工場の電気料金の明細や、電源のカタログに「力率」という言葉が出てきます。力率は、流した電流のうち、どれだけが仕事(動力・熱・光)に使われたかを表す割合です。このページでは、交流の電圧と電流のずれから力率を説明し、力率が低いと何が困るのか、電気料金の力率割引、進相コンデンサでの改善、電源の PFC(力率改善回路)まで、計算例の図で順に解説します。
ひとことで言うと
力率とは
力率は、皮相電力に対する有効電力の割合です。ウィキペディア日本語版はこう定義し、皮相電力を S、有効電力を P とすると、cosθ=P/S になるとしています(θ は交流の電圧と電流の位相のずれの角度)。
エネチェンジの解説は、力率(%)=有効電力÷皮相電力×100 とし、使われなかった電力は無効電力として電源と機器のあいだを行き来する、と説明しています。

出典:ウィキペディア日本語版、エネチェンジをもとに AI(Claude)で作成
3つの電力は、上の図のように直角三角形の3辺の関係になります(皮相電力²=有効電力²+無効電力²。ウィキペディア日本語版は、力率を P/√(P²+Q²) と書いています)。有効電力は W(ワット)、無効電力は var(バール)、皮相電力は VA(ボルトアンペア)で表します(編集部の解説)。
図の例では、電圧×電流が100kVA 分流れているのに、仕事になっているのは80kW なので、力率は0.8(80%)です。力率が1(100%)に近いほど、流した電流がむだなく仕事に使われています(編集部の解説)。
出典:力率|ウィキペディア日本語版、力率とは?力率割引で電気代を安くする方法と計算方法を解説|エネチェンジ
電圧と電流がずれると、なぜ力率が下がるのか

出典:この記事の内容をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
家庭や工場の電気は交流で、電圧と電流は1秒に50回または60回、プラスとマイナスをくり返します。電熱器のような抵抗では、電圧と電流の山と谷がそろっていて、各瞬間の電力(電圧×電流)はいつもプラスです。ウィキペディア日本語版も、抵抗負荷はすべて有効電力のため力率1としています。
ところが電流が電圧より遅れると、電圧と電流の向きが逆になる時間ができ、その間は電力がマイナス、つまり電源に送り返されることになります。上の図の右は、電流が60°遅れた場合を計算したものです。電流の大きさは左と同じなのに、平均の電力(有効電力)は半分(cos60°=0.5)になりました(編集部の計算)。行ったり来たりするだけの分が無効電力です(編集部の解説)。
遅れ力率と進み力率

出典:ウィキペディア日本語版をもとに AI(Claude)で作成
電流のずれ方は、つないだ機器で決まります。理想的なコイルでは電流が電圧より90°遅れ、理想的なコンデンサでは90°進みます(編集部の解説)。モーターや変圧器のように、コイルを使う機器の多くは電流が遅れます。ウィキペディア日本語版は、誘導性負荷では電圧に対して電流の位相が遅れるため、この位相を合わせる方向に調整すると力率が上がるとしています。電流が遅れる場合を遅れ力率、進む場合を進み力率と呼びます。
実際のモーターは、仕事をする分(抵抗のような成分)とコイルの成分をあわせ持つので、ずれは0°と90°のあいだになります(編集部の解説)。
出典:力率|ウィキペディア日本語版、力率の改善方法について教えてください。(省エネQ&A)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)
力率が低いと何が困るのか

出典:この記事の内容をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
力率が低いと、同じ仕事(有効電力)をするのに大きな電流を流さなければなりません。三相の電力は P=√3×電圧×電流×力率 なので、電流は力率に反比例します(編集部の解説)。上の図は、三相200V で100kW の負荷を動かす場合の電流を計算したものです。力率0.8では約361A ですが、1にすれば約289A ですみます(編集部の計算)。
電線や変圧器の中で熱になる損失は、電流の2乗に比例します(編集部の解説)。力率0.8を1にすると、電線の損失は約36%減ります(編集部の計算)。電流が減るので、電線での電圧の下がり(電圧降下)も小さくなり、変圧器の容量にも余裕ができます。三菱電機の進相コンデンサ設備の解説は、コンデンサの設置場所によって、変圧器の損失の低減や、電圧降下・線路の電力損失の減少まで狙えるとしています。
東芝デバイス&ストレージの解説も、電流の波形が歪むと、同じ出力電力でも入力電流の実効値が増え、配線・部品の発熱につながるとしています(電流のひずみは後の節で説明します)。
出典:製品特長 進相コンデンサ設備|三菱電機、Interleaved PFC 回路シミュレーター|東芝デバイス&ストレージ
電気料金の力率割引・割増

出典:エネチェンジをもとに AI(Claude)で作成
工場やビルの電気料金には、力率で基本料金が変わるしくみがあります。ウィキペディア日本語版は、一定以上の受電設備容量の需要家には、力率が高ければ電気料金の割引、低ければ割増となる制度があるとしています。エネチェンジの解説は、高圧・特別高圧では力率が85%を上回ると基本料金を1%割引、下回ると1%割増とし、基本料金=料金単価×契約電力×(185−力率)÷100 と書いています。
同じ解説の例(契約電力100kW、単価1,989円/kW、12か月)では、年間の基本料金は力率100%で2,028,780円、85%で2,386,800円、80%で2,506,140円です。力率80%は100%より年に約48万円多くなるとしています。J-Net21 の試算も、200kW・単価1,269円/(kW・月) で力率を80%から100%に上げると、基本料金が年約609千円減るとしています。
エネチェンジの解説は、電力会社によっては2024年から低圧電力や一部の契約で力率割引を廃止する動きもあるとし、高圧・特別高圧では引き続き力率割引を使える電力会社が一般的としています。くわしい条件(力率の測り方など)は、契約している電力会社の約款で確かめてください(編集部の注)。
出典:力率|ウィキペディア日本語版、力率とは?力率割引で電気代を安くする方法と計算方法を解説|エネチェンジ、力率の改善方法について教えてください。(省エネQ&A)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)
力率を上げる方法:進相コンデンサ

出典:この記事の内容をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
遅れ力率を上げるには、電流が進むコンデンサを並べてつなぎ、遅れの無効電力を打ち消します。J-Net21 は、容量性のコンデンサを使うことで力率を1に近づけることができるとし、これを力率改善用コンデンサ・電力用コンデンサ・進相コンデンサと呼ぶとしています。取り付ける場所は、受電点・電気室の高圧母線・変圧器の二次母線・負荷と並列の4つがあり、力率割引が主な目的なら、設備費が安い受電点が有利で最も多く採用されている、としています。
必要なコンデンサの容量は、Q=P×(tanθ₁−tanθ₂)で見積もれます(θ₁・θ₂ は改善前・改善後の位相のずれの角度。編集部の解説)。上の図の例では、100kW の負荷の力率を0.8から0.95に上げるのに、約42kvar のコンデンサが要ります。皮相電力は125kVA から約105kVA になり、同じ仕事に流す電流が約16%減ります(編集部の計算)。
三菱電機の解説は、変圧器の容量の1/3程度がコンデンサの容量の目安と言われる根拠を、係数0.42に改善前の力率0.8を掛けた0.336として示しています。また、J-Net21・三菱電機とも、コンデンサにはふつう直列リアクトル(小さなコイル)を付け、投入時の突入電流と、高調波の電流が流れ込むのを抑えるとしています。
出典:力率の改善方法について教えてください。(省エネQ&A)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)、製品特長 進相コンデンサ設備|三菱電機
入れすぎに注意:進み力率

出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)、三菱電機をもとに AI(Claude)で作成
コンデンサは、多ければよいわけではありません。J-Net21 は、夜間や深夜に進相コンデンサが入ったままだと、力率は1を大きく超えて進み、異常電圧が起きるおそれがあるとしています。昼に動くモーターに合わせてコンデンサを入れると、モーターが止まる夜は打ち消す相手がいなくなるためです(編集部の解説)。
そこで使うのが自動力率調整装置です。三菱電機の解説は、電力用コンデンサの投入量を自動で制御して力率を調整する機器とし、軽負荷を検出するとコンデンサを自動で切って、力率の進みすぎを防ぐとしています。ウィキペディア日本語版は、力率改善用コンデンサの過剰設置を行わないよう一般送配電事業者が求めている、としています。
出典:力率の改善方法について教えてください。(省エネQ&A)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)、製品特長 自動力率調整装置|三菱電機、力率|ウィキペディア日本語版
電流の形がひずんでも、力率は下がる(PFC)

出典:東芝デバイス&ストレージをもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
ここまでは電流のずれの話でしたが、力率は電流の形のひずみでも下がります。ウィキペディア日本語版は、正弦波の電圧に対し電流が正弦波でなくなる非線形負荷では、力率は1未満になるとしています。
パソコンや LED 照明などの電源(AC を DC に変える電源)がその例です。東芝デバイス&ストレージの解説は、AC-DC 電源では、整流・平滑によって入力電流が電圧のピーク付近に集中し、電流波形の歪みや高調波電流が発生しやすいとしています。上の図の左は、そうしたとがった電流を模式的に描いて力率を計算したもので、電流の山が電圧の山とそろっていても、力率は約0.58でした(編集部の計算。実際の値は回路によって異なります)。
これを直すのがPFC(Power Factor Correction:力率改善)回路です。同じ解説は、PFC 回路を、入力電圧に同期して入力電流を制御し、電流波形を正弦波に近づけることで、力率改善と高調波電流の低減を図る回路としています。また、国際規格 IEC 61000-3-2 が、公共の低圧配電系統につなぐ定格入力電流16A/相以下の電気・電子機器について、高調波電流の制限を決めているとしています。パソコン用電源の省エネ認証 80 PLUS も、英語版ウィキペディアによると、100%負荷で力率0.9以上を求めています。
出典:力率|ウィキペディア日本語版、Interleaved PFC 回路シミュレーター|東芝デバイス&ストレージ、80 Plus|ウィキペディア英語版
力率が出てくるページ
出典
- 力率|ウィキペディア日本語版
- 力率とは?力率割引で電気代を安くする方法と計算方法を解説|エネチェンジ
- 力率の改善方法について教えてください。(省エネQ&A)|J-Net21(中小企業基盤整備機構)
- 製品特長 進相コンデンサ設備|三菱電機
- Interleaved PFC 回路シミュレーター|東芝デバイス&ストレージ
- 製品特長 自動力率調整装置|三菱電機
- 80 Plus|ウィキペディア英語版
※図2・4・6・8は、式から編集部が計算したものです。図8の電流の波形は、コンデンサ入力型の整流の電流を模式的に描いたもので、実際の機器の波形とは異なります。図7は、出典の説明を図にしたイメージで、数値の目盛りはありません。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月20日
