ボルトやピンが横向きの力でぽきっと切れる、プレスで板に穴があく、地震でコンクリートの柱に斜めのひびが入る。どれも、物の中のある面が横にずらされて壊れるという同じしくみで起きています。これをせん断破壊といいます。このページでは、せん断破壊とは何か、引張りで壊れるのとどう違うか、ねばい材料ともろい材料の壊れ方の違い、破面の見方、壊れる力の見積もり、打ち抜き加工や鉄筋コンクリート・土のせん断破壊までを、図で順に解説します。
せん断破壊とは:ひとことで言うと
せん断破壊とは
せん断破壊は、せん断応力によって、物体の中のある面に沿ってすべる(ずれる)ように壊れることです。英語版 Wikipedia「Fracture」は、接線方向(面に沿った向き)にずれが生じる割れを、せん断の割れ(shear crack)としています。
せん断応力は、面に平行な向きにはたらく応力で、τ = F / A で求めます(計算は基礎知識「せん断応力」)。せん断応力が、その材料のせん断強さを超えると、せん断破壊が起きます(この一文は編集部の補足)。

出典:Wikipedia(英語版)をもとに AI(Claude)で作成
物が壊れるときの、割れの面の動き方には大きく2つあります。面に垂直な力で引きはなされる壊れ方と、面に平行な力で面どうしがずれる壊れ方です。
| 割れた面の動き | はたらく応力 | 身近な例 | |
|---|---|---|---|
| 引張りで壊れる | 面と面がはなれる | 垂直応力(引張り) | ガラスや鋳鉄が引っぱられて割れる |
| せん断で壊れる | 面に沿ってずれる | せん断応力 | ピン・ボルトが横の力で切れる、打ち抜き |
表は、英語版 Wikipedia「Fracture」と基礎知識「せん断応力」をもとに編集部がまとめました。
ねばい材料ともろい材料で、壊れ方が変わる
同じように引っぱっても、材料によって壊れ方は変わります。Wikipedia「破壊」は、降伏点を超えて大きく塑性変形してから壊れるものを延性破壊、鋳鉄・ガラス・コンクリート・岩石・セラミックスなどのように、ほとんど塑性変形せずに壊れるものを脆性(ぜいせい)破壊としています。
解説サイト hitopedia「せん断」は、延性の金属は最大のせん断応力がかかる面に沿ってせん断で壊れ、鋳鉄やセラミックスは引張りで割れやすいと説明しています。instant.engineer も、延性材料の降伏は最大せん断応力(トレスカの条件)やミーゼスの条件で判断し、脆性材料では主応力(引張り)が壊れ方を決めることがある、としています。

出典:Wikipedia(英語版)、特殊金属エクセル、instant.engineerをもとに AI(Claude)で作成
引っぱっても、斜めの面にはせん断応力がかかる
棒をまっすぐ引っぱっただけでも、棒の中の斜めの面には、せん断応力がかかっています。引っぱる応力を σ とすると、引っぱる向きから45°の面で、せん断応力はいちばん大きく σ/2 になります(モールの応力円から求まる関係。この一文は編集部の補足)。ねばい材料は、この斜めの面ですべり(塑性変形)が起きやすい、ということです。
カップアンドコーン:ねばい材料の引張りの破面
ねばい金属を引っぱって壊すと、くびれが起き、片方がお皿(カップ)、もう片方が円すい(コーン)のような形の破面になることが多くあります。これをカップアンドコーンといい、縁の斜めの部分(シアリップ)は、すべり(せん断)でできます(英語版 Wikipedia「Ductile fracture」)。特殊金属エクセルの技術コラムは、カップアンドコーンの中心部には丸いディンプル、周辺部には楕円形に伸びたディンプルが見られるとしています。
破面で見分ける:ディンプルとへき開
壊れた面(破面)を顕微鏡で見ると、どう壊れたかの手がかりが残っています。
| 壊れ方 | 破面の特徴 | 出典 |
|---|---|---|
| 延性破壊(引張り) | 丸いくぼみ(等軸ディンプル)が並ぶ | 英語版 Wikipedia「Fracture」、特殊金属エクセル |
| せん断で壊れた面 | 引き伸ばされた(放物線形の)ディンプル。向かい合う破面では向きが逆 | 英語版 Wikipedia「Fracture」、特殊金属エクセル |
| 脆性破壊(へき開) | 結晶の面に沿って一気に割れ、川の流れのような模様(リバーパターン) | 特殊金属エクセル |
特殊金属エクセルは、せん断破壊を「最大のせん断応力がはたらく面に沿って原子の結合が切れる破壊」と説明し、せん断変形で伸びたディンプルが見られることがある、としています。壊れた部品の原因を調べるときは、こうした破面の観察を手がかりにします。金属の結晶のつくりは基礎知識「金属組織」、ねばさともろさの境目は基礎知識「弾性変形と塑性変形」で解説しています。
出典:破壊|Wikipedia、せん断|hitopedia、せん断応力とは?曲げとの違いと計算式|instant.engineer、Ductile fracture|Wikipedia(英語版)、Fracture|Wikipedia(英語版)、延性破壊・脆性破壊・疲労破壊|その違いや破面の特徴について|特殊金属エクセル
ねじって壊すと、違いがはっきり見える

出典:isopromat、instant.engineerをもとに AI(Claude)で作成
丸い棒をねじると、軸に垂直な断面にせん断応力がかかります。同時に、軸から45°の向きには、同じ大きさの引張りと圧縮の応力がかかります(instant.engineer)。
そのため、ねじり試験では壊れ方の違いがよく見えます。isopromat の解説では、ねばい鋼は軸に垂直な断面で切れ(せん断破壊)、もろい鋳鉄は引張りの応力によって、らせん状の面で割れるとしています。らせんの面が軸から約45°に傾くのは、上の段落のとおり、引張りの応力がいちばん大きい向きが45°だからです(この一文は編集部の補足)。割れた面の向きを見れば、せん断で壊れたのか、引張りで割れたのかの見当がつきます。軸の設計は基礎知識「シャフト(軸)」で解説しています。
出典:Torsion tests|isopromat、せん断応力とは?曲げとの違いと計算式|instant.engineer
せん断で壊れる力の見積もり(ピン・ボルト)
材料のカタログには、引張強さは載っていても、せん断強さは載っていないことがよくあります。英語版 Wikipedia「Shear strength」は、鋼のとてもおおまかな目安として、せん断で壊れる強さ(極限せん断強さ)は引張強さの約0.75倍、せん断の降伏は引張りの降伏の約0.58倍としています。hitopedia は、せん断強さは引張強さのおよそ0.6〜0.8倍になることが多いが、材質や加工硬化で変わる、としています。

出典:Wikipedia(英語版)をもとに AI(Claude)で作成
計算例:直径 10 mm の鋼のピン
引張強さ 400 MPa の鋼のピンなら、せん断強さの目安は 400 × 0.75 = 300 MPa です。直径 10 mm のピンの断面積は約78.5 mm² なので、一面せん断では 300 × 78.5 ≒ 約23.6 kN で切れる計算になります。板3枚ではさむ二面せん断なら、切れる面が2つになるので約47 kN です(編集部の計算例)。
壊さないための考え方
せん断破壊を防ぐ基本は、かかるせん断応力を、せん断強さより十分に小さくすることです。断面を太くする、二面せん断にする、強い材料にする、そして安全率をかけます。角や穴のまわりでは応力が集中するので、丸みを付けます(この段落は編集部の補足)。実際の設計では、材料のばらつき、くり返しの力による疲労、穴の面がつぶれる力(面圧)も確かめます。安全率は基礎知識「安全率」、応力集中は基礎知識「応力集中」、くり返しの力は基礎知識「疲労限度」で解説しています。
出典:Shear strength|Wikipedia(英語版)、せん断|hitopedia
ものづくりで見るせん断破壊:打ち抜きの切り口
プレスで板に穴をあける打ち抜き(せん断加工)は、せん断破壊を道具として使う加工です。パンチとダイの刃で板をはさみ、ずらして切り離します。打ち抜いた切り口をよく見ると、だれ・せん断面・破断面・かえり(バリ)の4つの部分に分かれています(キーエンス、monoto)。

出典:キーエンス、monotoをもとに AI(Claude)で作成
| 部分 | どうやってできるか・見た目 |
|---|---|
| だれ | パンチが押し込まれ、板の表面が引き込まれてできる丸み |
| せん断面 | パンチが食い込み、刃でこすられてできる光沢のある面 |
| 破断面 | 割れが進んでちぎれた、せん断面より粗い面 |
| かえり(バリ) | 切り離すときに飛び出す、硬く鋭い突起 |
表は、キーエンスと monoto の解説をもとに編集部がまとめました。monoto は、刃のすき間(クリアランス)が適切なほど、せん断面が大きくなるとしています。打抜きに必要な力の計算は基礎知識「せん断応力」、プレス加工は技術ページ「板金・プレス加工」、金型は技術ページ「金型」で解説しています。

出典:テクパルコの技術解説チャンネル(YouTube)
出典:せん断加工後のダレ形状を正確に測定する方法|キーエンス、せん断加工とは?せん断の特徴とせん断のバリ・だれの仕組み|monoto
建築・土木で見るせん断破壊:鉄筋コンクリートと土
鉄筋コンクリートの柱・はり:斜めのひび割れ

出典:bonperson-civil、note、bakko-hakaseをもとに AI(Claude)で作成
「せん断破壊」は、建築や土木でもよく出てくる言葉です。鉄筋コンクリートのはりに横向き(せん断)の力がかかると、斜めのひび割れが進みます(bonperson-civil)。柱でも、地震の横の力で同じように斜めのひび割れが入ります(この一文は編集部の補足)。せん断破壊は、ひび割れが急に進み、ほとんど変形しないまま、耐える力を失うもろい壊れ方です(note「RC造の破壊性状を整理する」)。
これに対して曲げ破壊は、主筋が降伏して粘り強く変形し(note「RC造の破壊性状を整理する」)、もろく一気に壊れることはなく、壊れる前に予兆が見られます。そのため、せん断破壊より曲げ破壊が先に起きるように設計するのが基本です(bonperson-civil)。せん断を受け持つのが、柱の帯筋(フープ)やはりのあばら筋(スターラップ)といったせん断補強筋です(bakko-hakase)。主筋だけを増やして曲げに強くしすぎると、せん断破壊が先に起きる危険がある、とも説明されています(note「RC造の破壊性状を整理する」)。コンクリートに留めるアンカーボルトの壊れ方は、基礎知識「アンカーボルト」で解説しています。
土のせん断破壊:モール・クーロンの破壊規準

出典:Wikipediaをもとに AI(Claude)で作成
土の強さも、せん断で考えます。Wikipedia「モール・クーロンの破壊規準」は、土のせん断破壊を τ = c + σ tan φ で表すとしています。τ はせん断応力、σ は面に垂直な応力、c は見かけの粘着力、φ は内部摩擦角です。面を押しつける力が大きいほど、すべりにくくなる、ということです。
この式は、一面せん断試験や三軸圧縮試験で壊れたときの応力を直線で近似したもので、土はこの線より上の応力の状態をとれません(同)。不飽和土や過圧密土では、この線が曲線になることもあります(同)。斜面のすべりや、建物の基礎の下の土が押し出される壊れ方を考えるときの土台になります(最後の一文は編集部の補足)。
出典:せん断力を受ける鉄筋コンクリート部材-ひび割れの発生メカニズムや破壊形式|bonperson-civil、RC造の破壊性状を整理する|曲げ破壊とせん断破壊の違い|note、主筋とせん断補強筋:各鉄筋の役割と違い|bakko-hakase、モール・クーロンの破壊規準|Wikipedia
せん断破壊に関係するページ
出典
- Fracture|Wikipedia(英語版)
- 破壊|Wikipedia
- せん断|hitopedia
- せん断応力とは?曲げとの違いと計算式|instant.engineer
- Ductile fracture|Wikipedia(英語版)
- 延性破壊・脆性破壊・疲労破壊|その違いや破面の特徴について|特殊金属エクセル
- Torsion tests|isopromat
- Shear strength|Wikipedia(英語版)
- せん断加工後のダレ形状を正確に測定する方法|キーエンス
- せん断加工とは?せん断の特徴とせん断のバリ・だれの仕組み|monoto
- せん断力を受ける鉄筋コンクリート部材-ひび割れの発生メカニズムや破壊形式|bonperson-civil
- RC造の破壊性状を整理する|曲げ破壊とせん断破壊の違い|note
- 主筋とせん断補強筋:各鉄筋の役割と違い|bakko-hakase
- モール・クーロンの破壊規準|Wikipedia
※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。計算例の数値は編集部によるものです。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年11月7日
