真空ポンプは、密閉した容器から気体を吸い出して、大気圧より低い圧力(真空)をつくる機械です。液を送るポンプとは目的が違います。1台で大気圧から高真空まで引けるポンプはないので、油回転ポンプやドライポンプで「粗引き」し、高真空が要るときはターボ分子ポンプなどを組み合わせます。選ぶときは、どこまで下げるか(到達圧力)・どれだけ速く引くか(排気速度)・何を引くか(水蒸気・腐食性ガス・粉じん)・油を使ってよいかの4つを先に決めます。
この記事では、真空ポンプの仕組みと種類(油回転・ドライ・ターボ分子・クライオ)、真空の区分と単位、到達圧力と排気速度の見方、排気時間の計算、配管の影響、油回転ポンプのオイルとガスバラスト、よくあるトラブルと対策までを、図と表で順に説明します。
知りたいことから読む
- 真空ポンプとは何か、普通のポンプとの違いを知りたい → 真空ポンプとは
- 真空ポンプの種類を一覧で見たい → 種類の一覧
- ロータリーポンプ(油回転ポンプ)の仕組みを知りたい → 油回転ポンプのしくみ
- ターボ分子ポンプの仕組みを知りたい → ターボ分子ポンプ
- 用途に合う真空ポンプを選びたい → 選ぶ前に決める4つのこと
- 排気にかかる時間を見積もりたい → 排気時間の計算
- 真空ポンプのオイルの交換時期を知りたい → オイルの汚れと交換
- 圧力が下がらない・油が逆流した → トラブルと対策
真空ポンプとは:真空の区分と単位
真空ポンプとは
辞書では、真空ポンプは「容器内の気体を吸い出してその真空度を高める機械」(デジタル大辞泉)で、日本大百科全書は、大気圧以下の低い圧力の気体を吸い込み、圧縮して大気中に出す、圧縮機の一種と説明しています。つまり、仕組みは空気を縮めるコンプレッサーに近く、入口側が真空になっている点が違います。
性能を表す言葉は2つです。到達圧力は、そのポンプで下げられる最も低い圧力、排気速度は、ポンプが吸い込む気体の体積流量(L/s・L/min・m³/h)です(編集部の整理)。同じ排気速度でも、圧力が低いほど1秒に運び出す気体の量(流量=排気速度×圧力)は小さくなります。
出典:真空ポンプ|コトバンク(デジタル大辞泉・日本大百科全書)、真空ポンプ|ウィキペディア
真空の区分
真空は、圧力の高さで区分します。ISO 3529-1 による表(ウィキペディア「真空」)では、低真空 100 kPa〜100 Pa、中真空 100 Pa〜0.1 Pa、高真空 0.1 Pa〜10⁻⁵ Pa、超高真空 10⁻⁵ Pa 以下です。日本の用語の規格 JIS Z 8126-1 は2021年に改正され、ISO 3529-1 の2019年の改正に合わせて定義が見直されました(吉田、2022)。仕様を書くときは、区分の名前ではなく圧力の数値で書くと行き違いがありません(編集部の整理)。

出典:ウィキペディア「真空」の区分の表(ISO 3529-1 による)と、アルバック・アネスト岩田・樫山工業の公開値をもとに AI(Claude)で作成
出典:真空|ウィキペディア(ISO 3529-1 による区分の表)、吉田肇「JIS Z 8126-1:2021 真空技術―用語―第1部:一般用語の改正」表面と真空 65巻8号 pp.367–371(2022)、油回転真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、真空ポンプの原理と技術(基礎)|アネスト岩田、NeoDry G|樫山工業、UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
圧力の単位:Pa・Torr・mbar
真空の圧力は絶対圧(完全な真空を 0 とする圧力)で表します。1 気圧(atm)は 1.01325×10⁵ Pa = 760 Torr です。1 Torr は 1 mmHg と同じで約 133 Pa、1 mbar は 100 Pa です。古い資料や海外の資料には Torr や mbar が出てくるので、換算してから比べます。大気圧を 0 とするゲージ圧の計器とは読み方が違うことに注意します。
| 単位 | パスカル(Pa)に直すと | よく出てくる場面 |
|---|---|---|
| 1 atm(気圧) | 101,325 Pa | 大気圧 |
| 1 Torr(=1 mmHg) | 約 133 Pa | 古い資料・海外の資料 |
| 1 mbar | 100 Pa | 欧州の資料 |
| 1 kPa | 1,000 Pa | 低真空の表示 |
1 atm と 760 Torr の関係はウィキペディア「真空」。mbar は SI の定義(1 bar = 10⁵ Pa)から編集部が換算。
出典:真空|ウィキペディア(ISO 3529-1 による区分の表)
真空ポンプの種類と仕組み
種類の一覧:気体を運び出すか、ためこむか
真空ポンプは、気体を外へ運び出す気体輸送式(容積移送式・運動量輸送式)と、ポンプの中に気体をためこむ気体ため込み式に分けられます。また、油を使うものをウェットポンプ、使わないものをドライポンプと呼びます(ウィキペディア「真空ポンプ」)。
| 種類 | しくみ | 使う圧力の目安(例) | 向く場面 | 注意 |
|---|---|---|---|---|
| 油回転ポンプ(ロータリーポンプ) | 偏心した回転子と羽根で気体を閉じ込めて縮める。油でシール | 10 Pa 以下が簡単に得られる(アルバック) | 安価で小型。粗引き・補助ポンプ・一般の真空 | 油の管理が要る。油の逆流・オイルミスト |
| スクロール形ドライ | 2枚の渦巻きの片方を回し、気体を中心へ縮める | 到達 1〜750 Pa(アネスト岩田) | 油を嫌う装置・分析機器・補助ポンプ | シールの消耗品の交換 |
| スクリュー・多段ルーツ形ドライ | 非接触の回転子で気体を移送・圧縮 | 多段の回転子で大気圧まで縮めて排気する(多段ルーツ形。アルバック) | 半導体・FPD の製造装置、真空乾燥・蒸留 | 大型で高価なものが多い |
| 回転翼形ドライ | 油を使わない羽根の回転 | 低真空 | 吸着・搬送の真空源(食品・包装・印刷など) | 到達圧力は良くない。水分・腐食性ガスに不向き(水分で羽根の摩耗粉が固まり詰まる。アルバック) |
| ターボ分子ポンプ | 高速で回る翼が分子をはじき下ろす | UTM300B で到達 1×10⁻⁶ Pa(ベーキング前) | 高真空・超高真空(成膜・分析・加速器) | 単独では大気圧から引けない。補助ポンプが要る |
| 油拡散ポンプ | 油の蒸気の噴流で気体を運ぶ | 高真空 | 大型の高真空装置 | 油の逆流(バックストリーム)。補助ポンプが要る |
| クライオポンプ・イオンポンプ | 極低温の面で凝縮・吸着/電界で捕まえる | 高真空〜超高真空 | 油を使わないクリーンな真空 | ためこんだ気体の再生や寿命の管理 |
表の「使う圧力の目安」は各社の解説・仕様の例で、機種で大きく違います。
出典:真空ポンプ|ウィキペディア、油回転真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、真空ポンプの原理と技術(基礎)|アネスト岩田、多段ルーツ型ドライ真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、回転翼型ドライ真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、油拡散真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、Vacuum pump selection guide|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
油回転ポンプ(ロータリーポンプ)の仕組み
もっとも身近なのが油回転ポンプです。アルバックの解説では、回転翼形はシリンダーの内側のロータに2枚のベーン(羽根)が付いていて、中を3つの空間に分け、ロータの回転で気体を縮めて排気弁から大気に出すしくみです。油は、ベアリングの潤滑と冷却、ベーンとシリンダーのすき間をふさぐシールの役をします。長所は安価・小型・据え付けが簡単で、10 Pa 以下が簡単に得られること、短所は油の扱いが手間なことです。回転翼形のほか、カム形・揺動ピストン形もあります。

出典:アルバックの油回転真空ポンプの解説をもとに AI(Claude)で作成
出典:油回転真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
ドライポンプ:油を使わない真空
ドライポンプは、気体が通る所に油を使わないポンプです。アルバックの多段ルーツ形は、2本の三つ葉の回転子が、ふれあわずにわずかなすき間で気体を送り、何段も重ねて大気圧まで縮めるしくみで、ロータの部屋に油や封液を使わないのでクリーンに排気できます(ギヤとベアリングには油を使い、シールで部屋に入らないようにしています)。半導体・FPD の製造装置のほか、真空蒸留・脱ガス・殺菌・乾燥に使われます。
スクロール形は、渦巻きを組み合わせて気体を縮めるドライポンプで、アネスト岩田は1回転ごとに吸入・圧縮・吐出を連続して行い、トルクの変動がきわめて小さいと説明しています。一方、油を使わない回転翼形ドライは、構造が簡単で低真空の排気速度が大きく、吸着・搬送の真空源に広く使われますが、到達圧力は良くなく、水分や腐食性ガスには向かない(羽根のカーボンの摩耗粉は少量だが、水分があると固まって詰まる)とアルバックは説明しています。
出典:多段ルーツ型ドライ真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、真空ポンプの原理と技術(基礎)|アネスト岩田、回転翼型ドライ真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
ターボ分子ポンプ:高真空をつくる
ターボ分子ポンプは、高速で回るロータの翼が気体の分子にぶつかって、排気の向きへはじき出すポンプで、油を使わないのでクリーンな真空が得られます(アルバック)。アルバックの UTM-B の仕様では、回転数は UTM70B で 87,000 rpm、UTM300B で 60,000 rpm、到達圧力は 1×10⁻⁶ Pa(ベーキング前)です。尾高(真空、2006)は、到達真空度 10⁻¹⁰ Pa が実現していること、磁気軸受形はクリーンな粗引きポンプと組み合わせると清浄な真空が得られることを解説しています。

出典:アルバックのターボ分子ポンプの解説と尾高(2006)をもとに AI(Claude)で作成
注意したいのは、軽い気体ほど排気速度が下がることです。UTM-B の仕様表では、水素の排気速度は窒素の約7〜8割で、最大圧縮比も、窒素の 1×10⁹ 超に対し、水素は UTM70B で 4×10⁵、UTM300B で 1×10⁵ です。

出典:アルバックの UTM-B の仕様表をもとに AI(Claude)で作成
出典:Turbo molecular pump|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、尾高憲二「ターボ分子ポンプ」真空 49巻8号 pp.466–469(2006)
油拡散ポンプ・クライオポンプ・イオンポンプ
油拡散ポンプは、底の油をヒーターで加熱して蒸気にし、高速で噴き出して気体を排気口へ運びます。短所は油の蒸気が高真空側へ逆流するバックストリームで、単独では使えず油回転ポンプなどの補助ポンプが必要です(アルバック)。クライオポンプは極低温の面で気体を凝縮・吸着してためこみ、スパッタイオンポンプは電場と磁場で気体の分子をイオンにして捕まえるため、機械的な振動や騒音なしに超高真空が得られます(アルバック)。
出典:油拡散真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、Vacuum pump selection guide|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、高真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
真空ポンプの選び方
選ぶ前に決める4つのこと
アルバックの選定ガイドは、まず必要な排気速度を見積もり、必要な到達圧力に合う種類を選ぶ、という順を示しています。引く気体や油の可否を加えて編集部が整理すると、次の4つです。
| 決めること | 見る値 | 選び方の目安 |
|---|---|---|
| どこまで下げるか | 到達圧力(Pa) | 低真空・中真空なら油回転・ドライの1台。高真空(0.1 Pa より低い圧力)まで下げるならターボ分子ポンプ+補助ポンプ |
| どれだけ速く引くか | 排気速度(L/s・L/min・m³/h) | 容器の大きさと、許される排気時間から計算(下の計算例)。1 L/s = 60 L/min = 3.6 m³/h |
| 何を引くか | 水蒸気・溶剤・腐食性ガス・粉じん・水素 | 水蒸気はガスバラストや水蒸気に強い機種。粉じんは前段にトラップ。水素はターボ分子ポンプの排気速度を気体ごとに確認 |
| 油を使ってよいか | クリーン度・保守の手間 | 半導体・分析・食品などはドライ。費用を抑えた一般用途は油回転 |
選定の順はアルバックの選定ガイド、引く気体・油の可否などの項目はこのページの出典をもとに編集部が整理。
出典:Vacuum pump selection guide|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、ガスバラストバルブ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、ドライ真空ポンプ|アネスト岩田、UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
排気時間の計算
排気速度 S が一定で、漏れや気体の放出がないと考えると、容器 V を圧力 P₀ から P まで引く時間は t =(V ÷ S)× ln(P₀ ÷ P)で見積もれます(一般的な真空工学の式)。たとえば 100 L の容器を大気圧から 100 Pa まで引くと、S = 500 L/min なら約 83 秒、S = 100 L/min なら約 415 秒です(編集部の計算)。

出典:排気速度一定の一般的な式(編集部の計算例)をもとに AI(Claude)で作成
実際には、低い圧力ほど、容器の壁から出る気体(アウトガス、とくに水分)で排気が遅くなります。杉本ほか(2013)は、水分子の排気で、ポンプの排気の時定数が1秒未満でも、圧力がキロ秒(1,000秒)のオーダーで指数関数的に下がり、その後ほぼ時間に反比例して下がること、その下がり方は壁に化学吸着した水で決まっていたことを報告しています。速いポンプを選んでも、容器の材料・表面・ベーキングで排気時間が決まることがあります。課題「真空機器・宇宙機器のアウトガスを減らしたい」も参考になります。
配管の太さ(コンダクタンス)で排気速度が落ちる
ポンプと容器の間の配管や弁は気体の流れの抵抗になり、その流れやすさをコンダクタンス Cと呼びます。容器から見た実効排気速度 Se は、1/Se = 1/S + 1/Cで表され、C が S と同じなら Se は S の半分になります(一般的な真空工学の関係)。とくに高真空では、細く長い配管がポンプの性能を大きく損ないます。

出典:一般的な真空工学の関係(編集部の計算例)をもとに AI(Claude)で作成
高真空の排気系:粗引きと本引き
1台で大気圧から高真空まで引けるポンプはないので、高真空用の主ポンプ(ターボ分子ポンプなど)の背圧側に、補助ポンプ(粗引きポンプ)をつなぎます(ウィキペディア「真空ポンプ」)。補助ポンプで容器を先に引き(粗引き)、十分に下がってから主ポンプの側に切り替えます。アルバックの UTM-B の仕様には、気体を 10 sccm 流すときに推奨する補助ポンプの排気速度(UTM70B で 60 L/min 超、UTM300B で 120 L/min 超)が載っています。

出典:ウィキペディア「真空ポンプ」とアルバックの解説(編集部の整理)をもとに AI(Claude)で作成
出典:真空ポンプ|ウィキペディア、UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
油回転ポンプのオイルとガスバラスト
オイルの役目
油回転ポンプの油は、ベアリングの潤滑・冷却と、ベーンとシリンダーのすき間をふさぐシールの役をします(アルバック)。油が減る・汚れると、すき間をふさげず到達圧力が上がり、潤滑が足りずに熱や異音が出ます。油は、ポンプの取扱説明書が指定する真空ポンプ用の油を使います(編集部の整理)。潤滑油全般の性質は技術ページ「潤滑油」で説明しています。
出典:油回転真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
ガスバラスト:水蒸気・溶剤を引くとき
水蒸気や溶剤の蒸気を吸うと、ポンプの中で縮められて液体になり、油に混ざります。これを防ぐのがガスバラストで、縮める工程の直前から空気や乾燥した窒素を少し入れ、蒸気を液にせずに排気弁から出します。アルバックは、凝縮性ガスを吸う前にガスバラストバルブを開いて約20分運転し、ポンプの温度を70℃程度に上げるよう勧めています。温度が低いと効果が小さく、凝縮性ガスを吸わないのに開けたままにすると、油の飛散・動力のロス・到達圧力の上昇を招きます。
出典:ガスバラストバルブ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
オイルの汚れと交換
アルバックのトラブルシューティングでは、圧力が下がらないときの確認として、油が規定の量まで入っているか・汚れていないか・水分を吸っていないかを挙げ、汚れていれば新しい油に交換するとしています。多量の水分を吸ったらすぐに油を交換し、放っておくと性能が落ちるだけでなく、ポンプ内にさびが出て回転不良の原因になるとしています。ガスバラストで浄化しても到達圧力が戻らなければ、油を交換します(アルバック)。
分解整備(オーバーホール)の時期は使い方で大きく違い、アルバックは、日常点検で油の量が減った・油の色が濃くなった・振動が大きくなった・運転音が変わったときに必要としています。
出典:油回転真空ポンプ トラブルシューティング|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、ガスバラストバルブ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
オイルミストと逆流
油回転ポンプは、吸い込む圧力が高いほど排気の量が多く、オイルミスト(油の霧)が多く出ます。高い圧力で吸い続けると、中の油が出ていって潤滑不良を起こし、温度が上がって焼き付き、止まるおそれがあるので、高い圧力での連続運転はしないようアルバックは注意しています。佐藤真空も、大気圧〜133 Pa 付近ではオイルミストが多いとして、オイルミストトラップを勧めています。
また、止めたポンプの油が真空容器の側へ逆流することがあります。佐藤真空は、ポンプを止めるときはポンプ内を大気圧に戻すよう案内しています。アルバックは、逆流したときは容器の側を大気圧にしてポンプを運転し、油がポンプへ戻ったら止めて容器や配管を洗浄し、減った油を補う、としています。
出典:油回転真空ポンプ トラブルシューティング|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、直結型 ラムダシリーズ|佐藤真空
よくあるトラブルと対策
圧力が下がらない
アルバックの油回転真空ポンプのトラブルシューティングから、圧力が下がらないときの確認を抜き出しました(配管の漏れと真空計の異常を除いたもの)。
| 確かめること | 対策(アルバックの案内) |
|---|---|
| 油が規定の量まで入っているか・入れすぎていないか | 規定の量にする |
| 油が汚れていないか | 新しい油に交換する |
| 水分を吸っていないか | 油を交換する。前段にトラップを入れる。ガスバラストバルブを開く |
| 粉じん・異物を吸っていないか | 前段にフィルタトラップ・トラップを入れる |
| 高い吸入圧力で連続運転していないか | 油をこまめに交換し、用途別の油を使う。高い圧力での連続運転はしない |
| 真空槽や配管に漏れがないか | ポンプ単体の性能を確かめ、問題がなければ接続部・溶接部の漏れを直す |
出典:油回転真空ポンプ トラブルシューティング|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
切り分けの基本は、ポンプ単体の到達圧力を先に確かめることです。ポンプが正常なら、原因は容器・配管の漏れか、容器からの気体の放出です。漏れの探し方は課題「真空装置の漏れ・到達圧力不足を解決したい」で説明しています。
異常な音・熱・電流
アルバックは、異音のときは油の量・粉じんや異物の吸い込み・電源電圧(定格の±10%以内)を、ポンプが異常に熱い・電流が高いときは高い吸入圧力での連続運転・まわりの温度・排気側のオイルミストトラップの目詰まり・水分の吸い込みを確かめるとしています。冬に起動しにくいときは、油を暖めて手でプーリーを回してみるよう案内しています。
出典:油回転真空ポンプ トラブルシューティング|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
ターボ分子ポンプを使うときの注意
ターボ分子ポンプは、補助ポンプで十分に下げてから動かします(粗引きと本引き)。数万 rpm で回るロータは大きなエネルギーを持つので、取扱説明書に従って、回転が止まってから大気に戻す・フランジを外すことが基本です(編集部の整理)。水素などの軽い気体を多く引く工程では、窒素の排気速度だけで選ばず、気体ごとの仕様を確かめます(ターボ分子ポンプ)。
出典:UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
企業紹介(真空ポンプの技術)
真空ポンプの選定は、ポンプのメーカーに相談できます。相談するときは、容器の大きさ、ほしい圧力と排気時間、引く気体(水蒸気・溶剤・腐食性ガス・粉じん・水素)、油を使ってよいか、設置場所(冷却水・電源・騒音)、運転のしかた(連続・断続)を整理しておくと話が早く進みます。
| 困りごと | 相談先の例 |
|---|---|
| 油を使わない真空にしたい | ドライポンプのメーカー |
| 高真空・超高真空が要る | ターボ分子ポンプ・クライオポンプのメーカー |
| 水蒸気を多く引く | 水蒸気に強いドライポンプ・ガスバラストのある油回転ポンプのメーカー |
| 安く丈夫な一般用の真空がほしい | 油回転ポンプのメーカー |
ここでは、真空ポンプを作る6社を紹介します。得意な種類が重ならないように選びました。
| 会社 | 油回転 | ドライ | ターボ 分子 | クライオ | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| アルバック低真空〜超高真空の各方式(神奈川県茅ヶ崎市) | ● | ● | ● | ● | ● |
| 樫山工業ドライポンプ(長野県佐久市) | ● | ||||
| 大阪真空機器製作所ターボ分子・ドライ・油回転(大阪市中央区) | ● | ● | ● | ● | |
| アネスト岩田スクロール形ドライ(横浜市港北区) | ● | ||||
| 島津製作所ターボ分子ポンプ(京都市中京区) | ● | ||||
| 佐藤真空油回転ポンプ(埼玉県入間郡三芳町) | ● |
●は、各社の公式サイトで扱いを確認できたものです(空欄は、扱っていないという意味ではありません)。「その他」はダイアフラム形・メカニカルブースタ・油拡散・液封・エジェクタなど。社名を押すと、その会社の紹介へ移ります。
株式会社アルバック|低真空から超高真空まで、方式ごとの真空ポンプ
アルバックとは
神奈川県茅ヶ崎市萩園に本社を置く会社です(同社の会社概要)。真空ポンプの製品サイト(ULVAC SHOWCASE)で、油回転・ドライ(スクリュー・多段ルーツ・スクロール・ダイアフラム)・ターボ分子・クライオ・油拡散・スパッタイオンなどのポンプと、その原理やトラブルシューティングの解説を公開しています。

出典:アルバックの製品ページをもとに AI(Claude)で作成
アルバックの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ターボ分子ポンプ | UTM-MS は磁気軸受を使い、300〜4,000 L/s の機種をそろえる。UTM-B は UTM300B で到達圧力 1×10⁻⁶ Pa(ベーキング前) |
| クライオポンプ | CRYO-U シリーズ。極低温の面で気体を凝縮・吸着し、油による汚染のないクリーンな真空、と同社は説明 |
| ドライ・油回転 | スクリュー形(LS・MS)、多段ルーツ形(GR・CR)、スクロール形、ダイアフラム形、油回転(GL・GCD) |
アルバックが解決できる課題
- 高真空の装置に、ターボ分子ポンプと補助ポンプを組み合わせたい
- 油を使わないクリーンな真空にしたい
- ポンプのトラブルの原因を知りたい
出典:会社概要|アルバック、低・中真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、高真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)、UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
樫山工業株式会社|省エネのスクリュー形と、小型の空冷ドライポンプ
樫山工業とは
長野県佐久市根々井に本社を置く会社です(同社の会社概要)。ドライ真空ポンプを作っていて、縦型スクリューの SDE シリーズ、MU-XE シリーズ、小型空冷の NeoDry G などをそろえています。

出典:樫山工業の NeoDry G のページをもとに AI(Claude)で作成
樫山工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| NeoDry G(小型空冷) | 最大排気速度 110(7G)〜600 L/min(36G)。到達圧力は 5.0・1.0・0.7 Pa の機種がある(ガスバラスト機構を使わないとき) |
| MU-XE シリーズ | 最大排気速度 1,660(MU100XE)〜20,000 L/min(MU1200XE)(同社の表の条件つきの値) |
| SDE シリーズ | 縦型スクリューを採用し、独自のスクリュー形状で省エネを実現した、と同社は説明 |
樫山工業が解決できる課題
- 油回転ポンプをドライポンプに置き換えたい
- 小型で空冷のドライポンプがほしい
- 大きな排気速度のドライポンプで電力を減らしたい
出典:会社概要|樫山工業、製品ラインナップ|樫山工業、NeoDry G|樫山工業、MU-XE シリーズ|樫山工業
株式会社大阪真空機器製作所|ターボ分子ポンプからドライ・油回転・油拡散まで
大阪真空機器製作所とは
大阪市中央区今橋に本社を置く会社です(同社の会社概要)。磁気軸受形・ボールベアリング形のターボ分子ポンプ、ドライポンプ、メカニカルブースタ、油回転ポンプ、液封ポンプ、油拡散ポンプ、エジェクタを製品として挙げています。

出典:大阪真空機器製作所の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
大阪真空機器製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 磁気軸受形ターボ分子ポンプ TGkine-B | 標準・腐食性ガス対応で 1,700〜4,200 L/s。コントローラと電源を一体にし、ケーブルとコントローララックを不要にした |
| ドライポンプ | DSP(スクリュー形)はブースタポンプを搭載して到達圧力 0.5 Pa。FR(多段ルーツ形・空冷)は排気速度 800 L/min(解放運転時)・水蒸気処理量 500 g/hr。ER は到達時の消費電力 400 W・設置面積 0.11 m² |
| 油回転ポンプ | P・VSV・VRD の各シリーズ(VRD は直結2段) |
大阪真空機器製作所が解決できる課題
- 腐食性ガスを使う装置にターボ分子ポンプを付けたい
- 水蒸気を引くドライポンプがほしい
- ポンプの消費電力と設置面積を減らしたい
出典:会社概要|大阪真空機器製作所、製品情報|大阪真空機器製作所、磁気軸受形ターボ分子ポンプ|大阪真空機器製作所、ドライ真空ポンプ|大阪真空機器製作所
アネスト岩田株式会社|低真空から中真空までのスクロール形ドライ真空ポンプ
アネスト岩田とは
横浜市港北区新吉田町に本社を置く会社です(同社の会社概要)。真空機器として、スクロール形のドライ真空ポンプを作っています。

出典:アネスト岩田のドライ真空ポンプのページをもとに AI(Claude)で作成
アネスト岩田の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ISP シリーズ(中真空) | ISP-250E は排気速度 250/300 L/min(50/60 Hz)・到達圧力 1.6 Pa 以下。オイル不要で低振動・低騒音 |
| DVSL シリーズ(中〜低真空) | DVSL-500E は 433/516 L/min・30 Pa 以下。水蒸気の排気に強い |
| GVS シリーズ(低真空) | GVS-500E は 432/512 L/min・500 Pa 以下。真空成形・吸着搬送など |
アネスト岩田が解決できる課題
- 分析装置などに油のない真空がほしい
- 真空乾燥・脱気で水蒸気を引きたい
- 吸着搬送・真空成形の真空源を選びたい
出典:会社概要|アネスト岩田、ドライ真空ポンプ|アネスト岩田、真空ポンプの原理と技術(基礎)|アネスト岩田
株式会社島津製作所|電源一体形・磁気軸受のターボ分子ポンプ
島津製作所とは
京都市中京区西ノ京桑原町に本社を置く会社です(同社の会社概要)。産業機器として、ターボ分子ポンプを作っています。

出典:島津製作所のターボ分子ポンプのページをもとに AI(Claude)で作成
島津製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 電源一体形 V・X シリーズ | V は電源一体の磁気軸受形で、ケーブルやラックが要らない。X は V より小形で、温調機能を加え、IP54 に対応 |
| TMP-B シリーズ | 磁気軸受とセラミック軸受で低振動・長寿命。高背圧・高い水素圧縮比で、全方位に取り付けられる、と同社は説明 |
| 電源別置き形 | TMP-203〜TMP-5305 の16機種。ネットワーク接続に対応 |
島津製作所が解決できる課題
- 装置にターボ分子ポンプを組み込みたい(配線を減らしたい)
- 水素を引く工程に使いたい
- 振動を嫌う装置に付けたい
佐藤真空株式会社|1932年からのベルト駆動・直結の油回転ポンプ
佐藤真空とは
埼玉県入間郡三芳町藤久保に本社・工場を置く会社です(同社の会社概要)。1932年に東京都品川区で佐藤製作所として設立し、1983年に今の場所へ新工場を建てて移りました。油回転真空ポンプを作っています。

出典:佐藤真空の製品ページをもとに AI(Claude)で作成
佐藤真空の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ベルト駆動形 SW/ST シリーズ | 創業のころから作る主力。排気速度 20〜1,500 L/min の9機種。径の違うプーリーでポンプの回転数を 600 min⁻¹ にし、直結形より油の量が多く丈夫で長持ち、と同社は説明 |
| 直結形 ラムダシリーズ | 2段の回転翼形。高回転のため、ベルト駆動形より小型で大きな排気速度が得られる |
| 使い方の案内 | 大気圧〜133 Pa 付近はオイルミストが多いのでオイルミストトラップを勧め、腐食性・可燃性ガス、粉体、水蒸気、薬品・溶剤などを引くときは事前の相談を求めている |
佐藤真空が解決できる課題
- 丈夫で長く使える油回転ポンプがほしい
- 本体だけを交換・修理しながら使いたい
- オイルミストへの対策を相談したい
出典:会社概要|佐藤真空、ベルト駆動型 SW/ST シリーズ|佐藤真空、直結型 ラムダシリーズ|佐藤真空
よくある質問
- 真空ポンプと普通のポンプの違いは?
- 普通のポンプは液を送る機械、真空ポンプは容器から気体を吸い出して大気圧より低い圧力をつくる機械です(真空ポンプとは)。液のポンプは技術ページ「ポンプ」で説明しています。
- ロータリーポンプとは何ですか?
- 油回転ポンプのことで、偏心したロータと2枚のベーンで気体を閉じ込めて縮めます。安価・小型で、10 Pa 以下が簡単に得られます(油回転ポンプの仕組み)。
- ドライポンプと油回転ポンプはどちらがよいですか?
- 油を嫌う装置(半導体・分析・食品など)はドライ、費用を抑えた一般用途は油回転が選ばれます。水蒸気を多く引くなら、水蒸気に強いドライかガスバラストを使います(選ぶ前に決める4つのこと)。
- ターボ分子ポンプだけで大気圧から引けますか?
- 引けません。補助ポンプで粗引きしてから動かします(粗引きと本引き)。
- 到達圧力と排気速度の違いは?
- 到達圧力は下げられる最も低い圧力、排気速度は吸い込む気体の体積流量です。速く引けても低い圧力まで下がるとは限りません(真空ポンプとは)。
- 真空ポンプのオイルはいつ交換しますか?
- 汚れている・水分を吸った・到達圧力が戻らないときに交換します。多量の水分を吸ったらすぐ交換します(オイルの汚れと交換)。
- ガスバラストとは?
- 水蒸気や溶剤の蒸気がポンプの中で液になって油に混ざらないよう、縮める直前に空気や窒素を入れる機構です(ガスバラスト)。
- 排気にかかる時間はどう見積もりますか?
- t =(V ÷ S)× ln(P₀ ÷ P)で目安が出ます。100 L を 500 L/min で 100 Pa まで引くと約 83 秒です。実際は配管と気体の放出で長くなります(排気時間の計算)。
- Torr と Pa の換算は?
- 1 Torr ≒ 133 Pa、760 Torr = 1 atm = 101,325 Pa です(圧力の単位)。
回答は、このページの出典をもとに編集部がまとめたものです。
関連する技術・ページ
出典・確認日
- 真空ポンプ|コトバンク(デジタル大辞泉・日本大百科全書)
- 真空ポンプ|ウィキペディア
- 真空|ウィキペディア(ISO 3529-1 による区分の表)
- 吉田肇「JIS Z 8126-1:2021 真空技術―用語―第1部:一般用語の改正」表面と真空 65巻8号 pp.367–371(2022)
- 油回転真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 真空ポンプの原理と技術(基礎)|アネスト岩田
- NeoDry G|樫山工業
- UTM-B シリーズ(仕様表)|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 多段ルーツ型ドライ真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 回転翼型ドライ真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 油拡散真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- Vacuum pump selection guide|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- Turbo molecular pump|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 尾高憲二「ターボ分子ポンプ」真空 49巻8号 pp.466–469(2006)
- 高真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- ガスバラストバルブ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- ドライ真空ポンプ|アネスト岩田
- 杉本敏樹ほか「単一の表面吸着サイトを持つ真空容器内のガスダイナミクス〜キロ秒オーダーの指数関数的排気曲線の正体〜」Journal of the Vacuum Society of Japan 56巻8号 pp.322–329(2013)
- 油回転真空ポンプ トラブルシューティング|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 直結型 ラムダシリーズ|佐藤真空
- 会社概要|アルバック
- 低・中真空ポンプ|ULVAC SHOWCASE(アルバック)
- 会社概要|樫山工業
- 製品ラインナップ|樫山工業
- MU-XE シリーズ|樫山工業
- 会社概要|大阪真空機器製作所
- 製品情報|大阪真空機器製作所
- 磁気軸受形ターボ分子ポンプ|大阪真空機器製作所
- ドライ真空ポンプ|大阪真空機器製作所
- 会社概要|アネスト岩田
- 会社概要|島津製作所
- ターボ分子ポンプ|島津製作所
- 会社概要|佐藤真空
- ベルト駆動型 SW/ST シリーズ|佐藤真空
※製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。本ページでは数値と事実だけを要約し、各社の文章・図は転載していません。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。図はAI(Claude)で作成した概念図です。
情報の確認日:2026年10月31日 本ページの内容は一般的な情報です。真空ポンプの選定・運転・保守は、メーカーの取扱説明書と最新の資料に従ってください。各社の製品・サービスは、その会社の公開情報をもとに紹介しています。

