撥水・防汚・防曇を持たせたい

ガラス板の左側で水滴が玉になり、右側では水が膜になって広がるイメージ

カバーやパネルに水滴が残って、乾いた跡が目立つ。タッチパネルに指紋が付いて落ちにくい。カメラやセンサーのカバーが曇って、映像がかすむ。屋外の設備が雨筋汚れで黒ずみ、清掃に手間がかかる。取引先から、フッ素(PFAS)を使わない材料に切り替えるよう求められた。こうした悩みの多くは、表面が水や油とどうなじむか(ぬれ性)を、目的に合わせて作れていないことが原因です。

水をはじかせたいのか、油もはじかせたいのか、反対に水になじませて曇りや汚れを防ぎたいのかで、使う技術はまったく違います。まずは次のマトリクスで、自分の課題に近いものと、使える技術を確かめてください。

目次

課題と解決技術のマトリクス

課題(症状)フッ素系の撥水・撥油コーティング非フッ素の撥水(シリコーン系など)親水・吸水による防曇光触媒(酸化チタン)微細構造・表面改質
A水滴が残る・水はけが悪い(水をはじかせたい)◎○○
B油汚れ・指紋が付きやすく、落ちにくい◎△△
Cレンズ・カバー・窓が曇る◎○△
D屋外で雨筋汚れ・くすみが付く(掃除を減らしたい)○○◎△
Eフッ素(PFAS)を使わずに撥水・防汚したい◎◎◎○

◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効

※記号は一般的な傾向に基づく目安です。実際に選べる方法は、基材(ガラス・金属・樹脂・布など)、使う場所(屋内か屋外か、光が当たるか、手や布でこするか)、求める寿命、透明性や膜厚の制約、コストによって異なります。

記号の理由と出典(17件)

マトリクスの記号ごとに、理由と出典をまとめました。出典が「編集部の解説」のものは、この記事の本文の説明をもとにした編集部の評価です。症状の記号を押すと、その症状の説明へ移ります。

症状技術記号理由出典
Aフッ素系の撥水・撥油コーティング◎水も油もはじく表面で水滴が玉になりやすく、水をはじかせたい用途の第一候補ダイキン工業、フロロテクノロジー
A非フッ素の撥水(シリコーン系など)○シリコーン系でも撥水角112°が得られ、水だけをはじけばよい用途なら代わりになるため有効オーエフテクノ
A微細構造・表面改質○細かい凹凸で接触角170°以上の超撥水にでき有効。ただしこすれに弱い東洋アルミニウム
Bフッ素系の撥水・撥油コーティング◎フッ素を含む官能基は臨界表面張力が著しく低く、油や指紋までもはじけるため第一候補日本接着学会誌
B非フッ素の撥水(シリコーン系など)△非フッ素の撥水は撥油性が弱く、油汚れへの効果は限られる。実際の油で確かめる条件つきテキスタイルネット
B微細構造・表面改質△凹凸構造と撥油性の材料を組み合わせれば油もはじく例があるが、条件つきの方法編集部の解説
C親水・吸水による防曇◎水滴を均一な水膜に広げて光の散乱を抑えるため、曇りの第一候補協和界面科学
C光触媒(酸化チタン)○紫外線で接触角が0度近くまで下がり水が膜になるため有効。光が当たる条件が必要日本曹達
C微細構造・表面改質△プラズマ処理などで表面を親水化できるが、効果が続くかは条件しだいで△編集部の解説
Dフッ素系の撥水・撥油コーティング○汚れを付きにくく拭き取りやすくするため有効。ただし雨で流す働きはない編集部の解説
D親水・吸水による防曇○親水性のコートで汚れを水で落としやすくでき有効編集部の解説
D光触媒(酸化チタン)◎親水化した表面で水が膜になり、汚れを浮かせて流し去るため第一候補日本曹達
D微細構造・表面改質△凹凸の超撥水は、こすれると凹凸がはがれて撥水性が落ちるため、条件つきで有効物質・材料研究機構(NIMS)
E非フッ素の撥水(シリコーン系など)◎シリコーン主成分でPFASを使わないコートがあり、PFASを避けたい場合の第一候補オーエフテクノ
E親水・吸水による防曇◎水をはじくのではなく水になじませて汚れを落としやすくする別の方法で、PFASを使わない編集部の解説
E光触媒(酸化チタン)◎無機の酸化チタンでセルフクリーニングの機能を付けられ、フッ素に頼らない編集部の解説
E微細構造・表面改質○表面の凹凸やプラズマ処理で材料に頼らず性質を変えられるため有効編集部の解説

課題の診断と解決策

A

水滴が残る・水はけが悪い(水をはじかせたい)

カバーやパネルに水滴が残り、乾いた跡が白く残る。部品に水が溜まって腐食や誤作動の原因になる。水や液体を玉にして、すぐ落としたい。

透明な樹脂のカバーに水滴がたくさん付いたまま残り、乾いた跡が白い輪になって残っているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
水が玉になるかどうかは、表面の性質(表面エネルギー)で決まり、接触角で表します。ただし、接触角が大きくても、水滴が表面に引っかかって落ちないことがあります。水滴の落ちやすさは、表面を傾けたときに水滴が滑り始める角度(転落角・滑落角)で見ます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

超撥水の凹凸構造は、こすったり引っかいたりすると壊れやすく、撥水性が落ちます。手や布で触れる面では、耐摩耗性のデータを必ず確かめます。接触角の値だけで選ばず、転落角と、使ったあとの値の変化も比べます。

B

油汚れ・指紋が付きやすく、落ちにくい

タッチパネルやカバーガラスに指紋が目立つ。油やインクが付いて落ちにくい。機械の油が部品に広がって困る。

タッチパネルのガラスに油っぽい指紋が付き、こぼれた油が玉にならずに薄く広がっているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
油は水よりも表面張力が小さいため、水をはじく表面でも油はなじんで広がります。油をはじくには、表面エネルギーを油の表面張力よりさらに下げる必要があり、主にフッ素系の材料が使われます。
解決に使える技術
選ぶときの注意

指紋付着低減の膜は、拭き取りやこすれで少しずつ性能が落ちます。性能の評価は、静止した接触角だけでなく、油(ヘキサデカンなど)の滑落角や後退接触角と、摩擦試験のあとの変化で比べます。

C

レンズ・カバー・窓が曇る

カメラやセンサーのカバーの内側が結露で曇る。ゴーグルや保護メガネが曇る。冷蔵ショーケースや浴室の鏡が曇って見えない。

カメラを入れたケースの断面で、前面のカバーの内側に細かい水滴が付いて曇り、光が散乱しているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
曇りは、表面に細かい水滴がたくさん付き、光が散乱するために起きます。水を膜のように広げる(親水)か、水を膜の中に吸い込む(吸水)と、水滴ができず、光がまっすぐ通るので曇りません。
解決に使える技術
選ぶときの注意

吸水タイプは、吸える水の量に上限があり、結露が続くと飽和します。親水タイプは、表面の汚れで親水性が落ちることがあります。どちらも、こすると傷みやすいものが多いため、人の手が触れる面か、密閉された内側かで選びます。

D

屋外で雨筋汚れ・くすみが付く(掃除を減らしたい)

外壁、看板、テント、道路設備が、雨筋汚れや排気ガスの汚れで黒ずむ。清掃の手間とコストを減らしたい。

建物の外壁で、窓の下枠の端から雨水といっしょに流れた汚れが黒い筋になって残っているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
日本曹達の解説によると、普通の材料の表面では、水は表面張力で水滴になり、水分が蒸発すると付着した汚れがそのまま残ります。光触媒で親水化した表面では、水が均一に広がって膜になり、汚れを浮かせて流し去ります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

光触媒は、紫外線が当たることで効果が出ます。日の当たらない面では、効果が出にくくなります。また、光触媒は有機物を分解するため、樹脂などの有機物の基材に直接塗ると、基材を傷めることがあります。保護層のある製品を選びます。

E

フッ素(PFAS)を使わずに撥水・防汚したい

取引先から、PFASを含まない材料への切り替えを求められた。今のフッ素系コートの代わりになるものを探している。

撥水加工した布の上で、水は玉になってはじかれ、油はしみ込んで広がっているイメージ
イメージ(AI[ChatGPT]で生成)
起きている現象
PFOS・PFOA・PFHxSは、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の規制対象になり、日本でも化審法で製造・輸入が原則禁止されています。欧州では、PFASを幅広く制限する提案も出されています。一方、撥油性はフッ素系の材料に頼る部分が大きく、非フッ素に切り替えると、油汚れへの効果が落ちることがあります。
解決に使える技術
選ぶときの注意

「撥水だけ」でよいのか、「撥油・防汚」まで必要なのかで、切り替えの難しさが大きく変わります。今の製品が、実際にどの液体をはじく必要があるのかを確かめてから、代わりの技術を比べます。

なぜ、水や油をはじいたり、曇ったりするのか

はじくか、なじむか:接触角と転落角

表面が水をはじくか、なじむかは、表面に置いた水滴と表面がなす角度(接触角)で表します。アイアール技術者教育研究所の解説では、接触角が90°未満を親水性、90°を超えると撥水性、150°以上を超撥水性、5°以下を超親水性としています。

接触角で見る超親水・親水・撥水・超撥水の水滴の形の違い
接触角で見る、親水と撥水の違い
AI(Claude)で作成

ただし、接触角が大きいだけでは、水滴が落ちやすいとは限りません。協和界面科学の解説によると、滑落角(転落角)は、液滴を載せた表面を傾けたときに液滴が滑り始める角度で、接触角が大きいほど液体が付着しにくいという関係は必ずしも成り立たないため、実用の評価では滑落角がより重要になります。水はけや防汚性を比べるときは、接触角と滑落角の両方を見ます。

油や指紋をはじくには、表面エネルギーをさらに下げる

薄いコーティングを付けたガラスの断面で、水滴も油滴も広がらずに玉になっているイメージ
油もはじく表面:水も油も玉になるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

液体が玉になるのは、液体の表面張力に比べて、表面の表面エネルギーが小さいときです。水は表面張力が大きいため、はじける材料が多くありますが、油やアルコールは表面張力が小さいため、はじくのは難しくなります。フロロテクノロジーの技術資料では、表面張力の目安として、水72.8、アセトン23.3、シリコーンオイル16〜22、PTFE(フッ素樹脂)18.5、シリコーン24、撥水撥油剤12〜15(単位はdyn/cm=mN/m)を示しています。

日本接着学会誌の解説によると、フッ素を含む官能基、特にCF3基は、ほかの官能基より臨界表面張力が著しく低く、CF3基を含むフッ素樹脂では約6mN/mです。油や指紋まではじく表面に、フッ素系の材料が使われてきたのはこのためです。ダイキン工業は、同社の防汚コーティングの接触角の例として、水に対して116°、油に対して68°を示しています。

超撥水は、細かい凹凸と空気でつくる

細かい凹凸のある表面の断面で、水滴が凸の頂部だけに載り、下の凹みに空気が残っているイメージ
超撥水:細かい凹凸の頂部に水滴が載るイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

平らな表面にフッ素系の防汚コートを付けても、水の接触角は110〜116°程度です(ダイキン工業、フロロテクノロジーの例)。150°を超える超撥水は、表面に細かい凹凸を作ることで実現します。物質・材料研究機構(NIMS)の解説によると、ハスの葉の表面は非常に細かい凹凸になっていて、その頂部に水滴が接することで強い撥水性が生まれます。日本繊維機械学会誌の解説では、こうした状態(カッシー-バクスターの表面)では、微細な凹部に空気が閉じ込められ、水滴の界面は凹部の空気との界面と凸部の固体との界面からなると説明しています。

超撥水の凹凸の表面で、こすった部分の凹凸がはがれて平らになり、水滴が広がってしまうイメージ
超撥水の弱点:こすると凹凸がはがれて撥水性がなくなるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

一方で、NIMSは、ハスの葉をまねた人工の超撥水材料には、こすったり引っかいたりするだけで凹凸がはがれて表面が平らになり、撥水性がなくなるという弱点があると説明しています。実用例には、東洋アルミニウムがヨーグルト容器のふた材(内側)に使っている超撥水の包装材があります。

曇りは、細かい水滴による光の散乱

協和界面科学の解説によると、曇りは、表面に付いた水滴によって光が散乱して起こります。対策には、撥水性の表面で水滴を付きにくく、落ちやすくする方法と、親水性の表面で水滴を均一な水膜に広げて光の散乱を抑える方法があります。このほか、表面の層に水分を吸い込ませて、水滴にしない吸水タイプもあります。

細かい水滴で光が散乱して曇る表面と、水膜で曇らない親水性の表面の比較
曇る表面と曇らない表面の違い
AI(Claude)で作成

PFAS規制で、フッ素系の使い方が問われている

環境省の解説によると、PFAS(有機フッ素化合物)のうち、PFOSは2009年、PFOAは2019年、PFHxSは2022年に、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の規制対象に追加されました。日本では化審法の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止されています(PFOSは2010年、PFOAは2021年)。欧州では、2023年2月に、約1万物質を対象とするPFASの規制提案が欧州化学品庁(ECHA)に提出されています。

繊維の撥水加工では、フッ素を使わない撥水剤(C0)への切り替えが進んでいます。ただし、非フッ素の撥水加工には撥油性がないため、油汚れへの防汚効果は期待できないと説明されています。撥水・防汚の材料を選ぶときは、今の規制に加えて、取引先の方針と、将来の規制の動きも確かめる必要があります。

出典:3分でわかる 濡れ性とは?撥水性/親水性の基礎知識|アイアール技術者教育研究所、滑落角とは|協和界面科学、フッ素系コーティング剤による防汚技術|指紋付着防止と耐久性評価|フロロテクノロジー、フッ素系表面改質剤によるポリマー表面改質|日本接着学会誌、撥水・撥油性|ダイキン工業、コラム「超撥水材料」|物質・材料研究機構、濡れの理論|日本繊維機械学会誌、防曇とは|協和界面科学、PFASに関するよくある質問|環境省、PFASに関する今後の対応の方向性|環境省、非フッ素(C0)撥水加工の生地|テキスタイルネット

解決技術の詳細

撥水・防汚・防曇の技術は、大きく分けて、①フッ素系の撥水・撥油コーティング、②非フッ素の撥水、③親水・吸水による防曇、④光触媒、⑤微細構造・表面改質、の5つです。①と②は水や油を「はじく」技術、③と④は水に「なじませる」技術で、⑤は、表面の形や状態を変えて、どちらの性質も強める技術です。

撥水・防汚・防曇の5つの技術と、撥水・撥油・防曇・汚れを流す・PFASなしへの向き不向き
5つの技術で、できること
AI(Claude)で作成

フッ素系の撥水・撥油コーティング

ごく薄い透明な膜を付けたガラスのカバーを布で拭き、指紋が楽に拭き取れているイメージ
フッ素系の防汚コート:薄い透明な膜で、指紋を拭き取りやすくするイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

フッ素系のコーティングは、水と油の両方をはじき、汚れや指紋を付きにくく、拭き取りやすくします。フロロテクノロジーの技術資料によると、ガラスなどに化学結合するシランカップリング型の防汚コーティングは、膜厚10〜20nmの透明な薄膜のため、素材の質感や光学特性を損ないません。同資料では、同じ種類の防汚コーティング剤で、液を塗る方法(ウエットプロセス)と真空蒸着(ドライプロセス)を比べ、撥水性110°・撥油性66〜68°はどちらも同じで、耐久性は真空蒸着が優れ、液を塗る方法は施工が容易と整理しています。

性能の評価では、静止した接触角だけを見ないことが大切です。同資料では、防汚性の指標として、滑落角と後退接触角を使い、ティッシュペーパーで荷重をかけてこする試験の前後で、その変化を比べる方法を示しています。

非フッ素の撥水(シリコーン系など)

フッ素を使わない撥水には、シリコーン系や炭化水素系の材料が使われます。シリコーン系の撥水コートは、フッ素系に比べて膜がやや厚くなる一方、耐熱性や耐摩耗性を持たせやすい製品もあります。オーエフテクノのシリコーン系コートは、撥水角112°で、-30℃〜300℃まで使えるとしています。

非フッ素の材料で難しいのは、撥油性です。水をはじくだけでよい用途(雨・水しぶき・結露水)なら置き換えやすく、油や指紋もはじく必要がある用途では、実際に付く油での試験が欠かせません。

親水・吸水による防曇

曇りを防ぐには、水滴をつくらないことが基本です。親水タイプは、表面に付いた水を薄い膜に広げます。吸水タイプは、表面の層に水分を取り込みます。富士フイルムは、同社の保護具用の防曇フィルムについて、付着した蒸気をすばやく表面で吸収し、水滴にならないと説明しています。

TOPPANインフォメディアの防曇フィルムは、PETフィルムの上に、膜厚10μm以下の吸水タイプの樹脂膜を持ち、湿度が高いときは吸水し、低いときは放出するサイクルで、表面の結露を防ぎます。コーティング液を塗る方法に比べて、フィルムを貼る方法は、平らな面なら後から付けやすいのが利点です。

防曇フィルムの構成:フィルム基材の上の膜厚10μm未満の吸水タイプ防曇層
防曇フィルムの構成と、防曇層の模式図(出典:防曇フィルム|TOPPANインフォメディア)

光触媒(酸化チタン)

酸化チタンの光触媒は、光(紫外線)が当たると、2つの働きをします。TOTOの解説によると、表面で活性酸素が生まれて有機物を分解する「分解力」と、水がなじみやすくなる「親水性」です。分解した汚れを雨水が洗い流すことで、外壁などのセルフクリーニングが実現します。

光触媒が光で有機物の汚れを分解し、超親水の表面で雨水が汚れを流すしくみ
光触媒のセルフクリーニングのしくみ
AI(Claude)で作成

日本曹達は、紫外線の照射で接触角が0度近くまで下がり、照射を止めても24時間以上、超親水性が維持されると説明しています。同社が公開しているグラフでは、光触媒を塗工したガラス板とポリカーボネート板の接触角が、照射開始から20分ほどで0°近くまで下がっています。光触媒は有機物を分解するため、樹脂の基材に直接塗ると基材を傷めます。同社は、光触媒層と保護接着層を分けた2層構造で、プラスチックにも使えるようにしています。

光触媒を塗工したポリカーボネート板とガラス板の接触角が、紫外線照射で0度近くまで下がるグラフ
光触媒を塗工した板の、紫外線照射による接触角の変化(出典:光触媒コーティング ビストレイター|日本曹達)

微細構造・表面改質

表面の形や状態を変えて、ぬれ性を強める方法です。撥水性の材料で細かい凹凸を作ると、超撥水になります。東洋アルミニウムの「トーヤルロータス」は、包装材の表面にハスの葉と同じフラクタル構造を作り、水との接触角170°以上を実現しています。フロロテクノロジーの超撥水コーティング剤も、「ハスの葉」構造の白濁した皮膜で、水接触角160°・水転落角2°としています。

真空の容器の中で電極の間にプラズマを起こして部品の表面を処理し、拡大図で表面の層の上にコーティングが密着しているイメージ
プラズマ処理:表面を活性化して、コートの密着を強めるイメージ(AI[ChatGPT]で生成)

プラズマ処理は、表面を活性化して親水性にしたり、コーティングの密着を強めたりするのに使われます。オーエフテクノは、プラズマで表面水酸基を多く持つ中間層を作り、コーティングと母材の結合を強めています。凹凸で作る超撥水は、こすれに弱いことが課題のため、使う場所の摩耗の条件を先に確かめます。

出典:フッ素系コーティング剤による防汚技術|指紋付着防止と耐久性評価|フロロテクノロジー、シリコーン系オーエフコート|オーエフテクノ、保護具用防曇フィルム|富士フイルム、防曇フィルム|TOPPANインフォメディア、ハイドロテクトの光触媒作用について|TOTO、光触媒コーティング ビストレイター|日本曹達、TOYAL LOTUS ラッカーコートタイプ(製品紹介)|東洋アルミニウム、撥水撥油処理剤 フロロサーフ|フロロテクノロジー

撥水・防汚・防曇の技術を持つ企業

各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。コーティング剤を買って自社で塗るか、加工を依頼するか、フィルムを貼るかによって、相談先が変わります。

企業解決できる課題種類何ができるか合う症状
フロロテクノロジーコーティング剤メーカーフッ素系コーティング剤「フロロサーフ」で、撥水・撥油・指紋付着低減の膜を付ける。膜の耐久性の評価も扱う。A 水滴が残る・水はけが悪い(水をはじかせたい)
B 油汚れ・指紋が付きやすく、落ちにくい
D 屋外で雨筋汚れ・くすみが付く(掃除を減らしたい)
オーエフテクノコーティング加工プラズマで密着させるPFASフリーのシリコーン系コートと、超親水コートを受託加工する。部品1個から対応。A 水滴が残る・水はけが悪い(水をはじかせたい)
B 油汚れ・指紋が付きやすく、落ちにくい
C レンズ・カバー・窓が曇る
D 屋外で雨筋汚れ・くすみが付く(掃除を減らしたい)
E フッ素(PFAS)を使わずに撥水・防汚したい
TOPPANインフォメディア機能性フィルム薄い吸水層で結露を取り込み、曇りを防ぐ防曇フィルムを開発・製造する。C レンズ・カバー・窓が曇る
日本曹達化学メーカープラスチックにも塗れる2層構造の光触媒コーティング剤「ビストレイター」で、雨筋汚れを減らす。D 屋外で雨筋汚れ・くすみが付く(掃除を減らしたい)
E フッ素(PFAS)を使わずに撥水・防汚したい
東洋アルミニウム材料メーカーハスの葉の微細な凹凸を再現した超撥水材料「トーヤルロータス」で、容器やふたに中身が付かないようにする。A 水滴が残る・水はけが悪い(水をはじかせたい)
企業名を押すと各社の紹介へ、症状を押すと上の症状の説明へ移ります(各社の公開情報をもとに編集部で整理。課題の絵は AI[ChatGPT]で生成したイメージ)

株式会社フロロテクノロジー|フッ素系コーティング剤で、撥水・撥油・指紋付着低減を付ける

フロロテクノロジーとは

フロロテクノロジーは、愛知県春日井市に本社を置く、2003年設立のフッ素系コーティング剤のメーカーです。社員数13名(2026年4月現在)で、主な取引先に半導体、モーター、自動車、スマートフォン、カメラなどのメーカーを挙げています。撥水撥油処理剤「フロロサーフ」のシリーズで、撥水・防汚・防湿・離型などの用途に対応しています。

撥水処理した布の上で液体が玉になっている様子
撥水の導入事例(防水スプレー原液)の写真(出典:撥水の導入事例|フロロテクノロジー)

フロロテクノロジーの得意技術

技術内容
撥水撥油処理剤(フロロサーフ)超撥水コーティング剤 FG-3660/3661は、水接触角160°・油接触角90°・水転落角2°の超撥水コートをスプレー法などで形成できる。皮膜は白濁し、「ハスの葉」構造の超撥水表面になる
防汚・指紋付着低減コーティング剤ガラス結合型(シランカップリング型)は、膜厚10〜20nmの透明薄膜で、素材の質感や光学特性を損なわない。ガラス、金属、PET、PC、PMMAなど多くの素材に使える。金属結合型(FG-5093)、UVハードコート剤に加える添加剤タイプもある
防汚性の評価技術資料で、静止接触角だけでなく、滑落角・後退接触角による防汚性と耐久性の評価方法を公開している

同社は、製品にPFOS・PFOAに該当する成分は使用していないとしています。フッ素系の材料のため、PFAS全体の規制の動きは、用途ごとに確かめる必要があります。

フロロテクノロジーが解決できる課題

  • 水だけでなく、油やインクもはじく表面にしたい
  • スマートフォンやカメラのカバーに、指紋が付きにくく拭き取りやすい膜を付けたい
  • 膜の性能が、使っているうちにどれだけ落ちるかを評価したい

公開されている実績

  • 防水スプレーの原液(FS-2060):C8製品から切り替え、C8製品と変わらないレベルの防水性を得た。白化はC8より大幅に改善
  • 油性ペンのインクの残量を見えるようにする用途(FS-1620):インクに浸した状態で撥液性を1000時間以上保った

出典:撥水撥油処理剤 フロロサーフ|フロロテクノロジー、フッ素系コーティング剤による防汚技術|指紋付着防止と耐久性評価|フロロテクノロジー、撥水の導入事例|フロロテクノロジー、会社概要|フロロテクノロジー

オーエフテクノ株式会社|プラズマで密着させるPFASフリーのシリコーン系コートと、超親水コート

オーエフテクノとは

オーエフテクノは、静岡県富士市に本社・工場を置く、コーティングの受託加工会社です。非粘着・撥水・撥油の「オーエフコート」と超親水コートの加工のほか、PVD・CVDコーティング、窒化、溶射なども扱います。部品1個から対応するとしています。

オーエフテクノのシリコーン系コートの層構成と、主なコートの種類
オーエフテクノのシリコーン系コートの構成
出典:オーエフテクノの公開情報をもとに AI(Claude)で作成

オーエフテクノの得意技術

技術内容
シリコーン系オーエフコートシリコーンを主成分とするコートで、PFASを使っていない。標準のSiタイプは、撥水角112°、-30℃〜300℃まで使用でき、膜厚0.5〜0.8μm。金属・樹脂・ゴム・ガラス・布などに処理できる。高耐熱のSih、滑りのよいSi-dなどもある
プラズマによる密着プラズマで表面水酸基を多く持つ中間層を作り、コートと母材の結合を強める。実績で10倍の機能維持ができた例もあるとしている。処理温度は100℃以下
超親水コート接触角2°の超親水コーティング。ガラス・金属・プラスチックに処理でき、防曇性能とセルフクリーニング機能を持つ。鉛筆硬度9H以上(ガラス)、スチールウール試験で傷なし

同社は、シリコーン系はフッ素系の標準タイプに比べて耐熱・耐摩耗・耐食・耐UVに優れる一方、そのぶん膜が厚いと説明しています。

オーエフテクノが解決できる課題

  • フッ素(PFAS)を使わずに、部品に撥水・防汚性を付けたい
  • 塗っただけのコートがすぐ落ちるので、長持ちさせたい
  • ゴーグルやミラーなどの部品を、曇りにくく汚れを落としやすくしたい

出典:シリコーン系オーエフコート|オーエフテクノ、超親水コーティング|オーエフテクノ、PFASフリーについて|オーエフテクノ、会社概要|オーエフテクノ

TOPPANインフォメディア株式会社|薄い吸水層で結露を取り込む防曇フィルム

TOPPANインフォメディアとは

TOPPANインフォメディアは、東京都港区に本社を置く、1972年設立のTOPPANグループの会社です。ラベルや記録媒体とともに、印刷とコーティングの技術を応用した機能性フィルムを開発・製造しています。

防曇フィルムの無い部分が曇り、有る部分は透明なままの比較
防曇フィルムの無い部分と有る部分の比較(出典:防曇フィルム|TOPPANインフォメディア)

TOPPANインフォメディアの得意技術

技術内容
防曇フィルムPETフィルムの上に防曇層、反対の面に粘着層を形成したフィルム。防曇層は吸水タイプの樹脂膜で、膜厚10μm以下、吸水容量1g/m²。湿度が高いときは吸水し、低いときは水分を放出して、曇りの原因の水滴ができるのを抑える
自動車向けの耐候性自動車用途として開発した経緯があり、自動車のフロントガラスの一部(車内側)に使われている。紫外線や温度変化に対しても防曇性能と透明性を保つとしている
コーティングの製造受託小ロットに対応したコーティング設備を持ち、薄く均一な塗膜の製造受託も行う。防曇フィルムは23mm幅×360mのロールで生産し、指定の寸法にカットして納入できる

同社は、摩擦を避けられる場所で使うことをすすめています。適した用途として、自動車などのカメラユニットのカバー内側、計器類のカバーパネル内部、冷凍・冷蔵ショーケースの内側など、人の手が直接触れない場所を挙げています。

TOPPANインフォメディアが解決できる課題

  • カメラや計器のカバーの内側が結露で曇るのを防ぎたい
  • 冷凍・冷蔵ショーケースのガラスの内側の曇りを減らしたい
  • 防曇層を自社の部材に合わせた寸法で調達したい

出典:防曇フィルム|TOPPANインフォメディア、企業概要|TOPPANインフォメディア

日本曹達株式会社|プラスチックにも塗れる2層構造の光触媒コーティング剤

日本曹達は、東京都千代田区に本社を置く、1920年創立の化学メーカーです。光触媒コーティング剤「ビストレイター」を開発・販売しています。

料金所の防護壁で、ビストレイター塗装部分が白く、未塗装部分が汚れている比較
料金所の衝突防護壁での、ビストレイター塗装部と未塗装部の比較(出典:光触媒コーティング ビストレイター|日本曹達)

日本曹達の得意技術

技術内容
2層構造の光触媒コーティング光触媒層と保護接着層の2層に分けることで、光触媒が基材を分解するのを防ぎ、これまで適用が難しかったプラスチックなどの有機物にも使えるようにした。同社はこれを世界で初めて開発したとしている
超親水とセルフクリーニング紫外線を当てると接触角は0度近くまで下がり、照射を止めても24時間以上超親水性を保つ(同社の試験)。付着した有機物の汚れを酸化分解し、水の膜で汚れを浮かせて流す
2つの塗り方製品に塗る加熱硬化タイプ(ライン処理速度数十m/分に対応)と、現場で刷毛・ローラー・スプレーで塗れる常温硬化タイプがある

光触媒の効果は、紫外線が当たることで発揮されます。屋内や日の当たらない面に使うときは、光の条件を確かめてから選びます。

日本曹達が解決できる課題

  • 屋外の壁面・看板・テントの雨筋汚れを減らしたい
  • 樹脂の部材にも、光触媒のセルフクリーニング機能を付けたい
  • 洗浄の頻度を減らして、見た目をきれいに保ちたい

公開されている実績

  • 高速道路の料金所の衝突防護壁(アイランド)に塗工し、防汚効果がはっきり出たとしている。交通量の多い料金所で、数日に1度の洗浄作業の軽減と、ドライバーの視認性の確保につながった
  • アクリル塗料の塗装板の屋外暴露試験で、未塗装品が2か月程度で黒っぽくなったのに対し、塗工品は白さを保った
  • 1999年7月施工の住宅(藤嶋邸)、駅などの公共施設、住宅壁面への施工事例を公開

出典:光触媒コーティング ビストレイター|日本曹達、会社概要|日本曹達

東洋アルミニウム株式会社|ハスの葉の微細な凹凸を再現した超撥水材料「トーヤルロータス」

東洋アルミニウムとは

東洋アルミニウムは、大阪市に本社(大阪オフィス)を置く、アルミ箔やアルミペーストなどのメーカーです(現法人は1999年設立、旧法人は1931年設立)。日本軽金属ホールディングスのグループ会社です。

トーヤルロータスの微細な凹凸の撥水層の上の水滴と、使われている例
トーヤルロータスの超撥水のしくみと、使われている例
出典:東洋アルミニウムの公開情報をもとに AI(Claude)で作成

東洋アルミニウムの得意技術

技術内容
トーヤルロータスハスの葉が持つ疎水性の微細な凹凸構造を人工的に再現して、超撥水を実現する技術。包装材の表面に蓮の葉と同じフラクタル構造を作り、水との接触角170°以上を実現している(同社の技術報告)
食品の包装材ヨーグルト容器のふた材(内側)として商品化。内容物がふたに付きにくく、開封・廃棄のときの扱いやすさの向上と食品ロスの低減につながるとしている。食品添加物の規格試験などに適合
コンクリート型枠への応用清水建設と共同開発した超撥水型枠「アート型枠」は、気泡痕や色むらの少ないコンクリート表面と、型枠の剥離性の向上を狙った技術。型枠に塗る「超撥水剤」の外部販売も始めている

東洋アルミニウムが解決できる課題

  • 容器やふたに、中身が付かないようにしたい
  • 凹凸構造による超撥水を、製品の表面に応用したい
  • コンクリートや樹脂が型に付かないようにしたい

公開されている実績

  • 「バイオミメティクス技術を活用した超撥水型枠」が、2024年に日本建築学会賞(技術)を受賞
  • アート型枠は、40件を超える構造物(施工面積7,000㎡超)に適用(2025年3月の同社発表)

出典:トーヤルロータス|東洋アルミニウム、TOYAL LOTUS ラッカーコートタイプ(製品紹介)|東洋アルミニウム、超撥水型枠が日本建築学会賞(技術)を受賞|東洋アルミニウム、アート型枠用超撥水剤を外販|東洋アルミニウム、会社概要|東洋アルミニウム

選ぶ前に確かめる条件

コーティング剤やフィルムを選んだり、加工を依頼したりする前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。

  • 何をはじきたいか、なじませたいか:水だけか、油・指紋・インクもか。曇りを防ぎたいのか、汚れを流したいのか
  • 基材の材質(ガラス・金属・樹脂・ゴム・布など)と、表面の状態(粗さ、既存のコートや離型剤の有無)
  • 使う場所:屋内か屋外か、紫外線が当たるか、温度と湿度の範囲、結露が続く時間
  • こすれるか:人の手や布で拭く面か、洗浄するか、摩耗する部品か
  • 透明性・色・膜厚の制約(光学部品、寸法精度が必要な部品など)
  • 求める寿命と、再塗布やメンテナンスができるか
  • PFASなどの化学物質の制約:自社や取引先の方針、出荷先の規制
  • 評価の方法:接触角だけでなく、滑落角、耐摩耗試験、屋外暴露、実際の液体での試験を、何で合否を決めるか
  • 塗り方と数量:自社で塗るか、加工を依頼するか、フィルムを貼るか。試作の数と量産の数

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※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年9月29日

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