理】(YouTube の動画)
動画 クランクシャフト 高周波焼入れ 【熱処理】
出典:富士電子ゆーちゅー部チャンネル(YouTube)

上の動画は、富士電子工業がクランクシャフトの高周波焼入れを紹介しているものです。熱処理の選び方は、技術ページ「表面硬化」と技術ページ「熱処理」で解説しています。

出典:基礎を学ぶ(表皮効果・電流浸透深さ)|富士電子工業

渦電流探傷:周波数と材料で、調べられる深さが変わる

渦電流探傷は、交流を流したコイルを金属に近づけて渦電流を流し、きずで変わる信号を見る検査です。三菱重工 ITEC の資料は、炭素鋼などの磁性材料では磁性のノイズが出るうえ、表皮効果で試験体の表層部に渦電流が集中するため、表面に開口したきずのみが検出できるとしています。日本非破壊検査協会の試験結果の講評も、表皮効果を渦電流探傷試験で最も重要な物理現象の一つとし、表皮厚さの式は試験条件を決めるのに役立つとしています。

渦流探傷(ET)の原理【マークテック】(YouTube の動画)
動画 渦流探傷(ET)の原理【マークテック】
出典:マークテック公式チャンネル(MARKTEC OFFICIAL)(YouTube)

上の動画は、検査用の機器と探傷剤のメーカーのマークテックが、渦流探傷試験の原理を紹介しているものです。方法の選び方は、技術ページ「非破壊検査」で解説しています。

出典:渦電流探傷試験(ECT)(第1版、2025年10月)|三菱重工 ITEC、2024年 春期 ET 新規一次試験結果について|日本非破壊検査協会

電磁波シールド:金属の板の中で電磁波を弱める

村田製作所の講座は、電波が金属に入ると、表面から表皮の厚さ δ まで進む間に0.37倍まで弱まるとし、この吸収による損失は周波数が高いほど、材料が厚いほど急に大きくなるとしています。10MHz では、銅は20μm以上、鉄は2μm以上の厚さで吸収による損失が期待できるとしています。逆に低い周波数では表皮が厚くなり、薄い金属板では吸収による損失がほとんど期待できず、銅などの良導体では低い周波数の磁界をシールドしにくい、としています。

出典:空間伝導と対策 3(ノイズ対策 基礎講座)|村田製作所

高速の基板・バスバー・巻線:損失と発熱のもと

困る側の代表が、大電流のバスバー、コイルやトランスの巻線、高速・高周波の基板の配線です。どれも、表皮効果で交流の抵抗が増え、損失と発熱が増えます。対策は上の「表皮効果を抑える工夫」の節、課題ごとの対策は下のリンクの課題ページで解説しています。

出典

  1. 表皮効果|コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)
  2. 表皮効果|ウィキペディア日本語版
  3. 空間伝導と対策 3(ノイズ対策 基礎講座)|村田製作所
  4. 電気抵抗率の比較|ウィキペディア日本語版
  5. コンデンサー材料がEVのバスバーで役立つ(EV向け機能材料インタビュー、2/2ページ)|MONOist
  6. 【パワエレ】表皮効果と近接効果によるインダクタの抵抗成分増大(動画の説明)|パワーエレクトロニクス研究室(YouTube)
  7. リッツ線|ウィキペディア日本語版
  8. 第32回 損失の解析(前田真一の最新実装技術あれこれ塾、1/3ページ)|MONOist
  9. 基礎を学ぶ(表皮効果・電流浸透深さ)|富士電子工業
  10. 渦電流探傷試験(ECT)(第1版、2025年10月)|三菱重工 ITEC
  11. 2024年 春期 ET 新規一次試験結果について|日本非破壊検査協会

※図1・2・5・6は、出典の説明をもとにした模式図です。色の濃さは電流の多さの目安で、実際の分布とは異なります。図3・4の値は、出典の抵抗率をもとに編集部が計算した例です(温度や近くの導体で変わります)。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月26日

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