過冷却とは(しくみ・冷却曲線・雲の過冷却水滴・冷凍サイクルのサブクール)

透明な水のペットボトルと、上から氷が広がり始めたペットボトル、−5.0℃を示す温度計のイメージ(AI で生成)

冷凍庫で静かに冷やしたペットボトルの水が、0℃より冷たいのに凍っていない。ふたを開けたり軽くたたいたりすると、白い氷がみるみる広がる。これが過冷却(かれいきゃく)です。このページでは、過冷却とは何か、なぜ起きるのか(氷の「核」)、冷却曲線での見え方、雲の中の過冷却水滴と航空機の着氷、ものづくりでの使い方(氷蓄熱・冷凍サイクルのサブクール・金属の凝固)を、図で順に解説します。

目次

過冷却とは:ひとことで言うと

過冷却とは

過冷却は、液体を凝固点より低い温度まで冷やしても、固まらずに液体のままでいる状態です。精選版 日本国語大辞典は、凝固点以下に冷やしても液体のままの状態と説明し、振動を与えたり小さな固体を入れたりすると、ただちに凝固が始まると説明しています。

「過融解(かゆうかい)」「過冷(かれい)」ともいいます。英語では supercooling です。

過冷却の冷却曲線の図:水が0℃を過ぎても凍らずに下がり、凍り始めると潜熱で0℃に戻って一定になり、全部凍ると氷が冷える
図1 冷却曲線で見る過冷却(模式図)
出典:コトバンクをもとに AI(Claude)で作成

過冷却の液体は準安定状態と呼ばれる、こわれやすい状態です(ブリタニカ国際大百科事典、化学辞典。コトバンク)。ブリタニカ国際大百科事典は、衝撃を与えたり固体のかけらを入れたりすると急に凝固して、温度が凝固点まで上がるとしています。図1は、この流れを温度と時間のグラフ(冷却曲線)にした模式図です。凍り始めてから温度が凝固点に戻り、凍り終わるまで一定になるのは、液体が固体になるときに熱(凝固熱・潜熱)を出すためです(この説明は編集部の補足)。

日本冷凍空調学会の用語解説は、水が0℃以下に冷やされても安定な結晶が現れず、不安定な液体のまま保たれる状態を過冷却水と呼んでいます。

出典:過冷却|コトバンク、最近気になる用語48「過冷却水」|日本冷凍空調学会

過冷却が起きるしくみ:氷の「核」ができないと凍り始めない

過冷却のしくみの図:氷の核がないと0℃以下でも液体のまま。衝撃や不純物、氷のかけらで核ができると結晶が一気に広がる
図2 なぜ過冷却になるのか:凍り始めるには氷の「核」が要る
出典:日本冷凍空調学会、コトバンクをもとに AI(Claude)で作成

水が凍り始めるには、水の分子の集まりが偶然、氷の形に並んだ小さなかたまり(核)ができる必要があります。日本冷凍空調学会によると、この「核生成」が起こると凍結が始まり、温度が低いほど、氷の形の集まりは大きく、できる頻度も増えます。

均一核生成と不均一核生成

  • 均一核生成(自発核生成):水だけで核ができること。これによる自発凍結温度は−40℃とされ、それより低いと水だけで確実に凍る(日本冷凍空調学会)
  • 不均一核生成:−40℃より高い温度では、水以外の粒子や容器の壁の助けを借りて核ができる(日本冷凍空調学会)

核の助けになるものを氷晶核(凍結核)といいます。日本冷凍空調学会によると、自然界の土や鉱物の粒子は−5℃以下で働き、人工の核ではヨウ化銀が−4℃、植物の霜害から見つかった氷核活性細菌は−1℃程度で働きます。そして最も有効な氷晶核は氷そのもので、氷があれば水は過冷却せず、必ず0℃で凍り始めます。

直径数μm程度の非常に純粋な水滴は、−40℃近くまで過冷却できたことが実験で確かめられています(日本冷凍空調学会)。逆に、ほこりや傷のある容器、ゆすりやすい置き方では核ができやすく、過冷却になりにくくなります(この読み取りは編集部の補足)。

出典:最近気になる用語48「過冷却水」|日本冷凍空調学会

身近な過冷却:冷やした水と、雲の中の水滴

身近な過冷却の図:冷凍庫で静かに冷やした水は0℃以下でも液体で、ふると凍り出す。雲の中の過冷却水滴は航空機の翼にぶつかって凍りつく
図3 身近な過冷却:冷やした水と、雲の中の過冷却水滴
出典:コトバンク、日本気象協会 tenki.jpをもとに AI(Claude)で作成

冷凍庫で冷やしたペットボトルの水

きれいな水を容器に入れて冷凍庫で静かに冷やすと、0℃を下回っても凍らないことがあります。振動や小さな固体をきっかけに、ただちに凝固が始まります(精選版 日本国語大辞典。コトバンク)。凍り始めると凝固点の0℃まで温度が上がる(ブリタニカ国際大百科事典)ので、全部が一度に固い氷になるのではなく、シャーベットのような氷と水がまじった状態になります(この読み取りは編集部の補足)。

雲の中の過冷却水滴と航空機の着氷

空の上でも過冷却はふつうに起きています。日本気象協会 tenki.jp の解説によると、0℃以下なのに凍っていない水滴を過冷却水滴と呼び、自然界では約−30〜−40℃まで過冷却状態を保てるとされます。雲の中は、0〜−10℃では主に過冷却水滴だけ、−10〜−40℃では過冷却水滴と氷の粒(氷晶)がまざり、−40℃以下ではすべてが氷晶になります。

過冷却水滴は非常に不安定で、高速で飛ぶ飛行機に当たると、衝撃で機体の表面に一瞬で凍りつきます(着氷)。同じ解説は、翼に薄くついた霜や氷でも、揚力が最大30%減り、抗力が最大40%増えることが風洞実験や飛行試験で確かめられているとしています。

出典:過冷却|コトバンク、稲田理人「夏に着氷?危険な着氷と飛行機の安全対策について解説」(2026年9月5日)|日本気象協会 tenki.jp

ものづくりと過冷却:使い道と、言葉の使い方

氷蓄熱:過冷却水をつくって、ねらって凍らせる

過冷却は、空調の氷蓄熱、スキー場の造雪、溶液の凍結濃縮などに使われています(日本冷凍空調学会)。氷蓄熱では、熱交換器で約−2℃の過冷却水を安定してつくり、衝撃などで過冷却を解除して、微細な氷のスラリー(水と細かい氷がまざったもの)にして蓄えます。

このとき、たまった氷のかけらが熱交換器に入ると、そこで核になって熱交換器の中で凍ってしまいます。そのため、フィルターで氷を取り除くか、約+5℃に温めてから戻す方法がとられています(日本冷凍空調学会)。「氷そのものが最も有効な核」という性質が、そのまま設計の課題になっているわけです。

出典:最近気になる用語48「過冷却水」|日本冷凍空調学会

冷凍サイクルの「過冷却(サブクール)」

冷凍サイクルの過冷却(サブクール)の図:凝縮器の出口で液冷媒を凝縮温度より低く冷やす。過冷却度は凝縮温度と出口の液の温度の差
図4 冷凍サイクルの過冷却(サブクール)
出典:特許 JP6991866B2(NTTファシリティーズ)をもとに AI(Claude)で作成

冷凍機やエアコンでは、凝縮器で液になった冷媒を、凝縮温度(その圧力で液になる温度)よりさらに低く冷やすことも過冷却(サブクール)と呼びます。その差を過冷却度といい、たとえば凝縮温度40℃・出口の液35℃なら過冷却度は5℃(5K)です(この定義と計算は編集部の補足。数値は説明のための例)。こちらは「凍るはずなのに凍らない」不安定な状態ではなく、液として安定な状態なので、水の過冷却とは言葉の使い方が違います。

NTTファシリティーズの特許(JP6991866B2)は、膨張弁に流れ込む冷媒が気液二相になり、気体の冷媒(フラッシュガス)がまじっていると、膨張弁で十分に減圧できなくなり、蒸発器の冷凍能力(吸熱能力)が下がるとしています。そして冷媒を過冷却すると、蒸発器に入る冷媒の乾き度が小さくなり、蒸発器の入口と出口の比エンタルピ差を大きくでき、大きな冷凍能力が得られると説明しています。冷凍サイクルのしくみは技術の基礎知識「ヒートポンプ」で解説しています。

出典:Google Patents「蒸気圧縮式冷凍機」|特許 JP6991866B2(NTTファシリティーズ)

金属の凝固:核の数が結晶粒の大きさを決める

金属の凝固の模式図:核が少ないと結晶粒が粗く、接種で核を足すと結晶粒が細かくなる
図5 金属が固まるとき:核の数と結晶粒の大きさ(模式図)
出典:コトバンク、KAKENをもとに AI(Claude)で作成

金属が溶けた状態から固まるときも、核ができてそこから結晶が育ちます。世界大百科事典(コトバンク「過冷却」の【金属組織】の項)は、液体の中だけで核ができる均一核発生には大きな過冷の程度が必要で、通常の凝固ではまれだとしています。鋳造では、核になる物(微細化剤)を少し加える「接種(せっしゅ)」で核を増やし、結晶粒を細かくする方法がとられます(具体例は次の研究)。

久留米工業高等専門学校の研究(KAKEN、2021年度)では、Al-2%Cu 合金にふつうの微細化剤の Al-Ti 合金を少し接種すると、Ti の量が増えるほど結晶粒が細かくなりました。さらに鋳型に振動を加えると、無振動・無接種で6.4mmだった粒径が、加振力10.7N・Ti 接種量0.025%で0.11mmまで細かくなりました。なお接種すると、過冷度はわずかに小さくなったと報告されています。金属の組織は技術の基礎知識「金属組織」で解説しています。

出典:過冷却|コトバンク、山本郁「鋳型振動法を用いた鋳造材料の結晶粒微細化と結晶粒微細化機構の解明」2021年度実績報告書(久留米工業高等専門学校)|KAKEN

似ている言葉:過熱・凝固点降下との違い

過冷却・過熱・凝固点降下の違いの図
図6 似ている言葉:過冷却・過熱・凝固点降下
出典:コトバンクをもとに AI(Claude)で作成
言葉どんな状態か安定か
過冷却凝固点より低い温度でも、液体のまま不安定(準安定)。振動・固体のかけらで急に凝固する
過熱沸点より高い温度でも、沸騰しない不安定。衝撃や異物で突沸(急な沸騰)することがある
凝固点降下物を溶かすと、凝固点そのものが下がる(海水が0℃で凍らない)安定。過冷却とは別の現象

表はコトバンクの「過冷却」「過熱」「凝固点降下」の各辞書の説明をもとに編集部がまとめたものです。世界大百科事典(コトバンク「過冷却」の【冷却】の項)は、転移温度より低温になっても転移が起こらない現象を「過熱の逆」と説明しています。凝固点降下の例として、世界大百科事典は海水が0℃になっても凍結しないことを、化学辞典 第2版は路面の凍結防止を挙げています。融点・凝固点そのものは技術の基礎知識「融点」で解説しています。

出典:過冷却|コトバンク、過熱|コトバンク、凝固点降下|コトバンク

出典

  1. 過冷却|コトバンク
  2. 最近気になる用語48「過冷却水」|日本冷凍空調学会
  3. 稲田理人「夏に着氷?危険な着氷と飛行機の安全対策について解説」(2026年9月5日)|日本気象協会 tenki.jp
  4. Google Patents「蒸気圧縮式冷凍機」|特許 JP6991866B2(NTTファシリティーズ)
  5. 山本郁「鋳型振動法を用いた鋳造材料の結晶粒微細化と結晶粒微細化機構の解明」2021年度実績報告書(久留米工業高等専門学校)|KAKEN
  6. 過熱|コトバンク
  7. 凝固点降下|コトバンク

※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月30日

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次